サムエル記上

第一章

1エフライムの山地(さんち)のラマタイム・ゾピムに、エルカナという名(な)の人(ひと)があった。エフライムびとで、エロハムの子(こ)であった。エロハムはエリウの子(こ)、エリウはトフの子(こ)、トフはツフの子(こ)である。 2エルカナには、ふたりの妻(つま)があって、ひとりの名(な)はハンナといい、ひとりの名(な)はペニンナといった。ペニンナには子(こ)どもがあったが、ハンナには子(こ)どもがなかった。

3この人(ひと)は年(とし)ごとに、その町(まち)からシロに上(のぼ)っていって、万軍(ばんぐん)の主(しゅ)を拝(はい)し、主(しゅ)に犠牲(ぎせい)をささげるのを常(つね)とした。シロには、エリのふたりの子(こ)、ホフニとピネハスとがいて、主(しゅ)に仕(つか)える祭司(さいし)であった。 4エルカナは、犠牲(ぎせい)をささげる日(ひ)、妻(つま)ペニンナとそのむすこ娘(むすめ)にはみな、その分(わ)け前(まえ)を与(あた)えた。 5エルカナはハンナを愛(あい)していたが、彼女(かのじょ)には、ただ一つの分(わ)け前(まえ)を与(あた)えるだけであった。主(しゅ)がその胎(たい)を閉(と)ざされたからである。 6また彼女(かのじょ)を憎(にく)んでいる他(た)の妻(つま)は、ひどく彼女(かのじょ)を悩(なや)まして、主(しゅ)がその胎(たい)を閉(と)ざされたことを恨(うら)ませようとした。 7こうして年(とし)は暮(く)れ、年(とし)は明(あ)けたが、ハンナが主(しゅ)の宮(みや)に上(のぼ)るごとに、ペニンナは彼女(かのじょ)を悩(なや)ましたので、ハンナは泣(な)いて食(た)べることもしなかった。 8夫(おっと)エルカナは彼女(かのじょ)に言(い)った、「ハンナよ、なぜ泣(な)くのか。なぜ食(た)べないのか。どうして心(こころ)に悲(かな)しむのか。わたしはあなたにとって十人(にん)の子(こ)どもよりもまさっているではないか」。

9シロで彼(かれ)らが飲(の)み食(く)いしたのち、ハンナは立(た)ちあがった。その時(とき)、祭司(さいし)エリは主(しゅ)の神殿(しんでん)の柱(はしら)のかたわらの座(ざ)にすわっていた。 10ハンナは心(こころ)に深(ふか)く悲(かな)しみ、主(しゅ)に祈(いの)って、はげしく泣(な)いた。 11そして誓(ちか)いを立(た)てて言(い)った、「万軍(ばんぐん)の主(しゅ)よ、まことに、はしための悩(なや)みをかえりみ、わたしを覚(おぼ)え、はしためを忘(わす)れずに、はしために男(おとこ)の子(こ)を賜(たま)わりますなら、わたしはその子(こ)を一生(いっしょう)のあいだ主(しゅ)にささげ、かみそりをその頭(あたま)にあてません」。

12彼女(かのじょ)が主(しゅ)の前(まえ)で長(なが)く祈(いの)っていたので、エリは彼女(かのじょ)の口(くち)に目(め)をとめた。 13ハンナは心(こころ)のうちで物(もの)を言(い)っていたので、くちびるが動(うご)くだけで、声(こえ)は聞(きこ)えなかった。それゆえエリは、酔(よ)っているのだと思(おも)って、 14彼女(かのじょ)に言(い)った、「いつまで酔(よ)っているのか。酔(よ)いをさましなさい」。 15しかしハンナは答(こた)えた、「いいえ、わが主(しゅ)よ。わたしは不幸(ふこう)な女(おんな)です。ぶどう酒(しゅ)も濃(こ)い酒(さけ)も飲(の)んだのではありません。ただ主(しゅ)の前(まえ)に心(こころ)を注(そそ)ぎ出(だ)していたのです。 16はしためを、悪(わる)い女(おんな)と思(おも)わないでください。積(つも)る憂(うれ)いと悩(なや)みのゆえに、わたしは今(いま)まで物(もの)を言(い)っていたのです」。 17そこでエリは答(こた)えた、「安心(あんしん)して行(い)きなさい。どうかイスラエルの神(かみ)があなたの求(もと)める願(ねが)いを聞(き)きとどけられるように」。 18彼女(かのじょ)は言(い)った、「どうぞ、はしためにも、あなたの前(まえ)に恵(めぐ)みを得(え)させてください」。こうして、その女(おんな)は去(さ)って食事(しょくじ)し、その顔(かお)は、もはや悲(かな)しげではなくなった。

19彼(かれ)らは朝(あさ)早(はや)く起(お)きて、主(しゅ)の前(まえ)に礼拝(れいはい)し、そして、ラマにある家(いえ)に帰(かえ)って行(い)った。エルカナは妻(つま)ハンナを知(し)り、主(しゅ)が彼女(かのじょ)を顧(かえり)みられたので、 20彼女(かのじょ)はみごもり、その時(とき)が巡(めぐ)ってきて、男(おとこ)の子(こ)を産(う)み、「わたしがこの子(こ)を主(しゅ)に求(もと)めたからだ」といって、その名(な)をサムエルと名(な)づけた。

21エルカナその人(ひと)とその家族(かぞく)とはみな上(のぼ)っていって、年(とし)ごとの犠牲(ぎせい)と、誓(ちか)いの供(そな)え物(もの)とをささげた。 22しかしハンナは上(のぼ)って行(い)かず、夫(おっと)に言(い)った、「わたしはこの子(こ)が乳離(ちばな)れしてから、主(しゅ)の前(まえ)に連(つ)れていって、いつまでも、そこにおらせましょう」。 23夫(おっと)エルカナは彼女(かのじょ)に言(い)った、「あなたが良(よ)いと思(おも)うようにして、この子(こ)の乳離(ちばな)れするまで待(ま)ちなさい。ただどうか主(しゅ)がその言(い)われたことを実現(じつげん)してくださるように」。こうしてその女(おんな)はとどまって、その子(こ)に乳(ちち)をのませ、乳離(ちばな)れするのを待(ま)っていたが、 24乳離(ちばな)れした時(とき)、三歳(さい)の雄牛(おうし)一頭(とう)、麦粉(むぎこ)一エパ、ぶどう酒(しゅ)のはいった皮(かわ)袋(ぶくろ)一つを取(と)り、その子(こ)を連(つ)れて、シロにある主(しゅ)の宮(みや)に行(い)った。その子(こ)はなお幼(おさな)かった。 25そして彼(かれ)らはその牛(うし)を殺(ころ)し、子供(こども)をエリのもとへ連(つ)れて行(い)った。 26ハンナは言(い)った、「わが君(きみ)よ、あなたは生(い)きておられます。わたしは、かつてここに立(た)って、あなたの前(まえ)で、主(しゅ)に祈(いの)った女(おんな)です。 27この子(こ)を与(あた)えてくださいと、わたしは祈(いの)りましたが、主(しゅ)はわたしの求(もと)めた願(ねが)いを聞(き)きとどけられました。 28それゆえ、わたしもこの子(こ)を主(しゅ)にささげます。この子(こ)は一生(いっしょう)のあいだ主(しゅ)にささげたものです」。

そして彼(かれ)らはそこで主(しゅ)を礼拝(れいはい)した。

第二章

1ハンナは祈(いの)って言(い)った、
「わたしの心(こころ)は主(しゅ)によって喜(よろこ)び、
わたしの力(ちから)は主(しゅ)によって強(つよ)められた、
わたしの口(くち)は敵(てき)をあざ笑(わら)う、
あなたの救(すくい)によってわたしは楽(たの)しむからである。
2主(しゅ)のように聖(せい)なるものはない、
あなたのほかには、だれもない、
われわれの神(かみ)のような岩(いわ)はない。
3あなたがたは重(かさ)ねて高慢(こうまん)に語(かた)ってはならない、
たかぶりの言葉(ことば)を口(くち)にすることをやめよ。
主(しゅ)はすべてを知(し)る神(かみ)であって、
もろもろのおこないは主(しゅ)によって量(はか)られる。
4勇士(ゆうし)の弓(ゆみ)は折(お)れ、
弱(よわ)き者(もの)は力(ちから)を帯(お)びる。
5飽(あ)き足(た)りた者(もの)は食(しょく)のために雇(やと)われ、
飢(う)えたものは、もはや飢(う)えることがない。
うまずめは七人(にん)の子(こ)を産(う)み、
多(おお)くの子(こ)をもつ女(おんな)は孤独(こどく)となる。
6主(しゅ)は殺(ころ)し、また生(い)かし、
陰府(よみ)にくだし、また上(うえ)げられる。
7主(しゅ)は貧(まず)しくし、また富(と)ませ、
低(ひく)くし、また高(たか)くされる。
8貧(まず)しい者(もの)を、ちりのなかから立(た)ちあがらせ、
乏(とぼ)しい者(もの)を、あくたのなかから引(ひ)き上(あ)げて、
王侯(おうこう)と共(とも)にすわらせ、
栄誉(えいよ)の位(くらい)を継(つ)がせられる。
地(ち)の柱(はしら)は主(しゅ)のものであって、
その柱(はしら)の上(うえ)に、世界(せかい)をすえられたからである。
9主(しゅ)はその聖徒(せいと)たちの足(あし)を守(まも)られる、
しかし悪(わる)いものどもは暗黒(あんこく)のうちに滅(ほろ)びる。
人(ひと)は力(ちから)をもって勝(か)つことができないからである。
10主(しゅ)と争(あらそ)うものは粉々(こなごな)に砕(くだ)かれるであろう、
主(しゅ)は彼(かれ)らにむかって天(てん)から雷(かみなり)をとどろかし、
地(ち)のはてまでもさばき、王(おう)に力(ちから)を与(あた)え、
油(あぶら)そそがれた者(もの)の力(ちから)を強(つよ)くされるであろう」。

11エルカナはラマにある家(いえ)に帰(かえ)ったが、幼(おさ)な子(こ)は祭司(さいし)エリの前(まえ)にいて主(しゅ)に仕(つか)えた。

12さて、エリの子(こ)らは、よこしまな人々(ひとびと)で、主(しゅ)を恐(おそ)れなかった。 13民(たみ)のささげ物(もの)についての祭司(さいし)のならわしはこうである。人(ひと)が犠牲(ぎせい)をささげる時(とき)、その肉(にく)を煮(に)る間(あいだ)に、祭司(さいし)のしもべは、みつまたの肉(にく)刺(さ)しを手(て)に持(も)ってきて、 14それをかま、またはなべ、またはおおがま、または鉢(はち)に突(つ)きいれ、肉(にく)刺(さ)しの引(ひ)き上(あ)げるものは祭司(さいし)がみな自分(じぶん)のものとした。彼(かれ)らはシロで、そこに来(く)るすべてのイスラエルの人(ひと)に、このようにした。 15人々(ひとびと)が脂肪(しぼう)を焼(や)く前(まえ)にもまた、祭司(さいし)のしもべがきて、犠牲(ぎせい)をささげる人(ひと)に言(い)うのであった、「祭司(さいし)のために焼(や)く肉(にく)を与(あた)えよ。祭司(さいし)はあなたから煮(に)た肉(にく)を受(う)けない。生(なま)の肉(にく)がよい」。 16その人(ひと)が、「まず脂肪(しぼう)を焼(や)かせましょう。その後(のち)ほしいだけ取(と)ってください」と言(い)うと、しもべは、「いや、今(いま)もらいたい。くれないなら、わたしは力(ちから)づくで、それを取(と)ろう」と言(い)う。 17このように、その若者(わかもの)たちの罪(つみ)は、主(しゅ)の前(まえ)に非常(ひじょう)に大(おお)きかった。この人々(ひとびと)が主(しゅ)の供(そな)え物(もの)を軽(かろ)んじたからである。

18サムエルはまだ幼(おさな)く、身(み)に亜麻(あま)布(ぬの)のエポデを着(つ)けて、主(しゅ)の前(まえ)に仕(つか)えていた。 19母(はは)は彼(かれ)のために小(ちい)さい上着(うわぎ)を作(つく)り、年(とし)ごとに、夫(おっと)と共(とも)にその年(とし)の犠牲(ぎせい)をささげるために上(のぼ)る時(とき)、それを持(も)ってきた。 20エリはいつもエルカナとその妻(つま)を祝福(しゅくふく)して言(い)った、「この女(おんな)が主(しゅ)にささげた者(もの)のかわりに、主(しゅ)がこの女(おんな)によってあなたに子(こ)を与(あた)えられるように」。そして彼(かれ)らはその家(いえ)に帰(かえ)るのを常(つね)とした。

21こうして主(しゅ)がハンナを顧(かえり)みられたので、ハンナはみごもって、三人(にん)の男(おとこ)の子(こ)とふたりの女(おんな)の子(こ)を産(う)んだ。わらべサムエルは主(しゅ)の前(まえ)で育(そだ)った。

22エリはひじょうに年(とし)をとった。そしてその子(こ)らがイスラエルの人々(ひとびと)にしたいろいろのことを聞(き)き、また会見(かいけん)の幕屋(まくや)の入口(いりぐち)で勤(つと)めていた女(おんな)たちと寝(ね)たことを聞(き)いて、 23彼(かれ)らに言(い)った、「なにゆえ、そのようなことをするのか。わたしはこのすべての民(たみ)から、あなたがたの悪(わる)いおこないのことを聞(き)く。 24わが子(こ)らよ、それはいけない。わたしの聞(き)く、主(しゅ)の民(たみ)の言(い)いふらしている風説(ふうせつ)は良(よ)くない。 25もし人(ひと)が人(ひと)に対(たい)して罪(つみ)を犯(おか)すならば、神(かみ)が仲裁(ちゅうさい)されるであろう。しかし人(ひと)が主(しゅ)に対(たい)して罪(つみ)を犯(おか)すならば、だれが、そのとりなしをすることができようか」。しかし彼(かれ)らは父(ちち)の言(い)うことに耳(みみ)を傾(かたむ)けようともしなかった。主(しゅ)が彼(かれ)らを殺(ころ)そうとされたからである。

26わらべサムエルは育(そだ)っていき、主(しゅ)にも、人々(ひとびと)にも、ますます愛(あい)せられた。

27このとき、ひとりの神(かみ)の人(ひと)が、エリのもとにきて言(い)った、「主(しゅ)はかく仰(おお)せられる、『あなたの先祖(せんぞ)の家(いえ)がエジプトでパロの家(いえ)の奴隷(どれい)であったとき、わたしはその先祖(せんぞ)の家(いえ)に自(みずか)らを現(あらわ)した。 28そしてイスラエルのすべての部族(ぶぞく)のうちからそれを選(えら)び出(だ)して、わたしの祭司(さいし)とし、わたしの祭壇(さいだん)に上(のぼ)って、香(こう)をたかせ、わたしの前(まえ)でエポデを着(つ)けさせ、また、イスラエルの人々(ひとびと)の火祭(かさい)をことごとくあなたの先祖(せんぞ)の家(いえ)に与(あた)えた。 29それにどうしてあなたがたは、わたしが命(めい)じた犠牲(ぎせい)と供(そな)え物(もの)をむさぼりの目(め)をもって見(み)るのか。またなにゆえ、わたしよりも自分(じぶん)の子(こ)らを尊(たっと)び、わたしの民(たみ)イスラエルのささげるもろもろの供(そな)え物(もの)の、最(もっと)も良(よ)き部分(ぶぶん)をもって自分(じぶん)を肥(こ)やすのか』。 30それゆえイスラエルの神(かみ)、主(しゅ)は仰(おお)せられる、『わたしはかつて、「あなたの家(いえ)とあなたの父(ちち)の家(いえ)とは、永久(えいきゅう)にわたしの前(まえ)に歩(あゆ)むであろう」と言(い)った』。しかし今(いま)、主(しゅ)は仰(おお)せられる、『決(けっ)してそうはしない。わたしを尊(たっと)ぶ者(もの)を、わたしは尊(たっと)び、わたしを卑(いや)しめる者(もの)は、軽(かろ)んぜられるであろう。 31見(み)よ、日(ひ)が来(く)るであろう。その日(ひ)、わたしはあなたの力(ちから)と、あなたの父(ちち)の家(いえ)の力(ちから)を断(た)ち、あなたの家(いえ)に年老(としお)いた者(もの)をなくするであろう。 32そのとき、あなたは災(わざわい)のうちにあって、イスラエルに与(あた)えられるもろもろの繁栄(はんえい)を、ねたみ見(み)るであろう。あなたの家(いえ)には永久(えいきゅう)に年老(としお)いた者(もの)がいなくなるであろう。 33しかしあなたの一族(いちぞく)のひとりを、わたしの祭壇(さいだん)から断(た)たないであろう。彼(かれ)は残(のこ)されてその目(め)を泣(な)きはらし、心(こころ)を痛(いた)めるであろう。またあなたの家(いえ)に生(うま)れ出(で)るものは、みなつるぎに死(し)ぬであろう。 34あなたのふたりの子(こ)ホフニとピネハスの身(み)に起(おこ)ることが、あなたのためにそのしるしとなるであろう。すなわちそのふたりは共(とも)に同(おな)じ日(ひ)に死(し)ぬであろう。 35わたしは自分(じぶん)のために、ひとりの忠実(ちゅうじつ)な祭司(さいし)を起(おこ)す。その人(ひと)はわたしの心(こころ)と思(おも)いとに従(したが)って行(おこな)うであろう。わたしはその家(いえ)を確立(かくりつ)しよう。その人(ひと)はわたしが油(あぶら)そそいだ者(もの)の前(まえ)につねに歩(あゆ)むであろう。 36そしてあなたの家(いえ)で生(い)き残(のこ)っている人々(ひとびと)はみなきて、彼(かれ)に一枚(まい)の銀(ぎん)と一個(こ)のパンを請(こ)い求(もと)め、「どうぞ、わたしを祭司(さいし)の職(しょく)の一つに任(にん)じ、一口(ひとくち)のパンでも食(た)べることができるようにしてください」と言(い)うであろう』」。

第三章

1わらべサムエルは、エリの前(まえ)で、主(しゅ)に仕(つか)えていた。そのころ、主(しゅ)の言葉(ことば)はまれで、黙示(もくし)も常(つね)ではなかった。

2さてエリは、しだいに目(め)がかすんで、見(み)ることができなくなり、そのとき自分(じぶん)のへやで寝(ね)ていた。 3神(かみ)のともしびはまだ消(き)えず、サムエルが神(かみ)の箱(はこ)のある主(しゅ)の神殿(しんでん)に寝(ね)ていた時(とき)、 4主(しゅ)は「サムエルよ、サムエルよ」と呼(よ)ばれた。彼(かれ)は「はい、ここにおります」と言(い)って、 5エリの所(ところ)へ走(はし)っていって言(い)った、「あなたがお呼(およ)びになりました。わたしは、ここにおります」。しかしエリは言(い)った、「わたしは呼(よ)ばない。帰(かえ)って寝(ね)なさい」。彼(かれ)は行(い)って寝(ね)た。 6主(しゅ)はまたかさねて「サムエルよ、サムエルよ」と呼(よ)ばれた。サムエルは起(お)きてエリのもとへ行(い)って言(い)った、「あなたがお呼(およ)びになりました。わたしは、ここにおります」。エリは言(い)った、「子(こ)よ、わたしは呼(よ)ばない。もう一度(ど)寝(ね)なさい」。 7サムエルはまだ主(しゅ)を知(し)らず、主(しゅ)の言葉(ことば)がまだ彼(かれ)に現(あらわ)されなかった。 8主(しゅ)はまた三度目(どめ)にサムエルを呼(よ)ばれたので、サムエルは起(お)きてエリのもとへ行(い)って言(い)った、「あなたがお呼(およ)びになりました。わたしは、ここにおります」。その時(とき)、エリは主(しゅ)がわらべを呼(よ)ばれたのであることを悟(さと)った。 9そしてエリはサムエルに言(い)った、「行(い)って寝(ね)なさい。もしあなたを呼(よ)ばれたら、『しもべは聞(き)きます。主(しゅ)よ、お話(はな)しください』と言(い)いなさい」。サムエルは行(い)って自分(じぶん)の所(ところ)で寝(ね)た。

10主(しゅ)はきて立(た)ち、前(まえ)のように、「サムエルよ、サムエルよ」と呼(よ)ばれたので、サムエルは言(い)った、「しもべは聞(き)きます。お話(はな)しください」。 11その時(とき)、主(しゅ)はサムエルに言(い)われた、「見(み)よ、わたしはイスラエルのうちに一つの事(こと)をする。それを聞(き)く者(もの)はみな、耳(みみ)が二つとも鳴(な)るであろう。 12その日(ひ)には、わたしが、かつてエリの家(いえ)について話(はな)したことを、はじめから終(おわ)りまでことごとく、エリに行(おこな)うであろう。 13わたしはエリに、彼(かれ)が知(し)っている悪事(あくじ)のゆえに、その家(いえ)を永久(えいきゅう)に罰(ばっ)することを告(つ)げる。その子(こ)らが神(かみ)をけがしているのに、彼(かれ)がそれをとめなかったからである。 14それゆえ、わたしはエリの家(いえ)に誓(ちか)う。エリの家(いえ)の悪(あく)は、犠牲(ぎせい)や供(そな)え物(もの)をもってしても、永久(えいきゅう)にあがなわれないであろう」。

15サムエルは朝(あさ)まで寝(ね)て、主(しゅ)の宮(みや)の戸(と)をあけたが、サムエルはその幻(まぼろし)のことをエリに語(かた)るのを恐(おそ)れた。 16しかしエリはサムエルを呼(よ)んで言(い)った、「わが子(こ)サムエルよ」。サムエルは言(い)った、「はい、ここにおります」。 17エリは言(い)った、「何事(なにごと)をお告(つ)げになったのか。隠(かく)さず話(はな)してください。もしお告(つ)げになったことを一つでも隠(かく)して、わたしに言(い)わないならば、どうぞ神(かみ)があなたを罰(ばっ)し、さらに重(おも)く罰(ばっ)せられるように」。 18そこでサムエルは、その事(こと)をことごとく話(はな)して、何(なに)も彼(かれ)に隠(かく)さなかった。エリは言(い)った、「それは主(しゅ)である。どうぞ主(しゅ)が、良(よ)いと思(おも)うことを行(おこな)われるように」。

19サムエルは育(そだ)っていった。主(しゅ)が彼(かれ)と共(とも)におられて、その言葉(ことば)を一つも地(ち)に落(お)ちないようにされたので、 20ダンからベエルシバまで、イスラエルのすべての人(ひと)は、サムエルが主(しゅ)の預言者(よげんしゃ)と定(さだ)められたことを知(し)った。 21主(しゅ)はふたたびシロで現(あらわ)れられた。すなわち主(しゅ)はシロで、主(しゅ)の言葉(ことば)によって、サムエルに自(みずか)らを現(あらわ)された。こうしてサムエルの言葉(ことば)は、あまねくイスラエルの人々(ひとびと)に及(およ)んだ。

第四章

1イスラエルびとは出(で)てペリシテびとと戦(たたか)おうとして、エベネゼルのほとりに陣(じん)をしき、ペリシテびとはアペクに陣(じん)をしいた。 2ペリシテびとはイスラエルびとにむかって陣(じん)備(そな)えをしたが、戦(たたか)うに及(およ)んで、イスラエルびとはペリシテびとの前(まえ)に敗(やぶ)れ、ペリシテびとは戦場(せんじょう)において、おおよそ四千人(にん)を殺(ころ)した。 3民(たみ)が陣営(じんえい)に退(しりぞ)いた時(とき)、イスラエルの長老(ちょうろう)たちは言(い)った、「なにゆえ、主(しゅ)はきょう、ペリシテびとの前(まえ)にわれわれを敗(やぶ)られたのか。シロへ行(い)って主(しゅ)の契約(けいやく)の箱(はこ)をここへ携(たずさ)えてくることにしよう。そして主(しゅ)をわれわれのうちに迎(むか)えて、敵(てき)の手(て)から救(すく)っていただこう」。 4そこで民(たみ)は人(ひと)をシロにつかわし、ケルビムの上(うえ)に座(ざ)しておられる万軍(ばんぐん)の主(しゅ)の契約(けいやく)の箱(はこ)を、そこから携(たずさ)えてこさせた。その時(とき)エリのふたりの子(こ)、ホフニとピネハスは神(かみ)の契約(けいやく)の箱(はこ)と共(とも)に、その所(ところ)にいた。

5主(しゅ)の契約(けいやく)の箱(はこ)が陣営(じんえい)についた時(とき)、イスラエルびとはみな大声(おおごえ)で叫(さけ)んだので、地(ち)は鳴(な)り響(ひび)いた。 6ペリシテびとは、その叫(さけ)び声(ごえ)を聞(き)いて言(い)った、「ヘブルびとの陣営(じんえい)の、この大(おお)きな叫(さけ)び声(ごえ)は何事(なにごと)か」。そして主(しゅ)の箱(はこ)が、陣営(じんえい)に着(つ)いたことを知(し)った時(とき)、 7ペリシテびとは恐(おそ)れて言(い)った、「神々(かみがみ)が陣営(じんえい)にきたのだ」。彼(かれ)らはまた言(い)った、「ああ、われわれはわざわいである。このようなことは今(いま)までなかった。 8ああ、われわれはわざわいである。だれがわれわれをこれらの強(つよ)い神々(かみがみ)の手(て)から救(すく)い出(だ)すことができようか。これらの神々(かみがみ)は、もろもろの災(わざわい)をもってエジプトびとを荒野(あらの)で撃(う)ったのだ。 9ペリシテびとよ、勇気(ゆうき)を出(だ)して男(おとこ)らしくせよ。ヘブルびとがあなたがたに仕(つか)えたように、あなたがたが彼(かれ)らに仕(つか)えることのないために、男(おとこ)らしく戦(たたか)え」。

10こうしてペリシテびとが戦(たたか)ったので、イスラエルびとは敗(やぶ)れて、おのおのその家(いえ)に逃(に)げて帰(かえ)った。戦死者(せんししゃ)はひじょうに多(おお)く、イスラエルの歩兵(ほへい)で倒(たお)れたものは三万であった。 11また神(かみ)の箱(はこ)は奪(うば)われ、エリのふたりの子(こ)、ホフニとピネハスは殺(ころ)された。

12その日(ひ)ひとりのベニヤミンびとが、衣服(いふく)を裂(さ)き、頭(あたま)に土(つち)をかぶって、戦場(せんじょう)から走(はし)ってシロにきた。 13彼(かれ)が着(つ)いたとき、エリは道(みち)のかたわらにある自分(じぶん)の座(ざ)にすわって待(ま)ちかまえていた。その心(こころ)に神(かみ)の箱(はこ)の事(こと)を気(き)づかっていたからである。その人(ひと)が町(まち)にはいって、情報(じょうほう)をつたえたので、町(まち)はこぞって叫(さけ)んだ。 14エリはその叫(さけ)び声(ごえ)を聞(き)いて言(い)った、「この騒(さわ)ぎ声(こえ)は何(なに)か」。その人(ひと)は急(いそ)いでエリの所(ところ)へきてエリに告(つ)げた。 15その時(とき)エリは九十八歳(さい)で、その目(め)は固(かた)まって見(み)ることができなかった。 16その人(ひと)はエリに言(い)った、「わたしは戦場(せんじょう)からきたものです。きょう戦場(せんじょう)からのがれたのです」。エリは言(い)った、「わが子(こ)よ、様子(ようす)はどうであったか」。 17しらせをもたらしたその人(ひと)は答(こた)えて言(い)った、「イスラエルびとは、ペリシテびとの前(まえ)から逃(に)げ、民(たみ)のうちにはまた多(おお)くの戦死者(せんししゃ)があり、あなたのふたりの子(こ)、ホフニとピネハスも死(し)に、神(かみ)の箱(はこ)は奪(うば)われました」。 18彼(かれ)が神(かみ)の箱(はこ)のことを言(い)ったとき、エリはその座(ざ)から、あおむけに門(もん)のかたわらに落(お)ち、首(くび)を折(お)って死(し)んだ。老(お)いて身(み)が重(おも)かったからである。彼(かれ)のイスラエルをさばいたのは四十年(ねん)であった。

