サムエル記上

第一章

1エフライムの山地さんちのラマタイム・ゾピムに、エルカナというひとがあった。エフライムびとで、エロハムのであった。エロハムはエリウの、エリウはトフの、トフはツフのである。 2エルカナには、ふたりのつまがあって、ひとりのはハンナといい、ひとりのはペニンナといった。ペニンナにはどもがあったが、ハンナにはどもがなかった。

3このひととしごとに、そのまちからシロにのぼっていって、万軍ばんぐんしゅはいし、しゅ犠牲ぎせいをささげるのをつねとした。シロには、エリのふたりの、ホフニとピネハスとがいて、しゅつかえる祭司さいしであった。 4エルカナは、犠牲ぎせいをささげるつまペニンナとそのむすこむすめにはみな、そのまえあたえた。 5エルカナはハンナをあいしていたが、彼女かのじょには、ただ一つのまえあたえるだけであった。しゅがそのたいざされたからである。 6また彼女かのじょにくんでいるつまは、ひどく彼女かのじょなやまして、しゅがそのたいざされたことをうらませようとした。 7こうしてとしれ、としけたが、ハンナがしゅみやのぼるごとに、ペニンナは彼女かのじょなやましたので、ハンナはいてべることもしなかった。 8おっとエルカナは彼女かのじょった、「ハンナよ、なぜくのか。なぜべないのか。どうしてこころかなしむのか。わたしはあなたにとって十にんどもよりもまさっているではないか」。

9シロでかれらがいしたのち、ハンナはちあがった。そのとき祭司さいしエリはしゅ神殿しんでんはしらのかたわらのにすわっていた。 10ハンナはこころふかかなしみ、しゅいのって、はげしくいた。 11そしてちかいをててった、「万軍ばんぐんしゅよ、まことに、はしためのなやみをかえりみ、わたしをおぼえ、はしためをわすれずに、はしためにおとこたまわりますなら、わたしはその一生いっしょうのあいだしゅにささげ、かみそりをそのあたまにあてません」。

12彼女かのじょしゅまえながいのっていたので、エリは彼女かのじょくちをとめた。 13ハンナはこころのうちでものっていたので、くちびるがうごくだけで、こえきこえなかった。それゆえエリは、っているのだとおもって、 14彼女かのじょった、「いつまでっているのか。いをさましなさい」。 15しかしハンナはこたえた、「いいえ、わがしゅよ。わたしは不幸ふこうおんなです。ぶどうしゅさけんだのではありません。ただしゅまえこころそそしていたのです。 16はしためを、わるおんなおもわないでください。つもうれいとなやみのゆえに、わたしはいままでものっていたのです」。 17そこでエリはこたえた、「安心あんしんしてきなさい。どうかイスラエルのかみがあなたのもとめるねがいをきとどけられるように」。 18彼女かのじょった、「どうぞ、はしためにも、あなたのまえめぐみをさせてください」。こうして、そのおんなって食事しょくじし、そのかおは、もはやかなしげではなくなった。

19かれらはあさはやきて、しゅまえ礼拝れいはいし、そして、ラマにあるいえかえってった。エルカナはつまハンナをり、しゅ彼女かのじょかえりみられたので、 20彼女かのじょはみごもり、そのときめぐってきて、おとこみ、「わたしがこのしゅもとめたからだ」といって、そのをサムエルとづけた。

21エルカナそのひととその家族かぞくとはみなのぼっていって、としごとの犠牲ぎせいと、ちかいのそなものとをささげた。 22しかしハンナはのぼってかず、おっとった、「わたしはこの乳離ちばなれしてから、しゅまえれていって、いつまでも、そこにおらせましょう」。 23おっとエルカナは彼女かのじょった、「あなたがいとおもうようにして、この乳離ちばなれするまでちなさい。ただどうかしゅがそのわれたことを実現じつげんしてくださるように」。こうしてそのおんなはとどまって、そのちちをのませ、乳離ちばなれするのをっていたが、 24乳離ちばなれしたとき、三さい雄牛おうしとう麦粉むぎこ一エパ、ぶどうしゅのはいったかわぶくろ一つをり、そのれて、シロにあるしゅみやった。そのはなおおさなかった。 25そしてかれらはそのうしころし、子供こどもをエリのもとへれてった。 26ハンナはった、「わがきみよ、あなたはきておられます。わたしは、かつてここにって、あなたのまえで、しゅいのったおんなです。 27このあたえてくださいと、わたしはいのりましたが、しゅはわたしのもとめたねがいをきとどけられました。 28それゆえ、わたしもこのしゅにささげます。この一生いっしょうのあいだしゅにささげたものです」。

そしてかれらはそこでしゅ礼拝れいはいした。

第二章

1ハンナはいのってった、
「わたしのこころしゅによってよろこび、
わたしのちからしゅによってつよめられた、
わたしのくちてきをあざわらう、
あなたのすくいによってわたしはたのしむからである。
2しゅのようにせいなるものはない、
あなたのほかには、だれもない、
われわれのかみのようないわはない。
3あなたがたはかさねて高慢こうまんかたってはならない、
たかぶりの言葉ことばくちにすることをやめよ。
しゅはすべてをかみであって、
もろもろのおこないはしゅによってはかられる。
4勇士ゆうしゆみれ、
よわものちからびる。
5りたものしょくのためにやとわれ、
えたものは、もはやえることがない。
うまずめは七にんみ、
おおくのをもつおんな孤独こどくとなる。
6しゅころし、またかし、
陰府よみにくだし、またうえげられる。
7しゅまずしくし、またませ、
ひくくし、またたかくされる。
8まずしいものを、ちりのなかからちあがらせ、
とぼしいものを、あくたのなかからげて、
王侯おうこうともにすわらせ、
栄誉えいよくらいがせられる。
はしらしゅのものであって、
そのはしらうえに、世界せかいをすえられたからである。
9しゅはその聖徒せいとたちのあしまもられる、
しかしわるいものどもは暗黒あんこくのうちにほろびる。
ひとちからをもってつことができないからである。
10しゅあらそうものは粉々こなごなくだかれるであろう、
しゅかれらにむかっててんからかみなりをとどろかし、
のはてまでもさばき、おうちからあたえ、
あぶらそそがれたものちからつよくされるであろう」。

11エルカナはラマにあるいえかえったが、おさ祭司さいしエリのまえにいてしゅつかえた。

12さて、エリのらは、よこしまな人々ひとびとで、しゅおそれなかった。 13たみのささげものについての祭司さいしのならわしはこうである。ひと犠牲ぎせいをささげるとき、そのにくあいだに、祭司さいしのしもべは、みつまたのにくしをってきて、 14それをかま、またはなべ、またはおおがま、またははちきいれ、にくしのげるものは祭司さいしがみな自分じぶんのものとした。かれらはシロで、そこにるすべてのイスラエルのひとに、このようにした。 15人々ひとびと脂肪しぼうまえにもまた、祭司さいしのしもべがきて、犠牲ぎせいをささげるひとうのであった、「祭司さいしのためににくあたえよ。祭司さいしはあなたからにくけない。なまにくがよい」。 16そのひとが、「まず脂肪しぼうかせましょう。そののちほしいだけってください」とうと、しもべは、「いや、いまもらいたい。くれないなら、わたしはちからづくで、それをろう」とう。 17このように、その若者わかものたちのつみは、しゅまえ非常ひじょうおおきかった。この人々ひとびとしゅそなものかろんじたからである。

18サムエルはまだおさなく、亜麻あまぬののエポデをけて、しゅまえつかえていた。 19ははかれのためにちいさい上着うわぎつくり、としごとに、おっとともにそのとし犠牲ぎせいをささげるためにのぼとき、それをってきた。 20エリはいつもエルカナとそのつま祝福しゅくふくしてった、「このおんなしゅにささげたもののかわりに、しゅがこのおんなによってあなたにあたえられるように」。そしてかれらはそのいえかえるのをつねとした。

21こうしてしゅがハンナをかえりみられたので、ハンナはみごもって、三にんおとことふたりのおんなんだ。わらべサムエルはしゅまえそだった。

22エリはひじょうにとしをとった。そしてそのらがイスラエルの人々ひとびとにしたいろいろのことをき、また会見かいけん幕屋まくや入口いりぐちつとめていたおんなたちとたことをいて、 23かれらにった、「なにゆえ、そのようなことをするのか。わたしはこのすべてのたみから、あなたがたのわるいおこないのことをく。 24わがらよ、それはいけない。わたしのく、しゅたみいふらしている風説ふうせつくない。 25もしひとひとたいしてつみおかすならば、かみ仲裁ちゅうさいされるであろう。しかしひとしゅたいしてつみおかすならば、だれが、そのとりなしをすることができようか」。しかしかれらはちちうことにみみかたむけようともしなかった。しゅかれらをころそうとされたからである。

26わらべサムエルはそだっていき、しゅにも、人々ひとびとにも、ますますあいせられた。

27このとき、ひとりのかみひとが、エリのもとにきてった、「しゅはかくおおせられる、『あなたの先祖せんぞいえがエジプトでパロのいえ奴隷どれいであったとき、わたしはその先祖せんぞいえみずからをあらわした。 28そしてイスラエルのすべての部族ぶぞくのうちからそれをえらして、わたしの祭司さいしとし、わたしの祭壇さいだんのぼって、こうをたかせ、わたしのまえでエポデをけさせ、また、イスラエルの人々ひとびと火祭かさいをことごとくあなたの先祖せんぞいえあたえた。 29それにどうしてあなたがたは、わたしがめいじた犠牲ぎせいそなものをむさぼりのをもってるのか。またなにゆえ、わたしよりも自分じぶんらをたっとび、わたしのたみイスラエルのささげるもろもろのそなものの、もっと部分ぶぶんをもって自分じぶんやすのか』。 30それゆえイスラエルのかみしゅおおせられる、『わたしはかつて、「あなたのいえとあなたのちちいえとは、永久えいきゅうにわたしのまえあゆむであろう」とった』。しかしいましゅおおせられる、『けっしてそうはしない。わたしをたっとものを、わたしはたっとび、わたしをいやしめるものは、かろんぜられるであろう。 31よ、るであろう。その、わたしはあなたのちからと、あなたのちちいえちからち、あなたのいえ年老としおいたものをなくするであろう。 32そのとき、あなたはわざわいのうちにあって、イスラエルにあたえられるもろもろの繁栄はんえいを、ねたみるであろう。あなたのいえには永久えいきゅう年老としおいたものがいなくなるであろう。 33しかしあなたの一族いちぞくのひとりを、わたしの祭壇さいだんからたないであろう。かれのこされてそのきはらし、こころいためるであろう。またあなたのいえうまるものは、みなつるぎにぬであろう。 34あなたのふたりのホフニとピネハスのおこることが、あなたのためにそのしるしとなるであろう。すなわちそのふたりはともおなぬであろう。 35わたしは自分じぶんのために、ひとりの忠実ちゅうじつ祭司さいしおこす。そのひとはわたしのこころおもいとにしたがっておこなうであろう。わたしはそのいえ確立かくりつしよう。そのひとはわたしがあぶらそそいだものまえにつねにあゆむであろう。 36そしてあなたのいえのこっている人々ひとびとはみなきて、かれに一まいぎんと一のパンをもとめ、「どうぞ、わたしを祭司さいししょくの一つににんじ、一口ひとくちのパンでもべることができるようにしてください」とうであろう』」。

第三章

1わらべサムエルは、エリのまえで、しゅつかえていた。そのころ、しゅ言葉ことばはまれで、黙示もくしつねではなかった。

2さてエリは、しだいにがかすんで、ることができなくなり、そのとき自分じぶんのへやでていた。 3かみのともしびはまだえず、サムエルがかみはこのあるしゅ神殿しんでんていたとき 4しゅは「サムエルよ、サムエルよ」とばれた。かれは「はい、ここにおります」とって、 5エリのところはしっていってった、「あなたがおおよびになりました。わたしは、ここにおります」。しかしエリはった、「わたしはばない。かえってなさい」。かれってた。 6しゅはまたかさねて「サムエルよ、サムエルよ」とばれた。サムエルはきてエリのもとへってった、「あなたがおおよびになりました。わたしは、ここにおります」。エリはった、「よ、わたしはばない。もう一なさい」。 7サムエルはまだしゅらず、しゅ言葉ことばがまだかれあらわされなかった。 8しゅはまた三度目どめにサムエルをばれたので、サムエルはきてエリのもとへってった、「あなたがおおよびになりました。わたしは、ここにおります」。そのとき、エリはしゅがわらべをばれたのであることをさとった。 9そしてエリはサムエルにった、「ってなさい。もしあなたをばれたら、『しもべはきます。しゅよ、おはなしください』といなさい」。サムエルはって自分じぶんところた。

10しゅはきてち、まえのように、「サムエルよ、サムエルよ」とばれたので、サムエルはった、「しもべはきます。おはなしください」。 11そのときしゅはサムエルにわれた、「よ、わたしはイスラエルのうちに一つのことをする。それをものはみな、みみが二つともるであろう。 12そのには、わたしが、かつてエリのいえについてはなしたことを、はじめからおわりまでことごとく、エリにおこなうであろう。 13わたしはエリに、かれっている悪事あくじのゆえに、そのいえ永久えいきゅうばっすることをげる。そのらがかみをけがしているのに、かれがそれをとめなかったからである。 14それゆえ、わたしはエリのいえちかう。エリのいえあくは、犠牲ぎせいそなものをもってしても、永久えいきゅうにあがなわれないであろう」。

15サムエルはあさまでて、しゅみやをあけたが、サムエルはそのまぼろしのことをエリにかたるのをおそれた。 16しかしエリはサムエルをんでった、「わがサムエルよ」。サムエルはった、「はい、ここにおります」。 17エリはった、「何事なにごとをおげになったのか。かくさずはなしてください。もしおげになったことを一つでもかくして、わたしにわないならば、どうぞかみがあなたをばっし、さらにおもばっせられるように」。 18そこでサムエルは、そのことをことごとくはなして、なにかれかくさなかった。エリはった、「それはしゅである。どうぞしゅが、いとおもうことをおこなわれるように」。

19サムエルはそだっていった。しゅかれともにおられて、その言葉ことばを一つもちないようにされたので、 20ダンからベエルシバまで、イスラエルのすべてのひとは、サムエルがしゅ預言者よげんしゃさだめられたことをった。 21しゅはふたたびシロであらわれられた。すなわちしゅはシロで、しゅ言葉ことばによって、サムエルにみずからをあらわされた。こうしてサムエルの言葉ことばは、あまねくイスラエルの人々ひとびとおよんだ。

第四章

1イスラエルびとはてペリシテびととたたかおうとして、エベネゼルのほとりにじんをしき、ペリシテびとはアペクにじんをしいた。 2ペリシテびとはイスラエルびとにむかってじんそなえをしたが、たたかうにおよんで、イスラエルびとはペリシテびとのまえやぶれ、ペリシテびとは戦場せんじょうにおいて、おおよそ四千にんころした。 3たみ陣営じんえい退しりぞいたとき、イスラエルの長老ちょうろうたちはった、「なにゆえ、しゅはきょう、ペリシテびとのまえにわれわれをやぶられたのか。シロへってしゅ契約けいやくはこをここへたずさえてくることにしよう。そしてしゅをわれわれのうちにむかえて、てきからすくっていただこう」。 4そこでたみひとをシロにつかわし、ケルビムのうえしておられる万軍ばんぐんしゅ契約けいやくはこを、そこからたずさえてこさせた。そのときエリのふたりの、ホフニとピネハスはかみ契約けいやくはこともに、そのところにいた。

5しゅ契約けいやくはこ陣営じんえいについたとき、イスラエルびとはみな大声おおごえさけんだので、ひびいた。 6ペリシテびとは、そのさけごえいてった、「ヘブルびとの陣営じんえいの、このおおきなさけごえ何事なにごとか」。そしてしゅはこが、陣営じんえいいたことをったとき 7ペリシテびとはおそれてった、「神々かみがみ陣営じんえいにきたのだ」。かれらはまたった、「ああ、われわれはわざわいである。このようなことはいままでなかった。 8ああ、われわれはわざわいである。だれがわれわれをこれらのつよ神々かみがみからすくすことができようか。これらの神々かみがみは、もろもろのわざわいをもってエジプトびとを荒野あらのったのだ。 9ペリシテびとよ、勇気ゆうきしておとこらしくせよ。ヘブルびとがあなたがたにつかえたように、あなたがたがかれらにつかえることのないために、おとこらしくたたかえ」。

10こうしてペリシテびとがたたかったので、イスラエルびとはやぶれて、おのおのそのいえげてかえった。戦死者せんししゃはひじょうにおおく、イスラエルの歩兵ほへいたおれたものは三万であった。 11またかみはこうばわれ、エリのふたりの、ホフニとピネハスはころされた。

12そのひとりのベニヤミンびとが、衣服いふくき、あたまつちをかぶって、戦場せんじょうからはしってシロにきた。 13かれいたとき、エリはみちのかたわらにある自分じぶんにすわってちかまえていた。そのこころかみはこことづかっていたからである。そのひとまちにはいって、情報じょうほうをつたえたので、まちはこぞってさけんだ。 14エリはそのさけごえいてった、「このさわこえなにか」。そのひといそいでエリのところへきてエリにげた。 15そのときエリは九十八さいで、そのかたまってることができなかった。 16そのひとはエリにった、「わたしは戦場せんじょうからきたものです。きょう戦場せんじょうからのがれたのです」。エリはった、「わがよ、様子ようすはどうであったか」。 17しらせをもたらしたそのひとこたえてった、「イスラエルびとは、ペリシテびとのまえからげ、たみのうちにはまたおおくの戦死者せんししゃがあり、あなたのふたりの、ホフニとピネハスもに、かみはこうばわれました」。 18かれかみはこのことをったとき、エリはそのから、あおむけにもんのかたわらにち、くびってんだ。いておもかったからである。かれのイスラエルをさばいたのは四十ねんであった。

19かれよめ、ピネハスのつまはみごもって出産しゅっさんときちかづいていたが、かみはこうばわれたこと、しゅうととおっとんだというしらせをいたとき、陣痛じんつうおこをかがめてんだ。 20彼女かのじょにかかっているとき世話せわをしていたおんな彼女かのじょった、「おそれることはありません。おとこうまれました」。しかし彼女かのじょこたえもせず、またかえりみもしなかった。 21ただ彼女かのじょは「栄光えいこうはイスラエルをった」とって、そのをイカボデとづけた。これはかみはこうばわれたこと、また彼女かのじょのしゅうととおっとのことによるのである。 22彼女かのじょはまた、「栄光えいこうはイスラエルをった。かみはこうばわれたからです」とった。

