使徒行伝

第一章

1テオピロよ、わたしはさきだいかんあらわして、イエスがおこない、またおしえはじめてから、 2えらびになった使徒しとたちに、聖霊せいれいによってめいじたのち、てんげられたまでのことを、ことごとくしるした。 3イエスは苦難くなんけたのち、自分じぶんきていることを数々かずかずたしかな証拠しょうこによってしめし、四十にちにわたってたびたびかれらにあらわれて、かみくにのことをかたられた。 4そして食事しょくじともにしているとき、かれらにおめいじになった、「エルサレムからはなれないで、かねてわたしからいていたちち約束やくそくっているがよい。 5すなわち、ヨハネはみずでバプテスマをさづけたが、あなたがたはもなく聖霊せいれいによって、バプテスマをさづけられるであろう」。

6さて、弟子でしたちが一緒いっしょあつまったとき、イエスにうてった、「しゅよ、イスラエルのためにくに復興ふっこうなさるのは、このときなのですか」。 7かれらにわれた、「時期じき場合ばあいは、ちちがご自分じぶん権威けんいによってさだめておられるのであって、あなたがたのかぎりではない。 8ただ、聖霊せいれいがあなたがたにくだるとき、あなたがたはちからけて、エルサレム、ユダヤとサマリヤの全土ぜんど、さらにのはてまで、わたしの証人しょうにんとなるであろう」。 9こうおわると、イエスはかれらのているまえてんげられ、くもむかえられて、その姿すがたえなくなった。 10イエスののぼってかれるとき、かれらがてんつめていると、よ、しろころもたふたりのひとが、かれらのそばにっていて 11った、「ガリラヤのひとたちよ、なぜてんあおいでっているのか。あなたがたをはなれててんげられたこのイエスは、てんのぼってかれるのをあなたがたがたのとおな有様ありさまで、またおいでになるであろう」。

12それからかれらは、オリブというやまくだってエルサレムにかえった。このやまはエルサレムにちかく、安息日あんそくにちゆるされている距離きょりのところにある。 13かれらは、市内しないって、そのまっていた屋上おくじょうにあがった。そのひとたちは、ペテロ、ヨハネ、ヤコブ、アンデレ、ピリポとトマス、バルトロマイとマタイ、アルパヨのヤコブと熱心ねっしんとうのシモンとヤコブのユダとであった。 14かれらはみな、婦人ふじんたち、とくにイエスのははマリヤ、およびイエスの兄弟きょうだいたちとともに、こころわせて、ひたすらいのりをしていた。

15そのころ、百二十めいばかりの人々ひとびとが、一団いちだんとなってあつまっていたが、ペテロはこれらの兄弟きょうだいたちのなかってった、 16兄弟きょうだいたちよ、イエスをとらえたものたちのびきになったユダについては、聖霊せいれいがダビデのくちをとおして預言よげんしたその言葉ことばは、成就じょうじゅしなければならなかった。 17かれはわたしたちの仲間なかまくわえられ、このつとめさずかっていたものであった。( 18かれ不義ふぎ報酬ほうしゅうで、ある地所じしょれたが、そこへまっさかさまにちて、はらがまんなかからけ、はらわたがみなながてしまった。 19そして、このことはエルサレムのぜん住民じゅうみんれわたり、そこで、この地所じしょかれらの国語こくごでアケルダマとばれるようになった。「地所じしょ」とのである。) 20詩篇しへんに、
『その屋敷やしきてよ、
そこにはひとりもものがいなくなれ』
いてあり、また
『そのしょくは、ほかのものらせよ』
とあるとおりである。 21そういうわけで、しゅイエスがわたしたちのあいだにゆききされた期間中きかんちゅう 22すなわち、ヨハネのバプテスマのときからはじまって、わたしたちをはなれててんげられたいたるまで、始終しじゅうわたしたちと行動こうどうともにしたひとたちのうち、だれかひとりが、わたしたちにくわわってしゅ復活ふっかつ証人しょうにんにならねばならない」。 23そこで一同いちどうは、バルサバとばれ、またのをユストというヨセフと、マッテヤとのふたりをて、 24いのってった、「すべてのひとこころをごぞんじであるしゅよ。このふたりのうちのどちらをえらんで、 25ユダがこの使徒しと職務しょくむからちて、自分じぶんくべきところへったそのあとをがせなさいますか、おしめください」。 26それから、ふたりのためにくじをいたところ、マッテヤにあたったので、このひとが十一にん使徒しとたちにくわえられることになった。

第二章

1五旬節ごじゅんせつがきて、みんなのもの一緒いっしょあつまっていると、 2突然とつぜんはげしいかぜいてきたようなおとてんからおこってきて、一同いちどうがすわっていたいえいっぱいにひびきわたった。 3また、したのようなものが、ほのおのようにわかれてあらわれ、ひとりびとりのうえにとどまった。 4すると、一同いちどう聖霊せいれいたされ、御霊みたまかたらせるままに、いろいろの他国たこく言葉ことばかたした。

5さて、エルサレムには、天下てんかのあらゆる国々くにぐにから、信仰しんこうぶかいユダヤじんたちがきてんでいたが、 6この物音ものおとおおぜいのひとあつまってきて、かれらのうま故郷こきょう国語こくごで、使徒しとたちがはなしているのを、だれもかれもいてあっけにられた。 7そしておどろあやしんでった、「よ、いまはなしているこのひとたちは、みなガリラヤびとではないか。 8それだのに、わたしたちがそれぞれ、うま故郷こきょう国語こくごかれらからかされるとは、いったい、どうしたことか。 9わたしたちのなかには、パルテヤびと、メジヤびと、エラムびともおれば、メソポタミヤ、ユダヤ、カパドキヤ、ポントとアジヤ、 10フルギヤとパンフリヤ、エジプトとクレネにちかいリビヤ地方ちほうなどにものもいるし、またローマじんたびにきているもの 11ユダヤじん改宗者かいしゅうしゃ、クレテびととアラビヤじんもいるのだが、あの人々ひとびとがわたしたちの国語こくごで、かみおおきなはたらきをべるのをくとは、どうしたことか」。 12みんなのものおどろまどって、たがいった、「これは、いったい、どういうわけなのだろう」。 13しかし、ほかのひとたちはあざわらって、「あのひとたちはあたらしいさけっているのだ」とった。

14そこで、ペテロが十一にんものともちあがり、こえをあげて人々ひとびとかたりかけた。

「ユダヤのひとたち、ならびにエルサレムにむすべてのかたがた、どうか、このことっていただきたい。わたしのうことにみみかたむけていただきたい。 15いまあさの九であるから、このひとたちは、あなたがたがおもっているように、さけっているのではない。 16そうではなく、これは預言者よげんしゃヨエルが預言よげんしていたことにほかならないのである。すなわち、
17かみがこうおおせになる。
おわりのときには、
わたしのれいをすべてのひとそそごう。
そして、あなたがたのむすこむすめ預言よげんをし、
若者わかものたちはまぼろし
老人ろうじんたちはゆめるであろう。
18そのときには、わたしの男女だんじょしもべたちにも
わたしのれいそそごう。
そしてかれらも預言よげんをするであろう。
19また、うえでは、てん奇跡きせきせ、
したでは、にしるしを、
すなわち、ちこめるけむりとを、
せるであろう。
20しゅおおいなるかがやかしいまえに、
はやみに
つきかわるであろう。
21そのとき、しゅもとめるものは、
みなすくわれるであろう』。
22イスラエルのひとたちよ、いまわたしのかたることをきなさい。あなたがたがよくっているとおり、ナザレびとイエスは、かみかれをとおして、あなたがたのなかおこなわれた数々かずかずちからあるわざと奇跡きせきとしるしとにより、かみからつかわされたものであることを、あなたがたにしめされたかたであった。 23このイエスがわたされたのはかみさだめた計画けいかく予知よちとによるのであるが、あなたがたはかれ不法ふほう人々ひとびと十字架じゅうじかにつけてころした。 24かみはこのイエスをくるしみからはなって、よみがえらせたのである。イエスが支配しはいされているはずはなかったからである。 25ダビデはイエスについてこうっている、
『わたしはつねまえしゅた。
しゅは、わたしがうごかされないため、
わたしのみぎにいてくださるからである。
26それゆえ、わたしのこころたのしみ、
わたしのしたはよろこびうたった。
わたしの肉体にくたいもまた、のぞみにきるであろう。
27あなたは、わたしのたましい黄泉よみておくことをせず、
あなたの聖者せいじゃてるのを、おゆるしにならないであろう。
28あなたは、いのちのみちをわたしにしめし、
まえにあって、わたしをよろこびでたしてくださるであろう』。
29兄弟きょうだいたちよ、族長ぞくちょうダビデについては、わたしはあなたがたにむかって大胆だいたんうことができる。かれんでほうむられ、げんにそのはか今日きょういたるまで、わたしたちのあいだのこっている。 30かれ預言者よげんしゃであって、『その子孫しそんのひとりを王位おういにつかせよう』と、かみかたかれちかわれたことをみとめていたので、 31キリストの復活ふっかつをあらかじめって、『かれ黄泉よみておかれることがなく、またその肉体にくたいてることもない』とかたったのである。 32このイエスを、かみはよみがえらせた。そして、わたしたちはみなその証人しょうにんなのである。 33それで、イエスはかみみぎげられ、ちちから約束やくそく聖霊せいれいけて、それをわたしたちにそそがれたのである。このことは、あなたがたがげん見聞みききしているとおりである。 34ダビデがてんのぼったのではない。かれ自身じしんこうっている、
しゅはわがしゅおおせになった、
35あなたのてきをあなたのあしだいにするまでは、
わたしのみぎしていなさい』。
36だから、イスラエルのぜんは、このことをしかとっておくがよい。あなたがたが十字架じゅうじかにつけたこのイエスを、かみは、しゅまたキリストとしておてになったのである」。

37人々ひとびとはこれをいて、つよこころされ、ペテロやほかの使徒しとたちに、「兄弟きょうだいたちよ、わたしたちは、どうしたらよいのでしょうか」とった。 38すると、ペテロがこたえた、「あらためなさい。そして、あなたがたひとりびとりがつみのゆるしをるために、イエス・キリストのによって、バプテスマをけなさい。そうすれば、あなたがたは聖霊せいれい賜物たまものけるであろう。 39この約束やくそくは、われらのしゅなるかみしにあずかるすべてのもの、すなわちあなたがたと、あなたがたのらと、とおくのもの一同いちどうとに、あたえられているものである」。 40ペテロは、ほかになおおおくの言葉ことばであかしをなし、人々ひとびとに「このまがった時代じだいからすくわれよ」とってすすめた。 41そこで、かれすすめの言葉ことばけいれたものたちは、バプテスマをけたが、その仲間なかまくわわったものが三千にんほどあった。 42そして一同いちどうはひたすら、使徒しとたちのおしえまもり、信徒しんとまじわりをなし、ともにパンをさき、いのりをしていた。

43みんなのものにおそれのねんしょうじ、おおくの奇跡きせきとしるしとが、使徒しとたちによって、次々つぎつぎおこなわれた。 44信者しんじゃたちはみな一緒いっしょにいて、いっさいのもの共有きょうゆうにし、 45資産しさんものっては、必要ひつようおうじてみんなのものあたえた。 46そして日々ひびこころを一つにして、えずみやもうでをなし、いえではパンをさき、よろこびと、まごころとをもって、食事しょくじともにし、 47かみをさんびし、すべてのひと好意こういたれていた。そしてしゅは、すくわれるもの日々ひび仲間なかまくわえてくださったのである。

第三章

1さて、ペテロとヨハネとが、午後ごごいのりのときにみやのぼろうとしていると、 2うまれながらあしのきかないおとこが、かかえられてきた。このおとこは、みやもうでに人々ひとびとほどこしをこうため、毎日まいにち、「うつくしのもん」とばれるみやもんのところに、かれていたものである。 3かれは、ペテロとヨハネとが、みやにはいってこうとしているのをて、ほどこしをこうた。 4ペテロとヨハネとはかれをじっとて、「わたしたちをなさい」とった。 5かれなにかもらえるのだろうと期待きたいして、ふたりに注目ちゅうもくしていると、 6ペテロがった、「金銀きんぎんはわたしにはい。しかし、わたしにあるものをあげよう。ナザレびとイエス・キリストのによってあるきなさい」。 7こうってかれ右手みぎてっておこしてやると、あしと、くるぶしとが、ちどころにつよくなって、 8おどりあがってち、あるした。そして、あるまわったりおどったりしてかみをさんびしながら、かれらとともみやにはいってった。 9民衆みんしゅうはみな、かれあるまわり、またかみをさんびしているのを 10これがみやの「うつくしのもん」のそばにすわって、ほどこしをこうていたものであるとり、かれおこったことについて、おどろあやしんだ。

11かれがなおもペテロとヨハネとにつきまとっているとき、人々ひとびとみなひどくおどろいて、「ソロモンのろう」とばれる柱廊ちゅうろうにいたかれらのところにあつまってきた。 12ペテロはこれをて、人々ひとびとにむかってった、「イスラエルのひとたちよ、なぜこのこと不思議ふしぎおもうのか。また、わたしたちが自分じぶんちから信心しんじんで、あのひとあるかせたかのように、なぜわたしたちをつめているのか。 13アブラハム、イサク、ヤコブのかみ、わたしたちの先祖せんぞかみは、そのしもべイエスに栄光えいこうたまわったのであるが、あなたがたは、このイエスをわたし、ピラトがゆるすことにめていたのに、それをかれ面前めんぜんこばんだ。 14あなたがたは、このせいなるただしいかたをこばんで、人殺ひとごろしのおとこをゆるすように要求ようきゅうし、 15いのちのきみころしてしまった。しかし、かみはこのイエスを死人しにんなかから、よみがえらせた。わたしたちは、そのこと証人しょうにんである。 16そして、イエスのが、それをしんじる信仰しんこうのゆえに、あなたがたのいまっているこのひとを、つよくしたのであり、イエスによる信仰しんこうが、かれをあなたがた一同いちどうまえで、このとおり完全かんぜんにいやしたのである。

17さて、兄弟きょうだいたちよ、あなたがたはらずにあのようなことをしたのであり、あなたがたの指導者しどうしゃたちとても同様どうようであったことは、わたしにわかっている。 18かみはあらゆる預言者よげんしゃくちをとおして、キリストの受難じゅなん予告よこくしておられたが、それをこのように成就じょうじゅなさったのである。 19だから、自分じぶんつみをぬぐいっていただくために、あらためて本心ほんしんちかえりなさい。 20それは、しゅのみまえからなぐさめのときがきて、あなたがたのためにあらかじめさだめてあったキリストなるイエスを、かみがつかわしてくださるためである。 21このイエスは、かみせいなる預言者よげんしゃたちのくちをとおして、むかしから預言よげんしておられた万物ばんぶつ更新こうしんときまで、てんにとどめておかれねばならなかった。 22モーセはった、『しゅなるかみは、わたしをおてになったように、あなたがたの兄弟きょうだいなかから、ひとりの預言者よげんしゃをおてになるであろう。その預言者よげんしゃがあなたがたにかたることには、ことごとくきしたがいなさい。 23かれきしたがわないものは、みなたみなかからほろぼしられるであろう』。 24サムエルをはじめ、そののちつづいてかたったほどの預言者よげんしゃはみな、このときのことを予告よこくした。 25あなたがたは預言者よげんしゃであり、かみがあなたがたの先祖せんぞたちとむすばれた契約けいやくである。かみはアブラハムにたいして、『地上ちじょうしょ民族みんぞくは、あなたの子孫しそんによって祝福しゅくふくけるであろう』とおおせられた。 26かみがまずあなたがたのために、そのしもべてて、おつかわしになったのは、あなたがたひとりびとりを、あくからちかえらせて、祝福しゅくふくにあずからせるためなのである」。