19彼(かれ)の嫁(よめ)、ピネハスの妻(つま)はみごもって出産(しゅっさん)の時(とき)が近(ちか)づいていたが、神(かみ)の箱(はこ)が奪(うば)われたこと、しゅうとと夫(おっと)が死(し)んだというしらせを聞(き)いたとき、陣痛(じんつう)が起(おこ)り身(み)をかがめて子(こ)を産(う)んだ。 20彼女(かのじょ)が死(し)にかかっている時(とき)、世話(せわ)をしていた女(おんな)が彼女(かのじょ)に言(い)った、「恐(おそ)れることはありません。男(おとこ)の子(こ)が生(うま)れました」。しかし彼女(かのじょ)は答(こた)えもせず、また顧(かえり)みもしなかった。 21ただ彼女(かのじょ)は「栄光(えいこう)はイスラエルを去(さ)った」と言(い)って、その子(こ)をイカボデと名(な)づけた。これは神(かみ)の箱(はこ)の奪(うば)われたこと、また彼女(かのじょ)のしゅうとと夫(おっと)のことによるのである。 22彼女(かのじょ)はまた、「栄光(えいこう)はイスラエルを去(さ)った。神(かみ)の箱(はこ)が奪(うば)われたからです」と言(い)った。

第五章

1ペリシテびとは神(かみ)の箱(はこ)をぶんどって、エベネゼルからアシドドに運(はこ)んできた。 2そしてペリシテびとはその神(かみ)の箱(はこ)を取(と)ってダゴンの宮(みや)に運(はこ)びこみ、ダゴンのかたわらに置(お)いた。 3アシドドの人々(ひとびと)が、次(つぎ)の日(ひ)、早(はや)く起(お)きて見(み)ると、ダゴンが主(しゅ)の箱(はこ)の前(まえ)に、うつむきに地(ち)に倒(たお)れていたので、彼(かれ)らはダゴンを起(おこ)して、それをもとの所(ところ)に置(お)いた。 4その次(つぎ)の朝(あさ)また早(はや)く起(お)きて見(み)ると、ダゴンはまた、主(しゅ)の箱(はこ)の前(まえ)に、うつむきに地(ち)に倒(たお)れていた。そしてダゴンの頭(あたま)と両手(りょうて)とは切(き)れて離(はな)れ、しきいの上(うえ)にあり、ダゴンはただ胴体(どうたい)だけとなっていた。 5それゆえダゴンの祭司(さいし)たちやダゴンの宮(みや)にはいる人々(ひとびと)は、だれも今日(こんにち)にいたるまで、アシドドのダゴンのしきいを踏(ふ)まない。

6そして主(しゅ)の手(て)はアシドドびとの上(うえ)にきびしく臨(のぞ)み、主(しゅ)は腫物(はれもの)をもってアシドドとその領域(りょういき)の人々(ひとびと)を恐(おそ)れさせ、また悩(なや)まされた。 7アシドドの人々(ひとびと)は、このありさまを見(み)て言(い)った、「イスラエルの神(かみ)の箱(はこ)を、われわれの所(ところ)に、とどめ置(お)いてはならない。その神(かみ)の手(て)が、われわれと、われわれの神(かみ)ダゴンの上(うえ)にきびしく臨(のぞ)むからである」。 8そこで彼(かれ)らは人(ひと)をつかわして、ペリシテびとの君(きみ)たちを集(あつ)めて言(い)った、「イスラエルの神(かみ)の箱(はこ)をどうしましょう」。彼(かれ)らは言(い)った、「イスラエルの神(かみ)の箱(はこ)はガテに移(うつ)そう」。人々(ひとびと)はイスラエルの神(かみ)の箱(はこ)をそこに移(うつ)した。 9彼(かれ)らがそれを移(うつ)すと、主(しゅ)の手(て)がその町(まち)に臨(のぞ)み、非常(ひじょう)な騒(さわ)ぎが起(た)った。そして老若(ろうにゃく)を問(と)わず町(まち)の人々(ひとびと)を撃(う)たれたので、彼(かれ)らの身(み)に腫物(はれもの)ができた。 10そこで人々(ひとびと)は神(かみ)の箱(はこ)をエクロンに送(おく)ったが、神(かみ)の箱(はこ)がエクロンに着(つ)いた時(とき)、エクロンの人々(ひとびと)は叫(さけ)んで言(い)った、「彼(かれ)らがイスラエルの神(かみ)の箱(はこ)をわれわれの所(ところ)に移(うつ)したのは、われわれと民(たみ)を滅(ほろ)ぼすためである」。 11そこで彼(かれ)らは人(ひと)をつかわして、ペリシテびとの君(きみ)たちをみな集(あつ)めて言(い)った、「イスラエルの神(かみ)の箱(はこ)を送(おく)り出(だ)して、もとの所(ところ)に返(かえ)し、われわれと民(たみ)を滅(ほろ)ぼすことのないようにしよう」。恐(おそ)ろしい騒(さわ)ぎが町中(まちぢゅう)に起(た)っていたからである。そこには神(かみ)の手(て)が非常(ひじょう)にきびしく臨(のぞ)んでいたので、 12死(し)なない人(ひと)は腫物(はれもの)をもって撃(う)たれ、町(まち)の叫(さけ)びは天(てん)に達(たっ)した。

第六章

1主(しゅ)の箱(はこ)は七か月(げつ)の間(あいだ)ペリシテびとの地(ち)にあった。 2ペリシテびとは、祭司(さいし)や占(うらな)い師(し)を呼(よ)んで言(い)った、「イスラエルの神(かみ)の箱(はこ)をどうしましょうか。どのようにして、それをもとの所(ところ)へ送(おく)り返(かえ)せばよいか告(つ)げてください」。 3彼(かれ)らは言(い)った、「イスラエルの神(かみ)の箱(はこ)を送(おく)り返(かえ)す時(とき)には、それをむなしく返(かえ)してはならない。必(かなら)ず彼(かれ)にとがの供(そな)え物(もの)をもって償(つぐな)いをしなければならない。そうすれば、あなたがたはいやされ、また彼(かれ)の手(て)がなぜあなたがたを離(はな)れないかを知(し)ることができるであろう」。 4人々(ひとびと)は言(い)った、「われわれが償(つぐな)うとがの供(そな)え物(もの)には何(なに)をしましょうか」。彼(かれ)らは答(こた)えた、「ペリシテびとの君(きみ)たちの数(かず)にしたがって、金(きん)の腫物(はれもの)五つと金(きん)のねずみ五つである。あなたがたすべてと、君(きみ)たちに臨(のぞ)んだ災(わざわい)は一つだからである。 5それゆえ、あなたがたの腫物(はれもの)の像(ぞう)と、地(ち)を荒(あら)すねずみの像(ぞう)を造(つく)り、イスラエルの神(かみ)に栄光(えいこう)を帰(き)するならば、たぶん彼(かれ)は、あなたがた、およびあなたがたの神々(かみがみ)と、あなたがたの地(ち)に、その手(て)を加(くわ)えることを軽(かる)くされるであろう。 6なにゆえ、あなたがたはエジプトびととパロがその心(こころ)をかたくなにしたように、自分(じぶん)の心(こころ)をかたくなにするのか。神(かみ)が彼(かれ)らを悩(なや)ましたので、彼(かれ)らは民(たみ)を行(い)かせ、民(たみ)は去(さ)ったではないか。 7それゆえ今(いま)、新(あたら)しい車(くるま)一両(りょう)を造(つく)り、まだくびきを付(つ)けたことのない乳牛(にゅうぎゅう)二頭(とう)をとり、その牛(うし)を車(くるま)につなぎ、そのおのおのの子(こ)牛(うし)を乳牛(にゅうぎゅう)から離(はな)して家(いえ)に連(つ)れ帰(かえ)り、 8主(しゅ)の箱(はこ)をとって、それをその車(くるま)に載(の)せ、あなたがたがとがの供(そな)え物(もの)として彼(かれ)に償(つぐな)う金(きん)の作(つく)り物(もの)を一つの箱(はこ)におさめてそのかたわらに置(お)き、それを送(おく)って去(さ)らせなさい。 9そして見(み)ていて、それが自分(じぶん)の領地(りょうち)へ行(い)く道(みち)を、ベテシメシへ上(のぼ)るならば、この大(おお)いなる災(わざわい)を、われわれに下(くだ)したのは彼(かれ)である。しかし、そうしない時(とき)は、われわれを撃(う)ったのは彼(かれ)の手(て)ではなく、その事(こと)の偶然(ぐうぜん)であったことを知(し)るであろう」。

10人々(ひとびと)はそのようにした。すなわち、彼(かれ)らは二頭(とう)の乳牛(にゅうぎゅう)をとって、これを車(くるま)につなぎ、そのおのおのの子(こ)牛(うし)を家(いえ)に閉(と)じこめ、 11主(しゅ)の箱(はこ)、および金(きん)のねずみと、腫物(はれもの)の像(ぞう)をおさめた箱(はこ)とを車(くるま)に載(の)せた。 12すると雌牛(めうし)はまっすぐにベテシメシの方向(ほうこう)へ、ひとすじに大路(おおじ)を歩(あゆ)み、鳴(な)きながら進(すす)んでいって、右(みぎ)にも左(ひだり)にも曲(まが)らなかった。ペリシテびとの君(きみ)たちは、ベテシメシの境(さかい)までそのあとについていった。 13時(とき)にベテシメシの人々(ひとびと)は谷(たに)で小麦(こむぎ)を刈(か)り入(い)れていたが、目(め)をあげて、その箱(はこ)を見(み)、それを迎(むか)えて喜(よろこ)んだ。 14車(くるま)はベテシメシびとヨシュアの畑(はたけ)にはいって、そこにとどまった。その所(ところ)に大(おお)きな石(いし)があった。人々(ひとびと)は車(くるま)の木(き)を割(わ)り、その雌牛(めうし)を燔祭(はんさい)として主(しゅ)にささげた。 15レビびとは主(しゅ)の箱(はこ)と、そのかたわらの、金(きん)の作(つく)り物(もの)をおさめた箱(はこ)を取(と)りおろし、それを大石(おおいし)の上(うえ)に置(お)いた。そしてベテシメシの人々(ひとびと)は、その日(ひ)、主(しゅ)に燔祭(はんさい)を供(そな)え、犠牲(ぎせい)をささげた。 16ペリシテびとの五人(にん)の君(きみ)たちはこれを見(み)て、その日(ひ)、エクロンに帰(かえ)った。

17ペリシテびとが、とがの供(そな)え物(もの)として、主(しゅ)に償(つぐな)いをした金(きん)の腫物(はれもの)は、次(つぎ)のとおりである。すなわちアシドドのために一つ、ガザのために一つ、アシケロンのために一つ、ガテのために一つ、エクロンのために一つであった。 18また金(きん)のねずみは、城壁(じょうへき)をめぐらした町(まち)から城壁(じょうへき)のない村里(むらざと)にいたるまで、すべて五人(にん)の君(きみ)たちに属(ぞく)するペリシテびとの町(まち)の数(かず)にしたがって造(つく)った。主(しゅ)の箱(はこ)をおろした所(ところ)のかたわらにあった大石(おおいし)は、今日(こんにち)にいたるまで、ベテシメシびとヨシュアの畑(はたけ)にあって、あかしとなっている。

19ベテシメシの人々(ひとびと)で主(しゅ)の箱(はこ)の中(なか)を見(み)たものがあったので、主(しゅ)はこれを撃(う)たれた。すなわち民(たみ)のうち七十人(にん)を撃(う)たれた。主(しゅ)が民(たみ)を撃(う)って多(おお)くの者(もの)を殺(ころ)されたので、民(たみ)はなげき悲(かな)しんだ。 20ベテシメシの人々(ひとびと)は言(い)った、「だれが、この聖(せい)なる神(かみ)、主(しゅ)の前(まえ)に立(た)つことができようか。主(しゅ)はわれわれを離(はな)れてだれの所(ところ)へ上(のぼ)って行(い)かれたらよいのか」。 21そして彼(かれ)らは、使者(ししゃ)をキリアテ・ヤリムの人々(ひとびと)につかわして言(い)った、「ペリシテびとが主(しゅ)の箱(はこ)を返(かえ)したから、下(くだ)ってきて、それをあなたがたの所(ところ)へ携(たずさ)え上(のぼ)ってください」。

第七章

1キリアテ・ヤリムの人々(ひとびと)は、きて、主(しゅ)の箱(はこ)を携(たずさ)え上(のぼ)り、丘(おか)の上(うえ)のアビナダブの家(いえ)に持(も)ってきて、その子(こ)エレアザルを聖別(せいべつ)して、主(しゅ)の箱(はこ)を守(まも)らせた。 2その箱(はこ)は久(ひさ)しくキリアテ・ヤリムにとどまって、二十年(ねん)を経(へ)た。イスラエルの全家(ぜんか)は主(しゅ)を慕(した)って嘆(なげ)いた。

3その時(とき)サムエルはイスラエルの全家(ぜんか)に告(つ)げていった、「もし、あなたがたが一心(いっしん)に主(しゅ)に立(た)ち返(かえ)るのであれば、ほかの神々(かみがみ)とアシタロテを、あなたがたのうちから捨(す)て去(さ)り、心(こころ)を主(しゅ)に向(む)け、主(しゅ)にのみ仕(つか)えなければならない。そうすれば、主(しゅ)はあなたがたをペリシテびとの手(て)から救(すく)い出(だ)されるであろう」。 4そこでイスラエルの人々(ひとびと)はバアルとアシタロテを捨(す)て去(さ)り、ただ主(しゅ)にのみ仕(つか)えた。

5サムエルはまた言(い)った、「イスラエルびとを、ことごとくミヅパに集(あつ)めなさい。わたしはあなたがたのために主(しゅ)に祈(いの)りましょう」。 6人々(ひとびと)はミヅパに集(あつ)まり、水(みず)をくんでそれを主(しゅ)の前(まえ)に注(そそ)ぎ、その日(ひ)、断食(だんじき)してその所(ところ)で言(い)った、「われわれは主(しゅ)に対(たい)して罪(つみ)を犯(おか)した」。サムエルはミヅパでイスラエルの人々(ひとびと)をさばいた。 7イスラエルの人々(ひとびと)のミヅパに集(あつ)まったことがペリシテびとに聞(きこ)えたので、ペリシテびとの君(きみ)たちは、イスラエルに攻(せ)め上(のぼ)ってきた。イスラエルの人々(ひとびと)はそれを聞(き)いて、ペリシテびとを恐(おそ)れた。 8そしてイスラエルの人々(ひとびと)はサムエルに言(い)った、「われわれのため、われわれの神(かみ)、主(しゅ)に叫(さけ)ぶことを、やめないでください。そうすれば主(しゅ)がペリシテびとの手(て)からわれわれを救(すく)い出(だ)されるでしょう」。 9そこでサムエルは乳(ちち)を飲(の)む小羊(こひつじ)一頭(とう)をとり、これを全(まった)き燔祭(はんさい)として主(しゅ)にささげた。そしてサムエルはイスラエルのために主(しゅ)に叫(さけ)んだので、主(しゅ)はこれに答(こた)えられた。 10サムエルが燔祭(はんさい)をささげていた時(とき)、ペリシテびとはイスラエルと戦(たたか)おうとして近(ちか)づいてきた。しかし主(しゅ)はその日(ひ)、大(おお)いなる雷(かみなり)をペリシテびとの上(うえ)にとどろかせて、彼(かれ)らを乱(みだ)されたので、彼(かれ)らはイスラエルびとの前(まえ)に敗(やぶ)れて逃(に)げた。 11イスラエルの人々(ひとびと)はミヅパを出(で)てペリシテびとを追(お)い、これを撃(う)って、ベテカルの下(した)まで行(い)った。

12その時(とき)サムエルは一つの石(いし)をとってミヅパとエシャナの間(あいだ)にすえ、「主(しゅ)は今(いま)に至(いた)るまでわれわれを助(たす)けられた」と言(い)って、その名(な)をエベネゼルと名(な)づけた。 13こうしてペリシテびとは征服(せいふく)され、ふたたびイスラエルの領地(りょうち)に、はいらなかった。サムエルの一生(いっしょう)の間(あいだ)、主(しゅ)の手(て)が、ペリシテびとを防(ふせ)いだ。 14ペリシテびとがイスラエルから取(と)った町々(まちまち)は、エクロンからガテまで、イスラエルにかえり、イスラエルはその周囲(しゅうい)の地(ち)をもペリシテびとの手(て)から取(と)りかえした。またイスラエルとアモリびととの間(あいだ)には平和(へいわ)があった。

15サムエルは一生(いっしょう)の間(あいだ)イスラエルをさばいた。 16年(とし)ごとにサムエルはベテルとギルガル、およびミヅパを巡(めぐ)って、その所々(ところどころ)でイスラエルをさばき、 17ラマに帰(かえ)った。そこに彼(かれ)の家(いえ)があったからである。その所(ところ)でも彼(かれ)はイスラエルをさばき、またそこで主(しゅ)に祭壇(さいだん)を築(きず)いた。

第八章

1サムエルは年老(としお)いて、その子(こ)らをイスラエルのさばきづかさとした。 2長子(ちょうし)の名(な)はヨエルといい、次(つぎ)の子(こ)の名(な)はアビヤと言(い)った。彼(かれ)らはベエルシバでさばきづかさであった。 3しかしその子(こ)らは父(ちち)の道(みち)を歩(あゆ)まないで、利(り)にむかい、まいないを取(と)って、さばきを曲(ま)げた。

4この時(とき)、イスラエルの長老(ちょうろう)たちはみな集(あつ)まってラマにおるサムエルのもとにきて、 5言(い)った、「あなたは年老(としお)い、あなたの子(こ)たちはあなたの道(みち)を歩(あゆ)まない。今(いま)ほかの国々(くにぐに)のように、われわれをさばく王(おう)を、われわれのために立(た)ててください」。 6しかし彼(かれ)らが、「われわれをさばく王(おう)を、われわれに与(あた)えよ」と言(い)うのを聞(き)いて、サムエルは喜(よろこ)ばなかった。そしてサムエルが主(しゅ)に祈(いの)ると、 7主(しゅ)はサムエルに言(い)われた、「民(たみ)が、すべてあなたに言(い)う所(ところ)の声(こえ)に聞(き)き従(したが)いなさい。彼(かれ)らが捨(す)てるのはあなたではなく、わたしを捨(す)てて、彼(かれ)らの上(うえ)にわたしが王(おう)であることを認(みと)めないのである。 8彼(かれ)らは、わたしがエジプトから連(つ)れ上(のぼ)った日(ひ)から、きょうまで、わたしを捨(す)ててほかの神々(かみがみ)に仕(つか)え、さまざまの事(こと)をわたしにしたように、あなたにもしているのである。 9今(いま)その声(こえ)に聞(き)き従(したが)いなさい。ただし、深(ふか)く彼(かれ)らを戒(いまし)めて、彼(かれ)らを治(おさ)める王(おう)のならわしを彼(かれ)らに示(しめ)さなければならない」。

10サムエルは王(おう)を立(た)てることを求(もと)める民(たみ)に主(しゅ)の言葉(ことば)をことごとく告(つ)げて、 11言(い)った、「あなたがたを治(おさ)める王(おう)のならわしは次(つぎ)のとおりである。彼(かれ)はあなたがたのむすこを取(と)って、戦車(せんしゃ)隊(たい)に入(い)れ、騎兵(きへい)とし、自分(じぶん)の戦車(せんしゃ)の前(まえ)に走(はし)らせるであろう。 12彼(かれ)はまたそれを千人(にん)の長(ちょう)、五十人(にん)の長(ちょう)に任(にん)じ、またその地(ち)を耕(たがや)させ、その作物(さくもつ)を刈(か)らせ、またその武器(ぶき)と戦車(せんしゃ)の装備(そうび)を造(つく)らせるであろう。 13また、あなたがたの娘(むすめ)を取(と)って、香(こう)をつくる者(もの)とし、料理(りょうり)をする者(もの)とし、パンを焼(や)く者(もの)とするであろう。 14また、あなたがたの畑(はたけ)とぶどう畑(はたけ)とオリブ畑(はたけ)の最(もっと)も良(よ)い物(もの)を取(と)って、その家来(けらい)に与(あた)え、 15あなたがたの穀物(こくもつ)と、ぶどう畑(はたけ)の、十分(ぶん)の一を取(と)って、その役人(やくにん)と家来(けらい)に与(あた)え、 16また、あなたがたの男女(だんじょ)の奴隷(どれい)および、あなたがたの最(もっと)も良(よ)い牛(うし)とろばを取(と)って、自分(じぶん)のために働(はたら)かせ、 17また、あなたがたの羊(ひつじ)の十分(ぶん)の一を取(と)り、あなたがたは、その奴隷(どれい)となるであろう。 18そしてその日(ひ)あなたがたは自分(じぶん)のために選(えら)んだ王(おう)のゆえに呼(よ)ばわるであろう。しかし主(しゅ)はその日(ひ)にあなたがたに答(こた)えられないであろう」。

19ところが民(たみ)はサムエルの声(こえ)に聞(き)き従(したが)うことを拒(こば)んで言(い)った、「いいえ、われわれを治(おさ)める王(おう)がなければならない。 20われわれも他(た)の国々(くにぐに)のようになり、王(おう)がわれわれをさばき、われわれを率(ひき)いて、われわれの戦(たたか)いにたたかうのである」。 21サムエルは民(たみ)の言葉(ことば)をことごとく聞(き)いて、それを主(しゅ)の耳(みみ)に告(つ)げた。 22主(しゅ)はサムエルに言(い)われた、「彼(かれ)らの声(こえ)に聞(き)き従(したが)い、彼(かれ)らのために王(おう)を立(た)てよ」。サムエルはイスラエルの人々(ひとびと)に言(い)った、「あなたがたは、めいめいその町(まち)に帰(かえ)りなさい」。

第九章

1さて、ベニヤミンの人(ひと)で、キシという名(な)の裕福(ゆうふく)な人(ひと)があった。キシはアビエルの子(こ)、アビエルはゼロルの子(こ)、ゼロルはベコラテの子(こ)、ベコラテはアピヤの子(こ)、アピヤはベニヤミンびとである。 2キシにはサウルという名(な)の子(こ)があった。若(わか)くて麗(うるわ)しく、イスラエルの人々(ひとびと)のうちに彼(かれ)よりも麗(うるわ)しい人(ひと)はなく、民(たみ)のだれよりも肩(かた)から上(うえ)、背(せ)が高(たか)かった。

3サウルの父(ちち)キシの数(すう)頭(とう)のろばがいなくなった。そこでキシは、その子(こ)サウルに言(い)った、「しもべをひとり連(つ)れて、立(た)って行(い)き、ろばを捜(さが)してきなさい」。 4そこでふたりはエフライムの山地(さんち)を通(とお)りすぎ、シャリシャの地(ち)を通(とお)り過(す)ぎたけれども見当(みあた)らず、シャリムの地(ち)を通(とお)り過(す)ぎたけれどもおらず、ベニヤミンの地(ち)を通(とお)り過(す)ぎたけれども見当(みあた)らなかった。

5彼(かれ)らがツフの地(ち)にきた時(とき)、サウルは連(つ)れてきたしもべに言(い)った、「さあ、帰(かえ)ろう。父(ちち)は、ろばのことよりも、われわれのことを心配(しんぱい)するだろう」。 6ところが、しもべは言(い)った、「この町(まち)には神(かみ)の人(ひと)がおられます。尊(たっと)い人(ひと)で、その言(い)われることはみなそのとおりになります。その所(ところ)へ行(い)きましょう。われわれの出(で)てきた旅(たび)のことについて何(なに)か示(しめ)されるでしょう」。 7サウルはしもべに言(い)った、「しかし行(い)くのであれば、その人(ひと)に何(なに)を贈(おく)ろうか。袋(ふくろ)のパンはもはや、なくなり、神(かみ)の人(ひと)に持(も)っていく贈(おく)り物(もの)がない。何(なに)かありますか」。 8しもべは、またサウルに答(こた)えた、「わたしの手(て)に四分(ぶん)の一シケルの銀(ぎん)があります。わたしはこれを、神(かみ)の人(ひと)に与(あた)えて、われわれの道(みち)を示(しめ)してもらいましょう」。 9――昔(むかし)イスラエルでは、神(かみ)に問(と)うために行(い)く時(とき)には、こう言(い)った、「さあ、われわれは先見者(せんけんしゃ)のところへ行(い)こう」。今(いま)の預言者(よげんしゃ)は、昔(むかし)は先見者(せんけんしゃ)といわれていたのである。―― 10サウルはそのしもべに言(い)った、「それは良(よ)い。さあ、行(い)こう」。こうして彼(かれ)らは、神(かみ)の人(ひと)のいるその町(まち)へ行(い)った。

11彼(かれ)らは町(まち)へ行(い)く坂(さか)を上(のぼ)っている時(とき)、水(みず)をくむために出(で)てくるおとめたちに出会(であ)ったので、彼(かれ)らに言(い)った、「先見者(せんけんしゃ)はここにおられますか」。 12おとめたちは答(こた)えた、「おられます。ごらんなさい、この先(さき)です。急(いそ)いで行(い)きなさい。民(たみ)がきょう高(たか)き所(ところ)で犠牲(ぎせい)をささげるので、たった今(いま)、町(まち)にこられたところです。 13あなたがたは、町(まち)にはいるとすぐ、あのかたが高(たか)き所(ところ)に上(のぼ)って食事(しょくじ)される前(まえ)に会(あ)えるでしょう。民(たみ)はそのかたがこられるまでは食事(しょくじ)をしません。あのかたが犠牲(ぎせい)を祝福(しゅくふく)されてから、招(まね)かれた人々(ひとびと)が食事(しょくじ)をするのです。さあ、上(のぼ)っていきなさい。すぐに会(あ)えるでしょう」。 14こうして彼(かれ)らは町(まち)に上(のぼ)っていった。そして町(まち)の中(なか)に、はいろうとした時(とき)、サムエルは高(たか)き所(ところ)に上(のぼ)るため彼(かれ)らのほうに向(む)かって出(で)てきた。

15さてサウルが来(く)る一日(にち)前(まえ)に、主(しゅ)はサムエルの耳(みみ)に告(つ)げて言(い)われた、 16「あすの今(いま)ごろ、あなたの所(ところ)に、ベニヤミンの地(ち)から、ひとりの人(ひと)をつかわすであろう。あなたはその人(ひと)に油(あぶら)を注(そそ)いで、わたしの民(たみ)イスラエルの君(きみ)としなさい。彼(かれ)はわたしの民(たみ)をペリシテびとの手(て)から救(すく)い出(だ)すであろう。わたしの民(たみ)の叫(さけ)びがわたしに届(とど)き、わたしがその悩(なや)みを顧(かえり)みるからである」。 17サムエルがサウルを見(み)た時(とき)、主(しゅ)は言(い)われた、「見(み)よ、わたしの言(い)ったのはこの人(ひと)である。この人(ひと)がわたしの民(たみ)を治(おさ)めるであろう」。 18そのときサウルは、門(もん)の中(なか)でサムエルに近(ちか)づいて言(い)った、「先見者(せんけんしゃ)の家(いえ)はどこですか。どうか教(おし)えてください」。 19サムエルはサウルに答(こた)えた、「わたしがその先見者(せんけんしゃ)です。わたしの前(まえ)に行(い)って、高(たか)き所(ところ)に上(のぼ)りなさい。あなたがたは、きょう、わたしと一緒(いっしょ)に食事(しょくじ)しなさい。わたしはあすの朝(あさ)あなたを帰(かえ)らせ、あなたの心(こころ)にあることをみな示(しめ)しましょう。 20三日(か)前(まえ)に、いなくなったあなたのろばは、もはや見(み)つかったので心(こころ)にかけなくてもよろしい。しかしイスラエルのすべての望(のぞ)ましきものはだれのものですか。それはあなたのもの、あなたの父(ちち)の家(いえ)のすべての人(ひと)のものではありませんか」。 21サウルは答(こた)えた、「わたしはイスラエルのうちの最(もっと)も小(ちい)さい部族(ぶぞく)のベニヤミンびとであって、わたしの一族(いちぞく)はまたベニヤミンのどの一族(いちぞく)よりも卑(いや)しいものではありませんか。どうしてあなたは、そのようなことをわたしに言(い)われるのですか」。

22サムエルはサウルとそのしもべを導(みちび)いて、へやにはいり、招(まね)かれた三十人(にん)ほどのうちの上座(かみざ)にすわらせた。 23そしてサムエルは料理(りょうり)人(にん)に言(い)った、「あなたに渡(わた)して、取(と)りのけておくようにと言(い)っておいた分(ぶん)を持(も)ってきなさい」。 24料理(りょうり)人(にん)は、ももとその上(うえ)の部分(ぶぶん)を取(と)り上(あ)げて、それをサウルの前(まえ)に置(お)いた。そしてサムエルは言(い)った、「ごらんなさい。取(と)っておいた物(もの)が、あなたの前(まえ)に置(お)かれています。召(め)しあがってください。あなたが客人(きゃくじん)たちと一緒(いっしょ)に食事(しょくじ)ができるように、この時(とき)まで、あなたのために取(と)っておいたものです」。

