マタイによる福音書

第一章

1アブラハムのであるダビデの、イエス・キリストの系図けいず

2アブラハムはイサクのちちであり、イサクはヤコブのちち、ヤコブはユダとその兄弟きょうだいたちとのちち 3ユダはタマルによるパレスとザラとのちち、パレスはエスロンのちち、エスロンはアラムのちち 4アラムはアミナダブのちち、アミナダブはナアソンのちち、ナアソンはサルモンのちち 5サルモンはラハブによるボアズのちち、ボアズはルツによるオベデのちち、オベデはエッサイのちち 6エッサイはダビデおうちちであった。

ダビデはウリヤのつまによるソロモンのちちであり、 7ソロモンはレハベアムのちち、レハベアムはアビヤのちち、アビヤはアサのちち 8アサはヨサパテのちち、ヨサパテはヨラムのちち、ヨラムはウジヤのちち 9ウジヤはヨタムのちち、ヨタムはアハズのちち、アハズはヒゼキヤのちち 10ヒゼキヤはマナセのちち、マナセはアモンのちち、アモンはヨシヤのちち 11ヨシヤはバビロンへうつされたころ、エコニヤとその兄弟きょうだいたちとのちちとなった。

12バビロンへうつされたのち、エコニヤはサラテルのちちとなった。サラテルはゾロバベルのちち 13ゾロバベルはアビウデのちち、アビウデはエリヤキムのちち、エリヤキムはアゾルのちち 14アゾルはサドクのちち、サドクはアキムのちち、アキムはエリウデのちち 15エリウデはエレアザルのちち、エレアザルはマタンのちち、マタンはヤコブのちち 16ヤコブはマリヤのおっとヨセフのちちであった。このマリヤからキリストといわれるイエスがおうまれになった。

17だから、アブラハムからダビデまでのだいわせて十四だい、ダビデからバビロンへうつされるまでは十四だい、そして、バビロンへうつされてからキリストまでは十四だいである。

18イエス・キリストの誕生たんじょう次第しだいはこうであった。ははマリヤはヨセフと婚約こんやくしていたが、まだ一緒いっしょにならないまえに、聖霊せいれいによって身重みおもになった。 19おっとヨセフはただしいひとであったので、彼女かのじょのことがおおやけになることをこのまず、ひそかに離縁りえんしようと決心けっしんした。 20かれがこのことをおもいめぐらしていたとき、しゅ使つかいゆめあらわれてった、「ダビデのヨセフよ、心配しんぱいしないでマリヤをつまとしてむかえるがよい。その胎内たいない宿やどっているものは聖霊せいれいによるのである。 21彼女かのじょおとこむであろう。そのをイエスとづけなさい。かれは、おのれのたみをそのもろもろのつみからすくものとなるからである」。 22すべてこれらのことがおこったのは、しゅ預言者よげんしゃによってわれたことの成就じょうじゅするためである。すなわち、
23よ、おとめがみごもっておとこむであろう。
そのはインマヌエルとばれるであろう」。
これは、「かみわれらとともにいます」という意味いみである。 24ヨセフはねむりからさめたのちに、しゅ使つかいめいじたとおりに、マリヤをつまむかえた。 25しかし、うまれるまでは、彼女かのじょることはなかった。そして、そのをイエスとづけた。

第二章

1イエスがヘロデおうだいに、ユダヤのベツレヘムでおうまれになったとき、よ、ひがしからきた博士はかせたちがエルサレムにいてった、 2「ユダヤじんおうとしておうまれになったかたは、どこにおられますか。わたしたちはひがしほうでそのほしたので、そのかたをおがみにきました」。 3ヘロデおうはこのことをいて不安ふあんかんじた。エルサレムの人々ひとびともみな、同様どうようであった。 4そこでおう祭司長さいしちょうたちとたみ律法りっぽう学者がくしゃたちとを全部ぜんぶあつめて、キリストはどこにうまれるのかと、かれらにいただした。 5かれらはおうった、「それはユダヤのベツレヘムです。預言者よげんしゃがこうしるしています、
6『ユダの、ベツレヘムよ、
おまえはユダのきみたちのなかで、
けっしてもっとちいさいものではない。
おまえのなかからひとりのきみて、
わがたみイスラエルの牧者ぼくしゃとなるであろう』」。

7そこで、ヘロデはひそかに博士はかせたちをんで、ほしあらわれたときについてくわしくき、 8かれらをベツレヘムにつかわしてった、「って、そのおさのことをくわしく調しらべ、つかったらわたしにらせてくれ。わたしもおがみにくから」。 9かれらはおううことをいてかけると、よ、かれらが東方とうほうほしが、かれらよりさきすすんで、おさのいるところまでき、そのうえにとどまった。 10かれらはそのほして、非常ひじょうよろこびにあふれた。 11そして、いえにはいって、ははマリヤのそばにいるおさい、ひれしておがみ、また、たからはこをあけて、黄金おうごん乳香にゅうこう没薬もつやくなどのおくものをささげた。 12そして、ゆめでヘロデのところにかえるなとのみげをけたので、みちをとおって自分じぶんくにかえってった。

13かれらがかえってったのち、よ、しゅ使つかいゆめでヨセフにあらわれてった、「って、おさとそのははれて、エジプトにげなさい。そして、あなたにらせるまで、そこにとどまっていなさい。ヘロデがおささがして、ころそうとしている」。 14そこで、ヨセフはって、よるあいだおさとそのははとをれてエジプトへき、 15ヘロデがぬまでそこにとどまっていた。それは、しゅ預言者よげんしゃによって「エジプトからわがした」とわれたことが、成就じょうじゅするためである。

16さて、ヘロデは博士はかせたちにだまされたとって、非常ひじょう立腹りっぷくした。そして人々ひとびとをつかわし、博士はかせたちからたしかめたときもとづいて、ベツレヘムとその附近ふきん地方ちほうとにいる二さい以下いかおとこを、ことごとくころした。 17こうして、預言者よげんしゃエレミヤによってわれたことが、成就じょうじゅしたのである。
18さけおおいなるかなしみのこえ
ラマできこえた。
ラケルはそのらのためになげいた。
らがもはやいないので、
なぐさめられることさえねがわなかった」。

19さて、ヘロデがんだのち、よ、しゅ使つかいがエジプトにいるヨセフにゆめあらわれてった、 20って、おさとそのははれて、イスラエルのけ。おさいのちをねらっていた人々ひとびとは、んでしまった」。 21そこでヨセフはって、おさとそのははとをれて、イスラエルのかえった。 22しかし、アケラオがそのちちヘロデにかわってユダヤを治めおさめているといたので、そこへくことをおそれた。そしてゆめでみげをけたので、ガリラヤの地方ちほう退しりぞき、 23ナザレというまちってんだ。これは預言者よげんしゃたちによって、「かれはナザレびとばれるであろう」とわれたことが、成就じょうじゅするためである。

第三章

1そのころ、バプテスマのヨハネがあらわれ、ユダヤの荒野あらのおしえべてった、 2あらためよ、天国てんごくちかづいた」。 3預言者よげんしゃイザヤによって、
荒野あらのばわるものこえがする、
しゅみちそなえよ、
そのみちすじをまっすぐにせよ』」
われたのは、このひとのことである。

4このヨハネは、らくだのごろもを着物きものにし、こしかわおびをしめ、いなごとみつとを食物しょくもつとしていた。 5すると、エルサレムとユダヤ全土ぜんどとヨルダン附近ふきん一帯いったい人々ひとびとが、ぞくぞくとヨハネのところにてきて、 6自分じぶんつみ告白こくはくし、ヨルダンがわでヨハネからバプテスマをけた。 7ヨハネは、パリサイびとやサドカイびとおおぜいバプテスマをけようとしてきたのをて、かれらにった、「まむしのらよ、せまってきているかみいかりから、おまえたちはのがれられると、だれがおしえたのか。 8だから、悔改くいあらためにふさわしいむすべ。 9自分じぶんたちのちちにはアブラハムがあるなどと、こころなかおもってもみるな。おまえたちにっておく、かみはこれらのいしころからでも、アブラハムのおこすことができるのだ。 10おのがすでにもとにかれている。だから、むすばないはことごとくられて、なかまれるのだ。 11わたしは悔改くいあらためのために、みずでおまえたちにバプテスマをさづけている。しかし、わたしのあとからひとはわたしよりもちからのあるかたで、わたしはそのくつをぬがせてあげるうちもない。このかたは、聖霊せいれいとによっておまえたちにバプテスマをおさづけになるであろう。 12また、って、むぎをふるいけ、むぎくらおさめ、からはえないてるであろう」。

13そのときイエスは、ガリラヤをてヨルダンがわあらわれ、ヨハネのところにきて、バプテスマをけようとされた。 14ところがヨハネは、それをおもいとどまらせようとしてった、「わたしこそあなたからバプテスマをけるはずですのに、あなたがわたしのところにおいでになるのですか」。 15しかし、イエスはこたえてわれた、「いまけさせてもらいたい。このように、すべてのただしいことを成就じょうじゅするのは、われわれにふさわしいことである」。そこでヨハネはイエスのわれるとおりにした。 16イエスはバプテスマをけるとすぐ、みずからがられた。すると、よ、てんひらけ、かみ御霊みたまがはとのように自分じぶんうえくだってくるのを、ごらんになった。 17またてんからこえがあってった、「これはわたしのあいする、わたしのこころにかなうものである」。

第四章

1さて、イエスは御霊みたまによって荒野あらのみちびかれた。悪魔あくまこころみられるためである。 2そして、四十にち四十断食だんじきをし、そののち空腹くうふくになられた。 3するとこころみるものがきてった、「もしあなたがかみであるなら、これらのいしがパンになるようにめいじてごらんなさい」。 4イエスはこたえてわれた、「『ひとはパンだけできるものではなく、かみくちからる一つ一つのことばきるものである』といてある」。 5それから悪魔あくまは、イエスをせいなるみやこれてき、みや頂上ちょうじょうたせて 6った、「もしあなたがかみであるなら、したびおりてごらんなさい。
かみはあなたのために御使みつかいたちにおめいじになると、
あなたのあしいしちつけられないように、
かれらはあなたをでささえるであろう』
いてありますから」。 7イエスはかれわれた、「『しゅなるあなたのかみこころみてはならない』とまたいてある」。 8つぎ悪魔あくまは、イエスを非常ひじょうたかやまれてき、こののすべての国々くにぐにとその栄華えいがとをせて 9った、「もしあなたが、ひれしてわたしをおがむなら、これらのものをみなあなたにあげましょう」。 10するとイエスはかれわれた、「サタンよ、退しりぞけ。『しゅなるあなたのかみはいし、ただかみにのみつかえよ』といてある」。 11そこで、悪魔あくまはイエスをはなり、そして、御使みつかいたちがみもとにきてつかえた。

12さて、イエスはヨハネがとらえられたといて、ガリラヤへ退しりぞかれた。 13そしてナザレをり、ゼブルンとナフタリとの地方ちほうにあるうみべのまちカペナウムにってまわれた。 14これは預言者よげんしゃイザヤによってわれたことばが、成就じょうじゅするためである。
15「ゼブルンの、ナフタリの
うみ沿地方ちほう、ヨルダンのこうの
異邦人いほうじんのガリラヤ、
16暗黒あんこくなかんでいるたみおおいなるひかり
かげんでいる人々ひとびとに、ひかりがのぼった」。
17このときからイエスはおしえべはじめてわれた、「あらためよ、天国てんごくちかづいた」。

18さて、イエスがガリラヤのうみべをあるいておられると、ふたりの兄弟きょうだい、すなわち、ペテロとばれたシモンとその兄弟きょうだいアンデレとが、うみあみっているのをごらんになった。かれらは漁師りょうしであった。 19イエスはかれらにわれた、「わたしについてきなさい。あなたがたを、人間にんげんをとる漁師りょうしにしてあげよう」。 20すると、かれらはすぐにあみてて、イエスにしたがった。 21そこからすすんでかれると、ほかのふたりの兄弟きょうだい、すなわち、ゼベダイのヤコブとその兄弟きょうだいヨハネとが、ちちゼベダイと一緒いっしょに、ふねなかあみつくろっているのをごらんになった。そこでかれらをおまねきになると、 22すぐふねちちとをおいて、イエスにしたがってった。

23イエスはガリラヤのぜんめぐあるいて、しょ会堂かいどうおしえ、御国みくに福音ふくいんつたえ、たみなかのあらゆる病気びょうき、あらゆるわずらいをおいやしになった。 24そこで、その評判ひょうばんはシリヤぜんにひろまり、人々ひとびとがあらゆるやまいにかかっているもの、すなわち、いろいろの病気びょうきくるしみとになやんでいるもの悪霊あくれいにつかれているもの、てんかん、中風ちゅうぶものなどをイエスのところにれてきたので、これらの人々ひとびとをおいやしになった。 25こうして、ガリラヤ、デカポリス、エルサレム、ユダヤおよびヨルダンのこうから、おびただしい群衆ぐんしゅうがきてイエスにしたがった。

第五章

1イエスはこの群衆ぐんしゅうて、やまのぼり、につかれると、弟子でしたちがみもとに近寄ちかよってきた。 2そこで、イエスはくちひらき、かれらにおしえてわれた。
3「こころのまずしいひとたちは、さいわいである、
天国てんごくかれらのものである。
4かなしんでいるひとたちは、さいわいである、
かれらはなぐさめられるであろう。
5柔和にゅうわひとたちは、さいわいである、
かれらはけつぐであろう。
6えかわいているひとたちは、さいわいである、
かれらはりるようになるであろう。
7あわれみぶかひとたちは、さいわいである、
かれらはあわれみをけるであろう。
8こころきよひとたちは、さいわいである、
かれらはかみるであろう。
9平和へいわをつくりひとたちは、さいわいである、
かれらはかみばれるであろう。
10のために迫害はくがいされてきたひとたちは、
さいわいである、
天国てんごくかれらのものである。
11わたしのために人々ひとびとがあなたがたをののしり、また迫害はくがいし、あなたがたにたいいつわって様々さまざま悪口あっこうときには、あなたがたは、さいわいである。 12よろこび、よろこべ、てんにおいてあなたがたのけるむくいはおおきい。あなたがたよりまえ預言者よげんしゃたちも、おなじように迫害はくがいされたのである。

13あなたがたは、しおである。もししおのききめがなくなったら、なにによってそのあじりもどされようか。もはや、なんのやくにもたず、ただそとてられて、人々ひとびとにふみつけられるだけである。 14あなたがたは、ひかりである。やまうえにあるまちかくれることができない。 15また、あかりをつけて、それをますしたにおくものはいない。むしろ燭台しょくだいうえにおいて、いえなかのすべてのものをてらさせるのである。 16そのように、あなたがたのひかり人々ひとびとまえかがやかし、そして、人々ひとびとがあなたがたのよいおこないをて、てんにいますあなたがたのちちをあがめるようにしなさい。

17わたしが律法りっぽう預言者よげんしゃはいするためにきた、とおもってはならない。はいするためではなく、成就じょうじゅするためにきたのである。 18よくっておく。天地てんちほろくまでは、律法りっぽうの一てん一画いっかくもすたることはなく、ことごとくまっとうされるのである。 19それだから、これらのもっとちいさいいましめの一つでもやぶり、またそうするようにひとおしえたりするものは、天国てんごくもっとちいさいものばれるであろう。しかし、これをおこないまたそうおしえるものは、天国てんごくおおいなるものばれるであろう。 20わたしはっておく。あなたがたの律法りっぽう学者がくしゃやパリサイびとにまさっていなければ、けっして天国てんごくに、はいることはできない。

21むかし人々ひとびとに『ころすな。ころもの裁判さいばんけねばならない』とわれていたことは、あなたがたのいているところである。 22しかし、わたしはあなたがたにう。兄弟きょうだいたいしていかものは、だれでも裁判さいばんけねばならない。兄弟きょうだいにむかっておろものものは、議会ぎかいきわたされるであろう。また、ばかものものは、地獄じごくまれるであろう。 23だから、祭壇さいだんそなものをささげようとする場合ばあい兄弟きょうだい自分じぶんたいしてなにかうらみをいだいていることを、そこでおもしたなら、 24そのそなもの祭壇さいだんまえのこしておき、まずってその兄弟きょうだい和解わかいし、それからかえってきて、そなものをささげることにしなさい。 25あなたをうったえるもの一緒いっしょみちときには、その途中とちゅうはや仲直なかなおりをしなさい。そうしないと、そのうったえるものはあなたを裁判官さいばんかんにわたし、裁判官さいばんかん下役したやくにわたし、そして、あなたはごくれられるであろう。 26よくあなたにっておく。最後さいごの一コドラントを支払しはらってしまうまでは、けっしてそこからてくることはできない。

27姦淫かんいんするな』とわれていたことは、あなたがたのいているところである。 28しかし、わたしはあなたがたにう。だれでも、情欲じょうよくをいだいておんなものは、こころなかですでに姦淫かんいんをしたのである。 29もしあなたのみぎつみおかさせるなら、それをしててなさい。五体ごたい一部いちぶうしなっても、全身ぜんしん地獄じごくれられないほうが、あなたにとってえきである。 30もしあなたのみぎつみおかさせるなら、それをっててなさい。五体ごたい一部いちぶうしなっても、全身ぜんしん地獄じごくまないほうが、あなたにとってえきである。 31また『つまもの離縁りえんじょうわたせ』とわれている。 32しかし、わたしはあなたがたにう。だれでも、不品行ふひんこう以外いがい理由りゆう自分じぶんつまものは、姦淫かんいんおこなわせるのである。またされたおんなをめとるものも、姦淫かんいんおこなうのである。

33またむかし人々ひとびとに『いつわりちかうな、ちかったことは、すべてしゅたいしてはたせ』とわれていたことは、あなたがたのいているところである。 34しかし、わたしはあなたがたにう。いっさいちかってはならない。てんをさしてちかうな。そこはかみ御座みざであるから。 35またをさしてちかうな。そこはかみあしだいであるから。またエルサレムをさしてちかうな。それは『大王だいおうみやこ』であるから。 36また、自分じぶんあたまをさしてちかうな。あなたはかみひとすじさえ、しろくもくろくもすることができない。 37あなたがたの言葉ことばは、ただ、しかり、しかり、いないな、であるべきだ。それ以上いじょうることは、あくからるのである。

38にはを、にはを』とわれていたことは、あなたがたのいているところである。 39しかし、わたしはあなたがたにう。悪人あくにん手向てむかうな。もし、だれかがあなたのみぎほおつなら、ほかのほおをもけてやりなさい。 40あなたをうったえて、下着したぎろうとするものには、上着うわぎをもあたえなさい。 41もし、だれかが、あなたをしいて一マイルかせようとするなら、そのひとともに二マイルきなさい。 42もとめるものにはあたえ、りようとするものことわるな。