第四章

1かれらが人々ひとびとにこのようにかたっているあいだに、祭司さいしたち、宮守みやもりがしら、サドカイびとたちが近寄ちかよってきて、 2かれらが人々ひとびとおしえき、イエス自身じしんおこった死人しにん復活ふっかつ宣伝せんでんしているのにをいらて、 3かれらにをかけてとらえ、はやれていたので、よくあさまで留置りゅうちしておいた。 4しかし、かれらのはなしいたおおくのひとたちはしんじた。そして、そのおとこかずが五千にんほどになった。

5くる役人やくにん長老ちょうろう律法りっぽう学者がくしゃたちが、エルサレムに召集しょうしゅうされた。 6大祭司だいさいしアンナスをはじめ、カヤパ、ヨハネ、アレキサンデル、そのほか大祭司だいさいし一族いちぞくもみなあつまった。 7そして、そのまんなか使徒しとたちをたせて尋問じんもんした、「あなたがたは、いったい、なんの権威けんい、また、だれのによって、このことをしたのか」。 8そのとき、ペテロが聖霊せいれいたされてった、「たみ役人やくにんたち、ならびに長老ちょうろうたちよ、 9わたしたちが、きょう、取調とりしらべをけているのは、病人びょうにんたいしてしたいわざについてであり、このひとがどうしていやされたかについてであるなら、 10あなたがたご一同いちどうも、またイスラエルの人々ひとびと全体ぜんたいも、っていてもらいたい。このひと元気げんきになってみんなのまえっているのは、ひとえに、あなたがたが十字架じゅうじかにつけてころしたのを、かみ死人しにんなかからよみがえらせたナザレびとイエス・キリストの御名みなによるのである。 11このイエスこそは『あなたがたいえつくりらにてられたが、すみのかしらいしとなったいし』なのである。 12このひとによる以外いがいすくいはない。わたしたちをすくいうるは、これをべつにしては、天下てんかのだれにもあたえられていないからである」。

13人々ひとびとはペテロとヨハネとの大胆だいたんはなしぶりを、また同時どうじに、ふたりが無学むがくな、ただのひとたちであることをって、不思議ふしぎおもった。そしてかれらがイエスとともにいたものであることをみとめ、 14かつ、かれらにいやされたものがそのそばにっているのをては、まったくかえ言葉ことばがなかった。 15そこで、ふたりに議会ぎかいから退場たいじょうするようにめいじてから、たがい協議きょうぎをつづけて 16った、「あのひとたちを、どうしたらよかろうか。かれらによっていちじるしいしるしがおこなわれたことは、エルサレムの住民じゅうみん全体ぜんたいれわたっているので、否定ひていしようもない。 17ただ、これ以上いじょうこのことが民衆みんしゅうあいだにひろまらないように、今後こんごはこのによって、いっさいだれにもかたってはいけないと、おどしてやろうではないか」。 18そこで、ふたりをれて、イエスのによってかたることもくことも、いっさい相成あいならぬといわたした。 19ペテロとヨハネとは、これにたいしてった、「かみしたがうよりも、あなたがたにしたがほうが、かみまえただしいかどうか、判断はんだんしてもらいたい。 20わたしたちとしては、自分じぶんたこといたことを、かたらないわけにはいかない」。 21そこで、かれらはふたりをさらにおどしたうえ、ゆるしてやった。みんなのものが、この出来事できごとのために、かみをあがめていたので、その人々ひとびと手前てまえ、ふたりをばっするすべがなかったからである。 22そのしるしによっていやされたのは、四十さいあまりのひとであった。

23ふたりはゆるされてから、仲間なかまものたちのところにかえって、祭司長さいしちょうたちや長老ちょうろうたちがったいっさいのことを報告ほうこくした。 24一同いちどうはこれをくと、くちをそろえて、かみにむかいこえをあげてった、「てんうみと、そのなかのすべてのものとのつくりぬしなるしゅよ。 25あなたは、わたしたちの先祖せんぞ、あなたのしもべダビデのくちをとおして、聖霊せいれいによって、こうおおせになりました、
『なぜ、異邦人いほうじんらは、さわち、
もろもろのたみは、むなしいことをはかり、
26地上ちじょうおうたちは、ちかまえ、
支配者しはいしゃたちは、とうんで、
しゅとそのキリストとにさからったのか』。
27まことに、ヘロデとポンテオ・ピラトとは、異邦人いほうじんらやイスラエルのたみ一緒いっしょになって、このみやこあつまり、あなたからあぶらそそがれたせいなるしもべイエスにさからい、 28とみむねとによって、あらかじめさだめられていたことを、なしげたのです。 29しゅよ、いま、かれらの脅迫きょうはくをとめ、しもべたちに、おもって大胆だいたん御言葉みことばかたらせてください。 30そしてみばしていやしをなし、せいなるしもべイエスのによって、しるしと奇跡きせきとをおこなわせてください」。 31かれらがいのえると、そのあつまっていた場所ばしょうごき、一同いちどう聖霊せいれいたされて、大胆だいたんかみことばかたした。

32しんじたものれは、こころを一つにしおもいを一つにして、だれひとりそのもの自分じぶんのものだと主張しゅちょうするものがなく、いっさいのもの共有きょうゆうにしていた。 33使徒しとたちはしゅイエスの復活ふっかつについて、非常ひじょう力強ちからづよくあかしをした。そしておおきなめぐみが、かれ一同いちどうそそがれた。 34かれらのなかとぼしいものは、ひとりもいなかった。地所じしょ家屋かおくっているひとたちは、それをり、ったもの代金だいきんをもってきて、 35使徒しとたちのあしもとにいた。そしてそれぞれの必要ひつようおうじて、だれにでもあたえられた。

36クプロうまれのレビびとで、使徒しとたちにバルナバ(「なぐさめの」との)とばれていたヨセフは、 37自分じぶん所有しょゆうするはたけり、その代金だいきんをもってきて、使徒しとたちのあしもとにいた。

第五章

1ところが、アナニヤというひととそのつまサッピラとはとも資産しさんったが、 2共謀きょうぼうして、その代金だいきんをごまかし、一部いちぶだけをってきて、使徒しとたちのあしもとにいた。 3そこで、ペテロがった、「アナニヤよ、どうしてあなたは、自分じぶんこころをサタンにうばわれて、聖霊せいれいあざむき、地所じしょ代金だいきんをごまかしたのか。 4らずにのこしておけば、あなたのものであり、ってしまっても、あなたの自由じゆうになったはずではないか。どうして、こんなことをするになったのか。あなたはひとあざむいたのではなくて、かみあざむいたのだ」。 5アナニヤはこの言葉ことばいているうちに、たおれていきえた。このことをつたいた人々ひとびとは、みな非常ひじょうなおそれをかんじた。 6それから、若者わかものたちがって、その死体したいつつみ、はこしてほうむった。

7時間じかんばかりたってから、たまたまかれつまが、この出来事できごとらずに、はいってきた。 8そこで、ペテロが彼女かのじょにむかってった、「あの地所じしょは、これこれの値段ねだんったのか。そのとおりか」。彼女かのじょは「そうです、その値段ねだんです」とこたえた。 9ペテロはった、「あなたがたふたりが、こころわせてしゅ御霊みたまこころみるとは、何事なにごとであるか。よ、あなたのおっとほうむったひとたちのあしが、そこの門口かどぐちにきている。あなたもはこされるであろう」。 10するとおんなは、たちまちかれあしもとにたおれて、いきえた。そこに若者わかものたちがはいってきて、おんなんでしまっているのを、それをはこしてそのおっとのそばにほうむった。 11教会きょうかい全体ぜんたいならびにこれをつたいたひとたちは、みな非常ひじょうなおそれをかんじた。

12そのころ、おおくのしるしと奇跡きせきとが、次々つぎつぎ使徒しとたちのにより人々ひとびとなかおこなわれた。そして、一同いちどうこころを一つにして、ソロモンのろうあつまっていた。 13ほかのものたちは、だれひとり、そのまじわりにろうとはしなかったが、民衆みんしゅうかれらを尊敬そんけいしていた。 14しかし、しゅしんじて仲間なかまくわわるものが、男女だんじょとも、ますますおおくなってきた。 15ついには、病人びょうにん大通おおどおりにはこし、寝台しんだい寝床ねどこうえいて、ペテロがとおるとき、かれかげなりと、そのうちのだれかにかかるようにしたほどであった。 16またエルサレム附近ふきん町々まちまちからも、おおぜいのひとが、病人びょうにんけがれたれいくるしめられているひとたちをれて、あつまってきたが、その全部ぜんぶものが、ひとりのこらずいやされた。

17そこで、大祭司だいさいしとその仲間なかまもの、すなわち、サドカイひとたちが、みな嫉妬しっとねんたされてちあがり、 18使徒しとたちにをかけてとらえ、公共こうきょう留置場りゅうちじょうれた。 19ところがよるしゅ使つかいごくひらき、かれらをしてった、 20「さあきなさい。そして、みやにわち、このいのち言葉ことばれなく、人々ひとびとかたりなさい」。 21かれらはこれをき、夜明よあけごろみやにはいっておしえはじめた。

一方いっぽうでは、大祭司だいさいしとその仲間なかまものとが、あつまってきて、議会ぎかいとイスラエルびと長老ちょうろう一同いちどうとを召集しょうしゅうし、使徒しとたちをしてこさせるために、ひとごくにつかわした。 22そこで、下役したやくどもがってると、使徒しとたちがごくにいないので、かえして報告ほうこくした、 23ごくには、しっかりとじょうがかけてあり、戸口とぐちには、番人ばんにんっていました。ところが、あけてたら、なかにはだれもいませんでした」。 24宮守みやもりがしらと祭司長さいしちょうたちとは、この報告ほうこくいて、これは、いったい、どんなことになるのだろうと、あわてまどっていた。 25そこへ、あるひとがきてらせた、「ってごらんなさい。あなたがたがごくれたあのひとたちが、みやにわって、民衆みんしゅうおしえています」。 26そこで宮守みやもりがしらが、下役したやくどもと一緒いっしょかけてって、使徒しとたちをれてきた。しかし、人々ひとびといしころされるのをおそれて、手荒てあらなことはせず、 27かれらをれてきて、議会ぎかいなかたせた。すると、大祭司だいさいしうて 28った、「あの使つかっておしえてはならないと、きびしくめいじておいたではないか。それだのに、なんということだ。エルサレムなかにあなたがたのおしえを、はんらんさせている。あなたがたはたしかに、あのひと責任せきにんをわたしたちにわせようと、たくらんでいるのだ」。 29これにたいして、ペテロをはじめ使徒しとたちはった、「人間にんげんしたがうよりは、かみしたがうべきである。 30わたしたちの先祖せんぞかみは、あなたがたがにかけてころしたイエスをよみがえらせ、 31そして、イスラエルをあらためさせてこれにつみのゆるしをあたえるために、このイエスをみちびとし救主すくいぬしとして、ご自身じしんみぎげられたのである。 32わたしたちはこれらのこと証人しょうにんである。かみがご自身じしんしたがものたまわった聖霊せいれいもまた、その証人しょうにんである」。

33これをいたものたちは、はげしいいかりのあまり、使徒しとたちをころそうとおもった。 34ところが、国民こくみん全体ぜんたい尊敬そんけいされていた律法りっぽう学者がくしゃガマリエルというパリサイびとが、議会ぎかいって、使徒しとたちをしばらくのあいだそとすように要求ようきゅうしてから、 35一同いちどうにむかってった、「イスラエルの諸君しょくん、あのひとたちをどうあつかうか、よくをつけるがよい。 36さきごろ、チゥダがおこって、自分じぶんなにえらもののようにいふらしたため、かれしたがったおとこかずが、四百にんほどもあったが、結局けっきょくかれころされてしまい、したがったものもみな四散しさんして、まったあとほうもなくなっている。 37そののち、人口じんこう調査ちょうさときに、ガリラヤひとユダが民衆みんしゅうひきいて反乱はんらんおこしたが、このひとほろび、したがったものもみならされてしまった。 38そこで、このさい諸君しょくんもうげる。あのひとたちからいて、そのなすままにしておきなさい。そのくわだてや、しわざが、人間にんげんからたものなら、自滅じめつするだろう。 39しかし、もしかみからたものなら、あのひとたちをほろぼすことはできまい。まかりちがえば、諸君しょくんかみてきにまわすことになるかもれない」。そこでかれらはその勧告かんこくにしたがい、 40使徒しとたちをれて、むちったのち、今後こんごイエスのによってかたることは相成あいならぬといわたして、ゆるしてやった。 41使徒しとたちは、御名みなのためにはじくわえられるにものとされたことをよろこびながら、議会ぎかいからてきた。 42そして、毎日まいにちみやいえで、イエスがキリストであることを、きつづきおしえたりつたえたりした。

第六章

1そのころ、弟子でしかずがふえてくるにつれて、ギリシヤ使つかうユダヤじんたちから、ヘブル使つかうユダヤじんたちにたいして、自分じぶんたちのやもめらが、日々ひび配給はいきゅうで、おろそかにされがちだと、苦情くじょうもうてた。 2そこで、十二使徒しと弟子でし全体ぜんたいあつめてった、「わたしたちがかみことばをさしおいて、食卓しょくたくのことにたずさわるのはおもしろくない。 3そこで、兄弟きょうだいたちよ、あなたがたのなかから、御霊みたま知恵ちえとにちた、評判ひょうばんのよいひとたち七にんさがしてほしい。そのひとたちにこの仕事しごとをまかせ、 4わたしたちは、もっぱらいのり御言みことばのごようあたることにしよう」。 5この提案ていあん会衆かいしゅう一同いちどう賛成さんせいするところとなった。そして信仰しんこう聖霊せいれいとにちたひとステパノ、それからピリポ、プロコロ、ニカノル、テモン、パルメナ、およびアンテオケの改宗者かいしゅうしゃニコラオをえらして、 6使徒しとたちのまえたせた。すると、使徒しとたちはいのってかれらのうえにおいた。

7こうしてかみことばは、ますますひろまり、エルサレムにおける弟子でしかずが、非常ひじょうにふえていき、祭司さいしたちも多数たすう信仰しんこうけいれるようになった。

8さて、ステパノはめぐみとちからとにちて、民衆みんしゅうなかで、めざましい奇跡きせきとしるしとをおこなっていた。 9すると、いわゆる「リベルテン」の会堂かいどうぞくする人々ひとびと、クレネびと、アレキサンドリヤびと、キリキヤやアジヤからきた人々ひとびとなどがって、ステパノと議論ぎろんしたが、 10かれ知恵ちえ御霊みたまとでかたっていたので、それに対抗たいこうできなかった。 11そこで、かれらは人々ひとびとをそそのかして、「わたしたちは、かれがモーセとかみとをけが言葉ことばくのをいた」とわせた。 12そのうえ民衆みんしゅう長老ちょうろうたちや律法りっぽう学者がくしゃたちを煽動せんどうし、かれおそってとらえさせ、議会ぎかいにひっぱってこさせた。 13それから、いつわりの証人しょうにんたちをててわせた、「このひとは、この聖所せいじょ律法りっぽうとにさからう言葉ことばいて、どうしても、やめようとはしません。 14『あのナザレびとイエスは、この聖所せいじょちこわし、モーセがわたしたちにつたえた慣例かんれいえてしまうだろう』などと、かれうのを、わたしたちはきました」。 15議会ぎかいせきについていたひとたちはみな、ステパノにそそいだが、かれかおは、ちょうど天使てんしかおのようにえた。