第五章

1ペリシテびとはかみはこをぶんどって、エベネゼルからアシドドにはこんできた。 2そしてペリシテびとはそのかみはこってダゴンのみやはこびこみ、ダゴンのかたわらにいた。 3アシドドの人々ひとびとが、つぎはやきてると、ダゴンがしゅはこまえに、うつむきにたおれていたので、かれらはダゴンをおこして、それをもとのところいた。 4そのつぎあさまたはやきてると、ダゴンはまた、しゅはこまえに、うつむきにたおれていた。そしてダゴンのあたま両手りょうてとはれてはなれ、しきいのうえにあり、ダゴンはただ胴体どうたいだけとなっていた。 5それゆえダゴンの祭司さいしたちやダゴンのみやにはいる人々ひとびとは、だれも今日こんにちにいたるまで、アシドドのダゴンのしきいをまない。

6そしてしゅはアシドドびとのうえにきびしくのぞみ、しゅ腫物はれものをもってアシドドとその領域りょういき人々ひとびとおそれさせ、またなやまされた。 7アシドドの人々ひとびとは、このありさまをった、「イスラエルのかみはこを、われわれのところに、とどめいてはならない。そのかみが、われわれと、われわれのかみダゴンのうえにきびしくのぞむからである」。 8そこでかれらはひとをつかわして、ペリシテびとのきみたちをあつめてった、「イスラエルのかみはこをどうしましょう」。かれらはった、「イスラエルのかみはこはガテにうつそう」。人々ひとびとはイスラエルのかみはこをそこにうつした。 9かれらがそれをうつすと、しゅがそのまちのぞみ、非常ひじょうさわぎがった。そして老若ろうにゃくわずまち人々ひとびとたれたので、かれらの腫物はれものができた。 10そこで人々ひとびとかみはこをエクロンにおくったが、かみはこがエクロンにいたとき、エクロンの人々ひとびとさけんでった、「かれらがイスラエルのかみはこをわれわれのところうつしたのは、われわれとたみほろぼすためである」。 11そこでかれらはひとをつかわして、ペリシテびとのきみたちをみなあつめてった、「イスラエルのかみはこおくして、もとのところかえし、われわれとたみほろぼすことのないようにしよう」。おそろしいさわぎが町中まちぢゅうっていたからである。そこにはかみ非常ひじょうにきびしくのぞんでいたので、 12なないひと腫物はれものをもってたれ、まちさけびはてんたっした。

第六章

1しゅはこは七かげつあいだペリシテびとのにあった。 2ペリシテびとは、祭司さいしうらなんでった、「イスラエルのかみはこをどうしましょうか。どのようにして、それをもとのところおくかえせばよいかげてください」。 3かれらはった、「イスラエルのかみはこおくかえときには、それをむなしくかえしてはならない。かならかれにとがのそなものをもってつぐないをしなければならない。そうすれば、あなたがたはいやされ、またかれがなぜあなたがたをはなれないかをることができるであろう」。 4人々ひとびとった、「われわれがつぐなうとがのそなものにはなにをしましょうか」。かれらはこたえた、「ペリシテびとのきみたちのかずにしたがって、きん腫物はれもの五つときんのねずみ五つである。あなたがたすべてと、きみたちにのぞんだわざわいは一つだからである。 5それゆえ、あなたがたの腫物はれものぞうと、あらすねずみのぞうつくり、イスラエルのかみ栄光えいこうするならば、たぶんかれは、あなたがた、およびあなたがたの神々かみがみと、あなたがたのに、そのくわえることをかるくされるであろう。 6なにゆえ、あなたがたはエジプトびととパロがそのこころをかたくなにしたように、自分じぶんこころをかたくなにするのか。かみかれらをなやましたので、かれらはたみかせ、たみったではないか。 7それゆえいまあたらしいくるまりょうつくり、まだくびきをけたことのない乳牛にゅうぎゅうとうをとり、そのうしくるまにつなぎ、そのおのおののうし乳牛にゅうぎゅうからはなしていえかえり、 8しゅはこをとって、それをそのくるませ、あなたがたがとがのそなものとしてかれつぐなきんつくものを一つのはこにおさめてそのかたわらにき、それをおくってらせなさい。 9そしてていて、それが自分じぶん領地りょうちみちを、ベテシメシへのぼるならば、このおおいなるわざわいを、われわれにくだしたのはかれである。しかし、そうしないときは、われわれをったのはかれではなく、そのこと偶然ぐうぜんであったことをるであろう」。

10人々ひとびとはそのようにした。すなわち、かれらは二とう乳牛にゅうぎゅうをとって、これをくるまにつなぎ、そのおのおののうしいえじこめ、 11しゅはこ、およびきんのねずみと、腫物はれものぞうをおさめたはことをくるませた。 12すると雌牛めうしはまっすぐにベテシメシの方向ほうこうへ、ひとすじに大路おおじあゆみ、きながらすすんでいって、みぎにもひだりにもまがらなかった。ペリシテびとのきみたちは、ベテシメシのさかいまでそのあとについていった。 13ときにベテシメシの人々ひとびとたに小麦こむぎれていたが、をあげて、そのはこ、それをむかえてよろこんだ。 14くるまはベテシメシびとヨシュアのはたけにはいって、そこにとどまった。そのところおおきないしがあった。人々ひとびとくるまり、その雌牛めうし燔祭はんさいとしてしゅにささげた。 15レビびとはしゅはこと、そのかたわらの、きんつくものをおさめたはこりおろし、それを大石おおいしうえいた。そしてベテシメシの人々ひとびとは、そのしゅ燔祭はんさいそなえ、犠牲ぎせいをささげた。 16ペリシテびとの五にんきみたちはこれをて、その、エクロンにかえった。

17ペリシテびとが、とがのそなものとして、しゅつぐないをしたきん腫物はれものは、つぎのとおりである。すなわちアシドドのために一つ、ガザのために一つ、アシケロンのために一つ、ガテのために一つ、エクロンのために一つであった。 18またきんのねずみは、城壁じょうへきをめぐらしたまちから城壁じょうへきのない村里むらざとにいたるまで、すべて五にんきみたちにぞくするペリシテびとのまちかずにしたがってつくった。しゅはこをおろしたところのかたわらにあった大石おおいしは、今日こんにちにいたるまで、ベテシメシびとヨシュアのはたけにあって、あかしとなっている。

19ベテシメシの人々ひとびとしゅはこなかたものがあったので、しゅはこれをたれた。すなわちたみのうち七十にんたれた。しゅたみっておおくのものころされたので、たみはなげきかなしんだ。 20ベテシメシの人々ひとびとった、「だれが、このせいなるかみしゅまえつことができようか。しゅはわれわれをはなれてだれのところのぼってかれたらよいのか」。 21そしてかれらは、使者ししゃをキリアテ・ヤリムの人々ひとびとにつかわしてった、「ペリシテびとがしゅはこかえしたから、くだってきて、それをあなたがたのところたずさのぼってください」。

第七章

1キリアテ・ヤリムの人々ひとびとは、きて、しゅはこたずさのぼり、おかうえのアビナダブのいえってきて、そのエレアザルを聖別せいべつして、しゅはこまもらせた。 2そのはこひさしくキリアテ・ヤリムにとどまって、二十ねんた。イスラエルの全家ぜんかしゅしたってなげいた。

3そのときサムエルはイスラエルの全家ぜんかげていった、「もし、あなたがたが一心いっしんしゅかえるのであれば、ほかの神々かみがみとアシタロテを、あなたがたのうちからり、こころしゅけ、しゅにのみつかえなければならない。そうすれば、しゅはあなたがたをペリシテびとのからすくされるであろう」。 4そこでイスラエルの人々ひとびとはバアルとアシタロテをり、ただしゅにのみつかえた。

5サムエルはまたった、「イスラエルびとを、ことごとくミヅパにあつめなさい。わたしはあなたがたのためにしゅいのりましょう」。 6人々ひとびとはミヅパにあつまり、みずをくんでそれをしゅまえそそぎ、その断食だんじきしてそのところった、「われわれはしゅたいしてつみおかした」。サムエルはミヅパでイスラエルの人々ひとびとをさばいた。 7イスラエルの人々ひとびとのミヅパにあつまったことがペリシテびとにきこえたので、ペリシテびとのきみたちは、イスラエルにのぼってきた。イスラエルの人々ひとびとはそれをいて、ペリシテびとをおそれた。 8そしてイスラエルの人々ひとびとはサムエルにった、「われわれのため、われわれのかみしゅさけぶことを、やめないでください。そうすればしゅがペリシテびとのからわれわれをすくされるでしょう」。 9そこでサムエルはちち小羊こひつじとうをとり、これをまった燔祭はんさいとしてしゅにささげた。そしてサムエルはイスラエルのためにしゅさけんだので、しゅはこれにこたえられた。 10サムエルが燔祭はんさいをささげていたとき、ペリシテびとはイスラエルとたたかおうとしてちかづいてきた。しかししゅはそのおおいなるかみなりをペリシテびとのうえにとどろかせて、かれらをみだされたので、かれらはイスラエルびとのまえやぶれてげた。 11イスラエルの人々ひとびとはミヅパをてペリシテびとをい、これをって、ベテカルのしたまでった。

12そのときサムエルは一つのいしをとってミヅパとエシャナのあいだにすえ、「しゅいまいたるまでわれわれをたすけられた」とって、そのをエベネゼルとづけた。 13こうしてペリシテびとは征服せいふくされ、ふたたびイスラエルの領地りょうちに、はいらなかった。サムエルの一生いっしょうあいだしゅが、ペリシテびとをふせいだ。 14ペリシテびとがイスラエルからった町々まちまちは、エクロンからガテまで、イスラエルにかえり、イスラエルはその周囲しゅういをもペリシテびとのからりかえした。またイスラエルとアモリびととのあいだには平和へいわがあった。

15サムエルは一生いっしょうあいだイスラエルをさばいた。 16としごとにサムエルはベテルとギルガル、およびミヅパをめぐって、その所々ところどころでイスラエルをさばき、 17ラマにかえった。そこにかれいえがあったからである。そのところでもかれはイスラエルをさばき、またそこでしゅ祭壇さいだんきずいた。

第八章

1サムエルは年老としおいて、そのらをイスラエルのさばきづかさとした。 2長子ちょうしはヨエルといい、つぎはアビヤとった。かれらはベエルシバでさばきづかさであった。 3しかしそのらはちちみちあゆまないで、にむかい、まいないをって、さばきをげた。

4このとき、イスラエルの長老ちょうろうたちはみなあつまってラマにおるサムエルのもとにきて、 5った、「あなたは年老としおい、あなたのたちはあなたのみちあゆまない。いまほかの国々くにぐにのように、われわれをさばくおうを、われわれのためにててください」。 6しかしかれらが、「われわれをさばくおうを、われわれにあたえよ」とうのをいて、サムエルはよろこばなかった。そしてサムエルがしゅいのると、 7しゅはサムエルにわれた、「たみが、すべてあなたにところこえしたがいなさい。かれらがてるのはあなたではなく、わたしをてて、かれらのうえにわたしがおうであることをみとめないのである。 8かれらは、わたしがエジプトからのぼったから、きょうまで、わたしをててほかの神々かみがみつかえ、さまざまのことをわたしにしたように、あなたにもしているのである。 9いまそのこえしたがいなさい。ただし、ふかかれらをいましめて、かれらをおさめるおうのならわしをかれらにしめさなければならない」。

10サムエルはおうてることをもとめるたみしゅ言葉ことばをことごとくげて、 11った、「あなたがたをおさめるおうのならわしはつぎのとおりである。かれはあなたがたのむすこをって、戦車せんしゃたいれ、騎兵きへいとし、自分じぶん戦車せんしゃまえはしらせるであろう。 12かれはまたそれを千にんちょう、五十にんちょうにんじ、またそのたがやさせ、その作物さくもつらせ、またその武器ぶき戦車せんしゃ装備そうびつくらせるであろう。 13また、あなたがたのむすめって、こうをつくるものとし、料理りょうりをするものとし、パンをものとするであろう。 14また、あなたがたのはたけとぶどうはたけとオリブはたけもっとものって、その家来けらいあたえ、 15あなたがたの穀物こくもつと、ぶどうはたけの、十ぶんの一をって、その役人やくにん家来けらいあたえ、 16また、あなたがたの男女だんじょ奴隷どれいおよび、あなたがたのもっとうしとろばをって、自分じぶんのためにはたらかせ、 17また、あなたがたのひつじの十ぶんの一をり、あなたがたは、その奴隷どれいとなるであろう。 18そしてそのあなたがたは自分じぶんのためにえらんだおうのゆえにばわるであろう。しかししゅはそのにあなたがたにこたえられないであろう」。

19ところがたみはサムエルのこえしたがうことをこばんでった、「いいえ、われわれをおさめるおうがなければならない。 20われわれも国々くにぐにのようになり、おうがわれわれをさばき、われわれをひきいて、われわれのたたかいにたたかうのである」。 21サムエルはたみ言葉ことばをことごとくいて、それをしゅみみげた。 22しゅはサムエルにわれた、「かれらのこえしたがい、かれらのためにおうてよ」。サムエルはイスラエルの人々ひとびとった、「あなたがたは、めいめいそのまちかえりなさい」。

第九章

1さて、ベニヤミンのひとで、キシという裕福ゆうふくひとがあった。キシはアビエルの、アビエルはゼロルの、ゼロルはベコラテの、ベコラテはアピヤの、アピヤはベニヤミンびとである。 2キシにはサウルというがあった。わかくてうるわしく、イスラエルの人々ひとびとのうちにかれよりもうるわしいひとはなく、たみのだれよりもかたからうえたかかった。

3サウルのちちキシのすうとうのろばがいなくなった。そこでキシは、そのサウルにった、「しもべをひとりれて、ってき、ろばをさがしてきなさい」。 4そこでふたりはエフライムの山地さんちとおりすぎ、シャリシャのとおぎたけれども見当みあたらず、シャリムのとおぎたけれどもおらず、ベニヤミンのとおぎたけれども見当みあたらなかった。

5かれらがツフのにきたとき、サウルはれてきたしもべにった、「さあ、かえろう。ちちは、ろばのことよりも、われわれのことを心配しんぱいするだろう」。 6ところが、しもべはった、「このまちにはかみひとがおられます。たっとひとで、そのわれることはみなそのとおりになります。そのところきましょう。われわれのてきたたびのことについてなにしめされるでしょう」。 7サウルはしもべにった、「しかしくのであれば、そのひとなにおくろうか。ふくろのパンはもはや、なくなり、かみひとっていくおくものがない。なにかありますか」。 8しもべは、またサウルにこたえた、「わたしのに四ぶんの一シケルのぎんがあります。わたしはこれを、かみひとあたえて、われわれのみちしめしてもらいましょう」。 9――むかしイスラエルでは、かみうためにときには、こうった、「さあ、われわれは先見者せんけんしゃのところへこう」。いま預言者よげんしゃは、むかし先見者せんけんしゃといわれていたのである。―― 10サウルはそのしもべにった、「それはい。さあ、こう」。こうしてかれらは、かみひとのいるそのまちった。

11かれらはまちさかのぼっているときみずをくむためにてくるおとめたちに出会であったので、かれらにった、「先見者せんけんしゃはここにおられますか」。 12おとめたちはこたえた、「おられます。ごらんなさい、このさきです。いそいできなさい。たみがきょうたかところ犠牲ぎせいをささげるので、たったいままちにこられたところです。 13あなたがたは、まちにはいるとすぐ、あのかたがたかところのぼって食事しょくじされるまええるでしょう。たみはそのかたがこられるまでは食事しょくじをしません。あのかたが犠牲ぎせい祝福しゅくふくされてから、まねかれた人々ひとびと食事しょくじをするのです。さあ、のぼっていきなさい。すぐにえるでしょう」。 14こうしてかれらはまちのぼっていった。そしてまちなかに、はいろうとしたとき、サムエルはたかところのぼるためかれらのほうにかっててきた。

15さてサウルがる一にちまえに、しゅはサムエルのみみげてわれた、 16「あすのいまごろ、あなたのところに、ベニヤミンのから、ひとりのひとをつかわすであろう。あなたはそのひとあぶらそそいで、わたしのたみイスラエルのきみとしなさい。かれはわたしのたみをペリシテびとのからすくすであろう。わたしのたみさけびがわたしにとどき、わたしがそのなやみをかえりみるからである」。 17サムエルがサウルをときしゅわれた、「よ、わたしのったのはこのひとである。このひとがわたしのたみおさめるであろう」。 18そのときサウルは、もんなかでサムエルにちかづいてった、「先見者せんけんしゃいえはどこですか。どうかおしえてください」。 19サムエルはサウルにこたえた、「わたしがその先見者せんけんしゃです。わたしのまえって、たかところのぼりなさい。あなたがたは、きょう、わたしと一緒いっしょ食事しょくじしなさい。わたしはあすのあさあなたをかえらせ、あなたのこころにあることをみなしめしましょう。 20まえに、いなくなったあなたのろばは、もはやつかったのでこころにかけなくてもよろしい。しかしイスラエルのすべてののぞましきものはだれのものですか。それはあなたのもの、あなたのちちいえのすべてのひとのものではありませんか」。 21サウルはこたえた、「わたしはイスラエルのうちのもっとちいさい部族ぶぞくのベニヤミンびとであって、わたしの一族いちぞくはまたベニヤミンのどの一族いちぞくよりもいやしいものではありませんか。どうしてあなたは、そのようなことをわたしにわれるのですか」。

22サムエルはサウルとそのしもべをみちびいて、へやにはいり、まねかれた三十にんほどのうちの上座かみざにすわらせた。 23そしてサムエルは料理りょうりにんった、「あなたにわたして、りのけておくようにとっておいたぶんってきなさい」。 24料理りょうりにんは、ももとそのうえ部分ぶぶんげて、それをサウルのまえいた。そしてサムエルはった、「ごらんなさい。っておいたものが、あなたのまえかれています。しあがってください。あなたが客人きゃくじんたちと一緒いっしょ食事しょくじができるように、このときまで、あなたのためにっておいたものです」。

こうしてサウルはそのサムエルと一緒いっしょ食事しょくじをした。 25そしてかれらがたかところくだってまちにはいったとき、サウルのために屋上おくじょうとこもうけられ、かれはそのうえよこたえてた。 26そして夜明よあけになって、サムエルは屋上おくじょうのサウルにばわってった、「きなさい。あなたをおおくりします」。サウルはがった。そしてサウルとサムエルのふたりは、ともそとた。