43となびとあいし、てきにくめ』とわれていたことは、あなたがたのいているところである。 44しかし、わたしはあなたがたにう。てきあいし、迫害はくがいするもののためにいのれ。 45こうして、てんにいますあなたがたのちちとなるためである。てんちちは、わるものうえにもものうえにも、太陽たいようをのぼらせ、ただしいものにもただしくないものにも、あめらしてくださるからである。 46あなたがたが自分じぶんあいするものあいしたからとて、なんのむくいがあろうか。そのようなことは取税人しゅぜいにんでもするではないか。 47兄弟きょうだいだけにあいさつをしたからとて、なんのすぐれたことをしているだろうか。そのようなことは異邦人いほうじんでもしているではないか。 48それだから、あなたがたのてんちち完全かんぜんであられるように、あなたがたも完全かんぜんものとなりなさい。

第六章

1自分じぶんを、られるためにひとまえおこなわないように、注意ちゅういしなさい。もし、そうしないと、てんにいますあなたがたのちちからむくいをけることがないであろう。

2だから、ほどこしをするときには、偽善者ぎぜんしゃたちがひとにほめられるため会堂かいどうまちなかでするように、自分じぶんまえでラッパをきならすな。よくっておくが、かれらはそのむくいをけてしまっている。 3あなたはほどこしをする場合ばあいみぎのしていることをひだりらせるな。 4それは、あなたのするほどこしがかくれているためである。すると、かくれたことておられるあなたのちちは、むくいてくださるであろう。

5またいのときには、偽善者ぎぜんしゃたちのようにするな。かれらはひとせようとして、会堂かいどう大通おおどおりのつじにっていのることをこのむ。よくっておくが、かれらはそのむくいをけてしまっている。 6あなたはいのとき自分じぶんのへやにはいり、じて、かくれたところにおいでになるあなたのちちいのりなさい。すると、かくれたことておられるあなたのちちは、むくいてくださるであろう。 7また、いの場合ばあい異邦人いほうじんのように、くどくどといのるな。かれらは言葉ことばかずがおおければ、きいれられるものとおもっている。 8だから、かれらのまねをするな。あなたがたのちちなるかみは、もとめないさきから、あなたがたに必要ひつようなものはごぞんじなのである。 9だから、あなたがたはこういのりなさい、
てんにいますわれらのちちよ、
御名みながあがめられますように。
10御国みくにがきますように。
みこころがてんおこなわれるとおり、
にもおこなわれますように。
11わたしたちのごとの食物しょくもつを、
きょうもおあたえください。
12わたしたちに負債ふさいのあるものをゆるしましたように、
わたしたちの負債ふさいをもおゆるしください。
13わたしたちをこころみにわせないで、
しきものからおすくいください。
14もしも、あなたがたが、人々ひとびとのあやまちをゆるすならば、あなたがたのてんちちも、あなたがたをゆるしてくださるであろう。 15もしひとをゆるさないならば、あなたがたのちちも、あなたがたのあやまちをゆるしてくださらないであろう。

16また断食だんじきをするときには、偽善者ぎぜんしゃがするように、陰気いんきかおつきをするな。かれらは断食だんじきをしていることをひとせようとして、自分じぶんかお見苦みぐるしくするのである。よくっておくが、かれらはそのむくいをけてしまっている。 17あなたがたは断食だんじきをするときには、自分じぶんあたまあぶらり、かおあらいなさい。 18それは断食だんじきをしていることがひとれないで、かくれたところにおいでになるあなたのちちられるためである。すると、かくれたことておられるあなたのちちは、むくいてくださるであろう。

19あなたがたは自分じぶんのために、むしい、さびがつき、また、盗人ぬすびとらがってぬすすような地上ちじょうに、たからをたくわえてはならない。 20むしろ自分じぶんのため、むしわず、さびもつかず、また、盗人ぬすびとらがってぬすすこともないてんに、たからをたくわえなさい。 21あなたのたからのあるところには、こころもあるからである。 22はからだのあかりである。だから、あなたのんでおれば、全身ぜんしんあかるいだろう。 23しかし、あなたのわるければ、全身ぜんしんくらいだろう。だから、もしあなたのうちなるひかりくらければ、そのくらさは、どんなであろう。 24だれも、ふたりの主人しゅじんつかえることはできない。一方いっぽうにくんで他方たほうあいし、あるいは、一方いっぽうしたしんで他方たほうをうとんじるからである。あなたがたは、かみとみとにつかえることはできない。

25それだから、あなたがたにっておく。なにべようか、なにもうかと、自分じぶんいのちのことでおもいわずらい、なにようかと自分じぶんのからだのことでおもいわずらうな。いのち食物しょくもつにまさり、からだは着物きものにまさるではないか。 26そらとりるがよい。まくことも、ることもせず、くらりいれることもしない。それだのに、あなたがたのてんちちかれらをやしなっていてくださる。あなたがたはかれらよりも、はるかにすぐれたものではないか。 27あなたがたのうち、だれがおもいわずらったからとて、自分じぶん寿命じゅみょうをわずかでもばすことができようか。 28また、なぜ、着物きもののことでおもいわずらうのか。はながどうしてそだっているか、かんがえてるがよい。はたらきもせず、つむぎもしない。 29しかし、あなたがたにうが、栄華えいがをきわめたときのソロモンでさえ、このはなの一つほどにも着飾きかざってはいなかった。 30きょうはえていて、あすはれられるくさでさえ、かみはこのようによそおってくださるのなら、あなたがたに、それ以上いじょうよくしてくださらないはずがあろうか。ああ、信仰しんこううすものたちよ。 31だから、なにべようか、なにもうか、あるいはなにようかとっておもいわずらうな。 32これらのものはみな、異邦人いほうじんせつもとめているものである。あなたがたのてんちちは、これらのものが、ことごとくあなたがたに必要ひつようであることをごぞんじである。 33まずかみくにかみとをもとめなさい。そうすれば、これらのものは、すべてえてあたえられるであろう。 34だから、あすのことをおもいわずらうな。あすのことは、あす自身じしんおもいわずらうであろう。一にち苦労くろうは、そのにちだけで十分じゅうぶんである。

第七章

1ひとをさばくな。自分じぶんがさばかれないためである。 2あなたがたがさばくそのさばきで、自分じぶんもさばかれ、あなたがたのはかるそのはかりで、自分じぶんにもはかあたえられるであろう。 3なぜ、兄弟きょうだいにあるちりをながら、自分じぶんにあるはりみとめないのか。 4自分じぶんにははりがあるのに、どうして兄弟きょうだいにむかって、あなたのからちりをらせてください、とえようか。 5偽善者ぎぜんしゃよ、まず自分じぶんからはりりのけるがよい。そうすれば、はっきりえるようになって、兄弟きょうだいからちりをりのけることができるだろう。

6せいなるものをいぬにやるな。また真珠しんじゅぶたげてやるな。おそらくかれらはそれらをあしみつけ、きなおってあなたがたにかみついてくるであろう。

7もとめよ、そうすれば、あたえられるであろう。さがせ、そうすれば、いだすであろう。もんをたたけ、そうすれば、あけてもらえるであろう。 8すべてもとめるものさがものいだし、もんをたたくものはあけてもらえるからである。 9あなたがたのうちで、自分じぶんがパンをもとめるのに、いしあたえるものがあろうか。 10うおもとめるのに、へびをあたえるものがあろうか。 11このように、あなたがたはわるものであっても、自分じぶん子供こどもには、おくものをすることをっているとすれば、てんにいますあなたがたのちちはなおさら、もとめてくるものいものをくださらないことがあろうか。 12だから、何事なにごとでも人々ひとびとからしてほしいとのぞむことは、人々ひとびとにもそのとおりにせよ。これが律法りっぽうであり預言者よげんしゃである。

13せまもんからはいれ。ほろびにいたるもんおおきく、そのみちひろい。そして、そこからはいってものおおい。 14いのちにいたるもんせまく、そのみちほそい。そして、それをいだすものすくない。

15にせ預言者よげんしゃ警戒けいかいせよ。かれらは、ひつじころもてあなたがたのところにるが、その内側うちがわ強欲ごうよくなおおかみである。 16あなたがたは、そのによってかれらをわけるであろう。いばらからぶどうを、あざみからいちじくをあつめるものがあろうか。 17そのように、すべてむすび、わるわるむすぶ。 18わるをならせることはないし、わるをならせることはできない。 19むすばないはことごとくられて、なかまれる。 20このように、あなたがたはそのによってかれらをわけるのである。 21わたしにむかって『しゅよ、しゅよ』とものが、みな天国てんごくにはいるのではなく、ただ、てんにいますわがちち御旨みむねおこなものだけが、はいるのである。 22そのには、おおくのものが、わたしにむかって『しゅよ、しゅよ、わたしたちはあなたのによって預言よげんしたではありませんか。また、あなたのによって悪霊あくれいし、あなたのによっておおくのちからあるわざをおこなったではありませんか』とうであろう。 23そのとき、わたしはかれらにはっきり、こうおう、『あなたがたをまったらない。不法ふほうはたらものどもよ、ってしまえ』。

24それで、わたしのこれらの言葉ことばいておこなうものを、いわうえ自分じぶんいえてたかしこひとくらべることができよう。 25あめり、洪水こうずいせ、かぜいてそのいえちつけても、たおれることはない。いわ土台どだいとしているからである。 26また、わたしのこれらの言葉ことばいてもおこなわないものを、すなうえ自分じぶんいえてたおろかなひとくらべることができよう。 27あめり、洪水こうずいせ、かぜいてそのいえちつけると、たおれてしまう。そしてそのたおかたはひどいのである」。

28イエスがこれらのことばかたえられると、群衆ぐんしゅうはそのおしえにひどくおどろいた。 29それは律法りっぽう学者がくしゃたちのようにではなく、権威けんいあるもののように、おしえられたからである。

第八章

1イエスがやまをおりになると、おびただしい群衆ぐんしゅうがついてきた。 2すると、そのとき、ひとりのらい病人びょうにんがイエスのところにきて、ひれしてった、「しゅよ、みこころでしたら、きよめていただけるのですが」。 3イエスはばして、かれにさわり、「そうしてあげよう、きよくなれ」とわれた。すると、らいびょうただちにきよめられた。 4イエスはかれわれた、「だれにもはなさないように、注意ちゅういしなさい。ただって、自分じぶんのからだを祭司さいしせ、それから、モーセがめいじたそなものをささげて、人々ひとびと証明しょうめいしなさい」。

5さて、イエスがカペナウムにかえってこられたとき、ある百卒長ひゃくそつちょうがみもとにきてうったえてった、 6しゅよ、わたしのしもべ中風ちゅうぶでひどくくるしんで、いえています」。 7イエスはかれに、「わたしがってなおしてあげよう」とわれた。 8そこで百卒長ひゃくそつちょうこたえてった、「しゅよ、わたしの屋根やねしたにあなたをおれする資格しかくは、わたしにはございません。ただ、お言葉ことばください。そうすればしもべはなおります。 9わたしも権威けんいしたにあるものですが、わたしのしたにも兵卒へいそつがいまして、ひとりのものに『け』とえばき、ほかのものに『こい』とえばきますし、また、しもべに『これをせよ』とえば、してくれるのです」。 10イエスはこれをいて非常ひじょう感心かんしんされ、ついてきた人々ひとびとわれた、「よくきなさい。イスラエルひとなかにも、これほどの信仰しんこうたことがない。 11なお、あなたがたにうが、おおくのひとひがしから西にしからきて、天国てんごくで、アブラハム、イサク、ヤコブととも宴会えんかいせきにつくが、 12このくにらはそとのやみにされ、そこでさけんだり、がみをしたりするであろう」。 13それからイエスは百卒長ひゃくそつちょうに「け、あなたのしんじたとおりになるように」とわれた。すると、ちょうどそのときに、しもべはいやされた。

14それから、イエスはペテロのいえにはいってかれ、そのしゅうとめが熱病ねつびょうで、とこについているのをごらんになった。 15そこで、そのにさわられると、ねついた。そしておんなきあがってイエスをもてなした。 16夕暮ゆうぐれになると、人々ひとびと悪霊あくれいにつかれたものおおぜい、みもとにれてきたので、イエスはみ言葉ことばをもってれいどもをし、病人びょうにんをことごとくおいやしになった。 17これは、預言者よげんしゃイザヤによって「かれは、わたしたちのわずらいをけ、わたしたちのやまいうた」とわれた言葉ことば成就じょうじゅするためである。

18イエスは、群衆ぐんしゅう自分じぶんのまわりにむらがっているのをて、こうぎしくようにと弟子でしたちにおめいじになった。 19するとひとりの律法りっぽう学者がくしゃちかづいてきてった、「先生せんせい、あなたがおいでになるところなら、どこへでもしたがってまいります」。 20イエスはそのひとわれた、「きつねにはあながあり、そらとりにはがある。しかし、ひとにはまくらするところがない」。 21また弟子でしのひとりがった、「しゅよ、まず、ちちほうむりにかせてください」。 22イエスはかれわれた、「わたしにしたがってきなさい。そして、その死人しにんほうむることは、死人しにんまかせておくがよい」。

23それから、イエスがふねまれると、弟子でしたちもしたがった。 24すると突然とつぜん海上かいじょうはげしい暴風ぼうふうおこって、ふねなみにのまれそうになった。ところが、イエスはねむっておられた。 25そこで弟子でしたちはみそばにってきてイエスをおこし、「しゅよ、おたすけください、わたしたちはにそうです」とった。 26するとイエスはかれらにわれた、「なぜこわがるのか、信仰しんこううすものたちよ」。それからきあがって、かぜうみとをおしかりになると、おおなぎになった。 27かれらはおどろいてった、「このかたはどういうひとなのだろう。かぜうみしたがわせるとは」。

28それから、こうぎし、ガダラびとかれると、悪霊あくれいにつかれたふたりのものが、墓場はかばからてきてイエスに出会であった。かれらはえない乱暴らんぼうもので、だれもそのへんみちとおることができないほどであった。 29すると突然とつぜんかれらはさけんでった、「かみよ、あなたはわたしどもとなんのかかわりがあるのです。まだそのときではないのに、ここにきて、わたしどもをくるしめるのですか」。 30さて、そこからはるかはなれたところに、おびただしいぶたれがってあった。 31悪霊あくれいどもはイエスにねがってった、「もしわたしどもをされるのなら、あのぶたれのなかにつかわしてください」。 32そこで、イエスが「け」とわれると、かれらはって、ぶたなかへはいりんだ。すると、その全体ぜんたいが、がけからうみへなだれをってくだり、みずなかんでしまった。 33ものたちはげてまちき、悪霊あくれいにつかれたものたちのことなど、いっさいをらせた。 34すると、町中まちじゅうものがイエスにいにてきた。そして、イエスにうと、この地方ちほうからってくださるようにとたのんだ。

第九章

1さて、イエスはふねってうみわたり、自分じぶんまちかえられた。 2すると、人々ひとびと中風ちゅうぶものとこうえかせたままでみもとにはこんできた。イエスはかれらの信仰しんこうて、中風ちゅうぶものに、「よ、しっかりしなさい。あなたのつみはゆるされたのだ」とわれた。 3すると、ある律法りっぽう学者がくしゃたちがこころなかった、「このひとかみけがしている」。 4イエスはかれらのかんがえを見抜みぬいて、「なぜ、あなたがたはこころなかわるいことをかんがえているのか。 5あなたのつみはゆるされた、とうのと、きてあるけ、とうのと、どちらがたやすいか。 6しかし、ひと地上ちじょうつみをゆるす権威けんいをもっていることが、あなたがたにわかるために」とい、中風ちゅうぶものにむかって、「きよ、とこりあげていえかえれ」とわれた。 7するとかれきあがり、いえかえってった。 8群衆ぐんしゅうはそれをおそれ、こんなおおきな権威けんいひとにおあたえになったかみをあがめた。

9さてイエスはそこからすすんでかれ、マタイというひと収税所しゅうぜいしょにすわっているのをて、「わたしにしたがってきなさい」とわれた。するとかれちあがって、イエスにしたがった。 10それから、イエスがいえ食事しょくじせきについておられたときのことである。おおくの取税人しゅぜいにん罪人つみびとたちがきて、イエスや弟子でしたちとともにそのせきいていた。 11パリサイびとたちはこれをて、弟子でしたちにった、「なぜ、あなたがたの先生せんせいは、取税人しゅぜいにん罪人つみびとなどと食事しょくじともにするのか」。 12イエスはこれをいてわれた、「丈夫じょうぶひとには医者いしゃはいらない。いるのは病人びょうにんである。 13『わたしがこのむのは、あわれみであって、いけにえではない』とはどういう意味いみか、まなんできなさい。わたしがきたのは、義人ぎじんまねくためではなく、罪人つみびとまねくためである」。

14そのとき、ヨハネの弟子でしたちがイエスのところにきてった、「わたしたちとパリサイびとたちとが断食だんじきをしているのに、あなたの弟子でしたちは、なぜ断食だんじきをしないのですか」。 15するとイエスはわれた、「婚礼こんれいきゃくは、花婿はなむこ一緒いっしょにいるあいだは、かなしんでおられようか。しかし、花婿はなむこうばられるる。そのときには断食だんじきをするであろう。 16だれも、真新まあたらしいぬのぎれで、ふる着物きものにつぎをてはしない。そのつぎきれは着物きものやぶり、そして、やぶれがもっとひどくなるから。 17だれも、あたらしいぶどうしゅふるかわぶくろれはしない。もしそんなことをしたら、そのかわぶくろけ、さけながるし、かわぶくろもむだになる。だから、あたらしいぶどうしゅあたらしいかわぶくろれるべきである。そうすれば両方りょうほうともながもちがするであろう」。

18これらのことをかれらにはなしておられると、そこにひとりの会堂司かいどうづかさがきて、イエスをはいしてった、「わたしのむすめがただいまにました。しかしおいでになってをそのうえにおいてやってください。そうしたら、むすめかえるでしょう」。 19そこで、イエスがってかれについてかれると、弟子でしたちも一緒いっしょった。 20するとそのとき、十二年間ねんかんながをわずらっているおんな近寄ちかよってきて、イエスのうしろからみころものふさにさわった。 21ころもにさわりさえすれば、なおしていただけるだろう、とこころなかおもっていたからである。 22イエスはいて、このおんなわれた、「むすめよ、しっかりしなさい。あなたの信仰しんこうがあなたをすくったのです」。するとこのおんなはそのときに、いやされた。 23それからイエスはつかさいえき、ふえきどもやさわいでいる群衆ぐんしゅうわれた。 24「あちらへっていなさい。少女しょうじょんだのではない。ねむっているだけである」。すると人々ひとびとはイエスをあざわらった。 25しかし、群衆ぐんしゅうそとしたのち、イエスはうちへはいって、少女しょうじょをおりになると、少女しょうじょきあがった。 26そして、そのうわさがこの地方ちほう全体ぜんたいにひろまった。

27そこからすすんでかれると、ふたりの盲人もうじんが、「ダビデのよ、わたしたちをあわれんでください」とさけびながら、イエスについてきた。 28そしてイエスがいえにはいられると、盲人もうじんたちがみもとにきたので、かれらに「わたしにそれができるとしんじるか」とわれた。かれらはった、「しゅよ、しんじます」。 29そこで、イエスはかれらのにさわってわれた、「あなたがたの信仰しんこうどおり、あなたがたのになるように」。 30するとかれらのひらかれた。イエスはかれらをきびしくいましめてわれた、「だれにもれないようにをつけなさい」。 31しかし、かれらはって、その地方ちほう全体ぜんたいにイエスのことをいひろめた。