こうしてサウルはその日(ひ)サムエルと一緒(いっしょ)に食事(しょくじ)をした。 25そして彼(かれ)らが高(たか)き所(ところ)を下(くだ)って町(まち)にはいった時(とき)、サウルのために屋上(おくじょう)に床(とこ)が設(もう)けられ、彼(かれ)はその上(うえ)に身(み)を横(よこ)たえて寝(ね)た。 26そして夜明(よあ)けになって、サムエルは屋上(おくじょう)のサウルに呼(よ)ばわって言(い)った、「起(お)きなさい。あなたをお送(おく)りします」。サウルは起(お)き上(あ)がった。そしてサウルとサムエルのふたりは、共(とも)に外(そと)に出(で)た。

27彼(かれ)らが町(まち)はずれに下(くだ)った時(とき)、サムエルはサウルに言(い)った、「あなたのしもべに先(さき)に行(い)くように言(い)いなさい。しもべが先(さき)に行(い)ったら、あなたは、しばらくここに立(た)ちとどまってください。神(かみ)の言葉(ことば)を知(し)らせましょう」。

第一〇章

1その時(とき)サムエルは油(あぶら)のびんを取(と)って、サウルの頭(あたま)に注(そそ)ぎ、彼(かれ)に口(くち)づけして言(い)った、「主(しゅ)はあなたに油(あぶら)を注(そそ)いで、その民(たみ)イスラエルの君(きみ)とされたではありませんか。あなたは主(しゅ)の民(たみ)を治(おさ)め、周囲(しゅうい)の敵(てき)の手(て)から彼(かれ)らを救(すく)わなければならない。主(しゅ)があなたに油(あぶら)を注(そそ)いで、その嗣(し)業(ぎょう)の君(きみ)とされたことの、しるしは次(つぎ)のとおりです。 2あなたがきょう、わたしを離(はな)れて、去(さ)って行(い)くとき、ベニヤミンの領地(りょうち)のゼルザにあるラケルの墓(はか)のかたわらで、ふたりの人(ひと)に会(あ)うでしょう。そして彼(かれ)らはあなたに言(い)います、『あなたが捜(さが)しに行(い)かれたろばは見(み)つかりました。いま父上(ちちうえ)は、ろばよりもあなたがたの事(こと)を心配(しんぱい)して、「わが子(こ)のことは、どうしよう」と言(い)っておられます』。 3あなたが、そこからなお進(すす)んで、タボルのかしの木(き)の所(ところ)へ行(い)くと、そこでベテルに上(のぼ)って神(かみ)を拝(おが)もうとする三人(にん)の者(もの)に会(あ)うでしょう。ひとりは三頭(とう)の子(こ)やぎを連(つ)れ、ひとりは三つのパンを携(たずさ)え、ひとりは、ぶどう酒(しゅ)のはいった皮(かわ)袋(ぶくろ)一つを携(たずさ)えている。 4彼(かれ)らはあなたにあいさつし、二つのパンをくれるでしょう。あなたはそれを、その手(て)から受(う)けなければならない。 5その後(のち)、あなたは神(かみ)のギベアへ行(い)く。そこはペリシテびとの守備(しゅび)兵(へい)のいる所(ところ)である。あなたはその所(ところ)へ行(い)って、町(まち)にはいる時(とき)、立琴(たてごと)、手(て)鼓(つづみ)、笛(ふえ)、琴(こと)を執(と)る人々(ひとびと)を先(さき)に行(い)かせて、預言(よげん)しながら高(たか)き所(ところ)から降(ふ)りてくる一群(いちぐん)の預言者(よげんしゃ)に会(あ)うでしょう。 6その時(とき)、主(しゅ)の霊(れい)があなたの上(うえ)にもはげしく下(くだ)って、あなたは彼(かれ)らと一緒(いっしょ)に預言(よげん)し、変(かわ)って新(あたら)しい人(ひと)となるでしょう。 7これらのしるしが、あなたの身(み)に起(た)ったならば、あなたは手当(てあ)たりしだいになんでもしなさい。神(かみ)があなたと一緒(いっしょ)におられるからです。 8あなたはわたしに先立(さきだ)ってギルガルに下(くだ)らなければならない。わたしはあなたのもとに下(くだ)っていって、燔祭(はんさい)を供(そな)え、酬恩祭(しゅうおんさい)をささげるでしょう。わたしがあなたのもとに行(い)って、あなたのしなければならない事(こと)をあなたに示(しめ)すまで、七日(なぬか)のあいだ待(ま)たなければならない」。

9サウルが背(せ)をかえしてサムエルを離(はな)れたとき、神(かみ)は彼(かれ)に新(あたら)しい心(こころ)を与(あた)えられた。これらのしるしは皆(みな)その日(ひ)に起(た)った。 10彼(かれ)らはギベアにきた時(とき)、預言者(よげんしゃ)の一群(いちぐん)に出会(であ)った。そして神(かみ)の霊(れい)が、はげしくサウルの上(うえ)に下(くだ)り、彼(かれ)は彼(かれ)らのうちにいて預言(よげん)した。 11もとからサウルを知(し)っていた人々(ひとびと)はみな、サウルが預言者(よげんしゃ)たちと共(とも)に預言(よげん)するのを見(み)て互(たがい)に言(い)った、「キシの子(こ)に何事(なにごと)が起(た)ったのか。サウルもまた預言者(よげんしゃ)たちのうちにいるのか」。 12その所(ところ)のひとりの者(もの)が答(こた)えた、「彼(かれ)らの父(ちち)はだれなのか」。それで「サウルもまた預言者(よげんしゃ)たちのうちにいるのか」というのが、ことわざとなった。 13サウルは預言(よげん)することを終(お)えて、高(たか)き所(ところ)へ行(い)った。

14サウルのおじが、サウルとそのしもべとに言(い)った、「あなたがたは、どこへ行(い)ったのか」。サウルは言(い)った、「ろばを捜(さが)しにいったのですが、どこにもいないので、サムエルのもとに行(い)きました」。 15サウルのおじは言(い)った、「サムエルが、どんなことを言(い)ったか、どうぞ話(はな)してください」。 16サウルはおじに言(い)った、「ろばが見(み)つかったと、はっきり、わたしたちに言(い)いました」。しかしサムエルが言(い)った王国(おうこく)のことについて、おじには何(なに)も告(つ)げなかった。

17さて、サムエルは民(たみ)をミヅパで主(しゅ)の前(まえ)に集(あつ)め、 18イスラエルの人々(ひとびと)に言(い)った、「イスラエルの神(かみ)、主(しゅ)はこう仰(おお)せられる、『わたしはイスラエルをエジプトから導(みちび)き出(だ)し、あなたがたをエジプトびとの手(て)、およびすべてあなたがたをしえたげる王国(おうこく)の手(て)から救(すく)い出(だ)した』。 19しかしあなたがたは、きょう、あなたがたをその悩(なや)みと苦(くる)しみの中(なか)から救(すく)われるあなたがたの神(かみ)を捨(す)て、その上(うえ)、『いいえ、われわれの上(うえ)に王(おう)を立(た)てよ』と言(い)う。それゆえ今(いま)、あなたがたは、部族(ぶぞく)にしたがい、また氏族(しぞく)にしたがって、主(しゅ)の前(まえ)に出(で)なさい」。

20こうしてサムエルがイスラエルのすべての部族(ぶぞく)を呼(よ)び寄(よ)せた時(とき)、ベニヤミンの部族(ぶぞく)が、くじに当(あた)った。 21またベニヤミンの部族(ぶぞく)をその氏族(しぞく)にしたがって呼(よ)び寄(よ)せた時(とき)、マテリの氏族(しぞく)が、くじに当(あた)り、マテリの氏族(しぞく)を人(ひと)ごとに呼(よ)び寄(よ)せた時(とき)、キシの子(こ)サウルが、くじに当(あた)った。しかし人々(ひとびと)が彼(かれ)を捜(さが)した時(とき)、見(み)つからなかった。 22そこでまた主(しゅ)に「その人(ひと)はここにきているのですか」と問(と)うと、主(しゅ)は言(い)われた、「彼(かれ)は荷物(にもつ)の間(あいだ)に隠(かく)れている」。 23人々(ひとびと)は走(はし)って行(い)って、彼(かれ)をそこから連(つ)れてきた。彼(かれ)は民(たみ)の中(なか)に立(た)ったが、肩(かた)から上(うえ)は、民(たみ)のどの人(ひと)よりも高(たか)かった。 24サムエルはすべての民(たみ)に言(い)った、「主(しゅ)が選(えら)ばれた人(ひと)をごらんなさい。民(たみ)のうちに彼(かれ)のような人(ひと)はないではありませんか」。民(たみ)はみな「王(おう)万歳(ばんざい)」と叫(さけ)んだ。

25その時(とき)サムエルは王国(おうこく)のならわしを民(たみ)に語(かた)り、それを書(しょ)にしるして、主(しゅ)の前(まえ)におさめた。こうしてサムエルはすべての民(たみ)をそれぞれ家(いえ)に帰(かえ)らせた。 26サウルもまたギベアにある彼(かれ)の家(いえ)に帰(かえ)った。そして神(かみ)にその心(こころ)を動(うご)かされた勇士(ゆうし)たちも彼(かれ)と共(とも)に行(い)った。 27しかし、よこしまな人々(ひとびと)は「この男(おとこ)がどうしてわれわれを救(すく)うことができよう」と言(い)って、彼(かれ)を軽(かろ)んじ、贈(おく)り物(もの)をしなかった。しかしサウルは黙(だま)っていた。

第一一章

1アンモンびとナハシは上(のぼ)ってきて、ヤベシ・ギレアデを攻(せ)め囲(かこ)んだ。ヤベシの人々(ひとびと)はナハシに言(い)った、「われわれと契約(けいやく)を結(むす)びなさい。そうすればわれわれはあなたに仕(つか)えます」。 2しかしアンモンびとナハシは彼(かれ)らに言(い)った、「次(つぎ)の条件(じょうけん)であなたがたと契約(けいやく)を結(むす)ぼう。すなわち、わたしが、あなたがたすべての右(みぎ)の目(め)をえぐり取(と)って、全(ぜん)イスラエルをはずかしめるということだ」。 3ヤベシの長老(ちょうろう)たちは彼(かれ)に言(い)った、「われわれに七日(なぬか)の猶予(ゆうよ)を与(あた)え、イスラエルの全(ぜん)領土(りょうど)に使者(ししゃ)を送(おく)ることを許(ゆる)してください。そしてもしわれわれを救(すく)う者(もの)がない時(とき)は降伏(こうふく)します」。 4こうして使者(ししゃ)が、サウルのギベアにきて、この事(こと)を民(たみ)の耳(みみ)に告(つ)げたので、民(たみ)はみな声(こえ)をあげて泣(な)いた。

5その時(とき)サウルは畑(はたけ)から牛(うし)のあとについてきた。そしてサウルは言(い)った、「民(たみ)が泣(な)いているのは、どうしたのか」。人々(ひとびと)は彼(かれ)にヤベシの人々(ひとびと)の事(こと)を告(つ)げた。 6サウルがこの言葉(ことば)を聞(き)いた時(とき)、神(かみ)の霊(れい)が激(はげ)しく彼(かれ)の上(うえ)に臨(のぞ)んだので、彼(かれ)の怒(いか)りははなはだしく燃(も)えた。 7彼(かれ)は一くびきの牛(うし)をとり、それを切(き)り裂(さ)き、使者(ししゃ)の手(て)によってイスラエルの全(ぜん)領土(りょうど)に送(おく)って言(い)わせた、「だれであってもサウルとサムエルとに従(したが)って出(で)ない者(もの)は、その牛(うし)がこのようにされるであろう」。民(たみ)は主(しゅ)を恐(おそ)れて、ひとりのように出(で)てきた。 8サウルはベゼクでそれを数(かぞ)えたが、イスラエルの人々(ひとびと)は三十万、ユダの人々(ひとびと)は三万であった。 9そして人々(ひとびと)は、きた使者(ししゃ)たちに言(い)った、「ヤベシ・ギレアデの人(ひと)にこう言(い)いなさい、『あす、日(ひ)の暑(あつ)くなるころ、あなたがたは救(すくい)を得(え)るであろう』と」。使者(ししゃ)が帰(かえ)って、ヤベシの人々(ひとびと)に告(つ)げたので、彼(かれ)らは喜(よろこ)んだ。 10そこでヤベシの人々(ひとびと)は言(い)った、「あす、われわれは降伏(こうふく)します。なんでも、あなたがたが良(よ)いと思(おも)うことを、われわれにしてください」。 11明(あ)くる日(ひ)、サウルは民(たみ)を三つの部隊(ぶたい)に分(わ)け、あかつきに敵(てき)の陣営(じんえい)に攻(せ)め入(い)り、日(ひ)の暑(あつ)くなるころまで、アンモンびとを殺(ころ)した。生(い)き残(のこ)った者(もの)はちりぢりになって、ふたり一緒(いっしょ)にいるものはなかった。

12その時(とき)、民(たみ)はサムエルに言(い)った、「さきに、『サウルがどうしてわれわれを治(おさ)めることができようか』と言(い)ったものはだれでしょうか。その人々(ひとびと)を引(ひ)き出(だ)してください。われわれはその人々(ひとびと)を殺(ころ)します」。 13しかしサウルは言(い)った、「主(しゅ)はきょう、イスラエルに救(すくい)を施(ほどこ)されたのですから、きょうは人(ひと)を殺(ころ)してはなりません」。 14そこでサムエルは民(たみ)に言(い)った、「さあ、ギルガルへ行(い)って、あそこで王国(おうこく)を一新(いっしん)しよう」。 15こうして民(たみ)はみなギルガルへ行(い)って、その所(ところ)で主(しゅ)の前(まえ)にサウルを王(おう)とし、酬恩祭(しゅうおんさい)を主(しゅ)の前(まえ)にささげ、サウルとイスラエルの人々(ひとびと)は皆(みな)、その所(ところ)で大(おお)いに祝(いわ)った。

第一二章

1サムエルはイスラエルの人々(ひとびと)に言(い)った、「見(み)よ、わたしは、あなたがたの言葉(ことば)に聞(き)き従(したが)って、あなたがたの上(うえ)に王(おう)を立(た)てた。 2見(み)よ王(おう)は今(いま)、あなたがたの前(まえ)に歩(あゆ)む。わたしは年老(としお)いて髪(かみ)は白(しろ)くなった。わたしの子(こ)らもあなたがたと共(とも)にいる。わたしは若(わか)い時(とき)から、きょうまで、あなたがたの前(まえ)に歩(あゆ)んだ。 3わたしはここにいる。主(しゅ)の前(まえ)と、その油(あぶら)そそがれた者(もの)の前(まえ)に、わたしを訴(うった)えよ。わたしが、だれの牛(うし)を取(と)ったか。だれのろばを取(と)ったか。だれを欺(あざむ)いたか。だれをしえたげたか。だれの手(て)から、まいないを取(と)って、自分(じぶん)の目(め)をくらましたか。もしそのようなことがあれば、わたしはそれを、あなたがたに償(つぐな)おう」。 4彼(かれ)らは言(い)った、「あなたは、われわれを欺(あざむ)いたことも、しえたげたこともありません。また人(ひと)の手(て)から何(なに)も取(と)ったことはありません」。 5サムエルは彼(かれ)らに言(い)った、「あなたがたが、わたしの手(て)のうちに、なんの不正(ふせい)をも見(み)いださないことを、主(しゅ)はあなたがたにあかしされる。その油(あぶら)そそがれた者(もの)も、きょうそれをあかしする」。彼(かれ)らは言(い)った、「あかしされます」。

6サムエルは民(たみ)に言(い)った、「モーセとアロンを立(た)てて、あなたがたの先祖(せんぞ)をエジプトの地(ち)から導(みちび)き出(だ)された主(しゅ)が証人(しょうにん)です。 7それゆえ、あなたがたは今(いま)、立(た)ちなさい。わたしは主(しゅ)が、あなたがたとあなたがたの先祖(せんぞ)のために行(おこな)われたすべての救(すくい)のわざについて、主(しゅ)の前(まえ)に、あなたがたと論(ろん)じよう。 8ヤコブがエジプトに行(い)って、エジプトびとが、彼(かれ)らを、しえたげた時(とき)、あなたがたの先祖(せんぞ)は主(しゅ)に呼(よ)ばわったので、主(しゅ)はモーセとアロンをつかわされた。そこで彼(かれ)らは、あなたがたの先祖(せんぞ)をエジプトから導(みちび)き出(だ)して、この所(ところ)に住(す)まわせた。 9しかし、彼(かれ)らがその神(かみ)、主(しゅ)を忘(わす)れたので、主(しゅ)は彼(かれ)らをハゾルの王(おう)ヤビンの軍(ぐん)の長(ちょう)シセラの手(て)に渡(わた)し、またペリシテびとの手(て)とモアブの王(おう)の手(て)にわたされた。そこで彼(かれ)らがイスラエルを攻(せ)めたので、 10民(たみ)は主(しゅ)に呼(よ)ばわって言(い)った、『われわれは主(しゅ)を捨(す)て、バアルとアシタロテに仕(つか)えて、罪(つみ)を犯(おか)しました。今(いま)、われわれを敵(てき)の手(て)から救(すく)い出(だ)してください。われわれはあなたに仕(つか)えます』。 11主(しゅ)はエルバアルとバラクとエフタとサムエルをつかわして、あなたがたを周囲(しゅうい)の敵(てき)の手(て)から救(すく)い出(だ)されたので、あなたがたは安(やす)らかに住(す)むことができた。 12ところが、アンモンびとの王(おう)ナハシが攻(せ)めてくるのを見(み)たとき、あなたがたの神(かみ)、主(しゅ)があなたがたの王(おう)であるのに、あなたがたはわたしに、『いいえ、われわれを治(おさ)める王(おう)がなければならない』と言(い)った。 13それゆえ、今(いま)あなたがたの選(えら)んだ王(おう)、あなたがたが求(もと)めた王(おう)を見(み)なさい。主(しゅ)はあなたがたの上(うえ)に王(おう)を立(た)てられた。 14もし、あなたがたが主(しゅ)を恐(おそ)れ、主(しゅ)に仕(つか)えて、その声(こえ)に聞(き)き従(したが)い、主(しゅ)の戒(いまし)めにそむかず、あなたがたも、あなたがたを治(おさ)める王(おう)も共(とも)に、あなたがたの神(かみ)、主(しゅ)に従(したが)うならば、それで良(よ)い。 15しかし、もしあなたがたが主(しゅ)の声(こえ)に聞(き)き従(したが)わず、主(しゅ)の戒(いまし)めにそむくならば、主(しゅ)の手(て)は、あなたがたとあなたがたの王(おう)を攻(せ)めるであろう。 16それゆえ、今(いま)、あなたがたは立(た)って、主(しゅ)が、あなたがたの目(め)の前(まえ)で行(おこな)われる、この大(おお)いなる事(こと)を見(み)なさい。 17きょうは小麦(こむぎ)刈(かり)の時(とき)ではないか。わたしは主(しゅ)に呼(よ)ばわるであろう。そのとき主(しゅ)は雷(かみなり)と雨(あめ)を下(くだ)して、あなたがたが王(おう)を求(もと)めて、主(しゅ)の前(まえ)に犯(おか)した罪(つみ)の大(おお)いなることを見(み)させ、また知(し)らせられるであろう」。 18そしてサムエルが主(しゅ)に呼(よ)ばわったので、主(しゅ)はその日(ひ)、雷(かみなり)と雨(あめ)を下(くだ)された。民(たみ)は皆(みな)ひじょうに主(しゅ)とサムエルとを恐(おそ)れた。

19民(たみ)はみなサムエルに言(い)った、「しもべらのために、あなたの神(かみ)、主(しゅ)に祈(いの)って、われわれの死(し)なないようにしてください。われわれは、もろもろの罪(つみ)を犯(おか)した上(うえ)に、また王(おう)を求(もと)めて、悪(あく)を加(くわ)えました」。 20サムエルは民(たみ)に言(い)った、「恐(おそ)れることはない。あなたがたは、このすべての悪(あく)をおこなった。しかし主(しゅ)に従(したが)うことをやめず、心(こころ)をつくして主(しゅ)に仕(つか)えなさい。 21むなしい物(もの)に迷(まよ)って行(い)ってはならない。それは、あなたがたを助(たす)けることも救(すく)うこともできないむなしいものだからである。 22主(しゅ)は、その大(おお)いなる名(な)のゆえに、その民(たみ)を捨(す)てられないであろう。主(しゅ)が、あなたがたを自分(じぶん)の民(たみ)とすることを良(よ)しとされるからである。 23また、わたしは、あなたがたのために祈(いの)ることをやめて主(しゅ)に罪(つみ)を犯(おか)すことは、けっしてしないであろう。わたしはまた良(よ)い、正(ただ)しい道(みち)を、あなたがたに教(おし)えるであろう。 24あなたがたは、ただ主(しゅ)を恐(おそ)れ、心(こころ)をつくして、誠実(せいじつ)に主(しゅ)に仕(つか)えなければならない。そして主(しゅ)がどんなに大(おお)きいことをあなたがたのためにされたかを考(かんが)えなければならない。 25しかし、あなたがたが、なおも悪(あく)を行(おこな)うならば、あなたがたも、あなたがたの王(おう)も、共(とも)に滅(ほろ)ぼされるであろう」。

第一三章

1サウルは三十歳(さい)で王(おう)の位(くらい)につき、二年(ねん)イスラエルを治(おさ)めた。

2さてサウルはイスラエルびと三千を選(えら)んだ。二千はサウルと共(とも)にミクマシ、およびベテルの山地(さんち)におり、一千はヨナタンと共(とも)にベニヤミンのギベアにいた。サウルはその他(た)の民(たみ)を、おのおの、その天幕(てんまく)に帰(かえ)らせた。 3ヨナタンは、ゲバにあるペリシテびとの守備(しゅび)兵(へい)を敗(やぶ)った。ペリシテびとはそのことを聞(き)いた。そこで、サウルは国中(くにぢゅう)に、あまねく角笛(つのぶえ)を吹(ふ)きならして言(い)わせた、「ヘブルびとよ、聞(き)け」。 4イスラエルの人(ひと)は皆(みな)、サウルがペリシテびとの守備(しゅび)兵(へい)を敗(やぶ)ったこと、そしてイスラエルがペリシテびとに憎(にく)まれるようになったことを聞(き)いた。こうして民(たみ)は召(め)されて、ギルガルのサウルのもとに集(あつ)まった。

5ペリシテびとはイスラエルと戦(たたか)うために集(あつ)まった。戦車(せんしゃ)三千、騎兵(きへい)六千、民(たみ)は浜(はま)べの砂(すな)のように多(おお)かった。彼(かれ)らは上(のぼ)ってきて、ベテアベンの東(ひがし)のミクマシに陣(じん)を張(は)った。 6イスラエルびとは、ひどく圧迫(あっぱく)され、味方(みかた)が危(あやう)くなったのを見(み)て、ほら穴(あな)に、縦穴(たてあな)に、岩(いわ)に、墓(はか)に、ため池(いけ)に身(み)を隠(かく)した。 7また、あるヘブルびとはヨルダンを渡(わた)って、ガドとギレアデの地(ち)へ行(い)った。しかしサウルはなおギルガルにいて、民(たみ)はみな、ふるえながら彼(かれ)に従(したが)った。

8サウルは、サムエルが定(さだ)めたように、七日(なぬか)のあいだ待(ま)ったが、サムエルがギルガルにこなかったので、民(たみ)は彼(かれ)を離(はな)れて散(ち)って行(い)った。 9そこでサウルは言(い)った、「燔祭(はんさい)と酬恩祭(しゅうおんさい)をわたしの所(ところ)に持(も)ってきなさい」。こうして彼(かれ)は燔祭(はんさい)をささげた。 10その燔祭(はんさい)をささげ終(おわ)ると、サムエルがきた。サウルはあいさつをしようと、彼(かれ)を迎(むか)えに出(で)た。 11その時(とき)サムエルは言(い)った、「あなたは何(なに)をしたのですか」。サウルは言(い)った、「民(たみ)はわたしを離(はな)れて散(ち)って行(い)き、あなたは定(さだ)まった日(ひ)のうちにこられないのに、ペリシテびとがミクマシに集(あつ)まったのを見(み)たので、 12わたしは、ペリシテびとが今(いま)にも、ギルガルに下(くだ)ってきて、わたしを襲(おそ)うかも知(し)れないのに、わたしはまだ主(しゅ)の恵(めぐ)みを求(もと)めることをしていないと思(おも)い、やむを得(え)ず燔祭(はんさい)をささげました」。 13サムエルはサウルに言(い)った、「あなたは愚(おろ)かなことをした。あなたは、あなたの神(かみ)、主(しゅ)の命(めい)じられた命令(めいれい)を守(まも)らなかった。もし守(まも)ったならば、主(しゅ)は今(いま)あなたの王国(おうこく)を長(なが)くイスラエルの上(うえ)に確保(かくほ)されたであろう。 14しかし今(いま)は、あなたの王国(おうこく)は続(つづ)かないであろう。主(しゅ)は自分(じぶん)の心(こころ)にかなう人(ひと)を求(もと)めて、その人(ひと)に民(たみ)の君(きみ)となることを命(めい)じられた。あなたが主(しゅ)の命(めい)じられた事(こと)を守(まも)らなかったからである」。 15こうしてサムエルは立(た)って、ギルガルからベニヤミンのギベアに上(のぼ)っていった。

サウルは共(とも)にいる民(たみ)を数(かぞ)えてみたが、おおよそ六百人(にん)あった。 16サウルとその子(こ)ヨナタン、ならびに、共(とも)にいる民(たみ)は、ベニヤミンのゲバにおり、ペリシテびとはミクマシに陣(じん)を張(は)っていた。 17そしてペリシテびとの陣(じん)から三つの部隊(ぶたい)にわかれた略奪(りゃくだつ)隊(たい)が出(で)てきて、一部(ぶ)隊(たい)はオフラの方(ほう)に向(む)かって、シュアルの地(ち)に行(い)き、 18一部(ぶ)隊(たい)はベテホロンの方(ほう)に向(む)かい、一部(ぶ)隊(たい)は荒野(あらの)の方(ほう)のゼボイムの谷(たに)を見(み)おろす境(さかい)の方(ほう)に向(む)かった。

19そのころ、イスラエルの地(ち)にはどこにも鉄工(てっこう)がいなかった。ペリシテびとが「ヘブルびとはつるぎも、やりも造(つく)ってはならない」と言(い)ったからである。 20ただしイスラエルの人(ひと)は皆(みな)、そのすきざき、くわ、おの、かまに刃(は)をつけるときは、ペリシテびとの所(ところ)へ下(くだ)って行(い)った。 21すきざきと、くわのための料金(りょうきん)は一ピムであり、おのに刃(は)をつけるのと、とげのあるむちを直(なお)すのは三分(ぶん)の一シケルであった。 22それでこの戦(たたか)いの日(ひ)には、サウルおよびヨナタンと共(とも)にいた民(たみ)の手(て)には、つるぎもやりもなく、ただサウルとその子(こ)ヨナタンとがそれを持(も)っていた。 23ペリシテびとの先陣(せんじん)はミクマシの渡(わた)りに進(すす)み出(で)た。

第一四章

1ある日(ひ)、サウルの子(こ)ヨナタンは、その武器(ぶき)を執(と)る若者(わかもの)に「さあ、われわれは向(む)こう側(がわ)の、ペリシテびとの先陣(せんじん)へ渡(わた)って行(い)こう」と言(い)った。しかしヨナタンは父(ちち)には告(つ)げなかった。 2サウルはギベアのはずれで、ミグロンにある、ざくろの木(き)の下(した)にとどまっていたが、共(とも)にいた民(たみ)はおおよそ六百人(にん)であった。 3またアヒヤはエポデを身(み)に着(つ)けて共(とも)にいた。アヒヤはアヒトブの子(こ)、アヒトブはイカボデの兄弟(きょうだい)、イカボデはピネハスの子(こ)、ピネハスはシロにおいて主(しゅ)の祭司(さいし)であったエリの子(こ)である。民(たみ)はヨナタンが出(で)かけることを知(し)らなかった。 4ヨナタンがペリシテびとの先陣(せんじん)に渡(わた)って行(い)こうとする渡(わた)りには、一方(いっぽう)に険(けわ)しい岩(いわ)があり、他方(たほう)にも険(けわ)しい岩(いわ)があり、一方(いっぽう)の名(な)をボゼヅといい、他方(たほう)の名(な)をセネといった。 5岩(いわ)の一つはミクマシの前(まえ)にあって北(きた)にあり、一つはゲバの前(まえ)にあって南(みなみ)にあった。