27かれらがまちはずれにくだったとき、サムエルはサウルにった、「あなたのしもべにさきくようにいなさい。しもべがさきったら、あなたは、しばらくここにちとどまってください。かみ言葉ことばらせましょう」。

第一〇章

1そのときサムエルはあぶらのびんをって、サウルのあたまそそぎ、かれくちづけしてった、「しゅはあなたにあぶらそそいで、そのたみイスラエルのきみとされたではありませんか。あなたはしゅたみおさめ、周囲しゅういてきからかれらをすくわなければならない。しゅがあなたにあぶらそそいで、そのぎょうきみとされたことの、しるしはつぎのとおりです。 2あなたがきょう、わたしをはなれて、ってくとき、ベニヤミンの領地りょうちのゼルザにあるラケルのはかのかたわらで、ふたりのひとうでしょう。そしてかれらはあなたにいます、『あなたがさがしにかれたろばはつかりました。いま父上ちちうえは、ろばよりもあなたがたのこと心配しんぱいして、「わがのことは、どうしよう」とっておられます』。 3あなたが、そこからなおすすんで、タボルのかしのところくと、そこでベテルにのぼってかみおがもうとする三にんものうでしょう。ひとりは三とうやぎをれ、ひとりは三つのパンをたずさえ、ひとりは、ぶどうしゅのはいったかわぶくろ一つをたずさえている。 4かれらはあなたにあいさつし、二つのパンをくれるでしょう。あなたはそれを、そのからけなければならない。 5そののち、あなたはかみのギベアへく。そこはペリシテびとの守備しゅびへいのいるところである。あなたはそのところって、まちにはいるとき立琴たてごとつづみふえこと人々ひとびとさきかせて、預言よげんしながらたかところからりてくる一群いちぐん預言者よげんしゃうでしょう。 6そのときしゅれいがあなたのうえにもはげしくくだって、あなたはかれらと一緒いっしょ預言よげんし、かわってあたらしいひととなるでしょう。 7これらのしるしが、あなたのったならば、あなたは手当てあたりしだいになんでもしなさい。かみがあなたと一緒いっしょにおられるからです。 8あなたはわたしに先立さきだってギルガルにくだらなければならない。わたしはあなたのもとにくだっていって、燔祭はんさいそなえ、酬恩祭しゅうおんさいをささげるでしょう。わたしがあなたのもとにって、あなたのしなければならないことをあなたにしめすまで、七日なぬかのあいだたなければならない」。

9サウルがをかえしてサムエルをはなれたとき、かみかれあたらしいこころあたえられた。これらのしるしはみなそのった。 10かれらはギベアにきたとき預言者よげんしゃ一群いちぐん出会であった。そしてかみれいが、はげしくサウルのうえくだり、かれかれらのうちにいて預言よげんした。 11もとからサウルをっていた人々ひとびとはみな、サウルが預言者よげんしゃたちととも預言よげんするのをたがいった、「キシの何事なにごとったのか。サウルもまた預言者よげんしゃたちのうちにいるのか」。 12そのところのひとりのものこたえた、「かれらのちちはだれなのか」。それで「サウルもまた預言者よげんしゃたちのうちにいるのか」というのが、ことわざとなった。 13サウルは預言よげんすることをえて、たかところった。

14サウルのおじが、サウルとそのしもべとにった、「あなたがたは、どこへったのか」。サウルはった、「ろばをさがしにいったのですが、どこにもいないので、サムエルのもとにきました」。 15サウルのおじはった、「サムエルが、どんなことをったか、どうぞはなしてください」。 16サウルはおじにった、「ろばがつかったと、はっきり、わたしたちにいました」。しかしサムエルがった王国おうこくのことについて、おじにはなにげなかった。

17さて、サムエルはたみをミヅパでしゅまえあつめ、 18イスラエルの人々ひとびとった、「イスラエルのかみしゅはこうおおせられる、『わたしはイスラエルをエジプトからみちびし、あなたがたをエジプトびとの、およびすべてあなたがたをしえたげる王国おうこくからすくした』。 19しかしあなたがたは、きょう、あなたがたをそのなやみとくるしみのなかからすくわれるあなたがたのかみて、そのうえ、『いいえ、われわれのうえおうてよ』とう。それゆえいま、あなたがたは、部族ぶぞくにしたがい、また氏族しぞくにしたがって、しゅまえなさい」。

20こうしてサムエルがイスラエルのすべての部族ぶぞくせたとき、ベニヤミンの部族ぶぞくが、くじにあたった。 21またベニヤミンの部族ぶぞくをその氏族しぞくにしたがってせたとき、マテリの氏族しぞくが、くじにあたり、マテリの氏族しぞくひとごとにせたとき、キシのサウルが、くじにあたった。しかし人々ひとびとかれさがしたときつからなかった。 22そこでまたしゅに「そのひとはここにきているのですか」とうと、しゅわれた、「かれ荷物にもつあいだかくれている」。 23人々ひとびとはしってって、かれをそこかられてきた。かれたみなかったが、かたからうえは、たみのどのひとよりもたかかった。 24サムエルはすべてのたみった、「しゅえらばれたひとをごらんなさい。たみのうちにかれのようなひとはないではありませんか」。たみはみな「おう万歳ばんざい」とさけんだ。

25そのときサムエルは王国おうこくのならわしをたみかたり、それをしょにしるして、しゅまえにおさめた。こうしてサムエルはすべてのたみをそれぞれいえかえらせた。 26サウルもまたギベアにあるかれいえかえった。そしてかみにそのこころうごかされた勇士ゆうしたちもかれともった。 27しかし、よこしまな人々ひとびとは「このおとこがどうしてわれわれをすくうことができよう」とって、かれかろんじ、おくものをしなかった。しかしサウルはだまっていた。

第一一章

1アンモンびとナハシはのぼってきて、ヤベシ・ギレアデをかこんだ。ヤベシの人々ひとびとはナハシにった、「われわれと契約けいやくむすびなさい。そうすればわれわれはあなたにつかえます」。 2しかしアンモンびとナハシはかれらにった、「つぎ条件じょうけんであなたがたと契約けいやくむすぼう。すなわち、わたしが、あなたがたすべてのみぎをえぐりって、ぜんイスラエルをはずかしめるということだ」。 3ヤベシの長老ちょうろうたちはかれった、「われわれに七日なぬか猶予ゆうよあたえ、イスラエルのぜん領土りょうど使者ししゃおくることをゆるしてください。そしてもしわれわれをすくものがないとき降伏こうふくします」。 4こうして使者ししゃが、サウルのギベアにきて、このことたみみみげたので、たみはみなこえをあげていた。

5そのときサウルははたけからうしのあとについてきた。そしてサウルはった、「たみいているのは、どうしたのか」。人々ひとびとかれにヤベシの人々ひとびとことげた。 6サウルがこの言葉ことばいたときかみれいはげしくかれうえのぞんだので、かれいかりははなはだしくえた。 7かれは一くびきのうしをとり、それをき、使者ししゃによってイスラエルのぜん領土りょうどおくってわせた、「だれであってもサウルとサムエルとにしたがってないものは、そのうしがこのようにされるであろう」。たみしゅおそれて、ひとりのようにてきた。 8サウルはベゼクでそれをかぞえたが、イスラエルの人々ひとびとは三十万、ユダの人々ひとびとは三万であった。 9そして人々ひとびとは、きた使者ししゃたちにった、「ヤベシ・ギレアデのひとにこういなさい、『あす、あつくなるころ、あなたがたはすくいるであろう』と」。使者ししゃかえって、ヤベシの人々ひとびとげたので、かれらはよろこんだ。 10そこでヤベシの人々ひとびとった、「あす、われわれは降伏こうふくします。なんでも、あなたがたがいとおもうことを、われわれにしてください」。 11くる、サウルはたみを三つの部隊ぶたいけ、あかつきにてき陣営じんえいり、あつくなるころまで、アンモンびとをころした。のこったものはちりぢりになって、ふたり一緒いっしょにいるものはなかった。

12そのときたみはサムエルにった、「さきに、『サウルがどうしてわれわれをおさめることができようか』とったものはだれでしょうか。その人々ひとびとしてください。われわれはその人々ひとびところします」。 13しかしサウルはった、「しゅはきょう、イスラエルにすくいほどこされたのですから、きょうはひところしてはなりません」。 14そこでサムエルはたみった、「さあ、ギルガルへって、あそこで王国おうこく一新いっしんしよう」。 15こうしてたみはみなギルガルへって、そのところしゅまえにサウルをおうとし、酬恩祭しゅうおんさいしゅまえにささげ、サウルとイスラエルの人々ひとびとみな、そのところおおいにいわった。

第一二章

1サムエルはイスラエルの人々ひとびとった、「よ、わたしは、あなたがたの言葉ことばしたがって、あなたがたのうえおうてた。 2おういま、あなたがたのまえあゆむ。わたしは年老としおいてかみしろくなった。わたしのらもあなたがたとともにいる。わたしはわかときから、きょうまで、あなたがたのまえあゆんだ。 3わたしはここにいる。しゅまえと、そのあぶらそそがれたものまえに、わたしをうったえよ。わたしが、だれのうしったか。だれのろばをったか。だれをあざむいたか。だれをしえたげたか。だれのから、まいないをって、自分じぶんをくらましたか。もしそのようなことがあれば、わたしはそれを、あなたがたにつぐなおう」。 4かれらはった、「あなたは、われわれをあざむいたことも、しえたげたこともありません。またひとからなにったことはありません」。 5サムエルはかれらにった、「あなたがたが、わたしののうちに、なんの不正ふせいをもいださないことを、しゅはあなたがたにあかしされる。そのあぶらそそがれたものも、きょうそれをあかしする」。かれらはった、「あかしされます」。

6サムエルはたみった、「モーセとアロンをてて、あなたがたの先祖せんぞをエジプトのからみちびされたしゅ証人しょうにんです。 7それゆえ、あなたがたはいまちなさい。わたしはしゅが、あなたがたとあなたがたの先祖せんぞのためにおこなわれたすべてのすくいのわざについて、しゅまえに、あなたがたとろんじよう。 8ヤコブがエジプトにって、エジプトびとが、かれらを、しえたげたとき、あなたがたの先祖せんぞしゅばわったので、しゅはモーセとアロンをつかわされた。そこでかれらは、あなたがたの先祖せんぞをエジプトからみちびして、このところまわせた。 9しかし、かれらがそのかみしゅわすれたので、しゅかれらをハゾルのおうヤビンのぐんちょうシセラのわたし、またペリシテびとのとモアブのおうにわたされた。そこでかれらがイスラエルをめたので、 10たみしゅばわってった、『われわれはしゅて、バアルとアシタロテにつかえて、つみおかしました。いま、われわれをてきからすくしてください。われわれはあなたにつかえます』。 11しゅはエルバアルとバラクとエフタとサムエルをつかわして、あなたがたを周囲しゅういてきからすくされたので、あなたがたはやすらかにむことができた。 12ところが、アンモンびとのおうナハシがめてくるのをたとき、あなたがたのかみしゅがあなたがたのおうであるのに、あなたがたはわたしに、『いいえ、われわれをおさめるおうがなければならない』とった。 13それゆえ、いまあなたがたのえらんだおう、あなたがたがもとめたおうなさい。しゅはあなたがたのうえおうてられた。 14もし、あなたがたがしゅおそれ、しゅつかえて、そのこえしたがい、しゅいましめにそむかず、あなたがたも、あなたがたをおさめるおうともに、あなたがたのかみしゅしたがうならば、それでい。 15しかし、もしあなたがたがしゅこえしたがわず、しゅいましめにそむくならば、しゅは、あなたがたとあなたがたのおうめるであろう。 16それゆえ、いま、あなたがたはって、しゅが、あなたがたのまえおこなわれる、このおおいなることなさい。 17きょうは小麦こむぎかりときではないか。わたしはしゅばわるであろう。そのときしゅかみなりあめくだして、あなたがたがおうもとめて、しゅまえおかしたつみおおいなることをさせ、またらせられるであろう」。 18そしてサムエルがしゅばわったので、しゅはそのかみなりあめくだされた。たみみなひじょうにしゅとサムエルとをおそれた。

19たみはみなサムエルにった、「しもべらのために、あなたのかみしゅいのって、われわれのなないようにしてください。われわれは、もろもろのつみおかしたうえに、またおうもとめて、あくくわえました」。 20サムエルはたみった、「おそれることはない。あなたがたは、このすべてのあくをおこなった。しかししゅしたがうことをやめず、こころをつくしてしゅつかえなさい。 21むなしいものまよってってはならない。それは、あなたがたをたすけることもすくうこともできないむなしいものだからである。 22しゅは、そのおおいなるのゆえに、そのたみてられないであろう。しゅが、あなたがたを自分じぶんたみとすることをしとされるからである。 23また、わたしは、あなたがたのためにいのることをやめてしゅつみおかすことは、けっしてしないであろう。わたしはまたい、ただしいみちを、あなたがたにおしえるであろう。 24あなたがたは、ただしゅおそれ、こころをつくして、誠実せいじつしゅつかえなければならない。そしてしゅがどんなにおおきいことをあなたがたのためにされたかをかんがえなければならない。 25しかし、あなたがたが、なおもあくおこなうならば、あなたがたも、あなたがたのおうも、ともほろぼされるであろう」。

第一三章

1サウルは三十さいおうくらいにつき、二ねんイスラエルをおさめた。

2さてサウルはイスラエルびと三千をえらんだ。二千はサウルとともにミクマシ、およびベテルの山地さんちにおり、一千はヨナタンとともにベニヤミンのギベアにいた。サウルはそのたみを、おのおの、その天幕てんまくかえらせた。 3ヨナタンは、ゲバにあるペリシテびとの守備しゅびへいやぶった。ペリシテびとはそのことをいた。そこで、サウルは国中くにぢゅうに、あまねく角笛つのぶえきならしてわせた、「ヘブルびとよ、け」。 4イスラエルのひとみな、サウルがペリシテびとの守備しゅびへいやぶったこと、そしてイスラエルがペリシテびとににくまれるようになったことをいた。こうしてたみされて、ギルガルのサウルのもとにあつまった。

5ペリシテびとはイスラエルとたたかうためにあつまった。戦車せんしゃ三千、騎兵きへい六千、たみはまべのすなのようにおおかった。かれらはのぼってきて、ベテアベンのひがしのミクマシにじんった。 6イスラエルびとは、ひどく圧迫あっぱくされ、味方みかたあやうくなったのをて、ほらあなに、縦穴たてあなに、いわに、はかに、ためいけかくした。 7また、あるヘブルびとはヨルダンをわたって、ガドとギレアデのった。しかしサウルはなおギルガルにいて、たみはみな、ふるえながらかれしたがった。

8サウルは、サムエルがさだめたように、七日なぬかのあいだったが、サムエルがギルガルにこなかったので、たみかれはなれてってった。 9そこでサウルはった、「燔祭はんさい酬恩祭しゅうおんさいをわたしのところってきなさい」。こうしてかれ燔祭はんさいをささげた。 10その燔祭はんさいをささげおわると、サムエルがきた。サウルはあいさつをしようと、かれむかえにた。 11そのときサムエルはった、「あなたはなにをしたのですか」。サウルはった、「たみはわたしをはなれてってき、あなたはさだまったのうちにこられないのに、ペリシテびとがミクマシにあつまったのをたので、 12わたしは、ペリシテびとがいまにも、ギルガルにくだってきて、わたしをおそうかもれないのに、わたしはまだしゅめぐみをもとめることをしていないとおもい、やむを燔祭はんさいをささげました」。 13サムエルはサウルにった、「あなたはおろかなことをした。あなたは、あなたのかみしゅめいじられた命令めいれいまもらなかった。もしまもったならば、しゅいまあなたの王国おうこくながくイスラエルのうえ確保かくほされたであろう。 14しかしいまは、あなたの王国おうこくつづかないであろう。しゅ自分じぶんこころにかなうひともとめて、そのひとたみきみとなることをめいじられた。あなたがしゅめいじられたことまもらなかったからである」。 15こうしてサムエルはって、ギルガルからベニヤミンのギベアにのぼっていった。

サウルはともにいるたみかぞえてみたが、おおよそ六百にんあった。 16サウルとそのヨナタン、ならびに、ともにいるたみは、ベニヤミンのゲバにおり、ペリシテびとはミクマシにじんっていた。 17そしてペリシテびとのじんから三つの部隊ぶたいにわかれた略奪りゃくだつたいてきて、一たいはオフラのほうかって、シュアルのき、 18たいはベテホロンのほうかい、一たい荒野あらのほうのゼボイムのたにおろすさかいほうかった。

19そのころ、イスラエルのにはどこにも鉄工てっこうがいなかった。ペリシテびとが「ヘブルびとはつるぎも、やりもつくってはならない」とったからである。 20ただしイスラエルのひとみな、そのすきざき、くわ、おの、かまにをつけるときは、ペリシテびとのところくだってった。 21すきざきと、くわのための料金りょうきんは一ピムであり、おのにをつけるのと、とげのあるむちをなおすのは三ぶんの一シケルであった。 22それでこのたたかいのには、サウルおよびヨナタンとともにいたたみには、つるぎもやりもなく、ただサウルとそのヨナタンとがそれをっていた。 23ペリシテびとの先陣せんじんはミクマシのわたりにすすた。

第一四章

1ある、サウルのヨナタンは、その武器ぶき若者わかものに「さあ、われわれはこうがわの、ペリシテびとの先陣せんじんわたってこう」とった。しかしヨナタンはちちにはげなかった。 2サウルはギベアのはずれで、ミグロンにある、ざくろのしたにとどまっていたが、ともにいたたみはおおよそ六百にんであった。 3またアヒヤはエポデをけてともにいた。アヒヤはアヒトブの、アヒトブはイカボデの兄弟きょうだい、イカボデはピネハスの、ピネハスはシロにおいてしゅ祭司さいしであったエリのである。たみはヨナタンがかけることをらなかった。 4ヨナタンがペリシテびとの先陣せんじんわたってこうとするわたりには、一方いっぽうけわしいいわがあり、他方たほうにもけわしいいわがあり、一方いっぽうをボゼヅといい、他方たほうをセネといった。 5いわの一つはミクマシのまえにあってきたにあり、一つはゲバのまえにあってみなみにあった。

