サムエル記下

第一章

1サウルが死(し)んだ後(のち)、ダビデはアマレクびとを撃(う)って帰(かえ)り、ふつかの間(あいだ)チクラグにとどまっていたが、 2三日(か)目(め)となって、ひとりの人(ひと)が、その着物(きもの)を裂(さ)き、頭(あたま)に土(つち)をかぶって、サウルの陣営(じんえい)からきた。そしてダビデのもとにきて、地(ち)に伏(ふ)して拝(はい)した。 3ダビデは彼(かれ)に言(い)った、「あなたはどこからきたのか」。彼(かれ)はダビデに言(い)った、「わたしはイスラエルの陣営(じんえい)から、のがれてきたのです」。 4ダビデは彼(かれ)に言(い)った、「様子(ようす)はどうであったか話(はな)しなさい」。彼(かれ)は答(こた)えた、「民(たみ)は戦(たたか)いから逃(に)げ、民(たみ)の多(おお)くは倒(たお)れて死(し)に、サウルとその子(こ)ヨナタンもまた死(し)にました」。 5ダビデは自分(じぶん)と話(はな)している若者(わかもの)に言(い)った、「あなたはサウルとその子(こ)ヨナタンが死(し)んだのを、どうして知(し)ったのか」。 6彼(かれ)に話(はな)している若者(わかもの)は言(い)った、「わたしは、はからずも、ギルボア山(やま)にいましたが、サウルはそのやりによりかかっており、戦車(せんしゃ)と騎兵(きへい)とが彼(かれ)に攻(せ)め寄(よ)ろうとしていました。 7その時(とき)、彼(かれ)はうしろを振(ふ)り向(む)いてわたしを見(み)、わたしを呼(よ)びましたので、『ここにいます』とわたしは答(こた)えました。 8彼(かれ)は『おまえはだれか』と言(い)いましたので、『アマレクびとです』と答(こた)えました。 9彼(かれ)はまたわたしに言(い)いました、『そばにきて殺(ころ)してください。わたしは苦(くる)しみに耐(た)えない。まだ命(いのち)があるからです』。 10そこで、わたしはそのそばにいって彼(かれ)を殺(ころ)しました。彼(かれ)がすでに倒(たお)れて、生(い)きることのできないのを知(し)ったからです。そしてわたしは彼(かれ)の頭(あたま)にあった冠(かんむり)と、腕(うで)につけていた腕輪(うでわ)とを取(と)って、それをわが主(しゅ)のもとに携(たずさ)えてきたのです」。

11そのときダビデは自分(じぶん)の着物(きもの)をつかんでそれを裂(さ)き、彼(かれ)と共(とも)にいた人々(ひとびと)も皆(みな)同(おな)じようにした。 12彼(かれ)らはサウルのため、またその子(こ)ヨナタンのため、また主(しゅ)の民(たみ)のため、またイスラエルの家(いえ)のために悲(かな)しみ泣(な)いて、夕暮(ゆうぐれ)まで食(しょく)を断(た)った。それは彼(かれ)らがつるぎに倒(たお)れたからである。 13ダビデは自分(じぶん)と話(はな)していた若者(わかもの)に言(い)った、「あなたはどこの人(ひと)ですか」。彼(かれ)は言(い)った、「アマレクびとで、寄留(きりゅう)の他国(たこく)人(じん)の子(こ)です」。 14ダビデはまた彼(かれ)に言(い)った、「どうしてあなたは手(て)を伸(の)べて主(しゅ)の油(あぶら)を注(そそ)がれた者(もの)を殺(ころ)すことを恐(おそ)れなかったのですか」。 15ダビデはひとりの若者(わかもの)を呼(よ)び、「近寄(ちかよ)って彼(かれ)を撃(う)て」と言(い)った。そこで彼(かれ)を撃(う)ったので死(し)んだ。 16ダビデは彼(かれ)に言(い)った、「あなたの流(なが)した血(ち)の責(せ)めはあなたに帰(き)する。あなたが自分(じぶん)の口(くち)から、『わたしは主(しゅ)の油(あぶら)を注(そそ)がれた者(もの)を殺(ころ)した』と言(い)って、自身(じしん)にむかって証拠(しょうこ)を立(た)てたからである」。

17ダビデはこの悲(かな)しみの歌(うた)をもって、サウルとその子(こ)ヨナタンのために哀悼(あいとう)した。―― 18これは、ユダの人々(ひとびと)に教(おし)えるための弓(ゆみ)の歌(うた)で、ヤシャルの書(しょ)にしるされている。――彼(かれ)は言(い)った、
19「イスラエルよ、あなたの栄光(えいこう)は、
あなたの高(たか)き所(ところ)で殺(ころ)された。
ああ、勇士(ゆうし)たちは、ついに倒(たお)れた。
20ガテにこの事(こと)を告(つ)げてはいけない。
アシケロンのちまたに伝(つた)えてはならない。
おそらくはペリシテびとの娘(むすめ)たちが喜(よろこ)び、
割礼(かつれい)なき者(もの)の娘(むすめ)たちが勝(か)ちほこるであろう。
21ギルボアの山(やま)よ、
露(つゆ)はおまえの上(うえ)におりるな。
死(し)の野(の)よ、
雨(あめ)もおまえの上(うえ)に降(ふ)るな。
その所(ところ)に勇士(ゆうし)たちの盾(たて)は捨(す)てられ、
サウルの盾(たて)は油(あぶら)を塗(ぬ)らずに捨(す)てられた。
22殺(ころ)した者(もの)の血(ち)を飲(の)まずには、
ヨナタンの弓(ゆみ)は退(しりぞ)かず、
勇士(ゆうし)の脂肪(しぼう)を食(た)べないでは、
サウルのつるぎは、むなしくは帰(かえ)らなかった。
23サウルとヨナタンとは、愛(あい)され、かつ喜(よろこ)ばれた。
彼(かれ)らは生(い)きるにも、死(し)ぬにも離(はな)れず、
わしよりも早(はや)く、
ししよりも強(つよ)かった。
24イスラエルの娘(むすめ)たちよ、サウルのために泣(な)け。
彼(かれ)は緋色(ひいろ)の着物(きもの)をもって、
はなやかにあなたがたを装(よそお)い、
あなたがたの着物(きもの)に金(きん)の飾(かざ)りをつけた。
25ああ、勇士(ゆうし)たちは戦(たたか)いのさなかに倒(たお)れた。
ヨナタンは、あなたの高(たか)き所(ところ)で殺(ころ)された。
26わが兄弟(きょうだい)ヨナタンよ、あなたのためわたしは悲(かな)しむ。
あなたはわたしにとって、いとも楽(たの)しい者(もの)であった。
あなたがわたしを愛(あい)するのは世(よ)の常(つね)のようでなく、
女(おんな)の愛(あい)にもまさっていた。
27ああ、勇士(ゆうし)たちは倒(たお)れた。
戦(たたか)いの器(うつわ)はうせた」。

第二章

1この後(のち)、ダビデは主(しゅ)に問(と)うて言(い)った、「わたしはユダの一つの町(まち)に上(のぼ)るべきでしょうか」。主(しゅ)は彼(かれ)に言(い)われた、「上(のぼ)りなさい」。ダビデは言(い)った、「どこへ上(のぼ)るべきでしょうか」。主(しゅ)は言(い)われた、「ヘブロンへ」。 2そこでダビデはその所(ところ)へ上(のぼ)った。彼(かれ)のふたりの妻(つま)、エズレルの女(おんな)アヒノアムと、カルメルびとナバルの妻(つま)であったアビガイルも上(のぼ)った。 3ダビデはまた自分(じぶん)と共(とも)にいた人々(ひとびと)を、皆(みな)その家族(かぞく)と共(とも)に連(つ)れて上(のぼ)った。そして彼(かれ)らはヘブロンの町々(まちまち)に住(す)んだ。 4時(とき)にユダの人々(ひとびと)がきて、その所(ところ)でダビデに油(あぶら)を注(そそ)ぎ、ユダの家(いえ)の王(おう)とした。

人々(ひとびと)がダビデに告(つ)げて、「サウルを葬(ほうむ)ったのはヤベシ・ギレアデの人々(ひとびと)である」と言(い)ったので、 5ダビデは使者(ししゃ)をヤベシ・ギレアデの人々(ひとびと)につかわして彼(かれ)らに言(い)った、「あなたがたは、主君(しゅくん)サウルにこの忠誠(ちゅうせい)をあらわして彼(かれ)を葬(ほうむ)った。どうぞ主(しゅ)があなたがたを祝福(しゅくふく)されるように。 6どうぞ主(しゅ)がいまあなたがたに、いつくしみと真実(しんじつ)を示(しめ)されるように。あなたがたが、この事(こと)をしたので、わたしもまたあなたがたに好意(こうい)を示(しめ)すであろう。 7今(いま)あなたがたは手(て)を強(つよ)くし、雄々(おお)しくあれ。あなたがたの主君(しゅくん)サウルは死(し)に、ユダの家(いえ)がわたしに油(あぶら)を注(そそ)いで、彼(かれ)らの王(おう)としたからである」。

8さてサウルの軍(ぐん)の長(ちょう)、ネルの子(こ)アブネルは、さきにサウルの子(こ)イシボセテを取(と)り、マハナイムに連(つ)れて渡(わた)り、 9彼(かれ)をギレアデ、アシュルびと、エズレル、エフライム、ベニヤミンおよび全(ぜん)イスラエルの王(おう)とした。 10サウルの子(こ)イシボセテはイスラエルの王(おう)となった時(とき)、四十歳(さい)であって、二年(ねん)の間(あいだ)、世(よ)を治(おさ)めたが、ユダの家(いえ)はダビデに従(したが)った。 11ダビデがヘブロンにいてユダの家(いえ)の王(おう)であった日数(にっすう)は七年(ねん)と六か月(げつ)であった。

12ネルの子(こ)アブネル、およびサウルの子(こ)イシボセテの家来(けらい)たちはマハナイムを出(で)てギベオンへ行(い)った。 13ゼルヤの子(こ)ヨアブとダビデの家来(けらい)たちも出(で)ていって、ギベオンの池(いけ)のそばで彼(かれ)らと出会(であ)い、一方(いっぽう)は池(いけ)のこちら側(がわ)に、一方(いっぽう)は池(いけ)のあちら側(がわ)にすわった。 14アブネルはヨアブに言(い)った、「さあ、若者(わかもの)たちを立(た)たせて、われわれの前(まえ)で勝負(しょうぶ)をさせよう」。ヨアブは言(い)った、「彼(かれ)らを立(た)たせよう」。 15こうしてサウルの子(こ)イシボセテとベニヤミンびととのために十二人(にん)、およびダビデの家来(けらい)たち十二人(にん)を数(かぞ)えて出(だ)した。彼(かれ)らは立(た)って進(すす)み、 16おのおの相手(あいて)の頭(あたま)を捕(とら)え、つるぎを相手(あいて)のわき腹(ばら)に刺(さ)し、こうして彼(かれ)らは共(とも)に倒(たお)れた。それゆえ、その所(ところ)はヘルカテ・ハヅリムと呼(よ)ばれた。それはギベオンにある。 17その日(ひ)、戦(たたか)いはひじょうに激(はげ)しく、アブネルとイスラエルの人々(ひとびと)はダビデの家来(けらい)たちの前(まえ)に敗(やぶ)れた。

18その所(ところ)にゼルヤの三人(にん)の子(こ)、ヨアブ、アビシャイ、およびアサヘルがいたが、アサヘルは足(あし)の早(はや)いこと、野(の)のかもしかのようであった。 19アサヘルはアブネルのあとを追(お)っていったが、行(い)くのに右(みぎ)にも左(ひだり)にも曲(まが)ることなく、アブネルのあとに走(はし)った。 20アブネルは後(うしろ)をふりむいて言(い)った、「あなたはアサヘルであったか」。アサヘルは答(こた)えた、「わたしです」。 21アブネルは彼(かれ)に言(い)った、「右(みぎ)か左(ひだり)に曲(まが)って、若者(わかもの)のひとりを捕(とら)え、そのよろいを奪(うば)いなさい」。しかしアサヘルはアブネルを追(お)うことをやめず、ほかに向(む)かおうともしなかった。 22アブネルはふたたびアサヘルに言(い)った、「わたしを追(お)うことをやめて、ほかに向(む)かいなさい。あなたを地(ち)に撃(う)ち倒(たお)すことなど、どうしてわたしにできようか。それをすれば、わたしは、どうしてあなたの兄(あに)ヨアブに顔(かお)を合(あ)わせることができようか」。 23それでもなお彼(かれ)は、ほかに向(む)かうことを拒(こば)んだので、アブネルは、やりの石(いし)突(つ)きで彼(かれ)の腹(はら)を突(つ)いたので、やりはその背中(せなか)に出(で)た。彼(かれ)はそこに倒(たお)れて、その場(ば)で死(し)んだ。そしてアサヘルが倒(たお)れて死(し)んでいる場所(ばしょ)に来(く)る者(もの)は皆(みな)立(た)ちとどまった。

24しかしヨアブとアビシャイとは、なおアブネルのあとを追(お)ったが、彼(かれ)らがギベオンの荒野(あらの)の道(みち)のほとり、ギアの前(まえ)にあるアンマの山(やま)にきた時(とき)、日(ひ)は暮(く)れた。 25ベニヤミンの人々(ひとびと)はアブネルのあとについてきて、集(あつ)まり、一隊(たい)となって、一つの山(やま)の頂(いただき)に立(た)った。 26その時(とき)アブネルはヨアブに呼(よ)ばわって言(い)った、「いつまでもつるぎをもって滅(ほろ)ぼそうとするのか。あなたはその結果(けっか)の悲惨(ひさん)なのを知(し)らないのか。いつまで民(たみ)にその兄弟(きょうだい)を追(お)うことをやめよと命(めい)じないのか」。 27ヨアブは言(い)った、「神(かみ)は生(い)きておられる。もしあなたが言(い)いださなかったならば、民(たみ)はおのおのその兄弟(きょうだい)を追(お)わずに、朝(あさ)のうちに去(さ)っていたであろう」。 28こうしてヨアブは角笛(つのぶえ)を吹(ふ)いたので、民(たみ)はみな立(た)ちとどまって、もはやイスラエルのあとを追(お)わず、また重(かさ)ねて戦(たたか)わなかった。

29アブネルとその従者(じゅうしゃ)たちは、夜(よ)もすがら、アラバを通(とお)って行(い)き、ヨルダンを渡(わた)り、昼(ひる)まで行進(こうしん)を続(つづ)けてマハナイムに着(つ)いた。 30ヨアブはアブネルを追(お)うことをやめて帰(かえ)り、民(たみ)をみな集(あつ)めたが、ダビデの家来(けらい)たち十九人(ひと)とアサヘルとが見当(みあた)らなかった。 31しかし、ダビデの家来(けらい)たちは、アブネルの従者(じゅうしゃ)であるベニヤミンの人々(ひとびと)三百六十人(にん)を撃(う)ち殺(ころ)した。 32人々(ひとびと)はアサヘルを取(と)り上(あ)げてベツレヘムにあるその父(ちち)の墓(はか)に葬(ほうむ)った。ヨアブとその従者(じゅうしゃ)たちは、夜(よ)もすがら行(い)って、夜明(よあ)けにヘブロンに着(つ)いた。

第三章

1サウルの家(いえ)とダビデの家(いえ)との間(あいだ)の戦争(せんそう)は久(ひさ)しく続(つづ)き、ダビデはますます強(つよ)くなり、サウルの家(いえ)はますます弱(よわ)くなった。

2ヘブロンでダビデに男(おとこ)の子(こ)が生(うま)れた。彼(かれ)の長子(ちょうし)はエズレルの女(おんな)アヒノアムの産(う)んだアムノン、 3その次(つぎ)はカルメルびとナバルの妻(つま)であったアビガイルの産(う)んだキレアブ、第(だい)三はゲシュルの王(おう)タルマイの娘(むすめ)マアカの子(こ)アブサロム、 4第(だい)四はハギテの子(こ)アドニヤ、第(だい)五はアビタルの子(こ)シパテヤ、 5第(だい)六はダビデの妻(つま)エグラの産(う)んだイテレアム。これらの子(こ)がヘブロンでダビデに生(うま)れた。

6サウルの家(いえ)とダビデの家(いえ)とが戦(たたか)いを続(つづ)けている間(あいだ)に、アブネルはサウルの家(いえ)で、強(つよ)くなってきた。 7さてサウルには、ひとりのそばめがあった。その名(な)をリヅパといい、アヤの娘(むすめ)であったが、イシボセテはアブネルに言(い)った、「あなたはなぜわたしの父(ちち)のそばめのところにはいったのですか」。 8アブネルはイシボセテの言葉(ことば)を聞(き)き、非常(ひじょう)に怒(いか)って言(い)った、「わたしはユダの犬(いぬ)のかしらですか。わたしはきょう、あなたの父(ちち)サウルの家(いえ)と、その兄弟(きょうだい)と、その友人(ゆうじん)とに忠誠(ちゅうせい)をあらわして、あなたをダビデの手(て)に渡(わた)すことをしなかったのに、あなたはきょう、女(おんな)の事(こと)のあやまちを挙(あ)げてわたしを責(せ)められる。 9主(しゅ)がダビデに誓(ちか)われたことを、わたしが彼(かれ)のためになし遂(と)げないならば、神(かみ)がアブネルをいくえにも罰(ばっ)しられるように。 10すなわち王国(おうこく)をサウルの家(いえ)から移(うつ)し、ダビデの位(くらい)をダンからベエルシバに至(いた)るまで、イスラエルとユダの上(うえ)に立(た)たせられるであろう」。 11イシボセテはアブネルを恐(おそ)れたので、ひと言(こと)も彼(かれ)に答(こた)えることができなかった。

12アブネルはヘブロンにいるダビデのもとに使者(ししゃ)をつかわして言(い)った、「国(くに)はだれのものですか。わたしと契約(けいやく)を結(むす)びなさい。わたしはあなたに力添(ちからぞ)えして、イスラエルをことごとくあなたのものにしましょう」。 13ダビデは言(い)った、「よろしい。わたしは、あなたと契約(けいやく)を結(むす)びましょう。ただし一つの事(こと)をあなたに求(もと)めます。あなたがきてわたしの顔(かお)を見(み)るとき、まずサウルの娘(むすめ)ミカルを連(つ)れて来(く)るのでなければ、わたしの顔(かお)を見(み)ることはできません」。 14それからダビデは使者(ししゃ)をサウルの子(こ)イシボセテにつかわして言(い)った、「ペリシテびとの陽(よう)の皮(かわ)一百をもってめとったわたしの妻(つま)ミカルを引(ひ)き渡(わた)しなさい」。 15そこでイシボセテは人(ひと)をやって彼女(かのじょ)をその夫(おっと)、ライシの子(こ)パルテエルから取(と)ったので、 16その夫(おっと)は彼女(かのじょ)と共(とも)に行(い)き、泣(な)きながら彼女(かのじょ)のあとについて、バホリムまで行(い)ったが、アブネルが彼(かれ)に「帰(かえ)って行(い)け」と言(い)ったので彼(かれ)は帰(かえ)った。

17アブネルはイスラエルの長老(ちょうろう)たちと協議(きょうぎ)して言(い)った、「あなたがたは以前(いぜん)からダビデをあなたがたの王(おう)とすることを求(もと)めていましたが、 18今(いま)それをしなさい。主(しゅ)がダビデについて、『わたしのしもべダビデの手(て)によって、わたしの民(たみ)イスラエルをペリシテびとの手(て)、およびもろもろの敵(てき)の手(て)から救(すく)い出(だ)すであろう』と言(い)われたからです」。 19アブネルはまたベニヤミンにも語(かた)った。そしてアブネルは、イスラエルとベニヤミンの全家(ぜんか)が良(よ)いと思(おも)うことをみな、ヘブロンでダビデに告(つ)げようとして出発(しゅっぱつ)した。

20アブネルが二十人(にん)を従(したが)えてヘブロンにいるダビデのもとに行(い)った時(とき)、ダビデはアブネルと彼(かれ)に従(したが)っている従者(じゅうしゃ)たちのために酒宴(しゅえん)を設(もう)けた。 21アブネルはダビデに言(い)った、「わたしは立(た)って行(い)き、イスラエルをことごとく、わが主(しゅ)、王(おう)のもとに集(あつ)めて、あなたと契約(けいやく)を結(むす)ばせ、あなたの望(のぞ)むものをことごとく治(おさ)められるようにいたしましょう」。こうしてダビデはアブネルを送(おく)り帰(かえ)らせたので彼(かれ)は安全(あんぜん)に去(さ)って行(い)った。

22ちょうどその時(とき)、ダビデの家来(けらい)たちはヨアブと共(とも)に多(おお)くのぶんどり物(もの)を携(たずさ)えて略奪(りゃくだつ)から帰(かえ)ってきた。しかしアブネルはヘブロンのダビデのもとにはいなかった。ダビデが彼(かれ)を帰(かえ)らせて彼(かれ)が安全(あんぜん)に去(さ)ったからである。 23ヨアブおよび彼(かれ)と共(とも)にいた軍勢(ぐんぜい)がみな帰(かえ)ってきたとき、人々(ひとびと)はヨアブに言(い)った、「ネルの子(こ)アブネルが王(おう)のもとにきたが、王(おう)が彼(かれ)を帰(かえ)らせたので彼(かれ)は安全(あんぜん)に去(さ)った」。 24そこでヨアブは王(おう)のもとに行(い)って言(い)った、「あなたは何(なに)をなさったのですか。アブネルがあなたの所(ところ)にきたのに、あなたはどうして、彼(かれ)を返(かえ)し去(さ)らせられたのですか。 25ネルの子(こ)アブネルがあなたを欺(あざむ)くためにきたこと、そしてあなたの出入(でい)りを知(し)り、またあなたのなさっていることを、ことごとく知(し)るためにきたことをあなたはごぞんじです」。

26ヨアブはダビデの所(ところ)から出(で)てきて、使者(ししゃ)をつかわし、アブネルを追(お)わせたので、彼(かれ)らはシラの井戸(いど)から彼(かれ)を連(つ)れて帰(かえ)った。しかしダビデはその事(こと)を知(し)らなかった。 27アブネルがヘブロンに帰(かえ)ってきたとき、ヨアブはひそかに語(かた)ろうといって彼(かれ)を門(もん)のうちに連(つ)れて行(い)き、その所(ところ)で彼(かれ)の腹(はら)を刺(さ)して死(し)なせ、自分(じぶん)の兄弟(きょうだい)アサヘルの血(ち)を報(むく)いた。 28その後(のち)ダビデはこの事(こと)を聞(き)いて言(い)った、「わたしとわたしの王国(おうこく)とは、ネルの子(こ)アブネルの血(ち)に関(かん)して、主(しゅ)の前(まえ)に永久(えいきゅう)に罪(つみ)はない。 29どうぞ、その罪(つみ)がヨアブの頭(あたま)と、その父(ちち)の全家(ぜんか)に帰(き)するように。またヨアブの家(いえ)には流出(りゅうしゅつ)を病(や)む者(もの)、らい病人(びょうにん)、つえにたよる者(もの)、つるぎに倒(たお)れる者(もの)、または食物(しょくもつ)の乏(とぼ)しい者(もの)が絶(た)えないように」。 30こうしてヨアブとその弟(おとうと)アビシャイとはアブネルを殺(ころ)したが、それは彼(かれ)がギベオンの戦(たたか)いで彼(かれ)らの兄弟(きょうだい)アサヘルを殺(ころ)したためであった。