6ヨナタンはその武器(ぶき)を執(と)る若者(わかもの)に言(い)った、「さあ、われわれは、この割礼(かつれい)なき者(もの)どもの先陣(せんじん)へ渡(わた)って行(い)こう。主(しゅ)がわれわれのために何(なに)か行(おこな)われるであろう。多(おお)くの人(ひと)をもって救(すく)うのも、少(すく)ない人(ひと)をもって救(すく)うのも、主(しゅ)にとっては、なんの妨(さまた)げもないからである」。 7武器(ぶき)を執(と)る者(もの)は彼(かれ)に言(い)った、「あなたの望(のぞ)みどおりにしなさい。わたしは一緒(いっしょ)にいます。わたしはあなたと同(おな)じ心(こころ)です」。 8ヨナタンはまた言(い)った、「われわれは、あの人々(ひとびと)の所(ところ)に渡(わた)っていって、彼(かれ)らに身(み)を現(あらわ)そう。 9そして、もし彼(かれ)らがわれわれに、『こちらから行(い)くまで待(ま)て』と言(い)うならば、われわれはその場(ば)にとどまり、彼(かれ)らの所(ところ)に上(のぼ)っていかないであろう。 10しかし、もし彼(かれ)らが『われわれのところへ上(のぼ)ってこい』と言(い)うならば、われわれは上(のぼ)って行(い)こう。主(しゅ)が彼(かれ)らをわれわれの手(て)に渡(わた)されるからである。これをもってしるしとしよう」。 11こうしてふたりはペリシテびとの先陣(せんじん)に、その身(み)を現(あらわ)したので、ペリシテびとは言(い)った、「見(み)よ、ヘブルびとが、隠(かく)れていた穴(あな)から出(で)てくる」。 12先陣(せんじん)の人々(ひとびと)はヨナタンと、その武器(ぶき)を執(と)る者(もの)に叫(さけ)んで言(い)った、「われわれのところに上(のぼ)ってこい。目(め)に、もの見(み)せてくれよう」。ヨナタンは、その武器(ぶき)を執(と)る者(もの)に言(い)った、「わたしのあとについて上(のぼ)ってきなさい。主(しゅ)は彼(かれ)らをイスラエルの手(て)に渡(わた)されたのだ」。 13そしてヨナタンはよじ登(のぼ)り、武器(ぶき)を執(と)る者(もの)もそのあとについて登(のぼ)った。ペリシテびとはヨナタンの前(まえ)に倒(たお)れた。武器(ぶき)を執(と)る者(もの)も、あとについていってペリシテびとを殺(ころ)した。 14ヨナタンとその武器(ぶき)を執(と)る者(もの)とが、手始(てはじ)めに殺(ころ)したものは、おおよそ二十人(にん)であって、このことは一くびきの牛(うし)の耕(たがや)す畑(はたけ)のおおよそ半分(はんぶん)の内(うち)で行(おこな)われた。 15そして陣営(じんえい)にいる者(もの)、野(の)にいるもの、およびすべての民(たみ)は恐怖(きょうふ)に襲(おそ)われ、先陣(せんじん)のもの、および略奪(りゃくだつ)隊(たい)までも、恐(おそ)れおののいた。また地(ち)は震(ふる)い動(うご)き、非常(ひじょう)に大(おお)きな恐怖(きょうふ)となった。

16ベニヤミンのギベアにいたサウルの番兵(ばんぺい)たちが見(み)ると、ペリシテびとの群衆(ぐんしゅう)はくずれて右往左往(うおうさおう)していた。 17その時(とき)サウルは、共(とも)にいる民(たみ)に言(い)った、「人数(にんずう)を調(しら)べて、われわれのうちのだれが出(で)て行(い)ったかを見(み)よ」。人数(にんずう)を調(しら)べたところ、ヨナタンとその武器(ぶき)を執(と)る者(もの)とがそこにいなかった。 18サウルはアヒヤに言(い)った、「エポデをここに持(も)ってきなさい」。その時(とき)、アヒヤはイスラエルの人々(ひとびと)の前(まえ)でエポデを身(み)に着(つ)けていたからである。 19サウルが祭司(さいし)に語(かた)っている間(あいだ)にも、ペリシテびとの陣営(じんえい)の騒(さわ)ぎはますます大(おお)きくなったので、サウルは祭司(さいし)に言(い)った、「手(て)を引(ひ)きなさい」。 20こうしてサウルおよび共(とも)にいる民(たみ)は皆(みな)、集(あつ)まって戦(たたか)いに出(で)た。ペリシテびとはつるぎをもって同志(どうし)打(う)ちしたので、非常(ひじょう)に大(おお)きな混乱(こんらん)となった。 21また先(さき)にペリシテびとと共(とも)にいて、彼(かれ)らと共(とも)に陣営(じんえい)にきていたヘブルびとたちも、翻(ひるがえ)ってサウルおよびヨナタンと共(とも)にいるイスラエルびとにつくようになった。 22またエフライムの山地(さんち)に身(み)を隠(かく)していたイスラエルびとたちも皆(みな)、ペリシテびとが逃(に)げると聞(き)いて、彼(かれ)らもまた戦(たたか)いに出(で)て、それを追撃(ついげき)した。 23こうして主(しゅ)はその日(ひ)イスラエルを救(すく)われた。そして戦(たたか)いはベテアベンに移(うつ)った。

24しかしその日(ひ)イスラエルの人々(ひとびと)は苦(くる)しんだ。これはサウルが民(たみ)に誓(ちか)わせて「夕方(ゆうがた)まで、わたしが敵(てき)にあだを返(かえ)すまで、食物(しょくもつ)を食(た)べる者(もの)は、のろわれる」と言(い)ったからである。それゆえ民(たみ)のうちには、ひとりも食物(しょくもつ)を口(くち)にしたものはなかった。 25ところで、民(たみ)がみな森(もり)の中(なか)にはいると、地(ち)のおもてに蜜(みつ)があった。 26民(たみ)は森(もり)にはいった時(とき)、蜜(みつ)のしたたっているのを見(み)た。しかしだれもそれを手(て)に取(と)って口(くち)につけるものがなかった。民(たみ)が誓(ちか)いを恐(おそ)れたからである。 27しかしヨナタンは、父(ちち)が民(たみ)に誓(ちか)わせたことを聞(き)かなかったので、手(て)を伸(の)べてつえの先(さき)を蜜(みつ)ばちの巣(す)に浸(ひた)し、手(て)に取(と)って口(くち)につけた。すると彼(かれ)は目(め)がはっきりした。 28その時(とき)、民(たみ)のひとりが言(い)った、「あなたの父(ちち)は、かたく民(たみ)に誓(ちか)わせて『きょう、食物(しょくもつ)を食(た)べる者(もの)は、のろわれる』と言(い)われました。それで民(たみ)は疲(つか)れているのです」。 29ヨナタンは言(い)った、「父(ちち)は国(くに)を悩(なや)ませました。ごらんなさい。この蜜(みつ)をすこしなめたばかりで、わたしの目(め)がこんなに、はっきりしたではありませんか。 30まして、民(たみ)がきょう敵(てき)からぶんどった物(もの)を、じゅうぶん食(た)べていたならば、さらに多(おお)くのペリシテびとを殺(ころ)していたでしょうに」。

31その日(ひ)イスラエルびとは、ペリシテびとを撃(う)って、ミクマシからアヤロンに及(およ)んだ。そして民(たみ)は、ひじょうに疲(つか)れたので、 32ぶんどり物(もの)に、はせかかって、羊(ひつじ)、牛(うし)、子(こ)牛(うし)を取(と)って、それを地(ち)の上(うえ)に殺(ころ)し、血(ち)のままでそれを食(た)べた。 33人々(ひとびと)はサウルに言(い)った、「民(たみ)は血(ち)のままで食(た)べて、主(しゅ)に罪(つみ)を犯(おか)しています」。サウルは言(い)った、「あなたがたはそむいている。この所(ところ)へ、わたしのもとに大(おお)きな石(いし)をころがしてきなさい」。 34サウルはまた言(い)った、「あなたがたは分(わか)れて、民(たみ)の中(なか)にはいって、彼(かれ)らに言(い)いなさい、『おのおの牛(うし)または、羊(ひつじ)を引(ひ)いてきてここでほふって食(た)べなさい。血(ち)のままで食(た)べて、主(しゅ)に罪(つみ)を犯(おか)してはならない』」。そこで民(たみ)は皆(みな)、その夜(よる)、おのおの牛(うし)を引(ひ)いてきて、それを、その所(ところ)でほふった。 35こうしてサウルは主(しゅ)に一つの祭壇(さいだん)を築(きず)いた。これはサウルが主(しゅ)のために築(きず)いた最初(さいしょ)の祭壇(さいだん)である。

36サウルは言(い)った、「われわれは夜(よる)のうちにペリシテびとを追(お)って下(くだ)り、夜明(よあ)けまで彼(かれ)らをかすめて、ひとりも残(のこ)らぬようにしよう」。人々(ひとびと)は言(い)った、「良(よ)いと思(おも)われることを、なんでもしてください」。しかし祭司(さいし)は言(い)った、「われわれは、ここで、神(かみ)に尋(たず)ねましょう」。 37そこでサウルは神(かみ)に伺(うかが)った、「わたしはペリシテびとを追(お)って下(くだ)るべきでしょうか。あなたは彼(かれ)らをイスラエルの手(て)に渡(わた)されるでしょうか」。しかし神(かみ)はその日(ひ)は答(こた)えられなかった。 38そこでサウルは言(い)った、「民(たみ)の長(ちょう)たちよ、みなこの所(ところ)に近(ちか)よりなさい。あなたがたは、よく見(み)きわめて、きょうのこの罪(つみ)が起(お)きたわけを知(し)らなければならない。 39イスラエルを救(すく)う主(しゅ)は生(い)きておられる。たとい、それがわたしの子(こ)ヨナタンであっても、必(かなら)ず死(し)ななければならない」。しかし民(たみ)のうちにはひとりも、これに答(こた)えるものがいなかった。 40サウルはイスラエルのすべての人(ひと)に言(い)った、「あなたがたは向(む)こう側(がわ)にいなさい。わたしとわたしの子(こ)ヨナタンはこちら側(がわ)にいましょう」。民(たみ)はサウルに言(い)った、「良(よ)いと思(おも)われることをしてください」。 41そこでサウルは言(い)った、「イスラエルの神(かみ)、主(しゅ)よ、あなたはきょう、なにゆえしもべに答(こた)えられなかったのですか。もしこの罪(つみ)がわたしにあるか、またはわたしの子(こ)ヨナタンにあるのでしたら、イスラエルの神(かみ)、主(しゅ)よ、ウリムをお与(あた)えください。しかし、もしこの罪(つみ)が、あなたの民(たみ)イスラエルにあるのでしたらトンミムをお与(あた)えください」。こうしてヨナタンとサウルとが、くじに当(あた)り、民(たみ)はのがれた。 42サウルは言(い)った、「わたしか、わたしの子(こ)ヨナタンかを決(き)めるために、くじを引(ひ)きなさい」。くじはヨナタンに当(あた)った。

43サウルはヨナタンに言(い)った、「あなたがしたことを、わたしに言(い)いなさい」。ヨナタンは言(い)った、「わたしは確(たし)かに手(て)にあったつえの先(さき)に少(すこ)しばかりの蜜(みつ)をつけて、なめました。わたしはここにいます。死(し)は覚悟(かくご)しています」。 44サウルは言(い)った、「神(かみ)がわたしをいくえにも罰(ばっ)してくださるように。ヨナタンよ、あなたは必(かなら)ず死(し)ななければならない」。 45その時(とき)、民(たみ)はサウルに言(い)った、「イスラエルのうちにこの大(おお)いなる勝利(しょうり)をもたらしたヨナタンが死(し)ななければならないのですか。決(けっ)してそうではありません。主(しゅ)は生(い)きておられます。ヨナタンの髪(かみ)の毛(け)一すじも地(ち)に落(おと)してはなりません。彼(かれ)は神(かみ)と共(とも)にきょう働(はたら)いたのです」。こうして民(たみ)はヨナタンを救(すく)ったので彼(かれ)は死(し)を免(まぬか)れた。 46サウルはペリシテびとを追(お)うことをやめて引(ひ)きあげ、ペリシテびとはその国(くに)へ帰(かえ)った。

47サウルはイスラエルの王(おう)となって、周囲(しゅうい)のもろもろの敵(てき)、すなわちモアブ、アンモンの人々(ひとびと)、エドム、ゾバの王(おう)たちおよびペリシテびとと戦(たたか)い、すべて向(む)かう所(ところ)で勝利(しょうり)を得(え)た。 48サウルは勇(いさ)ましく働(はたら)き、アマレクびとを撃(う)って、イスラエルびとを略奪者(りゃくだつしゃ)の手(て)から救(すく)い出(だ)した。

49さて、サウルのむすこたちはヨナタン、エスイ、およびマルキシュアである。ふたりの娘(むすめ)の名(な)は次(つぎ)のとおりである。すなわち姉(あね)の名(な)はメラブ、妹(いもうと)の名(な)はミカルである。 50サウルの妻(つま)の名(な)はアヒノアムといい、アヒマアズの娘(むすめ)である。また軍(ぐん)の長(ちょう)の名(な)はアブネルといい、サウルのおじネルの子(こ)である。 51サウルの父(ちち)キシとアブネルの父(ちち)ネルとは、アビエルの子(こ)である。

52サウルの一生(いっしょう)の間(あいだ)、ペリシテびとと激(はげ)しい戦(たたか)いがあった。サウルは力(ちから)の強(つよ)い人(ひと)や勇気(ゆうき)のある人(ひと)を見(み)るごとに、それを召(め)しかかえた。

第一五章

1さて、サムエルはサウルに言(い)った、「主(しゅ)は、わたしをつかわし、あなたに油(あぶら)をそそいで、その民(たみ)イスラエルの王(おう)とされました。それゆえ、今(いま)、主(しゅ)の言葉(ことば)を聞(き)きなさい。 2万軍(ばんぐん)の主(しゅ)は、こう仰(おお)せられる、『わたしは、アマレクがイスラエルにした事(こと)、すなわちイスラエルがエジプトから上(のぼ)ってきた時(とき)、その途中(とちゅう)で敵対(てきたい)したことについて彼(かれ)らを罰(ばっ)するであろう。 3今(いま)、行(い)ってアマレクを撃(う)ち、そのすべての持(も)ち物(もの)を滅(ほろ)ぼしつくせ。彼(かれ)らをゆるすな。男(おとこ)も女(おんな)も、幼(おさ)な子(こ)も乳飲(ちの)み子(ご)も、牛(うし)も羊(ひつじ)も、らくだも、ろばも皆(みな)、殺(ころ)せ』」。

4サウルは民(たみ)を呼(よ)び集(あつ)め、テライムで人数(にんずう)を調(しら)べたところ、歩兵(ほへい)は二十万、ユダの人(ひと)は一万であった。 5そしてサウルはアマレクの町(まち)へ行(い)って、谷(たに)に兵(へい)を伏(ふ)せた。 6サウルはケニびとに言(い)った、「さあ、あなたがたはアマレクびとを離(はな)れて、下(くだ)っていってください。彼(かれ)らと一緒(いっしょ)にあなたがたを滅(ほろ)ぼすようなことがあってはならない。あなたがたは、イスラエルの人々(ひとびと)がエジプトから上(のぼ)ってきた時(とき)、親切(しんせつ)にしてくれたのですから」。そこでケニびとはアマレクびとを離(はな)れて行(い)った。 7サウルはアマレクびとを撃(う)って、ハビラからエジプトの東(ひがし)にあるシュルにまで及(およ)んだ。 8そしてアマレクびとの王(おう)アガグをいけどり、つるぎをもってその民(たみ)をことごとく滅(ほろ)ぼした。 9しかしサウルと民(たみ)はアガグをゆるし、また羊(ひつじ)と牛(うし)の最(もっと)も良(よ)いもの、肥(こ)えたものならびに小羊(こひつじ)と、すべての良(よ)いものを残(のこ)し、それらを滅(ほろ)ぼし尽(つく)すことを好(この)まず、ただ値(ね)うちのない、つまらない物(もの)を滅(ほろ)ぼし尽(つく)した。

10その時(とき)、主(しゅ)の言葉(ことば)がサムエルに臨(のぞ)んだ、 11「わたしはサウルを王(おう)としたことを悔(く)いる。彼(かれ)がそむいて、わたしに従(したが)わず、わたしの言葉(ことば)を行(おこな)わなかったからである」。サムエルは怒(いか)って、夜通(よどお)し、主(しゅ)に呼(よ)ばわった。 12そして朝(あさ)サウルに会(あ)うため、早(はや)く起(お)きたが、サムエルに告(つ)げる人(ひと)があった、「サウルはカルメルにきて、自分(じぶん)のために戦勝(せんしょう)記念碑(きねんひ)を建(た)て、身(み)をかえして進(すす)み、ギルガルへ下(くだ)って行(い)きました」。 13サムエルがサウルのもとへ来(く)ると、サウルは彼(かれ)に言(い)った、「どうぞ、主(しゅ)があなたを祝福(しゅくふく)されますように。わたしは主(しゅ)の言葉(ことば)を実行(じっこう)しました」。 14サムエルは言(い)った、「それならば、わたしの耳(みみ)にはいる、この羊(ひつじ)の声(こえ)と、わたしの聞(き)く牛(うし)の声(こえ)は、いったい、なんですか」。 15サウルは言(い)った、「人々(ひとびと)がアマレクびとの所(ところ)から引(ひ)いてきたのです。民(たみ)は、あなたの神(かみ)、主(しゅ)にささげるために、羊(ひつじ)と牛(うし)の最(もっと)も良(よ)いものを残(のこ)したのです。そのほかは、われわれが滅(ほろ)ぼし尽(つく)しました」。 16サムエルはサウルに言(い)った、「おやめなさい。昨夜(さくや)、主(しゅ)がわたしに言(い)われたことを、あなたに告(つ)げましょう」。サウルは彼(かれ)に言(い)った、「言(い)ってください」。

17サムエルは言(い)った、「たとい、自分(じぶん)では小(ちい)さいと思(おも)っても、あなたはイスラエルの諸部族(しょぶぞく)の長(ちょう)ではありませんか。主(しゅ)はあなたに油(あぶら)を注(そそ)いでイスラエルの王(おう)とされた。 18そして主(しゅ)はあなたに使命(しめい)を授(さづ)け、つかわして言(い)われた、『行(い)って、罪(つみ)びとなるアマレクびとを滅(ほろ)ぼし尽(つく)せ。彼(かれ)らを皆殺(みなごろ)しにするまで戦(たたか)え』。 19それであるのに、どうしてあなたは主(しゅ)の声(こえ)に聞(き)き従(したが)わないで、ぶんどり物(もの)にとびかかり、主(しゅ)の目(め)の前(まえ)に悪(あく)をおこなったのですか」。 20サウルはサムエルに言(い)った、「わたしは主(しゅ)の声(こえ)に聞(き)き従(したが)い、主(しゅ)がつかわされた使命(しめい)を帯(お)びて行(い)き、アマレクの王(おう)アガグを連(つ)れてきて、アマレクびとを滅(ほろ)ぼし尽(つく)しました。 21しかし民(たみ)は滅(ほろ)ぼし尽(つく)すべきもののうち最(もっと)も良(よ)いものを、ギルガルで、あなたの神(かみ)、主(しゅ)にささげるため、ぶんどり物(もの)のうちから羊(ひつじ)と牛(うし)を取(と)りました」。 22サムエルは言(い)った、
「主(しゅ)はそのみ言葉(ことば)に聞(き)き従(したが)う事(こと)を喜(よろこ)ばれるように、
燔祭(はんさい)や犠牲(ぎせい)を喜(よろこ)ばれるであろうか。
見(み)よ、従(したが)うことは犠牲(ぎせい)にまさり、
聞(き)くことは雄羊(おひつじ)の脂肪(しぼう)にまさる。
23そむくことは占(うらな)いの罪(つみ)に等(ひと)しく、
強情(ごうじょう)は偶像(ぐうぞう)礼拝(れいはい)の罪(つみ)に等(ひと)しいからである。
あなたが主(しゅ)のことばを捨(す)てたので、
主(しゅ)もまたあなたを捨(す)てて、王(おう)の位(くらい)から退(しりぞ)けられた」。

24サウルはサムエルに言(い)った、「わたしは主(しゅ)の命令(めいれい)とあなたの言葉(ことば)にそむいて罪(つみ)を犯(おか)しました。民(たみ)を恐(おそ)れて、その声(こえ)に聞(き)き従(したが)ったからです。 25どうぞ、今(いま)わたしの罪(つみ)をゆるし、わたしと一緒(いっしょ)に帰(かえ)って、主(しゅ)を拝(おが)ませてください」。 26サムエルはサウルに言(い)った、「あなたと一緒(いっしょ)に帰(かえ)りません。あなたが主(しゅ)の言葉(ことば)を捨(す)てたので、主(しゅ)もあなたを捨(す)てて、イスラエルの王位(おうい)から退(しりぞ)けられたからです」。 27こうしてサムエルが去(さ)ろうとして身(み)をかえした時(とき)、サウルがサムエルの上着(うわぎ)のすそを捕(とら)えたので、それは裂(さ)けた。 28サムエルは彼(かれ)に言(い)った、「主(しゅ)はきょう、あなたからイスラエルの王国(おうこく)を裂(さ)き、もっと良(よ)いあなたの隣人(りんじん)に与(あた)えられた。 29またイスラエルの栄光(えいこう)は偽(いつわ)ることもなく、悔(く)いることもない。彼(かれ)は人(ひと)ではないから悔(く)いることはない」。 30サウルは言(い)った、「わたしは罪(つみ)を犯(おか)しましたが、どうぞ、民(たみ)の長老(ちょうろう)たち、およびイスラエルの前(まえ)で、わたしを尊(たっと)び、わたしと一緒(いっしょ)に帰(かえ)って、あなたの神(かみ)、主(しゅ)を拝(おが)ませてください」。 31そこでサムエルはサウルのあとについて帰(かえ)った。そしてサウルは主(しゅ)を拝(おが)んだ。

32時(とき)にサムエルは言(い)った、「わたしの所(ところ)にアマレクびとの王(おう)アガグを引(ひ)いてきなさい」。アガグはうれしそうにサムエルの所(ところ)にきた。アガグは「死(し)の苦(くる)しみはきっと過(す)ぎ去(さ)ったのだ」と思(おも)った。 33サムエルは言(い)った、「あなたのつるぎは多(おお)くの女(おんな)に子供(こども)を失(うしな)わせた。そのようにあなたの母(はは)も女(おんな)のうちで最(もっと)も無惨(むざん)に子供(こども)を失(うしな)う者(もの)となるであろう」。サムエルはギルガルで主(しゅ)の前(まえ)に、アガグを寸断(すんだん)した。

34そしてサムエルはラマに行(い)き、サウルは故郷(こきょう)のギベアに上(のぼ)って、その家(いえ)に帰(かえ)った。 35サムエルは死(し)ぬ日(ひ)まで、二度(ど)とサウルを見(み)なかった。しかしサムエルはサウルのために悲(かな)しんだ。また主(しゅ)はサウルをイスラエルの王(おう)としたことを悔(く)いられた。

第一六章

1さて主(しゅ)はサムエルに言(い)われた、「わたしがすでにサウルを捨(す)てて、イスラエルの王位(おうい)から退(しりぞ)けたのに、あなたはいつまで彼(かれ)のために悲(かな)しむのか。角(つの)に油(あぶら)を満(み)たし、それをもって行(い)きなさい。あなたをベツレヘムびとエッサイのもとにつかわします。わたしはその子(こ)たちのうちにひとりの王(おう)を捜(さが)し得(え)たからである」。 2サムエルは言(い)った、「どうしてわたしは行(い)くことができましょう。サウルがそれを聞(き)けば、わたしを殺(ころ)すでしょう」。主(しゅ)は言(い)われた、「一頭(とう)の子(こ)牛(うし)を引(ひ)いていって、『主(しゅ)に犠牲(ぎせい)をささげるためにきました』と言(い)いなさい。 3そしてエッサイを犠牲(ぎせい)の場所(ばしょ)に呼(よ)びなさい。その時(とき)わたしはあなたのすることを示(しめ)します。わたしがあなたに告(つ)げる人(ひと)に油(あぶら)を注(そそ)がなければならない」。 4サムエルは主(しゅ)が命(めい)じられたようにして、ベツレヘムへ行(い)った。町(まち)の長老(ちょうろう)たちは、恐(おそ)れながら出(で)て、彼(かれ)を迎(むか)え、「穏(おだ)やかな事(こと)のためにこられたのですか」と言(い)った。 5サムエルは言(い)った、「穏(おだ)やかな事(こと)のためです。わたしは主(しゅ)に犠牲(ぎせい)をささげるためにきました。身(み)をきよめて、犠牲(ぎせい)の場所(ばしょ)にわたしと共(とも)にきてください」。そしてサムエルはエッサイとその子(こ)たちをきよめて犠牲(ぎせい)の場(ば)に招(まね)いた。

6彼(かれ)らがきた時(とき)、サムエルはエリアブを見(み)て、「自分(じぶん)の前(まえ)にいるこの人(ひと)こそ、主(しゅ)が油(あぶら)をそそがれる人(ひと)だ」と思(おも)った。 7しかし主(しゅ)はサムエルに言(い)われた、「顔(かお)かたちや身(み)のたけを見(み)てはならない。わたしはすでにその人(ひと)を捨(す)てた。わたしが見(み)るところは人(ひと)とは異(こと)なる。人(ひと)は外(そと)の顔(かお)かたちを見(み)、主(しゅ)は心(こころ)を見(み)る」。 8そこでエッサイはアビナダブを呼(よ)んでサムエルの前(まえ)を通(とお)らせた。サムエルは言(い)った、「主(しゅ)が選(えら)ばれたのはこの人(ひと)でもない」。 9エッサイはシャンマを通(とお)らせたが、サムエルは言(い)った、「主(しゅ)が選(えら)ばれたのはこの人(ひと)でもない」。 10エッサイは七人(にん)の子(こ)にサムエルの前(まえ)を通(とお)らせたが、サムエルはエッサイに言(い)った、「主(しゅ)が選(えら)ばれたのはこの人(ひと)たちではない」。 11サムエルはエッサイに言(い)った、「あなたのむすこたちは皆(みな)ここにいますか」。彼(かれ)は言(い)った、「まだ末(すえ)の子(こ)が残(のこ)っていますが羊(ひつじ)を飼(か)っています」。サムエルはエッサイに言(い)った、「人(ひと)をやって彼(かれ)を連(つ)れてきなさい。彼(かれ)がここに来(く)るまで、われわれは食卓(しょくたく)につきません」。 12そこで人(ひと)をやって彼(かれ)をつれてきた。彼(かれ)は血色(けっしょく)のよい、目(め)のきれいな、姿(すがた)の美(うつく)しい人(ひと)であった。主(しゅ)は言(い)われた、「立(た)ってこれに油(あぶら)をそそげ。これがその人(ひと)である」。 13サムエルは油(あぶら)の角(つの)をとって、その兄弟(きょうだい)たちの中(なか)で、彼(かれ)に油(あぶら)をそそいだ。この日(ひ)からのち、主(しゅ)の霊(れい)は、はげしくダビデの上(うえ)に臨(のぞ)んだ。そしてサムエルは立(た)ってラマへ行(い)った。