第七章

1大祭司だいさいしは「そのとおりか」とたずねた。 2そこで、ステパノがった、

兄弟きょうだいたち、ちちたちよ、おください。わたしたちの父祖ふそアブラハムが、カランにまえ、まだメソポタミヤにいたとき、栄光えいこうかみかれあらわれて 3おおせになった、『あなたの土地とち親族しんぞくからはなれて、あなたにさししめきなさい』。 4そこで、アブラハムはカルデヤびとて、カランにんだ。そして、かれちちんだのち、かみかれをそこから、いまあなたがたのんでいるこの移住いじゅうさせたが、 5そこでは、遺産いさんとなるものはなに一つ、一歩いっぽはば土地とちすらも、あたえられなかった。ただ、その所領しょりょうとしてさづけようとの約束やくそくを、かれと、そしてかれにはまだがなかったのに、その子孫しそんとにあたえられたのである。 6かみはこうおおせになった、『かれ子孫しそん他国たこくせるであろう。そして、そこで四百ねんのあいだ、奴隷どれいにされて虐待ぎゃくたいけるであろう』。 7それから、さらにおおせになった、『かれらを奴隷どれいにする国民こくみんを、わたしはさばくであろう。そののちかれらはそこからのがれて、この場所ばしょでわたしを礼拝れいはいするであろう』。 8そして、かみはアブラハムに、割礼かつれい契約けいやくをおあたえになった。こうして、かれはイサクのちちとなり、これに八日目かめ割礼かつれいほどこし、それから、イサクはヤコブのちちとなり、ヤコブは十二にん族長ぞくちょうたちのちちとなった。

9族長ぞくちょうたちは、ヨセフをねたんで、エジプトにりとばした。しかし、かみかれともにいまして、 10あらゆる苦難くなんからかれすくし、エジプトおうパロのまえめぐみをあたえ、知恵ちえをあらわさせた。そこで、パロはかれ宰相さいしょうにんにつかせ、エジプトならびに王家おうけ全体ぜんたい支配しはいあたらせた。 11ときに、エジプトとカナンとの全土ぜんどにわたって、ききんがおこり、おおきな苦難くなんおそってきて、わたしたちの先祖せんぞたちは、食物しょくもつられなくなった。 12ヤコブは、エジプトには食糧しょくりょうがあるといて、はじめに先祖せんぞたちをつかわしたが、 13かいときに、ヨセフが兄弟きょうだいたちに、自分じぶんうえけたので、かれ親族しんぞく関係かんけいがパロにれてきた。 14ヨセフは使つかいをやって、ちちヤコブと七十五にんにのぼる親族しんぞく一同いちどうとをまねいた。 15こうして、ヤコブはエジプトにくだり、かれ自身じしん先祖せんぞたちもそこでに、 16それからかれらは、シケムにうつされて、かねてアブラハムがいくらかのかねしてこののハモルのらからっておいたはかに、ほうむられた。

17かみがアブラハムにたいしててられた約束やくそく時期じきちかづくにつれ、たみはふえてエジプト全土ぜんどにひろがった。 18やがて、ヨセフのことをらないべつおうが、エジプトにおこった。 19このおうは、わたしたちの同族どうぞくたい策略さくりゃくをめぐらして、先祖せんぞたちを虐待ぎゃくたいし、そのおさらをかしておかないようにてさせた。 20モーセがうまれたのは、ちょうどこのころのことである。かれはまれにうつくしいであった。三かげつあいだは、ちちいえそだてられたが、 21そののちてられたのを、パロのむすめひろいあげて、自分じぶんとしてそだてた。 22モーセはエジプトじんのあらゆる学問がくもんおしまれ、言葉ことばにもわざにも、ちからがあった。

23四十さいになったとき、モーセは自分じぶん兄弟きょうだいであるイスラエルびとたちのためにつくすことを、おもった。 24ところが、そのひとりがいじめられているのをて、これをかばい、虐待ぎゃくたいされているそのひとのために、相手あいてのエジプトじんって仕返しかえしをした。 25かれは、自分じぶんによってかみ兄弟きょうだいたちをすくってくださることを、みんながさとるものとおもっていたが、実際じっさいはそれをさとらなかったのである。 26翌日よくじつモーセは、かれらがあらそっているところにあらわれ、仲裁ちゅうさいしようとしてった、『まて、きみたちは兄弟きょうだい同志どうしではないか。どうしてたがいきずつけっているのか』。 27すると、仲間なかまをいじめていたものが、モーセをばしてった、『だれが、きみをわれわれの支配者しはいしゃ裁判人さいばんにんにしたのか。 28きみは、きのう、エジプトじんころしたように、わたしもころそうとおもっているのか』。 29モーセは、この言葉ことばいてげ、ミデアンのせ、そこでおとこふたりをもうけた。

30四十ねんたったとき、シナイざん荒野あらのにおいて、御使みつかいしばえるほのおなかでモーセにあらわれた。 31かれはこの光景こうけい不思議ふしぎおもい、それをきわめるために近寄ちかよったところ、しゅこえきこえてきた、 32『わたしは、あなたの先祖せんぞたちのかみ、アブラハム、イサク、ヤコブのかみである』。モーセはおそれおののいて、もうそれを勇気ゆうきもなくなった。 33すると、しゅかれわれた、『あなたのあしから、くつをぎなさい。あなたのっているこの場所ばしょは、せいなるである。 34わたしは、エジプトにいるわたしのたみ虐待ぎゃくたいされている有様ありさまたしかにとどけ、その苦悩くのうのうめきごえいたので、かれらをすくすためにくだってきたのである。さあ、いまあなたをエジプトにつかわそう』。

35こうして、『だれが、きみ支配者しはいしゃ裁判人さいばんにんにしたのか』とって排斥はいせきされたこのモーセを、かみは、しばなかかれあらわれた御使みつかいによって、支配者しはいしゃ解放者かいほうしゃとして、おつかわしになったのである。 36このひとが、人々ひとびとみちびして、エジプトのにおいても、紅海こうかいにおいても、また四十ねんのあいだ荒野あらのにおいても、奇跡きせきとしるしとをおこなったのである。 37このひとが、イスラエルひとたちに、『かみはわたしをおてになったように、あなたがたの兄弟きょうだいたちのなかから、ひとりの預言者よげんしゃをおてになるであろう』とったモーセである。 38このひとが、シナイざんで、かれかたりかけた御使みつかい先祖せんぞたちとともに、荒野あらのにおける集会しゅうかいにいて、ける御言葉みことばさずかり、それをあなたがたにつたえたのである。 39ところが、先祖せんぞたちはかれしたがおうとはせず、かえってかれ退しりぞけ、こころなかでエジプトにあこがれて、 40『わたしたちをみちびいてくれる神々かみがみつくってください。わたしたちをエジプトのからみちびいてきたあのモーセがどうなったのか、わかりませんから』とアロンにった。 41そのころ、かれらはうしぞうつくり、その偶像ぐうぞうそなものをささげ、自分じぶんたちのつくったものをまつってうち興じていた。 42そこで、かみかおをそむけ、かれらをてんほしおがむままにまかせられた。預言者よげんしゃしょにこういてあるとおりである、
『イスラエルのいえよ、
四十ねんのあいだ荒野あらのにいたときに、
いけにえとそなものとを、わたしにささげたことがあったか。
43あなたがたは、モロクの幕屋まくややロンパのほしかみを、かつぎまわった。
それらは、おがむために自分じぶんつくった偶像ぐうぞうぎぬ。
だからわたしは、あなたがたをバビロンのかなたへ、うつしてしまうであろう』。

44わたしたちの先祖せんぞには、荒野あらのにあかしの幕屋まくやがあった。それは、たままのかたにしたがってつくるようにと、モーセにかたったかたのご命令めいれいどおりにつくったものである。 45この幕屋まくやは、わたしたちの先祖せんぞが、ヨシュアにひきいられ、かみによってしょ民族みんぞくかれらのまえからはらい、その所領しょりょうをのりったときに、そこにまれ、次々つぎつぎがれて、ダビデの時代じだいおよんだものである。 46ダビデは、かみめぐみをこうむり、そして、ヤコブのかみのためにみや造営ぞうえいしたいとねがった。 47けれども、じっさいにそのみやてたのは、ソロモンであった。 48しかし、いとたかものは、つくったいえうちにはおみにならない。預言者よげんしゃっているとおりである、
49しゅおおせられる、
どんないえをわたしのためにてるのか。
わたしのいこいの場所ばしょは、どれか。
てんはわたしの王座おうざ
はわたしのあしだいである。

50これはみなわたしのつくったものではないか』。 51ああ、強情ごうじょうで、こころにもみみにも割礼かつれいのないひとたちよ。あなたがたは、いつも聖霊せいれいさからっている。それは、あなたがたの先祖せんぞたちとおなじである。 52いったい、あなたがたの先祖せんぞ迫害はくがいしなかった預言者よげんしゃが、ひとりでもいたか。かれらはただしいかたのることを予告よこくしたひとたちをころし、いまやあなたがたは、そのただしいかたを裏切うらぎもの、またころものとなった。 53あなたがたは、御使みつかいたちによってつたえられた律法りっぽうけたのに、それをまもることをしなかった」。

54人々ひとびとはこれをいて、こころそこからはげしくいかり、ステパノにむかって、ぎしりをした。 55しかし、かれ聖霊せいれいたされて、てんつめていると、かみ栄光えいこうあらわれ、イエスがかみみぎっておられるのがえた。 56そこで、かれは「ああ、てんひらけて、ひとかみみぎっておいでになるのがえる」とった。 57人々ひとびと大声おおごえさけびながら、みみをおおい、ステパノをがけて、いっせいに殺到さっとうし、 58かれ市外しがいして、いしった。これにったひとたちは、自分じぶん上着うわぎいで、サウロという若者わかものあしもとにいた。 59こうして、かれらがステパノにいしげつけているあいだ、ステパノはいのりつづけてった、「しゅイエスよ、わたしのれいをおください」。 60そして、ひざまずいて、大声おおごえさけんだ、「しゅよ、どうぞ、このつみかれらにわせないでください」。こうって、かれねむりについた。

第八章

1サウロは、ステパノをころすことに賛成さんせいしていた。

その、エルサレムの教会きょうかいたいしておお迫害はくがいおこり、使徒しと以外いがいものはことごとく、ユダヤとサマリヤとの地方ちほうらされてった。 2信仰しんこうぶかひとたちはステパノをほうむり、かれのためにむねって、非常ひじょうかなしんだ。 3ところが、サウロは家々いえいえって、おとこおんなきずりし、次々つぎつぎごくわたして、教会きょうかいあらまわった。

4さて、らされてったひとたちは、御言みことばつたえながら、めぐりあるいた。 5ピリポはサマリヤのまちくだってき、人々ひとびとにキリストをべはじめた。 6群衆ぐんしゅうはピリポのはなしき、そのおこなっていたしるしをて、こぞってかれかたることにみみかたむけた。 7けがれたれいにつかれたおおくの人々ひとびとからは、そのれい大声おおごえでわめきながらくし、また、おおくの中風ちゅうぶをわずらっているものや、あしのきかないものがいやされたからである。 8それで、このまちでは人々ひとびとが、大変たいへんなよろこびかたであった。

9さて、このまち以前いぜんからシモンというひとがいた。かれ魔術まじゅつおこなってサマリヤのひとたちをおどろかし、自分じぶんをさもえらもののようにいふらしていた。 10それで、ちいさいものからおおきいものにいたるまでみなかれについてき、「このひとこそは『大能たいのう』とばれるかみちからである」とっていた。 11かれらがこのひとについてったのは、ながいあいだその魔術まじゅつおどろかされていたためであった。 12ところが、ピリポがかみくにとイエス・キリストのについてつたえるにおよんで、おとこおんなしんじて、ぞくぞくとバプテスマをけた。 13シモン自身じしんしんじて、バプテスマをけ、それから、きつづきピリポについてった。そして、数々かずかずのしるしやめざましい奇跡きせきおこなわれるのをて、おどろいていた。

14エルサレムにいる使徒しとたちは、サマリヤの人々ひとびとが、かみことばれたといて、ペテロとヨハネとを、そこにつかわした。 15ふたりはサマリヤにくだってって、みんなが聖霊せいれいけるようにと、かれらのためにいのった。 16それは、かれらはただしゅイエスのによってバプテスマをけていただけで、聖霊せいれいはまだだれにもくだっていなかったからである。 17そこで、ふたりがかれらのうえにおいたところ、かれらは聖霊せいれいけた。 18シモンは、使徒しとたちがをおいたために、御霊みたま人々ひとびとさづけられたのをて、かねをさしし、 19「わたしがをおけばだれにでも聖霊せいれいさづけられるように、そのちからをわたしにもください」とった。 20そこで、ペテロがかれった、「おまえのかねは、おまえもろとも、うせてしまえ。かみ賜物たまものが、かねられるなどとおもっているのか。 21おまえのこころかみまえただしくないから、おまえは、とうてい、このことにあずかることができない。 22だから、この悪事あくじいて、しゅいのれ。そうすればあるいはそんなおもいをこころにいだいたことが、ゆるされるかもれない。 23おまえには、まだにが胆汁たんじゅうがあり、不義ふぎのなわがからみついている。それが、わたしにわかっている」。 24シモンはこれをいてった、「おおせのようなことが、わたしのおこらないように、どうぞ、わたしのためにしゅいのってください」。

25使徒しとたちは力強ちからづよくあかしをなし、またしゅことばかたったのち、サマリヤひとおおくの村々むらむら福音ふくいんつたえて、エルサレムにかえった。

26しかし、しゅ使つかいがピリポにむかってった、「って南方なんぽうき、エルサレムからガザへくだみちなさい」(このガザは、いまれはてている)。 27そこで、かれってかけた。すると、ちょうど、エチオピヤじん女王じょおうカンダケの高官こうかんで、女王じょおう財宝ざいほう全部ぜんぶ管理かんりしていた宦官かんがんであるエチオピヤじんが、礼拝れいはいのためエルサレムにのぼり、 28その帰途きとについていたところであった。かれ自分じぶん馬車ばしゃって、預言者よげんしゃイザヤのしょんでいた。 29御霊みたまがピリポに「すすって、あの馬車ばしゃならんできなさい」とった。 30そこでピリポがけてくと、預言者よげんしゃイザヤのしょんでいるそのひとこえきこえたので、「あなたは、んでいることが、おわかりですか」とたずねた。 31かれは「だれかが、びきをしてくれなければ、どうしてわかりましょう」とこたえた。そして、馬車ばしゃって一緒いっしょにすわるようにと、ピリポにすすめた。 32かれんでいた聖書せいしょ箇所かしょは、これであった、
かれは、ほふりかれてひつじのように、
また、黙々もくもくとして、
ものまえ小羊こひつじのように、
くちひらかない。
33かれは、いやしめられて、
そのさばきもおこなわれなかった。
だれが、かれ子孫しそんのことをかたることができようか、
かれいのち地上ちじょうからられているからには」。
34宦官かんがんはピリポにむかってった、「おたずねしますが、ここで預言者よげんしゃはだれのことをっているのですか。自分じぶんのことですか、それとも、だれかほかのひとのことですか」。 35そこでピリポはくちひらき、このせいからおこして、イエスのことをつたえた。 36みちすすんでくうちに、みずのあるところにきたので、宦官かんがんった、「ここにみずがあります。わたしがバプテスマをけるのに、なんのさしつかえがありますか」。〔 37これにたいして、ピリポは、「あなたがまごころからしんじるなら、けてさしつかえはありません」とった。すると、かれは「わたしは、イエス・キリストをかみしんじます」とこたえた。〕 38そこでくるまをとめさせ、ピリポと宦官かんがんと、ふたりとも、みずなかりてき、ピリポが宦官かんがんにバプテスマをさづけた。 39ふたりがみずからがると、しゅれいがピリポをさらってったので、宦官かんがんはもうかれることができなかった。宦官かんがんはよろこびながらたびをつづけた。 40そののち、ピリポはアゾトに姿すがたをあらわして、町々まちまちをめぐりあるき、いたるところで福音ふくいんつたえて、ついにカイザリヤにいた。