31ダビデはヨアブおよび自分(じぶん)と共(とも)にいるすべての民(たみ)に言(い)った、「あなたがたは着物(きもの)を裂(さ)き、荒布(あらぬの)をまとい、アブネルの前(まえ)に嘆(なげ)きながら行(い)きなさい」。そしてダビデ王(おう)はその棺(かん)のあとに従(したが)った。 32人々(ひとびと)はアブネルをヘブロンに葬(ほうむ)った。王(おう)はアブネルの墓(はか)で声(こえ)をあげて泣(な)き、民(たみ)もみな泣(な)いた。 33王(おう)はアブネルのために悲(かな)しみの歌(うた)を作(つく)って言(い)った、
「愚(おろ)かな人(ひと)の死(し)ぬように、
アブネルがどうして死(し)んだのか。
34あなたの手(て)は縛(しば)られず、
足(あし)には足(あし)かせもかけられないのに、
悪人(あくにん)の前(まえ)に倒(たお)れる人(ひと)のように、
あなたは倒(たお)れた」。
そして民(たみ)は皆(みな)、ふたたび彼(かれ)のために泣(な)いた。 35民(たみ)はみなきて、日(ひ)のあるうちに、ダビデにパンを食(た)べさせようとしたが、ダビデは誓(ちか)って言(い)った、「もしわたしが日(ひ)の入(い)る前(まえ)に、パンでも、ほかのものでも味(あじ)わうならば、神(かみ)がわたしをいくえにも罰(ばっ)しられるように」。 36民(たみ)はみなそれを見(み)て満足(まんぞく)した。すべて王(おう)のすることは民(たみ)を満足(まんぞく)させた。 37その日(ひ)すべての民(たみ)およびイスラエルは皆(みな)、ネルの子(こ)アブネルを殺(ころ)したのは、王(おう)の意思(いし)によるものでないことを知(し)った。 38王(おう)はその家来(けらい)たちに言(い)った、「この日(ひ)イスラエルで、ひとりの偉大(いだい)なる将軍(しょうぐん)が倒(たお)れたのをあなたがたは知(し)らないのか。 39わたしは油(あぶら)を注(そそ)がれた王(おう)であるけれども、今日(こんにち)なお弱(よわ)い。ゼルヤの子(こ)であるこれらの人々(ひとびと)はわたしの手(て)におえない。どうぞ主(しゅ)が悪(あく)を行(おこな)う者(もの)に、その悪(あく)にしたがって報(むく)いられるように」。

第四章

1サウルの子(こ)イシボセテは、アブネルがヘブロンで死(し)んだことを聞(き)いて、その力(ちから)を失(うしな)い、イスラエルは皆(みな)あわてた。 2サウルの子(こ)イシボセテにはふたりの略奪(りゃくだつ)隊(たい)の隊長(たいちょう)があった。ひとりの名(な)はバアナ、他(た)のひとりの名(な)はレカブといって、ベニヤミンの子孫(しそん)であるベロテびとリンモンの子(こ)たちであった。(それはベロテもまたベニヤミンのうちに数(かぞ)えられているからである。 3ベロテびとはギッタイムに逃(に)げていって、今日(こんにち)までその所(ところ)に寄留(きりゅう)している)。

4さてサウルの子(こ)ヨナタンに足(あし)のなえた子(こ)がひとりあった。エズレルからサウルとヨナタンの事(こと)の知(し)らせがきた時(とき)、彼(かれ)は五歳(さい)であった。うばが彼(かれ)を抱(だ)いて逃(に)げたが、急(いそ)いで逃(に)げる時(とき)、その子(こ)は落(お)ちて足(あし)なえとなった。その名(な)はメピボセテといった。

5ベロテびとリンモンの子(こ)たち、レカブとバアナとは出立(しゅったつ)して、日(ひ)の暑(あつ)いころイシボセテの家(いえ)にきたが、イシボセテは昼寝(ひるね)をしていた。 6家(いえ)の門(もん)を守(まも)る女(おんな)は麦(むぎ)をあおぎ分(わ)けていたが、眠(ねむ)くなって寝(ね)てしまった。そこでレカブとその兄弟(きょうだい)バアナは、ひそかに中(なか)にはいった。 7彼(かれ)らが家(いえ)にはいった時(とき)、イシボセテは寝室(しんしつ)で床(ゆか)の上(うえ)に寝(ね)ていたので、彼(かれ)らはそれを撃(う)って殺(ころ)し、その首(くび)をはね、その首(くび)を取(と)って、よもすがらアラバの道(みち)を行(い)き、 8イシボセテの首(くび)をヘブロンにいるダビデのもとに携(たずさ)えて行(い)って王(おう)に言(い)った、「あなたの命(いのち)を求(もと)めたあなたの敵(てき)サウルの子(こ)イシボセテの首(くび)です。主(しゅ)はきょう、わが君(きみ)、王(おう)のためにサウルとそのすえとに報復(ほうふく)されました」。 9ダビデはベロテびとリンモンの子(こ)レカブとその兄弟(きょうだい)バアナに答(こた)えた、「わたしの命(いのち)を、もろもろの苦難(くなん)から救(すく)われた主(しゅ)は生(い)きておられる。 10わたしはかつて、人(ひと)がわたしに告(つ)げて、『見(み)よ、サウルは死(し)んだ』と言(い)って、みずから良(よ)いおとずれを伝(つた)える者(もの)と思(おも)っていた者(もの)を捕(とら)えてチクラグで殺(ころ)し、そのおとずれに報(むく)いたのだ。 11悪人(あくにん)が正(ただ)しい人(ひと)をその家(いえ)の床(ゆか)の上(うえ)で殺(ころ)したときは、なおさらのことだ。今(いま)わたしが、彼(かれ)の血(ち)を流(なが)した罪(つみ)を報(むく)い、あなたがたを、この地(ち)から絶(た)ち滅(ほろ)ぼさないでおくであろうか」。 12そしてダビデは若者(わかもの)たちに命(めい)じたので、若者(わかもの)たちは彼(かれ)らを殺(ころ)し、その手足(てあし)を切(き)り離(はな)し、ヘブロンの池(いけ)のほとりで木(き)に掛(か)けた。人々(ひとびと)はイシボセテの首(くび)を持(も)って行(い)って、ヘブロンにあるアブネルの墓(はか)に葬(ほうむ)った。

第五章

1イスラエルのすべての部族(ぶぞく)はヘブロンにいるダビデのもとにきて言(い)った、「われわれは、あなたの骨肉(こつにく)です。 2先(さき)にサウルがわれわれの王(おう)であった時(とき)にも、あなたはイスラエルを率(ひき)いて出入(でい)りされました。そして主(しゅ)はあなたに、『あなたはわたしの民(たみ)イスラエルを牧(ぼく)するであろう。またあなたはイスラエルの君(きみ)となるであろう』と言(い)われました」。 3このようにイスラエルの長老(ちょうろう)たちが皆(みな)、ヘブロンにいる王(おう)のもとにきたので、ダビデ王(おう)はヘブロンで主(しゅ)の前(まえ)に彼(かれ)らと契約(けいやく)を結(むす)んだ。そして彼(かれ)らはダビデに油(あぶら)を注(そそ)いでイスラエルの王(おう)とした。 4ダビデは王(おう)となったとき三十歳(さい)で、四十年(ねん)の間(あいだ)、世(よ)を治(おさ)めた。 5すなわちヘブロンで七年(ねん)六か月(げつ)ユダを治(おさ)め、またエルサレムで三十三年(ねん)、全(ぜん)イスラエルとユダを治(おさ)めた。

6王(おう)とその従者(じゅうしゃ)たちとはエルサレムへ行(い)って、その地(ち)の住民(じゅうみん)エブスびとを攻(せ)めた。エブスびとはダビデに言(い)った、「あなたはけっして、ここに攻(せ)め入(い)ることはできない。かえって、めしいや足(あし)なえでも、あなたを追(お)い払(はら)うであろう」。彼(かれ)らが「ダビデはここに攻(せ)め入(い)ることはできない」と思(おも)ったからである。 7ところがダビデはシオンの要害(ようがい)を取(と)った。これがダビデの町(まち)である。 8その日(ひ)ダビデは、「だれでもエブスびとを撃(う)とうとする人(ひと)は、水(みず)をくみ上(あ)げる縦穴(たてあな)を上(のぼ)って行(い)って、ダビデが心(こころ)に憎(にく)んでいる足(あし)なえやめしいを撃(う)て」と言(い)った。それゆえに人々(ひとびと)は、「めしいや足(あし)なえは、宮(みや)にはいってはならない」と言(い)いならわしている。 9ダビデはその要害(ようがい)に住(す)んで、これをダビデの町(まち)と名(な)づけた。またダビデはミロから内(うち)の周囲(しゅうい)に城壁(じょうへき)を築(きず)いた。 10こうしてダビデはますます大(おお)いなる者(もの)となり、かつ万軍(ばんぐん)の神(かみ)、主(しゅ)が彼(かれ)と共(とも)におられた。

11ツロの王(おう)ヒラムはダビデに使者(ししゃ)をつかわして、香柏(こうはく)および大工(だいく)と石工(いしく)を送(おく)った。彼(かれ)らはダビデのために家(いえ)を建(た)てた。 12そしてダビデは主(しゅ)が自分(じぶん)を堅(かた)く立(た)ててイスラエルの王(おう)とされたこと、主(しゅ)がその民(たみ)イスラエルのためにその王国(おうこく)を興(おこ)されたことを悟(さと)った。

13ダビデはヘブロンからきて後(のち)、さらにエルサレムで妻(つま)とそばめを入(い)れたので、むすこと娘(むすめ)がまたダビデに生(うま)れた。 14エルサレムで彼(かれ)に生(うま)れた者(もの)の名(な)は次(つぎ)のとおりである。シャンムア、ショバブ、ナタン、ソロモン、 15イブハル、エリシュア、ネペグ、ヤピア、 16エリシャマ、エリアダ、およびエリペレテ。

17さてペリシテびとは、ダビデが油(あぶら)を注(そそ)がれてイスラエルの王(おう)になったことを聞(き)き、みな上(のぼ)ってきてダビデを捜(さが)したが、ダビデはそれを聞(き)いて要害(ようがい)に下(くだ)って行(い)った。 18ペリシテびとはきて、レパイムの谷(たに)に広(ひろ)がっていた。 19ダビデは主(しゅ)に問(と)うて言(い)った、「ペリシテびとに向(む)かって上(のぼ)るべきでしょうか。あなたは彼(かれ)らをわたしの手(て)に渡(わた)されるでしょうか」。主(しゅ)はダビデに言(い)われた、「上(のぼ)るがよい。わたしはかならずペリシテびとをあなたの手(て)に渡(わた)すであろう」。 20そこでダビデはバアル・ペラジムへ行(い)って、彼(かれ)らをその所(ところ)で撃(う)ち破(やぶ)り、そして言(い)った、「主(しゅ)は、破(やぶ)り出(で)る水(みず)のように、敵(てき)をわたしの前(まえ)に破(やぶ)られた」。それゆえにその所(ところ)の名(な)はバアル・ペラジムと呼(よ)ばれている。 21ペリシテびとはその所(ところ)に彼(かれ)らの偶像(ぐうぞう)を捨(す)てて行(い)ったので、ダビデとその従者(じゅうしゃ)たちはそれを運(はこ)び去(さ)った。

22ペリシテびとが、ふたたび上(のぼ)ってきて、レパイムの谷(たに)に広(ひろ)がったので、 23ダビデは主(しゅ)に問(と)うたが、主(しゅ)は言(い)われた、「上(のぼ)ってはならない。彼(かれ)らのうしろに回(まわ)り、バルサムの木(き)の前(まえ)から彼(かれ)らを襲(おそ)いなさい。 24バルサムの木(き)の上(うえ)に行進(こうしん)の音(おと)が聞(きこ)えたならば、あなたは奮(ふる)い立(た)たなければならない。その時(とき)、主(しゅ)があなたの前(まえ)に出(で)て、ペリシテびとの軍勢(ぐんぜい)を撃(う)たれるからである」。 25ダビデは、主(しゅ)が命(めい)じられたようにして、ペリシテびとを撃(う)ち、ゲバからゲゼルに及(およ)んだ。

第六章

1ダビデは再(ふたた)びイスラエルのえり抜(ぬ)きの者(もの)三万人(にん)をことごとく集(あつ)めた。 2そしてダビデは立(た)って、自分(じぶん)と共(とも)にいるすべての民(たみ)と共(とも)にバアレ・ユダへ行(い)って、神(かみ)の箱(はこ)をそこからかき上(のぼ)ろうとした。この箱(はこ)はケルビムの上(うえ)に座(ざ)しておられる万軍(ばんぐん)の主(しゅ)の名(な)をもって呼(よ)ばれている。 3彼(かれ)らは神(かみ)の箱(はこ)を新(あたら)しい車(くるま)に載(の)せて、山(やま)の上(うえ)にあるアビナダブの家(いえ)から運(はこ)び出(だ)した。 4アビナダブの子(こ)たち、ウザとアヒオとが神(かみ)の箱(はこ)を載(の)せた新(あたら)しい車(くるま)を指揮(しき)し、ウザは神(かみ)の箱(はこ)のかたわらに沿(そ)い、アヒオは箱(はこ)の前(まえ)に進(すす)んだ。 5ダビデとイスラエルの全家(ぜんか)は琴(こと)と立琴(たてごと)と手(て)鼓(つづみ)と鈴(すず)とシンバルとをもって歌(うた)をうたい、力(ちから)をきわめて、主(しゅ)の前(まえ)に踊(おど)った。

6彼(かれ)らがナコンの打(う)ち場(ば)にきた時(とき)、ウザは神(かみ)の箱(はこ)に手(て)を伸(の)べて、それを押(おさ)えた。牛(うし)がつまずいたからである。 7すると主(しゅ)はウザに向(む)かって怒(いか)りを発(はっ)し、彼(かれ)が手(て)を箱(はこ)に伸(の)べたので、彼(かれ)をその場(ば)で撃(う)たれた。彼(かれ)は神(かみ)の箱(はこ)のかたわらで死(し)んだ。 8主(しゅ)がウザを撃(う)たれたので、ダビデは怒(いか)った。その所(ところ)は今日(こんにち)までペレヅ・ウザと呼(よ)ばれている。 9その日(ひ)ダビデは主(しゅ)を恐(おそ)れて言(い)った、「どうして主(しゅ)の箱(はこ)がわたしの所(ところ)に来(く)ることができようか」。 10ダビデは主(しゅ)の箱(はこ)をダビデの町(まち)に入(い)れることを好(この)まず、これを移(うつ)してガテびとオベデエドムの家(いえ)に運(はこ)ばせた。 11神(かみ)の箱(はこ)はガテびとオベデエドムの家(いえ)に三か月(げつ)とどまった。主(しゅ)はオベデエドムとその全家(ぜんか)を祝福(しゅくふく)された。

12しかしダビデ王(おう)は、「主(しゅ)が神(かみ)の箱(はこ)のゆえに、オベデエドムの家(いえ)とそのすべての所有(しょゆう)を祝福(しゅくふく)されている」と聞(き)き、ダビデは行(い)って、喜(よろこ)びをもって、神(かみ)の箱(はこ)をオベデエドムの家(いえ)からダビデの町(まち)にかき上(のぼ)った。 13主(しゅ)の箱(はこ)をかく者(もの)が六歩(ほ)進(すす)んだ時(とき)、ダビデは牛(うし)と肥(こ)えた物(もの)を犠牲(ぎせい)としてささげた。 14そしてダビデは力(ちから)をきわめて、主(しゅ)の箱(はこ)の前(まえ)で踊(おど)った。その時(とき)ダビデは亜麻(あま)布(ぬの)のエポデをつけていた。 15こうしてダビデとイスラエルの全家(ぜんか)とは、喜(よろこ)びの叫(さけ)びと角笛(つのぶえ)の音(おと)をもって、神(かみ)の箱(はこ)をかき上(のぼ)った。

16主(しゅ)の箱(はこ)がダビデの町(まち)にはいった時(とき)、サウルの娘(むすめ)ミカルは窓(まど)からながめ、ダビデ王(おう)が主(しゅ)の前(まえ)に舞(ま)い踊(おど)るのを見(み)て、心(こころ)のうちにダビデをさげすんだ。 17人々(ひとびと)は主(しゅ)の箱(はこ)をかき入(い)れて、ダビデがそのために張(は)った天幕(てんまく)の中(なか)のその場所(ばしょ)に置(お)いた。そしてダビデは燔祭(はんさい)と酬恩祭(しゅうおんさい)を主(しゅ)の前(まえ)にささげた。 18ダビデは燔祭(はんさい)と酬恩祭(しゅうおんさい)をささげ終(おわ)った時(とき)、万軍(ばんぐん)の主(しゅ)の名(な)によって民(たみ)を祝福(しゅくふく)した。 19そしてすべての民(たみ)、イスラエルの全(ぜん)民衆(みんしゅう)に、男(おとこ)にも女(おんな)にも、おのおのパンの菓子(かし)一個(こ)、肉(にく)一きれ、ほしぶどう一かたまりを分(わ)け与(あた)えた。こうして民(たみ)はみなおのおのその家(いえ)に帰(かえ)った。

20ダビデが家族(かぞく)を祝福(しゅくふく)しようとして帰(かえ)ってきた時(とき)、サウルの娘(むすめ)ミカルはダビデを出迎(でむか)えて言(い)った、「きょうイスラエルの王(おう)はなんと威厳(いげん)のあったことでしょう。いたずら者(もの)が、恥(はじ)も知(し)らず、その身(み)を現(あらわ)すように、きょう家来(けらい)たちのはしためらの前(まえ)に自分(じぶん)の身(み)を現(あらわ)されました」。 21ダビデはミカルに言(い)った、「あなたの父(ちち)よりも、またその全家(ぜんか)よりも、むしろわたしを選(えら)んで、主(しゅ)の民(たみ)イスラエルの君(きみ)とせられた主(しゅ)の前(まえ)に踊(おど)ったのだ。わたしはまた主(しゅ)の前(まえ)に踊(おど)るであろう。 22わたしはこれよりももっと軽(かろ)んじられるようにしよう。そしてあなたの目(め)には卑(いや)しめられるであろう。しかしわたしは、あなたがさきに言(い)った、はしためたちに誉(ほまれ)を得(え)るであろう」。 23こうしてサウルの娘(むすめ)ミカルは死(し)ぬ日(ひ)まで子供(こども)がなかった。

第七章

1さて、王(おう)が自分(じぶん)の家(いえ)に住(す)み、また主(しゅ)が周囲(しゅうい)の敵(てき)をことごとく打(う)ち退(しりぞ)けて彼(かれ)に安息(あんそく)を賜(たま)わった時(とき)、 2王(おう)は預言者(よげんしゃ)ナタンに言(い)った、「見(み)よ、今(いま)わたしは、香柏(こうはく)の家(いえ)に住(す)んでいるが、神(かみ)の箱(はこ)はなお幕屋(まくや)のうちにある」。 3ナタンは王(おう)に言(い)った、「主(しゅ)があなたと共(とも)におられますから、行(い)って、すべてあなたの心(こころ)にあるところを行(おこな)いなさい」。

4その夜(よ)、主(しゅ)の言葉(ことば)がナタンに臨(のぞ)んで言(い)った、 5「行(い)って、わたしのしもべダビデに言(い)いなさい、『主(しゅ)はこう仰(おお)せられる。あなたはわたしの住(す)む家(いえ)を建(た)てようとするのか。 6わたしはイスラエルの人々(ひとびと)をエジプトから導(みちび)き出(だ)した日(ひ)から今日(こんにち)まで、家(いえ)に住(す)まわず、天幕(てんまく)をすまいとして歩(あゆ)んできた。 7わたしがイスラエルのすべての人々(ひとびと)と共(とも)に歩(あゆ)んだすべての所(ところ)で、わたしがわたしの民(たみ)イスラエルを牧(ぼく)することを命(めい)じたイスラエルのさばきづかさのひとりに、ひと言(こと)でも「どうしてあなたがたはわたしのために香柏(こうはく)の家(いえ)を建(た)てないのか」と、言(い)ったことがあるであろうか』。 8それゆえ、今(いま)あなたは、わたしのしもべダビデにこう言(い)いなさい、『万軍(ばんぐん)の主(しゅ)はこう仰(おお)せられる。わたしはあなたを牧場(まきば)から、羊(ひつじ)に従(したが)っている所(ところ)から取(と)って、わたしの民(たみ)イスラエルの君(きみ)とし、 9あなたがどこへ行(い)くにも、あなたと共(とも)におり、あなたのすべての敵(てき)をあなたの前(まえ)から断(た)ち去(さ)った。わたしはまた地上(ちじょう)の大(おお)いなる者(もの)の名(な)のような大(おお)いなる名(な)をあなたに得(え)させよう。 10そしてわたしの民(たみ)イスラエルのために一つの所(ところ)を定(さだ)めて、彼(かれ)らを植(う)えつけ、彼(かれ)らを自分(じぶん)の所(ところ)に住(す)ませ、重(かさ)ねて動(うご)くことのないようにするであろう。 11また前(まえ)のように、わたしがわたしの民(たみ)イスラエルの上(うえ)にさばきづかさを立(た)てた日(ひ)からこのかたのように、悪人(あくにん)が重(かさ)ねてこれを悩(なや)ますことはない。わたしはあなたのもろもろの敵(てき)を打(う)ち退(しりぞ)けて、あなたに安息(あんそく)を与(あた)えるであろう。主(しゅ)はまた「あなたのために家(いえ)を造(つく)る」と仰(おお)せられる。 12あなたが日(ひ)が満(み)ちて、先祖(せんぞ)たちと共(とも)に眠(ねむ)る時(とき)、わたしはあなたの身(み)から出(で)る子(こ)を、あなたのあとに立(た)てて、その王国(おうこく)を堅(かた)くするであろう。 13彼(かれ)はわたしの名(な)のために家(いえ)を建(た)てる。わたしは長(なが)くその国(くに)の位(くらい)を堅(かた)くしよう。 14わたしは彼(かれ)の父(ちち)となり、彼(かれ)はわたしの子(こ)となるであろう。もし彼(かれ)が罪(つみ)を犯(おか)すならば、わたしは人(ひと)のつえと人(ひと)の子(こ)のむちをもって彼(かれ)を懲(こ)らす。 15しかしわたしはわたしのいつくしみを、わたしがあなたの前(まえ)から除(のぞ)いたサウルから取(と)り去(さ)ったように、彼(かれ)からは取(と)り去(さ)らない。 16あなたの家(いえ)と王国(おうこく)はわたしの前(まえ)に長(なが)く保(たも)つであろう。あなたの位(くらい)は長(なが)く堅(かと)うせられる』」。 17ナタンはすべてこれらの言葉(ことば)のように、またすべてこの幻(まぼろし)のようにダビデに語(かた)った。