32かれらがくと、人々ひとびと悪霊あくれいにつかれたおしをイエスのところにれてきた。 33すると、悪霊あくれいされて、おしがものうようになった。群衆ぐんしゅうおどろいて、「このようなことがイスラエルのなかられたことは、これまで一度いちどもなかった」とった。 34しかし、パリサイびとたちはった、「かれは、悪霊あくれいどものかしらによって悪霊あくれいどもをしているのだ」。

35イエスは、すべての町々まちまち村々むらむらめぐあるいて、しょ会堂かいどうおしえ、御国みくに福音ふくいんつたえ、あらゆる病気びょうき、あらゆるわずらいをおいやしになった。 36また群衆ぐんしゅうもののないひつじのようによわてて、たおれているのをごらんになって、かれらをふかくあわれまれた。 37そして弟子でしたちにわれた、「収穫しゅうかくおおいが、はたらびとすくない。 38だから、収穫しゅうかくしゅねがって、その収穫しゅうかくのためにはたらびとおくすようにしてもらいなさい」。

第一〇章

1そこで、イエスは十二弟子でしせて、けがれたれいし、あらゆる病気びょうき、あらゆるわずらいをいやす権威けんいをおさづけになった。

2十二使徒しとは、つぎのとおりである。まずペテロとばれたシモンとその兄弟きょうだいアンデレ、それからゼベダイのヤコブとその兄弟きょうだいヨハネ、 3ピリポとバルトロマイ、トマスと取税人しゅぜいにんマタイ、アルパヨのヤコブとタダイ、 4熱心ねっしんとうのシモンとイスカリオテのユダ。このユダはイエスを裏切うらぎったものである。

5イエスはこの十二にんをつかわすにあたり、かれらにめいじてわれた、「異邦人いほうじんみちくな。またサマリヤびとまちにはいるな。 6むしろ、イスラエルのいえうしなわれたひつじのところにけ。 7って、『天国てんごくちかづいた』とつたえよ。 8病人びょうにんをいやし、死人しにんをよみがえらせ、らい病人びょうにんをきよめ、悪霊あくれいせ。ただでけたのだから、ただであたえるがよい。 9財布さいふなかきんぎんまたはぜにれてくな。 10旅行りょこうのためのふくろも、二まい下着したぎも、くつも、つえもってくな。はたらびとがその食物しょくもつるのは当然とうぜんである。 11どのまち、どのむらにはいっても、そのなかでだれがふさわしいひとか、たずねして、るまではそのひとのところにとどまっておれ。 12そのいえにはいったなら、平安へいあんいのってあげなさい。 13もし平安へいあんけるにふさわしいいえであれば、あなたがたのいの平安へいあんはそのいえるであろう。もしふさわしくなければ、その平安へいあんはあなたがたにかえってるであろう。 14もしあなたがたをむかえもせず、またあなたがたの言葉ことばきもしないひとがあれば、そのいえまちときに、あしのちりをはらおとしなさい。 15あなたがたによくっておく。さばきのには、ソドム、ゴモラのほうが、そのまちよりはえやすいであろう。

16わたしがあなたがたをつかわすのは、ひつじをおおかみのなかおくるようなものである。だから、へびのようにかしこく、はとのように素直すなおであれ。 17人々ひとびと注意ちゅういしなさい。かれらはあなたがたを衆議所しゅうぎしょわたし、会堂かいどうでむちつであろう。 18またあなたがたは、わたしのために長官ちょうかんたちやおうたちのまえされるであろう。それは、かれらと異邦人いほうじんとにたいしてあかしをするためである。 19かれらがあなたがたをわたしたとき、なにをどうおうかと心配しんぱいしないがよい。うべきことは、そのときさづけられるからである。 20かたものは、あなたがたではなく、あなたがたのなかにあってかたちちれいである。 21兄弟きょうだい兄弟きょうだいを、ちちころすためにわたし、またおやさからってち、かれらをころさせるであろう。 22またあなたがたは、わたしののゆえにすべてのひとにくまれるであろう。しかし、最後さいごまでしのものすくわれる。 23一つのまち迫害はくがいされたなら、まちげなさい。よくっておく。あなたがたがイスラエルの町々まちまちまわおわらないうちに、ひとるであろう。

24弟子でしはその以上いじょうのものではなく、しもべはその主人しゅじん以上いじょうものではない。 25弟子でしがそののようであり、しもべがその主人しゅじんのようであれば、それで十分じゅうぶんである。もしいえ主人しゅじんがベルゼブルとわれるならば、そのいえものどもはなおさら、どんなにかわるわれることであろう。 26だからかれらをおそれるな。おおわれたもので、あらわれてこないものはなく、かくれているもので、られてこないものはない。 27わたしがくらやみであなたがたにはなすことを、あかるみでえ。みみにささやかれたことを、屋根やねうえいひろめよ。 28また、からだをころしても、たましいころすことのできないものどもをおそれるな。むしろ、からだもたましい地獄じごくほろぼすちからのあるかたをおそれなさい。 29のすずめは一アサリオンでられているではないか。しかもあなたがたのちちゆるしがなければ、その一ちることはない。 30またあなたがたのあたままでも、みなかぞえられている。 31それだから、おそれることはない。あなたがたはおおくのすずめよりも、まさったものである。 32だからひとまえでわたしをけいれるものを、わたしもまた、てんにいますわたしのちちまえけいれるであろう。 33しかし、ひとまえでわたしをこばものを、わたしもてんにいますわたしのちちまえこばむであろう。

34地上ちじょう平和へいわをもたらすために、わたしがきたとおもうな。平和へいわではなく、つるぎをむためにきたのである。 35わたしがきたのは、ひとをそのちちと、むすめをそのははと、よめをそのしゅうとめとなかたがいさせるためである。 36そしていえものが、そのひとてきとなるであろう。 37わたしよりもちちまたはははあいするものは、わたしにふさわしくない。わたしよりもむすこやむすめあいするものは、わたしにふさわしくない。 38また自分じぶん十字架じゅうじかをとってわたしにしたがってこないものはわたしにふさわしくない。 39自分じぶんいのちているものはそれをうしない、わたしのために自分じぶんいのちうしなっているものは、それをるであろう。

40あなたがたをけいれるものは、わたしをけいれるのである。わたしをけいれるものは、わたしをおつかわしになったかたをけいれるのである。 41預言者よげんしゃのゆえに預言者よげんしゃけいれるものは、預言者よげんしゃむくいをけ、義人ぎじんのゆえに義人ぎじんけいれるものは、義人ぎじんむくいをけるであろう。 42わたしの弟子でしであるというのゆえに、このちいさいもののひとりにつめたいみずぱいでもませてくれるものは、よくっておくが、けっしてそのむくいからもれることはない」。

第一一章

1イエスは十二弟子でしにこのようにめいえてから、町々まちまちおしえまたつたえるために、そこをられた。

2さて、ヨハネは獄中ごくちゅうでキリストのみわざについてつたき、自分じぶん弟子でしたちをつかわして、 3イエスにわせた、「『きたるべきかた』はあなたなのですか。それとも、ほかにだれかをつべきでしょうか」。 4イエスはこたえてわれた、「って、あなたがたが見聞みききしていることをヨハネに報告ほうこくしなさい。 5盲人もうじんえ、あしなえはあるき、らい病人びょうにんはきよまり、みみしいはきこえ、死人しにんきかえり、まずしい人々ひとびと福音ふくいんかされている。 6わたしにつまずかないものは、さいわいである」。 7かれらがかえってしまうと、イエスはヨハネのことを群衆ぐんしゅうかたりはじめられた、「あなたがたは、なに荒野あらのてきたのか。かぜらぐあしであるか。 8では、なにてきたのか。やわらかい着物きものをまとったひとか。やわらかい着物きものをまとった人々ひとびとなら、おういえにいる。 9では、なんのためにてきたのか。預言者よげんしゃるためか。そうだ、あなたがたにうが、預言者よげんしゃ以上いじょうものである。
10よ、わたしは使つかいをあなたのさきにつかわし、
あなたのまえに、みちととのえさせるであろう』
いてあるのは、このひとのことである。 11あなたがたによくっておく。おんなんだものなかで、バプテスマのヨハネよりおおきい人物じんぶつおこらなかった。しかし、天国てんごくもっとちいさいものも、かれよりはおおきい。 12バプテスマのヨハネのときからいまいたるまで、天国てんごくはげしくおそわれている。そしてはげしくおそものたちがそれをうばっている。 13すべての預言者よげんしゃ律法りっぽうとが預言よげんしたのは、ヨハネのときまでである。 14そして、もしあなたがたがけいれることをのぞめば、このひとこそは、きたるべきエリヤなのである。 15みみのあるものくがよい。

16いま時代じだいなにくらべようか。それは子供こどもたちが広場ひろばにすわって、ほかの子供こどもたちにびかけ、
17『わたしたちがふえいたのに、
あなたたちはおどってくれなかった。
とむらいのうたうたったのに、
むねってくれなかった』
うのにている。 18なぜなら、ヨハネがきて、べることも、むこともしないと、あれは悪霊あくれいにつかれているのだ、とい、 19またひとがきて、べたりんだりしていると、よ、あれはしょくをむさぼるもの大酒おおざけもの、また取税人しゅぜいにん罪人つみびと仲間なかまだ、とう。しかし、知恵ちえただしいことは、そのはたらきが証明しょうめいする」。

20それからイエスは、数々かずかずちからあるわざがなされたのに、あらためることをしなかった町々まちまちを、めはじめられた。 21「わざわいだ、コラジンよ。わざわいだ、ベツサイダよ。おまえたちのうちでなされたちからあるわざが、もしツロとシドンでなされたなら、かれらはとうのむかしに、荒布あらぬのをまといはいをかぶって、あらためたであろう。 22しかし、おまえたちにっておく。さばきのには、ツロとシドンのほうがおまえたちよりも、えやすいであろう。 23ああ、カペナウムよ、おまえはてんにまでげられようとでもいうのか。黄泉よみにまでおとされるであろう。おまえのなかでなされたちからあるわざが、もしソドムでなされたなら、そのまち今日きょうまでものこっていたであろう。 24しかし、あなたがたにう。さばきのには、ソドムのほうがおまえよりはえやすいであろう」。

25そのときイエスはこえをあげてわれた、「天地てんちしゅなるちちよ。あなたをほめたたえます。これらのこと知恵ちえのあるものかしこものかくして、おさにあらわしてくださいました。 26ちちよ、これはまことにみこころにかなったことでした。 27すべてのことちちからわたしにまかせられています。そして、ものちちのほかにはなく、ちちものは、と、ちちをあらわそうとしてえらんだものとのほかに、だれもありません。

28すべて重荷おもにうて苦労くろうしているものは、わたしのもとにきなさい。あなたがたをやすませてあげよう。 29わたしは柔和にゅうわこころのへりくだったものであるから、わたしのくびきをうて、わたしにまなびなさい。そうすれば、あなたがたのたましいやすみがあたえられるであろう。 30わたしのくびきはいやすく、わたしのかるいからである」。

第一二章

1そのころ、ある安息日あんそくにちに、イエスは麦畑むぎばたけなかとおられた。すると弟子でしたちは、空腹くうふくであったので、んでべはじめた。 2パリサイびとたちがこれをて、イエスにった、「ごらんなさい、あなたの弟子でしたちが、安息日あんそくにちにしてはならないことをしています」。 3そこでイエスはかれらにわれた、「あなたがたは、ダビデとそのともものたちとがえたとき、ダビデがなにをしたかんだことがないのか。 4すなわち、かみいえにはいって、祭司さいしたちのほか、自分じぶんともものたちもべてはならぬそなえのパンをべたのである。 5また、安息日あんそくにち宮仕みやづかえをしている祭司さいしたちは安息日あんそくにちやぶってもつみにはならないことを、律法りっぽうんだことがないのか。 6あなたがたにっておく。みやよりもおおいなるものがここにいる。 7『わたしがこのむのは、あわれみであって、いけにえではない』とはどういう意味いみっていたなら、あなたがたはつみのないものをとがめなかったであろう。 8ひと安息日あんそくにちしゅである」。

9イエスはそこをって、かれらの会堂かいどうにはいられた。 10すると、そのとき、片手かたてのなえたひとがいた。人々ひとびとはイエスをうったえようとおもって、「安息日あんそくにちひとをいやしても、さしつかえないか」とたずねた。 11イエスはかれらにわれた、「あなたがたのうちに、一ぴきひつじっているひとがあるとして、もしそれが安息日あんそくにちあなちこんだなら、をかけてげてやらないだろうか。 12ひとひつじよりも、はるかにすぐれているではないか。だから、安息日あんそくにちいことをするのは、ただしいことである」。 13そしてイエスはそのひとに、「ばしなさい」とわれた。そこでばすと、ほかののようにくなった。 14パリサイびとたちはって、なんとかしてイエスをころそうと相談そうだんした。 15イエスはこれをって、そこをってかれた。ところがおおくの人々ひとびとがついてきたので、かれらをみないやし、 16そして自分じぶんのことを人々ひとびとにあらわさないようにと、かれらをいましめられた。 17これは預言者よげんしゃイザヤのった言葉ことばが、成就じょうじゅするためである、
18よ、わたしがえらんだしもべ
わたしのこころにかなう、あいするもの
わたしはかれにわたしのれいさづけ、
そしてかれ正義せいぎ異邦人いほうじんつたえるであろう。
19かれあらそわず、さけばず、
またそのこえ大路おおじものはない。
20かれ正義せいぎちをさせるときまで、
いためられたあしることがなく、
けむっている燈心とうしんすこともない。
21異邦人いほうじんかれのぞみをくであろう」。

22そのとき、人々ひとびと悪霊あくれいにつかれた盲人もうじんのおしをれてきたので、イエスはかれをいやして、ものい、またえるようにされた。 23すると群衆ぐんしゅうはみなおどろいてった、「このひとが、あるいはダビデのではあるまいか」。 24しかし、パリサイびとたちは、これをいてった、「このひと悪霊あくれいしているのは、まったく悪霊あくれいのかしらベルゼブルによるのだ」。 25イエスはかれらのおもいを見抜みぬいてわれた、「おおよそ、内部ないぶわかあらそくに自滅じめつし、うちわでわかあらそまちいえかない。 26もしサタンがサタンをすならば、それはうちわでわかあらそうことになる。それでは、そのくにはどうしてけよう。 27もしわたしがベルゼブルによって悪霊あくれいすとすれば、あなたがたの仲間なかまはだれによってすのであろうか。だから、かれらがあなたがたをさばくものとなるであろう。 28しかし、わたしがかみれいによって悪霊あくれいしているのなら、かみくにはすでにあなたがたのところにきたのである。 29まただれでも、まずつよひとしばりあげなければ、どうして、そのひといえって家財かざいうばることができようか。しばってから、はじめてそのいえ掠奪りゃくだつすることができる。 30わたしの味方みかたでないものは、わたしに反対はんたいするものであり、わたしとともあつめないものは、らすものである。 31だから、あなたがたにっておく。ひとには、そのおかすすべてのつみかみけが言葉ことばも、ゆるされる。しかし、聖霊せいれいけが言葉ことばは、ゆるされることはない。 32またひとたいしてさからうものは、ゆるされるであろう。しかし、聖霊せいれいたいしてさからうものは、このでも、きたるべきでも、ゆるされることはない。 33ければ、そのいとし、わるければ、そのわるいとせよ。はそのでわかるからである。 34まむしのらよ。あなたがたはわるものであるのに、どうしていことをかたることができようか。おおよそ、こころからあふれることを、くちかたるものである。 35善人ぜんにんはよいくらからものし、悪人あくにんわるくらからわるものす。 36あなたがたにうが、審判しんぱんには、ひとはそのかた無益むえき言葉ことばたいして、ひらきをしなければならないであろう。 37あなたは、自分じぶん言葉ことばによってただしいとされ、また自分じぶん言葉ことばによってつみありとされるからである」。

38そのとき、律法りっぽう学者がくしゃ、パリサイびとのうちのある人々ひとびとがイエスにむかってった、「先生せんせい、わたしたちはあなたから、しるしをせていただきとうございます」。 39すると、かれらにこたえてわれた、「邪悪じゃあく不義ふぎ時代じだいは、しるしをもとめる。しかし、預言者よげんしゃヨナのしるしのほかには、なんのしるしもあたえられないであろう。 40すなわち、ヨナが三ばん大魚たいぎょはらうちにいたように、ひとも三ばんなかにいるであろう。 41ニネベの人々ひとびとが、いま時代じだい人々ひとびとともにさばきのって、かれらをつみさだめるであろう。なぜなら、ニネベの人々ひとびとはヨナの宣教せんきょうによってあらためたからである。しかしよ、ヨナにまさるものがここにいる。 42みなみ女王じょおうが、いま時代じだい人々ひとびとともにさばきのって、かれらをつみさだめるであろう。なぜなら、彼女かのじょはソロモンの知恵ちえくためにはてから、はるばるきたからである。しかしよ、ソロモンにまさるものがここにいる。 43けがれたれいひとからると、やすもとめてみずところあるきまわるが、つからない。 44そこで、てきたもといえかえろうとってかえってると、そのいえはあいていて、そうじがしてあるうえかざりつけがしてあった。 45そこでまたって、自分じぶん以上いじょうわるの七つのれい一緒いっしょれてきてなかにはいり、そこにむ。そうすると、そのひとののちの状態じょうたいはじめよりももっとわるくなるのである。よこしまないま時代じだいも、このようになるであろう」。

46イエスがまだ群衆ぐんしゅうはなしておられるとき、そのはは兄弟きょうだいたちとが、イエスにはなそうとおもってそとっていた。 47それで、あるひとがイエスにった、「ごらんなさい。あなたの母上ははうえ兄弟きょうだいがたが、あなたにはなそうとおもって、そとっておられます」。 48イエスはらせてくれたものこたえてわれた、「わたしのははとは、だれのことか。わたしの兄弟きょうだいとは、だれのことか」。 49そして、弟子でしたちのほうをさしべてわれた、「ごらんなさい。ここにわたしのはは、わたしの兄弟きょうだいがいる。 50てんにいますわたしのちちのみこころをおこなものはだれでも、わたしの兄弟きょうだい、また姉妹しまい、またははなのである」。

第一三章

1その、イエスはいえて、うみべにすわっておられた。 2ところが、おおぜいの群衆ぐんしゅうがみもとにあつまったので、イエスはふねってすわられ、群衆ぐんしゅうはみなきしっていた。 3イエスはたとえおおくのことかたり、こうわれた、「よ、たねまきがたねをまきにった。 4まいているうちに、みちばたにちたたねがあった。すると、とりがきてべてしまった。 5ほかのたねつちうす石地いしじちた。そこはつちふかくないので、すぐしたが、 6のぼるとけて、がないためにれてしまった。 7ほかのたねはいばらのちた。すると、いばらがびて、ふさいでしまった。 8ほかのたねちてむすび、あるものは百ばい、あるものは六十ばい、あるものは三十ばいにもなった。 9みみのあるものくがよい」。