第九章

1さてサウロは、なおもしゅ弟子でしたちにたいする脅迫きょうはく殺害さつがいいきをはずませながら、大祭司だいさいしのところにって、 2ダマスコのしょ会堂かいどうあての添書てんしょもとめた。それは、このみちものつけ次第しだい男女だんじょべつなくしばりあげて、エルサレムにひっぱってるためであった。 3ところが、みちいそいでダマスコのちかくにきたとき、突然とつぜんてんからひかりがさして、かれをめぐりてらした。 4かれたおれたが、そのとき「サウロ、サウロ、なぜわたしを迫害はくがいするのか」とびかけるこえいた。 5そこでかれは「しゅよ、あなたは、どなたですか」とたずねた。するとこたえがあった、「わたしは、あなたが迫害はくがいしているイエスである。 6さあって、まちにはいってきなさい。そうすれば、そこであなたのなすべきことげられるであろう」。 7サウロの同行者どうこうしゃたちはものえずにっていて、こえだけはきこえたが、だれもえなかった。 8サウロはからがってひらいてみたが、なにえなかった。そこで人々ひとびとは、かれいてダマスコへれてった。 9かれは三日間かかんえず、またべることもむこともしなかった。

10さて、ダマスコにアナニヤというひとりの弟子でしがいた。このひとしゅまぼろしなかあらわれて、「アナニヤよ」とおびになった。かれは「しゅよ、わたしでございます」とこたえた。 11そこでしゅかれわれた、「って、『すぐ』という路地ろじき、ユダのいえでサウロというタルソびとたずねなさい。かれはいまいのっている。 12かれはアナニヤというひとがはいってきて、自分じぶんうえにおいてふたたえるようにしてくれるのを、まぼろしたのである」。 13アナニヤはこたえた、「しゅよ、あのひとがエルサレムで、どんなにひどいことをあなたの聖徒せいとたちにしたかについては、おおくのひとたちからいています。 14そしてかれはここでも、御名みなをとなえるものたちをみな捕縛ほばくするけんを、祭司長さいしちょうたちからてきているのです」。 15しかし、しゅおおせになった、「さあ、きなさい。あのひとは、異邦人いほうじんたち、おうたち、またイスラエルのらにも、わたしのつたえるうつわとして、わたしがえらんだものである。 16わたしののためにかれがどんなにくるしまなければならないかを、かれらせよう」。 17そこでアナニヤは、かけてってそのいえにはいり、をサウロのうえにおいてった、「兄弟きょうだいサウロよ、あなたが途中とちゅうあらわれたしゅイエスは、あなたがふたたえるようになるため、そして聖霊せいれいたされるために、わたしをここにおつかわしになったのです」。 18するとたちどころに、サウロのから、うろこのようなものがちて、もとどおりえるようになった。そこでかれってバプテスマをけ、 19また食事しょくじをとって元気げんきりもどした。

サウロは、ダマスコにいる弟子でしたちととも数日間すうじつかんごしてから、 20ただちにしょ会堂かいどうでイエスのことをつたえ、このイエスこそかみであるときはじめた。 21これをいたひとたちはみな非常ひじょうおどろいてった、「あれは、エルサレムでこのをとなえるものたちをくるしめたおとこではないか。そのうえここにやってきたのも、かれらをしばりあげて、祭司長さいしちょうたちのところへひっぱってくためではなかったか」。 22しかし、サウロはますますちからくわわり、このイエスがキリストであることを論証ろんしょうして、ダマスコにむユダヤじんたちをせた。

23相当そうとう日数にっすうがたったころ、ユダヤじんたちはサウロをころ相談そうだんをした。 24ところが、その陰謀いんぼうかれるところとなった。かれらはサウロをころそうとして、夜昼よるひるまちもん見守みまもっていたのである。 25そこでかれ弟子でしたちが、よるあいだかれをかごにせて、まち城壁じょうへきづたいにつりおろした。

26サウロはエルサレムにいて、弟子でしたちの仲間なかまくわわろうとつとめたが、みんなのものかれ弟子でしだとはしんじないで、おそれていた。 27ところが、バルナバはかれ世話せわをして使徒しとたちのところへれてき、途中とちゅうしゅかれあらわれてかたりかけたことや、かれがダマスコでイエスの大胆だいたんつたえた次第しだいを、かれらに説明せつめいしてかせた。 28それ以来いらいかれ使徒しとたちの仲間なかまくわわり、エルサレムに出入でいりし、しゅによって大胆だいたんかたり、 29ギリシヤ使つかうユダヤじんたちとしばしばかたい、またろんった。しかし、かれらはかれころそうとねらっていた。 30兄弟きょうだいたちはそれとって、かれをカイザリヤにれてくだり、タルソへおくした。

31こうして教会きょうかいは、ユダヤ、ガリラヤ、サマリヤぜん地方ちほうにわたって平安へいあんたもち、基礎きそがかたまり、しゅをおそれ聖霊せいれいにはげまされてあゆみ、次第しだい信徒しんとかずしてった。

32ペテロは方々ほうぼうをめぐりあるいたが、ルダに聖徒せいとたちのところへもくだってった。 33そして、そこで、八年間ねんかんとこについているアイネヤというひとった。このひと中風ちゅうぶであった。 34ペテロがかれった、「アイネヤよ、イエス・キリストがあなたをいやしてくださるのだ。きなさい。そしてとこりあげなさい」。すると、かれはただちにきあがった。 35ルダとサロンにひとたちは、みなそれをて、しゅ帰依きえした。

36ヨッパにタビタ(これをやくすと、ドルカス、すなわち、かもしか)というおんな弟子でしがいた。数々かずかずのよいはたらきやほどこしをしていた婦人ふじんであった。 37ところが、そのころ病気びょうきになってんだので、人々ひとびとはそのからだをあらって、屋上おくじょう安置あんちした。 38ルダはヨッパにちかかったので、弟子でしたちはペテロがルダにきているとき、ふたりのものかれのもとにやって、「どうぞ、はやくこちらにおいでください」とたのんだ。 39そこでペテロはって、ふたりのものれられてきた。かれくとすぐ、屋上おくじょう案内あんないされた。すると、やもめたちがみんなかれのそばにってきて、ドルカスが生前せいぜんつくった下着したぎ上着うわぎ数々かずかずを、きながらせるのであった。 40ペテロはみんなのものそとし、ひざまずいていのった。それから死体したいほういて、「タビタよ、きなさい」とった。すると彼女かのじょをあけ、ペテロをきなおった。 41ペテロは彼女かのじょをかしてたせた。それから、聖徒せいとたちや、やもめたちをれて、彼女かのじょきかえっているのをせた。 42このことがヨッパちゅうれわたり、おおくの人々ひとびとしゅしんじた。 43ペテロは、かわなめしシモンというひといえまり、しばらくのあいだヨッパに滞在たいざいした。

第一〇章

1さて、カイザリヤにコルネリオというひとがいた。イタリヤたいばれた部隊ぶたい百卒長ひゃくそつちょうで、 2信心しんじんぶかく、家族かぞく一同いちどうともかみうやまい、たみ数々かずかずほどこしをなし、えずかみいのりをしていた。 3ある午後ごごごろ、かみ使つかいかれのところにきて、「コルネリオよ」とぶのを、まぼろしではっきりた。 4かれ御使みつかいつめていたが、おそろしくなって、「しゅよ、なんでございますか」とった。すると御使みつかいった、「あなたのいのりほどこしはかみのみまえにとどいて、おぼえられている。 5ついてはいま、ヨッパにひとをやって、ペテロとばれるシモンというひとまねきなさい。 6このひとは、うみべにいえをもつかわなめしシモンというものきゃくとなっている」。 7このおげをした御使みつかいったのち、コルネリオは、しもべふたりと、部下ぶかなか信心しんじんぶか兵卒へいそつひとりとをび、 8いっさいのこと説明せつめいしてかせ、ヨッパへおくした。

9翌日よくじつ、この三にんたびをつづけてまちちかくにきたころ、ペテロはいのりをするため屋上おくじょうにのぼった。ときひるの十二ごろであった。 10かれ空腹くうふくをおぼえて、なにべたいとおもった。そして、人々ひとびと食事しょくじ用意よういをしているあいだに、夢心地ゆめごこちになった。 11すると、てんひらけ、おおきなぬののようなものが、すみをつるされて、地上ちじょうりてるのをた。 12そのなかには、地上ちじょうの四つあしうもの、またそらとりなど、各種かくしゅきものがはいっていた。 13そしてこえかれきこえてきた、「ペテロよ。って、それらをほふってべなさい」。 14ペテロはった、「しゅよ、それはできません。わたしはいままでに、きよくないもの、けがれたものは、何一なにひとべたことがありません」。 15すると、こえが二度目どめにかかってきた、「かみがきよめたものを、きよくないなどとってはならない」。 16こんなことが三もあってから、そのものはすぐてんげられた。

17ペテロが、いままぼろしはなんのことだろうかと、ひとり思案しあんにくれていると、ちょうどそのとき、コルネリオからおくられたひとたちが、シモンのいえたずてて、その門口かどぐちっていた。 18そしてこえをかけて、「ペテロとばれるシモンというかたが、こちらにおまりではございませんか」とたずねた。 19ペテロはなおもまぼろしについて、おもいめぐらしていると、御霊みたまった、「ごらんなさい、三にんひとたちが、あなたをたずねてきている。 20さあ、ってしたり、ためらわないで、かれらと一緒いっしょかけるがよい。わたしがかれらをよこしたのである」。 21そこでペテロは、そのひとたちのところにりてってった、「わたしがおたずねのペテロです。どんなごようでおいでになったのですか」。 22かれらはこたえた、「ただしいひとで、かみうやまい、ユダヤの全国民ぜんこくみん好感こうかんたれている百卒長ひゃくそつちょうコルネリオが、あなたをいえまねいておはなしうかがうようにとのおげを、せいなる御使みつかいからけましたので、まいりました」。 23そこで、ペテロは、かれらをむかえてまらせた。

翌日よくじつ、ペテロはって、かれらとれだってはっした。ヨッパの兄弟きょうだいたち数人すうにん一緒いっしょった。 24そのつぎに、一行いっこうはカイザリヤにいた。コルネリオは親族しんぞくしたしい友人ゆうじんたちをあつめて、っていた。 25ペテロがいよいよ到着とうちゃくすると、コルネリオは出迎でむかえて、かれあしもとにひれしてはいした。 26するとペテロは、かれおこしてった、「おちなさい。わたしもおな人間にんげんです」。 27それからともはなしながら、へやにはいってくと、そこには、すでにおおぜいのひとあつまっていた。 28ペテロはかれらにった、「あなたがたがっているとおり、ユダヤじん他国たこくひと交際こうさいしたり、出入でいりしたりすることは、きんじられています。ところが、かみは、どんな人間にんげんをもきよくないとか、けがれているとかってはならないと、わたしにおしめしになりました。 29まねきにあずかったときすこしもためらわずにまいったのは、そのためなのです。そこでうかがいますが、どういうわけで、わたしをまねいてくださったのですか」。 30これにたいしてコルネリオがこたえた、「四まえ、ちょうどこの時刻じこくに、わたしが自宅じたく午後ごごいのりをしていますと、突然とつぜんかがやいたころもひとが、まえってもうしました、 31『コルネリオよ、あなたのいのりきいれられ、あなたのほどこしはかみのみまえにおぼえられている。 32そこでヨッパにひとおくってペテロとばれるシモンをまねきなさい。そのひとかわなめしシモンの海沿うみぞいのいえまっている』。 33それで、早速さっそくあなたをおびしたのです。ようこそおいでくださいました。いまわたしたちは、しゅがあなたにおげになったことをのこらずうかがおうとして、みなかみのみまえにまかりているのです」。

34そこでペテロはくちひらいてった、「かみひとをかたよりみないかたで、 35かみうやまおこなものはどの国民こくみんでもけいれてくださることが、ほんとうによくわかってきました。 36あなたがたは、かみがすべてのものしゅなるイエス・キリストによって平和へいわ福音ふくいんつたえて、イスラエルのらにおおくくださった御言みことばをごぞんじでしょう。 37それは、ヨハネがバプテスマをいたのち、ガリラヤからはじまってユダヤ全土ぜんどにひろまった福音ふくいんべたものです。 38かみはナザレのイエスに聖霊せいれいちからとをそそがれました。このイエスは、かみともにおられるので、よいはたらきをしながら、また悪魔あくまおさえつけられている人々ひとびとをことごとくいやしながら、巡回じゅんかいされました。 39わたしたちは、イエスがこうしてユダヤじんやエルサレムでなさったすべてのことの証人しょうにんであります。人々ひとびとはこのイエスをにかけてころしたのです。 40しかしかみはイエスを三によみがえらせ、 41全部ぜんぶ人々ひとびとにではなかったが、わたしたち証人しょうにんとしてあらかじめえらばれたものたちにあらわれるようにしてくださいました。わたしたちは、イエスが死人しにんなかから復活ふっかつされたのちとも飲食いんしょくしました。 42それから、イエスご自身じしん生者せいじゃ死者ししゃとの審判者しんぱんしゃとしてかみさだめられたかたであることを、人々ひとびとつたえ、またあかしするようにと、かみはわたしたちにおめいじになったのです。 43預言者よげんしゃたちもみな、イエスをしんじるものはことごとく、そのによってつみのゆるしがけられると、あかしをしています」。

44ペテロがこれらの言葉ことばをまだかたえないうちに、それをいていたみんなのひとたちに、聖霊せいれいがくだった。 45割礼かつれいけている信者しんじゃで、ペテロについてきたひとたちは、異邦人いほうじんたちにも聖霊せいれい賜物たまものそそがれたのをて、おどろいた。 46それは、かれらが異言いげんかたってかみをさんびしているのをいたからである。そこで、ペテロがした、 47「このひとたちがわたしたちとおなじように聖霊せいれいけたからには、かれらにみずでバプテスマをさづけるのを、だれがこばみようか」。 48こうって、ペテロはその人々ひとびとめいじて、イエス・キリストのによってバプテスマをけさせた。それから、かれらはペテロにねがって、なお数日すうじつのあいだ滞在たいざいしてもらった。