6ヨナタンはその武器ぶき若者わかものった、「さあ、われわれは、この割礼かつれいなきものどもの先陣せんじんわたってこう。しゅがわれわれのためになにおこなわれるであろう。おおくのひとをもってすくうのも、すくないひとをもってすくうのも、しゅにとっては、なんのさまたげもないからである」。 7武器ぶきものかれった、「あなたののぞみどおりにしなさい。わたしは一緒いっしょにいます。わたしはあなたとおなこころです」。 8ヨナタンはまたった、「われわれは、あの人々ひとびとところわたっていって、かれらにあらわそう。 9そして、もしかれらがわれわれに、『こちらからくまでて』とうならば、われわれはそのにとどまり、かれらのところのぼっていかないであろう。 10しかし、もしかれらが『われわれのところへのぼってこい』とうならば、われわれはのぼってこう。しゅかれらをわれわれのわたされるからである。これをもってしるしとしよう」。 11こうしてふたりはペリシテびとの先陣せんじんに、そのあらわしたので、ペリシテびとはった、「よ、ヘブルびとが、かくれていたあなからてくる」。 12先陣せんじん人々ひとびとはヨナタンと、その武器ぶきものさけんでった、「われわれのところにのぼってこい。に、ものせてくれよう」。ヨナタンは、その武器ぶきものった、「わたしのあとについてのぼってきなさい。しゅかれらをイスラエルのわたされたのだ」。 13そしてヨナタンはよじのぼり、武器ぶきものもそのあとについてのぼった。ペリシテびとはヨナタンのまえたおれた。武器ぶきものも、あとについていってペリシテびとをころした。 14ヨナタンとその武器ぶきものとが、手始てはじめにころしたものは、おおよそ二十にんであって、このことは一くびきのうしたがやはたけのおおよそ半分はんぶんうちおこなわれた。 15そして陣営じんえいにいるものにいるもの、およびすべてのたみ恐怖きょうふおそわれ、先陣せんじんのもの、および略奪りゃくだつたいまでも、おそれおののいた。またふるうごき、非常ひじょうおおきな恐怖きょうふとなった。

16ベニヤミンのギベアにいたサウルの番兵ばんぺいたちがると、ペリシテびとの群衆ぐんしゅうはくずれて右往左往うおうさおうしていた。 17そのときサウルは、ともにいるたみった、「人数にんずう調しらべて、われわれのうちのだれがったかをよ」。人数にんずう調しらべたところ、ヨナタンとその武器ぶきものとがそこにいなかった。 18サウルはアヒヤにった、「エポデをここにってきなさい」。そのとき、アヒヤはイスラエルの人々ひとびとまえでエポデをけていたからである。 19サウルが祭司さいしかたっているあいだにも、ペリシテびとの陣営じんえいさわぎはますますおおきくなったので、サウルは祭司さいしった、「きなさい」。 20こうしてサウルおよびともにいるたみみなあつまってたたかいにた。ペリシテびとはつるぎをもって同志どうしちしたので、非常ひじょうおおきな混乱こんらんとなった。 21またさきにペリシテびととともにいて、かれらととも陣営じんえいにきていたヘブルびとたちも、ひるがえってサウルおよびヨナタンとともにいるイスラエルびとにつくようになった。 22またエフライムの山地さんちかくしていたイスラエルびとたちもみな、ペリシテびとがげるといて、かれらもまたたたかいにて、それを追撃ついげきした。 23こうしてしゅはそのイスラエルをすくわれた。そしてたたかいはベテアベンにうつった。

24しかしそのイスラエルの人々ひとびとくるしんだ。これはサウルがたみちかわせて「夕方ゆうがたまで、わたしがてきにあだをかえすまで、食物しょくもつべるものは、のろわれる」とったからである。それゆえたみのうちには、ひとりも食物しょくもつくちにしたものはなかった。 25ところで、たみがみなもりなかにはいると、のおもてにみつがあった。 26たみもりにはいったときみつのしたたっているのをた。しかしだれもそれをってくちにつけるものがなかった。たみちかいをおそれたからである。 27しかしヨナタンは、ちちたみちかわせたことをかなかったので、べてつえのさきみつばちのひたし、ってくちにつけた。するとかれがはっきりした。 28そのときたみのひとりがった、「あなたのちちは、かたくたみちかわせて『きょう、食物しょくもつべるものは、のろわれる』とわれました。それでたみつかれているのです」。 29ヨナタンはった、「ちちくになやませました。ごらんなさい。このみつをすこしなめたばかりで、わたしのがこんなに、はっきりしたではありませんか。 30まして、たみがきょうてきからぶんどったものを、じゅうぶんべていたならば、さらにおおくのペリシテびとをころしていたでしょうに」。

31そのイスラエルびとは、ペリシテびとをって、ミクマシからアヤロンにおよんだ。そしてたみは、ひじょうにつかれたので、 32ぶんどりものに、はせかかって、ひつじうしうしって、それをうえころし、のままでそれをべた。 33人々ひとびとはサウルにった、「たみのままでべて、しゅつみおかしています」。サウルはった、「あなたがたはそむいている。このところへ、わたしのもとにおおきないしをころがしてきなさい」。 34サウルはまたった、「あなたがたはわかれて、たみなかにはいって、かれらにいなさい、『おのおのうしまたは、ひつじいてきてここでほふってべなさい。のままでべて、しゅつみおかしてはならない』」。そこでたみみな、そのよる、おのおのうしいてきて、それを、そのところでほふった。 35こうしてサウルはしゅに一つの祭壇さいだんきずいた。これはサウルがしゅのためにきずいた最初さいしょ祭壇さいだんである。

36サウルはった、「われわれはよるのうちにペリシテびとをってくだり、夜明よあけまでかれらをかすめて、ひとりものこらぬようにしよう」。人々ひとびとった、「いとおもわれることを、なんでもしてください」。しかし祭司さいしった、「われわれは、ここで、かみたずねましょう」。 37そこでサウルはかみうかがった、「わたしはペリシテびとをってくだるべきでしょうか。あなたはかれらをイスラエルのわたされるでしょうか」。しかしかみはそのこたえられなかった。 38そこでサウルはった、「たみちょうたちよ、みなこのところちかよりなさい。あなたがたは、よくきわめて、きょうのこのつみきたわけをらなければならない。 39イスラエルをすくしゅきておられる。たとい、それがわたしのヨナタンであっても、かならななければならない」。しかしたみのうちにはひとりも、これにこたえるものがいなかった。 40サウルはイスラエルのすべてのひとった、「あなたがたはこうがわにいなさい。わたしとわたしのヨナタンはこちらがわにいましょう」。たみはサウルにった、「いとおもわれることをしてください」。 41そこでサウルはった、「イスラエルのかみしゅよ、あなたはきょう、なにゆえしもべにこたえられなかったのですか。もしこのつみがわたしにあるか、またはわたしのヨナタンにあるのでしたら、イスラエルのかみしゅよ、ウリムをおあたえください。しかし、もしこのつみが、あなたのたみイスラエルにあるのでしたらトンミムをおあたえください」。こうしてヨナタンとサウルとが、くじにあたり、たみはのがれた。 42サウルはった、「わたしか、わたしのヨナタンかをめるために、くじをきなさい」。くじはヨナタンにあたった。

43サウルはヨナタンにった、「あなたがしたことを、わたしにいなさい」。ヨナタンはった、「わたしはたしかににあったつえのさきすこしばかりのみつをつけて、なめました。わたしはここにいます。覚悟かくごしています」。 44サウルはった、「かみがわたしをいくえにもばっしてくださるように。ヨナタンよ、あなたはかならななければならない」。 45そのときたみはサウルにった、「イスラエルのうちにこのおおいなる勝利しょうりをもたらしたヨナタンがななければならないのですか。けっしてそうではありません。しゅきておられます。ヨナタンのかみ一すじもおとしてはなりません。かれかみともにきょうはたらいたのです」。こうしてたみはヨナタンをすくったのでかれまぬかれた。 46サウルはペリシテびとをうことをやめてきあげ、ペリシテびとはそのくにかえった。

47サウルはイスラエルのおうとなって、周囲しゅういのもろもろのてき、すなわちモアブ、アンモンの人々ひとびと、エドム、ゾバのおうたちおよびペリシテびととたたかい、すべてかうところ勝利しょうりた。 48サウルはいさましくはたらき、アマレクびとをって、イスラエルびとを略奪者りゃくだつしゃからすくした。

49さて、サウルのむすこたちはヨナタン、エスイ、およびマルキシュアである。ふたりのむすめつぎのとおりである。すなわちあねはメラブ、いもうとはミカルである。 50サウルのつまはアヒノアムといい、アヒマアズのむすめである。またぐんちょうはアブネルといい、サウルのおじネルのである。 51サウルのちちキシとアブネルのちちネルとは、アビエルのである。

52サウルの一生いっしょうあいだ、ペリシテびととはげしいたたかいがあった。サウルはちからつよひと勇気ゆうきのあるひとるごとに、それをしかかえた。

第一五章

1さて、サムエルはサウルにった、「しゅは、わたしをつかわし、あなたにあぶらをそそいで、そのたみイスラエルのおうとされました。それゆえ、いましゅ言葉ことばきなさい。 2万軍ばんぐんしゅは、こうおおせられる、『わたしは、アマレクがイスラエルにしたこと、すなわちイスラエルがエジプトからのぼってきたとき、その途中とちゅう敵対てきたいしたことについてかれらをばっするであろう。 3いまってアマレクをち、そのすべてのものほろぼしつくせ。かれらをゆるすな。おとこおんなも、おさ乳飲ちのも、うしひつじも、らくだも、ろばもみなころせ』」。

4サウルはたみあつめ、テライムで人数にんずう調しらべたところ、歩兵ほへいは二十万、ユダのひとは一万であった。 5そしてサウルはアマレクのまちって、たにへいせた。 6サウルはケニびとにった、「さあ、あなたがたはアマレクびとをはなれて、くだっていってください。かれらと一緒いっしょにあなたがたをほろぼすようなことがあってはならない。あなたがたは、イスラエルの人々ひとびとがエジプトからのぼってきたとき親切しんせつにしてくれたのですから」。そこでケニびとはアマレクびとをはなれてった。 7サウルはアマレクびとをって、ハビラからエジプトのひがしにあるシュルにまでおよんだ。 8そしてアマレクびとのおうアガグをいけどり、つるぎをもってそのたみをことごとくほろぼした。 9しかしサウルとたみはアガグをゆるし、またひつじうしもっといもの、えたものならびに小羊こひつじと、すべてのいものをのこし、それらをほろぼしつくすことをこのまず、ただうちのない、つまらないものほろぼしつくした。

10そのときしゅ言葉ことばがサムエルにのぞんだ、 11「わたしはサウルをおうとしたことをいる。かれがそむいて、わたしにしたがわず、わたしの言葉ことばおこなわなかったからである」。サムエルはいかって、夜通よどおし、しゅばわった。 12そしてあさサウルにうため、はやきたが、サムエルにげるひとがあった、「サウルはカルメルにきて、自分じぶんのために戦勝せんしょう記念碑きねんひて、をかえしてすすみ、ギルガルへくだってきました」。 13サムエルがサウルのもとへると、サウルはかれった、「どうぞ、しゅがあなたを祝福しゅくふくされますように。わたしはしゅ言葉ことば実行じっこうしました」。 14サムエルはった、「それならば、わたしのみみにはいる、このひつじこえと、わたしのうしこえは、いったい、なんですか」。 15サウルはった、「人々ひとびとがアマレクびとのところからいてきたのです。たみは、あなたのかみしゅにささげるために、ひつじうしもっといものをのこしたのです。そのほかは、われわれがほろぼしつくしました」。 16サムエルはサウルにった、「おやめなさい。昨夜さくやしゅがわたしにわれたことを、あなたにげましょう」。サウルはかれった、「ってください」。

17サムエルはった、「たとい、自分じぶんではちいさいとおもっても、あなたはイスラエルの諸部族しょぶぞくちょうではありませんか。しゅはあなたにあぶらそそいでイスラエルのおうとされた。 18そしてしゅはあなたに使命しめいさづけ、つかわしてわれた、『って、つみびとなるアマレクびとをほろぼしつくせ。かれらを皆殺みなごろしにするまでたたかえ』。 19それであるのに、どうしてあなたはしゅこえしたがわないで、ぶんどりものにとびかかり、しゅまえあくをおこなったのですか」。 20サウルはサムエルにった、「わたしはしゅこえしたがい、しゅがつかわされた使命しめいびてき、アマレクのおうアガグをれてきて、アマレクびとをほろぼしつくしました。 21しかしたみほろぼしつくすべきもののうちもっといものを、ギルガルで、あなたのかみしゅにささげるため、ぶんどりもののうちからひつじうしりました」。 22サムエルはった、
しゅはそのみ言葉ことばしたがことよろこばれるように、
燔祭はんさい犠牲ぎせいよろこばれるであろうか。
よ、したがうことは犠牲ぎせいにまさり、
くことは雄羊おひつじ脂肪しぼうにまさる。
23そむくことはうらないのつみひとしく、
強情ごうじょう偶像ぐうぞう礼拝れいはいつみひとしいからである。
あなたがしゅのことばをてたので、
しゅもまたあなたをてて、おうくらいから退しりぞけられた」。

24サウルはサムエルにった、「わたしはしゅ命令めいれいとあなたの言葉ことばにそむいてつみおかしました。たみおそれて、そのこえしたがったからです。 25どうぞ、いまわたしのつみをゆるし、わたしと一緒いっしょかえって、しゅおがませてください」。 26サムエルはサウルにった、「あなたと一緒いっしょかえりません。あなたがしゅ言葉ことばてたので、しゅもあなたをてて、イスラエルの王位おういから退しりぞけられたからです」。 27こうしてサムエルがろうとしてをかえしたとき、サウルがサムエルの上着うわぎのすそをとらえたので、それはけた。 28サムエルはかれった、「しゅはきょう、あなたからイスラエルの王国おうこくき、もっといあなたの隣人りんじんあたえられた。 29またイスラエルの栄光えいこういつわることもなく、いることもない。かれひとではないからいることはない」。 30サウルはった、「わたしはつみおかしましたが、どうぞ、たみ長老ちょうろうたち、およびイスラエルのまえで、わたしをたっとび、わたしと一緒いっしょかえって、あなたのかみしゅおがませてください」。 31そこでサムエルはサウルのあとについてかえった。そしてサウルはしゅおがんだ。

32ときにサムエルはった、「わたしのところにアマレクびとのおうアガグをいてきなさい」。アガグはうれしそうにサムエルのところにきた。アガグは「くるしみはきっとったのだ」とおもった。 33サムエルはった、「あなたのつるぎはおおくのおんな子供こどもうしなわせた。そのようにあなたのははおんなのうちでもっと無惨むざん子供こどもうしなものとなるであろう」。サムエルはギルガルでしゅまえに、アガグを寸断すんだんした。

34そしてサムエルはラマにき、サウルは故郷こきょうのギベアにのぼって、そのいえかえった。 35サムエルはまで、二とサウルをなかった。しかしサムエルはサウルのためにかなしんだ。またしゅはサウルをイスラエルのおうとしたことをいられた。

第一六章

1さてしゅはサムエルにわれた、「わたしがすでにサウルをてて、イスラエルの王位おういから退しりぞけたのに、あなたはいつまでかれのためにかなしむのか。つのあぶらたし、それをもってきなさい。あなたをベツレヘムびとエッサイのもとにつかわします。わたしはそのたちのうちにひとりのおうさがたからである」。 2サムエルはった、「どうしてわたしはくことができましょう。サウルがそれをけば、わたしをころすでしょう」。しゅわれた、「一とううしいていって、『しゅ犠牲ぎせいをささげるためにきました』といなさい。 3そしてエッサイを犠牲ぎせい場所ばしょびなさい。そのときわたしはあなたのすることをしめします。わたしがあなたにげるひとあぶらそそがなければならない」。 4サムエルはしゅめいじられたようにして、ベツレヘムへった。まち長老ちょうろうたちは、おそれながらて、かれむかえ、「おだやかなことのためにこられたのですか」とった。 5サムエルはった、「おだやかなことのためです。わたしはしゅ犠牲ぎせいをささげるためにきました。をきよめて、犠牲ぎせい場所ばしょにわたしとともにきてください」。そしてサムエルはエッサイとそのたちをきよめて犠牲ぎせいまねいた。

6かれらがきたとき、サムエルはエリアブをて、「自分じぶんまえにいるこのひとこそ、しゅあぶらをそそがれるひとだ」とおもった。 7しかししゅはサムエルにわれた、「かおかたちやのたけをてはならない。わたしはすでにそのひとてた。わたしがるところはひととはことなる。ひとそとかおかたちをしゅこころる」。 8そこでエッサイはアビナダブをんでサムエルのまえとおらせた。サムエルはった、「しゅえらばれたのはこのひとでもない」。 9エッサイはシャンマをとおらせたが、サムエルはった、「しゅえらばれたのはこのひとでもない」。 10エッサイは七にんにサムエルのまえとおらせたが、サムエルはエッサイにった、「しゅえらばれたのはこのひとたちではない」。 11サムエルはエッサイにった、「あなたのむすこたちはみなここにいますか」。かれった、「まだすえのこっていますがひつじっています」。サムエルはエッサイにった、「ひとをやってかれれてきなさい。かれがここにるまで、われわれは食卓しょくたくにつきません」。 12そこでひとをやってかれをつれてきた。かれ血色けっしょくのよい、のきれいな、姿すがたうつくしいひとであった。しゅわれた、「ってこれにあぶらをそそげ。これがそのひとである」。 13サムエルはあぶらつのをとって、その兄弟きょうだいたちのなかで、かれあぶらをそそいだ。このからのち、しゅれいは、はげしくダビデのうえのぞんだ。そしてサムエルはってラマへった。

14さてしゅれいはサウルをはなれ、しゅから悪霊あくれいかれなやました。 15サウルの家来けらいたちはかれった、「ごらんなさい。かみから悪霊あくれいがあなたをなやましているのです。 16どうぞ、われわれの主君しゅくんが、あなたのまえつかえている家来けらいたちにめいじて、じょうずにことをひくものひとりをさがさせてください。かみから悪霊あくれいがあなたにのぞときかれことをひくならば、あなたはくなられるでしょう」。 17そこでサウルは家来けらいたちにった、「じょうずにことをひくものさがして、わたしのもとにれてきなさい」。 18そのとき、ひとりの若者わかものがこたえた、「わたしはベツレヘムびとエッサイのましたが、ことがじょうずで、勇気ゆうきもあり、いくさびとで、弁舌べんぜつにひいで、姿すがたうつくしいひとです。またしゅかれともにおられます」。 19そこでサウルはエッサイのもとに使者ししゃをつかわしてった、「ひつじっているあなたのダビデをわたしのもとによこしなさい」。 20エッサイは、ろばにパンをわせ、かわぶくろにいれたぶどうしゅふくろと、やぎのとをって、そのダビデのによってサウルにおくった。 21ダビデはサウルのもとにきて、かれつかえた。サウルはひじょうにこれをあいして、その武器ぶきものとした。 22またサウルはひとをつかわしてエッサイにった、「ダビデをわたしにつかえさせてください。かれはわたしのこころにかないました」。 23かみから悪霊あくれいがサウルにのぞとき、ダビデはことをとり、でそれをひくと、サウルはしずまり、くなって、悪霊あくれいかれはなれた。