18その時(とき)ダビデ王(おう)は、はいって主(しゅ)の前(まえ)に座(ざ)して言(い)った、「主(しゅ)なる神(かみ)よ、わたしがだれ、わたしの家(いえ)が何(なに)であるので、あなたはこれまでわたしを導(みちび)かれたのですか。 19主(しゅ)なる神(かみ)よ、これはなおあなたの目(め)には小(ちい)さい事(こと)です。主(しゅ)なる神(かみ)よ、あなたはまたしもべの家(いえ)の、はるか後(のち)の事(こと)を語(かた)って、きたるべき代々(よよ)のことを示(しめ)されました。 20ダビデはこの上(うえ)なにをあなたに申(もう)しあげることができましょう。主(しゅ)なる神(かみ)よ、あなたはしもべを知(し)っておられるのです。 21あなたの約束(やくそく)のゆえに、またあなたの心(こころ)に従(したが)って、あなたはこのもろもろの大(おお)いなる事(こと)を行(おこな)い、しもべにそれを知(し)らせられました。 22主(しゅ)なる神(かみ)よ、あなたは偉大(いだい)です。それは、われわれがすべて耳(みみ)に聞(き)いたところによれば、あなたのような者(もの)はなく、またあなたのほかに神(かみ)はないからです。 23地(ち)のどの国民(こくみん)が、あなたの民(たみ)イスラエルのようでありましょうか。これは神(かみ)が行(い)って、自分(じぶん)のためにあがなって民(たみ)とし、自(みずか)らの名(な)をあげられたもの、また彼(かれ)らのために大(おお)いなる恐(おそ)るべきことをなし、その民(たみ)の前(まえ)から国(くに)びととその神々(かみがみ)とを追(お)い出(だ)されたものです。 24そしてあなたの民(たみ)イスラエルを永遠(えいえん)にあなたの民(たみ)として、自分(じぶん)のために、定(さだ)められました。主(しゅ)よ、あなたは彼(かれ)らの神(かみ)となられたのです。 25主(しゅ)なる神(かみ)よ、今(いま)あなたが、しもべとしもべの家(いえ)とについて語(かた)られた言葉(ことば)を長(なが)く堅(かと)うして、あなたの言(い)われたとおりにしてください。 26そうすれば、あなたの名(な)はとこしえにあがめられて、『万軍(ばんぐん)の主(しゅ)はイスラエルの神(かみ)である』と言(い)われ、あなたのしもべダビデの家(いえ)は、あなたの前(まえ)に堅(かた)く立(た)つことができましょう。 27万軍(ばんぐん)の主(しゅ)、イスラエルの神(かみ)よ、あなたはしもべに示(しめ)して、『おまえのために家(いえ)を建(た)てよう』と言(い)われました。それゆえ、しもべはこの祈(いのり)をあなたにささげる勇気(ゆうき)を得(え)たのです。 28主(しゅ)なる神(かみ)よ、あなたは神(かみ)にましまし、あなたの言葉(ことば)は真実(しんじつ)です。あなたはこの良(よ)き事(こと)をしもべに約束(やくそく)されました。 29どうぞ今(いま)、しもべの家(いえ)を祝福(しゅくふく)し、あなたの前(まえ)に長(なが)くつづかせてくださるように。主(しゅ)なる神(かみ)よ、あなたがそれを言(い)われたのです。どうぞあなたの祝福(しゅくふく)によって、しもべの家(いえ)がながく祝福(しゅくふく)されますように」。

第八章

1この後(のち)ダビデはペリシテびとを撃(う)って、これを征服(せいふく)した。ダビデはまたペリシテびとの手(て)からメテグ・アンマを取(と)った。

2彼(かれ)はまたモアブを撃(う)ち、彼(かれ)らを地(ち)に伏(ふ)させ、なわをもって彼(かれ)らを測(はか)った。すなわち二筋(すじ)のなわをもって殺(ころ)すべき者(もの)を測(はか)り、一筋(すじ)のなわをもって生(い)かしておく者(もの)を測(はか)った。そしてモアブびとは、ダビデのしもべとなって、みつぎを納(おさ)めた。

3ダビデはまたレホブの子(こ)であるゾバの王(おう)ハダデゼルが、ユフラテ川(かわ)のほとりにその勢力(せいりょく)を回復(かいふく)しようとして行(い)くところを撃(う)った。 4そしてダビデは彼(かれ)から騎兵(きへい)千七百人(にん)、歩兵(ほへい)二万人(にん)を取(と)った。ダビデはまた一百の戦車(せんしゃ)の馬(うま)を残(のこ)して、そのほかの戦車(せんしゃ)の馬(うま)はみなその足(あし)の筋(すじ)を切(き)った。 5ダマスコのスリヤびとが、ゾバの王(おう)ハダデゼルを助(たす)けるためにきたので、ダビデはスリヤびと二万二千人(にん)を殺(ころ)した。 6そしてダビデはダマスコのスリヤに守備(しゅび)隊(たい)を置(お)いた。スリヤびとは、ダビデのしもべとなって、みつぎを納(おさ)めた。主(しゅ)はダビデにすべてその行(い)く所(ところ)で勝利(しょうり)を与(あた)えられた。 7ダビデはハダデゼルのしもべらが持(も)っていた金(きん)の盾(たて)を奪(うば)って、エルサレムに持(も)ってきた。 8ダビデ王(おう)はまたハダデゼルの町(まち)、ベタとベロタイから、ひじょうに多(おお)くの青銅(せいどう)を取(と)った。

9時(とき)にハマテの王(おう)トイは、ダビデがハダデゼルのすべての軍勢(ぐんぜい)を撃(う)ち破(やぶ)ったことを聞(き)き、 10その子(こ)ヨラムをダビデ王(おう)のもとにつかわして、彼(かれ)にあいさつし、かつ祝(しゅく)を述(の)べさせた。ハダデゼルはかつてしばしばトイと戦(たたか)いを交(まじ)えたが、ダビデがハダデゼルと戦(たたか)ってこれを撃(う)ち破(やぶ)ったからである。ヨラムが銀(ぎん)の器(うつわ)と金(きん)の器(うつわ)と青銅(せいどう)の器(うつわ)を携(たずさ)えてきたので、 11ダビデ王(おう)は征服(せいふく)したすべての国民(こくみん)から取(と)ってささげた金銀(きんぎん)と共(とも)にこれらをも主(しゅ)にささげた。 12すなわちエドム、モアブ、アンモンの人々(ひとびと)、ペリシテびと、アマレクから獲(え)た物(もの)、およびゾバの王(おう)レホブの子(こ)ハダデゼルから獲(え)たぶんどり物(もの)と共(とも)にこれをささげた。

13こうしてダビデは名声(めいせい)を得(え)た。彼(かれ)は帰(かえ)ってきてから塩(しお)の谷(たに)でエドムびと一万八千人(にん)を撃(う)ち殺(ころ)した。 14そしてエドムに守備(しゅび)隊(たい)を置(お)いた。すなわちエドムの全(ぜん)地(ち)に守備(しゅび)隊(たい)を置(お)き、エドムびとは皆(みな)ダビデのしもべとなった。主(しゅ)はダビデにすべてその行(い)く所(ところ)で勝利(しょうり)を与(あた)えられた。

15こうしてダビデはイスラエルの全(ぜん)地(ち)を治(おさ)め、そのすべての民(たみ)に正義(せいぎ)と公平(こうへい)を行(おこな)った。 16ゼルヤの子(こ)ヨアブは軍(ぐん)の長(ちょう)、アヒルデの子(こ)ヨシャパテは史官(しかん)、 17アヒトブの子(こ)ザドクとアビヤタルの子(こ)アヒメレクは祭司(さいし)、セラヤは書記官(しょきかん)、 18エホヤダの子(こ)ベナヤはケレテびととペレテびとの長(ちょう)、ダビデの子(こ)たちは祭司(さいし)であった。

第九章

1時(とき)にダビデは言(い)った、「サウルの家(いえ)の人(ひと)で、なお残(のこ)っている者(もの)があるか。わたしはヨナタンのために、その人(ひと)に恵(めぐ)みを施(ほどこ)そう」。 2さて、サウルの家(いえ)にヂバという名(な)のしもべがあったが、人々(ひとびと)が彼(かれ)をダビデのもとに呼(よ)び寄(よ)せたので、王(おう)は彼(かれ)に言(い)った、「あなたがヂバか」。彼(かれ)は言(い)った、「しもべがそうです」。 3王(おう)は言(い)った、「サウルの家(いえ)の人(ひと)がまだ残(のこ)っていませんか。わたしはその人(ひと)に神(かみ)の恵(めぐ)みを施(ほどこ)そうと思(おも)う」。ヂバは王(おう)に言(い)った、「ヨナタンの子(こ)がまだおります。あしなえです」。 4王(おう)は彼(かれ)に言(い)った、「その人(ひと)はどこにいるのか」。ヂバは王(おう)に言(い)った、「彼(かれ)はロ・デバルのアンミエルの子(こ)マキルの家(いえ)におります」。 5ダビデ王(おう)は人(ひと)をつかわして、ロ・デバルのアンミエルの子(こ)マキルの家(いえ)から、彼(かれ)を連(つ)れてこさせた。 6サウルの子(こ)ヨナタンの子(こ)であるメピボセテはダビデのもとにきて、ひれ伏(ふ)して拝(はい)した。ダビデが、「メピボセテよ」と言(い)ったので、彼(かれ)は、「しもべは、ここにおります」と答(こた)えた。 7ダビデは彼(かれ)に言(い)った、「恐(おそ)れることはない。わたしはかならずあなたの父(ちち)ヨナタンのためにあなたに恵(めぐ)みを施(ほどこ)しましょう。あなたの父(ちち)サウルの地(ち)をみなあなたに返(かえ)します。またあなたは常(つね)にわたしの食卓(しょくたく)で食事(しょくじ)をしなさい」。 8彼(かれ)は拝(はい)して言(い)った、「あなたは、しもべを何(なん)とおぼしめして、死(し)んだ犬(いぬ)のようなわたしを顧(かえり)みられるのですか」。

9王(おう)はサウルのしもべヂバを呼(よ)んで言(い)った、「すべてサウルとその家(いえ)に属(ぞく)する物(もの)を皆(みな)、わたしはあなたの主人(しゅじん)の子(こ)に与(あた)えた。 10あなたと、あなたの子(こ)たちと、しもべたちとは、彼(かれ)のために地(ち)を耕(たがや)して、あなたの主人(しゅじん)の子(こ)が食(た)べる食物(しょくもつ)を取(と)り入(い)れなければならない。しかしあなたの主人(しゅじん)の子(こ)メピボセテはいつもわたしの食卓(しょくたく)で食事(しょくじ)をするであろう」。ヂバには十五人(にん)の男(おとこ)の子(こ)と二十人(にん)のしもべがあった。 11ヂバは王(おう)に言(い)った、「すべて王(おう)わが主君(しゅくん)がしもべに命(めい)じられるとおりに、しもべはいたしましょう」。こうしてメピボセテは王(おう)の子(こ)のひとりのようにダビデの食卓(しょくたく)で食事(しょくじ)をした。 12メピボセテには小(ちい)さい子(こ)があって、名(な)をミカといった。そしてヂバの家(いえ)に住(す)んでいる者(もの)はみなメピボセテのしもべとなった。 13メピボセテはエルサレムに住(す)んだ。彼(かれ)がいつも王(おう)の食卓(しょくたく)で食事(しょくじ)をしたからである。彼(かれ)は両足(りょうあし)ともに、なえていた。

第一〇章

1この後(のち)アンモンの人々(ひとびと)の王(おう)が死(し)んで、その子(こ)ハヌンがこれに代(かわ)って王(おう)となった。 2そのときダビデは言(い)った、「わたしはナハシの子(こ)ハヌンに、その父(ちち)がわたしに恵(めぐ)みを施(ほどこ)したように、恵(めぐ)みを施(ほどこ)そう」。そしてダビデは彼(かれ)を、その父(ちち)のゆえに慰(なぐさ)めようと、しもべをつかわした。ダビデのしもべたちはアンモンの人々(ひとびと)の地(ち)に行(い)ったが、 3アンモンの人々(ひとびと)のつかさたちはその主君(しゅくん)ハヌンに言(い)った、「ダビデが慰(なぐさ)める者(もの)をあなたのもとにつかわしたのは彼(かれ)があなたの父(ちち)を尊(たっと)ぶためだと思(おも)われますか。ダビデがあなたのもとに、しもべたちをつかわしたのは、この町(まち)をうかがい、それを探(さぐ)って、滅(ほろ)ぼすためではありませんか」。 4そこでハヌンはダビデのしもべたちを捕(とら)え、おのおの、ひげの半(なか)ばをそり落(おと)し、その着物(きもの)を中(なか)ほどから断(た)ち切(き)り腰(こし)の所(ところ)までにして、彼(かれ)らを帰(かえ)らせた。 5人々(ひとびと)がこれをダビデに告(つ)げたので、ダビデは人(ひと)をつかわして彼(かれ)らを迎(むか)えさせた。その人々(ひとびと)はひじょうに恥(は)じたからである。そこで王(おう)は言(い)った、「ひげがのびるまでエリコにとどまって、その後(のち)、帰(かえ)りなさい」。

6アンモンの人々(ひとびと)は自分(じぶん)たちがダビデに憎(にく)まれていることがわかったので、人(ひと)をつかわして、ベテ・レホブのスリヤびととゾバのスリヤびととの歩兵(ほへい)二万人(にん)およびマアカの王(おう)とその一千人(にん)、トブの人(ひと)一万二千人(にん)を雇(やと)い入(い)れた。 7ダビデはそれを聞(き)いて、ヨアブと勇士(ゆうし)の全(ぜん)軍(ぐん)をつかわしたので、 8アンモンの人々(ひとびと)は出(で)て、門(もん)の入口(いりぐち)に戦(たたか)いの備(そな)えをした。ゾバとレホブとのスリヤびと、およびトブとマアカの人々(ひとびと)は別(べつ)に野(の)にいた。

9ヨアブは戦(たたか)いが前後(ぜんご)から自分(じぶん)に迫(せま)ってくるのを見(み)て、イスラエルのえり抜(ぬ)きの兵士(へいし)のうちから選(えら)んで、これをスリヤびとに対(たい)して備(そな)え、 10そのほかの民(たみ)を自分(じぶん)の兄弟(きょうだい)アビシャイの手(て)にわたして、アンモンの人々(ひとびと)に対(たい)して備(そな)えさせ、 11そして言(い)った、「もしスリヤびとがわたしに手(て)ごわいときは、わたしを助(たす)けてください。もしアンモンの人々(ひとびと)があなたに手(て)ごわいときは、行(い)ってあなたを助(たす)けましょう。 12勇(いさ)ましくしてください。われわれの民(たみ)のため、われわれの神(かみ)の町々(まちまち)のため、勇(いさ)ましくしましょう。どうぞ主(しゅ)が良(よ)いと思(おも)われることをされるように」。 13ヨアブが自分(じぶん)と一緒(いっしょ)にいる民(たみ)と共(とも)に、スリヤびとに向(む)かって戦(たたか)おうとして近(ちか)づいたとき、スリヤびとは彼(かれ)の前(まえ)から逃(に)げた。 14アンモンの人々(ひとびと)はスリヤびとが逃(に)げるのを見(み)て、彼(かれ)らもまたアビシャイの前(まえ)から逃(に)げて町(まち)にはいった。そこでヨアブはアンモンの人々(ひとびと)を撃(う)つことをやめてエルサレムに帰(かえ)った。

15しかしスリヤびとは自分(じぶん)たちのイスラエルに打(う)ち敗(やぶ)られたのを見(み)て、共(とも)に集(あつ)まった。 16そしてハダデゼルは人(ひと)をつかわし、ユフラテ川(かわ)の向(む)こう側(がわ)にいるスリヤびとを率(ひき)いてヘラムにこさせた。ハダデゼルの軍(ぐん)の長(ちょう)ショバクがこれを率(ひき)いた。 17この事(こと)がダビデに聞(きこ)えたので、彼(かれ)はイスラエルをことごとく集(あつ)め、ヨルダンを渡(わた)ってヘラムにきた。スリヤびとはダビデに向(む)かって備(そな)えをして彼(かれ)と戦(たたか)った。 18しかしスリヤびとがイスラエルの前(まえ)から逃(に)げたので、ダビデはスリヤびとの戦車(せんしゃ)の兵(へい)七百、騎兵(きへい)四万を殺(ころ)し、またその軍(ぐん)の長(ちょう)ショバクを撃(う)ったので、彼(かれ)はその所(ところ)で死(し)んだ。 19ハダデゼルの家来(けらい)であった王(おう)たちはみな、自分(じぶん)たちがイスラエルに打(う)ち敗(やぶ)られたのを見(み)て、イスラエルと和(わ)を講(こう)じ、これに仕(つか)えた。こうしてスリヤびとは恐(おそ)れて再(ふたた)びアンモンの人々(ひとびと)を助(たす)けることをしなかった。

第一一章

1春(はる)になって、王(おう)たちが戦(たたか)いに出(で)るに及(およ)んで、ダビデはヨアブおよび自分(じぶん)と共(とも)にいる家来(けらい)たち、並(なら)びにイスラエルの全(ぜん)軍(ぐん)をつかわした。彼(かれ)らはアンモンの人々(ひとびと)を滅(ほろ)ぼし、ラバを包囲(ほうい)した。しかしダビデはエルサレムにとどまっていた。

2さて、ある日(ひ)の夕暮(ゆうぐれ)、ダビデは床(ゆか)から起(お)き出(で)て、王(おう)の家(いえ)の屋上(おくじょう)を歩(ある)いていたが、屋上(おくじょう)から、ひとりの女(おんな)がからだを洗(あら)っているのを見(み)た。その女(おんな)は非常(ひじょう)に美(うつく)しかった。 3ダビデは人(ひと)をつかわしてその女(おんな)のことを探(さぐ)らせたが、ある人(ひと)は言(い)った、「これはエリアムの娘(むすめ)で、ヘテびとウリヤの妻(つま)バテシバではありませんか」。 4そこでダビデは使者(ししゃ)をつかわして、その女(おんな)を連(つ)れてきた。女(おんな)は彼(かれ)の所(ところ)にきて、彼(かれ)はその女(おんな)と寝(ね)た。(女(おんな)は身(み)の汚(けが)れを清(きよ)めていたのである。)こうして女(おんな)はその家(いえ)に帰(かえ)った。 5女(おんな)は妊娠(にんしん)したので、人(ひと)をつかわしてダビデに告(つ)げて言(い)った、「わたしは子(こ)をはらみました」。

6そこでダビデはヨアブに、「ヘテびとウリヤをわたしの所(ところ)につかわせ」と言(い)ってやったので、ヨアブはウリヤをダビデの所(ところ)につかわした。 7ウリヤがダビデの所(ところ)にきたので、ダビデは、ヨアブはどうしているか、民(たみ)はどうしているか、戦(たたか)いはうまくいっているかとたずねた。 8そしてダビデはウリヤに言(い)った、「あなたの家(いえ)に行(い)って、足(あし)を洗(あら)いなさい」。ウリヤは王(おう)の家(いえ)を出(で)ていったが、王(おう)の贈(おく)り物(もの)が彼(かれ)の後(のち)に従(したが)った。 9しかしウリヤは王(おう)の家(いえ)の入口(いりぐち)で主君(しゅくん)の家来(けらい)たちと共(とも)に寝(ね)て、自分(じぶん)の家(いえ)に帰(かえ)らなかった。 10人々(ひとびと)がダビデに、「ウリヤは自分(じぶん)の家(いえ)に帰(かえ)りませんでした」と告(つ)げたので、ダビデはウリヤに言(い)った、「旅(たび)から帰(かえ)ってきたのではないか。どうして家(いえ)に帰(かえ)らなかったのか」。 11ウリヤはダビデに言(い)った、「神(かみ)の箱(はこ)も、イスラエルも、ユダも、小屋(こや)の中(なか)に住(す)み、わたしの主人(しゅじん)ヨアブと、わが主君(しゅくん)の家来(けらい)たちが野(の)のおもてに陣(じん)を取(と)っているのに、わたしはどうして家(いえ)に帰(かえ)って食(く)い飲(の)みし、妻(つま)と寝(ね)ることができましょう。あなたは生(い)きておられます。あなたの魂(たましい)は生(い)きています。わたしはこの事(こと)をいたしません」。 12ダビデはウリヤに言(い)った、「きょうも、ここにとどまりなさい。わたしはあす、あなたを去(さ)らせましょう」。そこでウリヤはその日(ひ)と次(つぎ)の日(ひ)エルサレムにとどまった。 13ダビデは彼(かれ)を招(まね)いて自分(じぶん)の前(まえ)で食(く)い飲(の)みさせ、彼(かれ)を酔(よ)わせた。夕暮(ゆうぐれ)になって彼(かれ)は出(で)ていって、その床(ゆか)に、主君(しゅくん)の家来(けらい)たちと共(とも)に寝(ね)た。そして自分(じぶん)の家(いえ)には下(くだ)って行(い)かなかった。

14朝(あさ)になってダビデはヨアブにあてた手紙(てがみ)を書(か)き、ウリヤの手(て)に託(たく)してそれを送(おく)った。 15彼(かれ)はその手紙(てがみ)に、「あなたがたはウリヤを激(はげ)しい戦(たたか)いの最前線(さいぜんせん)に出(だ)し、彼(かれ)の後(うしろ)から退(しりぞ)いて、彼(かれ)を討死(うちじに)させよ」と書(か)いた。 16ヨアブは町(まち)を囲(かこ)んでいたので、勇士(ゆうし)たちがいると知(し)っていた場所(ばしょ)にウリヤを置(お)いた。 17町(まち)の人々(ひとびと)が出(で)てきてヨアブと戦(たたか)ったので、民(たみ)のうち、ダビデの家来(けらい)たちにも、倒(たお)れるものがあり、ヘテびとウリヤも死(し)んだ。 18ヨアブは人(ひと)をつかわして戦(たたか)いのことをつぶさにダビデに告(つ)げた。 19ヨアブはその使者(ししゃ)に命(めい)じて言(い)った、「あなたが戦(たたか)いのことをつぶさに王(おう)に語(かた)り終(おわ)ったとき、 20もし王(おう)が怒(いか)りを起(おこ)して、『あなたがたはなぜ戦(たたか)おうとしてそんなに町(まち)に近(ちか)づいたのか。彼(かれ)らが城壁(じょうへき)の上(うえ)から射(い)るのを知(し)らなかったのか。 21エルベセテの子(こ)アビメレクを撃(う)ったのはだれか。ひとりの女(おんな)が城壁(じょうへき)の上(うえ)から石(いし)うすの上石(うわいし)を投(な)げて彼(かれ)をテベツで殺(ころ)したのではなかったか。あなたがたはなぜそんなに城壁(じょうへき)に近(ちか)づいたのか』と言(い)われたならば、その時(とき)あなたは、『あなたのしもべ、ヘテびとウリヤもまた死(し)にました』と言(い)いなさい」。

22こうして使者(ししゃ)は行(い)き、ダビデのもとにきて、ヨアブが言(い)いつかわしたことをことごとく告(つ)げた。 23使者(ししゃ)はダビデに言(い)った、「敵(てき)はわれわれよりも有利(ゆうり)な位置(いち)を占(し)め、出(で)てきてわれわれを野(の)で攻(せ)めましたが、われわれは町(まち)の入口(いりぐち)まで彼(かれ)らを追(お)い返(かえ)しました。 24その時(とき)、射手(しゃしゅ)どもは城壁(じょうへき)からあなたの家来(けらい)たちを射(い)ましたので、王(おう)の家来(けらい)のある者(もの)は死(し)に、また、あなたの家来(けらい)ヘテびとウリヤも死(し)にました」。 25ダビデは使者(ししゃ)に言(い)った、「あなたはヨアブにこう言(い)いなさい、『この事(こと)で心配(しんぱい)することはない。つるぎはこれをも彼(かれ)をも同(おな)じく滅(ほろ)ぼすからである。強(つよ)く町(まち)を攻(せ)めて戦(たたか)い、それを攻(せ)め落(おと)しなさい』と。そしてヨアブを励(はげ)ましなさい」。

26ウリヤの妻(つま)は夫(おっと)ウリヤが死(し)んだことを聞(き)いて、夫(おっと)のために悲(かな)しんだ。 27その喪(も)が過(す)ぎた時(とき)、ダビデは人(ひと)をつかわして彼女(かのじょ)を自分(じぶん)の家(いえ)に召(め)し入(い)れた。彼女(かのじょ)は彼(かれ)の妻(つま)となって男(おとこ)の子(こ)を産(う)んだ。しかしダビデがしたこの事(こと)は主(しゅ)を怒(いか)らせた。