第一一章

1さて、異邦人いほうじんたちもかみことばけいれたということが、使徒しとたちやユダヤにいる兄弟きょうだいたちにきこえてきた。 2そこでペテロがエルサレムにのぼったとき、割礼かつれいおもんじるものたちがかれをとがめてった、 3「あなたは、割礼かつれいのないひとたちのところにって、食事しょくじともにしたということだが」。 4そこでペテロはくちひらいて、順序じゅんじょただしく説明せつめいしてった、 5「わたしがヨッパのまちいのっていると、夢心地ゆめごこちになってまぼろした。おおきなぬののようなものが、すみをつるされて、てんからりてきて、わたしのところにとどいた。 6注意ちゅういしてつめていると、地上ちじょうの四つあしけものうもの、そらとりなどが、はいっていた。 7それからこえがして、『ペテロよ、って、それらをほふってべなさい』と、わたしにうのがきこえた。 8わたしはった、『しゅよ、それはできません。わたしはいままでに、きよくないものやけがれたものをくちれたことが一度いちどもございません』。 9すると、二度目どめてんからこえがかかってきた、『かみがきよめたものを、きよくないなどとってはならない』。 10こんなことが三もあってから、全部ぜんぶのものがまたてんげられてしまった。 11ちょうどそのとき、カイザリヤからつかわされてきた三にんひとが、わたしたちのまっていたいえいた。 12御霊みたまがわたしに、ためらわずにかれらとともけとったので、ここにいる六にん兄弟きょうだいたちも、わたしと一緒いっしょかけてき、一同いちどうがそのひといえにはいった。 13するとかれはわたしたちに、御使みつかいかれいえあらわれて、『ヨッパにひとをやって、ペテロとばれるシモンをまねきなさい。 14このひとは、あなたとあなたのぜん家族かぞくとがすくわれる言葉ことばかたってくださるであろう』とげた次第しだいを、はなしてくれた。 15そこでわたしがかたしたところ、聖霊せいれいが、ちょうど最初さいしょわたしたちのうえにくだったとおなじように、かれらのうえにくだった。 16そのときわたしは、しゅが『ヨハネはみずでバプテスマをさづけたが、あなたがたは聖霊せいれいによってバプテスマをけるであろう』とおおせになった言葉ことばおもした。 17このように、わたしたちがしゅイエス・キリストをしんじたときくださったのとおな賜物たまものを、かみかれらにもおあたえになったとすれば、わたしのようなものが、どうしてかみさまたげることができようか」。 18人々ひとびとはこれをいてだまってしまった。それからかみをさんびして、「それではかみは、異邦人いほうじんにもいのちにいたる悔改くいあらためをおあたえになったのだ」とった。

19さて、ステパノのことでおこった迫害はくがいのためにらされた人々ひとびとは、ピニケ、クプロ、アンテオケまでもすすんでったが、ユダヤじん以外いがいものには、だれにも御言みことばかたっていなかった。 20ところが、そのなか数人すうにんのクプロびととクレネびとがいて、アンテオケにってからギリシヤじんにもびかけ、しゅイエスをつたえていた。 21そして、しゅのみかれらとともにあったため、しんじてしゅ帰依きえするもののかずおおかった。

22このうわさがエルサレムにある教会きょうかいつたわってきたので、教会きょうかいはバルナバをアンテオケにつかわした。 23かれは、そこにいて、かみのめぐみをてよろこび、しゅたいする信仰しんこうるがないこころちつづけるようにと、みんなのものはげました。 24かれ聖霊せいれい信仰しんこうとにちた立派りっぱひとであったからである。こうしてしゅくわわる人々ひとびとが、おおぜいになった。 25そこでバルナバはサウロをさがしにタルソへかけてき、 26かれつけたうえ、アンテオケにれてかえった。ふたりは、まる一ねん、ともどもに教会きょうかいあつまりをし、おおぜいの人々ひとびとおしえた。このアンテオケではじめて、弟子でしたちがクリスチャンとばれるようになった。

27そのころ、預言者よげんしゃたちがエルサレムからアンテオケにくだってきた。 28そのなかのひとりであるアガボというものって、世界中せかいじゅうだいききんがおこるだろうと、御霊みたまによって預言よげんしたところ、はたしてそれがクラウデオていときおこった。 29そこで弟子でしたちは、それぞれのちからおうじて、ユダヤにんでいる兄弟きょうだいたちに援助えんじょおくることにめた。 30そして、それをバルナバとサウロとのたくして、長老ちょうろうたちにおくりとどけた。

第一二章

1そのころ、ヘロデおう教会きょうかいのあるものたちに圧迫あっぱくをのばし、 2ヨハネの兄弟きょうだいヤコブをつるぎでころした。 3そして、それがユダヤじんたちのにかなったのをて、さらにペテロをもとらえにかかった。それは除酵祭じょこうさいときのことであった。 4ヘロデはペテロをとらえてごくとうじ、四にんくみ兵卒へいそつくみわたして、見張みはりをさせておいた。過越すぎこしまつりのあとで、かれ民衆みんしゅうまえすつもりであったのである。 5こうして、ペテロはごくれられていた。教会きょうかいでは、かれのために熱心ねっしんいのりかみにささげられた。

6ヘロデがかれそうとしていたそのよる、ペテロは二重にじゅうくさりにつながれ、ふたりの兵卒へいそつあいだかれてねむっていた。番兵ばんぺいたちは戸口とぐちごく見張みはっていた。 7すると、突然とつぜんしゅ使つかいがそばにち、ひかり獄内ごくないてらした。そして御使みつかいはペテロのわきばらをつついておこし、「はやきあがりなさい」とった。するとくさりかれ両手りょうてから、はずれちた。 8御使みつかいが「おびをしめ、くつをはきなさい」とったので、かれはそのとおりにした。それから「上着うわぎて、ついてきなさい」とわれたので、 9ペテロはついてった。かれには御使みつかいのしわざが現実げんじつのこととはかんがえられず、ただまぼろしているようにおもわれた。 10かれらはだい一、だい二の衛所えいしょとおりすぎて、まちけるてつもんのところにると、それがひとりでにひらいたので、そこをて一つの通路つうろすすんだとたんに、御使みつかいかれはなった。 11そのときペテロはわれにかえってった、「いまはじめて、ほんとうのことがわかった。しゅ御使みつかいをつかわして、ヘロデのから、またユダヤじんたちのちもうけていたあらゆるわざわいから、わたしをすくしてくださったのだ」。

12ペテロはこうとわかってから、マルコとばれているヨハネのははマリヤのいえった。そのいえにはおおぜいのひとあつまっていのっていた。 13かれもんをたたいたところ、ロダという女中じょちゅう取次とりつぎにてきたが、 14ペテロのこえだとわかると、よろこびのあまり、もんをあけもしないでいえみ、ペテロが門口かどぐちっていると報告ほうこくした。 15人々ひとびとは「あなたはくるっている」とったが、彼女かのじょ自分じぶんうことに間違まちがいはないと、った。そこでかれらは「それでは、ペテロの御使みつかいだろう」とった。 16しかし、ペテロがもんをたたきつづけるので、かれらがあけると、そこにペテロがいたのをおどろいた。 17ペテロはってかれらをしずめ、しゅごくからかれしてくださった次第しだい説明せつめいし、「このことを、ヤコブやほかの兄弟きょうだいたちにつたえてください」とのこして、どこかほかのところった。

18けると、兵卒へいそつたちのあいだに、ペテロはいったいどうなったのだろうと、たいへんなさわぎがおこった。 19ヘロデはペテロをさがしてもつからないので、番兵ばんぺいたちを調しらべたうえ、かれらを死刑しけいしょするようにめいじ、そして、ユダヤからカイザリヤにくだってって、そこに滞在たいざいした。

20さて、ツロとシドンとの人々ひとびとは、ヘロデのいかりにふれていたので、一同いちどううちそろっておうをおとずれ、おう侍従じじゅうかんブラストにりいって、和解わかいかたを依頼いらいした。かれらの地方ちほうが、おうくにから食糧しょくりょうていたからである。 21さだめられたに、ヘロデはおうふくをまとって王座おうざにすわり、かれらにむかって演説えんぜつをした。 22あつまった人々ひとびとは、「これはかみこえだ、人間にんげんこえではない」とさけびつづけた。 23するとたちまち、しゅ使つかいかれった。かみ栄光えいこうすることをしなかったからである。かれむしにかまれていきえてしまった。

24こうして、しゅことばはますますさかんにひろまってった。

25バルナバとサウロとは、その任務にんむはたしたのち、マルコとばれていたヨハネをれて、エルサレムからかえってきた。

第一三章

1さて、アンテオケにある教会きょうかいには、バルナバ、ニゲルとばれるシメオン、クレネびとルキオ、領主りょうしゅヘロデの乳兄弟ちきょうだいマナエン、およびサウロなどの預言者よげんしゃ教師きょうしがいた。 2一同いちどうしゅ礼拝れいはいをささげ、断食だんじきをしていると、聖霊せいれいが「さあ、バルナバとサウロとを、わたしのためにせいべつして、かれらにさづけておいた仕事しごとあたらせなさい」とげた。 3そこで一同いちどうは、断食だんじきいのりとをして、をふたりのうえにおいたのち出発しゅっぱつさせた。

4ふたりは聖霊せいれいおくされて、セルキヤにくだり、そこからふねでクプロにわたった。 5そしてサラミスにくと、ユダヤじんしょ会堂かいどうかみことばべはじめた。かれらはヨハネをたすとしてれていた。 6しま全体ぜんたい巡回じゅんかいして、パポスまでったところ、そこでユダヤじん魔術まじゅつ、バルイエスというにせ預言者よげんしゃ出会であった。 7かれ地方ちほう総督そうとくセルギオ・パウロのところに出入でいりをしていた。この総督そうとく賢明けんめいひとであって、バルナバとサウロとをまねいて、かみことばこうとした。 8ところが魔術まじゅつエルマ(かれは「魔術まじゅつ」との)は、総督そうとく信仰しんこうからそらそうとして、しきりにふたりの邪魔じゃまをした。 9サウロ、またのはパウロ、は聖霊せいれいたされ、かれをにらみつけて 10った、「ああ、あらゆるいつわりと邪悪じゃあくとでかたまっている悪魔あくまよ、すべてただしいもののてきよ。しゅのまっすぐなみちげることをめないのか。 11よ、しゅのみがおまえのうえおよんでいる。おまえはめくらになって、当分とうぶんひかりえなくなるのだ」。たちまち、かすみとやみとがかれにかかったため、かれさぐりしながら、いてくれるひとさがしまわった。 12総督そうとくはこの出来事できごとて、しゅおしえにすっかりおどろき、そしてしんじた。

13パウロとその一行いっこうは、パポスから船出ふなでして、パンフリヤのペルガにわたった。ここでヨハネは一行いっこうからいて、エルサレムにかえってしまった。 14しかしふたりは、ペルガからさらにすすんで、ピシデヤのアンテオケにき、安息日あんそくにち会堂かいどうにはいってせきいた。 15律法りっぽう預言よげんしょ朗読ろうどくがあったのち、会堂司かいどうづかさたちがかれらのところにひとをつかわして、「兄弟きょうだいたちよ、もしあなたがたのうち、どなたか、この人々ひとびとなに奨励しょうれい言葉ことばがありましたら、どうぞおはなください」とわせた。 16そこでパウロがちあがり、りながらった。

「イスラエルのひとたち、ならびにかみうやまうかたがたよ、おください。 17このたみイスラエルのかみは、わたしたちの先祖せんぞえらび、エジプトの滞在たいざいちゅう、このたみおおいなるものとし、みうでたかくさしげて、かれらをそのからみちびされた。 18そしてやく四十ねんにわたって、荒野あらのかれらをはぐくみ、 19カナンのでは七つの民族みんぞくほろぼし、そのかれらにゆずあたえられた。 20それらのことがやく四百五十ねん年月ねんげつにわたった。そののちかみはさばきひとたちをおつかわしになり、預言者よげんしゃサムエルのときおよんだ。 21そのとき人々ひとびとおう要求ようきゅうしたので、かみはベニヤミンぞくひと、キスのサウロを四十年間ねんかんかれらにおつかわしになった。 22それからかみはサウロを退しりぞけ、ダビデをてておうとされたが、かれについてあかしをして、『わたしはエッサイのダビデをつけた。かれはわたしのこころにかなったひとで、わたしのおもうところを、ことごとく実行じっこうしてくれるであろう』とわれた。 23かみ約束やくそくにしたがって、このダビデの子孫しそんなかから救主すくいぬしイエスをイスラエルにおくられたが、 24そのこられるまえに、ヨハネがイスラエルのすべてのたみ悔改くいあらためのバプテスマを、あらかじめつたえていた。 25ヨハネはその一生いっしょう行程こうていおわろうとするにあたってった、『わたしは、あなたがたがかんがえているようなものではない。しかし、わたしのあとからるかたがいる。わたしはそのくつをがせてあげるうちもない』。 26兄弟きょうだいたち、アブラハムの子孫しそんのかたがた、ならびにみなさんのなかかみうやまひとたちよ。このすくい言葉ことばはわたしたちにおくられたのである。 27エルサレムに人々ひとびとやその指導者しどうしゃたちは、イエスをみとめずにけいしょし、それによって、安息日あんそくにちごとに預言者よげんしゃ言葉ことば成就じょうじゅした。 28また、なんらあた理由りゆういだせなかったのに、ピラトに強要きょうようしてイエスをころしてしまった。 29そして、イエスについていてあることを、みななしげてから、人々ひとびとはイエスをからりおろしてはかほうむった。 30しかし、かみはイエスを死人しにんなかから、よみがえらせたのである。 31イエスは、ガリラヤからエルサレムへ一緒いっしょのぼったひとたちに、幾日いくにちものあいだあらわれ、そして、かれらはいまや、人々ひとびとたいしてイエスの証人しょうにんとなっている。 32わたしたちは、かみ先祖せんぞたちにたいしてなされた約束やくそくを、ここにつたえているのである。 33かみは、イエスをよみがえらせて、わたしたち子孫しそんにこの約束やくそくを、おはたしになった。それは詩篇しへんだいへんにも、『あなたこそは、わたしの。きょう、わたしはあなたをんだ』といてあるとおりである。 34また、かみがイエスを死人しにんなかからよみがえらせて、いつまでもてることのないものとされたことについては、『わたしは、ダビデに約束やくそくしたたしかなせいなる祝福しゅくふくを、あなたがたにさづけよう』とわれた。 35だから、ほかの箇所かしょでもこうっておられる、『あなたの聖者せいじゃてるようなことは、おゆるしにならないであろう』。 36事実じじつ、ダビデは、その時代じだい人々ひとびとかみのみむねにしたがってつかえたが、やがてねむりにつき、先祖せんぞたちのなかくわえられて、ついにててしまった。 37しかし、かみがよみがえらせたかたは、てることがなかったのである。 38だから、兄弟きょうだいたちよ、このこと承知しょうちしておくがよい。すなわち、このイエスによるつみのゆるしの福音ふくいんが、いまやあなたがたにつたえられている。そして、モーセの律法りっぽうではとされることができなかったすべてのことについても、 39しんじるものはもれなく、イエスによってとされるのである。 40だから預言者よげんしゃたちのしょにかいてあるつぎのようなことが、あなたがたのおこらないようにをつけなさい。
41よ、あなどものたちよ。おどろけ、そしてほろれ。
わたしは、あなたがたの時代じだいに一つのことをする。
それは、ひとがどんなに説明せつめいしてかせても、
あなたがたのとうていしんじないようなことなのである』」。

42ふたりが会堂かいどうとき人々ひとびとつぎ安息日あんそくにちにも、これとおなはなしをしてくれるようにと、しきりにねがった。 43そして集会しゅうかいおわってからも、おおぜいのユダヤじん信心しんじんぶか改宗者かいしゅうしゃたちが、パウロとバルナバとについてきたので、ふたりは、かれらがきつづきかみのめぐみにとどまっているようにと、きすすめた。