第一七章

1さてペリシテびとは、ぐんあつめてたたかおうとし、ユダにぞくするソコにあつまって、ソコとアゼカのあいだにあるエペス・ダミムに陣取じんどった。 2サウルとイスラエルの人々ひとびとあつまってエラのたに陣取じんどり、ペリシテびとにたいして戦列せんれつをしいた。 3ペリシテびとはこうのやまうえち、イスラエルはこちらのやまうえった。そのかんたにがあった。 4ときに、ペリシテびとのじんから、ガテのゴリアテというの、たたかいをいどむものてきた。のたけは六キュビトはん 5あたまには青銅せいどうのかぶとをいただき、には、うろことじのよろいをていた。そのよろいは青銅せいどうおもさ五千シケル。 6またあしには青銅せいどうのすねとうけ、かたには青銅せいどうげやりを背負せおっていた。 7っているやりのは、はた巻棒まきぼうのようであり、やりのてつは六百シケルであった。かれまえには、たてものすすんだ。 8ゴリアテはってイスラエルの戦列せんれつかってさけんだ、「なにゆえ戦列せんれつをつくっててきたのか。わたしはペリシテびと、おまえたちはサウルの家来けらいではないか。おまえたちから、ひとりをえらんで、わたしのところへくだってこさせよ。 9もしそのひとたたかってわたしをころすことができたら、われわれはおまえたちの家来けらいとなる。しかしわたしがってそのひところしたら、おまえたちは、われわれの家来けらいになってつかえなければならない」。 10またこのペリシテびとはった、「わたしは、きょうイスラエルの戦列せんれつにいどむ。ひとりをして、わたしとたたかわせよ」。 11サウルとイスラエルのすべてのひとは、ペリシテびとのこの言葉ことばいておどろき、ひじょうにおそれた。

12さて、ダビデはユダのベツレヘムにいたエフラタびとエッサイというひとで、このひとはちにんがあったが、サウルのにはとしすすんで、すでに年老としおいていた。 13エッサイのらのうち、うえの三にんはサウルにしたがって戦争せんそうた。そのたたかいにた三にんは、長子ちょうしをエリアブといい、つぎをアビナダブといい、だい三をシャンマとった。 14ダビデはすえであって、あににんはサウルにしたがった。 15ダビデはサウルのところからったりきたりして、ベツレヘムでちちひつじっていた。 16あのペリシテびとは四十にちあいだ朝夕あさゆうてきて、かれらのまえった。

17ときに、エッサイはそのダビデにった、「あにたちのため、このいりむぎ一エパと、この十のパンをとって、いそいで陣営じんえいにいるあにところっていきなさい。 18またこの十の乾酪かんらくって、千にんちょうにもってき、あにたちの安否あんぴとどけて、そのしるしをもらってきなさい」。

19さてサウルとかれらおよびイスラエルのすべてのひとは、エラのたにでペリシテびととたたかっていた。 20ダビデはあさはやくきて、ひつじ番人ばんにんたくし、エッサイがめいじたように食料しょくりょうひんたずさえてった。かれ陣営じんえいいたとき軍勢ぐんぜいは、ときのこえをあげて戦線せんせんようとしていた。 21そしてイスラエルとペリシテびととは戦列せんれついて、ぐんぐんった。 22ダビデは荷物にもつをおろして、荷物にもつまもものにあずけ、戦列せんれつほうはしって、あにたちのところき、かれらの安否あんぴたずねた。 23あにたちとかたっているとき、ペリシテびとの戦列せんれつから、ガテのペリシテびとで、をゴリアテという、あのたたかいをいどむもののぼってきて、まえおな言葉ことばったので、ダビデはそれをいた。

24イスラエルのすべてのひとは、そのひとて、けてげ、ひじょうにおそれた。 25イスラエルの人々ひとびとはまたった、「あなたがたは、あののぼってきたひとたか。たしかにイスラエルにいどむためにのぼってきたのだ。かれころひとは、おうおおいなるとみあたえてませ、そのむすめあたえ、そのちちいえにはイスラエルのうちでぜいまぬかれさせるであろう」。 26ダビデはかたわらにっている人々ひとびとった、「このペリシテびとをころし、イスラエルのはじをすすぐひとには、どうされるのですか。この割礼かつれいなきペリシテびとは何者なにものなので、けるかみぐんをいどむのか」。 27たみまえおなじように、「かれころひとにはこうされるであろう」とこたえた。

28うえあにエリアブはダビデが人々ひとびとかたるのをいて、ダビデにかいいかりをはっしてった、「なんのためにくだってきたのか。にいるわずかのひつじはだれにたくしたのか。あなたのわがままとわるこころはわかっている。たたかいをるためにくだってきたのだ」。 29ダビデはった、「わたしがいまなにをしたというのですか。ただひとこといっただけではありませんか」。 30またふりいて、ほかのひとまえのようにかたったところ、たみはまたおなじようにこたえた。

31人々ひとびとはダビデのかたった言葉ことばいて、それをサウルにげたので、サウルはかれせた。 32ダビデはサウルにった、「だれもかれのゆえにおとしてはなりません。しもべがってあのペリシテびととたたかいましょう」。 33サウルはダビデにった、「って、あのペリシテびととたたかうことはできない。あなたは年少ねんしょうだが、かれわかときからの軍人ぐんじんだからです」。 34しかしダビデはサウルにった、「しもべはちちひつじっていたのですが、しし、あるいはくまがきて、れの小羊こひつじったとき 35わたしはそのあとをって、これをち、小羊こひつじをそのくちからすくいだしました。そのけものがわたしにとびかかってきたときは、ひげをつかまえて、それをころしました。 36しもべはすでに、ししと、くまをころしました。この割礼かつれいなきペリシテびとも、けるかみぐんをいどんだのですから、あのけものの一とうのようになるでしょう」。 37ダビデはまたった、「ししのつめ、くまのつめからわたしをすくされたしゅは、またわたしを、このペリシテびとのからすくされるでしょう」。サウルはダビデにった、「きなさい。どうぞしゅがあなたとともにおられるように」。 38そしてサウルは自分じぶんのいくさころもをダビデにせ、青銅せいどうのかぶとを、そのあたまにかぶらせ、また、うろことじのよろいをにまとわせた。 39ダビデは、いくさころもうえに、つるぎをびてこうとしたが、できなかった。それにれていなかったからである。そこでダビデはサウルにった、「わたしはこれらのものをけていくことはできません。れていないからです」。 40ダビデはそれらをぎすて、につえをとり、谷間たにまからなめらかないしえらびとって自分じぶんっている羊飼ひつじかいふくろれ、いしげをって、あのペリシテびとにちかづいた。

41そのペリシテびとはすすんできてダビデにちかづいた。そのたてをものかれまえにいた。 42ペリシテびとはまわしてダビデを、これをあなどった。まだわかくて血色けっしょくがよく、姿すがたうつくしかったからである。 43ペリシテびとはダビデにった、「つえをって、かってくるが、わたしはいぬなのか」。ペリシテびとは、また神々かみがみによってダビデをのろった。 44ペリシテびとはダビデにった、「さあ、かってこい。おまえのにくを、そらとりけもののえじきにしてくれよう」。 45ダビデはペリシテびとにった、「おまえはつるぎと、やりと、げやりをって、わたしにかってくるが、わたしは万軍ばんぐんしゅ、すなわち、おまえがいどんだ、イスラエルのぐんかみによって、おまえにかう。 46きょう、しゅは、おまえをわたしのにわたされるであろう。わたしは、おまえをって、くびをはね、ペリシテびとの軍勢ぐんぜいかばねを、きょう、そらとり野獣やじゅうのえじきにし、イスラエルに、かみがおられることをぜんらせよう。 47またこのぜん会衆かいしゅうも、しゅすくいほどこすのに、つるぎとやりをもちいられないことをるであろう。このたたかいはしゅたたかいであって、しゅがわれわれのにおまえたちをわたされるからである」。

48そのペリシテびとががり、ちかづいてきてダビデにかったので、ダビデはいそ戦線せんせんはして、ペリシテびとにかった。 49ダビデはふくろれて、そのなかから一つのいしり、いしげでげて、ペリシテびとのひたいったので、いしはそのひたいはいり、うつむきにたおれた。

50こうしてダビデはいしげといしをもってペリシテびとにち、ペリシテびとをって、これをころした。ダビデのにつるぎがなかったので、 51ダビデははしりよってペリシテびとのうえり、そのつるぎをって、さやからきはなし、それをもってかれころし、そのくびをはねた。ペリシテの人々ひとびとは、その勇士ゆうしんだのをげた。 52イスラエルとユダの人々ひとびとちあがり、ときをあげて、ペリシテびとを追撃ついげきし、ガテおよびエクロンのもんにまでおよんだ。そのためペリシテびとの負傷ふしょうしゃは、シャライムからガテおよびエクロンにみちうえたおれた。 53イスラエルの人々ひとびとはペリシテびとの追撃ついげきえてかえり、その陣営じんえい略奪りゃくだつした。 54ダビデは、あのペリシテびとのくびってエルサレムへってったが、その武器ぶき自分じぶん天幕てんまくいた。

55サウルはダビデがあのペリシテびとにかってていくのをて、ぐんちょうアブネルにった、「アブネルよ、この若者わかものはだれのか」。アブネルはった、「おうよ、あなたのいのちにかけてちかいます。わたしはらないのです」。 56おうった、「この若者わかものがだれのか、たずねてみよ」。 57ダビデが、あのペリシテびとをころしてかえってきたとき、アブネルは、ペリシテびとのくびっているかれを、サウルのまえれてった。 58サウルはかれった、「若者わかものよ、あなたはだれのか」。ダビデはこたえた、「あなたのしもべ、ベツレヘムびとエッサイのです」。

第一八章

1ダビデがサウルにかたえたとき、ヨナタンのこころはダビデのこころむすびつき、ヨナタンは自分じぶんいのちのようにダビデをあいした。 2この、サウルはダビデをしかかえて、ちちいえかえらせなかった。 3ヨナタンとダビデとは契約けいやくむすんだ。ヨナタンが自分じぶんいのちのようにダビデをあいしたからである。 4ヨナタンは自分じぶんていた上着うわぎいでダビデにあたえた。また、そのいくさころも、およびつるぎもゆみおびも、そのようにした。 5ダビデはどこでもサウルがつかわすところって、てがらをてたので、サウルはかれへい隊長たいちょうとした。それはすべてのたみこころにかない、またサウルの家来けらいたちのこころにもかなった。

6人々ひとびとげてきたとき、すなわちダビデが、かのペリシテびとをころしてかえったときおんなたちはイスラエルの町々まちまちからてきて、つづみいわうた三糸みついとことをもって、うたいついつ、サウルおうむかえた。 7おんなたちはおどりながらたがいうたいかわした、
「サウルは千をころし、
ダビデはまんころした」。
8サウルは、ひじょうにいかり、この言葉ことばわるくしてった、「ダビデにはまんい、わたしには千とう。このうえかれあたえるものは、くにのほかないではないか」。 9サウルは、このからのちダビデをうかがった。

10つぎかみから悪霊あくれいがサウルにはげしくのぞんで、サウルがいえなかくるいわめいたので、ダビデは、いつものように、ことをひいた。そのとき、サウルのにやりがあったので、 11サウルは「ダビデをかべとおそう」とおもって、そのやりをふりげた。しかしダビデは二をかわしてサウルをけた。

12しゅがサウルをはなれて、ダビデとともにおられたので、サウルはダビデをおそれた。 13それゆえサウルは、ダビデをとおざけて、千にんちょうとしたので、ダビデはたみさきって出入でいりした。 14またダビデは、すべてそのすることに、てがらをてた。しゅともにおられたからである。 15サウルはダビデがおおきなてがらをてるのをかれおそれたが、 16イスラエルとユダのすべてのひとはダビデをあいした。かれたみさきって出入でいりしたからである。

17そのときサウルはダビデにった、「わたしの長女ちょうじょメラブを、あなたにつまとしてあたえよう。ただ、あなたはわたしのためにいさましく、しゅたたかいをたたかいなさい」。サウルは「自分じぶんかれころさないで、ペリシテびとのころそう」とおもったからである。 18ダビデはサウルにった、「わたしは何者なにものなのでしょう。わたしの親族しんぞく、わたしのちち一族いちぞくはイスラエルのうちで何者なにものなのでしょう。そのわたしが、どうしておうのむこになることができましょう」。 19しかしサウルのむすめメラブは、ダビデにとつぐべきときになって、メホラびとアデリエルにつまとしてあたえられた。

20サウルのむすめミカルはダビデをあいした。人々ひとびとがそれをサウルにげたとき、サウルはそのことよろこんだ。 21サウルは「ミカルをかれあたえて、かれあざむだてとし、ペリシテびとのかれころそう」とおもったので、サウルはふたたびダビデにった、「あなたを、きょう、わたしのむこにします」。 22そしてサウルは家来けらいたちにめいじた、「ひそかにダビデにいなさい、『おうはあなたがり、おう家来けらいたちもみなあなたをあいしています。それゆえおうのむこになりなさい』」。 23そこでサウルの家来けらいたちはこの言葉ことばをダビデのみみかたったので、ダビデはった、「わたしのようなまずしく、いやしいものが、おうのむこになることは、あなたがたには、たやすいこととおもわれますか」。 24サウルの家来けらいたちはサウルに、「ダビデはこうった」とげた。 25サウルはった、「あなたがたはダビデにこういなさい、『おうはなにも結納ゆいのうのぞまれない。ただペリシテびとのようかわ一百をて、おうのあだをつことをのぞまれる』」。これはサウルが、ダビデをペリシテびとのによってたおそうとおもったからである。 26サウルの家来けらいたちが、この言葉ことばをダビデにげたとき、ダビデはおうのむこになることをしとした。そしてさだめたがまだこないうちに、 27ダビデは従者じゅうしゃをつれて、ってき、ペリシテびと二百にんころして、そのようかわたずさかえり、おうのむこになるために、それをことごとくおうにささげた。そこでサウルはむすめミカルをかれつまとしてあたえた。 28しかしサウルはて、しゅがダビデとともにおられること、またイスラエルのすべてのひとがダビデをあいするのをったとき 29サウルは、ますますダビデをおそれた。こうしてサウルはえずダビデにてきした。

30さてペリシテびとのきみたちがめてきたが、ダビデは、かれらがめてくるごとに、サウルのどの家来けらいよりもおおくのてがらをてたので、そのはひじょうに尊敬そんけいされた。

第一九章

1サウルはそのヨナタンおよびすべての家来けらいたちにダビデをころすようにとった。しかしサウルのヨナタンはふかくダビデをあいしていた。 2ヨナタンはダビデにった、「ちちサウルはあなたをころそうとしています。それゆえあすのあさをつけて、わからない場所ばしょかくしていてください。 3わたしはって、あなたがいる野原のはらちちのかたわらにち、ちちにあなたのことをはなしましょう。そして、なにかわたしにわかれば、あなたにげましょう」。 4ヨナタンはちちサウルにダビデのことをほめてった、「おうよ、どうか家来けらいダビデにたいしてつみおかさないでください。かれは、あなたにつみおかさず、またかれのしたことは、あなたのためになることでした。 5かれいのちをかけて、あのペリシテびとをころし、しゅはイスラエルの人々ひとびとおおいなる勝利しょうりあたえられたのです。あなたはそれをよろこばれました。それであるのに、どうしてゆえなくダビデをころし、つみなきものながしてつみおかそうとされるのですか」。 6サウルはヨナタンの言葉ことばきいれた。そしてサウルはちかった、「しゅきておられる。わたしはけっしてかれころさない」。 7ヨナタンはダビデをんでこれらのことをみなダビデにげた。そしてヨナタンがダビデをサウルのもとにれてきたので、ダビデは、もとのようにサウルのまえにいた。

8ところがまた戦争せんそうがおこって、ダビデはてペリシテびととたたかい、おおいにかれらをころしたので、かれらはそのまえからった。 9さてサウルがいえにいてにやりをってすわっていたときしゅから悪霊あくれいがサウルにのぞんだので、ダビデはことをひいていたが、 10サウルはそのやりをもってダビデをかべとおそうとした。しかしかれはサウルのまえをかわしたので、やりはかべにつきささった。そしてダビデはった。

11そのよる、サウルはダビデのいえ使者ししゃたちをつかわして見張みはりをさせ、あさになってかれころさせようとした。しかしダビデのつまミカルはダビデにった、「もし今夜こんやのうちに、あなたが自分じぶんいのちすくわないならば、あすはころされるでしょう」。 12そしてミカルがダビデをまどからつりおろしたので、かれった。 13ミカルは一つのぞうをとって、寝床ねどこうえよこたえ、そのあたまにやぎのあみをかけ、着物きものをもってそれをおおった。 14サウルはダビデをとらえるため使者ししゃたちをつかわしたが、彼女かのじょった、「あのひと病気びょうきです」。 15そこでサウルは、ダビデをさせようと使者ししゃたちをつかわしてった、「かれ寝床ねどこのまま、わたしのところれてきなさい。わたしがかれころそう」。 16使者ししゃたちがはいってると、寝床ねどこにはぞうよこたえてあって、そのあたまには、やぎのあみがかけてあった。 17サウルはミカルにった、「あなたはどうして、このようにわたしをあざむいて、わたしのてきがしたのか」。ミカルはサウルにこたえた、「あのひとはわたしに『がしてくれ。さもないと、おまえをころす』といました」。

18ダビデはり、ラマにいるサムエルのもとへって、サウルが自分じぶんにしたすべてのことをかれげた。そしてダビデとサムエルはってナヨテにんだ。 19あるひとがサウルに「ダビデはラマのナヨテにいます」とげたので、 20サウルは、ダビデをとらえるために、使者ししゃたちをつかわした。かれらは預言者よげんしゃ一群いちぐん預言よげんしていて、サムエルが、そのうちの、かしらとなってっているのをたが、そのときかみれいはサウルの使者ししゃたちにものぞんで、かれらもまた預言よげんした。 21サウルは、このことをいて、使者ししゃたちをつかわしたが、かれらもまた預言よげんした。サウルは三たび使者ししゃたちをつかわしたが、かれらもまた預言よげんした。 22そこでサウルはみずからラマにき、セクの大井戸おおいどいたときうてった、「サムエルとダビデは、どこにおるか」。ひとりのひとこたえた、「かれらはラマのナヨテにいます」。 23そこでサウルはそこからラマのナヨテにったが、かみれいはまたかれにものぞんで、かれはラマのナヨテにくまであるきながら預言よげんした。 24そしてかれもまた着物きものいで、おなじようにサムエルのまえ預言よげんし、一にちはだかたおしていた。人々ひとびとが「サウルもまた預言者よげんしゃたちのうちにいるのか」というのはこのためである。