第一二章

1主(しゅ)はナタンをダビデにつかわされたので、彼(かれ)はダビデの所(ところ)にきて言(い)った、「ある町(まち)にふたりの人(ひと)があって、ひとりは富(と)み、ひとりは貧(まず)しかった。 2富(と)んでいる人(ひと)は非常(ひじょう)に多(おお)くの羊(ひつじ)と牛(うし)を持(も)っていたが、 3貧(まず)しい人(ひと)は自分(じぶん)が買(か)った一頭(とう)の小(ちい)さい雌(めす)の小羊(こひつじ)のほかは何(なに)も持(も)っていなかった。彼(かれ)がそれを育(そだ)てたので、その小羊(こひつじ)は彼(かれ)および彼(かれ)の子供(こども)たちと共(とも)に成長(せいちょう)し、彼(かれ)の食物(しょくもつ)を食(た)べ、彼(かれ)のわんから飲(の)み、彼(かれ)のふところで寝(ね)て、彼(かれ)にとっては娘(むすめ)のようであった。 4時(とき)に、ひとりの旅(たび)びとが、その富(と)んでいる人(ひと)のもとにきたが、自分(じぶん)の羊(ひつじ)または牛(うし)のうちから一頭(いっとう)を取(と)って、自分(じぶん)の所(ところ)にきた旅(たび)びとのために調理(ちょうり)することを惜(お)しみ、その貧(まず)しい人(ひと)の小羊(こひつじ)を取(と)って、これを自分(じぶん)の所(ところ)にきた人(ひと)のために調理(ちょうり)した」。 5ダビデはその人(ひと)の事(こと)をひじょうに怒(いか)ってナタンに言(い)った、「主(しゅ)は生(い)きておられる。この事(こと)をしたその人(ひと)は死(し)ぬべきである。 6かつその人(ひと)はこの事(こと)をしたため、またあわれまなかったため、その小羊(こひつじ)を四倍(ばい)にして償(つぐな)わなければならない」。

7ナタンはダビデに言(い)った、「あなたがその人(ひと)です。イスラエルの神(かみ)、主(しゅ)はこう仰(おお)せられる、『わたしはあなたに油(あぶら)を注(そそ)いでイスラエルの王(おう)とし、あなたをサウルの手(て)から救(すく)いだし、 8あなたに主人(しゅじん)の家(いえ)を与(あた)え、主人(しゅじん)の妻(つま)たちをあなたのふところに与(あた)え、またイスラエルとユダの家(いえ)をあなたに与(あた)えた。もし少(すく)なかったならば、わたしはもっと多(おお)くのものをあなたに増(ま)し加(くわ)えたであろう。 9どうしてあなたは主(しゅ)の言葉(ことば)を軽(かろ)んじ、その目(め)の前(まえ)に悪事(あくじ)をおこなったのですか。あなたはつるぎをもってヘテびとウリヤを殺(ころ)し、その妻(つま)をとって自分(じぶん)の妻(つま)とした。すなわちアンモンの人々(ひとびと)のつるぎをもって彼(かれ)を殺(ころ)した。 10あなたがわたしを軽(かろ)んじてヘテびとウリヤの妻(つま)をとり、自分(じぶん)の妻(つま)としたので、つるぎはいつまでもあなたの家(いえ)を離(はな)れないであろう』。 11主(しゅ)はこう仰(おお)せられる、『見(み)よ、わたしはあなたの家(いえ)からあなたの上(うえ)に災(わざわい)を起(おこ)すであろう。わたしはあなたの目(め)の前(まえ)であなたの妻(つま)たちを取(と)って、隣(となり)びとに与(あた)えるであろう。その人(ひと)はこの太陽(たいよう)の前(まえ)で妻(つま)たちと一緒(いっしょ)に寝(ね)るであろう。 12あなたはひそかにそれをしたが、わたしは全(ぜん)イスラエルの前(まえ)と、太陽(たいよう)の前(まえ)にこの事(こと)をするのである』」。 13ダビデはナタンに言(い)った、「わたしは主(しゅ)に罪(つみ)をおかしました」。ナタンはダビデに言(い)った、「主(しゅ)もまたあなたの罪(つみ)を除(のぞ)かれました。あなたは死(し)ぬことはないでしょう。 14しかしあなたはこの行(おこな)いによって大(おお)いに主(しゅ)を侮(あなど)ったので、あなたに生(うま)れる子供(こども)はかならず死(し)ぬでしょう」。 15こうしてナタンは家(いえ)に帰(かえ)った。

さて主(しゅ)は、ウリヤの妻(つま)がダビデに産(う)んだ子(こ)を撃(う)たれたので、病気(びょうき)になった。 16ダビデはその子(こ)のために神(かみ)に嘆願(たんがん)した。すなわちダビデは断食(だんじき)して、へやにはいり終夜(しゅうや)地(ち)に伏(ふ)した。 17ダビデの家(いえ)の長老(ちょうろう)たちは、彼(かれ)のかたわらに立(た)って彼(かれ)を地(ち)から起(おこ)そうとしたが、彼(かれ)は起(お)きようとはせず、また彼(かれ)らと一緒(いっしょ)に食事(しょくじ)をしなかった。 18七日(なぬか)目(め)にその子(こ)は死(し)んだ。ダビデの家来(けらい)たちはその子(こ)が死(し)んだことをダビデに告(つ)げるのを恐(おそ)れた。それは彼(かれ)らが、「見(み)よ、子(こ)のなお生(い)きている間(あいだ)に、われわれが彼(かれ)に語(かた)ったのに彼(かれ)はその言葉(ことば)を聞(き)きいれなかった。どうして彼(かれ)にその子(こ)の死(し)んだことを告(つ)げることができようか。彼(かれ)は自(みずか)らを害(がい)するかも知(し)れない」と思(おも)ったからである。 19しかしダビデは、家来(けらい)たちが互(たがい)にささやき合(あ)うのを見(み)て、その子(こ)の死(し)んだのを悟(さと)り、家来(けらい)たちに言(い)った、「子(こ)は死(し)んだのか」。彼(かれ)らは言(い)った、「死(し)なれました」。 20そこで、ダビデは地(ち)から起(お)き上(あ)がり、身(み)を洗(あら)い、油(あぶら)をぬり、その着物(きもの)を替(か)えて、主(しゅ)の家(いえ)にはいって拝(はい)した。そののち自分(じぶん)の家(いえ)に行(い)き、求(もと)めて自分(じぶん)のために食物(しょくもつ)を備(そな)えさせて食(た)べた。 21家来(けらい)たちは彼(かれ)に言(い)った、「あなたのなさったこの事(こと)はなんでしょうか。あなたは子(こ)の生(い)きている間(あいだ)はその子(こ)のために断食(だんじき)して泣(な)かれました。しかし子(こ)が死(し)ぬと、あなたは起(お)きて食事(しょくじ)をなさいました」。 22ダビデは言(い)った、「子(こ)の生(い)きている間(あいだ)に、わたしが断食(だんじき)して泣(な)いたのは、『主(しゅ)がわたしをあわれんで、この子(こ)を生(い)かしてくださるかも知(し)れない』と思(おも)ったからです。 23しかし今(いま)は死(し)んだので、わたしはどうして断食(だんじき)しなければならないでしょうか。わたしは再(ふたた)び彼(かれ)をかえらせることができますか。わたしは彼(かれ)の所(ところ)に行(い)くでしょうが、彼(かれ)はわたしの所(ところ)に帰(かえ)ってこないでしょう」。

24ダビデは妻(つま)バテシバを慰(なぐさ)め、彼女(かのじょ)の所(ところ)にはいって、彼女(かのじょ)と共(とも)に寝(ね)たので、彼女(かのじょ)は男(おとこ)の子(こ)を産(う)んだ。ダビデはその名(な)をソロモンと名(な)づけた。主(しゅ)はこれを愛(あい)された。 25そして預言者(よげんしゃ)ナタンをつかわし、命(めい)じてその名(な)をエデデアと呼(よ)ばせられた。

26さてヨアブはアンモンの人々(ひとびと)のラバを攻(せ)めて王(おう)の町(まち)を取(と)った。 27ヨアブは使者(ししゃ)をダビデにつかわして言(い)った、「わたしはラバを攻(せ)めて水(みず)の町(まち)を取(と)りました。 28あなたは今(いま)、残(のこ)りの民(たみ)を集(あつ)め、この町(まち)に向(む)かって陣(じん)をしき、これを取(と)りなさい。わたしがこの町(まち)を取(と)って、人(ひと)がわたしの名(な)をもって、これを呼(よ)ぶようにならないためです」。 29そこでダビデは民(たみ)をことごとく集(あつ)めてラバへ行(い)き、攻(せ)めてこれを取(と)った。 30そしてダビデは彼(かれ)らの王(おう)の冠(かんむり)をその頭(あたま)から取(と)りはなした。それは金(きん)で重(おも)さは一タラントであった。宝石(ほうせき)がはめてあり、それをダビデの頭(あたま)に置(お)いた。ダビデはその町(まち)からぶんどり物(もの)を非常(ひじょう)に多(おお)く持(も)ち出(だ)した。 31またダビデはそのうちの民(たみ)を引(ひ)き出(だ)して、彼(かれ)らをのこぎりや、鉄(てつ)のつるはし、鉄(てつ)のおのを使(つか)う仕事(しごと)につかせ、また、れんが造(つく)りの労役(ろうえき)につかせた。彼(かれ)はアンモンの人々(ひとびと)のすべての町(まち)にこのようにした。そしてダビデと民(たみ)とは皆(みな)エルサレムに帰(かえ)った。

第一三章

1さてダビデの子(こ)アブサロムには名(な)をタマルという美(うつく)しい妹(いもうと)があったが、その後(のち)ダビデの子(こ)アムノンはこれを恋(こい)した。 2アムノンは妹(いもうと)タマルのために悩(なや)んでついにわずらった。それはタマルが処女(しょじょ)であって、アムノンは彼女(かのじょ)に何事(なにごと)もすることができないと思(おも)ったからである。 3ところがアムノンにはひとりの友(とも)だちがあった。名(な)をヨナダブといい、ダビデの兄弟(きょうだい)シメアの子(こ)である。ヨナダブはひじょうに賢(かしこ)い人(ひと)であった。 4彼(かれ)はアムノンに言(い)った、「王子(おうじ)よ、あなたは、どうして朝(あさ)ごとに、そんなにやせ衰(おとろ)えるのですか。わたしに話(はな)さないのですか」。アムノンは彼(かれ)に言(い)った、「わたしは兄弟(きょうだい)アブサロムの妹(いもうと)タマルを恋(こい)しているのです」。 5ヨナダブは彼(かれ)に言(い)った、「あなたは病(やまい)と偽(いつわ)り、寝床(ねどこ)に横(よこ)たわって、あなたの父(ちち)がきてあなたを見(み)るとき彼(かれ)に言(い)いなさい、『どうぞ、わたしの妹(いもうと)タマルをこさせ、わたしの所(ところ)に食物(しょくもつ)を運(はこ)ばせてください。そして彼女(かのじょ)がわたしの目(め)の前(まえ)で食物(しょくもつ)をととのえ、彼女(かのじょ)の手(て)からわたしが食(た)べることのできるようにさせてください』」。 6そこでアムノンは横(よこ)になって病(やまい)と偽(いつわ)ったが、王(おう)がきて彼(かれ)を見(み)た時(とき)、アムノンは王(おう)に言(い)った、「どうぞわたしの妹(いもうと)タマルをこさせ、わたしの目(め)の前(まえ)で二つの菓子(かし)を作(つく)らせて、彼女(かのじょ)の手(て)からわたしが食(た)べることのできるようにしてください」。

7ダビデはタマルの家(いえ)に人(ひと)をつかわして言(い)わせた、「あなたの兄(あに)アムノンの家(いえ)へ行(い)って、彼(かれ)のために食物(しょくもつ)をととのえなさい」。 8そこでタマルはその兄(あに)アムノンの家(いえ)へ行(い)ったところ、アムノンは寝(ね)ていた。タマルは粉(こな)を取(と)って、これをこね、彼(かれ)の目(め)の前(まえ)で、菓子(かし)を作(つく)り、その菓子(かし)を焼(や)き、 9なべを取(と)って彼(かれ)の前(まえ)にそれをあけた。しかし彼(かれ)は食(た)べることを拒(こば)んだ。そしてアムノンは、「みな、わたしを離(はな)れて出(で)てください」と言(い)ったので、皆(みな)、彼(かれ)を離(はな)れて出(で)た。 10アムノンはタマルに言(い)った、「食物(しょくもつ)を寝室(しんしつ)に持(も)ってきてください。わたしはあなたの手(て)から食(た)べます」。そこでタマルは自分(じぶん)の作(つく)った菓子(かし)をとって、寝室(しんしつ)にはいり兄(あに)アムノンの所(ところ)へ持(も)っていった。 11タマルが彼(かれ)に食(た)べさせようとして近(ちか)くに持(も)って行(い)った時(とき)、彼(かれ)はタマルを捕(とら)えて彼女(かのじょ)に言(い)った、「妹(いもうと)よ、来(き)て、わたしと寝(ね)なさい」。 12タマルは言(い)った、「いいえ、兄(あに)上(うえ)よ、わたしをはずかしめてはなりません。このようなことはイスラエルでは行(おこな)われません。この愚(おろ)かなことをしてはなりません。 13わたしの恥(はじ)をわたしはどこへ持(も)って行(い)くことができましょう。あなたはイスラエルの愚(おろ)か者(もの)のひとりとなるでしょう。それゆえ、どうぞ王(おう)に話(はな)してください。王(おう)がわたしをあなたに与(あた)えないことはないでしょう」。 14しかしアムノンは彼女(かのじょ)の言(い)うことを聞(き)こうともせず、タマルよりも強(つよ)かったので、タマルをはずかしめてこれと共(とも)に寝(ね)た。

15それからアムノンは、ひじょうに深(ふか)くタマルを憎(にく)むようになった。彼女(かのじょ)を憎(にく)む憎(にく)しみは、彼女(かのじょ)を恋(こい)した恋(こい)よりも大(おお)きかった。アムノンは彼女(かのじょ)に言(い)った、「立(た)って、行(い)きなさい」。 16タマルはアムノンに言(い)った、「いいえ、兄(あに)上(うえ)よ、わたしを返(かえ)すことは、あなたがさきにわたしになさった事(こと)よりも大(おお)きい悪(あく)です」。しかしアムノンは彼女(かのじょ)の言(い)うことを聞(き)こうともせず、 17彼(かれ)に仕(つか)えている若者(わかもの)を呼(よ)んで言(い)った、「この女(おんな)をわたしの所(ところ)から外(そと)におくり出(だ)し、そのあとに戸(と)を閉(と)ざすがよい」。 18この時(とき)、タマルは長(なが)そでの着物(きもの)を着(き)ていた。昔(むかし)、王(おう)の姫(ひめ)たちの処女(しょじょ)である者(もの)はこのような着物(きもの)を着(き)たからである。アムノンのしもべは彼女(かのじょ)を外(そと)に出(だ)して、そのあとに戸(と)を閉(と)ざした。 19タマルは灰(はい)を頭(あたま)にかぶり、着(き)ていた長(なが)そでの着物(きもの)を裂(さ)き、手(て)を頭(あたま)にのせて、叫(さけ)びながら去(さ)って行(い)った。

20兄(あに)アブサロムは彼女(かのじょ)に言(い)った、「兄(あに)アムノンがあなたと一緒(いっしょ)にいたのか。しかし妹(いもうと)よ、今(いま)は黙(だま)っていなさい。彼(かれ)はあなたの兄(あに)です。この事(こと)を心(こころ)にとめなくてよろしい」。こうしてタマルは兄(あに)アブサロムの家(いえ)に寂(さび)しく住(す)んでいた。 21ダビデ王(おう)はこれらの事(こと)をことごとく聞(き)いて、ひじょうに怒(いか)った。 22アブサロムはアムノンに良(よ)いことも悪(わる)いことも語(かた)ることをしなかった。それはアムノンがアブサロムの妹(いもうと)タマルをはずかしめたので、アブサロムが彼(かれ)を憎(にく)んでいたからである。

23満(まん)二年(ねん)の後(のち)、アブサロムはエフライムの近(ちか)くにあるバアル・ハゾルで羊(ひつじ)の毛(け)を切(き)らせていた時(とき)、王(おう)の子(こ)たちをことごとく招(まね)いた。 24そしてアブサロムは王(おう)のもとにきて言(い)った、「見(み)よ、しもべは羊(ひつじ)の毛(け)を切(き)らせております。どうぞ王(おう)も王(おう)の家来(けらい)たちも、しもべと共(とも)にきてください」。 25王(おう)はアブサロムに言(い)った、「いいえ、わが子(こ)よ、われわれが皆(みな)行(い)ってはならない。あなたの重荷(おもに)になるといけないから」。アブサロムはダビデにしいて願(ねが)った。しかしダビデは行(い)くことを承知(しょうち)せず彼(かれ)に祝福(しゅくふく)を与(あた)えた。 26そこでアブサロムは言(い)った、「それでは、どうぞわたしの兄(あに)アムノンをわれわれと共(とも)に行(い)かせてください」。王(おう)は彼(かれ)に言(い)った、「どうして彼(かれ)があなたと共(とも)に行(い)かなければならないのか」。 27しかしアブサロムは彼(かれ)にしいて願(ねが)ったので、ついにアムノンと王(おう)の子(こ)たちを皆(みな)、アブサロムと共(とも)に行(い)かせた。 28そこでアブサロムは若者(わかもの)たちに命(めい)じて言(い)った、「アムノンが酒(さけ)を飲(の)んで、心(こころ)楽(たの)しくなった時(とき)を見(み)すまし、わたしがあなたがたに、『アムノンを撃(う)て』と言(い)う時(とき)、彼(かれ)を殺(ころ)しなさい。恐(おそ)れることはない。わたしが命(めい)じるのではないか。雄々(おお)しくしなさい。勇(いさ)ましくしなさい」。 29アブサロムの若者(わかもの)たちはアブサロムの命(めい)じたようにアムノンにおこなったので、王(おう)の子(こ)たちは皆(みな)立(た)って、おのおのその騾馬(らば)に乗(の)って逃(に)げた。

30彼(かれ)らがまだ着(つ)かないうちに、「アブサロムは王(おう)の子(こ)たちをことごとく殺(ころ)して、ひとりも残(のこ)っている者(もの)がない」という知(し)らせがダビデに達(たっ)したので、 31王(おう)は立(た)ち、その着物(きもの)を裂(さ)いて、地(ち)に伏(ふ)した。そのかたわらに立(た)っていた家来(けらい)たちも皆(みな)その着物(きもの)を裂(さ)いた。 32しかしダビデの兄弟(きょうだい)シメアの子(こ)ヨナダブは言(い)った、「わが主(しゅ)よ、王(おう)の子(こ)たちである若者(わかもの)たちがみな殺(ころ)されたと、お考(かんが)えになってはなりません。アムノンだけが死(し)んだのです。これは彼(かれ)がアブサロムの妹(いもうと)タマルをはずかしめた日(ひ)から、アブサロムの命(いのち)によって定(さだ)められていたことなのです。 33それゆえ、わが主(しゅ)、王(おう)よ、王(おう)の子(こ)たちが皆(みな)死(し)んだと思(おも)って、この事(こと)を心(こころ)にとめられてはなりません。アムノンだけが死(し)んだのです」。

34アブサロムはのがれた。時(とき)に見張(みは)りをしていた若者(わかもの)が目(め)をあげて見(み)ると、山(やま)のかたわらのホロナイムの道(みち)から多(おお)くの民(たみ)の来(く)るのが見(み)えた。 35ヨナダブは王(おう)に言(い)った、「見(み)よ、王(おう)の子(こ)たちがきました。しもべの言(い)ったとおりです」。 36彼(かれ)が語(かた)ることを終(おわ)った時(とき)、王(おう)の子(こ)たちはきて声(こえ)をあげて泣(な)いた。王(おう)もその家来(けらい)たちも皆(みな)、非常(ひじょう)にはげしく泣(な)いた。

37しかしアブサロムはのがれて、ゲシュルの王(おう)アミホデの子(こ)タルマイのもとに行(い)った。ダビデは日々(ひび)その子(こ)のために悲(かな)しんだ。 38アブサロムはのがれてゲシュルに行(い)き、三年(ねん)の間(あいだ)そこにいた。 39王(おう)は心(こころ)に、アブサロムに会(あ)うことを、せつに望(のぞ)んだ。アムノンは死(し)んでしまい、ダビデが彼(かれ)のことはあきらめていたからである。

第一四章

1ゼルヤの子(こ)ヨアブは王(おう)の心(こころ)がアブサロムに向(む)かっているのを知(し)った。 2そこでヨアブはテコアに人(ひと)をつかわして、そこからひとりの賢(かしこ)い女(おんな)を連(つ)れてこさせ、その女(おんな)に言(い)った、「あなたは悲(かな)しみのうちにある人(ひと)をよそおって、喪服(もふく)を着(き)、油(あぶら)を身(み)に塗(ぬ)らず、死(し)んだ人(ひと)のために長(なが)いあいだ悲(かな)しんでいる女(おんな)のように、よそおって、 3王(おう)のもとに行(い)き、しかじかと彼(かれ)に語(かた)りなさい」。こうしてヨアブはその言葉(ことば)を彼女(かのじょ)の口(くち)に授(さづ)けた。

4テコアの女(おんな)は王(おう)のもとに行(い)き、地(ち)に伏(ふ)して拝(はい)し、「王(おう)よ、お助(たす)けください」と言(い)った。 5王(おう)は女(おんな)に言(い)った、「どうしたのか」。女(おんな)は言(い)った、「まことにわたしは寡婦(かふ)でありまして、夫(おっと)は死(し)にました。 6つかえめにはふたりの子(こ)どもがあり、ふたりは野(の)で争(あらそ)いましたが、だれも彼(かれ)らを引(ひ)き分(わ)ける者(もの)がなかったので、ひとりはついに他(た)の者(もの)を撃(う)って殺(ころ)しました。 7すると全家(ぜんか)族(ぞく)がつかえめに逆(さか)らい立(た)って、『兄弟(きょうだい)を撃(う)ち殺(ころ)した者(もの)を引(ひ)き渡(わ)たすがよい。われわれは彼(かれ)が殺(ころ)したその兄弟(きょうだい)の命(いのち)のために彼(かれ)を殺(ころ)そう』と言(い)い、彼(かれ)らは世継(よつぎ)をも殺(ころ)そうとしました。こうして彼(かれ)らは残(のこ)っているわたしの炭火(すみび)を消(け)して、わたしの夫(おっと)の名(な)をも、跡(あと)継(つぎ)をも、地(ち)のおもてにとどめないようにしようとしています」。

8王(おう)は女(おんな)に言(い)った、「家(いえ)に帰(かえ)りなさい。わたしはあなたのことについて命令(めいれい)を下(くだ)します」。 9テコアの女(おんな)は王(おう)に言(い)った、「わが主(しゅ)、王(おう)よ、わたしとわたしの父(ちち)の家(いえ)にその罪(つみ)を帰(き)してください。どうぞ王(おう)と王(おう)の位(くらい)には罪(つみ)がありませんように」。 10王(おう)は言(い)った、「もしあなたに何(なに)か言(い)う者(もの)があれば、わたしの所(ところ)に連(つ)れてきなさい。そうすれば、その人(ひと)は重(かさ)ねてあなたに触(ふ)れることはないでしょう」。 11女(おんな)は言(い)った、「どうぞ王(おう)が、あなたの神(かみ)、主(しゅ)をおぼえて、血(ち)の報復(ほうふく)をする者(もの)に重(かさ)ねて滅(ほろ)ぼすことをさせず、わたしの子(こ)の殺(ころ)されることのないようにしてください」。王(おう)は言(い)った、「主(しゅ)は生(い)きておられる。あなたの子(こ)の髪(かみ)の毛(け)一筋(すじ)も地(ち)に落(お)ちることはないでしょう」。