44つぎ安息日あんそくにちには、ほとんど全市ぜんしをあげて、かみことばきにあつまってきた。 45するとユダヤじんたちは、その群衆ぐんしゅうてねたましくおもい、パウロのかたることにくちぎたなく反対はんたいした。 46パウロとバルナバとは大胆だいたんかたった、「かみことばは、まず、あなたがたにかたつたえられなければならなかった。しかし、あなたがたはそれを退しりぞけ、自分じぶん自身じしん永遠えいえんいのちにふさわしからぬものにしてしまったから、さあ、わたしたちはこれから方向ほうこうをかえて、異邦人いほうじんたちのほうくのだ。 47しゅはわたしたちに、こうめいじておられる、
『わたしは、あなたをてて異邦人いほうじんひかりとした。
あなたがはてまでもすくいをもたらすためである』」。
48異邦人いほうじんたちはこれをいてよろこび、しゅ御言みことばをほめたたえてやまなかった。そして、永遠えいえんいのちにあずかるようにさだめられていたものは、みなしんじた。 49こうして、しゅ御言みことばはこの地方ちほう全体ぜんたいにひろまってった。 50ところが、ユダヤじんたちは、信心しんじんぶか貴婦人きふじんたちやまち有力ゆうりょくしゃたちを煽動せんどうして、パウロとバルナバを迫害はくがいさせ、ふたりをその地方ちほうからさせた。 51ふたりは、かれらにけてあしのちりをはらおとして、イコニオムへった。 52弟子でしたちは、ますますよろこびと聖霊せいれいとにたされていた。

第一四章

1ふたりは、イコニオムでもおなじようにユダヤじん会堂かいどうにはいってかたった結果けっか、ユダヤじんやギリシヤじんおおぜいしんじた。 2ところが、しんじなかったユダヤじんたちは異邦人いほうじんたちをそそのかして、兄弟きょうだいたちにたいして悪意あくいをいだかせた。 3それにもかかわらず、ふたりはなが期間きかんをそこでごして、大胆だいたんしゅのことをかたった。しゅは、かれらのによってしるしと奇跡きせきとをおこなわせ、そのめぐみの言葉ことばをあかしされた。 4そこでまち人々ひとびとが二わかれ、あるひとたちはユダヤじんがわにつき、あるひとたちは使徒しとがわについた。 5そのとき異邦人いほうじんやユダヤじん役人やくにんたちと一緒いっしょになって反対はんたい運動うんどうおこし、使徒しとたちをはずかしめ、いしとうとしたので、 6ふたりはそれとづいて、ルカオニヤの町々まちまち、ルステラ、デルベおよびその附近ふきんへのがれ、 7そこできつづき福音ふくいんつたえた。

8ところが、ルステラにあしのきかないひとが、すわっていた。かれうまれながらのあしなえで、あるいた経験けいけんまったくなかった。 9このひとがパウロのかたるのをいていたが、パウロはかれをじっとて、いやされるほどの信仰しんこうかれにあるのをみとめ、 10大声おおごえで「自分じぶんあしで、まっすぐにちなさい」とった。するとかれおどがってあるした。 11群衆ぐんしゅうはパウロのしたことをて、こえりあげ、ルカオニヤの地方ちほうで、「神々かみがみ人間にんげん姿すがたをとって、わたしたちのところにおくだりになったのだ」とさけんだ。 12かれらはバルナバをゼウスとび、パウロはおもにかたひとなので、かれをヘルメスとんだ。 13そして、郊外こうがいにあるゼウス神殿しんでん祭司さいしが、群衆ぐんしゅうともに、ふたりに犠牲ぎせいをささげようとおもって、うし数頭すうとう花輪はなわとを門前もんぜんってきた。 14ふたりの使徒しとバルナバとパウロとは、これをいて自分じぶん上着うわぎき、群衆ぐんしゅうなかんでき、さけんで 15った、「みなさん、なぜこんなことをするのか。わたしたちとても、あなたがたとおなじような人間にんげんである。そして、あなたがたがこのようなにもつかぬものをてて、てんうみと、そのなかのすべてのものをおつくりになったけるかみかえるようにと、福音ふくいんいているものである。 16かみった時代じだいには、すべての国々くにぐにひとが、それぞれのみちくままにしておかれたが、 17それでも、ご自分じぶんのことをあかししないでおられたわけではない。すなわち、あなたがたのためにてんからあめらせ、みのりの季節きせつあたえ、食物しょくもつよろこびとで、あなたがたのこころたすなど、いろいろのめぐみをおあたえになっているのである」。 18こうって、ふたりは、やっとのことで、群衆ぐんしゅう自分じぶんたちに犠牲ぎせいをささげるのを、おもとどまらせた。

19ところが、あるユダヤじんたちはアンテオケやイコニオムからしかけてきて、群衆ぐんしゅう仲間なかまれたうえ、パウロをいしち、んでしまったとおもって、かれまちそときずりした。 20しかし、弟子でしたちがパウロをかこんでいるあいだに、かれきあがってまちにはいってった。そして翌日よくじつには、バルナバと一緒いっしょにデルベにむかってかけた。 21そのまち福音ふくいんつたえて、おおぜいのひと弟子でしとしたのち、ルステラ、イコニオム、アンテオケの町々まちまちかえってき、 22弟子でしたちをちからづけ、信仰しんこうちつづけるようにと奨励しょうれいし、「わたしたちがかみくににはいるのには、おおくの苦難くなんなければならない」とかたった。 23また教会きょうかいごとにかれらのために長老ちょうろうたちを任命にんめいし、断食だんじきをしていのり、かれらをそのしんじているしゅにゆだねた。

24それから、ふたりはピシデヤを通過つうかしてパンフリヤにきたが、 25ペルガで御言みことばかたったのち、アタリヤにくだり、 26そこからふねでアンテオケにかえった。かれらがいまなしおわったはたらきのために、かみ祝福しゅくふくけておくされたのは、このアンテオケからであった。 27かれらは到着とうちゃく早々そうそう教会きょうかい人々ひとびとあつめて、かみかれらとともにいてしてくださった数々かずかずのこと、また信仰しんこうもん異邦人いほうじんひらいてくださったことなどを、報告ほうこくした。 28そして、ふたりはしばらくのあいだ弟子でしたちと一緒いっしょごした。

第一五章

1さて、あるひとたちがユダヤからくだってきて、兄弟きょうだいたちに「あなたがたも、モーセの慣例かんれいにしたがって割礼かつれいけなければ、すくわれない」と、いていた。 2そこで、パウロやバルナバとかれらとのあいだに、すくなからぬ紛糾ふんきゅう争論そうろんとがしょうじたので、パウロ、バルナバそのほか数人すうにんものがエルサレムにのぼり、使徒しとたちや長老ちょうろうたちと、この問題もんだいについて協議きょうぎすることになった。 3かれらは教会きょうかい人々ひとびと見送みおくられ、ピニケ、サマリヤをとおって、みちすがら、異邦人いほうじんたちの改宗かいしゅう模様もようをくわしく説明せつめいし、すべての兄弟きょうだいたちをおおいによろこばせた。 4エルサレムにくと、かれらは教会きょうかい使徒しとたち、長老ちょうろうたちにむかえられて、かみかれらとともにいてなされたことを、ことごとく報告ほうこくした。 5ところが、パリサイから信仰しんこうにはいってきたひとたちがって、「異邦人いほうじんにも割礼かつれいほどこし、またモーセの律法りっぽうまもらせるべきである」と主張しゅちょうした。

6そこで、使徒しとたちや長老ちょうろうたちが、この問題もんだいについて審議しんぎするためにあつまった。 7はげしい争論そうろんがあったのち、ペテロがってった、「兄弟きょうだいたちよ、ご承知しょうちのとおり、異邦人いほうじんがわたしのくちから福音ふくいん言葉ことばいてしんじるようにと、かみはじめのころに、諸君しょくんなかからわたしをおえらびになったのである。 8そして、ひとこころをごぞんじであるかみは、聖霊せいれいをわれわれにたまわったと同様どうようかれらにもたまわって、かれらにたいしてあかしをなし、 9また、その信仰しんこうによってかれらのこころをきよめ、われわれとかれらとのあいだに、なんのけへだてもなさらなかった。 10しかるに、諸君しょくんはなぜ、いまわれわれの先祖せんぞもわれわれ自身じしんも、いきれなかったくびきをあの弟子でしたちのくびにかけて、かみこころみるのか。 11たしかに、しゅイエスのめぐみによって、われわれはすくわれるのだとしんじるが、かれらとても同様どうようである」。

12すると、ぜん会衆かいしゅうだまってしまった。それから、バルナバとパウロとが、かれらをとおして異邦人いほうじんあいだかみおこなわれた数々かずかずのしるしと奇跡きせきのことを、説明せつめいするのをいた。 13ふたりがかたえたのち、ヤコブはそれにおうじてべた、「兄弟きょうだいたちよ、わたしの意見いけんいていただきたい。 14かみはじめに異邦人いほうじんたちをかえりみて、そのなかから御名みなたみえらされた次第しだいは、シメオンがすでに説明せつめいした。 15預言者よげんしゃたちの言葉ことばも、それと一致いっちしている。すなわち、こういてある、
16『そののち、わたしはかえってきて、
たおれたダビデの幕屋まくやてかえ、
くずれた箇所かしょ修理しゅうりし、
それをなおそう。
17のこっている人々ひとびとも、
わたしのとなえているすべての異邦人いほうじんも、
しゅたずもとめるようになるためである。
18はじめからこれらのことらせておられるしゅが、こうおおせになった』。
19そこで、わたしの意見いけんでは、異邦人いほうじんなかからかみ帰依きえしているひとたちに、わずらいをかけてはいけない。 20ただ、偶像ぐうぞうそなえてけがれたものと、不品行ふひんこうと、ころしたものと、とを、けるようにと、かれらにおくることにしたい。 21ふる時代じだいから、どのまちにもモーセの律法りっぽうつたえるものがいて、安息日あんそくにちごとにそれをしょ会堂かいどう朗読ろうどくするならわしであるから」。

22そこで、使徒しとたちや長老ちょうろうたちは、ぜん教会きょうかい協議きょうぎしたすえ、おたがいなかから人々ひとびとえらんで、パウロやバルナバとともに、アンテオケに派遣はけんすることにめた。えらばれたのは、バルサバというユダとシラスとであったが、いずれも兄弟きょうだいたちのあいだおもんじられていたひとたちであった。 23このひとたちにたくされた書面しょめんはこうである。

「あなたがたの兄弟きょうだいである使徒しとおよび長老ちょうろうたちから、アンテオケ、シリヤ、キリキヤにいる異邦人いほうじん兄弟きょうだいがたに、あいさつをおくる。 24こちらからったあるものたちが、わたしたちからの指示しじもないのに、いろいろなことをって、あなたがたをさわがせ、あなたがたのこころみだしたとつたいた。 25そこで、わたしたちは人々ひとびとえらんで、あいするバルナバおよびパウロとともに、あなたがたのもとに派遣はけんすることに、衆議しゅうぎ一決いっけつした。 26このふたりは、われらのしゅイエス・キリストののために、そのいのちした人々ひとびとであるが、 27かれらとともに、ユダとシラスとを派遣はけんする次第しだいである。このひとたちは、あなたがたに、おな趣旨しゅしのことを、口頭こうとうでもつたえるであろう。 28すなわち、聖霊せいれいとわたしたちとは、つぎ必要ひつよう事項じこうのほかは、どんな負担ふたんをも、あなたがたにわせないことにめた。 29それは、偶像ぐうぞうそなえたものと、と、ころしたものと、不品行ふひんこうとを、けるということである。これらのものからとおざかっておれば、それでよろしい。以上いじょう」。

30さて、一行いっこう人々ひとびと見送みおくられて、アンテオケにくだってき、会衆かいしゅうあつめて、その書面しょめん手渡てわたした。 31人々ひとびとはそれをんで、そのすすめの言葉ことばをよろこんだ。 32ユダとシラスとはとも預言者よげんしゃであったので、おおくの言葉ことばをもって兄弟きょうだいたちをはげまし、またちからづけた。 33ふたりは、しばらくのときを、そこでごしたのち兄弟きょうだいたちから、たび平安へいあんいのられて、見送みおくりをけ、自分じぶんらを派遣はけんした人々ひとびとのところにかえってった。〔 34しかし、シラスだけは、きつづきとどまることにした。〕 35パウロとバルナバとはアンテオケに滞在たいざいをつづけて、ほかのおおくのひとたちとともに、しゅ言葉ことばおしえかつつたえた。

36幾日いくにちかののち、パウロはバルナバにった、「さあ、まえしゅ言葉ことばつたえたすべての町々まちまちにいる兄弟きょうだいたちを、また訪問ほうもんして、みんながどうしているかをてこようではないか」。 37そこで、バルナバはマルコというヨハネも一緒いっしょれてくつもりでいた。 38しかし、パウロは、まえにパンフリヤで一行いっこうからはなれて、はたらきをともにしなかったようなものは、れてかないがよいとかんがえた。 39こうして激論げきろんおこり、その結果けっかふたりはたがいわかわかれになり、バルナバはマルコをれてクプロにわたってき、 40パウロはシラスをえらび、兄弟きょうだいたちからしゅめぐみにゆだねられて、はっした。 41そしてパウロは、シリヤ、キリキヤの地方ちほうをとおって、しょ教会きょうかいちからづけた。

第一六章

1それから、かれはデルベにき、つぎにルステラにった。そこにテモテという弟子でしがいた。信者しんじゃのユダヤ婦人ふじんははとし、ギリシヤじんちちとしており、 2ルステラとイコニオムの兄弟きょうだいたちのあいだで、評判ひょうばんのよい人物じんぶつであった。 3パウロはこのテモテをれてきたかったので、その地方ちほうにいるユダヤじん手前てまえ、まずかれ割礼かつれいけさせた。かれちちがギリシヤじんであることは、みんなっていたからである。 4それからかれらはとお町々まちまちで、エルサレムの使徒しとたちや長老ちょうろうたちのめた事項じこうまもるようにと、人々ひとびとにそれをわたした。 5こうして、しょ教会きょうかいはその信仰しんこうつよめられ、ごとにかずしていった。

6それからかれらは、アジヤで御言みことばかたることを聖霊せいれいきんじられたので、フルギヤ・ガラテヤ地方ちほうをとおってった。 7そして、ムシヤのあたりにきてから、ビテニヤにすすんでこうとしたところ、イエスの御霊みたまがこれをゆるさなかった。 8それで、ムシヤを通過つうかして、トロアスにくだってった。 9ここでよる、パウロは一つのまぼろした。ひとりのマケドニヤびとって、「マケドニヤにわたってきて、わたしたちをたすけてください」と、かれ懇願こんがんするのであった。 10パウロがこのまぼろしとき、これはかれらに福音ふくいんつたえるために、かみがわたしたちをおまねきになったのだと確信かくしんして、わたしたちは、ただちにマケドニヤにわたってくことにした。

11そこで、わたしたちはトロアスから船出ふなでして、サモトラケに直航ちょっこうし、翌日よくじつネアポリスにいた。 12そこからピリピへった。これはマケドニヤのこの地方ちほうだい一のまちで、植民しょくみん都市としであった。わたしたちは、このまち数日間すうじつかん滞在たいざいした。 13ある安息日あんそくにちに、わたしたちはまちもんて、いのがあるとおもって、かわのほとりにった。そして、そこにすわり、あつまってきた婦人ふじんたちにはなしをした。 14ところが、テアテラむらさきぬの商人しょうにんで、かみうやまうルデヤという婦人ふじんいていた。しゅ彼女かのじょこころひらいて、パウロのかたることにみみかたむけさせた。 15そして、この婦人ふじんもその家族かぞくも、ともにバプテスマをけたが、そのとき彼女かのじょは「もし、わたしをしゅしんじるものとおおもいでしたら、どうぞ、わたしのいえにきてまってください」と懇望こんもうし、しいてわたしたちをつれてった。