第二〇章

1ダビデはラマのナヨテからげてきて、ヨナタンにった、「わたしがなにをし、どのようなわるいことがあり、あなたのちちまえにどんなつみおかしたので、わたしをころそうとされるのでしょうか」。 2ヨナタンはかれった、「けっしてころされることはありません。ちちこと大小だいしょうわず、わたしにげないですることはありません。どうしてちちがわたしにそのことかくしましょう。そのようなことはありません」。 3しかしダビデはこたえた、「あなたのちちは、わたしがあなたの好意こういをえていることをよくっておられます。それで『ヨナタンがかなしむことのないように、これをらせないでおこう』とおもっておられるのです。しかし、しゅきておられ、あなたのたましいきています。わたしととのあいだは、ただ一です」。 4ヨナタンはダビデにった、「あなたがわれることはなんでもします」。 5ダビデはヨナタンにった、「あすは、ついたちですから、わたしはおう一緒いっしょ食事しょくじをしなければなりません。しかしわたしをかせて三夕方ゆうがたまで、野原のはらかくれることをゆるしてください。 6もしあなたのちちがわたしのことをたずねられるならば、そのときってください、『ダビデはふるさとのまちベツレヘムへいそいでくことをゆるしてくださいと、しきりにわたしにもとめました。そこで全家ぜんかとしまつりがあるからです』。 7もしかれが「し」とわれるなら、しもべは安全あんぜんですが、いかられるなら、わたしにがいくわえる決心けっしんでおられるのをってください。 8あなたは、しゅまえで、しもべと契約けいやくむすんでくださいました。それでどうぞしもべにいつくしみをほどこしてください。しかし、もしわたしにわるいことがあるならば、あなたみずからわたしをころしてください。どうしてあなたのちちのもとへわたしをいていかなければならないでしょう」。 9ヨナタンはった、「そのようなことはけっしてありません。ちちがあなたにがいくわえる決心けっしんをしていることがわたしにわかっているならば、わたしはそれをあなたにげないでおきましょうか」。 10ダビデはヨナタンにった、「あなたのちち荒々あらあらしくあなたにこたえられるとき、だれがわたしにげるでしょうか」。 11ヨナタンはダビデにった、「さあ、野原のはらていこう」。こうしてふたりは野原のはらった。

12そしてヨナタンはダビデにった、「イスラエルのかみしゅが、証人しょうにんです。明日みょうにち明後日みょうごにちいまごろ、わたしがちちこころさぐって、ちちがダビデにたいしていのをながら、ひとをつかわしてあなたにらせないようなことをするでしょうか。 13しかし、もしちちがあなたにがいくわえようとおもっているのに、それをあなたにらせず、あなたをがして、安全あんぜんらせないならば、しゅよ、どうぞ幾重いくえにも、このヨナタンをばっしてください。どうぞしゅちちともにおられたように、あなたとともにおられますように。 14もしわたしがなおきながらえているならば、しゅのいつくしみをわたしにほどこし、まぬかれさせてください。 15またわたしのいえをも、ながくあなたのいつくしみにあずからせてください。しゅがダビデのてきをことごとくのおもてからほろぼされるとき 16ヨナタンのをダビデのいえからやさないでください。どうぞしゅがダビデのてきに、あだをかえされるように」。 17そしてヨナタンはかさねてダビデにちかわせた。かれあいしたからである。ヨナタンは自分じぶんいのちのようにかれあいしていた。

18ヨナタンはダビデにった、「あすはついたちです。あなたのせきがあいているので、どうしたのかとたずねられるでしょう。 19には、きびしくたずねられるでしょうから、さきにあなたがかくれた場所ばしょって、こうの石塚いしづかのかたわらにいてください。 20わたしはまとるようにして、を三ほん、そのそばにはなちます。 21そして、『ってさがしてきなさい』とって子供こどもをつかわしましょう。わたしが子供こどもに、『手前てまえにある。それをってきなさい』とうならば、そのときあなたはきてください。しゅきておられるように、あなたは安全あんぜんで、なに危険きけんがないからです。 22しかしわたしがそのともに、『こうにある』とうならば、そのとき、あなたはってきなさい。しゅがあなたをらせられるのです。 23あなたとわたしとではなしあったことについては、しゅつねにあなたとわたしとのあいだにおられます」。

24そこでダビデは野原のはらかくした。さて、ついたちになったので、おう食事しょくじをするためせきいた。 25おうはいつものようにかべりにせきき、ヨナタンはそのかいがわせきき、アブネルはサウルのよこせきいたが、ダビデの場所ばしょにはだれもいなかった。

26ところがそのサウルはなにわなかった、「かれなにってけがれたのだろう。きっとけがれたのにちがいない」とおもったからである。 27しかし、ふつかすなわち、ついたちのくるも、ダビデの場所ばしょはあいていたので、サウルは、そのヨナタンにった、「どうしてエッサイのは、きのうもきょうも食事しょくじにこないのか」。 28ヨナタンはサウルにこたえた、「ダビデは、ベツレヘムへくことをゆるしてくださいと、しきりにわたしにもとめました。 29かれいました、『わたしにかせてください。われわれの一族いちぞくまちまつりをするので、あにがわたしにるようにとめいじました。それでもし、あなたのまえめぐみをますならば、どうぞ、わたしにくことをゆるし、兄弟きょうだいたちにわせてください』。それでかれおう食卓しょくたくにこなかったのです」。

30そのときサウルはヨナタンにむかっていかりをはっし、かれった、「あなたはこころまがった、そむくおんなんだだ。あなたがエッサイのえらんで、自分じぶんをはずかしめ、またははをはずかしめていることをわたしがらないとおもうのか。 31エッサイのがこのきながらえているあいだは、あなたも、あなたの王国おうこくかたっていくことはできない。それゆえいまひとをつかわして、かれをわたしのもとにれてこさせなさい。かれかならななければならない」。 32ヨナタンはちちサウルにこたえた、「どうしてかれころされなければならないのですか。かれなにをしたのですか」。 33ところがサウルはヨナタンをとうとして、やりをかれかってげたので、ヨナタンはちちがダビデをころそうと、こころめているのをった。 34ヨナタンははげしくいかってせきち、そのつきのふつかには食事しょくじをしなかった。ちちがダビデをはずかしめたので、ダビデのためにうれえたからである。

35あくるあさ、ヨナタンは、ひとりのちいさい子供こどもれて、ダビデとわせたように野原のはらった。 36そしてそのともった、「はしってって、わたしのさがしなさい」。子供こどもはしってあいだに、ヨナタンはかれまえほうはなった。 37そして子供こどもが、ヨナタンのはなったのところへったとき、ヨナタンは子供こどものうしろからばわって、「こうにあるではないか」とった。 38ヨナタンはまた、そのとものうしろからばわってった、「はやくせよ、いそげ。とどまるな」。そのともひろあつめて主人しゅじんヨナタンのもとにきた。 39しかし子供こどもなにらず、ヨナタンとダビデだけがそのことをっていた。 40ヨナタンは自分じぶん武器ぶきをそのともわたしてった、「あなたはこれをまちはこんできなさい」。 41子供こどもってしまうとダビデは石塚いしづかのかたわらをはなれてちいで、にひれして三敬礼けいれいした。そして、ふたりはたがいくちづけし、たがいいた。やがてダビデはこころいた。 42そのときヨナタンはダビデにった、「無事ぶじきなさい。われわれふたりは、『しゅつねにわたしとあなたのあいだにおられ、また、わたしの子孫しそんとあなたの子孫しそんあいだにおられる』とって、しゅをさしてちかったのです」。こうしてダビデはり、ヨナタンはまちにはいった。

第二一章

1ダビデはノブにき、祭司さいしアヒメレクのところへった。アヒメレクはおののきながらダビデをむかえてった、「どうしてあなたはひとりですか。だれもともがいないのですか」。 2ダビデは祭司さいしアヒメレクにった、「おうがわたしに一つのことめいじて、『わたしがおまえをつかわしてさせること、またわたしがめいじたことについては、なにをもひとらせてはならない』とわれました。そこでわたしは、ある場所ばしょ若者わかものたちをたせてあります。 3ところでいまあなたのもとにパン五でもあれば、それをわたしにください。なければなんでも、あるものをください」。 4祭司さいしはダビデにこたえてった、「つねのパンはわたしのもとにありません。ただその若者わかものたちがおんなつつしんでさえいたのでしたら、聖別せいべつしたパンがあります」。 5ダビデは祭司さいしこたえた、「わたしがたたかいにるいつものときのように、われわれはたしかにおんなたちをちかづけていません。若者わかものたちのうつわは、つねたびであったとしても、きよいのです。まして、きょう、かれらのうつわきよくないでしょうか」。 6そこで祭司さいしかれ聖別せいべつしたパンをあたえた。そのところに、そなえのパンのほかにパンがなく、このパンは、これをげるに、あたたかいパンときかえるため、しゅまえからとりさげたものである。

7その、そのところに、サウルのしもべのひとりが、しゅまえかれていた。そのはドエグといい、エドムびとであって、サウルの牧者ぼくしゃちょうであった。

8ダビデはまたアヒメレクにった、「ここに、あなたのもとに、やりかつるぎがありませんか。おうこときゅうようしたので、わたしはつるぎも武器ぶきってこなかったのです」。 9祭司さいしった、「あなたがエラのたにころしたペリシテびとゴリアテのつるぎが、ぬのつつんでエポデのうしろにあります。もしあなたがこれをろうとおもわれるなら、おりください。ここにはそのほかにはありません」。ダビデはった、「それにまさるものはありません。それをわたしにください」。 10ダビデはそのサウルをおそれて、ってガテのおうアキシのところへげてった。 11アキシの家来けらいたちはアキシにった、「これはあのくにおうダビデではありませんか。人々ひとびとおどりながら、たがいうたいかわして、
『サウルは千をころし、
ダビデはまんころした』
ったのは、このひとのことではありませんか」。 12ダビデは、これらの言葉ことばこころにおき、ガテのおうアキシを、ひじょうにおそれたので、 13人々ひとびとまえで、わざと挙動きょどうえ、とらえられて気違きちがいのふりをし、もんのとびらをちたたき、よだれをながして、ひげにつたわらせた。 14アキシは家来けらいたちにった、「あなたがたのるように、このひと気違きちがいだ。どうしてかれをわたしのところれてきたのか。 15わたしに気違きちがいが必要ひつようなのか。このものれてきて、わたしのまえくるわせようというのか。このものをわたしのいえれようとするのか」。

第二二章

1こうしてダビデはそのところり、アドラムのほらあなへのがれた。かれ兄弟きょうだいたちとちちいえものみな、これをき、そのところくだってかれのもとにきた。 2また、しえたげられている人々ひとびと負債ふさいのある人々ひとびとこころ不満ふまんのある人々ひとびとみなかれのもとにあつまってきて、かれはそのちょうとなった。おおよそ四百にん人々ひとびとかれともにあった。

3ダビデはそこからモアブのミヅパへき、モアブのおうった、「かみがわたしのためにどんなことをされるかわかるまで、どうぞわたしの父母ふぼをあなたのところにおらせてください」。 4そしてかれはモアブのおうかれらをたくしたので、かれらはダビデが要害ようがいにおるあいだおうところにおった。 5さて、預言者よげんしゃガドはダビデにった、「要害ようがいにとどまっていないで、ってユダのきなさい」。そこでダビデはって、ハレテのもりった。

6サウルは、ダビデおよびかれともにいる人々ひとびとつかったということをいた。サウルはギベアで、やりをにもって、おかのぎょりゅうのしたにすわっており、家来けらいたちはみなそのまわりにっていた。 7サウルはまわりにっている家来けらいたちにった、「あなたがたベニヤミンびとはきなさい。エッサイのもまた、あなたがたおのおのにはたけやぶどうはたけあたえ、おのおのを千にんちょう、百にんちょうにするであろうか。 8あなたがたはみなともにはかってわたしにてきした。わたしのがエッサイの契約けいやくむすんでも、それをわたしにげるものはなく、またあなたがたのうち、ひとりもわたしのためにうれえず、きょうのように、わたしのがわたしのしもべをそそのかしてわたしにさからわせ、みちかれがわたしをせするようになっても、わたしにげるものはない」。 9そのときエドムびとドエグは、サウルの家来けらいたちのそばにっていたが、こたえてった、「わたしはエッサイのがノブにいるアヒトブのアヒメレクのところにきたのをました。 10アヒメレクはかれのためにしゅい、またかれ食物しょくもつあたえ、ペリシテびとゴリアテのつるぎをあたえました」。

11そこでおうひとをつかわして、アヒトブの祭司さいしアヒメレクとそのちちいえのすべてのもの、すなわちノブの祭司さいしたちをしたので、みなおうところにきた。 12サウルはった、「アヒトブのよ、きなさい」。かれこたえた、「わがしゅよ、わたしはここにおります」。 13サウルはかれった、「どうしてあなたはエッサイのともにはかってわたしにてきし、かれにパンとつるぎをあたえ、かれのためにかみい、きょうのようにかれをわたしにさからってたせ、みちせさせるのか」。 14アヒメレクはおうこたえてった、「あなたの家来けらいのうち、ダビデのように忠義ちゅうぎものがほかにありますか。かれおうむすめ婿むこであり、近衛このえへいちょうであって、あなたのいえたっとばれるひとではありませんか。 15かれのためにかみうたのは、きょうはじめてでしょうか。いいえ、けっしてそうではありません。おうよ、どうぞ、しもべとちち全家ぜんかつみわせないでください。しもべは、これについては、こと大小だいしょうわず、なにをもらなかったのです」。 16おうった、「アヒメレクよ、あなたはかならころされなければならない。あなたのちち全家ぜんかおなじである」。 17そしておうはまわりにっている近衛このえへいった、「をひるがえして、しゅ祭司さいしたちをころしなさい。かれらもダビデと協力きょうりょくしていて、ダビデのげたのをりながら、それをわたしにげなかったからです」。ところがおう家来けらいたちはしゅ祭司さいしたちをころすためにくだそうとはしなかった。 18そこでおうはドエグにった、「あなたがをひるがえして、祭司さいしたちをころしなさい」。エドムびとドエグはをひるがえして祭司さいしたちをち、その亜麻あまぬののエポデをにつけているもの八十五にんころした。 19かれはまた、つるぎをもって祭司さいしまちノブをち、つるぎをもっておとこおんなおさ乳飲ちのうし、ろば、ひつじころした。

20しかしアヒトブのアヒメレクのたちのひとりで、をアビヤタルというひとは、のがれてダビデのところはしった。 21そしてアビヤタルは、サウルがしゅ祭司さいしたちをころしたことをダビデにげたので、 22ダビデはアビヤタルにった、「あの、エドムびとドエグがあそこにいたので、わたしはかれがきっとサウルにげるであろうとおもった。わたしがあなたのちちいえ人々ひとびといのちうしなわせるもととなったのです。 23あなたはわたしのところにとどまってください。おそれることはありません。あなたのいのちもとめるものは、わたしのいのちをももとめているのです。わたしのところにおられるならば、あなたは安全あんぜんでしょう」。

第二三章

1さて人々ひとびとはダビデにげてった、「ペリシテびとがケイラをめて、穀物こくもつをかすめています」。 2そこでダビデはしゅうてった、「わたしがって、このペリシテびとをちましょうか」。しゅはダビデにわれた、「ってペリシテびとをち、ケイラをすくいなさい」。 3しかしダビデの従者じゅうしゃたちはかれった、「われわれは、ユダのここにおってさえ、おそれているのに、ましてケイラへって、ペリシテびとのぐんあたることができましょうか」。 4ダビデがかさねてしゅうたところ、しゅかれこたえてわれた、「って、ケイラへくだりなさい。わたしはペリシテびとをあなたのわたします」。 5ダビデとその従者じゅうしゃたちはケイラへって、ペリシテびととたたかい、かれらの家畜かちくうばいとり、かれらをおおころした。こうしてダビデはケイラの住民じゅうみんすくった。

6アヒメレクのアビヤタルは、ケイラにいるダビデのもとにのがれてきたときにエポデをもってくだってきた。 7さてダビデのケイラにきたことがサウルにきこえたので、サウルはった、「かみはわたしのかれをわたされた。かれもんかんのあるまちにはいって、自分じぶんじこめたからである」。 8そこでサウルはすべてのたみたたかいにあつめて、ケイラにくだり、ダビデとその従者じゅうしゃかこもうとした。 9ダビデはサウルが自分じぶんがいくわえようとしているのをって、祭司さいしアビヤタルにった、「エポデをってきてください」。 10そしてダビデはった、「イスラエルのかみしゅよ、しもべはサウルがケイラにきて、わたしのために、このまちほろぼそうとしていることをたしかにきました。 11ケイラの人々ひとびとはわたしをかれわたすでしょうか。しもべのいたように、サウルはくだってくるでしょうか。イスラエルのかみしゅよ、どうぞ、しもべにげてください」。しゅわれた、「かれくだってる」。 12ダビデはった、「ケイラの人々ひとびとはわたしと従者じゅうしゃたちをサウルのにわたすでしょうか」。しゅわれた、「かれらはあなたがたをわたすであろう」。 13そこでダビデとその六百にんほどの従者じゅうしゃたちはって、ケイラをり、いずこともなくさまよった。ダビデのケイラからったことがサウルにきこえたので、サウルはたたかいにることをやめた。 14ダビデは荒野あらのにある要害ようがいにおり、またジフの荒野あらの山地さんちにおった。サウルは日々ひびかれたずもとめたが、かみかれをそのわたされなかった。

15さてダビデはサウルが自分じぶんいのちもとめててきたのでおそれた。そのときダビデはジフの荒野あらののホレシにいたが、 16サウルのヨナタンはって、ホレシにいるダビデのもとにき、かみによってかれちからづけた。 17そしてヨナタンはかれった、「おそれるにはおよびません。ちちサウルのはあなたにとどかないでしょう。あなたはイスラエルのおうとなり、わたしはあなたのつぎとなるでしょう。このことはちちサウルもっています」。 18こうしてかれらふたりはしゅまえ契約けいやくむすび、ダビデはホレシにとどまり、ヨナタンはいえかえった。