12女(おんな)は言(い)った、「どうぞ、つかえめにひと言(こと)、わが主(しゅ)、王(おう)に言(い)わせてください」。ダビデは言(い)った、「言(い)いなさい」。 13女(おんな)は言(い)った、「あなたは、それならばどうして、神(かみ)の民(たみ)に向(む)かってこのような事(こと)を図(はか)られたのですか。王(おう)は今(いま)この事(こと)を言(い)われたことによって自分(じぶん)を罪(つみ)ある者(もの)とされています。それは王(おう)が追放(ついほう)された者(もの)を帰(かえ)らせられないからです。 14わたしたちはみな死(し)ななければなりません。地(ち)にこぼれた水(みず)の再(ふたた)び集(あつ)めることのできないのと同(おな)じです。しかし神(かみ)は、追放(ついほう)された者(もの)が捨(す)てられないように、てだてを設(もう)ける人(ひと)の命(いのち)を取(と)ることはなさいません。 15わたしがこの事(こと)を王(おう)、わが主(しゅ)に言(い)おうとして来(き)たのは、わたしが民(たみ)を恐(おそ)れたからです。つかえめは、こう思(おも)ったのです、『王(おう)に申(もう)し上(あ)げよう。王(おう)は、はしための願(ねが)いのようにしてくださるかもしれない。 16王(おう)は聞(き)いてくださる。わたしとわたしの子(こ)を共(とも)に滅(ほろ)ぼして神(かみ)の嗣(し)業(ぎょう)から離(はな)れさせようとする人(ひと)の手(て)から、はしためを救(すく)い出(だ)してくださるのだから』。 17つかえめはまた、こう思(おも)ったのです、『王(おう)、わが主(しゅ)の言葉(ことば)はわたしを安心(あんしん)させるであろう』と。それは王(おう)、わが主(しゅ)は神(かみ)の使(つかい)のように善(ぜん)と悪(あく)を聞(き)きわけられるからです。どうぞあなたの神(かみ)、主(しゅ)があなたと共(とも)におられますように」。

18王(おう)は女(おんな)に答(こた)えて言(い)った、「わたしが問(と)うことに隠(かく)さず答(こた)えてください」。女(おんな)は言(い)った、「王(おう)、わが主(しゅ)よ、どうぞ言(い)ってください」。 19王(おう)は言(い)った、「このすべての事(こと)において、ヨアブの手(て)があなたと共(とも)にありますか」。女(おんな)は答(こた)えた、「あなたはたしかに生(い)きておられます。王(おう)、わが主(しゅ)よ、すべて王(おう)、わが主(しゅ)の言(い)われた事(こと)から人(ひと)は右(みぎ)にも左(ひだり)にも曲(まが)ることはできません。わたしに命(めい)じたのは、あなたのしもべヨアブです。彼(かれ)がつかえめの口(くち)に、これらの言葉(ことば)をことごとく授(さづ)けたのです。 20事(こと)のなりゆきを変(か)えるため、あなたのしもべヨアブがこの事(こと)をしたのです。わが君(きみ)には神(かみ)の使(つかい)の知恵(ちえ)のような知恵(ちえ)があって、地(ち)の上(うえ)のすべてのことを知(し)っておられます」。

21そこで王(おう)はヨアブに言(い)った、「この事(こと)を許(ゆる)す。行(い)って、若者(わかもの)アブサロムを連(つ)れ帰(かえ)るがよい」。 22ヨアブは地(ち)にひれ伏(ふ)して拝(はい)し、王(おう)を祝福(しゅくふく)した。そしてヨアブは言(い)った、「わが主(しゅ)、王(おう)よ、王(おう)がしもべの願(ねが)いを許(ゆる)されたので、きょうしもべは、あなたの前(まえ)に恵(めぐ)みを得(え)たことを知(し)りました」。 23そこでヨアブは立(た)ってゲシュルに行(い)き、アブサロムをエルサレムに連(つ)れてきた。 24王(おう)は言(い)った、「彼(かれ)を自分(じぶん)の家(いえ)に引(ひ)きこもらせるがよい。わたしの顔(かお)を見(み)てはならない」。こうしてアブサロムは自分(じぶん)の家(いえ)に引(ひ)きこもり、王(おう)の顔(かお)を見(み)なかった。

25さて全(ぜん)イスラエルのうちにアブサロムのように、美(うつく)しさのためほめられた人(ひと)はなかった。その足(あし)の裏(うら)から頭(あたま)の頂(いただき)まで彼(かれ)には傷(きず)がなかった。 26アブサロムがその頭(あたま)を刈(か)る時(とき)、その髪(かみ)の毛(け)をはかったが、王(おう)のはかりで二百シケルあった。毎年(まいねん)の終(おわ)りにそれを刈(か)るのを常(つね)とした。それが重(おも)くなると、彼(かれ)はそれを刈(か)ったのである。 27アブサロムに三人(にん)のむすこと、タマルという名(な)のひとりの娘(むすめ)が生(うま)れた。タマルは美(うつく)しい女(おんな)であった。

28こうしてアブサロムは満(まん)二年(ねん)の間(あいだ)エルサレムに住(す)んだが、王(おう)の顔(かお)を見(み)なかった。 29そこでアブサロムはヨアブを王(おう)のもとにつかわそうとして、ヨアブの所(ところ)に人(ひと)をつかわしたが、ヨアブは彼(かれ)の所(ところ)にこようとはしなかった。彼(かれ)は再(ふたた)び人(ひと)をつかわしたがヨアブはこようとはしなかった。 30そこでアブサロムはその家来(けらい)に言(い)った、「ヨアブの畑(はたけ)はわたしの畑(はたけ)の隣(となり)にあって、そこに大麦(おおむぎ)がある。行(い)ってそれに火(ひ)を放(はな)ちなさい」。アブサロムの家来(けらい)たちはその畑(はたけ)に火(ひ)を放(はな)った。 31ヨアブは立(た)ってアブサロムの家(いえ)にきて彼(かれ)に言(い)った、「どうしてあなたの家来(けらい)たちはわたしの畑(はたけ)に火(ひ)を放(はな)ったのですか」。 32アブサロムはヨアブに言(い)った、「わたしはあなたに人(ひと)をつかわして、ここへ来(く)るようにと言(い)ったのです。あなたを王(おう)のもとにつかわし、『なんのためにわたしはゲシュルからきたのですか。なおあそこにいたならば良(よ)かったでしょうに』と言(い)わせようとしたのです。それゆえ今(いま)わたしに王(おう)の顔(かお)を見(み)させてください。もしわたしに罪(つみ)があるなら王(おう)にわたしを殺(ころ)させてください」。 33そこでヨアブは王(おう)のもとへ行(い)って告(つ)げたので、王(おう)はアブサロムを召(め)しよせた。彼(かれ)は王(おう)のもとにきて、王(おう)の前(まえ)に地(ち)にひれ伏(ふ)して拝(はい)した。王(おう)はアブサロムに口(くち)づけした。

第一五章

1この後(のち)、アブサロムは自分(じぶん)のために戦車(せんしゃ)と馬(うま)、および自分(じぶん)の前(まえ)に駆(か)ける者(もの)五十人(にん)を備(そな)えた。 2アブサロムは早(はや)く起(お)きて門(もん)の道(みち)のかたわらに立(た)つのを常(つね)とした。人(ひと)が訴(うった)えがあって王(おう)に裁判(さいばん)を求(もと)めに来(く)ると、アブサロムはその人(ひと)を呼(よ)んで言(い)った、「あなたはどの町(まち)の者(もの)ですか」。その人(ひと)が「しもべはイスラエルのこれこれの部族(ぶぞく)のものです」と言(い)うと、 3アブサロムはその人(ひと)に言(い)った、「見(み)よ、あなたの要求(ようきゅう)は良(よ)く、また正(ただ)しい。しかしあなたのことを聞(き)くべき人(ひと)は王(おう)がまだ立(た)てていない」。 4アブサロムはまた言(い)った、「ああ、わたしがこの地(ち)のさばきびとであったならばよいのに。そうすれば訴(うった)え、または申(もうし)立(た)てのあるものは、皆(みな)わたしの所(ところ)にきて、わたしはこれに公平(こうへい)なさばきを行(おこな)うことができるのだが」。 5そして人(ひと)が彼(かれ)に敬礼(けいれい)しようとして近(ちか)づくと、彼(かれ)は手(て)を伸(の)べ、その人(ひと)を抱(だ)きかかえて口(くち)づけした。 6アブサロムは王(おう)にさばきを求(もと)めて来(く)るすべてのイスラエルびとにこのようにした。こうしてアブサロムはイスラエルの人々(ひとびと)の心(こころ)を自分(じぶん)のものとした。

7そして四年(ねん)の終(おわ)りに、アブサロムは王(おう)に言(い)った、「どうぞわたしを行(い)かせ、ヘブロンで、かつて主(しゅ)に立(た)てた誓(ちか)いを果(はた)させてください。 8それは、しもべがスリヤのゲシュルにいた時(とき)、誓(ちか)いを立(た)てて、『もし主(しゅ)がほんとうにわたしをエルサレムに連(つ)れ帰(かえ)ってくださるならば、わたしは主(しゅ)に礼拝(れいはい)をささげます』と言(い)ったからです」。 9王(おう)が彼(かれ)に、「安(やす)らかに行(い)きなさい」と言(い)ったので、彼(かれ)は立(た)ってヘブロンへ行(い)った。 10そしてアブサロムは密使(みっし)をイスラエルのすべての部族(ぶぞく)のうちにつかわして言(い)った、「ラッパの響(ひび)きを聞(き)くならば、『アブサロムがヘブロンで王(おう)となった』と言(い)いなさい」。 11二百人(にん)の招(まね)かれた者(もの)がエルサレムからアブサロムと共(とも)に行(い)った。彼(かれ)らは何(なに)心(こころ)なく行(い)き、何事(なにごと)をも知(し)らなかった。 12アブサロムは犠牲(ぎせい)をささげている間(あいだ)に人(ひと)をつかわして、ダビデの議(ぎ)官(かん)ギロびとアヒトペルを、その町(まち)ギロから呼(よ)び寄(よ)せた。徒党(ととう)は強(つよ)く、民(たみ)はしだいにアブサロムに加(くわ)わった。

13ひとりの使者(ししゃ)がダビデのところにきて、「イスラエルの人々(ひとびと)の心(こころ)はアブサロムに従(したが)いました」と言(い)った。 14ダビデは、自分(じぶん)と一緒(いっしょ)にエルサレムにいるすべての家来(けらい)に言(い)った、「立(た)て、われわれは逃(に)げよう。そうしなければアブサロムの前(まえ)からのがれることはできなくなるであろう。急(いそ)いで行(い)くがよい。さもないと、彼(かれ)らが急(いそ)ぎ追(お)いついて、われわれに害(がい)をこうむらせ、つるぎをもって町(まち)を撃(う)つであろう」。 15王(おう)のしもべたちは王(おう)に言(い)った、「しもべたちは、わが主君(しゅくん)、王(おう)の選(えら)ばれる所(ところ)をすべて行(おこな)います」。 16こうして王(おう)は出(で)て行(い)き、その全家(ぜんか)は彼(かれ)に従(したが)った。王(おう)は十人(にん)のめかけを残(のこ)して家(いえ)を守(まも)らせた。 17王(おう)は出(で)て行(い)き、民(たみ)はみな彼(かれ)に従(したが)った。彼(かれ)らは町(まち)はずれの家(いえ)にとどまった。 18彼(かれ)のしもべたちは皆(みな)、彼(かれ)のかたわらを進(すす)み、すべてのケレテびとと、すべてのペレテびと、および彼(かれ)に従(したが)ってガテからきた六百人(にん)のガテびとは皆(みな)、王(おう)の前(まえ)に進(すす)んだ。

19時(とき)に王(おう)はガテびとイッタイに言(い)った、「どうしてあなたもまた、われわれと共(とも)に行(い)くのですか。あなたは帰(かえ)って王(おう)と共(とも)にいなさい。あなたは外国(がいこく)人(じん)で、また自分(じぶん)の国(くに)から追放(ついほう)された者(もの)だからです。 20あなたは、きのう来(き)たばかりです。わたしは自分(じぶん)の行(い)く所(ところ)を知(し)らずに行(い)くのに、どうしてきょう、あなたを、われわれと共(とも)にさまよわせてよいでしょう。あなたは帰(かえ)りなさい。あなたの兄弟(きょうだい)たちも連(つ)れて帰(かえ)りなさい。どうぞ主(しゅ)が恵(めぐ)みと真実(しんじつ)をあなたに示(しめ)してくださるように」。 21しかしイッタイは王(おう)に答(こた)えた、「主(しゅ)は生(い)きておられる。わが君(きみ)、王(おう)は生(い)きておられる。わが君(きみ)、王(おう)のおられる所(ところ)に、死(し)ぬも生(い)きるも、しもべもまたそこにおります」。 22ダビデはイッタイに言(い)った、「では進(すす)んで行(い)きなさい」。そこでガテびとイッタイは進(すす)み、また彼(かれ)のすべての従者(じゅうしゃ)および彼(かれ)と共(とも)にいた子(こ)どもたちも皆(みな)、進(すす)んだ。 23国中(くにぢゅう)みな大声(おおごえ)で泣(な)いた。民(たみ)はみな進(すす)んだ。王(おう)もまたキデロンの谷(たに)を渡(わた)って進(すす)み、民(たみ)は皆(みな)進(すす)んで荒野(あらの)の方(ほう)に向(む)かった。

24そしてアビヤタルも上(のぼ)ってきた。見(み)よ、ザドクおよび彼(かれ)と共(とも)にいるすべてのレビびともまた、神(かみ)の契約(けいやく)の箱(はこ)をかいてきた。彼(かれ)らは神(かみ)の箱(はこ)をおろして、民(たみ)がことごとく町(まち)を出(で)てしまうのを待(ま)った。 25そこで王(おう)はザドクに言(い)った、「神(かみ)の箱(はこ)を町(まち)にかきもどすがよい。もしわたしが主(しゅ)の前(まえ)に恵(めぐ)みを得(え)るならば、主(しゅ)はわたしを連(つ)れ帰(かえ)って、わたしにその箱(はこ)とそのすまいとを見(み)させてくださるであろう。 26しかしもし主(しゅ)が、『わたしはおまえを喜(よろこ)ばない』とそう言(い)われるのであれば、どうぞ主(しゅ)が良(よ)しと思(おも)われることをわたしにしてくださるように。わたしはここにおります」。 27王(おう)はまた祭司(さいし)ザドクに言(い)った、「見(み)よ、あなたもアビヤタルも、ふたりの子(こ)たち、すなわちあなたの子(こ)アヒマアズとアビヤタルの子(こ)ヨナタンを連(つ)れて、安(やす)らかに町(まち)に帰(かえ)りなさい。 28わたしはあなたがたから言葉(ことば)があって知(し)らせをうけるまで、荒野(あらの)の渡(わた)し場(ば)にとどまります」。 29そこでザドクとアビヤタルは神(かみ)の箱(はこ)をエルサレムにかきもどり、そこにとどまった。

30ダビデはオリブ山(やま)の坂道(さかみち)を登(のぼ)ったが、登(のぼ)る時(とき)に泣(な)き、その頭(あたま)をおおい、はだしで行(い)った。彼(かれ)と共(とも)にいる民(たみ)もみな頭(あたま)をおおって登(のぼ)り、泣(な)きながら登(のぼ)った。 31時(とき)に、「アヒトペルがアブサロムと共謀(きょうぼう)した者(もの)のうちにいる」とダビデに告(つ)げる人(ひと)があったのでダビデは言(い)った、「主(しゅ)よ、どうぞアヒトペルの計略(けいりゃく)を愚(おろ)かなものにしてください」。

32ダビデが山(やま)の頂(いただき)にある神(かみ)を礼(れい)拝(はい)する場所(ばしょ)にきた時(とき)、見(み)よ、アルキびとホシャイはその上着(うわぎ)を裂(さ)き、頭(あたま)に土(つち)をかぶり、来(き)てダビデを迎(むか)えた。 33ダビデは彼(かれ)に言(い)った、「もしあなたがわたしと共(とも)に進(すす)むならば、わたしの重荷(おもに)となるであろう。 34しかしもしあなたが町(まち)に帰(かえ)ってアブサロムに向(む)かい、『王(おう)よ、わたしはあなたのしもべとなります。わたしがこれまで、あなたの父(ちち)のしもべであったように、わたしは今(いま)あなたのしもべとなります』と言(い)うならば、あなたはわたしのためにアヒトペルの計略(けいりゃく)を破(やぶ)ることができるであろう。 35祭司(さいし)たち、ザドクとアビヤタルとは、あなたと共(とも)にあそこにいるではないか。それゆえ、あなたは王(おう)の家(いえ)から聞(き)くことをことごとく祭司(さいし)たち、ザドクとアビヤタルとに告(つ)げなさい。 36あそこには彼(かれ)らと共(とも)にそのふたりの子(こ)たち、すなわちザドクの子(こ)アヒマアズとアビヤタルの子(こ)ヨナタンとがいる。あなたがたは聞(き)いたことをことごとく彼(かれ)らの手(て)によってわたしに通報(つうほう)しなさい」。 37そこでダビデの友(とも)ホシャイは町(まち)にはいった。その時(とき)アブサロムはすでにエルサレムにはいっていた。

第一六章

1ダビデが山(やま)の頂(いただき)を過(す)ぎて、すこし行(い)った時(とき)、メピボセテのしもべヂバは、くらを置(お)いた二頭(とう)のろばを引(ひ)き、その上(うえ)にパン二百個(こ)、干(ほし)ぶどう百ふさ、夏(なつ)のくだもの一百、ぶどう酒(しゅ)一袋(ふくろ)を載(の)せてきてダビデを迎(むか)えた。 2王(おう)はヂバに言(い)った、「あなたはどうしてこれらのものを持(も)ってきたのですか」。ヂバは答(こた)えた、「ろばは王(おう)の家族(かぞく)が乗(の)るため、パンと夏(なつ)のくだものは若者(わかもの)たちが食(た)べるため、ぶどう酒(しゅ)は荒野(あらの)で弱(よわ)った者(もの)が飲(の)むためです」。 3王(おう)は言(い)った、「あなたの主人(しゅじん)の子(こ)はどこにおるのですか」。ヂバは王(おう)に言(い)った、「エルサレムにとどまっています。彼(かれ)は、『イスラエルの家(いえ)はきょう、わたしの父(ちち)の国(くに)をわたしに返(かえ)すであろう』と思(おも)ったのです」。 4王(おう)はヂバに言(い)った、「見(み)よ、メピボセテのものはことごとくあなたのものです」。ヂバは言(い)った、「わたしは敬意(けいい)を表(あらわ)します。わが主(しゅ)、王(おう)よ、あなたの前(まえ)にいつまでも恵(めぐ)みを得(え)させてください」。

5ダビデ王(おう)がバホリムにきた時(とき)、サウルの家(いえ)の一族(いちぞく)の者(もの)がひとりそこから出(で)てきた。その名(な)をシメイといい、ゲラの子(こ)である。彼(かれ)は出(で)てきながら絶(た)えずのろった。 6そして彼(かれ)はダビデとダビデ王(おう)のもろもろの家来(けらい)に向(む)かって石(いし)を投(な)げた。その時(とき)、民(たみ)と勇士(ゆうし)たちはみな王(おう)の左右(さゆう)にいた。 7シメイはのろう時(とき)にこう言(い)った、「血(ち)を流(なが)す人(ひと)よ、よこしまな人(ひと)よ、立(た)ち去(さ)れ、立(た)ち去(さ)れ。 8あなたが代(かわ)って王(おう)となったサウルの家(いえ)の血(ち)をすべて主(しゅ)があなたに報(むく)いられたのだ。主(しゅ)は王国(おうこく)をあなたの子(こ)アブサロムの手(て)に渡(わた)された。見(み)よ、あなたは血(ち)を流(なが)す人(ひと)だから、災(わざわい)に会(あ)うのだ」。

9時(とき)にゼルヤの子(こ)アビシャイは王(おう)に言(い)った、「この死(し)んだ犬(いぬ)がどうしてわが主(しゅ)、王(おう)をのろってよかろうか。わたしに、行(い)って彼(かれ)の首(くび)を取(と)らせてください」。 10しかし王(おう)は言(い)った、「ゼルヤの子(こ)たちよ、あなたがたと、なんのかかわりがあるのか。彼(かれ)がのろうのは、主(しゅ)が彼(かれ)に、『ダビデをのろえ』と言(い)われたからであるならば、だれが、『あなたはどうしてこういうことをするのか』と言(い)ってよいであろうか」。 11ダビデはまたアビシャイと自分(じぶん)のすべての家来(けらい)とに言(い)った、「わたしの身(み)から出(で)たわが子(こ)がわたしの命(いのち)を求(もと)めている。今(いま)、このベニヤミンびととしてはなおさらだ。彼(かれ)を許(ゆる)してのろわせておきなさい。主(しゅ)が彼(かれ)に命(めい)じられたのだ。 12主(しゅ)はわたしの悩(なや)みを顧(かえり)みてくださるかもしれない。また主(しゅ)はきょう彼(かれ)ののろいにかえて、わたしに善(ぜん)を報(むく)いてくださるかも知(し)れない」。 13こうしてダビデとその従者(じゅうしゃ)たちとは道(みち)を行(い)ったが、シメイはダビデに並(なら)んで向(む)かいの山(やま)の中腹(ちゅうふく)を行(い)き、行(い)きながらのろい、また彼(かれ)に向(む)かって石(いし)や、ちりを投(な)げつけた。 14王(おう)および共(とも)にいる民(たみ)はみな疲(つか)れてヨルダンに着(つ)き、彼(かれ)はその所(ところ)で息(いき)をついだ。

15さてアブサロムとすべての民(たみ)、イスラエルの人々(ひとびと)はエルサレムにきた。アヒトペルもアブサロムと共(とも)にいた。 16ダビデの友(とも)であるアルキびとホシャイがアブサロムのもとにきた時(とき)、ホシャイはアブサロムに「王(おう)万歳(ばんざい)、王(おう)万歳(ばんざい)」と言(い)った。 17アブサロムはホシャイに言(い)った、「これはあなたがその友(とも)に示(しめ)す真実(しんじつ)なのか。あなたはどうしてあなたの友(とも)と一緒(いっしょ)に行(い)かなかったのか」。 18ホシャイはアブサロムに言(い)った、「いいえ、主(しゅ)とこの民(たみ)とイスラエルのすべての人々(ひとびと)が選(えら)んだ者(もの)にわたしは属(ぞく)し、かつその人(ひと)と一緒(いっしょ)におります。 19かつまたわたしはだれに仕(つか)えるべきですか。その子(こ)の前(まえ)に仕(つか)えるべきではありませんか。あなたの父(ちち)の前(まえ)に仕(つか)えたように、わたしはあなたの前(まえ)に仕(つか)えます」。

20そこでアブサロムはアヒトペルに言(い)った、「あなたがたは、われわれがどうしたらよいのか、計(はか)りごとを述(の)べなさい」。 21アヒトペルはアブサロムに言(い)った、「あなたの父(ちち)が家(いえ)を守(まも)るために残(のこ)された、めかけたちの所(ところ)にはいりなさい。そうすればイスラエルは皆(みな)あなたが父上(ちちうえ)に憎(にく)まれることを聞(き)くでしょう。そしてあなたと一緒(いっしょ)にいる者(もの)の手(て)は強(つよ)くなるでしょう」。 22こうして彼(かれ)らがアブサロムのために屋上(おくじょう)に天幕(てんまく)を張(は)ったので、アブサロムは全(ぜん)イスラエルの目(め)の前(まえ)で父(ちち)のめかけたちの所(ところ)にはいった。 23そのころアヒトペルが授(さづ)ける計(はか)りごとは人(ひと)が神(かみ)のみ告(つ)げを伺(うかが)うようであった。アヒトペルの計(はか)りごとは皆(みな)ダビデにもアブサロムにも共(とも)にそのように思(おも)われた。

第一七章

1時(とき)にアヒトペルはアブサロムに言(い)った、「わたしに一万二千の人(ひと)を選(えら)び出(だ)させてください。わたしは立(た)って、今夜(こんや)ダビデのあとを追(お)い、 2彼(かれ)が疲(つか)れて手(て)が弱(よわ)くなっているところを襲(おそ)って、彼(かれ)をあわてさせましょう。そして彼(かれ)と共(とも)にいる民(たみ)がみな逃(に)げるとき、わたしは王(おう)ひとりを撃(う)ち取(と)り、 3すべての民(たみ)を花嫁(はなよめ)がその夫(おっと)のもとに帰(かえ)るようにあなたに帰(かえ)らせましょう。あなたが求(もと)めておられるのはただひとりの命(いのち)だけですから、民(たみ)はみな穏(おだ)やかになるでしょう」。 4この言葉(ことば)はアブサロムとイスラエルのすべての長老(ちょうろう)の心(こころ)にかなった。