16あるとき、わたしたちが、いの途中とちゅううらないのれいにつかれたおんな奴隷どれい出会であった。彼女かのじょうらないをして、その主人しゅじんたちにおおくの利益りえきさせていたものである。 17このおんなが、パウロやわたしたちのあとをってきては、「このひとたちは、いとたかかみしもべたちで、あなたがたにすくいみちつたえるかただ」と、さけすのであった。 18そして、そんなことをいく日間にちかんもつづけていた。パウロはこまりはてて、そのれいにむかい「イエス・キリストのによってめいじる。そのおんなからけ」とった。すると、その瞬間しゅんかんれいおんなからった。

19彼女かのじょ主人しゅじんたちは、自分じぶんらの利益りえきのぞみがえたのをて、パウロとシラスとをとらえ、役人やくにんわたすため広場ひろばきずってった。 20それから、ふたりを長官ちょうかんたちのまえしてうったえた、「このひとたちはユダヤじんでありまして、わたしたちのまちをかきみだし、 21わたしたちローマじんが、採用さいよう実行じっこうもしてはならない風習ふうしゅう宣伝せんでんしているのです」。 22群衆ぐんしゅうもいっせいにって、ふたりをめたてたので、長官ちょうかんたちはふたりの上着うわぎをはぎり、むちでつことをめいじた。 23それで、ふたりになにもむちをくわえさせたのち、ごくれ、獄吏ごくりにしっかりばんをするようにとめいじた。 24獄吏ごくりはこの厳命げんめいけたので、ふたりをおく獄屋ごくやれ、そのあしあしかせをしっかとかけておいた。

25真夜中まよなかごろ、パウロとシラスとは、かみいのり、さんびをうたいつづけたが、囚人しゅうじんたちはみみをすましてきいっていた。 26ところが突然とつぜんおお地震じしんおこって、ごく土台どだいうごき、全部ぜんぶたちまちひらいて、みんなのものくさりけてしまった。 27獄吏ごくりをさまし、ごくひらいてしまっているのをて、囚人しゅうじんたちがしたものとおもい、つるぎをいて自殺じさつしかけた。 28そこでパウロは大声おおごえをあげてった、「自害じがいしてはいけない。われわれはみなひとりのこらず、ここにいる」。 29すると、獄吏ごくりは、あかりをれたうえごくんできて、おののきながらパウロとシラスのまえにひれした。 30それから、ふたりをそとしてった、「先生せんせいがた、わたしはすくわれるために、なにをすべきでしょうか」。 31ふたりがった、「しゅイエスをしんじなさい。そうしたら、あなたもあなたの家族かぞくすくわれます」。 32それから、かれとその家族かぞく一同いちどうとに、かみことばかたってかせた。 33かれ真夜中まよなかにもかかわらず、ふたりをって、そのきずあらってやった。そして、その自分じぶん家族かぞくも、ひとりのこらずバプテスマをけ、 34さらに、ふたりを自分じぶんいえ案内あんないして食事しょくじのもてなしをし、かみしんじるものとなったことを、ぜん家族かぞくともこころからよろこんだ。

35けると、長官ちょうかんたちはけいらをつかわして、「あのひとたちを釈放しゃくほうせよ」とわせた。 36そこで、獄吏ごくりはこの言葉ことばをパウロにつたえてった、「長官ちょうかんたちが、あなたがたを釈放しゃくほうさせるようにと、使つかいをよこしました。さあ、てきて、無事ぶじにおかえりなさい」。 37ところが、パウロはけいらにった、「かれらは、ローマじんであるわれわれを、裁判さいばんにかけもせずに、公衆こうしゅうまえでむちったあげく、ごくれてしまった。しかるにいまになって、ひそかに、われわれをそうとするのか。それは、いけない。かれ自身じしんがここにきて、われわれをすべきである」。 38けいらはこの言葉ことば長官ちょうかんたちに報告ほうこくした。すると長官ちょうかんたちは、ふたりがローマじんだといておそれ、 39自分じぶんでやってきてわびたうえ、ふたりをごくからし、まちからるようにとたのんだ。 40ふたりはごくて、ルデヤのいえった。そして、兄弟きょうだいたちにってすすめをなし、それからかけた。

第一七章

1一行いっこうは、アムピポリスとアポロニヤとをとおって、テサロニケにった。ここにはユダヤじん会堂かいどうがあった。 2パウロはれいによって、その会堂かいどうにはいってって、三つの安息日あんそくにちにわたり、聖書せいしょもとづいてかれらとろんじ、 3キリストはかなら苦難くなんけ、そして死人しにんなかからよみがえるべきこと、また「わたしがあなたがたにつたえているこのイエスこそは、キリストである」とのことを、説明せつめいもし論証ろんしょうもした。 4あるひとたちは納得なっとくがいって、パウロとシラスにしたがった。そのなかには、信心しんじんぶかいギリシヤじん多数たすうあり、貴婦人きふじんたちもすくなくなかった。 5ところが、ユダヤじんたちは、それをねたんで、まちをぶらついているならずものらをあつめて暴動ぼうどうおこし、まちさわがせた。それからヤソンのいえおそい、ふたりを民衆みんしゅうまえにひっぱりそうと、しきりにさがした。 6しかし、ふたりがつからないので、ヤソンと兄弟きょうだいたち数人すうにんを、当局者とうきょくしゃのところにきずってき、さけんでった、「天下てんかをかきまわしてきたこのひとたちが、ここにもはいりんでいます。 7そのひとたちをヤソンが自分じぶんいえむかれました。この連中れんちゅうは、みなカイザルの詔勅しょうちょくにそむいて行動こうどうし、イエスというべつおうがいるなどとっています」。 8これをいて、群衆ぐんしゅう当局者とうきょくしゃ不安ふあんかんじた。 9そして、ヤソンやほかのものたちから、保証ほしょうきんったうえかれらを釈放しゃくほうした。

10そこで、兄弟きょうだいたちはただちに、パウロとシラスとを、よるあいだにベレヤへおくした。ふたりはベレヤに到着とうちゃくすると、ユダヤじん会堂かいどうった。 11ここにいるユダヤじんはテサロニケのものたちよりも素直すなおであって、こころからおしえけいれ、はたしてそのとおりかどうかをろうとして、日々ひび聖書せいしょ調しらべていた。 12そういうわけで、かれらのうちのおおくのもの信者しんじゃになった。また、ギリシヤの貴婦人きふじん男子だんししんじたものも、すくなくなかった。 13テサロニケのユダヤじんたちは、パウロがベレヤでもかみことばつたえていることをり、そこにもしかけてきて、群衆ぐんしゅう煽動せんどうしてさわがせた。 14そこで、兄弟きょうだいたちは、ただちにパウロをおくして、うみべまでかせ、シラスとテモテとはベレヤに居残いのこった。 15パウロを案内あんないしたひとたちは、かれをアテネまでれてき、テモテとシラスとになるべくはやるようにとのパウロの伝言でんごんけて、かえった。

16さて、パウロはアテネでかれらをっているあいだに、市内しない偶像ぐうぞうがおびただしくあるのをて、こころいきどおりをかんじた。 17そこでかれは、会堂かいどうではユダヤじん信心しんじんぶかひとたちとろんじ、広場ひろばでは毎日まいにちそこで出会であ人々ひとびと相手あいてろんじた。 18また、エピクロスやストア哲学者てつがくしゃ数人すうにんも、パウロと議論ぎろんたたかわせていたが、そのなかのあるものたちがった、「このおしゃべりは、いったい、なにおうとしているのか」。また、ほかのものたちは、「あれは、異国いこく神々かみがみつたえようとしているらしい」とった。パウロが、イエスと復活ふっかつとを、つたえていたからであった。 19そこで、かれらはパウロをアレオパゴスの評議所ひょうぎしょれてって、「きみかたっているあたらしいおしえがどんなものか、らせてもらえまいか。 20きみがなんだかめずらしいことをわれわれにかせているので、それがなんのことなのかりたいとおもうのだ」とった。 21いったい、アテネびともそこに滞在たいざいしている外国がいこくじんもみな、なに耳新みみあたらしいことをはなしたりいたりすることのみに、ときごしていたのである。 22そこでパウロは、アレオパゴスの評議所ひょうぎしょのまんなかってった。

「アテネのひとたちよ、あなたがたは、あらゆるてんにおいて、すこぶる宗教しゅうきょうこころんでおられると、わたしはている。 23じつは、わたしがみちとおりながら、あなたがたのおがむいろいろなものを、よくているうちに、『られないかみに』ときざまれた祭壇さいだんもあるのにがついた。そこで、あなたがたがらずにおがんでいるものを、いまらせてあげよう。 24この世界せかいと、そのなかにある万物ばんぶつとをつくったかみは、天地てんちしゅであるのだから、つくったみやなどにはおみにならない。 25また、なに不足ふそくでもしておるかのように、ひとによってつかえられる必要ひつようもない。かみは、すべての人々ひとびといのちいき万物ばんぶつとをあたえ、 26また、ひとりのひとから、あらゆる民族みんぞくつくりだして、全面ぜんめんまわせ、それぞれに時代じだい区分くぶんし、国土こくど境界きょうかいさだめてくださったのである。 27こうして、人々ひとびと熱心ねっしんもとめてさがしさえすれば、かみいだせるようにしてくださった。事実じじつかみはわれわれひとりびとりからとおはなれておいでになるのではない。 28われわれはかみのうちにき、うごき、存在そんざいしているからである。あなたがたのある詩人しじんたちもったように、
『われわれも、たしかにその子孫しそんである』。
29このように、われわれはかみ子孫しそんなのであるから、かみたるものを、人間にんげん技巧ぎこう空想くうそうきんぎんいしなどにけたものとおなじと、なすべきではない。 30かみは、このような無知むち時代じだいを、これまでは見過みすごしにされていたが、いまはどこにおるひとでも、みなあらためなければならないことをめいじておられる。 31かみは、をもってこの世界せかいをさばくためそのさだめ、おえらびになったかたによってそれをなしげようとされている。すなわち、このかたを死人しにんなかからよみがえらせ、その確証かくしょうをすべてのひとしめされたのである」。

32死人しにんのよみがえりのことをくと、あるものたちはあざわらい、またあるものたちは、「このことについては、いずれまたくことにする」とった。 33こうして、パウロはかれらのなかからった。 34しかし、かれにしたがってしんじたものも、幾人いくにんかあった。そのなかには、アレオパゴスの裁判人さいばんにんデオヌシオとダマリスというおんな、また、その人々ひとびともいた。

第一八章

1そののち、パウロはアテネをってコリントへった。 2そこで、アクラというポントうまれのユダヤじんと、そのつまプリスキラとに出会であった。クラウデオていが、すべてのユダヤじんをローマから退去たいきょさせるようにと、命令めいれいしたため、かれらはちかごろイタリヤからてきたのである。 3パウロはかれらのところにったが、たがい同業どうぎょうであったので、そのいえんで、一緒いっしょ仕事しごとをした。天幕てんまくつくりがその職業しょくぎょうであった。 4パウロは安息日あんそくにちごとに会堂かいどうろんじては、ユダヤじんやギリシヤじん説得せっとくつとめた。

5シラスとテモテが、マケドニヤからくだってきてからは、パウロは御言みことばつたえることに専念せんねんし、イエスがキリストであることを、ユダヤじんたちに力強ちからづよくあかしした。 6しかし、かれらがこれに反抗はんこうしてののしりつづけたので、パウロは自分じぶん上着うわぎりはらって、かれらにった、「あなたがたのは、あなたがた自身じしんにかえれ。わたしには責任せきにんがない。いまからわたしは異邦人いほうじんほうく」。 7こうって、かれはそこをり、テテオ・ユストというかみうやまひといえった。そのいえ会堂かいどうとなっていた。 8会堂司かいどうづかさクリスポは、その家族かぞく一同いちどうともしゅしんじた。またおおくのコリントびとも、パウロのはなしいてしんじ、ぞくぞくとバプテスマをけた。 9すると、あるまぼろしのうちにしゅがパウロにわれた、「おそれるな。かたりつづけよ、だまっているな。 10あなたには、わたしがついている。だれもあなたをおそって、危害きがいくわえるようなことはない。このまちには、わたしのたみおおぜいいる」。 11パウロは一ねん六かげつあいだここにこしをすえて、かみことばかれらのあいだおしえつづけた。

12ところが、ガリオがアカヤの総督そうとくであったとき、ユダヤじんたちは一緒いっしょになってパウロをおそい、かれ法廷ほうていにひっぱってってうったえた、 13「このひとは、律法りっぽうにそむいてかみおがむように、人々ひとびとをそそのかしています」。 14パウロがくちひらこうとすると、ガリオはユダヤじんたちにった、「ユダヤじん諸君しょくんなに不法ふほう行為こういとか、悪質あくしつ犯罪はんざいとかのことなら、わたしは当然とうぜん諸君しょくんうったえをげもしようが、 15これは諸君しょくん言葉ことば名称めいしょう律法りっぽうかんする問題もんだいなのだから、諸君しょくんみずから始末しまつするがよかろう。わたしはそんなこと裁判人さいばんにんにはなりたくない」。 16こうって、かれらを法廷ほうていからいはらった。 17そこで、みんなのものは、会堂司かいどうづかさソステネをとらえ、法廷ほうていまえちたたいた。ガリオはそれにたいして、そらぬかおをしていた。

18さてパウロは、なお幾日いくにちものあいだ滞在たいざいしたのち兄弟きょうだいたちにわかれをげて、シリヤへ出帆しゅっぱんした。プリスキラとアクラも同行どうこうした。パウロは、かねてから、ある誓願せいがんてていたので、ケンクレヤであたまをそった。 19一行いっこうがエペソにくと、パウロはふたりをそこにのこしておき、自分じぶんだけ会堂かいどうにはいって、ユダヤじんたちとろんじた。 20人々ひとびとは、パウロにもっとながいあいだ滞在たいざいするようにねがったが、かれきいれないで、 21かみのみこころなら、またあなたがたのところにかえってこよう」とって、わかれをげ、エペソから船出ふなでした。 22それから、カイザリヤで上陸じょうりくしてエルサレムにのぼり、教会きょうかいにあいさつしてから、アンテオケにくだってった。 23そこにしばらくいてから、かれはまたかけ、ガラテヤおよびフルギヤの地方ちほう歴訪れきほうして、すべての弟子でしたちをちからづけた。

24さて、アレキサンデリヤうまれで、聖書せいしょ精通せいつうし、しかも、雄弁ゆうべんなアポロというユダヤじんが、エペソにきた。 25このひとしゅみちつうじており、また、れいえてイエスのことをくわしくかたったりおしえたりしていたが、ただヨハネのバプテスマしかっていなかった。 26かれ会堂かいどう大胆だいたんかたはじめた。それをプリスキラとアクラとがいて、かれまねきいれ、さらにくわしくかみみちかせた。 27それから、アポロがアカヤにわたりたいとおもっていたので、兄弟きょうだいたちはかれはげまし、先方せんぽう弟子でしたちに、かれをよくむかえるようにと、手紙てがみおくった。かれ到着とうちゃくして、すでにめぐみによって信者しんじゃになっていたひとたちに、おおいにちからになった。 28かれはイエスがキリストであることを、聖書せいしょもとづいてしめし、公然こうぜんと、ユダヤじんたちをはげしい語調ごちょう論破ろんぱしたからである。