10それから、弟子でしたちがイエスに近寄ちかよってきてった、「なぜ、かれらにたとえでおはなしになるのですか」。 11そこでイエスはこたえてわれた、「あなたがたには、天国てんごく奥義おくぎることがゆるされているが、かれらにはゆるされていない。 12おおよそ、っているひとあたえられて、いよいよゆたかになるが、っていないひとは、っているものまでもげられるであろう。 13だから、かれらにはたとえかたるのである。それはかれらが、てもず、いてもかず、またさとらないからである。 14こうしてイザヤのった預言よげんが、かれらのうえ成就じょうじゅしたのである。
『あなたがたはくにはくが、けっしてさとらない。
るにはるが、けっしてみとめない。
15このたみこころにぶくなり、
そのみみきこえにくく、
そのじている。
それは、かれらがず、みみかず、こころさとらず、
あらためていやされることがないためである』。

16しかし、あなたがたのており、みみいているから、さいわいである。 17あなたがたによくっておく。おおくの預言者よげんしゃ義人ぎじんは、あなたがたのていることをようと熱心ねっしんねがったが、ることができず、またあなたがたのいていることをこうとしたが、けなかったのである。 18そこで、たねまきのたとえきなさい。 19だれでも御国みくにことばいてさとらないならば、わるものがきて、そのひとこころにまかれたものをうばいとってく。みちばたにまかれたものというのは、そういうひとのことである。 20石地いしじにまかれたものというのは、御言みことばくと、すぐによろこんでけるひとのことである。 21そのなかがないので、しばらくつづくだけであって、御言みことばのために困難こんなん迫害はくがいおこってくると、すぐつまずいてしまう。 22また、いばらのなかにまかれたものとは、御言みことばくが、こころづかいととみまどわしとが御言みことばをふさぐので、むすばなくなるひとのことである。 23また、にまかれたものとは、御言みことばいてさとひとのことであって、そういうひとむすび、百ばい、あるいは六十ばい、あるいは三十ばいにもなるのである」。

24また、ほかのたとえかれらにしめしてわれた、「天国てんごくは、たね自分じぶんはたけにまいておいたひとのようなものである。 25人々ひとびとねむっているあいだてきがきて、むぎなかどくむぎをまいてった。 26がはえむすぶと、同時どうじどくむぎもあらわれてきた。 27しもべたちがきて、いえ主人しゅじんった、『ご主人様しゅじんさまはたけにおまきになったのは、たねではありませんでしたか。どうしてどくむぎがはえてきたのですか』。 28主人しゅじんった、『それはてきのしわざだ』。するとしもべたちがった『ではって、それをあつめましょうか』。 29かれった、『いや、どくむぎあつめようとして、むぎ一緒いっしょくかもれない。 30収穫しゅうかくまで、両方りょうほうともそだつままにしておけ。収穫しゅうかくときになったら、ものに、まずどくむぎあつめてたばにしてき、むぎほうあつめてくられてくれ、といつけよう』」。

31また、ほかのたとえかれらにしめしてわれた、「天国てんごくは、一つぶのからしだねのようなものである。あるひとがそれをとってはたけにまくと、 32それはどんなたねよりもちいさいが、成長せいちょうすると、野菜やさいなかでいちばんおおきくなり、そらとりがきて、そのえだ宿やどるほどのになる」。

33またほかのたとえかれらにかたられた、「天国てんごくは、パンたねのようなものである。おんながそれをって三こななかぜると、全体ぜんたいがふくらんでくる」。

34イエスはこれらのことをすべて、たとえ群衆ぐんしゅうかたられた。たとえによらないでは何事なにごとかれらにかたられなかった。 35これは預言者よげんしゃによってわれたことが、成就じょうじゅするためである、
「わたしはくちひらいてたとえかたり、
はじめからかくされていることをかたそう」。

36それからイエスは、群衆ぐんしゅうをあとにのこしていえにはいられた。すると弟子でしたちは、みもとにきてった、「はたけどくむぎたとえ説明せつめいしてください」。 37イエスはこたえてわれた、「たねをまくものは、ひとである。 38はたけ世界せかいである。たねうのは御国みくにたちで、どくむぎわるものたちである。 39それをまいたてき悪魔あくまである。収穫しゅうかくとはおわりのことで、もの御使みつかいたちである。 40だから、どくむぎあつめられてかれるように、おわりにもそのとおりになるであろう。 41ひとはその使つかいたちをつかわし、つまずきとなるものと不法ふほうおこなものとを、ことごとく御国みくにからとりあつめて、 42れさせるであろう。そこではさけんだり、がみをしたりするであろう。 43そのとき、義人ぎじんたちはかれらのちち御国みくにで、太陽たいようのようにかがやきわたるであろう。みみのあるものくがよい。

44天国てんごくは、はたけかくしてあるたからのようなものである。ひとがそれをつけるとかくしておき、よろこびのあまり、ってものをみなりはらい、そしてそのはたけうのである。

45また天国てんごくは、真珠しんじゅさがしている商人しょうにんのようなものである。 46高価こうか真珠しんじゅいだすと、ってものをみなりはらい、そしてこれをうのである。

47また天国てんごくは、うみにおろして、あらゆる種類しゅるいうおかこみいれるあみのようなものである。 48それがいっぱいになるときしげ、そしてすわって、いのをうつわれ、わるいのをそとてるのである。 49おわりにも、そのとおりになるであろう。すなわち、御使みつかいたちがきて、義人ぎじんのうちから悪人あくにんをえりけ、 50そしてげこむであろう。そこではさけんだり、がみをしたりするであろう。

51あなたがたは、これらのことがみなわかったか」。かれらは「わかりました」とこたえた。 52そこで、イエスはかれらにわれた、「それだから、天国てんごくのことをまなんだ学者がくしゃは、あたらしいものとふるいものとを、そのくらから一家いっか主人しゅじんのようなものである」。

53イエスはこれらのたとえかたえてから、そこをられた。 54そして郷里きょうりき、会堂かいどう人々ひとびとおしえられたところ、かれらはおどろいてった、「このひとは、この知恵ちえとこれらのちからあるわざとを、どこでならってきたのか。 55このひと大工だいくではないか。はははマリヤといい、兄弟きょうだいたちは、ヤコブ、ヨセフ、シモン、ユダではないか。 56またその姉妹しまいたちもみな、わたしたちと一緒いっしょにいるではないか。こんな数々かずかずのことを、いったい、どこでならってきたのか」。 57こうして人々ひとびとはイエスにつまずいた。しかし、イエスはわれた、「預言者よげんしゃは、自分じぶん郷里きょうり自分じぶんいえ以外いがいでは、どこででもうやまわれないことはない」。 58そしてかれらの信仰しんこうのゆえに、そこではちからあるわざを、あまりなさらなかった。

第一四章

1そのころ、領主りょうしゅヘロデはイエスのうわさをいて、 2家来けらいった、「あれはバプテスマのヨハネだ。死人しにんなかからよみがえったのだ。それで、あのようなちからかれのうちにはたらいているのだ」。 3というのは、ヘロデはさきに、自分じぶん兄弟きょうだいピリポのつまヘロデヤのことで、ヨハネをとらえてしばり、ごくれていた。 4すなわち、ヨハネはヘロデに、「そのおんなをめとるのは、よろしくない」とったからである。 5そこでヘロデはヨハネをころそうとおもったが、群衆ぐんしゅうおそれた。かれらがヨハネを預言者よげんしゃみとめていたからである。 6さてヘロデの誕生たんじょういわいに、ヘロデヤのむすめがその席上せきじょうまいをまい、ヘロデをよろこばせたので、 7彼女かのじょねがうものは、なんでもあたえようと、かれちかって約束やくそくまでした。 8すると彼女かのじょははにそそのかされて、「バプテスマのヨハネのくびぼんせて、ここにってきていただきとうございます」とった。 9おうこまったが、いったんちかったのと、また列座れつざひとたちの手前てまえ、それをあたえるようにめいじ、 10ひとをつかわして、獄中ごくちゅうでヨハネのくびらせた。 11そのくびぼんせてはこばれ、少女しょうじょにわたされ、少女しょうじょはそれをははのところにってった。 12それから、ヨハネの弟子でしたちがきて、死体したいってほうむった。そして、イエスのところにって報告ほうこくした。

13イエスはこのことをくと、ふねってそこをり、自分じぶんひとりでさびしいところかれた。しかし、群衆ぐんしゅうはそれといて、町々まちまちから徒歩とほであとをってきた。 14イエスはふねからがって、おおぜいの群衆ぐんしゅうをごらんになり、かれらをふかくあわれんで、そのうちの病人びょうにんたちをおいやしになった。 15夕方ゆうがたになったので、弟子でしたちがイエスのもとにきてった、「ここはさびしいところでもあり、もうときもおそくなりました。群衆ぐんしゅう解散かいさんさせ、めいめいで食物しょくもついに、村々むらむらかせてください」。 16するとイエスはわれた、「かれらがかけてくにはおよばない。あなたがたの食物しょくもつをやりなさい」。 17弟子でしたちはった、「わたしたちはここに、パン五つとうお二ひきしかっていません」。 18イエスはわれた、「それをここにってきなさい」。 19そして群衆ぐんしゅうめいじて、くさうえにすわらせ、五つのパンと二ひきのうおとをり、てんあおいでそれを祝福しゅくふくし、パンをさいて弟子でしたちにわたされた。弟子でしたちはそれを群衆ぐんしゅうあたえた。 20みんなのものべて満腹まんぷくした。パンくずののこりをあつめると、十二のかごにいっぱいになった。 21べたものは、おんな子供こどもとをのぞいて、おおよそ五千にんであった。

22それからすぐ、イエスは群衆ぐんしゅう解散かいさんさせておられるあいだに、しいて弟子でしたちをふねませ、こうぎしさきにおやりになった。 23そして群衆ぐんしゅう解散かいさんさせてから、いのるためひそかにやまのぼられた。夕方ゆうがたになっても、ただひとりそこにおられた。 24ところがふねは、もうすでにりくから数丁すうちょうはなれており、逆風ぎゃくふういていたために、なみなやまされていた。 25イエスは夜明よあけの四ごろ、うみうえあるいてかれらのほうかれた。 26弟子でしたちは、イエスがうみうえあるいておられるのをて、幽霊ゆうれいだとっておじまどい、恐怖きょうふのあまりさけごえをあげた。 27しかし、イエスはすぐにかれらにこえをかけて、「しっかりするのだ、わたしである。おそれることはない」とわれた。 28するとペテロがこたえてった、「しゅよ、あなたでしたか。では、わたしにめいじて、みずうえわたってみもとにかせてください」。 29イエスは、「おいでなさい」とわれたので、ペテロはふねからおり、みずうえあるいてイエスのところへった。 30しかし、かぜおそろしくなり、そしておぼれかけたので、かれさけんで、「しゅよ、おたすけください」とった。 31イエスはすぐにばし、かれをつかまえてわれた、「信仰しんこううすものよ、なぜうたがったのか」。 32ふたりがふねむと、かぜはやんでしまった。 33ふねなかにいたものたちはイエスをはいして、「ほんとうに、あなたはかみです」とった。

34それから、かれらはうみわたってゲネサレのいた。 35するとその土地とち人々ひとびとはイエスとって、その附近ふきん全体ぜんたいひとをつかわし、イエスのところに病人びょうにんをみなれてこさせた。 36そしてかれらにイエスの上着うわぎのふさにでも、さわらせてやっていただきたいとおねがいした。そしてさわったものみないやされた。

第一五章

1ときに、パリサイびと律法りっぽう学者がくしゃたちとが、エルサレムからイエスのもとにきてった、 2「あなたの弟子でしたちは、なぜむかし人々ひとびと言伝いいつたえをやぶるのですか。かれらは食事しょくじときあらっていません」。 3イエスはこたえてわれた、「なぜ、あなたがたも自分じぶんたちの言伝いいつたえによって、かみのいましめをやぶっているのか。 4かみわれた、『ちちははとをうやまえ』、また『ちちまたはははをののしるものは、かならさだめられる』と。 5それだのに、あなたがたは『だれでもちちまたはははにむかって、あなたにさしあげるはずのこのものはそなものです、とえば、 6ちちまたはははうやまわなくてもよろしい』とっている。こうしてあなたがたは自分じぶんたちの言伝いいつたえによって、かみことばにしている。 7偽善者ぎぜんしゃたちよ、イザヤがあなたがたについて、こういう適切てきせつ預言よげんをしている、
8『このたみは、くちさきではわたしをうやまうが、
そのこころはわたしからとおはなれている。
9人間にんげんのいましめをおしえとしておしえ、
無意味むいみにわたしをおがんでいる』」。

10それからイエスは群衆ぐんしゅうせてわれた、「いてさとるがよい。 11くちにはいるものはひとけがすことはない。かえって、くちからるものがひとけがすのである」。 12そのとき、弟子でしたちが近寄ちかよってきてイエスにった、「パリサイびとたちが御言みことばいてつまずいたことを、ごぞんじですか」。 13イエスはこたえてわれた、「わたしのてんちちがおえにならなかったものは、みなられるであろう。 14かれらをそのままにしておけ。かれらは盲人もうじん手引てびきする盲人もうじんである。もし盲人もうじん盲人もうじん手引てびきするなら、ふたりともあなむであろう」。 15ペテロがこたえてった、「そのたとえ説明せつめいしてください」。 16イエスはわれた、「あなたがたも、まだわからないのか。 17くちにはいってくるものは、みなはらなかにはいり、そして、そとくことをらないのか。 18しかし、くちからくものは、こころなかからてくるのであって、それがひとけがすのである。 19というのは、わるおもい、すなわち、殺人さつじん姦淫かんいん不品行ふひんこうぬすみ、偽証ぎしょうそしりは、こころなかからてくるのであって、 20これらのものがひとけがすのである。しかし、あらわない食事しょくじすることは、ひとけがすのではない」。

21さて、イエスはそこをて、ツロとシドンとの地方ちほうかれた。 22すると、そこへ、その地方ちほうのカナンのおんなてきて、「しゅよ、ダビデのよ、わたしをあわれんでください。むすめ悪霊あくれいにとりつかれてくるしんでいます」とってさけびつづけた。 23しかし、イエスはひとこともおこたえにならなかった。そこで弟子でしたちがみもとにきてねがってった、「このおんなはらってください。さけびながらついてきていますから」。 24するとイエスはこたえてわれた、「わたしは、イスラエルのいえうしなわれたひつじ以外いがいものには、つかわされていない」。 25しかし、おんな近寄ちかよりイエスをはいしてった、「しゅよ、わたしをおたすけください」。 26イエスはこたえてわれた、「子供こどもたちのパンをって小犬こいぬげてやるのは、よろしくない」。 27するとおんなった、「しゅよ、お言葉ことばどおりです。でも、小犬こいぬもその主人しゅじん食卓しょくたくからちるパンくずは、いただきます」。 28そこでイエスはこたえてわれた、「おんなよ、あなたの信仰しんこうあげたものである。あなたのねがいどおりになるように」。そのときに、むすめはいやされた。

29イエスはそこをって、ガリラヤのうみべにき、それからやまのぼってそこにすわられた。 30するとおおぜいの群衆ぐんしゅうが、あしなえ、不具者ふぐしゃ盲人もうじん、おし、そのほかおおくの人々ひとびとれてきて、イエスのあしもとにいたので、かれらをおいやしになった。 31群衆ぐんしゅうは、おしがものい、不具者ふぐしゃなおり、あしなえがあるき、盲人もうじんえるようになったのをおどろき、そしてイスラエルのかみをほめたたえた。

32イエスは弟子でしたちをせてわれた、「この群衆ぐんしゅうがかわいそうである。もう三日間かかんもわたしと一緒いっしょにいるのに、なにべるものがない。しかし、かれらを空腹くうふくのままでかえらせたくはない。おそらく途中とちゅうよわってしまうであろう」。 33弟子でしたちはった、「荒野あらのなかで、こんなにおおぜいの群衆ぐんしゅうにじゅうぶんべさせるほどたくさんのパンを、どこでれましょうか」。 34イエスは弟子でしたちに「パンはいくつあるか」とたずねられると、「七つあります。またちいさいうおすこしあります」とこたえた。 35そこでイエスは群衆ぐんしゅうに、にすわるようにとめいじ、 36七つのパンとうおとをり、感謝かんしゃしてこれをさき、弟子でしたちにわたされ、弟子でしたちはこれを群衆ぐんしゅうにわけた。 37一同いちどうものべて満腹まんぷくした。そしてのこったパンくずをあつめると、七つのかごにいっぱいになった。 38べたものは、おんな子供こどもとをのぞいて四千にんであった。 39そこでイエスは群衆ぐんしゅう解散かいさんさせ、ふねってマガダンの地方ちほうかれた。

第一六章

1パリサイびととサドカイびととが近寄ちかよってきて、イエスをこころみ、てんからのしるしをせてもらいたいとった。 2イエスはかれらにわれた、「あなたがたは夕方ゆうがたになると、『そらがまっかだから、はれだ』とい、 3またがたには『そらくもってまっかだから、きょうはれだ』とう。あなたがたはそら模様もよう見分みわけることをりながら、ときのしるしを見分みわけることができないのか。 4邪悪じゃあく不義ふぎ時代じだいは、しるしをもとめる。しかし、ヨナのしるしのほかには、なんのしるしもあたえられないであろう」。そして、イエスはかれらをあとにのこしてられた。

5弟子でしたちはこうぎしったが、パンをってるのをわすれていた。 6そこでイエスはわれた、「パリサイびととサドカイびととのパンだねを、よくよく警戒けいかいせよ」。 7弟子でしたちは、これは自分じぶんたちがパンをってこなかったためであろうとって、たがいろんった。 8イエスはそれとってわれた、「信仰しんこううすものたちよ、なぜパンがないからだとたがいろんっているのか。 9まだわからないのか。おぼえていないのか。五つのパンを五千にんけたとき、いくかごひろったか。 10また、七つのパンを四千にんけたとき、いくかごひろったか。 11わたしがったのは、パンについてではないことを、どうしてさとらないのか。ただ、パリサイびととサドカイびととのパンだね警戒けいかいしなさい」。 12そのときかれらは、イエスが警戒けいかいせよとわれたのは、パンだねのことではなく、パリサイびととサドカイびととのおしえのことであるとさとった。