14さて主(しゅ)の霊(れい)はサウルを離(はな)れ、主(しゅ)から来(く)る悪霊(あくれい)が彼(かれ)を悩(なや)ました。 15サウルの家来(けらい)たちは彼(かれ)に言(い)った、「ごらんなさい。神(かみ)から来(く)る悪霊(あくれい)があなたを悩(なや)ましているのです。 16どうぞ、われわれの主君(しゅくん)が、あなたの前(まえ)に仕(つか)えている家来(けらい)たちに命(めい)じて、じょうずに琴(こと)をひく者(もの)ひとりを捜(さが)させてください。神(かみ)から来(く)る悪霊(あくれい)があなたに臨(のぞ)む時(とき)、彼(かれ)が手(て)で琴(こと)をひくならば、あなたは良(よ)くなられるでしょう」。 17そこでサウルは家来(けらい)たちに言(い)った、「じょうずに琴(こと)をひく者(もの)を捜(さが)して、わたしのもとに連(つ)れてきなさい」。 18その時(とき)、ひとりの若者(わかもの)がこたえた、「わたしはベツレヘムびとエッサイの子(こ)を見(み)ましたが、琴(こと)がじょうずで、勇気(ゆうき)もあり、いくさびとで、弁舌(べんぜつ)にひいで、姿(すがた)の美(うつく)しい人(ひと)です。また主(しゅ)が彼(かれ)と共(とも)におられます」。 19そこでサウルはエッサイのもとに使者(ししゃ)をつかわして言(い)った、「羊(ひつじ)を飼(か)っているあなたの子(こ)ダビデをわたしのもとによこしなさい」。 20エッサイは、ろばにパンを負(お)わせ、皮(かわ)袋(ぶくろ)にいれたぶどう酒(しゅ)一袋(ふくろ)と、やぎの子(こ)とを取(と)って、その子(こ)ダビデの手(て)によってサウルに送(おく)った。 21ダビデはサウルのもとにきて、彼(かれ)に仕(つか)えた。サウルはひじょうにこれを愛(あい)して、その武器(ぶき)を執(と)る者(もの)とした。 22またサウルは人(ひと)をつかわしてエッサイに言(い)った、「ダビデをわたしに仕(つか)えさせてください。彼(かれ)はわたしの心(こころ)にかないました」。 23神(かみ)から出(で)る悪霊(あくれい)がサウルに臨(のぞ)む時(とき)、ダビデは琴(こと)をとり、手(て)でそれをひくと、サウルは気(き)が静(しず)まり、良(よ)くなって、悪霊(あくれい)は彼(かれ)を離(はな)れた。

第一七章

1さてペリシテびとは、軍(ぐん)を集(あつ)めて戦(たたか)おうとし、ユダに属(ぞく)するソコに集(あつ)まって、ソコとアゼカの間(あいだ)にあるエペス・ダミムに陣取(じんど)った。 2サウルとイスラエルの人々(ひとびと)は集(あつ)まってエラの谷(たに)に陣取(じんど)り、ペリシテびとに対(たい)して戦列(せんれつ)をしいた。 3ペリシテびとは向(む)こうの山(やま)の上(うえ)に立(た)ち、イスラエルはこちらの山(やま)の上(うえ)に立(た)った。その間(かん)に谷(たに)があった。 4時(とき)に、ペリシテびとの陣(じん)から、ガテのゴリアテという名(な)の、戦(たたか)いをいどむ者(もの)が出(で)てきた。身(み)のたけは六キュビト半(はん)。 5頭(あたま)には青銅(せいどう)のかぶとを頂(いただ)き、身(み)には、うろことじのよろいを着(き)ていた。そのよろいは青銅(せいどう)で重(おも)さ五千シケル。 6また足(あし)には青銅(せいどう)のすね当(とう)を着(つ)け、肩(かた)には青銅(せいどう)の投(な)げやりを背負(せお)っていた。 7手(て)に持(も)っているやりの柄(え)は、機(はた)の巻棒(まきぼう)のようであり、やりの穂(ほ)の鉄(てつ)は六百シケルであった。彼(かれ)の前(まえ)には、盾(たて)を執(と)る者(もの)が進(すす)んだ。 8ゴリアテは立(た)ってイスラエルの戦列(せんれつ)に向(む)かって叫(さけ)んだ、「なにゆえ戦列(せんれつ)をつくって出(で)てきたのか。わたしはペリシテびと、おまえたちはサウルの家来(けらい)ではないか。おまえたちから、ひとりを選(えら)んで、わたしのところへ下(くだ)ってこさせよ。 9もしその人(ひと)が戦(たたか)ってわたしを殺(ころ)すことができたら、われわれはおまえたちの家来(けらい)となる。しかしわたしが勝(か)ってその人(ひと)を殺(ころ)したら、おまえたちは、われわれの家来(けらい)になって仕(つか)えなければならない」。 10またこのペリシテびとは言(い)った、「わたしは、きょうイスラエルの戦列(せんれつ)にいどむ。ひとりを出(だ)して、わたしと戦(たたか)わせよ」。 11サウルとイスラエルのすべての人(ひと)は、ペリシテびとのこの言葉(ことば)を聞(き)いて驚(おどろ)き、ひじょうに恐(おそ)れた。

12さて、ダビデはユダのベツレヘムにいたエフラタびとエッサイという名(な)の人(ひと)の子(こ)で、この人(ひと)に八(はち)人(にん)の子(こ)があったが、サウルの世(よ)には年(とし)が進(すす)んで、すでに年老(としお)いていた。 13エッサイの子(こ)らのうち、上(うえ)の三人(にん)はサウルに従(したが)って戦争(せんそう)に出(で)た。その戦(たたか)いに出(で)た三人(にん)の子(こ)の名(な)は、長子(ちょうし)をエリアブといい、次(つぎ)をアビナダブといい、第(だい)三をシャンマと言(い)った。 14ダビデは末(すえ)の子(こ)であって、兄(あに)三人(にん)はサウルにしたがった。 15ダビデはサウルの所(ところ)から行(い)ったりきたりして、ベツレヘムで父(ちち)の羊(ひつじ)を飼(か)っていた。 16あのペリシテびとは四十日(にち)の間(あいだ)、朝夕(あさゆう)出(で)てきて、彼(かれ)らの前(まえ)に立(た)った。

17時(とき)に、エッサイはその子(こ)ダビデに言(い)った、「兄(あに)たちのため、このいり麦(むぎ)一エパと、この十個(こ)のパンをとって、急(いそ)いで陣営(じんえい)にいる兄(あに)の所(ところ)へ持(も)っていきなさい。 18またこの十の乾酪(かんらく)を取(と)って、千人(にん)の長(ちょう)にもって行(い)き、兄(あに)たちの安否(あんぴ)を見(み)とどけて、そのしるしをもらってきなさい」。

19さてサウルと彼(かれ)らおよびイスラエルのすべての人(ひと)は、エラの谷(たに)でペリシテびとと戦(たたか)っていた。 20ダビデは朝(あさ)はやく起(お)きて、羊(ひつじ)を番人(ばんにん)に託(たく)し、エッサイが命(めい)じたように食料(しょくりょう)品(ひん)を携(たずさ)えて行(い)った。彼(かれ)が陣営(じんえい)に着(つ)いた時(とき)、軍勢(ぐんぜい)は、ときの声(こえ)をあげて戦線(せんせん)に出(で)ようとしていた。 21そしてイスラエルとペリシテびととは戦列(せんれつ)を敷(し)いて、軍(ぐん)と軍(ぐん)と向(む)き合(あ)った。 22ダビデは荷物(にもつ)をおろして、荷物(にもつ)を守(まも)る者(もの)にあずけ、戦列(せんれつ)の方(ほう)へ走(はし)って、兄(あに)たちの所(ところ)へ行(い)き、彼(かれ)らの安否(あんぴ)を尋(たず)ねた。 23兄(あに)たちと語(かた)っている時(とき)、ペリシテびとの戦列(せんれつ)から、ガテのペリシテびとで、名(な)をゴリアテという、あの戦(たたか)いをいどむ者(もの)が上(のぼ)ってきて、前(まえ)と同(おな)じ言葉(ことば)を言(い)ったので、ダビデはそれを聞(き)いた。

24イスラエルのすべての人(ひと)は、その人(ひと)を見(み)て、避(さ)けて逃(に)げ、ひじょうに恐(おそ)れた。 25イスラエルの人々(ひとびと)はまた言(い)った、「あなたがたは、あの上(のぼ)ってきた人(ひと)を見(み)たか。確(たし)かにイスラエルにいどむために上(のぼ)ってきたのだ。彼(かれ)を殺(ころ)す人(ひと)は、王(おう)が大(おお)いなる富(とみ)を与(あた)えて富(と)ませ、その娘(むすめ)を与(あた)え、その父(ちち)の家(いえ)にはイスラエルのうちで税(ぜい)を免(まぬか)れさせるであろう」。 26ダビデはかたわらに立(た)っている人々(ひとびと)に言(い)った、「このペリシテびとを殺(ころ)し、イスラエルの恥(はじ)をすすぐ人(ひと)には、どうされるのですか。この割礼(かつれい)なきペリシテびとは何者(なにもの)なので、生(い)ける神(かみ)の軍(ぐん)をいどむのか」。 27民(たみ)は前(まえ)と同(おな)じように、「彼(かれ)を殺(ころ)す人(ひと)にはこうされるであろう」と答(こた)えた。

28上(うえ)の兄(あに)エリアブはダビデが人々(ひとびと)と語(かた)るのを聞(き)いて、ダビデに向(む)かい怒(いか)りを発(はっ)して言(い)った、「なんのために下(くだ)ってきたのか。野(の)にいるわずかの羊(ひつじ)はだれに託(たく)したのか。あなたのわがままと悪(わる)い心(こころ)はわかっている。戦(たたか)いを見(み)るために下(くだ)ってきたのだ」。 29ダビデは言(い)った、「わたしが今(いま)、何(なに)をしたというのですか。ただひと言(こと)いっただけではありませんか」。 30またふり向(む)いて、ほかの人(ひと)に前(まえ)のように語(かた)ったところ、民(たみ)はまた同(おな)じように答(こた)えた。

31人々(ひとびと)はダビデの語(かた)った言葉(ことば)を聞(き)いて、それをサウルに告(つ)げたので、サウルは彼(かれ)を呼(よ)び寄(よ)せた。 32ダビデはサウルに言(い)った、「だれも彼(かれ)のゆえに気(き)を落(おと)してはなりません。しもべが行(い)ってあのペリシテびとと戦(たたか)いましょう」。 33サウルはダビデに言(い)った、「行(い)って、あのペリシテびとと戦(たたか)うことはできない。あなたは年少(ねんしょう)だが、彼(かれ)は若(わか)い時(とき)からの軍人(ぐんじん)だからです」。 34しかしダビデはサウルに言(い)った、「しもべは父(ちち)の羊(ひつじ)を飼(か)っていたのですが、しし、あるいはくまがきて、群(む)れの小羊(こひつじ)を取(と)った時(とき)、 35わたしはそのあとを追(お)って、これを撃(う)ち、小羊(こひつじ)をその口(くち)から救(すく)いだしました。その獣(けもの)がわたしにとびかかってきた時(とき)は、ひげをつかまえて、それを撃(う)ち殺(ころ)しました。 36しもべはすでに、ししと、くまを殺(ころ)しました。この割礼(かつれい)なきペリシテびとも、生(い)ける神(かみ)の軍(ぐん)をいどんだのですから、あの獣(けもの)の一頭(とう)のようになるでしょう」。 37ダビデはまた言(い)った、「ししのつめ、くまのつめからわたしを救(すく)い出(だ)された主(しゅ)は、またわたしを、このペリシテびとの手(て)から救(すく)い出(だ)されるでしょう」。サウルはダビデに言(い)った、「行(い)きなさい。どうぞ主(しゅ)があなたと共(とも)におられるように」。 38そしてサウルは自分(じぶん)のいくさ衣(ころも)をダビデに着(き)せ、青銅(せいどう)のかぶとを、その頭(あたま)にかぶらせ、また、うろことじのよろいを身(み)にまとわせた。 39ダビデは、いくさ衣(ころも)の上(うえ)に、つるぎを帯(お)びて行(い)こうとしたが、できなかった。それに慣(な)れていなかったからである。そこでダビデはサウルに言(い)った、「わたしはこれらのものを着(つ)けていくことはできません。慣(な)れていないからです」。 40ダビデはそれらを脱(ぬ)ぎすて、手(て)につえをとり、谷間(たにま)からなめらかな石(いし)五個(こ)を選(えら)びとって自分(じぶん)の持(も)っている羊飼(ひつじかい)の袋(ふくろ)に入(い)れ、手(て)に石(いし)投(な)げを執(と)って、あのペリシテびとに近(ちか)づいた。

41そのペリシテびとは進(すす)んできてダビデに近(ちか)づいた。そのたてを執(と)る者(もの)が彼(かれ)の前(まえ)にいた。 42ペリシテびとは見(み)まわしてダビデを見(み)、これを侮(あなど)った。まだ若(わか)くて血色(けっしょく)がよく、姿(すがた)が美(うつく)しかったからである。 43ペリシテびとはダビデに言(い)った、「つえを持(も)って、向(む)かってくるが、わたしは犬(いぬ)なのか」。ペリシテびとは、また神々(かみがみ)の名(な)によってダビデをのろった。 44ペリシテびとはダビデに言(い)った、「さあ、向(む)かってこい。おまえの肉(にく)を、空(そら)の鳥(とり)、野(の)の獣(けもの)のえじきにしてくれよう」。 45ダビデはペリシテびとに言(い)った、「おまえはつるぎと、やりと、投(な)げやりを持(も)って、わたしに向(む)かってくるが、わたしは万軍(ばんぐん)の主(しゅ)の名(な)、すなわち、おまえがいどんだ、イスラエルの軍(ぐん)の神(かみ)の名(な)によって、おまえに立(た)ち向(む)かう。 46きょう、主(しゅ)は、おまえをわたしの手(て)にわたされるであろう。わたしは、おまえを撃(う)って、首(くび)をはね、ペリシテびとの軍勢(ぐんぜい)の死(し)かばねを、きょう、空(そら)の鳥(とり)、地(ち)の野獣(やじゅう)のえじきにし、イスラエルに、神(かみ)がおられることを全(ぜん)地(ち)に知(し)らせよう。 47またこの全(ぜん)会衆(かいしゅう)も、主(しゅ)は救(すくい)を施(ほどこ)すのに、つるぎとやりを用(もち)いられないことを知(し)るであろう。この戦(たたか)いは主(しゅ)の戦(たたか)いであって、主(しゅ)がわれわれの手(て)におまえたちを渡(わた)されるからである」。

48そのペリシテびとが立(た)ち上(あ)がり、近(ちか)づいてきてダビデに立(た)ち向(む)かったので、ダビデは急(いそ)ぎ戦線(せんせん)に走(はし)り出(で)て、ペリシテびとに立(た)ち向(む)かった。 49ダビデは手(て)を袋(ふくろ)に入(い)れて、その中(なか)から一つの石(いし)を取(と)り、石(いし)投(な)げで投(な)げて、ペリシテびとの額(ひたい)を撃(う)ったので、石(いし)はその額(ひたい)に突(つ)き入(はい)り、うつむきに地(ち)に倒(たお)れた。

50こうしてダビデは石(いし)投(な)げと石(いし)をもってペリシテびとに勝(か)ち、ペリシテびとを撃(う)って、これを殺(ころ)した。ダビデの手(て)につるぎがなかったので、 51ダビデは走(はし)りよってペリシテびとの上(うえ)に乗(の)り、そのつるぎを取(と)って、さやから抜(ぬ)きはなし、それをもって彼(かれ)を殺(ころ)し、その首(くび)をはねた。ペリシテの人々(ひとびと)は、その勇士(ゆうし)が死(し)んだのを見(み)て逃(に)げた。 52イスラエルとユダの人々(ひとびと)は立(た)ちあがり、ときをあげて、ペリシテびとを追撃(ついげき)し、ガテおよびエクロンの門(もん)にまで及(およ)んだ。そのためペリシテびとの負傷(ふしょう)者(しゃ)は、シャライムからガテおよびエクロンに行(い)く道(みち)の上(うえ)に倒(たお)れた。 53イスラエルの人々(ひとびと)はペリシテびとの追撃(ついげき)を終(お)えて帰(かえ)り、その陣営(じんえい)を略奪(りゃくだつ)した。 54ダビデは、あのペリシテびとの首(くび)を取(と)ってエルサレムへ持(も)って行(い)ったが、その武器(ぶき)は自分(じぶん)の天幕(てんまく)に置(お)いた。

55サウルはダビデがあのペリシテびとに向(む)かって出(で)ていくのを見(み)て、軍(ぐん)の長(ちょう)アブネルに言(い)った、「アブネルよ、この若者(わかもの)はだれの子(こ)か」。アブネルは言(い)った、「王(おう)よ、あなたのいのちにかけて誓(ちか)います。わたしは知(し)らないのです」。 56王(おう)は言(い)った、「この若者(わかもの)がだれの子(こ)か、尋(たず)ねてみよ」。 57ダビデが、あのペリシテびとを殺(ころ)して帰(かえ)ってきた時(とき)、アブネルは、ペリシテびとの首(くび)を手(て)に持(も)っている彼(かれ)を、サウルの前(まえ)に連(つ)れて行(い)った。 58サウルは彼(かれ)に言(い)った、「若者(わかもの)よ、あなたはだれの子(こ)か」。ダビデは答(こた)えた、「あなたのしもべ、ベツレヘムびとエッサイの子(こ)です」。

第一八章

1ダビデがサウルに語(かた)り終(お)えた時(とき)、ヨナタンの心(こころ)はダビデの心(こころ)に結(むす)びつき、ヨナタンは自分(じぶん)の命(いのち)のようにダビデを愛(あい)した。 2この日(ひ)、サウルはダビデを召(め)しかかえて、父(ちち)の家(いえ)に帰(かえ)らせなかった。 3ヨナタンとダビデとは契約(けいやく)を結(むす)んだ。ヨナタンが自分(じぶん)の命(いのち)のようにダビデを愛(あい)したからである。 4ヨナタンは自分(じぶん)が着(き)ていた上着(うわぎ)を脱(ぬ)いでダビデに与(あた)えた。また、そのいくさ衣(ころも)、およびつるぎも弓(ゆみ)も帯(おび)も、そのようにした。 5ダビデはどこでもサウルがつかわす所(ところ)に出(で)て行(い)って、てがらを立(た)てたので、サウルは彼(かれ)を兵(へい)の隊長(たいちょう)とした。それはすべての民(たみ)の心(こころ)にかない、またサウルの家来(けらい)たちの心(こころ)にもかなった。

6人々(ひとびと)が引(ひ)き揚(あ)げてきた時(とき)、すなわちダビデが、かのペリシテびとを殺(ころ)して帰(かえ)った時(とき)、女(おんな)たちはイスラエルの町々(まちまち)から出(で)てきて、手(て)鼓(つづみ)と祝(いわ)い歌(うた)と三糸(みついと)の琴(こと)をもって、歌(うた)いつ舞(ま)いつ、サウル王(おう)を迎(むか)えた。 7女(おんな)たちは踊(おど)りながら互(たがい)に歌(うた)いかわした、
「サウルは千を撃(う)ち殺(ころ)し、
ダビデは万(まん)を撃(う)ち殺(ころ)した」。
8サウルは、ひじょうに怒(いか)り、この言葉(ことば)に気(き)を悪(わる)くして言(い)った、「ダビデには万(まん)と言(い)い、わたしには千と言(い)う。この上(うえ)、彼(かれ)に与(あた)えるものは、国(くに)のほかないではないか」。 9サウルは、この日(ひ)からのちダビデをうかがった。

10次(つぎ)の日(ひ)、神(かみ)から来(く)る悪霊(あくれい)がサウルにはげしく臨(のぞ)んで、サウルが家(いえ)の中(なか)で狂(くる)いわめいたので、ダビデは、いつものように、手(て)で琴(こと)をひいた。その時(とき)、サウルの手(て)にやりがあったので、 11サウルは「ダビデを壁(かべ)に刺(さ)し通(とお)そう」と思(おも)って、そのやりをふり上(あ)げた。しかしダビデは二度(ど)身(み)をかわしてサウルを避(さ)けた。

12主(しゅ)がサウルを離(はな)れて、ダビデと共(とも)におられたので、サウルはダビデを恐(おそ)れた。 13それゆえサウルは、ダビデを遠(とお)ざけて、千人(にん)の長(ちょう)としたので、ダビデは民(たみ)の先(さき)に立(た)って出入(でい)りした。 14またダビデは、すべてそのすることに、てがらを立(た)てた。主(しゅ)が共(とも)におられたからである。 15サウルはダビデが大(おお)きなてがらを立(た)てるのを見(み)て彼(かれ)を恐(おそ)れたが、 16イスラエルとユダのすべての人(ひと)はダビデを愛(あい)した。彼(かれ)が民(たみ)の先(さき)に立(た)って出入(でい)りしたからである。

17その時(とき)サウルはダビデに言(い)った、「わたしの長女(ちょうじょ)メラブを、あなたに妻(つま)として与(あた)えよう。ただ、あなたはわたしのために勇(いさ)ましく、主(しゅ)の戦(たたか)いを戦(たたか)いなさい」。サウルは「自分(じぶん)の手(て)で彼(かれ)を殺(ころ)さないで、ペリシテびとの手(て)で殺(ころ)そう」と思(おも)ったからである。 18ダビデはサウルに言(い)った、「わたしは何者(なにもの)なのでしょう。わたしの親族(しんぞく)、わたしの父(ちち)の一族(いちぞく)はイスラエルのうちで何者(なにもの)なのでしょう。そのわたしが、どうして王(おう)のむこになることができましょう」。 19しかしサウルの娘(むすめ)メラブは、ダビデにとつぐべき時(とき)になって、メホラびとアデリエルに妻(つま)として与(あた)えられた。

20サウルの娘(むすめ)ミカルはダビデを愛(あい)した。人々(ひとびと)がそれをサウルに告(つ)げたとき、サウルはその事(こと)を喜(よろこ)んだ。 21サウルは「ミカルを彼(かれ)に与(あた)えて、彼(かれ)を欺(あざむ)く手(て)だてとし、ペリシテびとの手(て)で彼(かれ)を殺(ころ)そう」と思(おも)ったので、サウルはふたたびダビデに言(い)った、「あなたを、きょう、わたしのむこにします」。 22そしてサウルは家来(けらい)たちに命(めい)じた、「ひそかにダビデに言(い)いなさい、『王(おう)はあなたが気(き)に入(い)り、王(おう)の家来(けらい)たちも皆(みな)あなたを愛(あい)しています。それゆえ王(おう)のむこになりなさい』」。 23そこでサウルの家来(けらい)たちはこの言葉(ことば)をダビデの耳(みみ)に語(かた)ったので、ダビデは言(い)った、「わたしのような貧(まず)しく、卑(いや)しい者(もの)が、王(おう)のむこになることは、あなたがたには、たやすいことと思(おも)われますか」。 24サウルの家来(けらい)たちはサウルに、「ダビデはこう言(い)った」と告(つ)げた。 25サウルは言(い)った、「あなたがたはダビデにこう言(い)いなさい、『王(おう)はなにも結納(ゆいのう)を望(のぞ)まれない。ただペリシテびとの陽(よう)の皮(かわ)一百を獲(え)て、王(おう)のあだを討(う)つことを望(のぞ)まれる』」。これはサウルが、ダビデをペリシテびとの手(て)によって倒(たお)そうと思(おも)ったからである。 26サウルの家来(けらい)たちが、この言葉(ことば)をダビデに告(つ)げた時(とき)、ダビデは王(おう)のむこになることを良(よ)しとした。そして定(さだ)めた日(ひ)がまだこないうちに、 27ダビデは従者(じゅうしゃ)をつれて、立(た)って行(い)き、ペリシテびと二百人(にん)を殺(ころ)して、その陽(よう)の皮(かわ)を携(たずさ)え帰(かえ)り、王(おう)のむこになるために、それをことごとく王(おう)にささげた。そこでサウルは娘(むすめ)ミカルを彼(かれ)に妻(つま)として与(あた)えた。 28しかしサウルは見(み)て、主(しゅ)がダビデと共(とも)におられること、またイスラエルのすべての人(ひと)がダビデを愛(あい)するのを知(し)った時(とき)、 29サウルは、ますますダビデを恐(おそ)れた。こうしてサウルは絶(た)えずダビデに敵(てき)した。

30さてペリシテびとの君(きみ)たちが攻(せ)めてきたが、ダビデは、彼(かれ)らが攻(せ)めてくるごとに、サウルのどの家来(けらい)よりも多(おお)くのてがらを立(た)てたので、その名(な)はひじょうに尊敬(そんけい)された。

第一九章

1サウルはその子(こ)ヨナタンおよびすべての家来(けらい)たちにダビデを殺(ころ)すようにと言(い)った。しかしサウルの子(こ)ヨナタンは深(ふか)くダビデを愛(あい)していた。 2ヨナタンはダビデに言(い)った、「父(ちち)サウルはあなたを殺(ころ)そうとしています。それゆえあすの朝(あさ)、気(き)をつけて、わからない場所(ばしょ)に身(み)を隠(かく)していてください。 3わたしは出(で)て行(い)って、あなたがいる野原(のはら)で父(ちち)のかたわらに立(た)ち、父(ちち)にあなたのことを話(はな)しましょう。そして、何(なに)かわたしにわかれば、あなたに告(つ)げましょう」。 4ヨナタンは父(ちち)サウルにダビデのことをほめて言(い)った、「王(おう)よ、どうか家来(けらい)ダビデに対(たい)して罪(つみ)を犯(おか)さないでください。彼(かれ)は、あなたに罪(つみ)を犯(おか)さず、また彼(かれ)のしたことは、あなたのためになることでした。 5彼(かれ)は命(いのち)をかけて、あのペリシテびとを殺(ころ)し、主(しゅ)はイスラエルの人々(ひとびと)に大(おお)いなる勝利(しょうり)を与(あた)えられたのです。あなたはそれを見(み)て喜(よろこ)ばれました。それであるのに、どうしてゆえなくダビデを殺(ころ)し、罪(つみ)なき者(もの)の血(ち)を流(なが)して罪(つみ)を犯(おか)そうとされるのですか」。 6サウルはヨナタンの言葉(ことば)を聞(き)きいれた。そしてサウルは誓(ちか)った、「主(しゅ)は生(い)きておられる。わたしは決(けっ)して彼(かれ)を殺(ころ)さない」。 7ヨナタンはダビデを呼(よ)んでこれらのことをみなダビデに告(つ)げた。そしてヨナタンがダビデをサウルのもとに連(つ)れてきたので、ダビデは、もとのようにサウルの前(まえ)にいた。

8ところがまた戦争(せんそう)がおこって、ダビデは出(で)てペリシテびとと戦(たたか)い、大(おお)いに彼(かれ)らを殺(ころ)したので、彼(かれ)らはその前(まえ)から逃(に)げ去(さ)った。 9さてサウルが家(いえ)にいて手(て)にやりを持(も)ってすわっていた時(とき)、主(しゅ)から来(く)る悪霊(あくれい)がサウルに臨(のぞ)んだので、ダビデは琴(こと)をひいていたが、 10サウルはそのやりをもってダビデを壁(かべ)に刺(さ)し通(とお)そうとした。しかし彼(かれ)はサウルの前(まえ)に身(み)をかわしたので、やりは壁(かべ)につきささった。そしてダビデは逃(に)げ去(さ)った。

11その夜(よる)、サウルはダビデの家(いえ)に使者(ししゃ)たちをつかわして見張(みは)りをさせ、朝(あさ)になって彼(かれ)を殺(ころ)させようとした。しかしダビデの妻(つま)ミカルはダビデに言(い)った、「もし今夜(こんや)のうちに、あなたが自分(じぶん)の命(いのち)を救(すく)わないならば、あすは殺(ころ)されるでしょう」。 12そしてミカルがダビデを窓(まど)からつりおろしたので、彼(かれ)は逃(に)げ去(さ)った。 13ミカルは一つの像(ぞう)をとって、寝床(ねどこ)の上(うえ)に横(よこ)たえ、その頭(あたま)にやぎの毛(け)の網(あみ)をかけ、着物(きもの)をもってそれをおおった。 14サウルはダビデを捕(とら)えるため使者(ししゃ)たちをつかわしたが、彼女(かのじょ)は言(い)った、「あの人(ひと)は病気(びょうき)です」。 15そこでサウルは、ダビデを見(み)させようと使者(ししゃ)たちをつかわして言(い)った、「彼(かれ)を寝床(ねどこ)のまま、わたしの所(ところ)に連(つ)れてきなさい。わたしが彼(かれ)を殺(ころ)そう」。 16使者(ししゃ)たちがはいって見(み)ると、寝床(ねどこ)には像(ぞう)が横(よこ)たえてあって、その頭(あたま)には、やぎの毛(け)の網(あみ)がかけてあった。 17サウルはミカルに言(い)った、「あなたはどうして、このようにわたしを欺(あざむ)いて、わたしの敵(てき)を逃(に)がしたのか」。ミカルはサウルに答(こた)えた、「あの人(ひと)はわたしに『逃(に)がしてくれ。さもないと、おまえを殺(ころ)す』と言(い)いました」。