5そこでアブサロムは言(い)った、「アルキびとホシャイをも呼(よ)びよせなさい。われわれは彼(かれ)の言(い)うことを聞(き)きましょう」。 6ホシャイがアブサロムのもとにきた時(とき)、アブサロムは彼(かれ)に言(い)った、「アヒトペルはこのように言(い)った。われわれは彼(かれ)の言葉(ことば)のように行(おこな)うべきか。いけないのであれば、言(い)いなさい」。 7ホシャイはアブサロムに言(い)った、「このたびアヒトペルが授(さづ)けた計(はか)りごとは良(よ)くありません」。 8ホシャイはまた言(い)った、「ごぞんじのように、あなたの父(ちち)とその従者(じゅうしゃ)たちとは勇士(ゆうし)です。その上(うえ)彼(かれ)らは、野(の)で子(こ)を奪(うば)われた熊(くま)のように、ひどく怒(いか)っています。また、あなたの父(ちち)はいくさびとですから、民(たみ)と共(とも)に宿(やど)らないでしょう。 9彼(かれ)は今(いま)でも穴(あな)の中(なか)か、どこかほかの所(ところ)にかくれています。もし民(たみ)のうちの幾(いく)人(ひと)かが手始(てはじ)めに倒(たお)れるならば、それを聞(き)く者(もの)はだれでも、『アブサロムに従(したが)う民(たみ)のうちに戦死者(せんししゃ)があった』と言(い)うでしょう。 10そうすれば、ししの心(こころ)のような心(こころ)のある勇(いさ)ましい人(ひと)であっても、恐(おそ)れて消(き)え去(さ)ってしまうでしょう。それはイスラエルのすべての人(ひと)が、あなたの父(ちち)の勇士(ゆうし)であること、また彼(かれ)と共(とも)にいる者(もの)が、勇(いさ)ましい人々(ひとびと)であることを知(し)っているからです。 11ところでわたしの計(はか)りごとは、イスラエルをダンからベエルシバまで、海(うみ)べの砂(すな)のように多(おお)くあなたのもとに集(あつ)めて、あなたみずから戦(たたか)いに臨(のぞ)むことです。 12こうしてわれわれは彼(かれ)の見(み)つかる場所(ばしょ)で彼(かれ)を襲(おそ)い、つゆが地(ち)におりるように彼(かれ)の上(うえ)に下(くだ)る。そして彼(かれ)および彼(かれ)と共(とも)にいるすべての人(ひと)をひとりも残(のこ)さないでしょう。 13もし彼(かれ)がいずれかの町(まち)に退(しりぞ)くならば、全(ぜん)イスラエルはその町(まち)になわをかけ、われわれはそれを谷(たに)に引(ひ)き倒(たお)して、そこに一つの小石(こいし)も見(み)られないようにするでしょう」。 14アブサロムとイスラエルの人々(ひとびと)はみな、「アルキびとホシャイの計(はか)りごとは、アヒトペルの計(はか)りごとよりもよい」と言(い)った。それは主(しゅ)がアブサロムに災(わざわい)を下(くだ)そうとして、アヒトペルの良(よ)い計(はか)りごとを破(やぶ)ることを定(さだ)められたからである。

15そこでホシャイは祭司(さいし)たち、ザドクとアビヤタルとに言(い)った、「アヒトペルはアブサロムとイスラエルの長老(ちょうろう)たちのためにこういう計(はか)りごとをした。またわたしはこういう計(はか)りごとをした。 16それゆえ、あなたがたはすみやかに人(ひと)をつかわしてダビデに告(つ)げ、『今夜(こんや)、荒野(あらの)の渡(わた)し場(ば)に宿(やど)らないで、必(かなら)ず渡(わた)って行(い)きなさい。さもないと王(おう)および共(とも)にいる民(たみ)はみな、滅(ほろ)ぼされるでしょう』と言(い)いなさい」。 17時(とき)に、ヨナタンとアヒマアズはエンロゲルで待(ま)っていた。ひとりのつかえめが行(い)って彼(かれ)らに告(つ)げ、彼(かれ)らは行(い)ってダビデ王(おう)に告(つ)げるのが常(つね)であった。それは彼(かれ)らが町(まち)にはいるのを見(み)られないようにするためである。 18ところがひとりの若者(わかもの)が彼(かれ)らを見(み)てアブサロムに告(つ)げたので、彼(かれ)らふたりは急(いそ)いで去(さ)り、バホリムの、あるひとりの人(ひと)の家(いえ)にきた。その人(ひと)の庭(にわ)に井戸(いど)があって、彼(かれ)らはその中(なか)に下(くだ)ったので、 19女(おんな)はおおいを取(と)ってきて井戸(いど)の口(くち)の上(うえ)にひろげ、麦(むぎ)をその上(うえ)にまき散(ち)らした。それゆえその事(こと)は何(なに)も知(し)れなかった。 20アブサロムのしもべたちはその女(おんな)の家(いえ)にきて言(い)った、「アヒマアズとヨナタンはどこにいますか」。女(おんな)は彼(かれ)らに言(い)った、「あの人々(ひとびと)は小川(おがわ)を渡(わた)って行(い)きました」。彼(かれ)らは尋(たず)ねたが見当(みあた)らなかったのでエルサレムに帰(かえ)った。

21彼(かれ)らが去(さ)った後(のち)、人々(ひとびと)は井戸(いど)から上(のぼ)り、行(い)ってダビデ王(おう)に告(つ)げた。すなわち彼(かれ)らはダビデに言(い)った、「立(た)って、すみやかに川(かわ)を渡(わた)りなさい。アヒトペルがあなたがたに対(たい)してこういう計(はか)りごとをしたからです」。 22そこでダビデは立(た)って、共(とも)にいるすべての民(たみ)と一緒(いっしょ)にヨルダンを渡(わた)った。夜明(よあ)けには、ヨルダンを渡(わた)らない者(もの)はひとりもなかった。

23アヒトペルは、自分(じぶん)の計(はか)りごとが行(おこな)われないのを見(み)て、ろばにくらを置(お)き、立(た)って自分(じぶん)の町(まち)に行(い)き、その家(いえ)に帰(かえ)った。そして家(いえ)の人(ひと)に遺言(ゆいごん)してみずからくびれて死(し)に、その父(ちち)の墓(はか)に葬(ほうむ)られた。

24ダビデはマハナイムにきた。またアブサロムは自分(じぶん)と共(とも)にいるイスラエルのすべての人々(ひとびと)と一緒(いっしょ)にヨルダンを渡(わた)った。 25アブサロムはアマサをヨアブの代(かわ)りに軍(ぐん)の長(ちょう)とした。アマサはかのナハシの娘(むすめ)でヨアブの母(はは)ゼルヤの妹(いもうと)であるアビガルをめとったイシマエルびと、名(な)はイトラという人(ひと)の子(こ)である。 26そしてイスラエルとアブサロムはギレアデの地(ち)に陣取(じんど)った。

27ダビデがマハナイムにきた時(とき)、アンモンの人々(ひとびと)のうちのラバのナハシの子(こ)ショビと、ロ・デバルのアンミエルの子(こ)マキル、およびロゲリムのギレアデびとバルジライは、 28寝床(ねどこ)と鉢(はち)、土器(どき)、小麦(こむぎ)、大麦(おおむぎ)、粉(こな)、いり麦(むぎ)、豆(まめ)、レンズ豆(まめ)、 29蜜(みつ)、凝乳(ぎょうにゅう)、羊(ひつじ)、乾酪(かんらく)をダビデおよび共(とも)にいる民(たみ)が食(た)べるために持(も)ってきた。それは彼(かれ)らが、「民(たみ)は荒野(あらの)で飢(う)え疲(つか)れかわいている」と思(おも)ったからである。

第一八章

1さてダビデは自分(じぶん)と共(とも)にいる民(たみ)を調(しら)べて、その上(うえ)に千人(にん)の長(ちょう)、百人(にん)の長(ちょう)を立(た)てた。 2そしてダビデは民(たみ)をつかわし、三分(ぶん)の一をヨアブの手(て)に、三分(ぶん)の一をゼルヤの子(こ)ヨアブの兄弟(きょうだい)アビシャイの手(て)に、三分(ぶん)の一をガテびとイッタイの手(て)にあずけた。こうして王(おう)は民(たみ)に言(い)った、「わたしもまた必(かなら)ずあなたがたと一緒(いっしょ)に出(で)ます」。 3しかし民(たみ)は言(い)った、「あなたは出(で)てはなりません。それはわれわれがどんなに逃(に)げても、彼(かれ)らはわれわれに心(こころ)をとめず、われわれの半(なか)ばが死(し)んでも、われわれに心(こころ)をとめないからです。しかしあなたはわれわれの一万に等(ひと)しいのです。それゆえあなたは町(まち)の中(なか)からわれわれを助(たす)けてくださる方(ほう)がよろしい」。 4王(おう)は彼(かれ)らに言(い)った、「あなたがたの最(もっと)も良(よ)いと思(おも)うことをわたしはしましょう」。こうして王(おう)は門(もん)のかたわらに立(た)ち、民(たみ)は皆(みな)あるいは百人(にん)、あるいは千人(にん)となって出(で)て行(い)った。 5王(おう)はヨアブ、アビシャイおよびイッタイに命(めい)じて、「わたしのため、若者(わかもの)アブサロムをおだやかに扱(あつか)うように」と言(い)った。王(おう)がアブサロムの事(こと)についてすべての長(ちょう)たちに命(めい)じている時(とき)、民(たみ)は皆(みな)聞(き)いていた。

6こうして民(たみ)はイスラエルに向(む)かって野(の)に出(で)て行(い)き、エフライムの森(もり)で戦(たたか)ったが、 7イスラエルの民(たみ)はその所(ところ)でダビデの家来(けらい)たちの前(まえ)に敗(やぶ)れた。その日(ひ)その所(ところ)に戦死者(せんししゃ)が多(おお)く、二万に及(およ)んだ。 8そして戦(たたか)いはあまねくその地(ち)のおもてに広(ひろ)がった。この日(ひ)、森(もり)の滅(ほろ)ぼした者(もの)は、つるぎの滅(ほろ)ぼした者(もの)よりも多(おお)かった。

9さてアブサロムはダビデの家来(けらい)たちに行(い)き会(あ)った。その時(とき)アブサロムは騾馬(らば)に乗(の)っていたが、騾馬(らば)は大(おお)きいかしの木(き)の、茂(しげ)った枝(えだ)の下(した)を通(とお)ったので、アブサロムの頭(あたま)がそのかしの木(き)にかかって、彼(かれ)は天地(てんち)の間(あいだ)につりさがった。騾馬(らば)は彼(かれ)を捨(す)てて過(す)ぎて行(い)った。 10ひとりの人(ひと)がそれを見(み)てヨアブに告(つ)げて言(い)った、「わたしはアブサロムが、かしの木(き)にかかっているのを見(み)ました」。 11ヨアブはそれを告(つ)げた人(ひと)に言(い)った、「あなたはそれを見(み)たというのか。それなら、どうしてあなたは彼(かれ)をその所(ところ)で、地(ち)に撃(う)ち落(おと)さなかったのか。わたしはあなたに銀(ぎん)十シケルと帯(おび)一筋(すじ)を与(あた)えたであろうに」。 12その人(ひと)はヨアブに言(い)った、「たといわたしの手(て)に銀(ぎん)千シケルを受(う)けても、手(て)を出(だ)して王(おう)の子(こ)に敵(てき)することはしません。王(おう)はわれわれが聞(き)いているところで、あなたとアビシャイとイッタイに、『わたしのため若者(わかもの)アブサロムを保護(ほご)せよ』と命(めい)じられたからです。 13もしわたしがそむいて彼(かれ)の命(いのち)をそこなったのであれば、何事(なにごと)も王(おう)に隠(かく)れることはありませんから、あなたはみずから立(た)ってわたしを責(せ)められたでしょう」。 14そこで、ヨアブは「こうしてあなたと共(とも)にとどまってはおられない」と言(い)って、手(て)に三筋(すじ)の投(な)げやりを取(と)り、あのかしの木(き)にかかって、なお生(い)きているアブサロムの心臓(しんぞう)にこれを突(つ)き通(とお)した。 15ヨアブの武器(ぶき)を執(と)る十人(にん)の若者(わかもの)たちは取(と)り巻(ま)いて、アブサロムを撃(う)ち殺(ころ)した。

16こうしてヨアブがラッパを吹(ふ)いたので、民(たみ)はイスラエルのあとを追(お)うことをやめて帰(かえ)った。ヨアブが民(たみ)を引(ひ)きとめたからである。 17人々(ひとびと)はアブサロムを取(と)って、森(もり)の中(なか)の大(おお)きな穴(あな)に投(な)げいれ、その上(うえ)にひじょうに大(おお)きい石塚(いしづか)を積(つ)み上(あ)げた。そしてイスラエルはみなおのおのその天幕(てんまく)に逃(に)げ帰(かえ)った。 18さてアブサロムは生(い)きている間(あいだ)に、王(おう)の谷(たに)に自分(じぶん)のために一つの柱(はしら)を建(た)てた。それは彼(かれ)が、「わたしは自分(じぶん)の名(な)を伝(つた)える子(こ)がない」と思(おも)ったからである。彼(かれ)はその柱(はしら)に自分(じぶん)の名(な)をつけた。その柱(はしら)は今日(こんにち)までアブサロムの碑(いしぶみ)ととなえられている。

19さてザドクの子(こ)アヒマアズは言(い)った、「わたしは走(はし)って行(い)って、主(しゅ)が王(おう)を敵(てき)の手(て)から救(すく)い出(だ)されたおとずれを王(おう)に伝(つた)えましょう」。 20ヨアブは彼(かれ)に言(い)った、「きょうは、おとずれを伝(つた)えてはならない。おとずれを伝(つた)えるのは、ほかの日(ひ)にしなさい。きょうは王(おう)の子(こ)が死(し)んだので、おとずれを伝(つた)えてはならない」。 21ヨアブはクシびとに言(い)った、「行(い)って、あなたの見(み)た事(こと)を王(おう)に告(つ)げなさい」。クシびとはヨアブに礼(れい)をして走(はし)って行(い)った。 22ザドクの子(こ)アヒマアズは重(かさ)ねてヨアブに言(い)った、「何事(なにごと)があろうとも、わたしにもクシびとのあとから走(はし)って行(い)かせてください」。ヨアブは言(い)った、「子(こ)よ、おとずれの報(むく)いを得(え)られないのに、どうしてあなたは走(はし)って行(い)こうとするのか」。 23彼(かれ)は言(い)った、「何事(なにごと)があろうとも、わたしは走(はし)って行(い)きます」。ヨアブは彼(かれ)に言(い)った、「走(はし)って行(い)きなさい」。そこでアヒマアズは低地(ていち)の道(みち)を走(はし)って行(い)き、クシびとを追(お)い越(こ)した。

24時(とき)にダビデは二つの門(もん)の間(あいだ)にすわっていた。そして見張(みは)りの者(もの)が城壁(じょうへき)の門(もん)の屋根(やね)にのぼり、目(め)をあげて見(み)ていると、ただひとりで走(はし)ってくる者(もの)があった。 25見張(みは)りの者(もの)が呼(よ)ばわって王(おう)に告(つ)げたので、王(おう)は言(い)った、「もしひとりならば、その口(くち)におとずれがあるであろう」。その人(ひと)は急(いそ)いできて近(ちか)づいた。 26見張(みは)りの者(もの)は、ほかにまたひとり走(はし)ってくるのを見(み)たので、門(もん)の方(ほう)に呼(よ)ばわって言(い)った、「見(み)よ、ほかにただひとりで走(はし)って来(く)る者(もの)があります」。王(おう)は言(い)った、「彼(かれ)もまたおとずれを持(も)ってくるのだ」。 27見張(みは)りの者(もの)は言(い)った、「まっ先(さき)に走(はし)って来(く)る人(ひと)はザドクの子(こ)アヒマアズのようです」。王(おう)は言(い)った、「彼(かれ)は良(よ)い人(ひと)だ。良(よ)いおとずれを持(も)ってくるであろう」。

28時(とき)にアヒマアズは呼(よ)ばわって王(おう)に言(い)った、「平安(へいあん)でいらせられますように」。そして王(おう)の前(まえ)に地(ち)にひれ伏(ふ)して言(い)った、「あなたの神(かみ)、主(しゅ)はほむべきかな。主(しゅ)は王(おう)、わが君(きみ)に敵(てき)して手(て)をあげた人々(ひとびと)を引(ひ)き渡(わた)されました」。 29王(おう)は言(い)った、「若者(わかもの)アブサロムは平安(へいあん)ですか」。アヒマアズは答(こた)えた、「ヨアブがしもべをつかわす時(とき)、わたしは大(おお)きな騒(さわ)ぎを見(み)ましたが、何事(なにごと)であったか知(し)りません」。 30王(おう)は言(い)った、「わきへ行(い)って、そこに立(た)っていなさい」。彼(かれ)はわきへ行(い)って立(た)った。

31その時(とき)クシびとがきた。そしてそのクシびとは言(い)った、「わが君(きみ)、王(おう)が良(よ)いおとずれをお受(う)けくださるよう。主(しゅ)はきょう、すべてあなたに敵(てき)して立(た)った者(もの)どもの手(て)から、あなたを救(すく)い出(だ)されたのです」。 32王(おう)はクシびとに言(い)った、「若者(わかもの)アブサロムは平安(へいあん)ですか」。クシびとは答(こた)えた、「王(おう)、わが君(きみ)の敵(てき)、およびすべてあなたに敵(てき)して立(た)ち、害(がい)をしようとする者(もの)は、あの若者(わかもの)のようになりますように」。 33王(おう)はひじょうに悲(かな)しみ、門(もん)の上(うえ)のへやに上(のぼ)って泣(な)いた。彼(かれ)は行(い)きながらこのように言(い)った、「わが子(こ)アブサロムよ。わが子(こ)、わが子(こ)アブサロムよ。ああ、わたしが代(かわ)って死(し)ねばよかったのに。アブサロム、わが子(こ)よ、わが子(こ)よ」。

第一九章

1時(とき)にヨアブに告(つ)げる者(もの)があって、「見(み)よ、王(おう)はアブサロムのために泣(な)き悲(かな)しんでいる」と言(い)った。 2こうしてその日(ひ)の勝利(しょうり)はすべての民(たみ)の悲(かな)しみとなった。それはその日(ひ)、民(たみ)が、「王(おう)はその子(こ)のために悲(かな)しんでいる」と人(ひと)の言(い)うのを聞(き)いたからである。 3そして民(たみ)はその日(ひ)、戦(たたか)いに逃(に)げて恥(は)じている民(たみ)がひそかに、はいるように、ひそかに町(まち)にはいった。 4王(おう)は顔(かお)をおおった。そして王(おう)は大声(おおごえ)に叫(さけ)んで、「わが子(こ)アブサロムよ。アブサロム、わが子(こ)よ、わが子(こ)よ」と言(い)った。 5時(とき)にヨアブは家(いえ)にはいり、王(おう)のもとにきて言(い)った、「あなたは、きょう、あなたの命(いのち)と、あなたのむすこ娘(むすめ)たちの命(いのち)、およびあなたの妻(つま)たちの命(いのち)と、めかけたちの命(いのち)を救(すく)ったすべての家来(けらい)の顔(かお)をはずかしめられました。 6それはあなたが自分(じぶん)を憎(にく)む者(もの)を愛(あい)し、自分(じぶん)を愛(あい)する者(もの)を憎(にく)まれるからです。あなたは、きょう、軍(ぐん)の長(ちょう)たちをも、しもべたちをも顧(かえり)みないことを示(しめ)されました。きょう、わたしは知(し)りました。もし、アブサロムが生(い)きていて、われわれが皆(みな)きょう死(し)んでいたら、あなたの目(め)にかなったでしょう。 7今(いま)立(た)って出(で)て行(い)って、しもべたちにねんごろに語(かた)ってください。わたしは主(しゅ)をさして誓(ちか)います。もしあなたが出(で)られないならば、今夜(こんや)あなたと共(とも)にとどまる者(もの)はひとりもないでしょう。これはあなたが若(わか)い時(とき)から今(いま)までにこうむられたすべての災(わざわい)よりも、あなたにとって悪(わる)いでしょう」。 8そこで王(おう)は立(た)って門(もん)のうちの座(ざ)についた。人々(ひとびと)はすべての民(たみ)に、「見(み)よ、王(おう)は門(もん)に座(ざ)している」と告(つ)げたので、民(たみ)はみな王(おう)の前(まえ)にきた。

さてイスラエルはおのおのその天幕(てんまく)に逃(に)げ帰(かえ)った。 9そしてイスラエルのもろもろの部族(ぶぞく)の中(なか)で民(たみ)はみな争(あらそ)って言(い)った、「王(おう)はわれわれを敵(てき)の手(て)から救(すく)い出(だ)し、またわれわれをペリシテびとの手(て)から助(たす)け出(だ)された。しかし今(いま)はアブサロムのために国(くに)のそとに逃(に)げておられる。 10またわれわれが油(あぶら)を注(そそ)いで、われわれの上(うえ)に立(た)てたアブサロムは戦(たたか)いで死(し)んだ。それであるのに、どうしてあなたがたは王(おう)を導(みちび)きかえることについて、何(なに)をも言(い)わないのか」。

11ダビデ王(おう)は祭司(さいし)たちザドクとアビヤタルとに人(ひと)をつかわして言(い)った、「ユダの長老(ちょうろう)たちに言(い)いなさい、『全(ぜん)イスラエルの言葉(ことば)が王(おう)に達(たっ)したのに、どうしてあなたがたは王(おう)をその家(いえ)に導(みちび)きかえる最後(さいご)の者(もの)となるのですか。 12あなたがたはわたしの兄弟(きょうだい)、わたしの骨肉(こつにく)です。それにどうして王(おう)を導(みちび)きかえる最後(さいご)の者(もの)となるのですか』。 13またアマサに言(い)いなさい、『あなたはわたしの骨肉(こつにく)ではありませんか。これから後(のち)あなたをヨアブに代(か)えて、わたしの軍(ぐん)の長(ちょう)とします。もしそうしないときは、神(かみ)が幾重(いくえ)にもわたしを罰(ばっ)してくださるように』」。 14こうしてダビデはユダのすべての人(ひと)の心(こころ)を、ひとりのように自分(じぶん)に傾(かたむ)けさせたので、彼(かれ)らは王(おう)に、「どうぞあなたも、すべての家来(けらい)たちも帰(かえ)ってきてください」と言(い)いおくった。 15そこで王(おう)は帰(かえ)ってきてヨルダンまで来(く)ると、ユダの人(ひと)人(ひと)は王(おう)を迎(むか)えるためギルガルにきて、王(おう)にヨルダンを渡(わた)らせた。