19そのときジフびとはギベアにいるサウルのもとにのぼってき、そしてった、「ダビデは、荒野あらのみなみにあるハキラのおかうえのホレシの要害ようがいかくれて、われわれとともにいるではありませんか。 20それゆえおうよ、あなたがくだってこうというのぞみのとおり、いまくだってきてください。われわれはかれおうわたします」。 21サウルはった、「あなたがたはわたしに同情どうじょうせてくれたのです。どうぞしゅがあなたがたを祝福しゅくふくされるように。 22あなたがたはって、なおたしかめてください。かれのよくところとだれがそこでかれたかをきわめてください。ひとかたるところによると、かれはひじょうに悪賢わるがしこいそうだ。 23それで、あなたがたはかれかくれるかく場所ばしょをみなきわめ、たしかならせをもってわたしのところかえってきなさい。そのときわたしはあなたがたとともきます。もしかれがこのにいるならば、わたしはユダの氏族しぞくをあまねくたずねてかれさがしだします」。 24かれらはって、サウルに先立さきだってジフへった。

さてダビデとその従者じゅうしゃたちは荒野あらのみなみのアラバにあるマオンの荒野あらのにいた。 25そしてサウルとその従者じゅうしゃたちはきてかれさがした。人々ひとびとがこれをダビデにげたので、ダビデはマオンの荒野あらのにあるいわところくだってった。サウルはこれをいて、マオンの荒野あらのにきてダビデをった。 26サウルはやまのこちらがわき、ダビデとその従者じゅうしゃたちとはやまのむこうがわおこなった。そしてダビデはいそいでサウルからのがれようとした。サウルとその従者じゅうしゃたちが、ダビデとその従者じゅうしゃたちをかこんでとらえようとしたからである。 27そのとき、サウルのところに、ひとりの使者ししゃがきてった、「ペリシテびとがくにおかしています。いそいできてください」。 28そこでサウルはダビデをうことをやめてかえり、ってペリシテびとにあたった。それで人々ひとびとは、そのところを「のがれのいわ」とづけた。 29ダビデはそこからのぼってエンゲデの要害ようがいにいた。

第二四章

1サウルがペリシテびとをうことをやめてかえってきたとき、人々ひとびとかれげてった、「ダビデはエンゲデのにいます」。 2そこでサウルは、ぜんイスラエルからえらんだ三千のひとひきい、ダビデとその従者じゅうしゃたちとをさがすため、「やぎのいわ」のまえかけた。 3途中とちゅうひつじのおりのところにきたが、そこに、ほらあながあり、サウルはあしをおおうために、そのなかにはいった。そのとき、ダビデとその従者じゅうしゃたちは、ほらあなおくにいた。 4ダビデの従者じゅうしゃたちはかれった、「しゅがあなたにげて、『わたしはあなたのてきをあなたのわたす。あなたは自分じぶんいとおもうことをかれにすることができる』とわれたがきたのです」。そこでダビデはって、ひそかに、サウルの上着うわぎのすそをった。 5しかしのちになって、ダビデはサウルの上着うわぎのすそをったことに、こころめをかんじた。 6ダビデは従者じゅうしゃたちにった、「しゅあぶらそそがれたわがきみに、わたしがこのことをするのをしゅきんじられる。かれしゅあぶらそそがれたものであるから、かれてきして、わたしのをのべるのはくない」。 7ダビデはこれらの言葉ことばをもって従者じゅうしゃたちをめ、サウルをつことをゆるさなかった。サウルはって、ほらあなり、みちすすんだ。

8ダビデもまた、そのあとからち、ほらあなて、サウルのうしろからばわって、「わがきみおうよ」とった。サウルがうしろをふりいたとき、ダビデはにひれしてはいした。 9そしてダビデはサウルにった、「どうして、あなたは『ダビデがあなたをがいしようとしている』という人々ひとびと言葉ことばかれるのですか。 10あなたは、この自分じぶんで、しゅがあなたをきょう、ほらあななかでわたしのわたされたのをごらんになりました。人々ひとびとはわたしにあなたをころすことをすすめたのですが、わたしはころしませんでした。『わがきみしゅあぶらそそがれたかたであるから、これにてきしてをのべることはしない』とわたしはいました。 11わがちちよ、ごらんなさい。あなたの上着うわぎのすそは、わたしのにあります。わたしがあなたの上着うわぎのすそをり、しかも、あなたをころさなかったことによって、あなたは、わたしのあくも、とがもないことをられるでしょう。あなたはわたしのいのちろうと、ねらっておられますが、わたしはあなたにたいしてつみをおかしたことはないのです。 12どうぞしゅがわたしとあなたのあいだをさばかれますように。またしゅがわたしのために、あなたにむくいられますように。しかし、わたしはあなたにをくだすことをしないでしょう。 13むかしから、ことわざにっているように、『あく悪人あくにんからる』。しかし、わたしはあなたにをくだすことをしないでしょう。 14イスラエルのおうは、だれをっててこられたのですか。あなたは、だれをっておられるのですか。んだいぬっておられるのです。一ぴきのみっておられるのです。 15どうぞしゅがさばきびととなって、わたしとあなたのあいだをさばき、かつて、わたしのうったえをき、わたしをあなたのからすくしてくださるように」。

16ダビデがこれらの言葉ことばをサウルにかたおわったとき、サウルはった、「わがダビデよ、これは、あなたのこえであるか」。そしてサウルはこえをあげていた。 17サウルはまたダビデにった、「あなたはわたしよりもただしい。わたしがあなたにあくむくいたのに、あなたはわたしにぜんむくいる。 18きょう、あなたはいかにくわたしをあつかったかをあきらかにしました。すなわちしゅがわたしをあなたのにわたされたのに、あなたはわたしをころさなかったのです。 19ひとてきったとき、てき無事ぶじらせるでしょうか。あなたが、きょう、わたしにしたことのゆえに、どうぞしゅがあなたにむくいをあたえられるように。 20いまわたしは、あなたがかならずおうとなることをりました。またイスラエルの王国おうこくが、あなたのによってかたつことをりました。 21それゆえ、あなたはわたしのあとに、わたしの子孫しそんたず、またわたしのちちいえから、わたしのほろぼしらないと、いましゅをさして、わたしにちかってください」。 22そこでダビデはサウルに、そのようにちかった。そしてサウルはいえかえり、ダビデとその従者じゅうしゃたちは要害ようがいにのぼってった。

第二五章

1さてサムエルがんだので、イスラエルの人々ひとびとはみなあつまって、かれのためにひじょうにかなしみ、ラマにあるそのいえかれほうむった。

そしてダビデはってパランの荒野あらのくだってった。 2マオンに、ひとりのひとがあって、カルメルにその所有しょゆうがあり、ひじょうに裕福ゆうふくで、ひつじ三千とう、やぎ一千とうっていた。かれはカルメルでひつじっていた。 3そのひとはナバルといい、つまはアビガイルといった。アビガイルはかしこくてうつくしかったが、そのおっと剛情ごうじょうで、粗暴そぼうであった。かれはカレブびとであった。 4ダビデは荒野あらのにいて、ナバルがそのひつじっていることをいたので、 5にん若者わかものをつかわし、その若者わかものたちにった、「カルメルにのぼってってナバルのところき、わたしのをもってかれにあいさつし、 6かれにこういなさい、『どうぞあなたに平安へいあんがあるように。あなたのいえ平安へいあんがあるように。またあなたのすべてのもの平安へいあんがあるように。 7わたしはあなたがひつじっておられることをきました。あなたの羊飼ひつじかいたちはわれわれと一緒いっしょにいたのですが、われわれはかれらをすこしもがいしませんでした。またかれらはカルメルにいるあいだに、なにひとつうしなったことはありません。 8あなたの若者わかものたちにいてみられるならば、わかります。それゆえ、わたしの若者わかものたちに、あなたの好意こういしめしてください。われわれはしゅくにきたのです。どうぞ、あなたのもとにあるものを、おくものとして、しもべどもとあなたのダビデにください』」。

9ダビデの若者わかものたちはって、ダビデのをもって、これらの言葉ことばをナバルにかたり、そしてっていた。 10ナバルはダビデの若者わかものたちにこたえてった、「ダビデとはだれか。エッサイのとはだれか。このごろは、主人しゅじんててげるしもべがおおい。 11どうしてわたしのパンとみず、またわたしのひつじ人々ひとびとのためにほふったにくをとって、どこからきたのかわからない人々ひとびとあたえることができようか」。 12ダビデの若者わかものたちは、そこをり、かえってきて、かれにこのすべてのことげた。 13そこでダビデは従者じゅうしゃたちにった、「おのおの、つるぎをびなさい」。かれらはおのおのつるぎをび、ダビデもまたつるぎをびた。そしておおよそ四百にんがダビデにしたがってのぼっていき、二百にん荷物にもつのところにとどまった。

14ところで、ひとりの若者わかものがナバルのつまアビガイルにった、「ダビデが荒野あらのから使者ししゃをつかわして、主人しゅじんにあいさつをしたのに、主人しゅじんはその使者ししゃたちをののしられました。 15しかし、あの人々ひとびとはわれわれにだいへんよくしてくれて、われわれはすこしもがいけず、またわれわれがにいたときかれらとともにいたあいだは、なにひとつうしなったことはありませんでした。 16われわれがひつじってかれらとともにいるあいだかれらはよるひるもわれわれのかきとなってくれました。 17それで、あなたはいまそれをって、自分じぶんのすることをかんがえてください。主人しゅじんとその一家いっかわざわいきるからです。しかも主人しゅじんはよこしまなひとで、はなしかけることもできません」。

18そのとき、アビガイルはいそいでパン二百、ぶどうしゅかわぶくろ二つ、調理ちょうりしたひつじとう、いりむぎ五セア、ほしぶどう百ふさ、ほしいちじくのかたまり二百をって、ろばにのせ、 19若者わかものたちにった、「わたしのさきにすすみなさい。わたしはあなたがたのうしろに、ついてきます」。しかし彼女かのじょおっとナバルにはげなかった。 20アビガイルが、ろばにって山陰やまかげくだってきたとき、ダビデと従者じゅうしゃたちは彼女かのじょほうかってりてきたので、彼女かのじょはその人々ひとびと出会であった。 21さて、ダビデはさきにこうった、「わたしはこのひと荒野あらのっているものをみなまもって、そのひとぞくするものなにひとつなくならないようにしたが、それはまったくむだであった。かれはわたしのした親切しんせつあくをもってむくいた。 22もしわたしがあすのあさまで、ナバルにぞくするすべてのもののうち、ひとりのおとこでものこしておくならば、かみ幾重いくえにもダビデをばっしてくださるように」。

23アビガイルはダビデをて、いそいで、ろばをり、ダビデのまえにひれし、 24そのあしもとにしてった、「わがきみよ、このとがをわたしだけにわせてください。しかしどうぞ、はしために、あなたのみみかたることをゆるし、はしための言葉ことばをおきください。 25わがきみよ、どうぞ、このよこしまなひとナバルのことをにかけないでください。あのひとはそののとおりです。はナバルで、おろかなものです。あなたのはしためであるわたしは、わがきみなるあなたがつかわされた若者わかものたちをなかったのです。 26それゆえいま、わがきみよ、しゅきておられます。またあなたはきておられます。しゅは、あなたがきてながし、またずから、あだをむくいるのをとどめられました。どうぞいま、あなたのてき、およびわがきみがいくわえようとするものは、ナバルのごとくになりますように。 27いま、あなたのつかえめが、わがきみたずさえてきたおくものを、わがきみしたが若者わかものたちにあたえてください。 28どうぞ、はしためのとがをゆるしてください。しゅかならずわがきみのためにたしかないえつくられるでしょう。わがきみしゅのいくさをたたかい、またこのきながらえられるあいだ、あなたのうちにわるいことがいだされないからです。 29たといひとってあなたをい、あなたのいのちもとめても、わがきみいのちは、きているものたばにたばねられて、あなたのかみしゅのもとにまもられるでしょう。しかししゅはあなたのてきいのちを、いしげのなかからげるように、てられるでしょう。 30そしてしゅがあなたについてかたられたすべてのいことをわがきみおこない、あなたをイスラエルのつかさににんじられるとき 31あなたが、ゆえなくながし、またわがきみがみずからあだをむくいたとうことで、それがあなたのつまずきとなり、またわがきみこころめとなることのないようにしてください。しゅがわがきみくせられるとき、このはしためをおもいだしてください」。

32ダビデはアビガイルにった、「きょう、あなたをつかわして、わたしをむかえさせられたイスラエルのかみしゅはほむべきかな。 33あなたの知恵ちえはほむべきかな。またあなたはほむべきかな。あなたは、きょう、わたしがきてながし、ずからあだをむくいることをとどめられたのです。 34わたしがあなたをがいすることをとどめられたイスラエルのかみしゅはまことにきておられる。もしあなたがいそいでわたしにいにこなかったならば、あすのあさまでには、ナバルのところに、ひとりのおとこのこらなかったでしょう」。 35ダビデはアビガイルがたずさえてきたものをそのからけて、彼女かのじょった、「あなたは無事ぶじにのぼって、いえかえりなさい。わたしはあなたのこえきいれ、あなたのねがいをゆるします」。

36こうしてアビガイルはナバルのもとにきたが、よ、かれはそのいえで、おう酒宴しゅえんのような酒宴しゅえんひらいていた。ナバルはこころたのしみ、ひじょうにっていたので、アビガイルはくるあさまでこと大小だいしょうわずなにをもかれげなかった。 37あさになってナバルのいがさめたとき、そのつまかれにこれらのことげると、かれこころはそのうちにんで、かれいしのようになった。 38ばかりしてしゅがナバルをたれたのでかれんだ。

39ダビデはナバルがんだといてった、「しゅはほむべきかな。しゅはわたしがナバルのからけた侮辱ぶじょくむくいて、しもべがあくをおこなわないようにされた。しゅはナバルの悪行あくぎょうをそのこうべにむくいられたのだ」。ダビデはアビガイルをつまにめとろうと、ひとをつかわして彼女かのじょもうんだ。 40ダビデのしもべたちはカルメルにいるアビガイルのところにきて、彼女かのじょった、「ダビデはあなたをつまにめとろうと、われわれをあなたのところへつかわしたのです」。 41アビガイルはち、にひれはいしてった、「はしためは、わがきみのしもべたちのあしあらうつかえめです」。 42アビガイルはいそいでち、ろばにって、五にん侍女じじょたちをれ、ダビデの使者ししゃたちにしたがってき、ダビデのつまとなった。

43ダビデはまたエズレルのアヒノアムをめとった。彼女かのじょたちはふたりともダビデのつまとなった。 44ところでサウルはそのむすめ、ダビデのつまミカルを、ガリムのひとであるライシのパルテにあたえた。

第二六章

1そのころジフびとがギベアにおるサウルのもとにきてった、「ダビデは荒野あらのまえにあるハキラのやまかくれているではありませんか」。 2サウルはって、ジフの荒野あらのでダビデをさがすために、イスラエルのうちからえらんだ三千にんをひきれて、ジフの荒野あらのくだった。 3サウルは荒野あらのまえみちのかたわらにあるハキラのやまじんった。ダビデは荒野あらのにとどまっていたが、サウルが自分じぶんのあとをって荒野あらのにきたのをて、 4斥候せっこうし、サウルがたしかにきたのをった。 5そしてダビデはって、サウルがじんっているところって、サウルとそのぐんちょう、ネルのアブネルのている場所ばしょた。サウルは陣所じんしょのうちにていて、たみはその周囲しゅうい宿営しゅくえいしていた。

6ダビデは、ヘテびとアヒメレク、およびゼルヤので、ヨアブの兄弟きょうだいであるアビシャイにった、「だれがわたしとともにサウルのじんくだってくか」。アビシャイはった、「わたしが一緒いっしょくだってきます」。 7こうしてダビデとアビシャイとがよるたみのところへってみると、サウルは陣所じんしょのうちによこたえてており、そのやりはまくらもとにきさしてあった。そしてアブネルとたみらとはその周囲しゅういていた。 8アビシャイはダビデにった、「かみはきょうてきをあなたのわたされました。どうぞわたしに、かれのやりをもってひときでかれしとおさせてください。ふたたびくにはおよびません」。 9しかしダビデはアビシャイにった、「かれころしてはならない。しゅあぶらそそがれたものかって、をのべ、つみないものがあろうか」。 10ダビデはまたった、「しゅきておられる。しゅかれたれるであろう。あるいはかれるであろう。あるいはたたかいにくだってってほろびるであろう。 11しゅあぶらそそがれたものかって、わたしがをのべることをしゅきんじられる。しかしいま、そのまくらもとにあるやりとみずのびんをりなさい。そしてわれわれはろう」。 12こうしてダビデはサウルのまくらもとから、やりとみずのびんをってかれらはったが、だれもそれをず、だれもらず、また、だれもをさまさず、みなねむっていた。しゅかれらをふかねむらされたからである。

13ダビデはこうがわわたってって、とおはなれてやまいただきった。かれらのあいだへだたりはおおきかった。 14ダビデはたみとネルのアブネルにばわってった、「アブネルよ、あなたはこたえないのか」。アブネルはこたえてった、「おうんでいるあなたはだれか」。 15ダビデはアブネルにった、「あなたはおとこではないか。イスラエルのうちに、あなたにおよひとがあろうか。それであるのに、どうしてあなたは主君しゅくんであるおうまもらなかったのか。たみのひとりが、あなたの主君しゅくんであるおうころそうとして、はいりこんだではないか。 16あなたがしたこのことくない。しゅきておられる。あなたがたは、まさにあたいする。しゅあぶらをそそがれた、あなたの主君しゅくんまもらなかったからだ。いまおうのやりがどこにあるか。そのまくらもとにあったみずのびんがどこにあるかをなさい」。

17サウルはダビデのこえきわけてった、「わがダビデよ、これはあなたのこえか」。ダビデはった、「おう、わがきみよ、わたしのこえです」。 18ダビデはまたった、「わがきみはどうしてしもべのあとをわれるのですか。わたしがなにをしたのですか。わたしのになんのわるいことがあるのですか。 19おう、わがきみよ、どうぞ、いましもべの言葉ことばいてください。もししゅがあなたをうごかして、わたしのてきとされたのであれば、どうぞしゅそなものけてやわらいでくださるように。もし、それがひとであるならば、どうぞその人々ひとびとしゅまえにのろいをけるように。かれらが『おまえはって神々かみがみつかえなさい』とって、きょう、わたしをし、しゅぎょうにあずかることができないようにしたからです。 20それゆえいましゅまえはなれて、わたしのちることのないようにしてください。イスラエルのおうは、ひとやまで、しゃこをうように、わたしのいのちろうとしててこられたのです」。