13イエスがピリポ・カイザリヤの地方ちほうかれたとき、弟子でしたちにたずねてわれた、「人々ひとびとひとをだれとっているか」。 14かれらはった、「ある人々ひとびとはバプテスマのヨハネだとっています。しかし、ほかのひとたちは、エリヤだとい、また、エレミヤあるいは預言者よげんしゃのひとりだ、とっているものもあります」。 15そこでイエスはかれらにわれた、「それでは、あなたがたはわたしをだれとうか」。 16シモン・ペテロがこたえてった、「あなたこそ、けるかみキリストです」。 17すると、イエスはかれにむかってわれた、「バルヨナ・シモン、あなたはさいわいである。あなたにこのことをあらわしたのは、血肉けつにくではなく、てんにいますわたしのちちである。 18そこで、わたしもあなたにう。あなたはペテロである。そして、わたしはこのいわうえにわたしの教会きょうかいてよう。黄泉よみちからもそれにつことはない。 19わたしは、あなたに天国てんごくのかぎをさづけよう。そして、あなたが地上ちじょうでつなぐことは、てんでもつながれ、あなたが地上ちじょうくことはてんでもかれるであろう」。 20そのとき、イエスは、自分じぶんがキリストであることをだれにもってはいけないと、弟子でしたちをいましめられた。

21このときから、イエス・キリストは、自分じぶんかならずエルサレムにき、長老ちょうろう祭司長さいしちょう律法りっぽう学者がくしゃたちからおおくのくるしみをけ、ころされ、そして三によみがえるべきことを、弟子でしたちにしめしはじめられた。 22すると、ペテロはイエスをわきへせて、いさめはじめ、「しゅよ、とんでもないことです。そんなことがあるはずはございません」とった。 23イエスはいて、ペテロにわれた、「サタンよ、きさがれ。わたしの邪魔じゃまをするものだ。あなたはかみのことをおもわないで、ひとのことをおもっている」。 24それからイエスは弟子でしたちにわれた、「だれでもわたしについてきたいとおもうなら、自分じぶんて、自分じぶん十字架じゅうじかうて、わたしにしたがってきなさい。 25自分じぶんいのちすくおうとおもものはそれをうしない、わたしのために自分じぶんいのちうしなものは、それをいだすであろう。 26たといひとぜん世界せかいをもうけても、自分じぶんいのちそんしたら、なんのとくになろうか。また、ひとはどんな代価だいかはらって、そのいのちいもどすことができようか。 27ひとちち栄光えいこうのうちに、御使みつかいたちをしたがえてるが、そのときには、実際じっさいのおこないにおうじて、それぞれにむくいるであろう。 28よくいておくがよい、ひと御国みくにちからをもってるのをるまでは、あじわわないものが、ここにっているものなかにいる」。

第一七章

1六日むいかののち、イエスはペテロ、ヤコブ、ヤコブの兄弟きょうだいヨハネだけをれて、たかやまのぼられた。 2ところが、かれらのまえでイエスの姿すがたかわり、そのかおのようにかがやき、そのころもひかりのようにしろくなった。 3すると、よ、モーセとエリヤがかれらにあらわれて、イエスとかたっていた。 4ペテロはイエスにむかってった、「しゅよ、わたしたちがここにいるのは、すばらしいことです。もし、おさしつかえなければ、わたしはここに小屋こやを三つてましょう。一つはあなたのために、一つはモーセのために、一つはエリヤのために」。 5かれがまだはなえないうちに、たちまち、かがやくもかれらをおおい、そしてくもなかからこえがした、「これはわたしのあいする、わたしのこころにかなうものである。これにけ」。 6弟子でしたちはこれをいて非常ひじょうおそれ、かおせた。 7イエスはちかづいてきて、かれらにおいてわれた、「きなさい、おそれることはない」。 8かれらがをあげると、イエスのほかには、だれもえなかった。

9一同いちどうやまくだってるとき、イエスは「ひと死人しにんなかからよみがえるまでは、いまたことをだれにもはなしてはならない」と、かれらにめいじられた。 10弟子でしたちはイエスにおたずねしてった、「いったい、律法りっぽう学者がくしゃたちは、なぜ、エリヤがさきるはずだとっているのですか」。 11こたえてわれた、「たしかに、エリヤがきて、万事ばんじもとどおりにあらためるであろう。 12しかし、あなたがたにっておく。エリヤはすでにきたのだ。しかし人々ひとびとかれみとめず、自分じぶんかってにかれをあしらった。ひともまた、そのようにかれらからくるしみをけることになろう」。 13そのとき、弟子でしたちは、イエスがバプテスマのヨハネのことをわれたのだとさとった。

14さてかれらが群衆ぐんしゅうのところにかえると、ひとりのひとがイエスに近寄ちかよってきて、ひざまずいて、った、 15しゅよ、わたしのをあわれんでください。てんかんでくるしんでおります。なんなんなかみずなかたおれるのです。 16それで、そのをお弟子でしたちのところにれてきましたが、なおしていただけませんでした」。 17イエスはこたえてわれた、「ああ、なんという信仰しんこうな、まがった時代じだいであろう。いつまで、わたしはあなたがたと一緒いっしょにおられようか。いつまであなたがたに我慢がまんができようか。そのをここに、わたしのところにれてきなさい」。 18イエスがおしかりになると、悪霊あくれいはそのからった。そしてはそのときいやされた。 19それから、弟子でしたちがひそかにイエスのもとにきてった、「わたしたちは、どうしてれいせなかったのですか」。 20するとイエスはわれた、「あなたがたの信仰しんこうりないからである。よくかせておくが、もし、からしだねつぶほどの信仰しんこうがあるなら、このやまにむかって『ここからあそこにうつれ』とえば、うつるであろう。このように、あなたがたにできないことは、なにもないであろう。〔 21しかし、このたぐいは、いのり断食だんじきとによらなければ、すことはできない〕」。

22かれらがガリラヤであつまっていたとき、イエスはわれた、「ひと人々ひとびとにわたされ、 23かれらにころされ、そして三によみがえるであろう」。弟子でしたちは非常ひじょうこころをいためた。

24かれらがカペナウムにきたとき、みや納入のうにゅうきんあつめるひとたちがペテロのところにきてった、「あなたがたの先生せんせいみや納入のうにゅうきんおさめないのか」。 25ペテロは「おさめておられます」とった。そしてかれいえにはいると、イエスからさきはなしかけてわれた、「シモン、あなたはどうおもうか。このおうたちはぜいみつぎをだれからるのか。自分じぶんからか、それとも、ほかのひとたちからか」。 26ペテロが「ほかのひとたちからです」とこたえると、イエスはわれた、「それでは、おさめなくてもよいわけである。 27しかし、かれらをつまずかせないために、うみって、つりはりをたれなさい。そして最初さいしょにつれたうおをとって、そのくちをあけると、銀貨ぎんかまいつかるであろう。それをとりして、わたしとあなたのためにおさめなさい」。

第一八章

1そのとき、弟子でしたちがイエスのもとにきてった、「いったい、天国てんごくではだれがいちばんえらいのですか」。 2すると、イエスはおさせ、かれらのまんなかたせてわれた、 3「よくきなさい。こころをいれかえておさのようにならなければ、天国てんごくにはいることはできないであろう。 4このおさのように自分じぶんひくくするものが、天国てんごくでいちばんえらいのである。 5また、だれでも、このようなひとりのおさを、わたしののゆえにけいれるものは、わたしをけいれるのである。 6しかし、わたしをしんずるこれらのちいさいもののひとりをつまずかせるものは、おおきなひきうすをくびにかけられてうみふかみにしずめられるほうが、そのひとえきになる。 7このは、つみ誘惑ゆうわくがあるから、わざわいである。つみ誘惑ゆうわくかならる。しかし、それをきたらせるひとは、わざわいである。 8もしあなたの片手かたてまたは片足かたあしが、つみおかさせるなら、それをっててなさい。両手りょうて両足りょうあしがそろったままで、永遠えいえんまれるよりは、片手かたて片足かたあしになっていのちはいほうがよい。 9もしあなたの片目かためつみおかさせるなら、それをしててなさい。りょうがんがそろったままで地獄じごくれられるよりは、片目かためになっていのちはいほうがよい。 10あなたがたは、これらのちいさいもののひとりをもかろんじないように、をつけなさい。あなたがたにうが、かれらの御使みつかいたちはてんにあって、てんにいますわたしのちちのみかおをいつもあおいでいるのである。〔 11ひとは、ほろびるものすくうためにきたのである。〕 12あなたがたはどうおもうか。あるひとに百ぴきひつじがあり、そのなかの一ぴきまよたとすれば、九十九ひきやまのこしておいて、そのまよているひつじさがしにかけないであろうか。 13もしそれをつけたなら、よくきなさい、まよわないでいる九十九ひきのためよりも、むしろその一ぴきのためによろこぶであろう。 14そのように、これらのちいさいもののひとりがほろびることは、てんにいますあなたがたのちちのみこころではない。

15もしあなたの兄弟きょうだいつみおかすなら、って、かれとふたりだけのところ忠告ちゅうこくしなさい。もしいてくれたら、あなたの兄弟きょうだいたことになる。 16もしいてくれないなら、ほかにひとりふたりを、一緒いっしょれてきなさい。それは、ふたりまたは三にん証人しょうにんくちによって、すべてのことがらがたしかめられるためである。 17もしかれらのうことをかないなら、教会きょうかいもうなさい。もし教会きょうかいうこともかないなら、そのひと異邦人いほうじんまたは取税人しゅぜいにん同様どうようあつかいなさい。 18よくっておく。あなたがたが地上ちじょうでつなぐことは、てんでもみなつながれ、あなたがたが地上ちじょうくことは、てんでもみなかれるであろう。 19また、よくっておく。もしあなたがたのうちのふたりが、どんなねがごとについても地上ちじょうこころわせるなら、てんにいますわたしのちちはそれをかなえてくださるであろう。 20ふたりまたは三にんが、わたしのによってあつまっているところには、わたしもそのなかにいるのである」。

21そのとき、ペテロがイエスのもとにきてった、「しゅよ、兄弟きょうだいがわたしにたいしてつみおかした場合ばあいいくたびゆるさねばなりませんか。七たびまでですか」。 22イエスはかれわれた、「わたしは七たびまでとはわない。七たびを七十ばいするまでにしなさい。 23それだから、天国てんごくおうしもべたちと決算けっさんをするようなものだ。 24決算けっさんはじまると、一万タラントの負債ふさいのあるものが、おうのところにれられてきた。 25しかし、かえせなかったので、主人しゅじんは、そのひと自身じしんとその妻子さいしもの全部ぜんぶとをってかえすようにめいじた。 26そこで、このしもべはひれして哀願あいがんした、『どうぞおちください。全部ぜんぶかえしいたしますから』。 27しもべ主人しゅじんはあわれにおもって、かれをゆるし、その負債ふさいめんじてやった。 28そのしもべくと、百デナリをしているひとりの仲間なかま出会であい、かれをつかまえ、くびをしめて『借金しゃっきんかえせ』とった。 29そこでこの仲間なかまはひれし、『どうかってくれ。かえすから』とってたのんだ。 30しかし承知しょうちせずに、そのひとをひっぱってって、借金しゃっきんかえすまでごくれた。 31そのひと仲間なかまたちは、この様子ようすて、非常ひじょうこころをいため、ってそのことをのこらず主人しゅじんはなした。 32そこでこの主人しゅじんかれびつけてった、『わるしもべ、わたしにねがったからこそ、あの負債ふさい全部ぜんぶゆるしてやったのだ。 33わたしがあわれんでやったように、あの仲間なかまをあわれんでやるべきではなかったか』。 34そして主人しゅじん立腹りっぷくして、負債ふさい全部ぜんぶかえしてしまうまで、かれ獄吏ごくりきわたした。 35あなたがためいめいも、もしこころから兄弟きょうだいをゆるさないならば、わたしのてんちちもまたあなたがたにたいして、そのようになさるであろう」。

第一九章

1イエスはこれらのことをかたえられてから、ガリラヤをってヨルダンのこうのユダヤの地方ちほうかれた。 2するとおおぜいの群衆ぐんしゅうがついてきたので、かれらをそこでおいやしになった。

3さてパリサイびとたちがちかづいてきて、イエスをこころみようとしてった、「なにかの理由りゆうで、おっとがそのつますのは、さしつかえないでしょうか」。 4イエスはこたえてわれた、「あなたがたはまだんだことがないのか。『創造者そうぞうしゃはじめからひとおとこおんなとにつくられ、 5そしてわれた、それゆえに、ひと父母ふぼはなれ、そのつまむすばれ、ふたりのもの一体いったいとなるべきである』。 6かれらはもはや、ふたりではなく一体いったいである。だから、かみわせられたものを、ひとはなしてはならない」。 7かれらはイエスにった、「それでは、なぜモーセは、つま場合ばあいには離縁りえんじょうわたせ、とさだめたのですか」。 8イエスがわれた、「モーセはあなたがたのこころが、かたくななので、つますことをゆるしたのだが、はじめからそうではなかった。 9そこでわたしはあなたがたにう。不品行ふひんこうのゆえでなくて、自分じぶんつましておんなをめとるものは、姦淫かんいんおこなうのである」。 10弟子でしたちはった、「もしつまたいするおっと立場たちばがそうだとすれば、結婚けっこんしないほうがましです」。 11するとイエスはかれらにわれた、「その言葉ことばけいれることができるのはすべてのひとではなく、ただそれをさづけられている人々ひとびとだけである。 12というのは、はは胎内たいないから独身者どくしんしゃうまれついているものがあり、またほかから独身者どくしんしゃにされたものもあり、また天国てんごくのために、みずからすすんで独身者どくしんしゃとなったものもある。この言葉ことばけられるものは、けいれるがよい」。

13そのとき、イエスにをおいていのっていただくために、人々ひとびとおさらをみもとにれてきた。ところが、弟子でしたちはかれらをたしなめた。 14するとイエスはわれた、「おさらをそのままにしておきなさい。わたしのところにるのをとめてはならない。天国てんごくはこのようなものくにである」。 15そしてかれらのうえにおいてから、そこをってかれた。

16すると、ひとりのひとがイエスに近寄ちかよってきてった、「先生せんせい永遠えいえん生命せいめいるためには、どんなよいことをしたらいいでしょうか」。 17イエスはわれた、「なぜよいことについてわたしにたずねるのか。よいかたはただひとりだけである。もしいのちはいりたいとおもうなら、いましめをまもりなさい」。 18かれった、「どのいましめですか」。イエスはわれた、「『ころすな、姦淫かんいんするな、ぬすむな、偽証ぎしょうてるな。 19ちちははとをうやまえ』。また『自分じぶんあいするように、あなたのとなひとあいせよ』」。 20この青年せいねんはイエスにった、「それはみなまもってきました。ほかになにりないのでしょう」。 21イエスはかれわれた、「もしあなたが完全かんぜんになりたいとおもうなら、かえってあなたのものはらい、まずしい人々ひとびとほどこしなさい。そうすれば、てんたからつようになろう。そして、わたしにしたがってきなさい」。 22この言葉ことばいて、青年せいねんかなしみながらった。たくさんの資産しさんっていたからである。

23それからイエスは弟子でしたちにわれた、「よくきなさい。んでいるもの天国てんごくにはいるのは、むずかしいものである。 24また、あなたがたにうが、んでいるものかみくににはいるよりは、らくだがはりあなとおほうが、もっとやさしい」。 25弟子でしたちはこれをいて非常ひじょうおどろいてった、「では、だれがすくわれることができるのだろう」。 26イエスはかれらをつめてわれた、「ひとにはそれはできないが、かみにはなんでもできないことはない」。 27そのとき、ペテロがイエスにこたえてった、「ごらんなさい、わたしたちはいっさいをてて、あなたにしたがいました。ついては、なにがいただけるでしょうか」。 28イエスはかれらにわれた、「よくいておくがよい。あらたまって、ひとがその栄光えいこうにつくときには、わたしにしたがってきたあなたがたもまた、十二のくらいしてイスラエルの十二の部族ぶぞくをさばくであろう。 29おおよそ、わたしののために、いえ兄弟きょうだい姉妹しまいちちはは、もしくははたけてたものは、そのいくばいもをけ、また永遠えいえん生命せいめいけつぐであろう。 30しかし、おおくのさきものはあとになり、あとのものさきになるであろう。

第二〇章

1天国てんごくは、あるいえ主人しゅじんが、自分じぶんのぶどうえん労働者ろうどうしゃやとうために、けると同時どうじに、かけてくようなものである。 2かれ労働者ろうどうしゃたちと、一にち一デナリの約束やくそくをして、かれらをぶどうえんおくった。 3それから九ごろにって、人々ひとびと市場いちばなにもせずにっているのをた。 4そして、そのひとたちにった、『あなたがたも、ぶどうえんきなさい。相当そうとう賃銀ちんぎんはらうから』。 5そこで、かれらはかけてった。主人しゅじんはまた、十二ごろと三ごろとにって、おなじようにした。 6ときごろまたくと、まだっている人々ひとびとたので、かれらにった、『なぜ、なにもしないで、一にちぢゅうここにっていたのか』。 7かれらが『だれもわたしたちをやとってくれませんから』とこたえたので、その人々ひとびとった、『あなたがたも、ぶどうえんきなさい』。 8さて、夕方ゆうがたになって、ぶどうえん主人しゅじん管理人かんりにんった、『労働者ろうどうしゃたちをびなさい。そして、最後さいごにきた人々ひとびとからはじめて順々じゅんじゅん最初さいしょにきた人々ひとびとにわたるように、賃銀ちんぎんはらってやりなさい』。 9そこで、五ときごろにやとわれた人々ひとびとがきて、それぞれ一デナリずつもらった。 10ところが、最初さいしょ人々ひとびとがきて、もっとおおくもらえるだろうとおもっていたのに、かれらも一デナリずつもらっただけであった。 11もらったとき、いえ主人しゅじんにむかって不平ふへいをもらして 12った、『この最後さいごものたちは一時間じかんしかはたらかなかったのに、あなたは一にちじゅう、労苦ろうくあつさを辛抱しんぼうしたわたしたちとおなあつかいをなさいました』。 13そこでかれはそのひとりにこたえてった、『ともよ、わたしはあなたにたいして不正ふせいをしてはいない。あなたはわたしと一デナリの約束やくそくをしたではないか。 14自分じぶん賃銀ちんぎんをもらってきなさい。わたしは、この最後さいごものにもあなたと同様どうようはらってやりたいのだ。 15自分じぶんもの自分じぶんがしたいようにするのは、あたりまえではないか。それともわたしが気前きまえよくしているので、ねたましくおもうのか』。 16このように、あとのものさきになり、さきものはあとになるであろう」。

17さて、イエスはエルサレムへのぼるとき、十二弟子でしをひそかにびよせ、その途中とちゅうかれらにわれた、 18よ、わたしたちはエルサレムへのぼってくが、ひと祭司長さいしちょう律法りっぽう学者がくしゃたちのわたされるであろう。かれらはかれ死刑しけい宣告せんこくし、 19そしてかれをあざけり、むちち、十字架じゅうじかにつけさせるために、異邦人いほうじんきわたすであろう。そしてかれは三によみがえるであろう」。