18ダビデは逃(に)げ去(さ)り、ラマにいるサムエルのもとへ行(い)って、サウルが自分(じぶん)にしたすべてのことを彼(かれ)に告(つ)げた。そしてダビデとサムエルは行(い)ってナヨテに住(す)んだ。 19ある人(ひと)がサウルに「ダビデはラマのナヨテにいます」と告(つ)げたので、 20サウルは、ダビデを捕(とら)えるために、使者(ししゃ)たちをつかわした。彼(かれ)らは預言者(よげんしゃ)の一群(いちぐん)が預言(よげん)していて、サムエルが、そのうちの、かしらとなって立(た)っているのを見(み)たが、その時(とき)、神(かみ)の霊(れい)はサウルの使者(ししゃ)たちにも臨(のぞ)んで、彼(かれ)らもまた預言(よげん)した。 21サウルは、このことを聞(き)いて、他(た)の使者(ししゃ)たちをつかわしたが、彼(かれ)らもまた預言(よげん)した。サウルは三たび使者(ししゃ)たちをつかわしたが、彼(かれ)らもまた預言(よげん)した。 22そこでサウルはみずからラマに行(い)き、セクの大井戸(おおいど)に着(つ)いた時(とき)、問(と)うて言(い)った、「サムエルとダビデは、どこにおるか」。ひとりの人(ひと)が答(こた)えた、「彼(かれ)らはラマのナヨテにいます」。 23そこでサウルはそこからラマのナヨテに行(い)ったが、神(かみ)の霊(れい)はまた彼(かれ)にも臨(のぞ)んで、彼(かれ)はラマのナヨテに着(つ)くまで歩(ある)きながら預言(よげん)した。 24そして彼(かれ)もまた着物(きもの)を脱(ぬ)いで、同(おな)じようにサムエルの前(まえ)で預言(よげん)し、一日(にち)一夜(や)、裸(はだか)で倒(たお)れ伏(ふ)していた。人々(ひとびと)が「サウルもまた預言者(よげんしゃ)たちのうちにいるのか」というのはこのためである。

第二〇章

1ダビデはラマのナヨテから逃(に)げてきて、ヨナタンに言(い)った、「わたしが何(なに)をし、どのような悪(わる)いことがあり、あなたの父(ちち)の前(まえ)にどんな罪(つみ)を犯(おか)したので、わたしを殺(ころ)そうとされるのでしょうか」。 2ヨナタンは彼(かれ)に言(い)った、「決(けっ)して殺(ころ)されることはありません。父(ちち)は事(こと)の大小(だいしょう)を問(と)わず、わたしに告(つ)げないですることはありません。どうして父(ちち)がわたしにその事(こと)を隠(かく)しましょう。そのようなことはありません」。 3しかしダビデは答(こた)えた、「あなたの父(ちち)は、わたしがあなたの好意(こうい)をえていることをよく知(し)っておられます。それで『ヨナタンが悲(かな)しむことのないように、これを知(し)らせないでおこう』と思(おも)っておられるのです。しかし、主(しゅ)は生(い)きておられ、あなたの魂(たましい)は生(い)きています。わたしと死(し)との間(あいだ)は、ただ一歩(ぽ)です」。 4ヨナタンはダビデに言(い)った、「あなたが言(い)われることはなんでもします」。 5ダビデはヨナタンに言(い)った、「あすは、ついたちですから、わたしは王(おう)と一緒(いっしょ)に食事(しょくじ)をしなければなりません。しかしわたしを行(い)かせて三日(か)目(め)の夕方(ゆうがた)まで、野原(のはら)に隠(かく)れることを許(ゆる)してください。 6もしあなたの父(ちち)がわたしのことを尋(たず)ねられるならば、その時(とき)、言(い)ってください、『ダビデはふるさとの町(まち)ベツレヘムへ急(いそ)いで行(い)くことを許(ゆる)してくださいと、しきりにわたしに求(もと)めました。そこで全家(ぜんか)の年(とし)祭(まつり)があるからです』。 7もし彼(かれ)が「良(よ)し」と言(い)われるなら、しもべは安全(あんぜん)ですが、怒(いか)られるなら、わたしに害(がい)を加(くわ)える決心(けっしん)でおられるのを知(し)ってください。 8あなたは、主(しゅ)の前(まえ)で、しもべと契約(けいやく)を結(むす)んでくださいました。それでどうぞしもべにいつくしみを施(ほどこ)してください。しかし、もしわたしに悪(わる)いことがあるならば、あなた自(みずか)らわたしを殺(ころ)してください。どうしてあなたの父(ちち)のもとへわたしを引(ひ)いていかなければならないでしょう」。 9ヨナタンは言(い)った、「そのようなことは決(けっ)してありません。父(ちち)があなたに害(がい)を加(くわ)える決心(けっしん)をしていることがわたしにわかっているならば、わたしはそれをあなたに告(つ)げないでおきましょうか」。 10ダビデはヨナタンに言(い)った、「あなたの父(ちち)が荒々(あらあら)しくあなたに答(こた)えられる時(とき)、だれがわたしに告(つ)げるでしょうか」。 11ヨナタンはダビデに言(い)った、「さあ、野原(のはら)へ出(で)ていこう」。こうしてふたりは野原(のはら)へ出(で)て行(い)った。

12そしてヨナタンはダビデに言(い)った、「イスラエルの神(かみ)、主(しゅ)が、証人(しょうにん)です。明日(みょうにち)か明後日(みょうごにち)の今(いま)ごろ、わたしが父(ちち)の心(こころ)を探(さぐ)って、父(ちち)がダビデに対(たい)して良(よ)いのを見(み)ながら、人(ひと)をつかわしてあなたに知(し)らせないようなことをするでしょうか。 13しかし、もし父(ちち)があなたに害(がい)を加(くわ)えようと思(おも)っているのに、それをあなたに知(し)らせず、あなたを逃(に)がして、安全(あんぜん)に去(さ)らせないならば、主(しゅ)よ、どうぞ幾重(いくえ)にも、このヨナタンを罰(ばっ)してください。どうぞ主(しゅ)が父(ちち)と共(とも)におられたように、あなたと共(とも)におられますように。 14もしわたしがなお生(い)きながらえているならば、主(しゅ)のいつくしみをわたしに施(ほどこ)し、死(し)を免(まぬか)れさせてください。 15またわたしの家(いえ)をも、長(なが)くあなたのいつくしみにあずからせてください。主(しゅ)がダビデの敵(てき)をことごとく地(ち)のおもてから断(た)ち滅(ほろ)ぼされる時(とき)、 16ヨナタンの名(な)をダビデの家(いえ)から絶(た)やさないでください。どうぞ主(しゅ)がダビデの敵(てき)に、あだを返(かえ)されるように」。 17そしてヨナタンは重(かさ)ねてダビデに誓(ちか)わせた。彼(かれ)を愛(あい)したからである。ヨナタンは自分(じぶん)の命(いのち)のように彼(かれ)を愛(あい)していた。

18ヨナタンはダビデに言(い)った、「あすはついたちです。あなたの席(せき)があいているので、どうしたのかと尋(たず)ねられるでしょう。 19三日(か)目(め)には、きびしく尋(たず)ねられるでしょうから、先(さき)にあなたが隠(かく)れた場所(ばしょ)へ行(い)って、向(む)こうの石塚(いしづか)のかたわらにいてください。 20わたしは的(まと)を射(い)るようにして、矢(や)を三本(ほん)、そのそばに放(はな)ちます。 21そして、『行(い)って矢(や)を捜(さが)してきなさい』と言(い)って子供(こども)をつかわしましょう。わたしが子供(こども)に、『矢(や)は手前(てまえ)にある。それを取(と)ってきなさい』と言(い)うならば、その時(とき)あなたはきてください。主(しゅ)が生(い)きておられるように、あなたは安全(あんぜん)で、何(なに)も危険(きけん)がないからです。 22しかしわたしがその子(こ)供(とも)に、『矢(や)は向(む)こうにある』と言(い)うならば、その時(とき)、あなたは去(さ)って行(い)きなさい。主(しゅ)があなたを去(さ)らせられるのです。 23あなたとわたしとで話(はな)しあった事(こと)については、主(しゅ)が常(つね)にあなたとわたしとの間(あいだ)におられます」。

24そこでダビデは野原(のはら)に身(み)を隠(かく)した。さて、ついたちになったので、王(おう)は食事(しょくじ)をするため席(せき)に着(つ)いた。 25王(おう)はいつものように壁(かべ)寄(よ)りに席(せき)に着(つ)き、ヨナタンはその向(む)かい側(がわ)の席(せき)に着(つ)き、アブネルはサウルの横(よこ)の席(せき)に着(つ)いたが、ダビデの場所(ばしょ)にはだれもいなかった。

26ところがその日(ひ)サウルは何(なに)も言(い)わなかった、「彼(かれ)に何(なに)か起(た)って汚(けが)れたのだろう。きっと汚(けが)れたのにちがいない」と思(おも)ったからである。 27しかし、ふつか目(め)すなわち、ついたちの明(あ)くる日(ひ)も、ダビデの場所(ばしょ)はあいていたので、サウルは、その子(こ)ヨナタンに言(い)った、「どうしてエッサイの子(こ)は、きのうもきょうも食事(しょくじ)にこないのか」。 28ヨナタンはサウルに答(こた)えた、「ダビデは、ベツレヘムへ行(い)くことを許(ゆる)してくださいと、しきりにわたしに求(もと)めました。 29彼(かれ)は言(い)いました、『わたしに行(い)かせてください。われわれの一族(いちぞく)が町(まち)で祭(まつり)をするので、兄(あに)がわたしに来(く)るようにと命(めい)じました。それでもし、あなたの前(まえ)に恵(めぐ)みを得(え)ますならば、どうぞ、わたしに行(い)くことを許(ゆる)し、兄弟(きょうだい)たちに会(あ)わせてください』。それで彼(かれ)は王(おう)の食卓(しょくたく)にこなかったのです」。

30その時(とき)サウルはヨナタンにむかって怒(いか)りを発(はっ)し、彼(かれ)に言(い)った、「あなたは心(こころ)の曲(まが)った、そむく女(おんな)の産(う)んだ子(こ)だ。あなたがエッサイの子(こ)を選(えら)んで、自分(じぶん)の身(み)をはずかしめ、また母(はは)の身(み)をはずかしめていることをわたしが知(し)らないと思(おも)うのか。 31エッサイの子(こ)がこの世(よ)に生(い)きながらえている間(あいだ)は、あなたも、あなたの王国(おうこく)も堅(かた)く立(た)っていくことはできない。それゆえ今(いま)、人(ひと)をつかわして、彼(かれ)をわたしのもとに連(つ)れてこさせなさい。彼(かれ)は必(かなら)ず死(し)ななければならない」。 32ヨナタンは父(ちち)サウルに答(こた)えた、「どうして彼(かれ)は殺(ころ)されなければならないのですか。彼(かれ)は何(なに)をしたのですか」。 33ところがサウルはヨナタンを撃(う)とうとして、やりを彼(かれ)に向(む)かって振(ふ)り上(あ)げたので、ヨナタンは父(ちち)がダビデを殺(ころ)そうと、心(こころ)に決(き)めているのを知(し)った。 34ヨナタンは激(はげ)しく怒(いか)って席(せき)を立(た)ち、その月(つき)のふつかには食事(しょくじ)をしなかった。父(ちち)がダビデをはずかしめたので、ダビデのために憂(うれ)えたからである。

35あくる朝(あさ)、ヨナタンは、ひとりの小(ちい)さい子供(こども)を連(つ)れて、ダビデと打(う)ち合(あ)わせたように野原(のはら)に出(で)て行(い)った。 36そしてその子(こ)供(とも)に言(い)った、「走(はし)って行(い)って、わたしの射(い)る矢(や)を捜(さが)しなさい」。子供(こども)が走(はし)って行(い)く間(あいだ)に、ヨナタンは矢(や)を彼(かれ)の前(まえ)の方(ほう)に放(はな)った。 37そして子供(こども)が、ヨナタンの放(はな)った矢(や)のところへ行(い)った時(とき)、ヨナタンは子供(こども)のうしろから呼(よ)ばわって、「矢(や)は向(む)こうにあるではないか」と言(い)った。 38ヨナタンはまた、その子(こ)供(とも)のうしろから呼(よ)ばわって言(い)った、「早(はや)くせよ、急(いそ)げ。とどまるな」。その子(こ)供(とも)は矢(や)を拾(ひろ)い集(あつ)めて主人(しゅじん)ヨナタンのもとにきた。 39しかし子供(こども)は何(なに)も知(し)らず、ヨナタンとダビデだけがそのことを知(し)っていた。 40ヨナタンは自分(じぶん)の武器(ぶき)をその子(こ)供(とも)に渡(わた)して言(い)った、「あなたはこれを町(まち)へ運(はこ)んで行(い)きなさい」。 41子供(こども)が行(い)ってしまうとダビデは石塚(いしづか)のかたわらをはなれて立(た)ちいで、地(ち)にひれ伏(ふ)して三度(ど)敬礼(けいれい)した。そして、ふたりは互(たがい)に口(くち)づけし、互(たがい)に泣(な)いた。やがてダビデは心(こころ)が落(お)ち着(つ)いた。 42その時(とき)ヨナタンはダビデに言(い)った、「無事(ぶじ)に行(い)きなさい。われわれふたりは、『主(しゅ)が常(つね)にわたしとあなたの間(あいだ)におられ、また、わたしの子孫(しそん)とあなたの子孫(しそん)の間(あいだ)におられる』と言(い)って、主(しゅ)の名(な)をさして誓(ちか)ったのです」。こうしてダビデは立(た)ち去(さ)り、ヨナタンは町(まち)にはいった。

第二一章

1ダビデはノブに行(い)き、祭司(さいし)アヒメレクのところへ行(い)った。アヒメレクはおののきながらダビデを迎(むか)えて言(い)った、「どうしてあなたはひとりですか。だれも供(とも)がいないのですか」。 2ダビデは祭司(さいし)アヒメレクに言(い)った、「王(おう)がわたしに一つの事(こと)を命(めい)じて、『わたしがおまえをつかわしてさせる事(こと)、またわたしが命(めい)じたことについては、何(なに)をも人(ひと)に知(し)らせてはならない』と言(い)われました。そこでわたしは、ある場所(ばしょ)に若者(わかもの)たちを待(ま)たせてあります。 3ところで今(いま)あなたの手(て)もとにパン五個(こ)でもあれば、それをわたしにください。なければなんでも、あるものをください」。 4祭司(さいし)はダビデに答(こた)えて言(い)った、「常(つね)のパンはわたしの手(て)もとにありません。ただその若者(わかもの)たちが女(おんな)を慎(つつし)んでさえいたのでしたら、聖別(せいべつ)したパンがあります」。 5ダビデは祭司(さいし)に答(こた)えた、「わたしが戦(たたか)いに出(で)るいつもの時(とき)のように、われわれはたしかに女(おんな)たちを近(ちか)づけていません。若者(わかもの)たちの器(うつわ)は、常(つね)の旅(たび)であったとしても、清(きよ)いのです。まして、きょう、彼(かれ)らの器(うつわ)は清(きよ)くないでしょうか」。 6そこで祭司(さいし)は彼(かれ)に聖別(せいべつ)したパンを与(あた)えた。その所(ところ)に、供(そな)えのパンのほかにパンがなく、このパンは、これを取(と)り下(さ)げる日(ひ)に、あたたかいパンと置(お)きかえるため、主(しゅ)の前(まえ)から取(と)り下(とり)さげたものである。

7その日(ひ)、その所(ところ)に、サウルのしもべのひとりが、主(しゅ)の前(まえ)に留(と)め置(お)かれていた。その名(な)はドエグといい、エドムびとであって、サウルの牧者(ぼくしゃ)の長(ちょう)であった。

8ダビデはまたアヒメレクに言(い)った、「ここに、あなたの手(て)もとに、やりかつるぎがありませんか。王(おう)の事(こと)が急(きゅう)を要(よう)したので、わたしはつるぎも武器(ぶき)も持(も)ってこなかったのです」。 9祭司(さいし)は言(い)った、「あなたがエラの谷(たに)で殺(ころ)したペリシテびとゴリアテのつるぎが、布(ぬの)に包(つつ)んでエポデのうしろにあります。もしあなたがこれを取(と)ろうとおもわれるなら、お取(と)りください。ここにはそのほかにはありません」。ダビデは言(い)った、「それにまさるものはありません。それをわたしにください」。 10ダビデはその日(ひ)サウルを恐(おそ)れて、立(た)ってガテの王(おう)アキシのところへ逃(に)げて行(い)った。 11アキシの家来(けらい)たちはアキシに言(い)った、「これはあの国(くに)の王(おう)ダビデではありませんか。人々(ひとびと)が踊(おど)りながら、互(たがい)に歌(うた)いかわして、
『サウルは千を撃(う)ち殺(ころ)し、
ダビデは万(まん)を撃(う)ち殺(ころ)した』
と言(い)ったのは、この人(ひと)のことではありませんか」。 12ダビデは、これらの言葉(ことば)を心(こころ)におき、ガテの王(おう)アキシを、ひじょうに恐(おそ)れたので、 13人々(ひとびと)の前(まえ)で、わざと挙動(きょどう)を変(か)え、捕(とら)えられて気違(きちが)いのふりをし、門(もん)のとびらを打(う)ちたたき、よだれを流(なが)して、ひげに伝(つた)わらせた。 14アキシは家来(けらい)たちに言(い)った、「あなたがたの見(み)るように、この人(ひと)は気違(きちが)いだ。どうして彼(かれ)をわたしの所(ところ)へ連(つ)れてきたのか。 15わたしに気違(きちが)いが必要(ひつよう)なのか。この者(もの)を連(つ)れてきて、わたしの前(まえ)で狂(くる)わせようというのか。この者(もの)をわたしの家(いえ)へ入(い)れようとするのか」。

第二二章

1こうしてダビデはその所(ところ)を去(さ)り、アドラムのほら穴(あな)へのがれた。彼(かれ)の兄弟(きょうだい)たちと父(ちち)の家(いえ)の者(もの)は皆(みな)、これを聞(き)き、その所(ところ)に下(くだ)って彼(かれ)のもとにきた。 2また、しえたげられている人々(ひとびと)、負債(ふさい)のある人々(ひとびと)、心(こころ)に不満(ふまん)のある人々(ひとびと)も皆(みな)、彼(かれ)のもとに集(あつ)まってきて、彼(かれ)はその長(ちょう)となった。おおよそ四百人(にん)の人々(ひとびと)が彼(かれ)と共(とも)にあった。

3ダビデはそこからモアブのミヅパへ行(い)き、モアブの王(おう)に言(い)った、「神(かみ)がわたしのためにどんなことをされるかわかるまで、どうぞわたしの父母(ふぼ)をあなたの所(ところ)におらせてください」。 4そして彼(かれ)はモアブの王(おう)に彼(かれ)らを託(たく)したので、彼(かれ)らはダビデが要害(ようがい)におる間(あいだ)、王(おう)の所(ところ)におった。 5さて、預言者(よげんしゃ)ガドはダビデに言(い)った、「要害(ようがい)にとどまっていないで、去(さ)ってユダの地(ち)へ行(い)きなさい」。そこでダビデは去(さ)って、ハレテの森(もり)へ行(い)った。

6サウルは、ダビデおよび彼(かれ)と共(とも)にいる人々(ひとびと)が見(み)つかったということを聞(き)いた。サウルはギベアで、やりを手(て)にもって、丘(おか)のぎょりゅうの木(き)の下(した)にすわっており、家来(けらい)たちはみなそのまわりに立(た)っていた。 7サウルはまわりに立(た)っている家来(けらい)たちに言(い)った、「あなたがたベニヤミンびとは聞(き)きなさい。エッサイの子(こ)もまた、あなたがたおのおのに畑(はたけ)やぶどう畑(はたけ)を与(あた)え、おのおのを千人(にん)の長(ちょう)、百人(にん)の長(ちょう)にするであろうか。 8あなたがたは皆(みな)共(とも)にはかってわたしに敵(てき)した。わたしの子(こ)がエッサイの子(こ)と契約(けいやく)を結(むす)んでも、それをわたしに告(つ)げるものはなく、またあなたがたのうち、ひとりもわたしのために憂(うれ)えず、きょうのように、わたしの子(こ)がわたしのしもべをそそのかしてわたしに逆(さか)らわせ、道(みち)で彼(かれ)がわたしを待(ま)ち伏(ぶ)せするようになっても、わたしに告(つ)げる者(もの)はない」。 9その時(とき)エドムびとドエグは、サウルの家来(けらい)たちのそばに立(た)っていたが、答(こた)えて言(い)った、「わたしはエッサイの子(こ)がノブにいるアヒトブの子(こ)アヒメレクの所(ところ)にきたのを見(み)ました。 10アヒメレクは彼(かれ)のために主(しゅ)に問(と)い、また彼(かれ)に食物(しょくもつ)を与(あた)え、ペリシテびとゴリアテのつるぎを与(あた)えました」。

11そこで王(おう)は人(ひと)をつかわして、アヒトブの子(こ)祭司(さいし)アヒメレクとその父(ちち)の家(いえ)のすべての者(もの)、すなわちノブの祭司(さいし)たちを召(め)したので、みな王(おう)の所(ところ)にきた。 12サウルは言(い)った、「アヒトブの子(こ)よ、聞(き)きなさい」。彼(かれ)は答(こた)えた、「わが主(しゅ)よ、わたしはここにおります」。 13サウルは彼(かれ)に言(い)った、「どうしてあなたはエッサイの子(こ)と共(とも)にはかってわたしに敵(てき)し、彼(かれ)にパンとつるぎを与(あた)え、彼(かれ)のために神(かみ)に問(と)い、きょうのように彼(かれ)をわたしに逆(さか)らって立(た)たせ、道(みち)で待(ま)ち伏(ぶ)せさせるのか」。 14アヒメレクは王(おう)に答(こた)えて言(い)った、「あなたの家来(けらい)のうち、ダビデのように忠義(ちゅうぎ)な者(もの)がほかにありますか。彼(かれ)は王(おう)の娘(むすめ)婿(むこ)であり、近衛(このえ)兵(へい)の長(ちょう)であって、あなたの家(いえ)で尊(たっと)ばれる人(ひと)ではありませんか。 15彼(かれ)のために神(かみ)に問(と)うたのは、きょう初(はじ)めてでしょうか。いいえ、決(けっ)してそうではありません。王(おう)よ、どうぞ、しもべと父(ちち)の全家(ぜんか)に罪(つみ)を負(お)わせないでください。しもべは、これについては、事(こと)の大小(だいしょう)を問(と)わず、何(なに)をも知(し)らなかったのです」。 16王(おう)は言(い)った、「アヒメレクよ、あなたは必(かなら)ず殺(ころ)されなければならない。あなたの父(ちち)の全家(ぜんか)も同(おな)じである」。 17そして王(おう)はまわりに立(た)っている近衛(このえ)の兵(へい)に言(い)った、「身(み)をひるがえして、主(しゅ)の祭司(さいし)たちを殺(ころ)しなさい。彼(かれ)らもダビデと協力(きょうりょく)していて、ダビデの逃(に)げたのを知(し)りながら、それをわたしに告(つ)げなかったからです」。ところが王(おう)の家来(けらい)たちは主(しゅ)の祭司(さいし)たちを殺(ころ)すために手(て)を下(くだ)そうとはしなかった。 18そこで王(おう)はドエグに言(い)った、「あなたが身(み)をひるがえして、祭司(さいし)たちを殺(ころ)しなさい」。エドムびとドエグは身(み)をひるがえして祭司(さいし)たちを撃(う)ち、その日(ひ)亜麻(あま)布(ぬの)のエポデを身(み)につけている者(もの)八十五人(にん)を殺(ころ)した。 19彼(かれ)はまた、つるぎをもって祭司(さいし)の町(まち)ノブを撃(う)ち、つるぎをもって男(おとこ)、女(おんな)、幼(おさ)な子(こ)、乳飲(ちの)み子(ご)、牛(うし)、ろば、羊(ひつじ)を殺(ころ)した。

20しかしアヒトブの子(こ)アヒメレクの子(こ)たちのひとりで、名(な)をアビヤタルという人(ひと)は、のがれてダビデの所(ところ)に走(はし)った。 21そしてアビヤタルは、サウルが主(しゅ)の祭司(さいし)たちを殺(ころ)したことをダビデに告(つ)げたので、 22ダビデはアビヤタルに言(い)った、「あの日(ひ)、エドムびとドエグがあそこにいたので、わたしは彼(かれ)がきっとサウルに告(つ)げるであろうと思(おも)った。わたしがあなたの父(ちち)の家(いえ)の人々(ひとびと)の命(いのち)を失(うしな)わせるもととなったのです。 23あなたはわたしの所(ところ)にとどまってください。恐(おそ)れることはありません。あなたの命(いのち)を求(もと)める者(もの)は、わたしの命(いのち)をも求(もと)めているのです。わたしの所(ところ)におられるならば、あなたは安全(あんぜん)でしょう」。

第二三章

1さて人々(ひとびと)はダビデに告(つ)げて言(い)った、「ペリシテびとがケイラを攻(せ)めて、打(う)ち場(ば)の穀物(こくもつ)をかすめています」。 2そこでダビデは主(しゅ)に問(と)うて言(い)った、「わたしが行(い)って、このペリシテびとを撃(う)ちましょうか」。主(しゅ)はダビデに言(い)われた、「行(い)ってペリシテびとを撃(う)ち、ケイラを救(すく)いなさい」。 3しかしダビデの従者(じゅうしゃ)たちは彼(かれ)に言(い)った、「われわれは、ユダのここにおってさえ、恐(おそ)れているのに、ましてケイラへ行(い)って、ペリシテびとの軍(ぐん)に当(あた)ることができましょうか」。 4ダビデが重(かさ)ねて主(しゅ)に問(と)うたところ、主(しゅ)は彼(かれ)に答(こた)えて言(い)われた、「立(た)って、ケイラへ下(くだ)りなさい。わたしはペリシテびとをあなたの手(て)に渡(わた)します」。 5ダビデとその従者(じゅうしゃ)たちはケイラへ行(い)って、ペリシテびとと戦(たたか)い、彼(かれ)らの家畜(かちく)を奪(うば)いとり、彼(かれ)らを多(おお)く撃(う)ち殺(ころ)した。こうしてダビデはケイラの住民(じゅうみん)を救(すく)った。

6アヒメレクの子(こ)アビヤタルは、ケイラにいるダビデのもとにのがれてきた時(とき)、手(て)にエポデをもって下(くだ)ってきた。 7さてダビデのケイラにきたことがサウルに聞(きこ)えたので、サウルは言(い)った、「神(かみ)はわたしの手(て)に彼(かれ)をわたされた。彼(かれ)は門(もん)と貫(かん)の木(き)のある町(まち)にはいって、自分(じぶん)で身(み)を閉(と)じこめたからである」。 8そこでサウルはすべての民(たみ)を戦(たたか)いに呼(よ)び集(あつ)めて、ケイラに下(くだ)り、ダビデとその従者(じゅうしゃ)を攻(せ)め囲(かこ)もうとした。 9ダビデはサウルが自分(じぶん)に害(がい)を加(くわ)えようとしているのを知(し)って、祭司(さいし)アビヤタルに言(い)った、「エポデを持(も)ってきてください」。 10そしてダビデは言(い)った、「イスラエルの神(かみ)、主(しゅ)よ、しもべはサウルがケイラにきて、わたしのために、この町(まち)を滅(ほろ)ぼそうとしていることを確(たし)かに聞(き)きました。 11ケイラの人々(ひとびと)はわたしを彼(かれ)の手(て)に渡(わた)すでしょうか。しもべの聞(き)いたように、サウルは下(くだ)ってくるでしょうか。イスラエルの神(かみ)、主(しゅ)よ、どうぞ、しもべに告(つ)げてください」。主(しゅ)は言(い)われた、「彼(かれ)は下(くだ)って来(く)る」。 12ダビデは言(い)った、「ケイラの人々(ひとびと)はわたしと従者(じゅうしゃ)たちをサウルの手(て)にわたすでしょうか」。主(しゅ)は言(い)われた、「彼(かれ)らはあなたがたを渡(わた)すであろう」。 13そこでダビデとその六百人(にん)ほどの従者(じゅうしゃ)たちは立(た)って、ケイラを去(さ)り、いずこともなくさまよった。ダビデのケイラから逃(に)げ去(さ)ったことがサウルに聞(きこ)えたので、サウルは戦(たたか)いに出(で)ることをやめた。 14ダビデは荒野(あらの)にある要害(ようがい)におり、またジフの荒野(あらの)の山地(さんち)におった。サウルは日々(ひび)に彼(かれ)を尋(たず)ね求(もと)めたが、神(かみ)は彼(かれ)をその手(て)に渡(わた)されなかった。