21そのとき、サウルはった、「わたしはつみおかした。わがダビデよ、かえってきてください。きょう、わたしのいのちがあなたのたっとられたゆえ、わたしは、もはやあなたにがいくわえないであろう。わたしはおろかなことをして、非常ひじょうなまちがいをした」。 22ダビデはこたえた、「おうのやりは、ここにあります。ひとりの若者わかものわたってこさせ、これをちかえらせてください。 23しゅひとおのおのにその真実しんじつとにしたがってむくいられます。しゅがきょう、あなたをわたしのわたされたのに、わたしはしゅあぶらそそがれたものかって、をのべることをしなかったのです。 24きょう、わたしがあなたのいのちおもんじたように、どうぞしゅがわたしのいのちおもんじて、もろもろの苦難くなんからすくしてくださるように」。 25サウルはダビデにった、「わがダビデよ、あなたはほむべきかな。あなたはおおくのことをおこなって、それをなしげるであろう」。こうしてダビデはそのみちき、サウルは自分じぶんところかえった。

第二七章

1ダビデはこころのうちにった、「わたしは、いつかはサウルのにかかってほろぼされるであろう。はやくペリシテびとのへのがれるほかはない。そうすればサウルはこのうえイスラエルのにわたしをくまなくさがすことはやめ、わたしはかれからのがれることができるであろう」。 2こうしてダビデは、ともにいた六百にん一緒いっしょに、ってガテのおうマオクのアキシのところった。 3ダビデと従者じゅうしゃたちは、おのおのその家族かぞくとともに、ガテでアキシとともんだ。ダビデはそのふたりのつま、すなわちエズレルのおんなアヒノアムと、カルメルのおんなでナバルのつまであったアビガイルとともにおった。 4ダビデがガテにのがれたことがサウルにきこえたので、サウルはもはやかれさがさなかった。

5さてダビデはアキシにった、「もしわたしがあなたのまえめぐみをるならば、どうぞ、いなかにあるまちのうちで一つの場所ばしょをわたしにあたえてそこにまわせてください。どうしてしもべがあなたとともおうまちむことができましょうか」。 6アキシはそのチクラグをかれあたえた。こうしてチクラグは今日こんにちにいたるまでユダのおうぞくしている。 7ダビデがペリシテびとのくにんだかずは一ねんと四かげつであった。

8さてダビデは従者じゅうしゃともにのぼって、ゲシュルびと、ゲゼルびとおよびアマレクびとをおそった。これらはむかしからシュルにいたるまでの住民じゅうみんであって、エジプトにいたるまでのんでいた。 9ダビデはそのって、おとこおんなかしおかず、ひつじうしとろばとらくだと衣服いふくとをって、アキシのもとにかえってきた。 10アキシが「あなたはきょうどこをおそいましたか」とたずねると、ダビデは、その時々ときどき、「ユダのネゲブです」、「エラメルびとのネゲブです」「ケニびとのネゲブです」とった。 11ダビデはおとこおんなかしおかず、ひとりをもガテにいてかなかった。それはダビデが、「おそらくは、かれらが、『ダビデはこうした』とって、われわれのことをげるであろう」とおもったからである。ダビデはペリシテびとのいなかにんでいるあいだはこうするのがつねであった。 12アキシはダビデをしんじてった、「かれ自分じぶんまったくそのたみイスラエルににくまれるようにした。それゆえかれ永久えいきゅうにわたしのしもべとなるであろう」。

第二八章

1そのころ、ペリシテびとがイスラエルとたたかおうとして、いくさのために軍勢ぐんぜいあつめたので、アキシはダビデにった、「あなたは、しかと承知しょうちしてください。あなたとあなたの従者じゅうしゃたちとは、わたしとともて、軍勢ぐんぜいくわわらなければなりません」。 2ダビデはアキシにった、「よろしい、あなたはしもべがなにをするかをられるでしょう」。アキシはダビデにった、「よろしい、あなたを終身しゅうしんわたしの護衛ごえいちょうとしよう」。

3さてサムエルはすでにんで、イスラエルのすべてのひとかれのためにかなしみ、そのまちラマにほうむった。またさきにサウルは口寄くちよせやうらなをそのから追放ついほうした。 4ペリシテびとがあつまってきてシュネムにじんったので、サウルはイスラエルのすべてのひとあつめて、ギルボアにじんった。 5サウルはペリシテびとの軍勢ぐんぜいおそれ、そのこころはいたくおののいた。 6そこでサウルはしゅうかがいをたてたが、しゅゆめによっても、ウリムによっても、預言者よげんしゃによってもかれこたえられなかった。 7サウルはしもべたちにった、「わたしのために、口寄くちよせのおんなさがしなさい。わたしはってそのおんなたずねよう」。しもべたちはかれった、「よ、エンドルにひとりの口寄くちよせがいます」。

8サウルは姿すがたえてほかの着物きものをまとい、ふたりの従者じゅうしゃともなってき、よるあいだに、そのおんなところにきた。そしてサウルはった、「わたしのために口寄くちよせのじゅつって、わたしがあなたにげるひとおこしてください」。 9おんなかれった、「あなたはサウルがしたことをごぞんじでしょう。かれ口寄くちよせやうらなをそのくにからほろぼしました。どうしてあなたは、わたしのいのちにわなをかけて、わたしをなせようとするのですか」。 10サウルはしゅをさして彼女かのじょちかってった、「しゅきておられる。このことのためにあなたがばつけることはないでしょう」。 11おんなった、「あなたのためにだれをおこしましょうか」。サウルはった、「サムエルをおこしてください」。 12おんなはサムエルをとき大声おおごえさけんだ。そしてそのおんなはサウルにった、「どうしてあなたはわたしをあざむかれたのですか。あなたはサウルです」。 13おう彼女かのじょった、「おそれることはない。あなたにはなにえるのですか」。おんなはサウルにった、「かみのようなかたがからのぼられるのがえます」。 14サウルは彼女かのじょった、「そのひとはどんな様子ようすをしていますか」。彼女かのじょった、「ひとりの老人ろうじんがのぼってこられます。そのひと上着うわぎをまとっておられます」。サウルはそのひとがサムエルであるのをり、にひれしてはいした。

15サムエルはサウルにった、「なぜ、わたしをおこして、わたしをわずらわすのか」。サウルはった、「わたしは、ひじょうになやんでいます。ペリシテびとがわたしにかっていくさをおこし、かみはわたしをはなれて、預言者よげんしゃによっても、ゆめによっても、もはやわたしにこたえられないのです。それで、わたしのすべきことをるために、あなたをびました」。 16サムエルはった、「しゅがあなたをはなれて、あなたのてきとなられたのに、どうしてあなたはわたしにうのですか。 17しゅは、わたしによってかたられたとおりにあなたにおこなわれた。しゅ王国おうこくを、あなたのからきはなして、あなたの隣人りんじんであるダビデにあたえられた。 18あなたはしゅこえしたがわず、しゅはげしいいかりにしたがって、アマレクびとをほろぼさなかったゆえに、しゅはこのことを、この、あなたにおこなわれたのである。 19しゅはまたイスラエルをも、あなたとともに、ペリシテびとのわたされるであろう。あすは、あなたもあなたのらもわたしと一緒いっしょになるであろう。またしゅはイスラエルの軍勢ぐんぜいをもペリシテびとのわたされる」。

20そのときサウルは、ただちに、び、たおれ、サムエルの言葉ことばのために、ひじょうにおそれ、またそのちからはうせてしまった。その一にち食物しょくもつをとっていなかったからである。 21おんなはサウルのもとにきて、かれのおののいているのをった、「あなたのつかえめは、あなたのこえしたがい、わたしのいのちをかけて、あなたのわれた言葉ことばしたがいました。 22それゆえいまあなたも、つかえめのこえしたがい、一口ひとくちのパンをあなたのまえにそなえさせてください。あなたはそれをめしあがってちからをつけ、みちってください」。 23ところがサウルはことわってった、「わたしはべません」。しかしかれのしもべたちも、そのおんなもしいてすすめたので、サウルはその言葉ことばきいれ、からきあがり、とこうえにすわった。 24そのおんないええたうしがあったので、いそいでそれをほふり、また麦粉むぎこをとり、こねて、たねれぬパンをき、 25サウルとそのしもべたちのまえってきたので、かれらはべた。そしてかれらはがって、そのよるのうちにった。

第二九章

1さてペリシテびとは、その軍勢ぐんぜいをことごとくアペクにあつめた。イスラエルびとはエズレルにあるいずみのかたわらにじんった。 2ペリシテびとのきみたちは、あるいは百にん、あるいは千にんひきいてすすみ、ダビデとその従者じゅうしゃたちはアキシとともに、しんがりになってすすんだ。 3そのとき、ペリシテびとのきみたちはった、「これらのヘブルびとはここでなにをしているのか」。アキシはペリシテびとたちにった、「これはイスラエルのおうサウルのしもべダビデではないか。かれはこのごろ、このとしごろ、わたしとともにいたが、ちてきたからきょうまで、わたしはかれにあやまちがあったのをたことがない」。 4しかしペリシテびとのきみたちはかれかっていかった。そしてペリシテびとのきみたちはかれった、「このひとかえらせて、あなたがかれいたもとのところかせなさい。われわれと一緒いっしょかれたたかいにくだらせてはならない。たたかいのときかれがわれわれのてきとなるかもれないからである。このものなにをもってその主君しゅくんとやわらぐことができようか。ここにいる人々ひとびとくびをもってするほかはあるまい。 5これは、かつて人々ひとびとおどりのうちにうたいかわして、
『サウルは千をころし、
ダビデはまんころした』
った、あのダビデではないか」。

6そこでアキシはダビデをんでった、「しゅきておられる。あなたはただしいひとである。あなたがわたしと一緒いっしょたたかいに出入でいりすることをわたしはいとおもっている。それはあなたがわたしのところにきたからこのまで、わたしは、あなたにわることがあったのをたことがないからである。しかしペリシテびとのきみたちはあなたをわない。 7それゆえいまやすらかにかえってきなさい。かれらがわるいとおもうことはしないがよかろう」。 8ダビデはアキシにった、「しかしわたしがなにをしたというのですか。わたしがあなたにつかえはじめたからこのまでに、あなたはしもべのなにられたので、わたしはって、わたしの主君しゅくんであるおうてきたたかうことができないのですか」。 9アキシはダビデにこたえた、「わたしはて、あなたがかみ使つかいのようにりっぱなひとであることをっている。しかし、ペリシテびとのきみたちは、『われわれと一緒いっしょかれたたかいにのぼらせてはならない』とっている。 10それで、あなたは、一緒いっしょにきたあなたの主君しゅくんのしもべたちとともあさはやきなさい。そしてあさはやき、よるけてからりなさい」。 11こうしてダビデとその従者じゅうしゃたちとはともにペリシテびとのかえろうと、あさはやきて出立しゅったつしたが、ペリシテびとはエズレルへのぼってった。

第三〇章

1さてダビデとその従者じゅうしゃたちが三にチクラグにきたとき、アマレクびとはすでにネゲブとチクラグをおそっていた。かれらはチクラグをち、をはなってこれをき、 2そのなかにいたおんなたちおよびすべてのもの捕虜ほりょにし、ちいさいものをもおおきいものをも、ひとりもころさずに、いて、そのみちった。 3ダビデと従者じゅうしゃたちはそのまちにきて、まちかれ、そのつまとむすこむすめらは捕虜ほりょとなったのをた。 4ダビデおよびかれともにいたたみこえをあげてき、ついにちからもなくなった。 5ダビデのふたりのつますなわちエズレルのおんなアヒノアムと、カルメルびとナバルのつまであったアビガイルも捕虜ほりょになった。 6そのとき、ダビデはひじょうになやんだ。それはたみがみなおのおのそのむすこむすめのためにこころいためたため、ダビデをいしとうとったからである。しかしダビデはそのかみしゅによって自分じぶんちからづけた。

7ダビデはアヒメレクの祭司さいしアビヤタルに、「エポデをわたしのところにってきなさい」とったので、アビヤタルは、エポデをダビデのところにってきた。 8ダビデはしゅうかがいをたててった、「わたしはこの軍隊ぐんたいのあとをうべきですか。わたしはそれにいつくことができましょうか」。しゅかれわれた、「いなさい。あなたはかならいついて、たしかにすくすことができるであろう」。 9そこでダビデは、一緒いっしょにいた六百にんものとも出立しゅったつしてベソルかわったが、あとにのこものはそこにとどまった。 10すなわちダビデは四百にんとも追撃ついげきをつづけたが、つかれてベソルかわわたれないもの二百にんはとどまった。

11かれらはで、ひとりのエジプトびとをて、それをダビデのもとにいてきて、パンをべさせ、みずませた。 12またかれらはほしいちじくのかたまり一つと、ほしぶどう二ふさをかれあたえた。かれべて元気げんき回復かいふくした。かれは三、パンをべず、みずんでいなかったからである。 13ダビデはかれった、「あなたはだれのものか。どこからきたのか」。かれった、「わたしはエジプトの若者わかもので、アマレクびとの奴隷どれいです。三まえにわたしが病気びょうきになったので、主人しゅじんはわたしをててきました。 14わたしどもは、ケレテびとのネゲブと、ユダにぞくすると、カレブのネゲブをおそい、またでチクラグをきはらいました」。 15ダビデはかれった、「あなたはその軍隊ぐんたいのところへわたしをみちびくだってくれるか」。かれった、「あなたはわたしをころさないこと、またわたしを主人しゅじんわたさないことを、かみをさしてわたしにちかってください。そうすればあなたをその軍隊ぐんたいのところへみちびくだりましょう」。

16かれはダビデをみちびくだったが、よ、かれらはペリシテびとのとユダのからうばったさまざまのおおくのぶんどりもののゆえに、み、かつおどりながら、のおもてにあまねくりひろがっていた。 17ダビデはゆうぐれから翌日よくじつ夕方ゆうがたまで、かれらをったので、らくだにってげた四百にん若者わかものたちのほかには、ひとりものがれたものはなかった。 18こうしてダビデはアマレクびとがうばったものをみなりもどした。またダビデはそのふたりのつますくした。 19そしてかれらにぞくするものは、ちいさいものもおおきいものも、むすこもむすめもぶんどりものも、アマレクびとがうばったものなにをもうしなわないで、ダビデがみなりもどした。 20ダビデはまたすべてのひつじうしった。人々ひとびとはこれらの家畜かちくかれまえってきながら、「これはダビデのぶんどりものだ」とった。

21そしてダビデが、あのつかれてダビデについてくことができずに、ベソルかわのほとりにとどまっていた二百にんもののところへきたときかれらはてきてダビデをむかえ、またダビデとともにいるたみむかえた。ダビデはたみちかづいてその安否あんぴうた。 22そのときダビデとともった人々ひとびとのうちで、わるく、かつよこしまなものどもはみなった、「かれらはわれわれとともかなかったのだから、われわれはその人々ひとびとにわれわれのりもどしたぶんどりものあたえることはできない。ただおのおのにその妻子さいしあたえて、れてかせましょう」。 23しかしダビデはった、「兄弟きょうだいたちよ、しゅはわれわれをまもって、めてきた軍隊ぐんたいをわれわれのわたされた。そのしゅたまわったものを、あなたがたはそのようにしてはならない。 24だれがこのことについて、あなたがたにしたがいますか。たたかいにくだってったものまえと、荷物にもつのかたわらにとどまっていたものまえ同様どうようにしなければならない。かれらはひとしくまえけるべきである」。 25この以来いらい、ダビデはこれをイスラエルのさだめとし、おきてとして今日こんにちおよんでいる。

26ダビデはチクラグにきて、そのぶんどりもの一部いちぶをユダの長老ちょうろうである友人ゆうじんたちにおくってった、「これはしゅてきからったぶんどりもののうちからあなたがたにおくるおくものである」。 27そのおくりさきは、ベテルにいる人々ひとびと、ネゲブのラモテにいる人々ひとびと、ヤッテルにいる人々ひとびと 28アロエルにいる人々ひとびと、シフモテにいる人々ひとびと、エシテモアにいる人々ひとびと、ラカルにいる人々ひとびと 29エラメルびとの町々まちまちにいる人々ひとびと、ケニびとの町々まちまちにいる人々ひとびと 30ホルマにいる人々ひとびと、ボラシャンにいる人々ひとびと、アタクにいる人々ひとびと 31ヘブロンにいる人々ひとびと、およびダビデとその従者じゅうしゃたちが、さまよいあるいたすべてのところにいる人々ひとびとであった。

第三一章

1さてペリシテびとはイスラエルとたたかった。イスラエルの人々ひとびとはペリシテびとのまえからげ、おおくのものきずついてギルボアやまにたおれた。 2ペリシテびとはサウルとそのらにり、そしてペリシテびとはサウルのヨナタン、アビナダブ、およびマルキシュアをころした。 3たたかいははげしくサウルにせまり、ゆみものどもがサウルをつけて、かれたので、サウルはものたちにひどいきずわされた。 4そこでサウルはその武器ぶきものった、「つるぎをき、それをもってわたしをせ。さもないと、これらの割礼かつれいものどもがきて、わたしをし、わたしをなぶりごろしにするであろう」。しかしその武器ぶきものは、ひじょうにおそれて、それにおうじなかったので、サウルは、つるぎをって、そのうえした。 5武器ぶきものはサウルがんだのをて、自分じぶんもまたつるぎのうえして、かれともんだ。 6こうしてサウルとその三にんたち、およびサウルの武器ぶきもの、ならびにその従者じゅうしゃたちはみな、このともんだ。 7イスラエルの人々ひとびとで、たにこうがわ、およびヨルダンのこうがわにいるものが、イスラエルの人々ひとびとげるのを、またサウルとそのたちのんだのを町々まちまちててげたので、ペリシテびとはきてそのなかんだ。

8あくる、ペリシテびとはころされたものから、はぎるためにきたが、サウルとその三にんたちがギルボアやまにたおれているのをつけた。 9かれらはサウルのくびり、そのよろいをはぎり、ペリシテびとのぜんひとをつかわして、このらせを、その偶像ぐうぞうたみとにつたえさせた。 10またかれらは、そのよろいをアシタロテの神殿しんでんき、かれのからだをベテシャンの城壁じょうへきにくぎづけにした。 11ヤベシ・ギレアデの住民じゅうみんたちは、ペリシテびとがサウルにしたこといて、 12勇士ゆうしたちはみなち、もすがらって、サウルのからだと、そのたちのからだをベテシャンの城壁じょうへきからりおろし、ヤベシにきて、これをそこでき、 13そのほねって、ヤベシのぎょりゅうのしたほうむり、七日なぬかあいだ断食だんじきした。