16バホリムのベニヤミンびと、ゲラの子(こ)シメイは、急(いそ)いでユダの人々(ひとびと)と共(とも)に下(くだ)ってきて、ダビデ王(おう)を迎(むか)えた。 17一千人(にん)のベニヤミンびとが彼(かれ)と共(とも)にいた。またサウルの家(いえ)のしもべヂバもその十五人(にん)のむすこと、二十人(にん)のしもべを従(したが)えて、王(おう)の前(まえ)にヨルダンに駆(か)け下(くだ)った。 18そして王(おう)の家族(かぞく)を渡(わた)し、王(おう)の心(こころ)にかなうことをしようと渡(わた)し場(ば)を渡(わた)った。ゲラの子(こ)シメイはヨルダンを渡(わた)ろうとする時(とき)、王(おう)の前(まえ)にひれ伏(ふ)し、 19王(おう)に言(い)った、「どうぞわが君(きみ)が、罪(つみ)をわたしに帰(き)しられないように。またわが君(きみ)、王(おう)のエルサレムを出(で)られた日(ひ)に、しもべがおこなった悪(わる)い事(こと)を思(おも)い出(だ)されないように。どうぞ王(おう)がそれを心(こころ)に留(と)められないように。 20しもべは自分(じぶん)が罪(つみ)を犯(おか)したことを知(し)っています。それゆえ、見(み)よ、わたしはきょう、ヨセフの全家(ぜんか)のまっ先(さき)に下(くだ)ってきて、わが主(しゅ)、王(おう)を迎(むか)えるのです」。 21ゼルヤの子(こ)アビシャイは答(こた)えて言(い)った、「シメイは主(しゅ)が油(あぶら)を注(そそ)がれた者(もの)をのろったので、そのために殺(ころ)されるべきではありませんか」。 22ダビデは言(い)った、「あなたがたゼルヤの子(こ)たちよ、あなたがたとなにのかかわりがあって、あなたがたはきょうわたしに敵対(てきたい)するのか。きょう、イスラエルのうちで人(ひと)を殺(ころ)して良(よ)かろうか。わたしが、きょうイスラエルの王(おう)となったことを、どうして自分(じぶん)で知(し)らないことがあろうか」。 23こうして王(おう)はシメイに、「あなたを殺(ころ)さない」と言(い)って、王(おう)は彼(かれ)に誓(ちか)った。

24サウルの子(こ)メピボセテは下(くだ)ってきて王(おう)を迎(むか)えた。彼(かれ)は王(おう)が去(さ)った日(ひ)から安(やす)らかに帰(かえ)る日(ひ)まで、その足(あし)を飾(かざ)らず、そのひげを整(ととの)えず、またその着物(きもの)を洗(あら)わなかった。 25彼(かれ)がエルサレムからきて王(おう)を迎(むか)えた時(とき)、王(おう)は彼(かれ)に言(い)った、「メピボセテよ、あなたはどうしてわたしと共(とも)に行(い)かなかったのか」。 26彼(かれ)は答(こた)えた、「わが主(しゅ)、王(おう)よ、わたしの家来(けらい)がわたしを欺(あざむ)いたのです。しもべは彼(かれ)に、『わたしのために、ろばにくらを置(お)け。わたしはそれに乗(の)って王(おう)と共(とも)に行(い)く』と言(い)ったのです。しもべは足(あし)なえだからです。 27ところが彼(かれ)はしもべのことをわが主(しゅ)、王(おう)の前(まえ)に、あしざまに言(い)ったのです。しかし、わが主(しゅ)、王(おう)は神(かみ)の使(つかい)のようでいらせられます。それで、あなたの良(よ)いと思(おも)われることをしてください。 28わたしの父(ちち)の全家(ぜんか)はわが主(しゅ)、王(おう)の前(まえ)にはみな死(し)んだ人(ひと)にすぎないのに、あなたはしもべを、あなたの食卓(しょくたく)で食事(しょくじ)をする人々(ひとびと)のうちに置(お)かれました。わたしになんの権利(けんり)があって、重(かさ)ねて王(おう)に訴(うった)えることができましょう」。 29王(おう)は彼(かれ)に言(い)った、「あなたはどうしてなおも自分(じぶん)のことを言(い)うのですか。わたしは決(き)めました。あなたとヂバとはその土地(とち)を分(わ)けなさい」。 30メピボセテは王(おう)に言(い)った、「わが主(しゅ)、王(おう)が安(やす)らかに家(いえ)に帰(かえ)られたのですから、彼(かれ)にそれをみな取(と)らせてください」。

31さてギレアデびとバルジライはロゲリムから下(くだ)ってきて、ヨルダンで王(おう)を見送(みおく)るため、王(おう)と共(とも)にヨルダンに進(すす)んだ。 32バルジライは、ひじょうに年老(としお)いた人(ひと)で八十{歳(さい)であった。彼(かれ)はまた、ひじょうに裕福(ゆうふく)な人(ひと)であったので、王(おう)がマハナイムにとどまっている間(あいだ)、王(おう)を養(やしな)った。 33王(おう)はバルジライに言(い)った、「わたしと一緒(いっしょ)に渡(わた)って行(い)きなさい。わたしはエルサレムであなたをわたしと共(とも)におらせて養(やしな)いましょう」。 34バルジライは王(おう)に言(い)った、「わたしは、なお何(なに)年(ねん)いきながらえるので、王(おう)と共(とも)にエルサレムに上(のぼ)るのですか。 35わたしは今日(こんにち)八十歳(さい)です。わたしに、良(よ)いこと悪(わる)いことがわきまえられるでしょうか。しもべは食(た)べるもの、飲(の)むものを味(あじ)わうことができましょうか。わたしは歌(うた)う男(おとこ)や歌(うた)う女(おんな)の声(こえ)をまだ聞(き)くことができましょうか。それであるのに、しもべはどうしてなおわが主(しゅ)、王(おう)の重荷(おもに)となってよろしいでしょうか。 36しもべは王(おう)と共(とも)にヨルダンを渡(わた)って、ただ少(すこ)し行(い)きましょう。どうして王(おう)はこのような報(むく)いをわたしに報(むく)いられなければならないのでしょうか。 37どうぞしもべを帰(かえ)らせてください。わたしは自分(じぶん)の町(まち)で、父母(ふぼ)の墓(はか)の近(ちか)くで死(し)にます。ただし、あなたのしもべキムハムがここにおります。わが主(しゅ)、王(おう)と共(とも)に彼(かれ)を渡(わた)って行(い)かせてください。またあなたが良(よ)いと思(おも)われる事(こと)を彼(かれ)にしてください」。 38王(おう)は答(こた)えた、「キムハムはわたしと共(とも)に渡(わた)って行(い)かせます。わたしは、あなたが良(よ)いと思(おも)われる事(こと)を彼(かれ)にしましょう。またあなたが望(のぞ)まれることはみな、あなたのためにいたします」。 39こうして民(たみ)はみなヨルダンを渡(わた)った。王(おう)は渡(わた)った時(とき)、バルジライに口(くち)づけして、祝福(しゅくふく)したので、彼(かれ)は自分(じぶん)の家(いえ)に帰(かえ)っていった。 40王(おう)はギルガルに進(すす)んだ。キムハムも彼(かれ)と共(とも)に進(すす)んだ。ユダの民(たみ)はみな王(おう)を送(おく)り、イスラエルの民(たみ)の半(なか)ばもまたそうした。

41さてイスラエルの人々(ひとびと)はみな王(おう)の所(ところ)にきて、王(おう)に言(い)った、「われわれの兄弟(きょうだい)であるユダの人々(ひとびと)は、何(なに)ゆえにあなたを盗(ぬす)み去(さ)って、王(おう)とその家族(かぞく)、およびダビデに伴(ともな)っているすべての従者(じゅうしゃ)にヨルダンを渡(わた)らせたのですか」。 42ユダの人々(ひとびと)はみなイスラエルの人々(ひとびと)に答(こた)えた、「王(おう)はわれわれの近親(きんしん)だからです。あなたがたはどうしてこの事(こと)で怒(いか)られるのですか。われわれが少(すこ)しでも王(おう)の物(もの)を食(た)べたことがありますか。王(おう)が何(なに)か賜物(たまもの)をわれわれに与(あた)えたことがありますか」。 43イスラエルの人々(ひとびと)はユダの人々(ひとびと)に答(こた)えた、「われわれは王(おう)のうちに十の分(ぶん)を持(も)っています。またダビデのうちにもわれわれはあなたがたよりも多(おお)くを持(も)っています。それであるのに、どうしてあなたがたはわれわれを軽(かろ)んじたのですか。われらの王(おう)を導(みちび)き帰(かえ)ろうと最初(さいしょ)に言(い)ったのはわれわれではないのですか」。しかしユダの人々(ひとびと)の言葉(ことば)はイスラエルの人々(ひとびと)の言葉(ことば)よりも激(はげ)しかった。

第二〇章

1さて、その所(ところ)にひとりのよこしまな人(ひと)があって、名(な)をシバといった。ビクリの子(こ)で、ベニヤミンびとであった。彼(かれ)はラッパを吹(ふ)いて言(い)った、「われわれはダビデのうちに分(ぶん)がない。またエッサイの子(こ)のうちに嗣(し)業(ぎょう)を持(も)たない。イスラエルよ、おのおのその天幕(てんまく)に帰(かえ)りなさい」。 2そこでイスラエルの人々(ひとびと)は皆(みな)ダビデに従(したが)う事(こと)をやめて、ビクリの子(こ)シバに従(したが)った。しかしユダの人々(ひとびと)はその王(おう)につき従(したが)って、ヨルダンからエルサレムへ行(い)った。

3ダビデはエルサレムの自分(じぶん)の家(いえ)にきた。そして王(おう)は家(いえ)を守(まも)るために残(のこ)しておいた十人(にん)のめかけたちを取(と)って、一つの家(いえ)に入(い)れて守(まも)り、また養(やしな)ったが、彼女(かのじょ)たちの所(ところ)には、はいらなかった。彼女(かのじょ)たちは死(し)ぬ日(ひ)まで閉(と)じこめられ一生(いっしょう)、寡婦(かふ)としてすごした。

4王(おう)はアマサに言(い)った、「わたしのため三日(か)のうちにユダの人々(ひとびと)を呼(よ)び集(あつ)めて、ここにきなさい」。 5アマサはユダを呼(よ)び集(あつ)めるために行(い)ったが、彼(かれ)は定(さだ)められた時(とき)よりもおくれた。 6ダビデはアビシャイに言(い)った、「ビクリの子(こ)シバは今(いま)われわれにアブサロムよりも多(おお)くの害(がい)をするであろう。あなたの主君(しゅくん)の家来(けらい)たちを率(ひき)いて、彼(かれ)のあとを追(お)いなさい。さもないと彼(かれ)は堅固(けんご)な町々(まちまち)を獲(え)て、われわれを悩(なや)ますであろう」。 7こうしてヨアブとケレテびととペレテびと、およびすべての勇士(ゆうし)はアビシャイに従(したが)って出(で)た。すなわち彼(かれ)らはエルサレムを出(で)て、ビクリの子(こ)シバのあとを追(お)った。 8彼(かれ)らがギベオンにある大石(おおいし)のところにいた時(とき)、アマサがきて彼(かれ)らに会(あ)った。時(とき)にヨアブは軍服(ぐんぷく)を着(き)て、帯(おび)をしめ、その上(うえ)にさやに納(おさ)めたつるぎを腰(こし)に結(むす)んで帯(お)びていたが、彼(かれ)が進(すす)み出(で)た時(とき)つるぎは抜(ぬ)け落(お)ちた。 9ヨアブはアマサに、「兄弟(きょうだい)よ、あなたは安(やす)らかですか」と言(い)って、ヨアブは右(みぎ)の手(て)をもってアマサのひげを捕(とら)えて彼(かれ)に口(くち)づけしようとしたが、 10アマサはヨアブの手(て)につるぎがあることに気(き)づかなかったので、ヨアブはそれをもってアマサの腹部(ふくぶ)を刺(さ)して、そのはらわたを地(ち)に流(なが)し出(だ)し、重(かさ)ねて撃(う)つこともなく彼(かれ)を殺(ころ)した。

こうしてヨアブとその兄弟(きょうだい)アビシャイはビクリの子(こ)シバのあとを追(お)った。 11時(とき)にヨアブの若者(わかもの)のひとりがアマサのかたわらに立(た)って言(い)った、「ヨアブに味方(みかた)する者(もの)、ダビデにつく者(もの)はヨアブのあとに従(したが)いなさい」。 12アマサは血(ち)に染(し)んで大路(おおじ)の中(なか)にころがっていたので、そのそばに来(く)る者(もの)はみな彼(かれ)を見(み)て立(た)ちどまった。この人(ひと)は民(たみ)がみな立(た)ちどまるのを見(み)て、アマサを大路(おおじ)から畑(はたけ)に移(うつ)し、衣服(いふく)をその上(うえ)にかけた。 13アマサが大路(おおじ)から移(うつ)されたので、民(たみ)は皆(みな)ヨアブに従(したが)って進(すす)み、ビクリの子(こ)シバのあとを追(お)った。

14シバはイスラエルのすべての部族(ぶぞく)のうちを通(とお)ってベテマアカのアベルにきた。ビクリびとは皆(みな)、集(あつ)まってきて彼(かれ)に従(したが)った。 15そこでヨアブと共(とも)にいたすべての人々(ひとびと)がきて、彼(かれ)をベテマアカのアベルに囲(かこ)み、町(まち)に向(む)かって土(つち)塁(るい)を築(きず)いた。それはとりでに向(む)かって立(た)てられた。こうして彼(かれ)らは城壁(じょうへき)をくずそうとしてこれを撃(う)った。 16その時(とき)、ひとりの賢(かしこ)い女(おんな)が町(まち)から呼(よ)ばわった、「あなたがたは聞(き)きなさい。あなたがたは聞(き)きなさい。ヨアブに、『ここにきてください。わたしはあなたに言(い)うことがあります』と言(い)ってください」。 17彼(かれ)がその女(おんな)に近寄(ちかよ)ると、女(おんな)は「あなたがヨアブですか」と言(い)った。彼(かれ)は「そうです」と答(こた)えた。すると女(おんな)は彼(かれ)に「はしための言葉(ことば)をお聞(き)きください」と言(い)ったので、「聞(き)きましょう」と彼(かれ)は言(い)った。 18そこで女(おんな)は言(い)った、「昔(むかし)、人々(ひとびと)はいつも、『アベルで尋(たず)ねなさい』と言(い)って、事(こと)を定(さだ)めました。 19わたしはイスラエルのうちの平和(へいわ)な、忠誠(ちゅうせい)な者(もの)です。そうであるのに、あなたはイスラエルのうちで母(はは)ともいうべき町(まち)を滅(ほろ)ぼそうとしておられます。どうして主(しゅ)の嗣(し)業(ぎょう)を、のみ尽(つく)そうとされるのですか」。 20ヨアブは答(こた)えた、「いいえ、決(けっ)してそうではなく、わたしが、のみ尽(つく)したり、滅(ほろ)ぼしたりすることはありません。 21事実(じじつ)はそうではなく、エフライムの山地(さんち)の人(ひと)ビクリの子(こ)、名(な)をシバという者(もの)が手(て)をあげて王(おう)ダビデにそむいたのです。あなたがたが彼(かれ)ひとりを渡(わた)すならば、わたしはこの町(まち)を去(さ)ります」。女(おんな)はヨアブに言(い)った、「彼(かれ)の首(くび)は城壁(じょうへき)の上(うえ)からあなたの所(ところ)へ投(な)げられるでしょう」。 22こうしてこの女(おんな)が知恵(ちえ)をもって、すべての民(たみ)の所(ところ)に行(い)ったので、彼(かれ)らはビクリの子(こ)シバの首(くび)をはねてヨアブの所(ところ)へ投(な)げ出(だ)した。そこでヨアブはラッパを吹(ふ)きならしたので、人々(ひとびと)は散(ち)って町(まち)を去(さ)り、おのおの家(いえ)に帰(かえ)った。ヨアブはエルサレムにいる王(おう)のもとに帰(かえ)った。

23ヨアブはイスラエルの全(ぜん)軍(ぐん)の長(ちょう)であった。エホヤダの子(こ)ベナヤはケレテびと、およびペレテびとの長(ちょう)、 24アドラムは徴募(ちょうぼ)人(にん)の長(ちょう)、アヒルデの子(こ)ヨシャパテは史官(しかん)、 25シワは書記官(しょきかん)、ザドクとアビヤタルとは祭司(さいし)。 26またヤイルびとイラはダビデの祭司(さいし)であった。

第二一章

1ダビデの世(よ)に、年(とし)また年(とし)と三年(ねん)、ききんがあったので、ダビデが主(しゅ)に尋(たず)ねたところ、主(しゅ)は言(い)われた、「サウルとその家(いえ)とに、血(ち)を流(なが)した罪(つみ)がある。それはかつて彼(かれ)がギベオンびとを殺(ころ)したためである」。 2そこで王(おう)はギベオンびとを召(め)しよせた。ギベオンびとはイスラエルの子孫(しそん)ではなく、アモリびとの残(のこ)りであって、イスラエルの人々(ひとびと)は彼(かれ)らと誓(ちか)いを立(た)てて、その命(いのち)を助(たす)けた。ところがサウルはイスラエルとユダの人々(ひとびと)のために熱心(ねっしん)であったので、彼(かれ)らを殺(ころ)そうとしたのである。 3それでダビデはギベオンびとに言(い)った、「わたしはあなたがたのために、何(なに)をすればよいのですか。どんな償(つぐな)いをすれば、あなたがたは主(しゅ)の嗣(し)業(ぎょう)を祝福(しゅくふく)するのですか」。 4ギベオンびとは彼(かれ)に言(い)った、「これはわれわれと、サウルまたはその家(いえ)との間(あいだ)の金銀(きんぎん)の問題(もんだい)ではありません。またイスラエルのうちのひとりでも、われわれが殺(ころ)そうというのでもありません」。ダビデは言(い)った、「わたしがあなたがたのために何(なに)をすればよいと言(い)うのですか」。 5かれらは王(おう)に言(い)った、「われわれを滅(ほろ)ぼした人(ひと)、われわれを滅(ほろ)ぼしてイスラエルの領域(りょういき)のどこにもおらせないようにと、たくらんだ人(ひと)、 6その人(ひと)の子孫(しそん)七人(にん)を引(ひ)き渡(わた)してください。われわれは主(しゅ)の山(やま)にあるギベオンで、彼(かれ)らを主(しゅ)の前(まえ)に木(き)にかけましょう」。王(おう)は言(い)った、「引(ひ)き渡(わた)しましょう」。

7しかし王(おう)はサウルの子(こ)ヨナタンの子(こ)であるメピボセテを惜(お)しんだ。彼(かれ)らの間(あいだ)、すなわちダビデとサウルの子(こ)ヨナタンとの間(あいだ)に、主(しゅ)をさして立(た)てた誓(ちか)いがあったからである。 8王(おう)はアヤの娘(むすめ)リヅパがサウルに産(う)んだふたりの子(こ)アルモニとメピボセテ、およびサウルの娘(むすめ)メラブがメホラびとバルジライの子(こ)アデリエルに産(う)んだ五人(にん)の子(こ)を取(と)って、 9彼(かれ)らをギベオンびとの手(て)に引(ひ)き渡(わた)したので、ギベオンびとは彼(かれ)らを山(やま)で主(しゅ)の前(まえ)に木(き)にかけた。彼(かれ)ら七人(にん)は共(とも)に倒(たお)れた。彼(かれ)らは刈入(かりい)れの初(はじ)めの日(ひ)、すなわち大麦(おおむぎ)刈(か)りの初(はじ)めに殺(ころ)された。

10アヤの娘(むすめ)リヅパは荒布(あらぬの)をとって、それを自分(じぶん)のために岩(いわ)の上(うえ)に敷(し)き、刈入(かりい)れの初(はじ)めから、その人々(ひとびと)の死体(したい)の上(うえ)に天(てん)から雨(あめ)が降(ふ)るまで、昼(ひる)は空(そら)の鳥(とり)が死体(したい)の上(うえ)にこないようにし、夜(よる)は野(の)の獣(けもの)を近寄(ちかよ)らせなかった。 11アヤの娘(むすめ)でサウルのめかけであったリヅパのしたことがダビデに聞(きこ)えたので、 12ダビデは行(い)ってサウルの骨(ほね)とその子(こ)ヨナタンの骨(ほね)を、ヤベシギレアデの人々(ひとびと)の所(ところ)から取(と)ってきた。これはペリシテびとがサウルをギルボアで殺(ころ)した日(ひ)に、木(き)にかけたベテシャンの広場(ひろば)から、彼(かれ)らが盗(ぬす)んでいたものである。 13ダビデはそこからサウルの骨(ほね)と、その子(こ)ヨナタンの骨(ほね)を携(たずさ)えて上(のぼ)った。また人々(ひとびと)はそのかけられた者(もの)どもの骨(ほね)を集(あつ)めた。 14こうして彼(かれ)らはサウルとその子(こ)ヨナタンの骨(ほね)を、ベニヤミンの地(ち)のゼラにあるその父(ちち)キシの墓(はか)に葬(ほうむ)り、すべて王(おう)の命(めい)じたようにした。この後(のち)、神(かみ)はその地(ち)のために、祈(いのり)を聞(き)かれた。

15ペリシテびとはまたイスラエルと戦争(せんそう)をした。ダビデはその家来(けらい)たちと共(とも)に下(くだ)ってペリシテびとと戦(たたか)ったが、ダビデは疲(つか)れていた。 16時(とき)にイシビベノブはダビデを殺(ころ)そうと思(おも)った。イシビベノブは巨人(きょじん)の子孫(しそん)で、そのやりは青銅(せいどう)で重(おも)さ三百シケルあり、彼(かれ)は新(あたら)しいつるぎを帯(お)びていた。 17しかしゼルヤの子(こ)アビシャイはダビデを助(たす)けて、そのペリシテびとを撃(う)ち殺(ころ)した。そこでダビデの従者(じゅうしゃ)たちは彼(かれ)に誓(ちか)って言(い)った、「あなたはわれわれと共(とも)に、重(かさ)ねて戦争(せんそう)に出(で)てはなりません。さもないと、あなたはイスラエルのともし火(ひ)を消(け)すでしょう」。

18この後(のち)、再(ふたた)びゴブでペリシテびととの戦(たたか)いがあった。時(とき)にホシャびとシベカイは巨人(きょじん)の子孫(しそん)のひとりサフを殺(ころ)した。 19ここにまたゴブで、ペリシテびととの戦(たたか)いがあったが、そこではベツレヘムびとヤレオレギムの子(こ)エルハナンは、ガテびとゴリアテを殺(ころ)した。そのやりの柄(え)は機(はた)の巻棒(まきぼう)のようであった。 20またガテで再(ふたた)び戦(たたか)いがあったが、そこにひとりの背(せ)の高(たか)い人(ひと)があり、その手(て)の指(ゆび)と足(あし)の指(ゆび)は六本(ぽん)ずつで、その数(かず)は合(あ)わせて二十四本(ほん)であった。彼(かれ)もまた巨人(きょじん)から生(うま)れた者(もの)であった。 21彼(かれ)はイスラエルをののしったので、ダビデの兄弟(きょうだい)シメアの子(こ)ヨナタンが彼(かれ)を殺(ころ)した。 22これらの四人(にん)はガテで巨人(きょじん)から生(うま)れた者(もの)であったが、ダビデの手(て)とその家来(けらい)たちの手(て)に倒(たお)れた。