15さてダビデはサウルが自分(じぶん)の命(いのち)を求(もと)めて出(で)てきたので恐(おそ)れた。その時(とき)ダビデはジフの荒野(あらの)のホレシにいたが、 16サウルの子(こ)ヨナタンは立(た)って、ホレシにいるダビデのもとに行(い)き、神(かみ)によって彼(かれ)を力(ちから)づけた。 17そしてヨナタンは彼(かれ)に言(い)った、「恐(おそ)れるにはおよびません。父(ちち)サウルの手(て)はあなたに届(とど)かないでしょう。あなたはイスラエルの王(おう)となり、わたしはあなたの次(つぎ)となるでしょう。このことは父(ちち)サウルも知(し)っています」。 18こうして彼(かれ)らふたりは主(しゅ)の前(まえ)で契約(けいやく)を結(むす)び、ダビデはホレシにとどまり、ヨナタンは家(いえ)に帰(かえ)った。

19その時(とき)ジフびとはギベアにいるサウルのもとに上(のぼ)って行(い)き、そして言(い)った、「ダビデは、荒野(あらの)の南(みなみ)にあるハキラの丘(おか)の上(うえ)のホレシの要害(ようがい)に隠(かく)れて、われわれと共(とも)にいるではありませんか。 20それゆえ王(おう)よ、あなたが下(くだ)って行(い)こうという望(のぞ)みのとおり、いま下(くだ)ってきてください。われわれは彼(かれ)を王(おう)の手(て)に渡(わた)します」。 21サウルは言(い)った、「あなたがたはわたしに同情(どうじょう)を寄(よ)せてくれたのです。どうぞ主(しゅ)があなたがたを祝福(しゅくふく)されるように。 22あなたがたは行(い)って、なお確(たし)かめてください。彼(かれ)のよく行(い)く所(ところ)とだれがそこで彼(かれ)を見(み)たかを見(み)きわめてください。人(ひと)の語(かた)るところによると、彼(かれ)はひじょうに悪賢(わるがしこ)いそうだ。 23それで、あなたがたは彼(かれ)が隠(かく)れる隠(かく)れ場所(ばしょ)をみな見(み)きわめ、確(たし)かな知(し)らせをもってわたしの所(ところ)に帰(かえ)ってきなさい。その時(とき)わたしはあなたがたと共(とも)に行(い)きます。もし彼(かれ)がこの地(ち)にいるならば、わたしはユダの氏族(しぞく)をあまねく尋(たず)ねて彼(かれ)を捜(さが)しだします」。 24彼(かれ)らは立(た)って、サウルに先立(さきだ)ってジフへ行(い)った。

さてダビデとその従者(じゅうしゃ)たちは荒野(あらの)の南(みなみ)のアラバにあるマオンの荒野(あらの)にいた。 25そしてサウルとその従者(じゅうしゃ)たちはきて彼(かれ)を捜(さが)した。人々(ひとびと)がこれをダビデに告(つ)げたので、ダビデはマオンの荒野(あらの)にある岩(いわ)の所(ところ)へ下(くだ)って行(い)った。サウルはこれを聞(き)いて、マオンの荒野(あらの)にきてダビデを追(お)った。 26サウルは山(やま)のこちら側(がわ)を行(い)き、ダビデとその従者(じゅうしゃ)たちとは山(やま)のむこう側(がわ)を行(おこな)った。そしてダビデは急(いそ)いでサウルからのがれようとした。サウルとその従者(じゅうしゃ)たちが、ダビデとその従者(じゅうしゃ)たちを囲(かこ)んで捕(とら)えようとしたからである。 27その時(とき)、サウルの所(ところ)に、ひとりの使者(ししゃ)がきて言(い)った、「ペリシテびとが国(くに)を侵(おか)しています。急(いそ)いできてください」。 28そこでサウルはダビデを追(お)うことをやめて帰(かえ)り、行(い)ってペリシテびとに当(あた)った。それで人々(ひとびと)は、その所(ところ)を「のがれの岩(いわ)」と名(な)づけた。 29ダビデはそこから上(のぼ)ってエンゲデの要害(ようがい)にいた。

第二四章

1サウルがペリシテびとを追(お)うことをやめて帰(かえ)ってきたとき、人々(ひとびと)は彼(かれ)に告(つ)げて言(い)った、「ダビデはエンゲデの野(の)にいます」。 2そこでサウルは、全(ぜん)イスラエルから選(えら)んだ三千の人(ひと)を率(ひき)い、ダビデとその従者(じゅうしゃ)たちとを捜(さが)すため、「やぎの岩(いわ)」の前(まえ)へ出(で)かけた。 3途中(とちゅう)、羊(ひつじ)のおりの所(ところ)にきたが、そこに、ほら穴(あな)があり、サウルは足(あし)をおおうために、その中(なか)にはいった。その時(とき)、ダビデとその従者(じゅうしゃ)たちは、ほら穴(あな)の奥(おく)にいた。 4ダビデの従者(じゅうしゃ)たちは彼(かれ)に言(い)った、「主(しゅ)があなたに告(つ)げて、『わたしはあなたの敵(てき)をあなたの手(て)に渡(わた)す。あなたは自分(じぶん)の良(よ)いと思(おも)うことを彼(かれ)にすることができる』と言(い)われた日(ひ)がきたのです」。そこでダビデは立(た)って、ひそかに、サウルの上着(うわぎ)のすそを切(き)った。 5しかし後(のち)になって、ダビデはサウルの上着(うわぎ)のすそを切(き)ったことに、心(こころ)の責(せ)めを感(かん)じた。 6ダビデは従者(じゅうしゃ)たちに言(い)った、「主(しゅ)が油(あぶら)を注(そそ)がれたわが君(きみ)に、わたしがこの事(こと)をするのを主(しゅ)は禁(きん)じられる。彼(かれ)は主(しゅ)が油(あぶら)を注(そそ)がれた者(もの)であるから、彼(かれ)に敵(てき)して、わたしの手(て)をのべるのは良(よ)くない」。 7ダビデはこれらの言葉(ことば)をもって従者(じゅうしゃ)たちを差(さ)し止(と)め、サウルを撃(う)つことを許(ゆる)さなかった。サウルは立(た)って、ほら穴(あな)を去(さ)り、道(みち)を進(すす)んだ。

8ダビデもまた、そのあとから立(た)ち、ほら穴(あな)を出(で)て、サウルのうしろから呼(よ)ばわって、「わが君(きみ)、王(おう)よ」と言(い)った。サウルがうしろをふり向(む)いた時(とき)、ダビデは地(ち)にひれ伏(ふ)して拝(はい)した。 9そしてダビデはサウルに言(い)った、「どうして、あなたは『ダビデがあなたを害(がい)しようとしている』という人々(ひとびと)の言葉(ことば)を聞(き)かれるのですか。 10あなたは、この日(ひ)、自分(じぶん)の目(め)で、主(しゅ)があなたをきょう、ほら穴(あな)の中(なか)でわたしの手(て)に渡(わた)されたのをごらんになりました。人々(ひとびと)はわたしにあなたを殺(ころ)すことを勧(すす)めたのですが、わたしは殺(ころ)しませんでした。『わが君(きみ)は主(しゅ)が油(あぶら)を注(そそ)がれた方(かた)であるから、これに敵(てき)して手(て)をのべることはしない』とわたしは言(い)いました。 11わが父(ちち)よ、ごらんなさい。あなたの上着(うわぎ)のすそは、わたしの手(て)にあります。わたしがあなたの上着(うわぎ)のすそを切(き)り、しかも、あなたを殺(ころ)さなかったことによって、あなたは、わたしの手(て)に悪(あく)も、とがもないことを見(み)て知(し)られるでしょう。あなたはわたしの命(いのち)を取(と)ろうと、ねらっておられますが、わたしはあなたに対(たい)して罪(つみ)をおかしたことはないのです。 12どうぞ主(しゅ)がわたしとあなたの間(あいだ)をさばかれますように。また主(しゅ)がわたしのために、あなたに報(むく)いられますように。しかし、わたしはあなたに手(て)をくだすことをしないでしょう。 13昔(むかし)から、ことわざに言(い)っているように、『悪(あく)は悪人(あくにん)から出(で)る』。しかし、わたしはあなたに手(て)をくだすことをしないでしょう。 14イスラエルの王(おう)は、だれを追(お)って出(で)てこられたのですか。あなたは、だれを追(お)っておられるのですか。死(し)んだ犬(いぬ)を追(お)っておられるのです。一匹(ぴき)の蚤(のみ)を追(お)っておられるのです。 15どうぞ主(しゅ)がさばきびととなって、わたしとあなたの間(あいだ)をさばき、かつ見(み)て、わたしの訴(うった)えを聞(き)き、わたしをあなたの手(て)から救(すく)い出(だ)してくださるように」。

16ダビデがこれらの言葉(ことば)をサウルに語(かた)り終(おわ)ったとき、サウルは言(い)った、「わが子(こ)ダビデよ、これは、あなたの声(こえ)であるか」。そしてサウルは声(こえ)をあげて泣(な)いた。 17サウルはまたダビデに言(い)った、「あなたはわたしよりも正(ただ)しい。わたしがあなたに悪(あく)を報(むく)いたのに、あなたはわたしに善(ぜん)を報(むく)いる。 18きょう、あなたはいかに良(よ)くわたしをあつかったかを明(あき)らかにしました。すなわち主(しゅ)がわたしをあなたの手(て)にわたされたのに、あなたはわたしを殺(ころ)さなかったのです。 19人(ひと)は敵(てき)に会(あ)ったとき、敵(てき)を無事(ぶじ)に去(さ)らせるでしょうか。あなたが、きょう、わたしにした事(こと)のゆえに、どうぞ主(しゅ)があなたに良(よ)い報(むく)いを与(あた)えられるように。 20今(いま)わたしは、あなたがかならず王(おう)となることを知(し)りました。またイスラエルの王国(おうこく)が、あなたの手(て)によって堅(かた)く立(た)つことを知(し)りました。 21それゆえ、あなたはわたしのあとに、わたしの子孫(しそん)を断(た)たず、またわたしの父(ちち)の家(いえ)から、わたしの名(な)を滅(ほろ)ぼし去(さ)らないと、いま主(しゅ)をさして、わたしに誓(ちか)ってください」。 22そこでダビデはサウルに、そのように誓(ちか)った。そしてサウルは家(いえ)に帰(かえ)り、ダビデとその従者(じゅうしゃ)たちは要害(ようがい)にのぼって行(い)った。

第二五章

1さてサムエルが死(し)んだので、イスラエルの人々(ひとびと)はみな集(あつ)まって、彼(かれ)のためにひじょうに悲(かな)しみ、ラマにあるその家(いえ)に彼(かれ)を葬(ほうむ)った。

そしてダビデは立(た)ってパランの荒野(あらの)に下(くだ)って行(い)った。 2マオンに、ひとりの人(ひと)があって、カルメルにその所有(しょゆう)があり、ひじょうに裕福(ゆうふく)で、羊(ひつじ)三千頭(とう)、やぎ一千頭(とう)を持(も)っていた。彼(かれ)はカルメルで羊(ひつじ)の毛(け)を切(き)っていた。 3その人(ひと)の名(な)はナバルといい、妻(つま)の名(な)はアビガイルといった。アビガイルは賢(かしこ)くて美(うつく)しかったが、その夫(おっと)は剛情(ごうじょう)で、粗暴(そぼう)であった。彼(かれ)はカレブびとであった。 4ダビデは荒野(あらの)にいて、ナバルがその羊(ひつじ)の毛(け)を切(き)っていることを聞(き)いたので、 5十人(にん)の若者(わかもの)をつかわし、その若者(わかもの)たちに言(い)った、「カルメルに上(のぼ)って行(い)ってナバルの所(ところ)へ行(い)き、わたしの名(な)をもって彼(かれ)にあいさつし、 6彼(かれ)にこう言(い)いなさい、『どうぞあなたに平安(へいあん)があるように。あなたの家(いえ)に平安(へいあん)があるように。またあなたのすべての持(も)ち物(もの)に平安(へいあん)があるように。 7わたしはあなたが羊(ひつじ)の毛(け)を切(き)っておられることを聞(き)きました。あなたの羊飼(ひつじかい)たちはわれわれと一緒(いっしょ)にいたのですが、われわれは彼(かれ)らを少(すこ)しも害(がい)しませんでした。また彼(かれ)らはカルメルにいる間(あいだ)に、何(なに)ひとつ失(うしな)ったことはありません。 8あなたの若者(わかもの)たちに聞(き)いてみられるならば、わかります。それゆえ、わたしの若者(わかもの)たちに、あなたの好意(こうい)を示(しめ)してください。われわれは祝(しゅく)の日(ひ)にきたのです。どうぞ、あなたの手(て)もとにあるものを、贈(おく)り物(もの)として、しもべどもとあなたの子(こ)ダビデにください』」。

9ダビデの若者(わかもの)たちは行(い)って、ダビデの名(な)をもって、これらの言葉(ことば)をナバルに語(かた)り、そして待(ま)っていた。 10ナバルはダビデの若者(わかもの)たちに答(こた)えて言(い)った、「ダビデとはだれか。エッサイの子(こ)とはだれか。このごろは、主人(しゅじん)を捨(す)てて逃(に)げるしもべが多(おお)い。 11どうしてわたしのパンと水(みず)、またわたしの羊(ひつじ)の毛(け)を切(き)る人々(ひとびと)のためにほふった肉(にく)をとって、どこからきたのかわからない人々(ひとびと)に与(あた)えることができようか」。 12ダビデの若者(わかもの)たちは、そこを去(さ)り、帰(かえ)ってきて、彼(かれ)にこのすべての事(こと)を告(つ)げた。 13そこでダビデは従者(じゅうしゃ)たちに言(い)った、「おのおの、つるぎを帯(お)びなさい」。彼(かれ)らはおのおのつるぎを帯(お)び、ダビデもまたつるぎを帯(お)びた。そしておおよそ四百人(にん)がダビデに従(したが)って上(のぼ)っていき、二百人(にん)は荷物(にもつ)のところにとどまった。

14ところで、ひとりの若者(わかもの)がナバルの妻(つま)アビガイルに言(い)った、「ダビデが荒野(あらの)から使者(ししゃ)をつかわして、主人(しゅじん)にあいさつをしたのに、主人(しゅじん)はその使者(ししゃ)たちをののしられました。 15しかし、あの人々(ひとびと)はわれわれに大(だい)へんよくしてくれて、われわれは少(すこ)しも害(がい)を受(う)けず、またわれわれが野(の)にいた時(とき)、彼(かれ)らと共(とも)にいた間(あいだ)は、何(なに)ひとつ失(うしな)ったことはありませんでした。 16われわれが羊(ひつじ)を飼(か)って彼(かれ)らと共(とも)にいる間(あいだ)、彼(かれ)らは夜(よる)も昼(ひる)もわれわれのかきとなってくれました。 17それで、あなたは今(いま)それを知(し)って、自分(じぶん)のすることを考(かんが)えてください。主人(しゅじん)とその一家(いっか)に災(わざわい)が起(お)きるからです。しかも主人(しゅじん)はよこしまな人(ひと)で、話(はな)しかけることもできません」。

18その時(とき)、アビガイルは急(いそ)いでパン二百、ぶどう酒(しゅ)の皮(かわ)袋(ぶくろ)二つ、調理(ちょうり)した羊(ひつじ)五頭(とう)、いり麦(むぎ)五セア、ほしぶどう百ふさ、ほしいちじくのかたまり二百を取(と)って、ろばにのせ、 19若者(わかもの)たちに言(い)った、「わたしのさきに進(すす)みなさい。わたしはあなたがたのうしろに、ついて行(い)きます」。しかし彼女(かのじょ)は夫(おっと)ナバルには告(つ)げなかった。 20アビガイルが、ろばに乗(の)って山陰(やまかげ)を下(くだ)ってきた時(とき)、ダビデと従者(じゅうしゃ)たちは彼女(かのじょ)の方(ほう)に向(む)かって降(ふ)りてきたので、彼女(かのじょ)はその人々(ひとびと)に出会(であ)った。 21さて、ダビデはさきにこう言(い)った、「わたしはこの人(ひと)が荒野(あらの)で持(も)っている物(もの)をみな守(まも)って、その人(ひと)に属(ぞく)する物(もの)を何(なに)ひとつなくならないようにしたが、それは全(まった)くむだであった。彼(かれ)はわたしのした親切(しんせつ)に悪(あく)をもって報(むく)いた。 22もしわたしがあすの朝(あさ)まで、ナバルに属(ぞく)するすべての者(もの)のうち、ひとりの男(おとこ)でも残(のこ)しておくならば、神(かみ)が幾重(いくえ)にもダビデを罰(ばっ)してくださるように」。

23アビガイルはダビデを見(み)て、急(いそ)いで、ろばを降(ふ)り、ダビデの前(まえ)で地(ち)にひれ伏(ふ)し、 24その足(あし)もとに伏(ふ)して言(い)った、「わが君(きみ)よ、このとがをわたしだけに負(お)わせてください。しかしどうぞ、はしために、あなたの耳(みみ)に語(かた)ることを許(ゆる)し、はしための言葉(ことば)をお聞(き)きください。 25わが君(きみ)よ、どうぞ、このよこしまな人(ひと)ナバルのことを気(き)にかけないでください。あの人(ひと)はその名(な)のとおりです。名(な)はナバルで、愚(おろ)かな者(もの)です。あなたのはしためであるわたしは、わが君(きみ)なるあなたがつかわされた若者(わかもの)たちを見(み)なかったのです。 26それゆえ今(いま)、わが君(きみ)よ、主(しゅ)は生(い)きておられます。またあなたは生(い)きておられます。主(しゅ)は、あなたがきて血(ち)を流(なが)し、また手(て)ずから、あだを報(むく)いるのをとどめられました。どうぞ今(いま)、あなたの敵(てき)、およびわが君(きみ)に害(がい)を加(くわ)えようとする者(もの)は、ナバルのごとくになりますように。 27今(いま)、あなたのつかえめが、わが君(きみ)に携(たずさ)えてきた贈(おく)り物(もの)を、わが君(きみ)に従(したが)う若者(わかもの)たちに与(あた)えてください。 28どうぞ、はしためのとがを許(ゆる)してください。主(しゅ)は必(かなら)ずわが君(きみ)のために確(たし)かな家(いえ)を造(つく)られるでしょう。わが君(きみ)が主(しゅ)のいくさを戦(たたか)い、またこの世(よ)に生(い)きながらえられる間(あいだ)、あなたのうちに悪(わる)いことが見(み)いだされないからです。 29たとい人(ひと)が立(た)ってあなたを追(お)い、あなたの命(いのち)を求(もと)めても、わが君(きみ)の命(いのち)は、生(い)きている者(もの)の束(たば)にたばねられて、あなたの神(かみ)、主(しゅ)のもとに守(まも)られるでしょう。しかし主(しゅ)はあなたの敵(てき)の命(いのち)を、石(いし)投(な)げの中(なか)から投(な)げるように、投(な)げ捨(す)てられるでしょう。 30そして主(しゅ)があなたについて語(かた)られたすべての良(よ)いことをわが君(きみ)に行(おこな)い、あなたをイスラエルのつかさに任(にん)じられる時(とき)、 31あなたが、ゆえなく血(ち)を流(なが)し、またわが君(きみ)がみずからあだを報(むく)いたと言(い)うことで、それがあなたのつまずきとなり、またわが君(きみ)の心(こころ)の責(せ)めとなることのないようにしてください。主(しゅ)がわが君(きみ)を良(よ)くせられる時(とき)、このはしためを思(おも)いだしてください」。

32ダビデはアビガイルに言(い)った、「きょう、あなたをつかわして、わたしを迎(むか)えさせられたイスラエルの神(かみ)、主(しゅ)はほむべきかな。 33あなたの知恵(ちえ)はほむべきかな。またあなたはほむべきかな。あなたは、きょう、わたしがきて血(ち)を流(なが)し、手(て)ずからあだを報(むく)いることをとどめられたのです。 34わたしがあなたを害(がい)することをとどめられたイスラエルの神(かみ)、主(しゅ)はまことに生(い)きておられる。もしあなたが急(いそ)いでわたしに会(あ)いにこなかったならば、あすの朝(あさ)までには、ナバルのところに、ひとりの男(おとこ)も残(のこ)らなかったでしょう」。 35ダビデはアビガイルが携(たずさ)えてきた物(もの)をその手(て)から受(う)けて、彼女(かのじょ)に言(い)った、「あなたは無事(ぶじ)にのぼって、家(いえ)に帰(かえ)りなさい。わたしはあなたの声(こえ)を聞(き)きいれ、あなたの願(ねが)いを許(ゆる)します」。

36こうしてアビガイルはナバルのもとにきたが、見(み)よ、彼(かれ)はその家(いえ)で、王(おう)の酒宴(しゅえん)のような酒宴(しゅえん)を開(ひら)いていた。ナバルは心(こころ)に楽(たの)しみ、ひじょうに酔(よ)っていたので、アビガイルは明(あ)くる朝(あさ)まで事(こと)の大小(だいしょう)を問(と)わず何(なに)をも彼(かれ)に告(つ)げなかった。 37朝(あさ)になってナバルの酔(よ)いがさめたとき、その妻(つま)が彼(かれ)にこれらの事(こと)を告(つ)げると、彼(かれ)の心(こころ)はそのうちに死(し)んで、彼(かれ)は石(いし)のようになった。 38十日(か)ばかりして主(しゅ)がナバルを撃(う)たれたので彼(かれ)は死(し)んだ。

39ダビデはナバルが死(し)んだと聞(き)いて言(い)った、「主(しゅ)はほむべきかな。主(しゅ)はわたしがナバルの手(て)から受(う)けた侮辱(ぶじょく)に報(むく)いて、しもべが悪(あく)をおこなわないようにされた。主(しゅ)はナバルの悪行(あくぎょう)をそのこうべに報(むく)いられたのだ」。ダビデはアビガイルを妻(つま)にめとろうと、人(ひと)をつかわして彼女(かのじょ)に申(もう)し込(こ)んだ。 40ダビデのしもべたちはカルメルにいるアビガイルの所(ところ)にきて、彼女(かのじょ)に言(い)った、「ダビデはあなたを妻(つま)にめとろうと、われわれをあなたの所(ところ)へつかわしたのです」。 41アビガイルは立(た)ち、地(ち)にひれ伏(ふ)し拝(はい)して言(い)った、「はしためは、わが君(きみ)のしもべたちの足(あし)を洗(あら)うつかえめです」。 42アビガイルは急(いそ)いで立(た)ち、ろばに乗(の)って、五人(にん)の侍女(じじょ)たちを連(つ)れ、ダビデの使者(ししゃ)たちに従(したが)って行(い)き、ダビデの妻(つま)となった。

43ダビデはまたエズレルのアヒノアムをめとった。彼女(かのじょ)たちはふたりともダビデの妻(つま)となった。 44ところでサウルはその娘(むすめ)、ダビデの妻(つま)ミカルを、ガリムの人(ひと)であるライシの子(こ)パルテに与(あた)えた。

第二六章

1そのころジフびとがギベアにおるサウルのもとにきて言(い)った、「ダビデは荒野(あらの)の前(まえ)にあるハキラの山(やま)に隠(かく)れているではありませんか」。 2サウルは立(た)って、ジフの荒野(あらの)でダビデを捜(さが)すために、イスラエルのうちから選(えら)んだ三千人(にん)をひき連(つ)れて、ジフの荒野(あらの)に下(くだ)った。 3サウルは荒野(あらの)の前(まえ)の道(みち)のかたわらにあるハキラの山(やま)に陣(じん)を取(と)った。ダビデは荒野(あらの)にとどまっていたが、サウルが自分(じぶん)のあとを追(お)って荒野(あらの)にきたのを見(み)て、 4斥候(せっこう)を出(だ)し、サウルが確(たし)かにきたのを知(し)った。 5そしてダビデは立(た)って、サウルが陣(じん)を取(と)っている所(ところ)へ行(い)って、サウルとその軍(ぐん)の長(ちょう)、ネルの子(こ)アブネルの寝(ね)ている場所(ばしょ)を見(み)た。サウルは陣所(じんしょ)のうちに寝(ね)ていて、民(たみ)はその周囲(しゅうい)に宿営(しゅくえい)していた。

6ダビデは、ヘテびとアヒメレク、およびゼルヤの子(こ)で、ヨアブの兄弟(きょうだい)であるアビシャイに言(い)った、「だれがわたしと共(とも)にサウルの陣(じん)に下(くだ)って行(い)くか」。アビシャイは言(い)った、「わたしが一緒(いっしょ)に下(くだ)って行(い)きます」。 7こうしてダビデとアビシャイとが夜(よる)、民(たみ)のところへ行(い)ってみると、サウルは陣所(じんしょ)のうちに身(み)を横(よこ)たえて寝(ね)ており、そのやりは枕(まくら)もとに地(ち)に突(つ)きさしてあった。そしてアブネルと民(たみ)らとはその周囲(しゅうい)に寝(ね)ていた。 8アビシャイはダビデに言(い)った、「神(かみ)はきょう敵(てき)をあなたの手(て)に渡(わた)されました。どうぞわたしに、彼(かれ)のやりをもってひと突(つ)きで彼(かれ)を地(ち)に刺(さ)しとおさせてください。ふたたび突(つ)くには及(およ)びません」。 9しかしダビデはアビシャイに言(い)った、「彼(かれ)を殺(ころ)してはならない。主(しゅ)が油(あぶら)を注(そそ)がれた者(もの)に向(む)かって、手(て)をのべ、罪(つみ)を得(え)ない者(もの)があろうか」。 10ダビデはまた言(い)った、「主(しゅ)は生(い)きておられる。主(しゅ)が彼(かれ)を撃(う)たれるであろう。あるいは彼(かれ)の死(し)ぬ日(ひ)が来(く)るであろう。あるいは戦(たたか)いに下(くだ)って行(い)って滅(ほろ)びるであろう。 11主(しゅ)が油(あぶら)を注(そそ)がれた者(もの)に向(む)かって、わたしが手(て)をのべることを主(しゅ)は禁(きん)じられる。しかし今(いま)、そのまくらもとにあるやりと水(みず)のびんを取(と)りなさい。そしてわれわれは去(さ)ろう」。 12こうしてダビデはサウルの枕(まくら)もとから、やりと水(みず)のびんを取(と)って彼(かれ)らは去(さ)ったが、だれもそれを見(み)ず、だれも知(し)らず、また、だれも目(め)をさまさず、みな眠(ねむ)っていた。主(しゅ)が彼(かれ)らを深(ふか)く眠(ねむ)らされたからである。

13ダビデは向(む)こう側(がわ)に渡(わた)って行(い)って、遠(とお)く離(はな)れて山(やま)の頂(いただき)に立(た)った。彼(かれ)らの間(あいだ)の隔(へだ)たりは大(おお)きかった。 14ダビデは民(たみ)とネルの子(こ)アブネルに呼(よ)ばわって言(い)った、「アブネルよ、あなたは答(こた)えないのか」。アブネルは答(こた)えて言(い)った、「王(おう)を呼(よ)んでいるあなたはだれか」。 15ダビデはアブネルに言(い)った、「あなたは男(おとこ)ではないか。イスラエルのうちに、あなたに及(およ)ぶ人(ひと)があろうか。それであるのに、どうしてあなたは主君(しゅくん)である王(おう)を守(まも)らなかったのか。民(たみ)のひとりが、あなたの主君(しゅくん)である王(おう)を殺(ころ)そうとして、はいりこんだではないか。 16あなたがしたこの事(こと)は良(よ)くない。主(しゅ)は生(い)きておられる。あなたがたは、まさに死(し)に値(あたい)する。主(しゅ)が油(あぶら)をそそがれた、あなたの主君(しゅくん)を守(まも)らなかったからだ。いま王(おう)のやりがどこにあるか。その枕(まくら)もとにあった水(みず)のびんがどこにあるかを見(み)なさい」。

17サウルはダビデの声(こえ)を聞(き)きわけて言(い)った、「わが子(こ)ダビデよ、これはあなたの声(こえ)か」。ダビデは言(い)った、「王(おう)、わが君(きみ)よ、わたしの声(こえ)です」。 18ダビデはまた言(い)った、「わが君(きみ)はどうしてしもべのあとを追(お)われるのですか。わたしが何(なに)をしたのですか。わたしの手(て)になんのわるいことがあるのですか。 19王(おう)、わが君(きみ)よ、どうぞ、今(いま)しもべの言葉(ことば)を聞(き)いてください。もし主(しゅ)があなたを動(うご)かして、わたしの敵(てき)とされたのであれば、どうぞ主(しゅ)が供(そな)え物(もの)を受(う)けて和(やわ)らいでくださるように。もし、それが人(ひと)であるならば、どうぞその人々(ひとびと)が主(しゅ)の前(まえ)にのろいを受(う)けるように。彼(かれ)らが『おまえは行(い)って他(た)の神々(かみがみ)に仕(つか)えなさい』と言(い)って、きょう、わたしを追(お)い出(だ)し、主(しゅ)の嗣(し)業(ぎょう)にあずかることができないようにしたからです。 20それゆえ今(いま)、主(しゅ)の前(まえ)を離(はな)れて、わたしの血(ち)が地(ち)に落(お)ちることのないようにしてください。イスラエルの王(おう)は、人(ひと)が山(やま)で、しゃこを追(お)うように、わたしの命(いのち)を取(と)ろうとして出(で)てこられたのです」。