20そのとき、ゼベダイのらのははが、そのらと一緒いっしょにイエスのもとにきてひざまずき、何事なにごとかをおねがいした。 21そこでイエスは彼女かのじょわれた、「なにをしてほしいのか」。彼女かのじょった、「わたしのこのふたりのむすこが、あなたの御国みくにで、ひとりはあなたのみぎに、ひとりはひだりにすわれるように、お言葉ことばをください」。 22イエスはこたえてわれた、「あなたがたは、自分じぶんなにもとめているのか、わかっていない。わたしのもうとしているさかずきむことができるか」。かれらは「できます」とこたえた。 23イエスはかれらにわれた、「たしかに、あなたがたはわたしのさかずきむことになろう。しかし、わたしのみぎひだりにすわらせることは、わたしのすることではなく、わたしのちちによってそなえられている人々ひとびとだけにゆるされることである」。 24にんものはこれをいて、このふたりの兄弟きょうだいたちのことで憤慨ふんがいした。 25そこで、イエスはかれらをせてわれた、「あなたがたのっているとおり、異邦人いほうじん支配者しはいしゃたちはそのたみ治めおさめ、またえらひとたちは、そのたみうえ権力けんりょくをふるっている。 26あなたがたのあいだではそうであってはならない。かえって、あなたがたのあいだえらくなりたいとおもものは、つかえるひととなり、 27あなたがたのあいだでかしらになりたいとおもものは、しもべとならねばならない。 28それは、ひとがきたのも、つかえられるためではなく、つかえるためであり、またおおくのひとのあがないとして、自分じぶんいのちあたえるためであるのと、ちょうどおなじである」。

29それから、かれらがエリコをったとき、おおぜいの群衆ぐんしゅうがイエスにしたがってきた。 30すると、ふたりの盲人もうじんみちばたにすわっていたが、イエスがとおってかれるといて、さけんでった、「しゅよ、ダビデのよ、わたしたちをあわれんでください」。 31群衆ぐんしゅうかれらをしかってだまらせようとしたが、かれらはますますさけびつづけてった、「しゅよ、ダビデのよ、わたしたちをあわれんでください」。 32イエスはちどまり、かれらをんでわれた、「わたしになにをしてほしいのか」。 33かれらはった、「しゅよ、をあけていただくことです」。 34イエスはふかくあわれんで、かれらのにさわられた。するとかれらは、たちまちえるようになり、イエスにしたがってった。

第二一章

1さて、かれらがエルサレムにちかづき、オリブやま沿いのベテパゲにいたとき、イエスはふたりの弟子でしをつかわしてわれた、 2こうのむらきなさい。するとすぐ、ろばがつながれていて、ろばがそばにいるのをるであろう。それをいてわたしのところにいてきなさい。 3もしだれかが、あなたがたになにったなら、しゅがおようなのです、といなさい。そうえば、すぐわたしてくれるであろう」。 4こうしたのは、預言者よげんしゃによってわれたことが、成就じょうじゅするためである。 5すなわち、
「シオンのむすめげよ、
よ、あなたのおうがおいでになる、
柔和にゅうわなおかたで、ろばにって、
くびきをうろばのって」。
6弟子でしたちはって、イエスがおめいじになったとおりにし、 7ろばとろばとをいてきた。そしてそのうえ自分じぶんたちの上着うわぎをかけると、イエスはそれにおりになった。 8群衆ぐんしゅうのうちおおくのもの自分じぶんたちの上着うわぎみちき、また、ほかのものたちはえだってきてみちいた。 9そして群衆ぐんしゅうは、まえものも、あとにしたがものも、ともさけびつづけた、
「ダビデのに、ホサナ。
しゅ御名みなによってきたるものに、祝福しゅくふくあれ。
いとたかところに、ホサナ」。
10イエスがエルサレムにはいってかれたとき、町中まちじゅうがこぞってさわち、「これは、いったい、どなただろう」とった。 11そこで群衆ぐんしゅうは、「このひとはガリラヤのナザレから預言者よげんしゃイエスである」とった。

12それから、イエスはみやにはいられた。そして、みやにわいしていた人々ひとびとをみなし、また両替人りょうがえにんだいや、はとをもの腰掛こしかけをくつがえされた。 13そしてかれらにわれた、「『わたしのいえは、いのりいえととなえらるべきである』といてある。それだのに、あなたがたはそれを強盗ごうとうにしている」。 14そのときみやにわで、盲人もうじんあしなえがみもとにきたので、かれらをおいやしになった。 15しかし、祭司長さいしちょう律法りっぽう学者がくしゃたちは、イエスがなされた不思議ふしぎなわざを、またみやにわで「ダビデのに、ホサナ」とさけんでいる子供こどもたちを立腹りっぷくし、 16イエスにった、「あのたちがなにっているのか、おきですか」。イエスはかれらにわれた、「そうだ、いている。あなたがたは『おさのみたちのくちにさんびをそなえられた』とあるのをんだことがないのか」。 17それから、イエスはかれらをあとにのこし、みやこてベタニヤにき、そこでごされた。

18あさはやくみやこかえるとき、イエスは空腹くうふくをおぼえられた。 19そして、みちのかたわらに一ぽんのいちじくのがあるのをて、そこにかれたが、ただのほかはなに見当みあたらなかった。そこでそのにむかって、「いまからのちいつまでも、おまえにはがならないように」とわれた。すると、いちじくのはたちまちれた。 20弟子でしたちはこれをて、おどろいてった、「いちじくがどうして、こうすぐにれたのでしょう」。 21イエスはこたえてわれた、「よくいておくがよい。もしあなたがたがしんじてうたがわないならば、このいちじくにあったようなことが、できるばかりでなく、このやまにむかって、うごしてうみなかにはいれとっても、そのとおりになるであろう。 22また、いのりのとき、しんじてもとめるものは、みなあたえられるであろう」。

23イエスがみやにはいられたとき、祭司長さいしちょうたちやたみ長老ちょうろうたちが、そのおしえておられるところにきてった、「なに権威けんいによって、これらのことをするのですか。だれが、そうする権威けんいさづけたのですか」。 24そこでイエスはかれらにわれた、「わたしも一つだけたずねよう。あなたがたがそれにこたえてくれたなら、わたしも、なに権威けんいによってこれらのことをするのか、あなたがたにおう。 25ヨハネのバプテスマはどこからきたのであったか。てんからであったか、ひとからであったか」。すると、かれらはたがいろんじてった、「もしてんからだとえば、では、なぜかれしんじなかったのか、とイエスはうだろう。 26しかし、もしひとからだとえば、群衆ぐんしゅうおそろしい。人々ひとびとがみなヨハネを預言者よげんしゃおもっているのだから」。 27そこでかれらは、「わたしたちにはわかりません」とこたえた。すると、イエスがわれた、「わたしもなに権威けんいによってこれらのことをするのか、あなたがたにうまい。

28あなたがたはどうおもうか。あるひとにふたりのがあったが、あにのところにってった、『よ、きょう、ぶどうえんってはたらいてくれ』。 29するとかれは『おとうさん、まいります』とこたえたが、かなかった。 30またおとうとのところにきておなじようにった。かれは『いやです』とこたえたが、あとからこころえて、かけた。 31このふたりのうち、どちらがちちのぞみどおりにしたのか」。かれらはった、「あとのものです」。イエスはわれた、「よくきなさい。取税人しゅぜいにん遊女ゆうじょは、あなたがたよりさきかみくににはいる。 32というのは、ヨハネがあなたがたのところにきて、みちいたのに、あなたがたはかれしんじなかった。ところが、取税人しゅぜいにん遊女ゆうじょかれしんじた。あなたがたはそれをたのに、あとになっても、こころをいれえてかれしんじようとしなかった。

33もう一つのたとえきなさい。あるところに、ひとりのいえ主人しゅじんがいたが、ぶどうえんつくり、かきをめぐらし、そのなかさかぶねのあなり、やぐらをて、それを農夫のうふたちにして、たびかけた。 34収穫しゅうかく季節きせつがきたので、そのまえろうとして、しもべたちを農夫のうふのところへおくった。 35すると、農夫のうふたちは、そのしもべたちをつかまえて、ひとりをふくろだたきにし、ひとりをころし、もうひとりをいしころした。 36またべつに、まえよりもおおくのしもべたちをおくったが、かれらをもおなじようにあしらった。 37しかし、最後さいごに、わたしのうやまってくれるだろうとおもって、主人しゅじんはそのかれらのところにつかわした。 38すると農夫のうふたちは、そのたがいった、『あれはあとりだ。さあ、これをころして、その財産ざいさんれよう』。 39そしてかれをつかまえて、ぶどうえんそとしてころした。 40このぶどうえん主人しゅじんかえってきたら、この農夫のうふたちをどうするだろうか」。 41かれらはイエスにった、「悪人あくにんどもを、皆殺みなごろしにして、季節きせつごとに収穫しゅうかくおさめるほかの農夫のうふたちに、そのぶどうえんあたえるでしょう」。 42イエスはかれらにわれた、「あなたがたは、聖書せいしょでまだんだことがないのか、
いえつくりらのてたいし
すみのかしらいしになった。
これはしゅがなされたことで、
わたしたちのには不思議ふしぎえる』。
43それだから、あなたがたにうが、かみくにはあなたがたからげられて、御国みくににふさわしいむすぶような異邦人いほうじんあたえられるであろう。 44またそのいしうえちるものくだかれ、それがだれかのうえちかかるなら、そのひとはこなみじんにされるであろう」。 45祭司長さいしちょうたちやパリサイびとたちがこのたとえいたとき、自分じぶんたちのことをさしてっておられることをさとったので、 46イエスをとらえようとしたが、群衆ぐんしゅうおそれた。群衆ぐんしゅうはイエスを預言者よげんしゃだとおもっていたからである。

第二二章

1イエスはまた、たとえかれらにかたってわれた、 2天国てんごくは、ひとりのおうがその王子おうじのために、こんえんもよおすようなものである。 3おうはそのしもべたちをつかわして、このこんえんまねかれていたひとたちをばせたが、そのひとたちはこようとはしなかった。 4そこでまた、ほかのしもべたちをつかわしてった、『まねかれたひとたちにいなさい。食事しょくじ用意よういができました。うしえたけものもほふられて、すべての用意よういができました。さあ、こんえんにおいでください』。 5しかし、かれらはらぬかおをして、ひとりは自分じぶんはたけに、ひとりは自分じぶん商売しょうばいき、 6またほかの人々ひとびとは、このしもべたちをつかまえて侮辱ぶじょくくわえたうえころしてしまった。 7そこでおう立腹りっぷくし、軍隊ぐんたいおくってそれらの人殺ひとごろしどもをほろぼし、そのまちはらった。 8それからしもべたちにった、『こんえん用意よういはできているが、まねかれていたのは、ふさわしくない人々ひとびとであった。 9だから、まち大通おおどおりにって、出会であったひとはだれでもこんえんれてきなさい』。 10そこで、しもべたちはみちって、出会であひとは、悪人あくにんでも善人ぜんにんでもみなあつめてきたので、こんえんせききゃくでいっぱいになった。 11おうきゃくむかえようとしてはいってきたが、そこに礼服れいふくをつけていないひとりのひとて、 12かれった、『ともよ、どうしてあなたは礼服れいふくをつけないで、ここにはいってきたのですか』。しかし、かれだまっていた。 13そこで、おうはそばのものたちにった、『このもの手足てあしをしばって、そとくらやみにほうりせ。そこでさけんだり、がみをしたりするであろう』。 14まねかれるものおおいが、えらばれるものすくない」。

15そのときパリサイびとたちがきて、どうかしてイエスを言葉ことばのわなにかけようと、相談そうだんをした。 16そして、かれらの弟子でしを、ヘロデとうものたちとともに、イエスのもとにつかわしてわせた、「先生せんせい、わたしたちはあなたが真実しんじつなかたであって、真理しんりもとづいてかみみちおしえ、また、ひとへだてをしないで、だれをもはばかられないことをっています。 17それで、あなたはどうおもわれますか、こたえてください。カイザルに税金ぜいきんおさめてよいでしょうか、いけないでしょうか」。 18イエスはかれらの悪意あくいってわれた、「偽善者ぎぜんしゃたちよ、なぜわたしをためそうとするのか。 19ぜいおさめる貨幣かへいせなさい」。かれらはデナリ一つをってきた。 20そこでイエスはわれた、「これは、だれの肖像しょうぞう、だれの記号きごうか」。 21かれらは「カイザルのです」とこたえた。するとイエスはわれた、「それでは、カイザルのものはカイザルに、かみのものはかみかえしなさい」。 22かれらはこれをいて驚嘆きょうたんし、イエスをのこしてった。

23復活ふっかつということはないと主張しゅちょうしていたサドカイびとたちが、その、イエスのもとにきて質問しつもんした、 24先生せんせい、モーセはこうっています、『もし、あるひとがなくてんだなら、そのおとうとあにつまをめとって、あにのためにをもうけねばならない』。 25さて、わたしたちのところに七にん兄弟きょうだいがありました。長男ちょうなんつまをめとったがんでしまい、そしてがなかったので、そのつまおとうとのこしました。 26次男じなん三男さんなんも、ついに七にんともおなじことになりました。 27最後さいごに、そのおんなにました。 28すると復活ふっかつときには、このおんなは、七にんのうちだれのつまなのでしょうか。みんながこのおんなつまにしたのですが」。 29イエスはこたえてわれた、「あなたがたは聖書せいしょかみちかららないから、おもちがいをしている。 30復活ふっかつときには、かれらはめとったり、とついだりすることはない。かれらはてんにいる御使みつかいのようなものである。 31また、死人しにん復活ふっかつについては、かみがあなたがたにわれた言葉ことばんだことがないのか。 32『わたしはアブラハムのかみ、イサクのかみ、ヤコブのかみである』といてある。かみんだものかみではなく、きているものかみである」。 33群衆ぐんしゅうはこれをいて、イエスのおしえおどろいた。

34さて、パリサイびとたちは、イエスがサドカイびとたちをいこめられたといて、一緒いっしょあつまった。 35そしてかれらのなかのひとりの律法りっぽう学者がくしゃが、イエスをためそうとして質問しつもんした、 36先生せんせい律法りっぽうなかで、どのいましめがいちばん大切たいせつなのですか」。 37イエスはわれた、「『こころをつくし、精神せいしんをつくし、おもいをつくして、しゅなるあなたのかみあいせよ』。 38これがいちばん大切たいせつな、だい一のいましめである。 39だい二もこれと同様どうようである、『自分じぶんあいするようにあなたのとなびとあいせよ』。 40これらの二つのいましめに、律法りっぽう全体ぜんたい預言者よげんしゃとが、かかっている」。

41パリサイびとたちがあつまっていたとき、イエスはかれらにおたずねになった、 42「あなたがたはキリストをどうおもうか。だれのなのか」。かれらは「ダビデのです」とこたえた。 43イエスはわれた、「それではどうして、ダビデが御霊みたまかんじてキリストをしゅんでいるのか。 44すなわち
しゅはわがしゅおおせになった、
あなたのてきをあなたのあしもとにくときまでは、
わたしのみぎしていなさい』。
45このように、ダビデ自身じしんがキリストをしゅんでいるなら、キリストはどうしてダビデのであろうか」。 46イエスにひとことでもこたえうるものは、なかったし、そのからもはや、すすんでイエスに質問しつもんするものも、いなくなった。

第二三章

1そのときイエスは、群衆ぐんしゅう弟子でしたちとにかたってわれた、 2律法りっぽう学者がくしゃとパリサイびととは、モーセのにすわっている。 3だから、かれらがあなたがたにうことは、みなまもって実行じっこうしなさい。しかし、かれらのすることには、ならうな。かれらはうだけで、実行じっこうしないから。 4また、おも荷物にもつをくくって人々ひとびとかたにのせるが、それをうごかすために、自分じぶんではゆびぽんそうとはしない。 5そのすることは、すべてひとせるためである。すなわち、かれらは経札きょうふだ幅広はばひろくつくり、そのころものふさをおおきくし、 6また、宴会えんかい上座じょうざ会堂かいどう上席じょうせきこのみ、 7広場ひろばであいさつされることや、人々ひとびとから先生せんせいばれることをこのんでいる。 8しかし、あなたがたは先生せんせいばれてはならない。あなたがたの先生せんせいは、ただひとりであって、あなたがたはみな兄弟きょうだいなのだから。 9また、地上ちじょうのだれをも、ちちんではならない。あなたがたのちちはただひとり、すなわち、てんにいますちちである。 10また、あなたがたは教師きょうしばれてはならない。あなたがたの教師きょうしはただひとり、すなわち、キリストである。 11そこで、あなたがたのうちでいちばんえらものは、つかえるひとでなければならない。 12だれでも自分じぶんたかくするものひくくされ、自分じぶんひくくするものたかくされるであろう。

13偽善ぎぜん律法りっぽう学者がくしゃ、パリサイびとたちよ。あなたがたは、わざわいである。あなたがたは、天国てんごくざして人々ひとびとをはいらせない。自分じぶんもはいらないし、はいろうとするひとをはいらせもしない。〔 14偽善ぎぜん律法りっぽう学者がくしゃ、パリサイびとたちよ。あなたがたは、わざわいである。あなたがたは、やもめたちのいえたおし、えのためにながいのりをする。だから、もっときびしいさばきをけるにちがいない。〕 15偽善ぎぜん律法りっぽう学者がくしゃ、パリサイびとたちよ。あなたがたは、わざわいである。あなたがたはひとりの改宗者かいしゅうしゃをつくるために、うみりくとをめぐあるく。そして、つくったなら、かれ自分じぶんよりばいもひどい地獄じごくにする。

16盲目もうもく案内あんないしゃたちよ。あなたがたは、わざわいである。あなたがたはう、『神殿しんでんをさしてちかうなら、そのままでよいが、神殿しんでん黄金こがねをさしてちかうなら、はた責任せきにんがある』と。 17おろかな盲目もうもくひとたちよ。黄金こがねと、黄金こがね神聖しんせいにする神殿しんでんと、どちらが大事だいじなのか。 18また、あなたがたはう、『祭壇さいだんをさしてちかうなら、そのままでよいが、そのうえそなものをさしてちかうなら、はた責任せきにんがある』と。 19盲目もうもくひとたちよ。そなものそなもの神聖しんせいにする祭壇さいだんとどちらが大事だいじなのか。 20祭壇さいだんをさしてちかものは、祭壇さいだんと、そのうえにあるすべてのものとをさしてちかうのである。 21神殿しんでんをさしてちかものは、神殿しんでんとそのなかんでおられるかたとをさしてちかうのである。 22また、てんをさしてちかものは、かみ御座みざとそのうえにすわっておられるかたとをさしてちかうのである。

23偽善ぎぜん律法りっぽう学者がくしゃ、パリサイびとたちよ。あなたがたは、わざわいである。はっか、いのんど、クミンなどの薬味やくみの十ぶんの一をみやおさめておりながら、律法りっぽうなかでもっと重要じゅうような、公平こうへいとあわれみと忠実ちゅうじつとをのがしている。それもしなければならないが、これものがしてはならない。 24盲目もうもく案内あんないしゃたちよ。あなたがたは、ぶよはこしているが、らくだはのみこんでいる。

25偽善ぎぜん律法りっぽう学者がくしゃ、パリサイびとたちよ。あなたがたは、わざわいである。さかずきさらとの外側そとがわはきよめるが、内側うちがわ貪欲どんよく放縦ほうじゅうとでちている。 26盲目もうもくなパリサイびとよ。まず、さかずき内側うちがわをきよめるがよい。そうすれば、外側そとがわきよくなるであろう。