第二二章

1ダビデは主(しゅ)がもろもろの敵(てき)の手(て)とサウルの手(て)から、自分(じぶん)を救(すく)い出(だ)された日(ひ)に、この歌(うた)の言葉(ことば)を主(しゅ)に向(む)かって述(の)べ、 2彼(かれ)は言(い)った、
「主(しゅ)はわが岩(いわ)、わが城(しろ)、わたしを救(すく)う者(もの)、
3わが神(かみ)、わが岩(いわ)。わたしは彼(かれ)に寄(よ)り頼(たの)む。
わが盾(たて)、わが救(すくい)の角(つの)、
わが高(たか)きやぐら、わが避(さ)け所(どころ)、
わが救主(すくいぬし)。あなたはわたしを暴虐(ぼうぎゃく)から救(すく)われる。
4わたしは、ほめまつるべき主(しゅ)に呼(よ)ばわって、
わたしの敵(てき)から救(すく)われる。
5死(し)の波(なみ)はわたしをとりまき、
滅(ほろ)びの大水(おおみず)はわたしを襲(おそ)った。
6陰府(よみ)の綱(つな)はわたしをとりかこみ、
死(し)のわなはわたしに、たち向(む)かった。
7苦難(くなん)のうちにわたしは主(しゅ)を呼(よ)び、
またわが神(かみ)に呼(よ)ばわった。
主(しゅ)がその宮(みや)からわたしの声(こえ)を聞(き)かれて、
わたしの叫(さけ)びはその耳(みみ)にとどいた。
8その時(とき)地(ち)は震(ふる)いうごき、
天(てん)の基(もとい)はゆるぎふるえた。
彼(かれ)が怒(いか)られたからである。
9煙(けむり)はその鼻(はな)からたち上(のぼ)り、
火(ひ)はその口(くち)から出(で)て焼(や)きつくし、
白熱(はくねつ)の炭(すみ)は彼(かれ)から燃(も)え出(で)た。
10彼(かれ)は天(てん)を低(ひく)くして下(くだ)られ、
暗(くら)やみが彼(かれ)の足(あし)の下(した)にあった。
11彼(かれ)はケルブに乗(の)って飛(と)び、
風(かぜ)の翼(つばさ)に乗(の)ってあらわれた。
12彼(かれ)はその周囲(しゅうい)に幕屋(まくや)として、
やみと濃(こ)き雲(くも)と水(みず)の集(あつ)まりとを置(お)かれた。
13そのみ前(まえ)の輝(かがや)きから
炭火(すみび)が燃(も)え出(で)た。
14主(しゅ)は天(てん)から雷(かみなり)をとどろかせ、
いと高(たか)き者(もの)は声(こえ)を出(だ)された。
15彼(かれ)はまた矢(や)を放(はな)って彼(かれ)らを散(ち)らし、
いなずまを放(はな)って彼(かれ)らを撃(う)ち破(やぶ)られた。
16主(しゅ)のとがめと、その鼻(はな)のいぶきとによって、
海(うみ)の底(そこ)はあらわれ、
世界(せかい)の基(もとい)が、あらわになった。
17彼(かれ)は高(たか)き所(ところ)から手(て)を伸(の)べてわたしを捕(とら)え、
大水(おおみず)の中(なか)からわたしを引(ひ)き上(あ)げ、
18わたしの強(つよ)い敵(てき)と、わたしを憎(にく)む者(もの)とから
わたしを救(すく)われた。
彼(かれ)らはわたしにとって、あまりにも強(つよ)かったからだ。
19彼(かれ)らはわたしの災(わざわい)の日(ひ)にわたしに、たち向(む)かった。
しかし主(しゅ)はわたしの支柱(しちゅう)となられた。
20彼(かれ)はまたわたしを広(ひろ)い所(ところ)へ引(ひ)きだされ、
わたしを喜(よろこ)ばれて、救(すく)ってくださった。
21主(しゅ)はわたしの義(ぎ)にしたがってわたしに報(むく)い、
わたしの手(て)の清(きよ)きにしたがって
わたしに報(むく)いかえされた。
22それは、わたしが主(しゅ)の道(みち)を守(まも)り、悪(あく)を行(おこな)わず、
わが神(かみ)から離(はな)れたことがないからである。
23そのすべてのおきてはわたしの前(まえ)にあって、
わたしはその、み定(さだ)めを離(はな)れたことがない。
24わたしは主(しゅ)の前(まえ)に欠(か)けた所(ところ)なく、
自(みずか)らを守(まも)って罪(つみ)を犯(おか)さなかった。
25それゆえ、主(しゅ)はわたしの義(ぎ)にしたがい、
その目(め)のまえにわたしの清(きよ)きにしたがって、
わたしに報(むく)いられた。
26忠実(ちゅうじつ)な者(もの)には、あなたは忠実(ちゅうじつ)な者(もの)となり、
欠(か)けた所(ところ)のない人(ひと)には、
あなたは欠(か)けた所(ところ)のない者(もの)となり、
27清(きよ)い者(もの)には、あなたは清(きよ)い者(もの)となり、
まがった者(もの)には、かたいぢな者(もの)となられる。
28あなたはへりくだる民(たみ)を救(すく)われる、
しかしあなたの目(め)は高(たか)ぶる者(もの)を見(み)て
これをひくくせられる。
29まことに、主(しゅ)よ、あなたはわたしのともし火(び)、
わが神(かみ)はわたしのやみを照(てら)される。
30まことに、あなたによって
わたしは敵(てき)軍(ぐん)をふみ滅(ほろ)ぼし、
わが神(かみ)によって石(いし)がきをとび越(こ)えることができる。
31この神(かみ)こそ、その道(みち)は非(ひ)のうちどころなく、
主(しゅ)の約束(やくそく)は真実(しんじつ)である。
彼(かれ)はすべて彼(かれ)に寄(よ)り頼(たの)む者(もの)の盾(たて)である。
32主(しゅ)のほかに、だれが神(かみ)か、
われらの神(かみ)のほか、だれが岩(いわ)であるか。
33この神(かみ)こそわたしの堅固(けんご)な避(さ)け所(どころ)であり、
わたしの道(みち)を安全(あんぜん)にされた。
34わたしの足(あし)をめじかの足(あし)のようにして、
わたしを高(たか)い所(ところ)に安全(あんぜん)に立(た)たせ、
35わたしの手(て)を戦(たたか)いに慣(な)らされたので、
わたしの腕(うで)は青銅(せいどう)の弓(ゆみ)を引(ひ)くことができる。
36あなたはその救(すくい)の盾(たて)をわたしに与(あた)え、
あなたの助(たす)けは、わたしを大(おお)いなる者(もの)とされた。
37あなたはわたしが歩(ある)く広(ひろ)い場所(ばしょ)を与(あた)えられたので、
わたしの足(あし)はすべらなかった。
38わたしは敵(てき)を追(お)って、これを滅(ほろ)ぼし、
これを絶(た)やすまでは帰(かえ)らなかった。
39わたしは彼(かれ)らを絶(た)やし、彼(かれ)らを砕(くだ)いたので
彼(かれ)らは立(た)つことができず、わたしの足(あし)もとに倒(たお)れた。
40あなたは戦(たたか)いのために、わたしに力(ちから)を帯(お)びさせ
わたしを攻(せ)める者(もの)をわたしの下(した)にかがませられた。
41あなたによって、敵(てき)は
そのうしろをわたしに向(む)けたので、
わたしを憎(にく)む者(もの)をわたしは滅(ほろ)ぼした。
42彼(かれ)らは見(み)まわしたが、救(すく)う者(もの)はいなかった。
彼(かれ)らは主(しゅ)に叫(さけ)んだが、彼(かれ)らには答(こた)えられなかった。
43わたしは彼(かれ)らを地(ち)のちりのように
細(こま)かに打(う)ちくだき、
ちまたのどろのように、踏(ふ)みにじった。
44あなたはわたしを国々(くにぐに)の民(たみ)との争(あらそ)いから救(すく)い出(だ)し、
わたしをもろもろの国民(こくみん)のかしらとされた。
わたしの知(し)らなかった民(たみ)がわたしに仕(つか)えた。
45異国(いこく)の人(ひと)たちはきてわたしにこび、
わたしの事(こと)を聞(き)くとすぐわたしに従(したが)った。
46異国(いこく)の人(ひと)たちは、うちしおれて
その城(しろ)からふるえながら出(で)てきた。
47主(しゅ)は生(い)きておられる。わが岩(いわ)はほむべきかな。
わが神(かみ)、わが救(すくい)の岩(いわ)はあがむべきかな。
48この神(かみ)はわたしのために、あだを報(むく)い、
もろもろの民(たみ)をわたしの下(した)に置(お)かれた。
49またわたしを敵(てき)から救(すく)い出(だ)し、
あだの上(うえ)にわたしをあげ、
暴虐(ぼうぎゃく)の人々(ひとびと)からわたしを救(すく)い出(だ)された。
50それゆえ、主(しゅ)よ、わたしはもろもろの国民(くにたみ)の中(なか)で、
あなたをたたえ、
あなたの、み名(な)をほめ歌(うた)うであろう。
51主(しゅ)はその王(おう)に大(おお)いなる勝利(しょうり)を与(あた)え、
油(あぶら)を注(そそ)がれた者(もの)に、ダビデとその子孫(しそん)とに、
とこしえに、いつくしみを施(ほどこ)される」。

第二三章


1これはダビデの最後(さいご)の言葉(ことば)である。
エッサイの子(こ)ダビデの託宣(たくせん)、
すなわち高(たか)く挙(あ)げられた人(ひと)、
ヤコブの神(かみ)に油(あぶら)を注(そそ)がれた人(ひと)、
イスラエルの良(よ)き歌(うた)びとの託宣(たくせん)。
2「主(しゅ)の霊(れい)はわたしによって語(かた)る、
その言葉(ことば)はわたしの舌(した)の上(うえ)にある。
3イスラエルの神(かみ)は語(かた)られた、
イスラエルの岩(いわ)はわたしに言(い)われた、
『人(ひと)を正(ただ)しく治(おさ)める者(もの)、
神(かみ)を恐(おそ)れて、治(おさ)める者(もの)は、
4朝(あさ)の光(ひかり)のように、
雲(くも)のない朝(あさ)に、輝(かがや)きでる太陽(たいよう)のように、
地(ち)に若草(わかくさ)を芽(め)ばえさせる雨(あめ)のように人(ひと)に臨(のぞ)む』。
5まことに、わが家(や)はそのように、
神(かみ)と共(とも)にあるではないか。
それは、神(かみ)が、よろず備(そな)わって確(たし)かな
とこしえの契約(けいやく)をわたしと結(むす)ばれたからだ。
どうして彼(かれ)はわたしの救(すくい)と願(ねが)いを、
皆(みな)なしとげられぬことがあろうか。
6しかし、よこしまな人(ひと)は、いばらのようで、
手(て)をもって取(と)ることができないゆえ、
みな共(とも)に捨(す)てられるであろう。
7これに触(ふ)れようとする人(ひと)は
鉄(てつ)や、やりの柄(え)をもって武装(ぶそう)する、
彼(かれ)らはことごとく火(ひ)で焼(や)かれるであろう」。

8ダビデの勇士(ゆうし)たちの名(な)は次(つぎ)のとおりである。タクモンびとヨセブ・バッセベテはかの三人(にん)のうちの長(ちょう)であったが、彼(かれ)はいちじに八百人(にん)に向(む)かって、やりをふるい、それを殺(ころ)した。

9彼(かれ)の次(つぎ)はアホアびとドドの子(こ)エレアザルであって、三勇士(ゆうし)のひとりである。彼(かれ)は、戦(たたか)おうとしてそこに集(あつ)まったペリシテびとに向(む)かって戦(たたか)いをいどみ、イスラエルの人々(ひとびと)が退(しりぞ)いた時(とき)、ダビデと共(とも)にいたが、 10立(た)ってペリシテびとを撃(う)ち、ついに手(て)が疲(つか)れ、手(て)がつるぎに着(つ)いて離(はな)れないほどになった。その日(ひ)、主(しゅ)は大(おお)いなる勝利(しょうり)を与(あた)えられた。民(たみ)は彼(かれ)のあとに帰(かえ)ってきて、ただ殺(ころ)された者(もの)をはぎ取(と)るばかりであった。

11彼(かれ)の次(つぎ)はハラルびとアゲの子(こ)シャンマであった。ある時(とき)、ペリシテびとはレヒに集(あつ)まった。そこに一面(いちめん)にレンズ豆(まめ)を作(つく)った地所(じしょ)があった。民(たみ)はペリシテびとの前(まえ)から逃(に)げたが、 12彼(かれ)はその地所(じしょ)の中(なか)に立(た)って、これを防(ふせ)ぎ、ペリシテびとを殺(ころ)した。そして主(しゅ)は大(おお)いなる救(すくい)を与(あた)えられた。

13三十人(にん)の長(ちょう)たちのうちの三人(にん)は下(くだ)って行(い)って刈入(かりい)れのころに、アドラムのほら穴(あな)にいるダビデのもとにきた。時(とき)にペリシテびとの一隊(たい)はレパイムの谷(たに)に陣(じん)を取(と)っていた。 14その時(とき)ダビデは要害(ようがい)におり、ペリシテびとの先陣(せんじん)はベツレヘムにあったが、 15ダビデは、せつに望(のぞ)んで、「だれかベツレヘムの門(もん)のかたわらにある井戸(いど)の水(みず)をわたしに飲(の)ませてくれるとよいのだが」と言(い)った。 16そこでその三人(にん)の勇士(ゆうし)たちはペリシテびとの陣(じん)を突(つ)き通(とお)って、ベツレヘムの門(もん)のかたわらにある井戸(いど)の水(みず)を汲(く)み取(と)って、ダビデのもとに携(たずさ)えてきた。しかしダビデはそれを飲(の)もうとはせず、主(しゅ)の前(まえ)にそれを注(そそ)いで、 17言(い)った、「主(しゅ)よ、わたしは断(だん)じて飲(の)むことをいたしません。いのちをかけて行(い)った人々(ひとびと)の血(ち)を、どうしてわたしは飲(の)むことができましょう」。こうして彼(かれ)はそれを飲(の)もうとはしなかった。三勇士(ゆうし)はこれらのことを行(おこな)った。

18ゼルヤの子(こ)ヨアブの兄弟(きょうだい)アビシャイは三十人(にん)の長(ちょう)であった。彼(かれ)は三百人(にん)に向(む)かって、やりをふるい、それを殺(ころ)した。そして、彼(かれ)は三人(にん)と共(とも)に名(な)を得(え)た。 19彼(かれ)は三十人(にん)のうち最(もっと)も尊(たっと)ばれた者(もの)で、彼(かれ)らの長(ちょう)となった。しかし、かの三人(にん)には及(およ)ばなかった。

20エホヤダの子(こ)ベナヤはカブジエル出身(しゅっしん)の勇士(ゆうし)であって、多(おお)くのてがらを立(た)てた。彼(かれ)はモアブのアリエルのふたりの子(こ)を撃(う)ち殺(ころ)した。彼(かれ)はまた雪(ゆき)の日(ひ)に下(くだ)っていって、穴(あな)の中(なか)でししを撃(う)ち殺(ころ)した。 21彼(かれ)はまた姿(すがた)のうるわしいエジプトびとを撃(う)ち殺(ころ)した。そのエジプトびとは手(て)にやりを持(も)っていたが、ベナヤはつえをとってその所(ところ)に下(くだ)っていき、エジプトびとの手(て)からやりをもぎとって、そのやりをもって殺(ころ)した。 22エホヤダの子(こ)ベナヤはこれらの事(こと)をして三勇士(ゆうし)と共(とも)に名(な)を得(え)た。 23彼(かれ)は三十人(にん)のうちに有名(ゆうめい)であったが、かの三人(にん)には及(およ)ばなかった。ダビデは彼(かれ)を侍衛(じえい)の長(ちょう)とした。

24三十人(にん)のうちにあったのは、ヨアブの兄弟(きょうだい)アサヘル。ベツレヘム出身(しゅっしん)のドドの子(こ)エルハナン。 25ハロデ出身(しゅっしん)のシャンマ。ハロデ出身(しゅっしん)のエリカ。 26パルテびとヘレヅ。テコア出身(しゅっしん)のイッケシの子(こ)イラ。 27アナトテ出身(しゅっしん)のアビエゼル。ホシャびとメブンナイ。 28アホアびとザルモン。ネトパ出身(しゅっしん)のマハライ。 29ネトパ出身(しゅっしん)のバアナの子(こ)ヘレブ。ベニヤミンびとのギベアから出(で)たリバイの子(こ)イッタイ。 30ピラトンのベナヤ。ガアシの谷(たに)出身(しゅっしん)のヒダイ。 31アルバテびとアビアルボン。バホリム出身(しゅっしん)のアズマウテ。 32シャルボン出身(しゅっしん)のエリヤバ。ヤセンの子(こ)たち。ヨナタン。 33ハラルびとシャンマ。ハラルびとシャラルの子(こ)アヒアム。 34マアカ出身(しゅっしん)のアハスバイの子(こ)エリペレテ。ギロ出身(しゅっしん)のアヒトペルの子(こ)エリアム。 35カルメル出身(しゅっしん)のヘヅロ。アルバびとパアライ。 36ゾバ出身(しゅっしん)のナタンの子(こ)イガル。ガドびとバニ。 37アンモンびとゼレク。ゼルヤの子(こ)ヨアブの武器(ぶき)を執(と)る者(もの)、ベエロテ出身(しゅっしん)のナハライ。 38イテルびとイラ。イテルびとガレブ。 39ヘテびとウリヤ。合(あ)わせて三十七人(にん)である。

第二四章

1主(しゅ)は再(ふたた)びイスラエルに向(む)かって怒(いか)りを発(はっ)し、ダビデを感動(かんどう)して彼(かれ)らに逆(さか)らわせ、「行(い)ってイスラエルとユダとを数(かぞ)えよ」と言(い)われた。 2そこで王(おう)はヨアブおよびヨアブと共(とも)にいる軍(ぐん)の長(ちょう)たちに言(い)った、「イスラエルのすべての部族(ぶぞく)のうちを、ダンからベエルシバまで行(い)き巡(めぐ)って民(たみ)を数(かぞ)え、わたしに民(たみ)の数(かず)を知(し)らせなさい」。 3ヨアブは王(おう)に言(い)った、「どうぞあなたの神(かみ)、主(しゅ)が、民(たみ)を今(いま)よりも百倍(ばい)に増(ま)してくださいますように。そして王(おう)、わが主(しゅ)がまのあたり、それを見(み)られますように。しかし王(おう)、わが主(しゅ)は何(なに)ゆえにこの事(こと)を喜(よろこ)ばれるのですか」。 4しかし王(おう)の言葉(ことば)がヨアブと軍(ぐん)の長(ちょう)たちとに勝(か)ったので、ヨアブと軍(ぐん)の長(ちょう)たちとは王(おう)の前(まえ)を退(しりぞ)き、イスラエルの民(たみ)を数(かぞ)えるために出(で)て行(い)った。 5彼(かれ)らはヨルダンを渡(わた)り、アロエルから、すなわち谷(たに)の中(なか)にある町(まち)から始(はじ)めて、ガドに向(む)かい、ヤゼルに進(すす)んだ。 6それからギレアデに行(い)き、またヘテびとの地(ち)にあるカデシに行(い)き、それからダンに至(いた)り、ダンからシドンにまわり、 7またツロの要害(ようがい)に行(い)き、ヒビびと、およびカナンびとのすべての町(まち)に行(い)き、ユダのネゲブに出(で)てベエルシバへ行(い)った。 8こうして彼(かれ)らは国(くに)をあまねく行(い)き巡(めぐ)って、九か月(げつ)と二十日(にち)を経(へ)てエルサレムにきた。 9そしてヨアブは民(たみ)の総数(そうすう)を王(おう)に告(つ)げた。すなわちイスラエルには、つるぎを抜(ぬ)く勇士(ゆうし)たちが八十万あった。ただしユダの人々(ひとびと)は五十万であった。

10しかしダビデは民(たみ)を数(かぞ)えた後(のち)、心(こころ)に責(せ)められた。そこでダビデは主(しゅ)に言(い)った、「わたしはこれをおこなって大(おお)きな罪(つみ)を犯(おか)しました。しかし主(しゅ)よ、今(いま)どうぞしもべの罪(つみ)を取(と)り去(さ)ってください。わたしはひじょうに愚(おろ)かなことをいたしました」。 11ダビデが朝(あさ)起(お)きたとき、主(しゅ)の言葉(ことば)はダビデの先見者(せんけんしゃ)である預言者(よげんしゃ)ガデに臨(のぞ)んで言(い)った、 12「行(い)ってダビデに言(い)いなさい、『主(しゅ)はこう仰(おお)せられる、「わたしは三つのことを示(しめ)す。あなたはその一つを選(えら)ぶがよい。わたしはそれをあなたに行(おこな)うであろう」と』」。 13ガデはダビデのもとにきて、彼(かれ)に言(い)った、「あなたの国(くに)に三年(ねん)のききんをこさせようか。あなたが敵(てき)に追(お)われて三か月(げつ)敵(てき)の前(まえ)に逃(に)げるようにしようか。それとも、あなたの国(くに)に三日(か)の疫病(えきびょう)をおくろうか。あなたは考(かんが)えて、わたしがどの答(こたえ)を、わたしをつかわされた方(かた)になすべきかを決(き)めなさい」。 14ダビデはガデに言(い)った、「わたしはひじょうに悩(なや)んでいますが、主(しゅ)のあわれみは大(おお)きいゆえ、われわれを主(しゅ)の手(て)に陥(おちい)らせてください。わたしを人(ひと)の手(て)には陥(おちい)らせないでください」。

15そこで主(しゅ)は朝(あさ)から定(さだ)めの時(とき)まで疫病(えきびょう)をイスラエルに下(くだ)された。ダンからベエルシバまでに民(たみ)の死(し)んだ者(もの)は七万人(にん)あった。 16天(てん)の使(つかい)が手(て)をエルサレムに伸(の)べてこれを滅(ほろ)ぼそうとしたが、主(しゅ)はこの害悪(がいあく)を悔(く)い、民(たみ)を滅(ほろ)ぼしている天(てん)の使(つかい)に言(い)われた、「もはや、じゅうぶんである。今(いま)あなたの手(て)をとどめるがよい」。その時(とき)、主(しゅ)の使(つかい)はエブスびとアラウナの打(う)ち場(ば)のかたわらにいた。 17ダビデは民(たみ)を撃(う)っている天(てん)の使(つかい)を見(み)た時(とき)、主(しゅ)に言(い)った、「わたしは罪(つみ)を犯(おか)しました。わたしは悪(あく)を行(おこな)いました。しかしこれらの羊(ひつじ)たちは何(なに)をしたのですか。どうぞあなたの手(て)をわたしとわたしの父(ちち)の家(いえ)に向(む)けてください」。

18その日(ひ)ガデはダビデのところにきて彼(かれ)に言(い)った、「上(のぼ)って行(い)ってエブスびとアラウナの打(う)ち場(ば)で主(しゅ)に祭壇(さいだん)を建(た)てなさい」。 19ダビデはガデの言葉(ことば)に従(したが)い、主(しゅ)の命(めい)じられたように上(のぼ)って行(い)った。 20アラウナは見(み)おろして、王(おう)とそのしもべたちが自分(じぶん)の方(ほう)に進(すす)んでくるのを見(み)たので、アラウナは出(で)てきて王(おう)の前(まえ)に地(ち)にひれ伏(ふ)して拝(はい)した。 21そしてアラウナは言(い)った、「どうして王(おう)わが主(しゅ)は、しもべの所(ところ)にこられましたか」。ダビデは言(い)った、「あなたから打(う)ち場(ば)を買(か)い取(と)り、主(しゅ)に祭壇(さいだん)を築(きず)いて民(たみ)に下(くだ)る災(わざわい)をとどめるためです」。 22アラウナはダビデに言(い)った、「どうぞ王(おう)、わが主(しゅ)のよいと思(おも)われる物(もの)を取(と)ってささげてください。燔祭(はんさい)にする牛(うし)もあります。たきぎにする打(だ)穀(こく)機(き)も牛(うし)のくびきもあります。 23王(おう)よ、アラウナはこれをことごとく王(おう)にささげます」。アラウナはまた王(おう)に、「あなたの神(かみ)、主(しゅ)があなたを受(う)けいれられますように」と言(い)った。 24しかし王(おう)はアラウナに言(い)った、「いいえ、代価(だいか)を支払(しはら)ってそれをあなたから買(か)い取(と)ります。わたしは費用(ひよう)をかけずに燔祭(はんさい)をわたしの神(かみ)、主(しゅ)にささげることはしません」。こうしてダビデは銀(ぎん)五十シケルで打(う)ち場(ば)と牛(うし)とを買(か)い取(と)った。 25ダビデはその所(ところ)で主(しゅ)に祭壇(さいだん)を築(きず)き、燔祭(はんさい)と酬恩祭(しゅうおんさい)をささげた。そこで主(しゅ)はその地(ち)のために祈(いのり)を聞(き)かれたので、災(わざわい)がイスラエルに下(くだ)ることはとどまった。