21その時(とき)、サウルは言(い)った、「わたしは罪(つみ)を犯(おか)した。わが子(こ)ダビデよ、帰(かえ)ってきてください。きょう、わたしの命(いのち)があなたの目(め)に尊(たっと)く見(み)られたゆえ、わたしは、もはやあなたに害(がい)を加(くわ)えないであろう。わたしは愚(おろ)かなことをして、非常(ひじょう)なまちがいをした」。 22ダビデは答(こた)えた、「王(おう)のやりは、ここにあります。ひとりの若者(わかもの)に渡(わた)ってこさせ、これを持(も)ちかえらせてください。 23主(しゅ)は人(ひと)おのおのにその義(ぎ)と真実(しんじつ)とに従(したが)って報(むく)いられます。主(しゅ)がきょう、あなたをわたしの手(て)に渡(わた)されたのに、わたしは主(しゅ)が油(あぶら)を注(そそ)がれた者(もの)に向(む)かって、手(て)をのべることをしなかったのです。 24きょう、わたしがあなたの命(いのち)を重(おも)んじたように、どうぞ主(しゅ)がわたしの命(いのち)を重(おも)んじて、もろもろの苦難(くなん)から救(すく)い出(だ)してくださるように」。 25サウルはダビデに言(い)った、「わが子(こ)ダビデよ、あなたはほむべきかな。あなたは多(おお)くの事(こと)をおこなって、それをなし遂(と)げるであろう」。こうしてダビデはその道(みち)を行(い)き、サウルは自分(じぶん)の所(ところ)へ帰(かえ)った。

第二七章

1ダビデは心(こころ)のうちに言(い)った、「わたしは、いつかはサウルの手(て)にかかって滅(ほろ)ぼされるであろう。早(はや)くペリシテびとの地(ち)へのがれるほかはない。そうすればサウルはこの上(うえ)イスラエルの地(ち)にわたしをくまなく捜(さが)すことはやめ、わたしは彼(かれ)の手(て)からのがれることができるであろう」。 2こうしてダビデは、共(とも)にいた六百人(にん)と一緒(いっしょ)に、立(た)ってガテの王(おう)マオクの子(こ)アキシの所(ところ)へ行(い)った。 3ダビデと従者(じゅうしゃ)たちは、おのおのその家族(かぞく)とともに、ガテでアキシと共(とも)に住(す)んだ。ダビデはそのふたりの妻(つま)、すなわちエズレルの女(おんな)アヒノアムと、カルメルの女(おんな)でナバルの妻(つま)であったアビガイルと共(とも)におった。 4ダビデがガテにのがれたことがサウルに聞(きこ)えたので、サウルはもはや彼(かれ)を捜(さが)さなかった。

5さてダビデはアキシに言(い)った、「もしわたしがあなたの前(まえ)に恵(めぐ)みを得(え)るならば、どうぞ、いなかにある町(まち)のうちで一つの場所(ばしょ)をわたしに与(あた)えてそこに住(す)まわせてください。どうしてしもべがあなたと共(とも)に王(おう)の町(まち)に住(す)むことができましょうか」。 6アキシはその日(ひ)チクラグを彼(かれ)に与(あた)えた。こうしてチクラグは今日(こんにち)にいたるまでユダの王(おう)に属(ぞく)している。 7ダビデがペリシテびとの国(くに)に住(す)んだ日(ひ)の数(かず)は一年(ねん)と四か月(げつ)であった。

8さてダビデは従者(じゅうしゃ)と共(とも)にのぼって、ゲシュルびと、ゲゼルびとおよびアマレクびとを襲(おそ)った。これらは昔(むかし)からシュルに至(いた)るまでの地(ち)の住民(じゅうみん)であって、エジプトに至(いた)るまでの地(ち)に住(す)んでいた。 9ダビデはその地(ち)を撃(う)って、男(おとこ)も女(おんな)も生(い)かしおかず、羊(ひつじ)と牛(うし)とろばとらくだと衣服(いふく)とを取(と)って、アキシのもとに帰(かえ)ってきた。 10アキシが「あなたはきょうどこを襲(おそ)いましたか」と尋(たず)ねると、ダビデは、その時々(ときどき)、「ユダのネゲブです」、「エラメルびとのネゲブです」「ケニびとのネゲブです」と言(い)った。 11ダビデは男(おとこ)も女(おんな)も生(い)かしおかず、ひとりをもガテに引(ひ)いて行(い)かなかった。それはダビデが、「恐(おそ)らくは、彼(かれ)らが、『ダビデはこうした』と言(い)って、われわれのことを告(つ)げるであろう」と思(おも)ったからである。ダビデはペリシテびとのいなかに住(す)んでいる間(あいだ)はこうするのが常(つね)であった。 12アキシはダビデを信(しん)じて言(い)った、「彼(かれ)は自分(じぶん)を全(まった)くその民(たみ)イスラエルに憎(にく)まれるようにした。それゆえ彼(かれ)は永久(えいきゅう)にわたしのしもべとなるであろう」。

第二八章

1そのころ、ペリシテびとがイスラエルと戦(たたか)おうとして、いくさのために軍勢(ぐんぜい)を集(あつ)めたので、アキシはダビデに言(い)った、「あなたは、しかと承知(しょうち)してください。あなたとあなたの従者(じゅうしゃ)たちとは、わたしと共(とも)に出(で)て、軍勢(ぐんぜい)に加(くわ)わらなければなりません」。 2ダビデはアキシに言(い)った、「よろしい、あなたはしもべが何(なに)をするかを知(し)られるでしょう」。アキシはダビデに言(い)った、「よろしい、あなたを終身(しゅうしん)わたしの護衛(ごえい)の長(ちょう)としよう」。

3さてサムエルはすでに死(し)んで、イスラエルのすべての人(ひと)は彼(かれ)のために悲(かな)しみ、その町(まち)ラマに葬(ほうむ)った。また先(さき)にサウルは口寄(くちよ)せや占(うらな)い師(し)をその地(ち)から追放(ついほう)した。 4ペリシテびとが集(あつ)まってきてシュネムに陣(じん)を取(と)ったので、サウルはイスラエルのすべての人(ひと)を集(あつ)めて、ギルボアに陣(じん)を取(と)った。 5サウルはペリシテびとの軍勢(ぐんぜい)を見(み)て恐(おそ)れ、その心(こころ)はいたくおののいた。 6そこでサウルは主(しゅ)に伺(うかが)いをたてたが、主(しゅ)は夢(ゆめ)によっても、ウリムによっても、預言者(よげんしゃ)によっても彼(かれ)に答(こた)えられなかった。 7サウルはしもべたちに言(い)った、「わたしのために、口寄(くちよ)せの女(おんな)を捜(さが)し出(だ)しなさい。わたしは行(い)ってその女(おんな)に尋(たず)ねよう」。しもべたちは彼(かれ)に言(い)った、「見(み)よ、エンドルにひとりの口寄(くちよ)せがいます」。

8サウルは姿(すがた)を変(か)えてほかの着物(きもの)をまとい、ふたりの従者(じゅうしゃ)を伴(ともな)って行(い)き、夜(よる)の間(あいだ)に、その女(おんな)の所(ところ)にきた。そしてサウルは言(い)った、「わたしのために口寄(くちよ)せの術(じゅつ)を行(い)って、わたしがあなたに告(つ)げる人(ひと)を呼(よ)び起(おこ)してください」。 9女(おんな)は彼(かれ)に言(い)った、「あなたはサウルがしたことをごぞんじでしょう。彼(かれ)は口寄(くちよ)せや占(うらな)い師(し)をその国(くに)から断(た)ち滅(ほろ)ぼしました。どうしてあなたは、わたしの命(いのち)にわなをかけて、わたしを死(し)なせようとするのですか」。 10サウルは主(しゅ)をさして彼女(かのじょ)に誓(ちか)って言(い)った、「主(しゅ)は生(い)きておられる。この事(こと)のためにあなたが罰(ばつ)を受(う)けることはないでしょう」。 11女(おんな)は言(い)った、「あなたのためにだれを呼(よ)び起(おこ)しましょうか」。サウルは言(い)った、「サムエルを呼(よ)び起(おこ)してください」。 12女(おんな)はサムエルを見(み)た時(とき)、大声(おおごえ)で叫(さけ)んだ。そしてその女(おんな)はサウルに言(い)った、「どうしてあなたはわたしを欺(あざむ)かれたのですか。あなたはサウルです」。 13王(おう)は彼女(かのじょ)に言(い)った、「恐(おそ)れることはない。あなたには何(なに)が見(み)えるのですか」。女(おんな)はサウルに言(い)った、「神(かみ)のようなかたが地(ち)からのぼられるのが見(み)えます」。 14サウルは彼女(かのじょ)に言(い)った、「その人(ひと)はどんな様子(ようす)をしていますか」。彼女(かのじょ)は言(い)った、「ひとりの老人(ろうじん)がのぼってこられます。その人(ひと)は上着(うわぎ)をまとっておられます」。サウルはその人(ひと)がサムエルであるのを知(し)り、地(ち)にひれ伏(ふ)して拝(はい)した。

15サムエルはサウルに言(い)った、「なぜ、わたしを呼(よ)び起(おこ)して、わたしを煩(わずら)わすのか」。サウルは言(い)った、「わたしは、ひじょうに悩(なや)んでいます。ペリシテびとがわたしに向(む)かっていくさを起(おこ)し、神(かみ)はわたしを離(はな)れて、預言者(よげんしゃ)によっても、夢(ゆめ)によっても、もはやわたしに答(こた)えられないのです。それで、わたしのすべきことを知(し)るために、あなたを呼(よ)びました」。 16サムエルは言(い)った、「主(しゅ)があなたを離(はな)れて、あなたの敵(てき)となられたのに、どうしてあなたはわたしに問(と)うのですか。 17主(しゅ)は、わたしによって語(かた)られたとおりにあなたに行(おこな)われた。主(しゅ)は王国(おうこく)を、あなたの手(て)から裂(さ)きはなして、あなたの隣人(りんじん)であるダビデに与(あた)えられた。 18あなたは主(しゅ)の声(こえ)に聞(き)き従(したが)わず、主(しゅ)の激(はげ)しい怒(いか)りに従(したが)って、アマレクびとを撃(う)ち滅(ほろ)ぼさなかったゆえに、主(しゅ)はこの事(こと)を、この日(ひ)、あなたに行(おこな)われたのである。 19主(しゅ)はまたイスラエルをも、あなたと共(とも)に、ペリシテびとの手(て)に渡(わた)されるであろう。あすは、あなたもあなたの子(こ)らもわたしと一緒(いっしょ)になるであろう。また主(しゅ)はイスラエルの軍勢(ぐんぜい)をもペリシテびとの手(て)に渡(わた)される」。

20そのときサウルは、ただちに、地(ち)に伸(の)び、倒(たお)れ、サムエルの言葉(ことば)のために、ひじょうに恐(おそ)れ、またその力(ちから)はうせてしまった。その一日(にち)一夜(や)、食物(しょくもつ)をとっていなかったからである。 21女(おんな)はサウルのもとにきて、彼(かれ)のおののいているのを見(み)て言(い)った、「あなたのつかえめは、あなたの声(こえ)に聞(き)き従(したが)い、わたしの命(いのち)をかけて、あなたの言(い)われた言葉(ことば)に従(したが)いました。 22それゆえ今(いま)あなたも、つかえめの声(こえ)に聞(き)き従(したが)い、一口(ひとくち)のパンをあなたの前(まえ)にそなえさせてください。あなたはそれをめしあがって力(ちから)をつけ、道(みち)を行(い)ってください」。 23ところがサウルは断(ことわ)って言(い)った、「わたしは食(た)べません」。しかし彼(かれ)のしもべたちも、その女(おんな)もしいてすすめたので、サウルはその言葉(ことば)を聞(き)きいれ、地(ち)から起(お)きあがり、床(とこ)の上(うえ)にすわった。 24その女(おんな)は家(いえ)に肥(こ)えた子(こ)牛(うし)があったので、急(いそ)いでそれをほふり、また麦粉(むぎこ)をとり、こねて、種(たね)入(い)れぬパンを焼(や)き、 25サウルとそのしもべたちの前(まえ)に持(も)ってきたので、彼(かれ)らは食(た)べた。そして彼(かれ)らは立(た)ち上(あ)がって、その夜(よる)のうちに去(さ)った。

第二九章

1さてペリシテびとは、その軍勢(ぐんぜい)をことごとくアペクに集(あつ)めた。イスラエルびとはエズレルにある泉(いずみ)のかたわらに陣(じん)を取(と)った。 2ペリシテびとの君(きみ)たちは、あるいは百人(にん)、あるいは千人(にん)を率(ひき)いて進(すす)み、ダビデとその従者(じゅうしゃ)たちはアキシと共(とも)に、しんがりになって進(すす)んだ。 3その時(とき)、ペリシテびとの君(きみ)たちは言(い)った、「これらのヘブルびとはここで何(なに)をしているのか」。アキシはペリシテびとたちに言(い)った、「これはイスラエルの王(おう)サウルのしもべダビデではないか。彼(かれ)はこの日(ひ)ごろ、この年(とし)ごろ、わたしと共(とも)にいたが、逃(に)げ落(お)ちてきた日(ひ)からきょうまで、わたしは彼(かれ)にあやまちがあったのを見(み)たことがない」。 4しかしペリシテびとの君(きみ)たちは彼(かれ)に向(む)かって怒(いか)った。そしてペリシテびとの君(きみ)たちは彼(かれ)に言(い)った、「この人(ひと)を帰(かえ)らせて、あなたが彼(かれ)を置(お)いたもとの所(ところ)へ行(い)かせなさい。われわれと一緒(いっしょ)に彼(かれ)を戦(たたか)いに下(くだ)らせてはならない。戦(たたか)いの時(とき)、彼(かれ)がわれわれの敵(てき)となるかも知(し)れないからである。この者(もの)は何(なに)をもってその主君(しゅくん)とやわらぐことができようか。ここにいる人々(ひとびと)の首(くび)をもってするほかはあるまい。 5これは、かつて人々(ひとびと)が踊(おど)りのうちに歌(うた)いかわして、
『サウルは千を撃(う)ち殺(ころ)し、
ダビデは万(まん)を撃(う)ち殺(ころ)した』
と言(い)った、あのダビデではないか」。

6そこでアキシはダビデを呼(よ)んで言(い)った、「主(しゅ)は生(い)きておられる。あなたは正(ただ)しい人(ひと)である。あなたがわたしと一緒(いっしょ)に戦(たたか)いに出入(でい)りすることをわたしは良(よ)いと思(おも)っている。それはあなたがわたしの所(ところ)にきた日(ひ)からこの日(ひ)まで、わたしは、あなたに悪(わる)い事(こと)があったのを見(み)たことがないからである。しかしペリシテびとの君(きみ)たちはあなたを良(よ)く言(い)わない。 7それゆえ今(いま)安(やす)らかに帰(かえ)って行(い)きなさい。彼(かれ)らが悪(わる)いと思(おも)うことはしないがよかろう」。 8ダビデはアキシに言(い)った、「しかしわたしが何(なに)をしたというのですか。わたしがあなたに仕(つか)えはじめた日(ひ)からこの日(ひ)までに、あなたはしもべの身(み)に何(なに)を見(み)られたので、わたしは行(い)って、わたしの主君(しゅくん)である王(おう)の敵(てき)と戦(たたか)うことができないのですか」。 9アキシはダビデに答(こた)えた、「わたしは見(み)て、あなたが神(かみ)の使(つかい)のようにりっぱな人(ひと)であることを知(し)っている。しかし、ペリシテびとの君(きみ)たちは、『われわれと一緒(いっしょ)に彼(かれ)を戦(たたか)いに上(のぼ)らせてはならない』と言(い)っている。 10それで、あなたは、一緒(いっしょ)にきたあなたの主君(しゅくん)のしもべたちと共(とも)に朝(あさ)早(はや)く起(お)きなさい。そして朝(あさ)早(はや)く起(お)き、夜(よる)が明(あ)けてから去(さ)りなさい」。 11こうしてダビデとその従者(じゅうしゃ)たちとは共(とも)にペリシテびとの地(ち)へ帰(かえ)ろうと、朝(あさ)早(はや)く起(お)きて出立(しゅったつ)したが、ペリシテびとはエズレルへ上(のぼ)って行(い)った。

第三〇章

1さてダビデとその従者(じゅうしゃ)たちが三日(か)目(め)にチクラグにきた時(とき)、アマレクびとはすでにネゲブとチクラグを襲(おそ)っていた。彼(かれ)らはチクラグを撃(う)ち、火(ひ)をはなってこれを焼(や)き、 2その中(なか)にいた女(おんな)たちおよびすべての者(もの)を捕虜(ほりょ)にし、小(ちい)さい者(もの)をも大(おお)きい者(もの)をも、ひとりも殺(ころ)さずに、引(ひ)いて、その道(みち)に行(い)った。 3ダビデと従者(じゅうしゃ)たちはその町(まち)にきて、町(まち)が火(ひ)で焼(や)かれ、その妻(つま)とむすこ娘(むすめ)らは捕虜(ほりょ)となったのを見(み)た。 4ダビデおよび彼(かれ)と共(とも)にいた民(たみ)は声(こえ)をあげて泣(な)き、ついに泣(な)く力(ちから)もなくなった。 5ダビデのふたりの妻(つま)すなわちエズレルの女(おんな)アヒノアムと、カルメルびとナバルの妻(つま)であったアビガイルも捕虜(ほりょ)になった。 6その時(とき)、ダビデはひじょうに悩(なや)んだ。それは民(たみ)がみなおのおのそのむすこ娘(むすめ)のために心(こころ)を痛(いた)めたため、ダビデを石(いし)で撃(う)とうと言(い)ったからである。しかしダビデはその神(かみ)、主(しゅ)によって自分(じぶん)を力(ちから)づけた。

7ダビデはアヒメレクの子(こ)、祭司(さいし)アビヤタルに、「エポデをわたしのところに持(も)ってきなさい」と言(い)ったので、アビヤタルは、エポデをダビデのところに持(も)ってきた。 8ダビデは主(しゅ)に伺(うかが)いをたてて言(い)った、「わたしはこの軍隊(ぐんたい)のあとを追(お)うべきですか。わたしはそれに追(お)いつくことができましょうか」。主(しゅ)は彼(かれ)に言(い)われた、「追(お)いなさい。あなたは必(かなら)ず追(お)いついて、確(たし)かに救(すく)い出(だ)すことができるであろう」。 9そこでダビデは、一緒(いっしょ)にいた六百人(にん)の者(もの)と共(とも)に出立(しゅったつ)してベソル川(かわ)へ行(い)ったが、あとに残(のこ)る者(もの)はそこにとどまった。 10すなわちダビデは四百人(にん)と共(とも)に追撃(ついげき)をつづけたが、疲(つか)れてベソル川(かわ)を渡(わた)れない者(もの)二百人(にん)はとどまった。

11彼(かれ)らは野(の)で、ひとりのエジプトびとを見(み)て、それをダビデのもとに引(ひ)いてきて、パンを食(た)べさせ、水(みず)を飲(の)ませた。 12また彼(かれ)らはほしいちじくのかたまり一つと、ほしぶどう二ふさを彼(かれ)に与(あた)えた。彼(かれ)は食(た)べて元気(げんき)を回復(かいふく)した。彼(かれ)は三日(か)三夜(よ)、パンを食(た)べず、水(みず)を飲(の)んでいなかったからである。 13ダビデは彼(かれ)に言(い)った、「あなたはだれのものか。どこからきたのか」。彼(かれ)は言(い)った、「わたしはエジプトの若者(わかもの)で、アマレクびとの奴隷(どれい)です。三日(か)前(まえ)にわたしが病気(びょうき)になったので、主人(しゅじん)はわたしを捨(す)てて行(い)きました。 14わたしどもは、ケレテびとのネゲブと、ユダに属(ぞく)する地(ち)と、カレブのネゲブを襲(おそ)い、また火(ひ)でチクラグを焼(や)きはらいました」。 15ダビデは彼(かれ)に言(い)った、「あなたはその軍隊(ぐんたい)のところへわたしを導(みちび)き下(くだ)ってくれるか」。彼(かれ)は言(い)った、「あなたはわたしを殺(ころ)さないこと、またわたしを主人(しゅじん)の手(て)に渡(わた)さないことを、神(かみ)をさしてわたしに誓(ちか)ってください。そうすればあなたをその軍隊(ぐんたい)のところへ導(みちび)き下(くだ)りましょう」。

16彼(かれ)はダビデを導(みちび)き下(くだ)ったが、見(み)よ、彼(かれ)らはペリシテびとの地(ち)とユダの地(ち)から奪(うば)い取(と)ったさまざまの多(おお)くのぶんどり物(もの)のゆえに、食(く)い飲(の)み、かつ踊(おど)りながら、地(ち)のおもてにあまねく散(ち)りひろがっていた。 17ダビデは夕(ゆう)ぐれから翌日(よくじつ)の夕方(ゆうがた)まで、彼(かれ)らを撃(う)ったので、らくだに乗(の)って逃(に)げた四百人(にん)の若者(わかもの)たちのほかには、ひとりものがれた者(もの)はなかった。 18こうしてダビデはアマレクびとが奪(うば)い取(と)ったものをみな取(と)りもどした。またダビデはそのふたりの妻(つま)を救(すく)い出(だ)した。 19そして彼(かれ)らに属(ぞく)するものは、小(ちい)さいものも大(おお)きいものも、むすこも娘(むすめ)もぶんどり物(もの)も、アマレクびとが奪(うば)い去(さ)った物(もの)は何(なに)をも失(うしな)わないで、ダビデがみな取(と)りもどした。 20ダビデはまたすべての羊(ひつじ)と牛(うし)を取(と)った。人々(ひとびと)はこれらの家畜(かちく)を彼(かれ)の前(まえ)に追(お)って行(い)きながら、「これはダビデのぶんどり物(もの)だ」と言(い)った。

21そしてダビデが、あの疲(つか)れてダビデについて行(い)くことができずに、ベソル川(かわ)のほとりにとどまっていた二百人(にん)の者(もの)のところへきた時(とき)、彼(かれ)らは出(で)てきてダビデを迎(むか)え、またダビデと共(とも)にいる民(たみ)を迎(むか)えた。ダビデは民(たみ)に近(ちか)づいてその安否(あんぴ)を問(と)うた。 22そのときダビデと共(とも)に行(い)った人々(ひとびと)のうちで、悪(わる)く、かつよこしまな者(もの)どもはみな言(い)った、「彼(かれ)らはわれわれと共(とも)に行(い)かなかったのだから、われわれはその人々(ひとびと)にわれわれの取(と)りもどしたぶんどり物(もの)を分(わ)け与(あた)えることはできない。ただおのおのにその妻子(さいし)を与(あた)えて、連(つ)れて行(い)かせましょう」。 23しかしダビデは言(い)った、「兄弟(きょうだい)たちよ、主(しゅ)はわれわれを守(まも)って、攻(せ)めてきた軍隊(ぐんたい)をわれわれの手(て)に渡(わた)された。その主(しゅ)が賜(たま)わったものを、あなたがたはそのようにしてはならない。 24だれがこの事(こと)について、あなたがたに聞(き)き従(したが)いますか。戦(たたか)いに下(くだ)って行(い)った者(もの)の分(わ)け前(まえ)と、荷物(にもつ)のかたわらにとどまっていた者(もの)の分(わ)け前(まえ)を同様(どうよう)にしなければならない。彼(かれ)らはひとしく分(わ)け前(まえ)を受(う)けるべきである」。 25この日(ひ)以来(いらい)、ダビデはこれをイスラエルの定(さだ)めとし、おきてとして今日(こんにち)に及(およ)んでいる。

26ダビデはチクラグにきて、そのぶんどり物(もの)の一部(いちぶ)をユダの長老(ちょうろう)である友人(ゆうじん)たちにおくって言(い)った、「これは主(しゅ)の敵(てき)から取(と)ったぶんどり物(もの)のうちからあなたがたにおくる贈(おく)り物(もの)である」。 27そのおくり先(さき)は、ベテルにいる人々(ひとびと)、ネゲブのラモテにいる人々(ひとびと)、ヤッテルにいる人々(ひとびと)、 28アロエルにいる人々(ひとびと)、シフモテにいる人々(ひとびと)、エシテモアにいる人々(ひとびと)、ラカルにいる人々(ひとびと)、 29エラメルびとの町々(まちまち)にいる人々(ひとびと)、ケニびとの町々(まちまち)にいる人々(ひとびと)、 30ホルマにいる人々(ひとびと)、ボラシャンにいる人々(ひとびと)、アタクにいる人々(ひとびと)、 31ヘブロンにいる人々(ひとびと)、およびダビデとその従者(じゅうしゃ)たちが、さまよい歩(ある)いたすべての所(ところ)にいる人々(ひとびと)であった。

第三一章

1さてペリシテびとはイスラエルと戦(たたか)った。イスラエルの人々(ひとびと)はペリシテびとの前(まえ)から逃(に)げ、多(おお)くの者(もの)は傷(きず)ついてギルボア山(やま)にたおれた。 2ペリシテびとはサウルとその子(こ)らに攻(せ)め寄(よ)り、そしてペリシテびとはサウルの子(こ)ヨナタン、アビナダブ、およびマルキシュアを殺(ころ)した。 3戦(たたか)いは激(はげ)しくサウルに迫(せま)り、弓(ゆみ)を射(い)る者(もの)どもがサウルを見(み)つけて、彼(かれ)を射(い)たので、サウルは射(い)る者(もの)たちにひどい傷(きず)を負(お)わされた。 4そこでサウルはその武器(ぶき)を執(と)る者(もの)に言(い)った、「つるぎを抜(ぬ)き、それをもってわたしを刺(さ)せ。さもないと、これらの無(む)割礼(かつれい)の者(もの)どもがきて、わたしを刺(さ)し、わたしをなぶり殺(ごろ)しにするであろう」。しかしその武器(ぶき)を執(と)る者(もの)は、ひじょうに恐(おそ)れて、それに応(おう)じなかったので、サウルは、つるぎを執(と)って、その上(うえ)に伏(ふ)した。 5武器(ぶき)を執(と)る者(もの)はサウルが死(し)んだのを見(み)て、自分(じぶん)もまたつるぎの上(うえ)に伏(ふ)して、彼(かれ)と共(とも)に死(し)んだ。 6こうしてサウルとその三人(にん)の子(こ)たち、およびサウルの武器(ぶき)を執(と)る者(もの)、ならびにその従者(じゅうしゃ)たちは皆(みな)、この日(ひ)共(とも)に死(し)んだ。 7イスラエルの人々(ひとびと)で、谷(たに)の向(む)こう側(がわ)、およびヨルダンの向(む)こう側(がわ)にいる者(もの)が、イスラエルの人々(ひとびと)の逃(に)げるのを見(み)、またサウルとその子(こ)たちの死(し)んだのを見(み)て町々(まちまち)を捨(す)てて逃(に)げたので、ペリシテびとはきてその中(なか)に住(す)んだ。

8あくる日(ひ)、ペリシテびとは殺(ころ)された者(もの)から、はぎ取(と)るためにきたが、サウルとその三人(にん)の子(こ)たちがギルボア山(やま)にたおれているのを見(み)つけた。 9彼(かれ)らはサウルの首(くび)を切(き)り、そのよろいをはぎ取(と)り、ペリシテびとの全(ぜん)地(ち)に人(ひと)をつかわして、この良(よ)い知(し)らせを、その偶像(ぐうぞう)と民(たみ)とに伝(つた)えさせた。 10また彼(かれ)らは、そのよろいをアシタロテの神殿(しんでん)に置(お)き、彼(かれ)のからだをベテシャンの城壁(じょうへき)にくぎづけにした。 11ヤベシ・ギレアデの住民(じゅうみん)たちは、ペリシテびとがサウルにした事(こと)を聞(き)いて、 12勇士(ゆうし)たちはみな立(た)ち、夜(よ)もすがら行(い)って、サウルのからだと、その子(こ)たちのからだをベテシャンの城壁(じょうへき)から取(と)りおろし、ヤベシにきて、これをそこで焼(や)き、 13その骨(ほね)を取(と)って、ヤベシのぎょりゅうの木(き)の下(した)に葬(ほうむ)り、七日(なぬか)の間(あいだ)、断食(だんじき)した。