27偽善ぎぜん律法りっぽう学者がくしゃ、パリサイびとたちよ。あなたがたは、わざわいである。あなたがたはしろったはかている。外側そとがわうつくしくえるが、内側うちがわ死人しにんほねや、あらゆる不潔ふけつなものでいっぱいである。 28このようにあなたがたも、外側そとがわひとただしくえるが、内側うちがわ偽善ぎぜん不法ふほうとでいっぱいである。

29偽善ぎぜん律法りっぽう学者がくしゃ、パリサイびとたちよ。あなたがたは、わざわいである。あなたがたは預言者よげんしゃはかて、義人ぎじんかざてて、こうっている、 30『もしわたしたちが先祖せんぞ時代じだいきていたなら、預言者よげんしゃながすことにくわわってはいなかっただろう』と。 31このようにして、あなたがたは預言者よげんしゃころしたもの子孫しそんであることを、自分じぶん証明しょうめいしている。 32あなたがたもまた先祖せんぞたちがしたあく枡目ますめたすがよい。 33へびよ、まむしのらよ、どうして地獄じごく刑罰けいばつをのがれることができようか。 34それだから、わたしは、預言者よげんしゃ知者ちしゃ律法りっぽう学者がくしゃたちをあなたがたにつかわすが、そのうちのあるものころし、また十字架じゅうじかにつけ、そのあるもの会堂かいどうでむちち、またまちからまちへと迫害はくがいしてくであろう。 35こうして義人ぎじんアベルのから、聖所せいじょ祭壇さいだんとのあいだであなたがたがころしたバラキヤのザカリヤのいたるまで、地上ちじょうながされた義人ぎじんむくいが、ことごとくあなたがたにおよぶであろう。 36よくっておく。これらのことのむくいは、みないま時代じだいおよぶであろう。

37ああ、エルサレム、エルサレム、預言者よげんしゃたちをころし、おまえにつかわされたひとたちをいしころものよ。ちょうど、めんどりがつばさしたにそのひなをあつめるように、わたしはおまえのらをいくたびあつめようとしたことであろう。それだのに、おまえたちはおうじようとしなかった。 38よ、おまえたちのいえ見捨みすてられてしまう。 39わたしはっておく、
しゅ御名みなによってきたるものに、祝福しゅくふくあれ』
とおまえたちがときまでは、今後こんごふたたび、わたしにうことはないであろう」。

第二四章

1イエスがみやからこうとしておられると、弟子でしたちは近寄ちかよってきて、みや建物たてものにイエスの注意ちゅういうながした。 2そこでイエスはかれらにむかってわれた、「あなたがたは、これらすべてのものをないか。よくっておく。そのいし一つでもくずされずに、そこにいしうえのこることもなくなるであろう」。

3またオリブやまですわっておられると、弟子でしたちが、ひそかにみもとにきてった、「どうぞおはなしください。いつ、そんなことがおこるのでしょうか。あなたがまたおいでになるときや、おわりには、どんな前兆ぜんちょうがありますか」。 4そこでイエスはこたえてわれた、「ひとまどわされないようにをつけなさい。 5おおくのものがわたしののってあらわれ、自分じぶんがキリストだとって、おおくのひとまどわすであろう。 6また、戦争せんそう戦争せんそうのうわさとをくであろう。注意ちゅういしていなさい、あわててはいけない。それはおこらねばならないが、まだおわりではない。 7たみたみに、くにくに敵対てきたいしてがるであろう。またあちこちに、ききんがおこり、また地震じしんがあるであろう。 8しかし、すべてこれらはみのくるしみのはじめである。 9そのとき人々ひとびとは、あなたがたをくるしみにあわせ、またころすであろう。またあなたがたは、わたしののゆえにすべてのたみにくまれるであろう。 10そのとき、おおくのひとがつまずき、またたがい裏切うらぎり、にくうであろう。 11またおおくのにせ預言者よげんしゃおこって、おおくのひとまどわすであろう。 12また不法ふほうがはびこるので、おおくのひとあいえるであろう。 13しかし、最後さいごまでしのものすくわれる。 14そしてこの御国みくに福音ふくいんは、すべてのたみたいしてあかしをするために、ぜん世界せかいつたえられるであろう。そしてそれから最後さいごるのである。

15預言者よげんしゃダニエルによってわれたらすにくむべきものが、せいなる場所ばしょつのをたならば(読者どくしゃよ、さとれ)、 16そのとき、ユダヤにいる人々ひとびとやまげよ。 17屋上おくじょうにいるものは、いえからものをそうとしてしたにおりるな。 18はたけにいるものは、上着うわぎりにあとへもどるな。 19そのには、身重みおもおんな乳飲ちのをもつおんなとは、不幸ふこうである。 20あなたがたのげるのが、ふゆまたは安息日あんそくにちにならないようにいのれ。 21そのときには、はじめから現在げんざいいたるまで、かつてなく今後こんごもないようなおおきな患難かんなんおこるからである。 22もしその期間きかんちぢめられないなら、すくわれるものはひとりもないであろう。しかし、選民せんみんのためには、その期間きかんちぢめられるであろう。

23そのとき、だれかがあなたがたに『よ、ここにキリストがいる』、また、『あそこにいる』とっても、それをしんじるな。 24にせキリストたちや、にせ預言者よげんしゃたちがおこって、おおいなるしるしと奇跡きせきとをおこない、できれば、選民せんみんをもまどわそうとするであろう。 25よ、あなたがたにまえもってっておく。 26だから、人々ひとびとが『よ、かれ荒野あらのにいる』とっても、くな。また『よ、へやのなかにいる』とっても、しんじるな。 27ちょうど、いなずまがひがしから西にしにひらめきわたるように、ひとあらわれるであろう。 28死体したいのあるところには、はげたかがあつまるものである。

29しかし、そのときおこ患難かんなんのち、たちまちくらくなり、つきはそのひかりはなつことをやめ、ほしそらからち、天体てんたいうごかされるであろう。 30そのとき、ひとのしるしがてんあらわれるであろう。またそのとき、のすべての民族みんぞくなげき、そしてちからおおいなる栄光えいこうとをもって、ひとてんくもってるのを、人々ひとびとるであろう。 31また、かれおおいなるラッパのおととも御使みつかいたちをつかわして、てんのはてからはてにいたるまで、四方しほうからその選民せんみんあつめるであろう。

32いちじくのからこのたとえまなびなさい。そのえだやわらかになり、るようになると、なつちかいことがわかる。 33そのように、すべてこれらのことをたならば、ひと戸口とぐちまでちかづいているとりなさい。 34よくいておきなさい。これらのことが、ことごとくおこるまでは、この時代じだいほろびることがない。 35天地てんちほろびるであろう。しかしわたしの言葉ことばほろびることがない。 36その、そのときは、だれもらない。てん御使みつかいたちも、またらない、ただちちだけがっておられる。 37ひとあらわれるのも、ちょうどノアのときのようであろう。 38すなわち、洪水こうずいまえ、ノアが箱舟はこぶねにはいるまで、人々ひとびとい、み、めとり、とつぎなどしていた。 39そして洪水こうずいおそってきて、いっさいのものをさらってくまで、かれらはがつかなかった。ひとあらわれるのも、そのようであろう。 40そのとき、ふたりのものはたけにいると、ひとりはられ、ひとりはのこされるであろう。 41ふたりのおんながうすをひいていると、ひとりはられ、ひとりはのこされるであろう。 42だから、をさましていなさい。いつのにあなたがたのしゅがこられるのか、あなたがたには、わからないからである。 43このことをわきまえているがよい。いえ主人しゅじんは、盗賊とうぞくがいつごろるかわかっているなら、をさましていて、自分じぶんいえることをゆるさないであろう。 44だから、あなたがたも用意よういをしていなさい。おもいがけないときひとるからである。 45主人しゅじんがそのいえしもべたちのうえてて、ときおうじて食物しょくもつをそなえさせる忠実ちゅうじつ思慮しりょぶかしもべは、いったい、だれであろう。 46主人しゅじんかえってきたとき、そのようにつとめているのをられるしもべは、さいわいである。 47よくっておくが、主人しゅじんかれてて自分じぶんぜん財産ざいさん管理かんりさせるであろう。 48もしそれがわるしもべであって、自分じぶん主人しゅじんかえりがおそいとこころなかおもい、 49そのしもべ仲間なかまをたたきはじめ、また酒飲さけの仲間なかま一緒いっしょべたりんだりしているなら、 50そのしもべ主人しゅじんおもいがけないがつかないときかえってきて、 51かれ厳罰げんばつしょし、偽善者ぎぜんしゃたちとおなにあわせるであろう。かれはそこでさけんだり、がみをしたりするであろう。

第二五章

1そこで天国てんごくは、十にんのおとめがそれぞれあかりをにして、花婿はなむこむかえにくのにている。 2そのなかの五にん思慮しりょあさく、五にん思慮しりょぶかものであった。 3思慮しりょあさものたちは、あかりはっていたが、あぶら用意よういしていなかった。 4しかし、思慮しりょぶかものたちは、自分じぶんたちのあかりと一緒いっしょに、れもののなかあぶら用意よういしていた。 5花婿はなむこるのがおくれたので、かれらはみな居眠いねむりをして、てしまった。 6夜中よなかに、『さあ、花婿はなむこだ、むかえになさい』とこえがした。 7そのとき、おとめたちはみなきて、それぞれあかりをととのえた。 8ところが、思慮しりょあさおんなたちが、思慮しりょぶかおんなたちにった、『あなたがたのあぶらをわたしたちにわけてください。わたしたちのあかりがえかかっていますから』。 9すると、思慮しりょぶかおんなたちはこたえてった、『わたしたちとあなたがたとにりるだけは、多分たぶんないでしょう。みせって、あなたがたのふんをおいになるほうがよいでしょう』。 10かれらがいにているうちに、花婿はなむこいた。そこで、用意よういのできていたおんなたちは、花婿はなむこ一緒いっしょこんえんのへやにはいり、そしてがしめられた。 11そのあとで、ほかのおとめたちもきて、『ご主人様しゅじんさま、ご主人様しゅじんさま、どうぞ、あけてください』とった。 12しかしかれこたえて、『はっきりうが、わたしはあなたがたをらない』とった。 13だから、をさましていなさい。そのそのときが、あなたがたにはわからないからである。

14また天国てんごくは、あるひとたびるとき、そのしもべどもをんで、自分じぶん財産ざいさんあづけるようなものである。 15すなわち、それぞれの能力のうりょくおうじて、あるものには五タラント、あるものには二タラント、あるものには一タラントをあたえて、たびた。 16五タラントをわたされたものは、すぐにって、それで商売しょうばいをして、ほかに五タラントをもうけた。 17二タラントのもの同様どうようにして、ほかに二タラントをもうけた。 18しかし、一タラントをわたされたものは、ってり、主人しゅじんかねかくしておいた。 19だいぶときがたってから、これらのしもべ主人しゅじんかえってきて、かれらと計算けいさんをしはじめた。 20すると五タラントをわたされたものすすて、ほかの五タラントをさししてった、『ご主人様しゅじんさま、あなたはわたしに五タラントをおあづけになりましたが、ごらんのとおり、ほかに五タラントをもうけました』。 21主人しゅじんかれった、『忠実ちゅうじつしもべよ、よくやった。あなたはわずかなものに忠実ちゅうじつであったから、おおくのものを管理かんりさせよう。主人しゅじん一緒いっしょよろこんでくれ』。 22二タラントのものすすった、『ご主人様しゅじんさま、あなたはわたしに二タラントをおあづけになりましたが、ごらんのとおり、ほかに二タラントをもうけました』。 23主人しゅじんかれった、『忠実ちゅうじつしもべよ、よくやった。あなたはわずかなものに忠実ちゅうじつであったから、おおくのものを管理かんりさせよう。主人しゅじん一緒いっしょよろこんでくれ』。 24一タラントをわたされたものすすった、『ご主人様しゅじんさま、わたしはあなたが、まかないところからり、らさないところからあつめるこくひとであることを承知しょうちしていました。 25そこでおそろしさのあまり、って、あなたのタラントをなかかくしておきました。ごらんください。ここにあなたのおかねがございます』。 26すると、主人しゅじんかれこたえてった、『わる怠惰たいだしもべよ、あなたはわたしが、まかないところからり、らさないところからあつめることをっているのか。 27それなら、わたしのかね銀行ぎんこうあづけておくべきであった。そうしたら、わたしはかえってきて、利子りし一緒いっしょにわたしのかねかえしてもらえたであろうに。 28さあ、そのタラントをこのものからりあげて、十タラントをっているものにやりなさい。 29おおよそ、っているひとあたえられて、いよいよゆたかになるが、っていないひとは、っているものまでもげられるであろう。 30このやくたないしもべそとくらところすがよい。かれは、そこでさけんだり、がみをしたりするであろう』。

31ひと栄光えいこうなかにすべての御使みつかいたちをしたがえてるとき、かれはその栄光えいこうにつくであろう。 32そして、すべての国民こくみんをそのまえあつめて、羊飼ひつじかいひつじとやぎとをけるように、かれらをよりけ、 33ひつじみぎに、やぎをひだりにおくであろう。 34そのとき、おうみぎにいる人々ひとびとうであろう、『わたしのちち祝福しゅくふくされたひとたちよ、さあ、はじめからあなたがたのために用意よういされている御国みくにけつぎなさい。 35あなたがたは、わたしが空腹くうふくのときにべさせ、かわいていたときにませ、旅人たびびとであったときに宿やどし、 36はだかであったときにせ、病気びょうきのときに見舞みまい、ごくにいたときにたずねてくれたからである』。 37そのとき、ただしいものたちはこたえてうであろう、『しゅよ、いつ、わたしたちは、あなたが空腹くうふくであるのを食物しょくもつをめぐみ、かわいているのをませましたか。 38いつあなたが旅人たびびとであるのを宿やどし、はだかなのをせましたか。 39また、いつあなたが病気びょうきをし、ごくにいるのをて、あなたのところまいりましたか』。 40すると、おうこたえてうであろう、『あなたがたによくっておく。わたしの兄弟きょうだいであるこれらのもっとちいさいもののひとりにしたのは、すなわち、わたしにしたのである』。 41それから、ひだりにいる人々ひとびとにもうであろう、『のろわれたものどもよ、わたしをはなれて、悪魔あくまとその使つかいたちとのために用意よういされている永遠えいえんにはいってしまえ。 42あなたがたは、わたしが空腹くうふくのときにべさせず、かわいていたときにませず、 43旅人たびびとであったときに宿やどさず、はだかであったときにせず、また病気びょうきのときや、ごくにいたときに、わたしをたずねてくれなかったからである』。 44そのとき、かれらもまたこたえてうであろう、『しゅよ、いつ、あなたが空腹くうふくであり、かわいておられ、旅人たびびとであり、はだかであり、病気びょうきであり、ごくにおられたのをて、わたしたちはお世話せわをしませんでしたか』。 45そのとき、かれこたえてうであろう、『あなたがたによくっておく。これらのもっとちいさいもののひとりにしなかったのは、すなわち、わたしにしなかったのである』。 46そしてかれらは永遠えいえん刑罰けいばつけ、ただしいもの永遠えいえん生命せいめいるであろう」。

第二六章

1イエスはこれらの言葉ことばをすべてかたえてから、弟子でしたちにわれた。 2「あなたがたがっているとおり、ふつかののちには過越すぎこしまつりになるが、ひと十字架じゅうじかにつけられるためにわたされる」。 3そのとき、祭司長さいしちょうたちやたみ長老ちょうろうたちが、カヤパという大祭司だいさいし中庭なかにわあつまり、 4策略さくりゃくをもってイエスをとらえてころそうと相談そうだんした。 5しかしかれらはった、「まつりあいだはいけない。民衆みんしゅうなかさわぎがおこるかもれない」。

6さて、イエスがベタニヤで、らい病人びょうにんシモンのいえにおられたとき、 7ひとりのおんなが、高価こうか香油こうゆれてある石膏せっこうのつぼをってきて、イエスに近寄ちかより、食事しょくじせきについておられたイエスのあたま香油こうゆそそぎかけた。 8すると、弟子でしたちはこれをいきどおってった、「なんのためにこんなむだ使づかいをするのか。 9それをたかって、まずしいひとたちにほどこすことができたのに」。 10イエスはそれをいてかれらにわれた、「なぜ、おんなこまらせるのか。わたしによいことをしてくれたのだ。 11まずしいひとたちはいつもあなたがたと一緒いっしょにいるが、わたしはいつも一緒いっしょにいるわけではない。 12このおんながわたしのからだにこの香油こうゆそそいだのは、わたしのほうむりの用意よういをするためである。 13よくきなさい。ぜん世界せかいのどこででも、この福音ふくいんつたえられるところでは、このおんなのしたこと記念きねんとしてかたられるであろう」。

14ときに、十二弟子でしのひとりイスカリオテのユダというものが、祭司長さいしちょうたちのところにって 15った、「かれをあなたがたにわたせば、いくらくださいますか」。すると、かれらは銀貨ぎんか三十まいかれ支払しはらった。 16そのときから、ユダはイエスをきわたそうと、機会きかいをねらっていた。

17さて、除酵祭じょこうさいだいにちに、弟子でしたちはイエスのもとにきてった、「過越すぎこし食事しょくじをなさるために、わたしたちはどこに用意よういをしたらよいでしょうか」。 18イエスはわれた、「市内しないにはいり、かねてはなしてあるひとところっていなさい、『先生せんせいが、わたしのときちかづいた、あなたのいえ弟子でしたちと一緒いっしょ過越すぎこしまもろうと、っておられます』」。 19弟子でしたちはイエスがめいじられたとおりにして、過越すぎこし用意よういをした。

20夕方ゆうがたになって、イエスは十二弟子でし一緒いっしょ食事しょくじせきにつかれた。 21そして、一同いちどう食事しょくじをしているときわれた、「とくにあなたがたにっておくが、あなたがたのうちのひとりが、わたしを裏切うらぎろうとしている」。 22弟子でしたちは非常ひじょう心配しんぱいして、つぎつぎに「しゅよ、まさか、わたしではないでしょう」とした。 23イエスはこたえてわれた、「わたしと一緒いっしょおなはちれているものが、わたしを裏切うらぎろうとしている。 24たしかにひとは、自分じぶんについていてあるとおりにってく。しかし、ひと裏切うらぎるそのひとは、わざわいである。そのひとうまれなかったほうが、かれのためによかったであろう」。 25イエスを裏切うらぎったユダがこたえてった、「先生せんせい、まさか、わたしではないでしょう」。イエスはわれた、「いや、あなただ」。

26一同いちどう食事しょくじをしているとき、イエスはパンをり、祝福しゅくふくしてこれをさき、弟子でしたちにあたえてわれた、「ってべよ、これはわたしのからだである」。 27またさかずきり、感謝かんしゃしてかれらにあたえてわれた、「みな、このさかずきからめ。 28これは、つみのゆるしをさせるようにと、おおくのひとのためにながすわたしの契約けいやくである。 29あなたがたにっておく。わたしのちちくにであなたがたとともに、あたらしくむそのまでは、わたしは今後こんごけっして、ぶどうのからつくったものをむことをしない」。

30かれらは、さんびをうたったのち、オリブやまかけてった。

31そのとき、イエスは弟子でしたちにわれた、「今夜こんや、あなたがたはみなわたしにつまずくであろう。『わたしは羊飼ひつじかいつ。そして、ひつじれはらされるであろう』と、いてあるからである。 32しかしわたしは、よみがえってから、あなたがたよりさきにガリラヤへくであろう」。 33するとペテロはイエスにこたえてった、「たとい、みんなのものがあなたにつまずいても、わたしはけっしてつまずきません」。 34イエスはわれた、「よくあなたにっておく。今夜こんやにわとりまえに、あなたは三わたしをらないとうだろう」。 35ペテロはった、「たといあなたと一緒いっしょなねばならなくなっても、あなたをらないなどとは、けっしてもうしません」。弟子でしたちもみなおなじようにった。

36それから、イエスはかれらと一緒いっしょに、ゲツセマネというところかれた。そして弟子でしたちにわれた、「わたしがこうへっていのっているあいだ、ここにすわっていなさい」。 37そしてペテロとゼベダイのふたりとをれてかれたが、かなしみをもよおしまたなやみはじめられた。 38そのとき、かれらにわれた、「わたしはかなしみのあまりぬほどである。ここにっていて、わたしと一緒いっしょをさましていなさい」。 39そしてすこすすんでき、うつぶしになり、いのってわれた、「わがちちよ、もしできることでしたらどうか、このさかずきをわたしかららせてください。しかし、わたしのおもいのままにではなく、みこころのままになさってください」。 40それから、弟子でしたちのところにきてごらんになると、かれらがねむっていたので、ペテロにわれた、「あなたがたはそんなに、ひとときもわたしと一緒いっしょをさましていることが、できなかったのか。 41誘惑ゆうわくおちいらないように、をさましていのっていなさい。こころねっしているが、肉体にくたいよわいのである」。 42また二度目どめって、いのってわれた、「わがちちよ、このさかずきむほかにみちがないのでしたら、どうか、みこころがおこなわれますように」。 43またきてごらんになると、かれらはまたねむっていた。そのおもくなっていたのである。 44それでかれらをそのままにして、またって、三度目どめおな言葉ことばいのられた。 45それから弟子でしたちのところかえってきて、われた、「まだねむっているのか、やすんでいるのか。よ、ときせまった。ひと罪人つみびとらのわたされるのだ。 46て、さあこう。よ、わたしを裏切うらぎものちかづいてきた」。

47そして、イエスがまだはなしておられるうちに、そこに、十二弟子でしのひとりのユダがきた。また祭司長さいしちょうたみ長老ちょうろうたちからおくられたおおぜいの群衆ぐんしゅうも、けんぼうとをってかれについてきた。 48イエスを裏切うらぎったものが、あらかじめかれらに、「わたしの接吻せっぷんするものが、そのひとだ。そのひとをつかまえろ」と合図あいずをしておいた。 49かれはすぐイエスに近寄ちかより、「先生せんせい、いかがですか」とって、イエスに接吻せっぷんした。 50しかし、イエスはかれわれた、「ともよ、なんのためにきたのか」。このとき、人々ひとびとすすって、イエスにをかけてつかまえた。 51すると、イエスと一緒いっしょにいたもののひとりが、ばしてけんき、そして大祭司だいさいししもべりかかって、その片耳かたみみおとした。 52そこで、イエスはかれわれた、「あなたのけんをもとのところにおさめなさい。けんをとるものはみな、けんほろびる。 53それとも、わたしがちちねがって、てん使つかいたちを十二軍団ぐんだん以上いじょうも、いまつかわしていただくことができないと、あなたはおもうのか。 54しかし、それでは、こうならねばならないといてある聖書せいしょ言葉ことばは、どうして成就じょうじゅされようか」。 55そのとき、イエスは群衆ぐんしゅうわれた、「あなたがたは強盗ごうとうにむかうように、けんぼうってわたしをとらえにきたのか。わたしは毎日まいにちみやですわっておしえていたのに、わたしをつかまえはしなかった。 56しかし、すべてこうなったのは、預言者よげんしゃたちのいたことが、成就じょうじゅするためである」。そのとき、弟子でしたちはみなイエスを見捨みすててった。

57さて、イエスをつかまえたひとたちは、大祭司だいさいしカヤパのところにイエスをれてった。そこには律法りっぽう学者がくしゃ長老ちょうろうたちがあつまっていた。 58ペテロはとおくからイエスについて、大祭司だいさいし中庭なかにわまでき、そのなりゆきをとどけるために、なかにはいって下役したやくどもと一緒いっしょにすわっていた。 59さて、祭司長さいしちょうたちとぜん議会ぎかいとは、イエスを死刑しけいにするため、イエスに不利ふり偽証ぎしょうもとめようとしていた。 60そこでおおくの偽証者ぎしょうしゃてきたが、証拠しょうこがあがらなかった。しかし、最後さいごにふたりのものてきて 61った、「このひとは、わたしはかみみやちこわし、三のちてることができる、といました」。 62すると、大祭司だいさいしがってイエスにった、「なにこたえないのか。これらの人々ひとびとがあなたにたいして不利ふり証言しょうげんもうてているが、どうなのか」。 63しかし、イエスはだまっておられた。そこで大祭司だいさいしった、「あなたはかみキリストなのかどうか、けるかみちかってわれわれにこたえよ」。 64イエスはかれわれた、「あなたのうとおりである。しかし、わたしはっておく。あなたがたは、もなく、ひとちからあるものみぎし、てんくもってるのをるであろう」。 65すると、大祭司だいさいしはそのころもいてった、「かれかみけがした。どうしてこれ以上いじょう証人しょうにん必要ひつようがあろう。あなたがたはいまこのけがしごといた。 66あなたがたの意見いけんはどうか」。すると、かれらはこたえてった、「かれあたるものだ」。 67それから、かれらはイエスのかおにつばきをかけて、こぶしでち、またあるひとのひらでたたいてった、 68「キリストよ、いあててみよ、ったのはだれか」。

69ペテロはそと中庭なかにわにすわっていた。するとひとりの女中じょちゅうかれのところにきて、「あなたもあのガリラヤびとイエスと一緒いっしょだった」とった。 70するとペテロは、みんなのまえでそれをしてった、「あなたがなにっているのか、わからない」。 71そうって入口いりぐちほうくと、ほかの女中じょちゅうかれて、そこにいる人々ひとびとにむかって、「このひとはナザレびとイエスと一緒いっしょだった」とった。 72そこでかれふたたびそれをして、「そんなひとらない」とちかってった。 73しばらくして、そこにっていた人々ひとびと近寄ちかよってきて、ペテロにった、「たしかにあなたもかれらの仲間なかまだ。言葉ことばづかいであなたのことがわかる」。 74かれは「そのひとのことはなにらない」とって、はげしくちかいはじめた。するとすぐにわとりいた。 75ペテロは「にわとりまえに、三わたしをらないとうであろう」とわれたイエスの言葉ことばおもし、そとはげしくいた。

第二七章

1けると、祭司長さいしちょうたち、たみ長老ちょうろうたち一同いちどうは、イエスをころそうとして協議きょうぎをこらしたうえ 2イエスをしばってし、総督そうとくピラトにわたした。

3そのとき、イエスを裏切うらぎったユダは、イエスがつみさだめられたのを後悔こうかいし、銀貨ぎんか三十まい祭司長さいしちょう長老ちょうろうたちにかえして 4った、「わたしはつみのないひとるようなことをして、つみおかしました」。しかしかれらはった、「それは、われわれのったことか。自分じぶん始末しまつするがよい」。 5そこで、かれ銀貨ぎんか聖所せいじょんでき、くびをつってんだ。 6祭司長さいしちょうたちは、その銀貨ぎんかひろいあげてった、「これは代価だいかだから、みや金庫きんこれるのはよくない」。 7そこでかれらは協議きょうぎうえ外国がいこくひと墓地ぼちにするために、そのかね陶器とうきはたけった。 8そのために、このはたけ今日きょうまではたけばれている。 9こうして預言者よげんしゃエレミヤによってわれた言葉ことばが、成就じょうじゅしたのである。すなわち、「かれらは、をつけられたもの、すなわち、イスラエルのらがをつけたものの代価だいか銀貨ぎんか三十をって、 10しゅがおめいじになったように、陶器とうきはたけ代価だいかとして、そのかねあたえた」。

11さて、イエスは総督そうとくまえたれた。すると総督そうとくはイエスにたずねてった、「あなたがユダヤじんおうであるか」。イエスは「そのとおりである」とわれた。 12しかし、祭司長さいしちょう長老ちょうろうたちがうったえているあいだ、イエスはひとこともおこたえにならなかった。 13するとピラトはった、「あんなにまで次々つぎつぎに、あなたに不利ふり証言しょうげんてているのが、あなたにはきこえないのか」。 14しかし、総督そうとく非常ひじょう不思議ふしぎおもったほどに、イエスはなにわれても、ひとこともおこたえにならなかった。 15さて、まつりのたびごとに、総督そうとく群衆ぐんしゅうねが囚人しゅうじんひとりを、ゆるしてやる慣例かんれいになっていた。 16ときに、バラバという評判ひょうばん囚人しゅうじんがいた。 17それで、かれらがあつまったとき、ピラトはった、「おまえたちは、だれをゆるしてほしいのか。バラバか、それとも、キリストといわれるイエスか」。 18かれらがイエスをきわたしたのは、ねたみのためであることが、ピラトにはよくわかっていたからである。 19また、ピラトが裁判さいばんせきについていたとき、そのつまひとかれのもとにつかわして、「あの義人ぎじんには関係かんけいしないでください。わたしはきょうゆめで、あのひとのためにさんざんくるしみましたから」とわせた。 20しかし、祭司長さいしちょう長老ちょうろうたちは、バラバをゆるして、イエスをころしてもらうようにと、群衆ぐんしゅうせた。 21総督そうとくかれらにむかってった、「ふたりのうち、どちらをゆるしてほしいのか」。かれらは「バラバのほうを」とった。 22ピラトはった、「それではキリストといわれるイエスは、どうしたらよいか」。かれらはいっせいに「十字架じゅうじかにつけよ」とった。 23しかし、ピラトはった、「あのひとは、いったい、どんな悪事あくじをしたのか」。するとかれらはいっそうはげしくさけんで、「十字架じゅうじかにつけよ」とった。 24ピラトはのつけようがなく、かえって暴動ぼうどうになりそうなのをて、みずり、群衆ぐんしゅうまえあらってった、「このひとについて、わたしには責任せきにんがない。おまえたちが自分じぶん始末しまつをするがよい」。 25すると、民衆みんしゅう全体ぜんたいこたえてった、「その責任せきにんは、われわれとわれわれの子孫しそんうえにかかってもよい」。 26そこで、ピラトはバラバをゆるしてやり、イエスをむちったのち、十字架じゅうじかにつけるためにきわたした。

27それから総督そうとく兵士へいしたちは、イエスを官邸かんていれてって、ぜん部隊ぶたいをイエスのまわりにあつめた。 28そしてその上着うわぎをぬがせて、あか外套がいとうせ、 29また、いばらでかんむりんでそのあたまにかぶらせ、みぎにはあしぼうたせ、それからそのまえにひざまずき、嘲弄ちょうろうして、「ユダヤじんおう、ばんざい」とった。 30また、イエスにつばきをかけ、あしぼうりあげてそのあたまをたたいた。 31こうしてイエスを嘲弄ちょうろうしたあげく、外套がいとうをはぎってもと上着うわぎせ、それから十字架じゅうじかにつけるためにした。

32かれらがくと、シモンというのクレネびと出会であったので、イエスの十字架じゅうじか無理むりわせた。 33そして、ゴルゴタ、すなわち、されこうべの、というところにきたとき、 34かれらはにがみをまぜたぶどうしゅませようとしたが、イエスはそれをなめただけで、もうとされなかった。 35かれらはイエスを十字架じゅうじかにつけてから、くじをいて、その着物きものけ、 36そこにすわってイエスのばんをしていた。 37そしてそのあたまうえほうに、「これはユダヤじんおうイエス」といた罪状ざいじょうきをかかげた。 38同時どうじに、ふたりの強盗ごうとうがイエスと一緒いっしょに、ひとりはみぎに、ひとりはひだりに、十字架じゅうじかにつけられた。 39そこをとおりかかったものたちは、あたまりながら、イエスをののしって 40った、「神殿しんでんちこわして三のうちにてるものよ。もしかみなら、自分じぶんすくえ。そして十字架じゅうじかからおりてこい」。 41祭司長さいしちょうたちもおなじように、律法りっぽう学者がくしゃ長老ちょうろうたちと一緒いっしょになって、嘲弄ちょうろうしてった、 42他人たにんすくったが、自分じぶん自身じしんすくうことができない。あれがイスラエルのおうなのだ。いま十字架じゅうじかからおりてみよ。そうしたらしんじよう。 43かれかみにたよっているが、かみのおぼしめしがあれば、いますくってもらうがよい。自分じぶんかみだとっていたのだから」。 44一緒いっしょ十字架じゅうじかにつけられた強盗ごうとうどもまでも、おなじようにイエスをののしった。

45さて、ひるの十二から地上ちじょう全面ぜんめんくらくなって、三およんだ。 46そして三ごろに、イエスは大声おおごえさけんで、「エリ、エリ、レマ、サバクタニ」とわれた。それは「わがかみ、わがかみ、どうしてわたしをお見捨みすてになったのですか」という意味いみである。 47すると、そこにっていたある人々ひとびとが、これをいてった、「あれはエリヤをんでいるのだ」。 48するとすぐ、かれらのうちのひとりがはしって、海綿かいめんり、それにいぶどうしゅふくませてあしぼうにつけ、イエスにませようとした。 49ほかの人々ひとびとった、「て、エリヤがかれすくいにるかどうか、ていよう」。 50イエスはもう一度いちど大声おおごえさけんで、ついにいきをひきとられた。 51するとよ、神殿しんでんまくうえからしたまで真二まっぷたつにけた。また地震じしんがあり、いわけ、 52またはかけ、ねむっているおおくの聖徒せいとたちの死体したいかえった。 53そしてイエスの復活ふっかつののち、はかからてきて、せいなるみやこにはいり、おおくのひとあらわれた。 54百卒長ひゃくそつちょう、およびかれ一緒いっしょにイエスのばんをしていた人々ひとびとは、地震じしんや、いろいろのできごとを非常ひじょうおそれ、「まことに、このひとかみであった」とった。 55また、そこにはとおくのほうからているおんなたちもおおくいた。かれらはイエスにつかえて、ガリラヤからしたがってきたひとたちであった。 56そのなかには、マグダラのマリヤ、ヤコブとヨセフとのははマリヤ、またゼベダイのたちのははがいた。

57夕方ゆうがたになってから、アリマタヤの金持かねもちで、ヨセフというひとがきた。かれもまたイエスの弟子でしであった。 58このひとがピラトのところって、イエスのからだの引取ひきとりかたをねがった。そこで、ピラトはそれをわたすようにめいじた。 59ヨセフは死体したいって、きれいな亜麻布あまぬのつつみ、 60いわってつくったかれあたらしいはかおさめ、そしてはか入口いりぐちおおきいいしをころがしておいて、かえった。 61マグダラのマリヤとほかのマリヤとが、はかにむかってそこにすわっていた。

62あくる準備じゅんび翌日よくじつであったが、そのに、祭司長さいしちょう、パリサイびとたちは、ピラトのもとにあつまってった、 63長官ちょうかん、あのいつわものがまだきていたとき、『三のち自分じぶんはよみがえる』とったのを、おもしました。 64ですから、三まではかばんをするように、さしずをしてください。そうしないと、弟子でしたちがきてかれぬすし、『イエスは死人しにんなかから、よみがえった』と、民衆みんしゅういふらすかもれません。そうなると、みんながまえよりも、もっとひどくだまされることになりましょう」。 65ピラトはかれらにった、「番人ばんにんがいるから、ってできるかぎり、ばんをさせるがよい」。 66そこで、かれらはっていし封印ふういんをし、番人ばんにんいてはかばんをさせた。

第二八章

1さて、安息日あんそくにちおわって、しゅうはじめのがたに、マグダラのマリヤとほかのマリヤとが、はかにきた。 2すると、おおきな地震じしんおこった。それはしゅ使つかいてんからくだって、そこにきていしをわきへころがし、そのうえにすわったからである。 3その姿すがたはいなずまのようにかがやき、そのころもゆきのように真白まっしろであった。 4見張みはりをしていたひとたちは、おそろしさのあまふるえあがって、死人しにんのようになった。 5この御使みつかいおんなたちにむかってった、「おそれることはない。あなたがたが十字架じゅうじかにおかかりになったイエスをさがしていることは、わたしにわかっているが、 6もうここにはおられない。かねてわれたとおりに、よみがえられたのである。さあ、イエスがおさめられていた場所ばしょをごらんなさい。 7そして、いそいでって、弟子でしたちにこうつたえなさい、『イエスは死人しにんなかからよみがえられた。よ、あなたがたよりさきにガリラヤへかれる。そこでおいできるであろう』。あなたがたに、これだけっておく」。 8そこでおんなたちはおそれながらもおおよろこびで、いそいではかり、弟子でしたちにらせるためにはしってった。 9すると、イエスはかれらに出会であって、「平安へいあんあれ」とわれたので、かれらは近寄ちかよりイエスのみあしをいだいてはいした。 10そのとき、イエスはかれらにわれた、「おそれることはない。って兄弟きょうだいたちに、ガリラヤにけ、そこでわたしにえるであろう、とげなさい」。

11おんなたちがおこなっているあいだに、番人ばんにんのうちのある人々ひとびとみやこかえって、いっさいの出来事できごと祭司長さいしちょうたちにはなした。 12祭司長さいしちょうたちは長老ちょうろうたちとあつまって協議きょうぎをこらし、兵卒へいそつたちにたくさんのかねあたえてった、 13「『弟子でしたちが夜中よなかにきて、われわれのているあいだかれぬすんだ』とえ。 14万一まんいちこのことが総督そうとくみみにはいっても、われわれが総督そうとくいて、あなたがたに迷惑めいわくからないようにしよう」。 15そこで、かれらはかねって、おしえられたとおりにした。そしてこのはなしは、今日きょういたるまでユダヤじんあいだにひろまっている。

16さて、十一にん弟子でしたちはガリラヤにって、イエスがかれらにくようにめいじられたやまのぼった。 17そして、イエスにってはいした。しかし、うたがものもいた。 18イエスはかれらにちかづいてきてわれた、「わたしは、てんにおいてもにおいても、いっさいの権威けんいさづけられた。 19それゆえに、あなたがたはって、すべての国民こくみん弟子でしとして、ちち聖霊せいれいとのによって、かれらにバプテスマをほどこし、 20あなたがたにめいじておいたいっさいのことをまもるようにおしえよ。よ、わたしはおわりまで、いつもあなたがたとともにいるのである」。