第一九章

1アポロがコリントにいたとき、パウロは奥地おくちをとおってエペソにきた。そして、ある弟子でしたちに出会であって、 2かれらに「あなたがたは、信仰しんこうにはいったときに、聖霊せいれいけたのか」とたずねたところ、「いいえ、聖霊せいれいなるものがあることさえ、いたことがありません」とこたえた。 3「では、だれのによってバプテスマをけたのか」とかれがきくと、かれらは「ヨハネのによるバプテスマをけました」とこたえた。 4そこで、パウロがった、「ヨハネは悔改くいあらためのバプテスマをさづけたが、それによって、自分じぶんのあとにるかた、すなわち、イエスをしんじるように、人々ひとびとすすめたのである」。 5人々ひとびとはこれをいて、しゅイエスのによるバプテスマをけた。 6そして、パウロがかれらのうえをおくと、聖霊せいれいかれらにくだり、それからかれらは異言いげんかたったり、預言よげんをしたりしした。 7そのひとたちはみんなで十二にんほどであった。

8それから、パウロは会堂かいどうにはいって、三かげつのあいだ、大胆だいたんかみくにについてろんじ、またすすめをした。 9ところが、あるひとたちはこころをかたくなにして、しんじようとせず、会衆かいしゅうまえでこのみちをあしざまにったので、かれ弟子でしたちをれて、そのひとたちからはなれ、ツラノの講堂こうどう毎日まいにちろんじた。 10それが二年間ねんかんつづいたので、アジヤにんでいるものは、ユダヤじんもギリシヤじんみなしゅことばいた。

11かみは、パウロのによって、異常いじょうちからあるわざを次々つぎつぎになされた。 12たとえば、人々ひとびとが、かれにつけているぬぐいや前掛まえかけをって病人びょうにんにあてると、その病気びょうきのぞかれ、悪霊あくれいくのであった。 13そこで、ユダヤじんのまじないで、遍歴へんれきしているものたちが、悪霊あくれいにつかれているものにむかって、しゅイエスのをとなえ、「パウロのつたえているイエスによってめいじる。け」と、ためしにってみた。 14ユダヤの祭司長さいしちょうスケワというものの七にんのむすこたちも、そんなことをしていた。 15すると悪霊あくれいがこれにたいしてった、「イエスなら自分じぶんっている。パウロもわかっている。だが、おまえたちは、いったい何者なにものだ」。 16そして、悪霊あくれいにつかれているひとが、かれらにびかかり、みんなをおさえつけてかしたので、かれらはきずったままはだかになって、そのいえした。 17このことがエペソにむすべてのユダヤじんやギリシヤじんれわたって、みんな恐怖きょうふおそわれ、そして、しゅイエスのがあがめられた。 18また信者しんじゃになったものおおぜいきて、自分じぶん行為こういちあけて告白こくはくした。 19それから、魔術まじゅつおこなっていたおおくのものが、魔術まじゅつほんしてきては、みんなのまえてた。その値段ねだん総計そうけいしたところ、ぎん五万にものぼることがわかった。 20このようにして、しゅことばはますますさかんにひろまり、またちからくわえていった。

21これらのことがあったのち、パウロは御霊みたまかんじて、マケドニヤ、アカヤをとおって、エルサレムへ決心けっしんをした。そしてった、「わたしは、そこにったのち、ぜひローマをもなければならない」。 22そこで、自分じぶんつかえているものなかから、テモテとエラストとのふたりを、まずマケドニヤにおくし、パウロ自身じしんは、なおしばらくアジヤにとどまった。

23そのころ、このみちについて容易よういならぬ騒動そうどうおこった。 24そのいきさつは、こうである。デメテリオという銀細工人ぎんざいくにんが、ぎんでアルテミス神殿しんでん模型もけいつくって、職人しょくにんたちにすくなからぬ利益りえきさせていた。 25このおとこがその職人しょくにんたちや、同類どうるい仕事しごとをしていたものたちをあつめてった、「諸君しょくん、われわれがこの仕事しごとで、かねもうけをしていることは、ご承知しょうちのとおりだ。 26しかるに、諸君しょくん見聞みききしているように、あのパウロが、つくられたものは神様かみさまではないなどとって、エペソばかりか、ほとんどアジヤ全体ぜんたいにわたって、おおぜいの人々ひとびときつけてあやまらせた。 27これでは、おたがい仕事しごと悪評あくひょうつおそれがあるばかりか、おお女神めがみアルテミスのみやかろんじられ、ひいてはぜんアジヤ、いやぜん世界せかいおがんでいるこのおお女神めがみのご威光いこうさえも、えてしまいそうである」。

28これをくと、人々ひとびといかりにえ、大声おおごえで「おおいなるかな、エペソびとのアルテミス」とさけびつづけた。 29そして、町中まちじゅうだい混乱こんらんおちいり、人々ひとびとはパウロの道連みちづれであるマケドニヤびとガイオとアリスタルコとをとらえて、いっせいに劇場げきじょうへなだれんだ。 30パウロは群衆ぐんしゅうなかにはいってこうとしたが、弟子でしたちがそれをさせなかった。 31アジヤしゅう議員ぎいんで、パウロの友人ゆうじんであったひとたちも、かれ使つかいをよこして、劇場げきじょうにはいってかないようにと、しきりにたのんだ。 32なかでは、集会しゅうかい混乱こんらんおちいってしまって、あるものはこのことを、ほかのものはあのことを、どなりつづけていたので、大多数だいたすうものは、なんのためにあつまったのかも、わからないでいた。 33そこで、ユダヤじんたちが、まえしたアレキサンデルなるものを、群衆ぐんしゅうなかのあるひとたちがうながしたため、かれって、人々ひとびと弁明べんめいこころみようとした。 34ところが、かれがユダヤじんだとわかると、みんなのものがいっせいに「おおいなるかな、エペソびとのアルテミス」と二時間じかんばかりもさけびつづけた。 35ついに、書記しょきやく群衆ぐんしゅうしずめてった、「エペソの諸君しょくん、エペソおお女神めがみアルテミスと、あまくだったご神体しんたいとの守護しゅごやくであることをらないものが、ひとりでもいるだろうか。 36これは否定ひていのできない事実じじつであるから、諸君しょくんはよろしくしずかにしているべきで、乱暴らんぼう行動こうどうは、いっさいしてはならない。 37諸君しょくんはこのひとたちをここにひっぱってきたが、かれらはみやあらものでも、われわれの女神めがみをそしるものでもない。 38だから、もしデメテリオなりその職人しょくにん仲間なかまなりが、だれかにたいしてうったことがあるなら、裁判さいばんはあるし、総督そうとくもいるのだから、それぞれうったるがよい。 39しかし、なにかもっと要求ようきゅうしたいことがあれば、それは正式せいしき議会ぎかい解決かいけつしてもらうべきだ。 40きょうの事件じけんについては、このさわぎを弁護べんごできるような理由りゆうまったくないのだから、われわれは治安ちあんをみだすつみわれるおそれがある」。 41こうって、かれはこの集会しゅうかい解散かいさんさせた。

第二〇章

1さわぎがやんだのち、パウロは弟子でしたちをあつめて激励げきれいあたえたうえわかれのあいさつをべ、マケドニヤへかって出発しゅっぱつした。 2そして、その地方ちほうをとおり、おおくの言葉ことば人々ひとびとはげましたのち、ギリシヤにきた。 3かれはそこで三かげつごした。それからシリヤへかって、船出ふなでしようとしていた矢先やさきかれたいするユダヤじん陰謀いんぼうおこったので、マケドニヤを経由けいゆしてかえることにけっした。 4プロのであるエペソびとソパテロ、テサロニケびとアリスタルコとセクンド、デルベびとガイオ、それからテモテ、またアジヤびとテキコとトロピモがパウロの同行者どうこうしゃであった。 5このひとたちはせんぱつして、トロアスでわたしたちをっていた。 6わたしたちは、除酵祭じょこうさいおわったのちに、ピリピから出帆しゅっぱんし、五かかってトロアスに到着とうちゃくして、かれらとい、そこに七日間なぬかかん滞在たいざいした。

7しゅうはじめのに、わたしたちがパンをさくためにあつまったとき、パウロは翌日よくじつ出発しゅっぱつすることにしていたので、しきりに人々ひとびとかたい、夜中よなかまでかたりつづけた。 8わたしたちがあつまっていた屋上おくじょうには、あかりがたくさんともしてあった。 9ユテコという若者わかものまどこしをかけていたところ、パウロのはなしがながながとつづくので、ひどくねむけがさしてきて、とうとうぐっすり寝入ねいってしまい、三かいからしたちた。いだおこしてみたら、もうんでいた。 10そこでパウロはりてきて、若者わかものうえをかがめ、かれいだきあげて、「さわぐことはない。まだいのちがある」とった。 11そして、またがってって、パンをさいてべてから、けがたまでながいあいだ人々ひとびとかたって、ついに出発しゅっぱつした。 12人々ひとびときかえった若者わかものれかえり、ひとかたならずなぐさめられた。

13さて、わたしたちはさきふねみ、アソスへかって出帆しゅっぱんした。そこからパウロをふねせてくことにしていた。かれだけは陸路りくろをとることにめていたからである。 14パウロがアソスで、わたしたちとったとき、わたしたちはかれふねせてミテレネにった。 15そこから出帆しゅっぱんして、翌日よくじつキヨスの沖合おきあいにいたり、つぎにサモスにり、その翌日よくじつミレトにいた。 16それは、パウロがアジヤで時間じかんをとられないため、エペソにはらないでぞっこうすることにめていたからである。かれは、できればペンテコステのには、エルサレムにいていたかったので、たびいそいだわけである。

17そこでパウロは、ミレトからエペソに使つかいをやって、教会きょうかい長老ちょうろうたちをせた。 18そして、かれのところにあつまってきたときかれらにった。

「わたしが、アジヤのあしれた最初さいしょ以来いらい、いつもあなたがたとどんなふうにごしてきたか、よくごぞんじである。 19すなわち、謙遜けんそんかぎりをつくし、なみだながし、ユダヤじん陰謀いんぼうによってわたしのおよんだ数々かずかず試練しれんなかにあって、しゅつかえてきた。 20また、あなたがたのえきになることは、公衆こうしゅうまえでも、また家々いえいえでも、すべてあますところなくはなしてかせ、またおしえ、 21ユダヤじんにもギリシヤじんにも、かみたいする悔改くいあらためと、わたしたちのしゅイエスにたいする信仰しんこうとを、つよすすめてきたのである。 22いまや、わたしは御霊みたませまられてエルサレムへく。あのみやこで、どんなことがわたしのにふりかかってるか、わたしにはわからない。 23ただ、聖霊せいれいいたるところの町々まちまちで、わたしにはっきりげているのは、投獄とうごく患難かんなんとが、わたしをちうけているということだ。 24しかし、わたしは自分じぶん行程こうていはしえ、しゅイエスからたまわった、かみのめぐみの福音ふくいんをあかしする任務にんむはたさえしたら、このいのちは自分じぶんにとって、すこしもしいとはおもわない。 25わたしはいましんじている、あなたがたのあいだあるまわって御国みくにつたえたこのわたしのかおを、みんなが今後こんごることはあるまい。 26だから、きょう、このにあなたがたに断言だんげんしておく。わたしは、すべてのひとについて、なんら責任せきにんがない。 27かみのみむねみなあますところなく、あなたがたにつたえておいたからである。 28どうか、あなたがた自身じしんをつけ、また、すべてのれにをくばっていただきたい。聖霊せいれいは、かみ御子みこであがないられたかみ教会きょうかいぼくさせるために、あなたがたをそのれの監督者かんとくしゃにおてになったのである。 29わたしがったのち狂暴きょうぼうなおおかみが、あなたがたのなかにはいりんできて、容赦ようしゃなくれをあらすようになることを、わたしはっている。 30また、あなたがた自身じしんなかからも、いろいろまがったことをって、弟子でしたちを自分じぶんほうに、ひっぱりもうとするものらがおこるであろう。 31だから、をさましていなさい。そして、わたしが三ねんあいだよるひるなみだをもって、あなたがたひとりびとりをえずさとしてきたことを、わすれないでほしい。 32いまわたしは、しゅとそのめぐみのことばとに、あなたがたをゆだねる。御言みことばには、あなたがたのとくをたて、せいべつされたすべての人々ひとびとともに、御国みくにをつがせるちからがある。 33わたしは、ひときんぎん衣服いふくをほしがったことはない。 34あなたがた自身じしんっているとおり、わたしのこの両手りょうては、自分じぶん生活せいかつのためにも、また一緒いっしょにいたひとたちのためにも、はたらいてきたのだ。 35わたしは、あなたがたもこのようにはたらいて、よわものたすけなければならないこと、また『けるよりはあたえるほうが、さいわいである』とわれたしゅイエスの言葉ことば記憶きおくしているべきことを、万事ばんじについておししめしたのである」。

36こうって、パウロは一同いちどうともにひざまずいていのった。 37みんなのものは、はげしくかなしみ、パウロのくびいだいて、幾度いくど接吻せっぷんし、 38もう二自分じぶんかおることはあるまいとかれったので、とくこころいためた。それからかれふねまで見送みおくった。

第二一章

1さて、わたしたちは人々ひとびとわかれて船出ふなでしてから、コスに直航ちょっこうし、つぎはロドスに、そこからパタラにいた。 2ここでピニケきのふねつけたので、それにんで出帆しゅっぱんした。 3やがてクプロがえてきたが、それを左手ひだりてにしてとおりすぎ、シリヤへ航行こうこうをつづけ、ツロに入港にゅうこうした。ここで積荷つみに陸上りくあげされることになっていたからである。 4わたしたちは、弟子でしたちをさがして、そこに七日間なぬかかんまった。ところがかれらは、御霊みたましめしをけて、エルサレムにはのぼってかないようにと、しきりにパウロに注意ちゅういした。 5しかし、滞在たいざい期間きかんおわったとき、わたしたちはまた旅立たびだつことにしたので、みんなのものは、つま子供こどもれて、まちはずれまで、わたしたちを見送みおくりにきてくれた。そこで、とも海岸かいがんにひざまずいていのり、 6たがいわかれをげた。それから、わたしたちはふねみ、かれらはそれぞれ自分じぶんいえかえった。

7わたしたちは、ツロからの航行こうこうおわってトレマイにき、そこの兄弟きょうだいたちにあいさつをし、かれらのところに一にち滞在たいざいした。 8翌日よくじつそこをたって、カイザリヤにき、かの七にんのひとりである伝道者でんどうしゃピリポのいえき、そこにまった。 9このひとに四にんむすめがあったが、いずれも処女しょじょであって、預言よげんをしていた。 10幾日いくにち滞在たいざいしているあいだに、アガボという預言者よげんしゃがユダヤからくだってきた。 11そして、わたしたちのところにきて、パウロのおびり、それで自分じぶん手足てあししばってった、「聖霊せいれいがこうおげになっている、『このおびぬしを、ユダヤじんたちがエルサレムでこのようにしばって、異邦人いほうじんわたすであろう』」。 12わたしたちはこれをいて、土地とちひとたちと一緒いっしょになって、エルサレムにはのぼってかないようにと、パウロにねがつづけた。 13そのときパウロはこたえた、「あなたがたは、いたり、わたしのこころをくじいたりして、いったい、どうしようとするのか。わたしは、しゅイエスののためなら、エルサレムでしばられるだけでなく、ぬことをも覚悟かくごしているのだ」。 14こうして、パウロが勧告かんこくきいれてくれないので、わたしたちは「しゅのみこころがおこなわれますように」とっただけで、それ以上いじょうなにわなかった。

15数日後すうじつご、わたしたちは旅装りょそうととのえてエルサレムへのぼってった。 16カイザリヤの弟子でしたちも数人すうにん、わたしたちと同行どうこうして、ふるくからの弟子でしであるクプロびとマナソンのいえ案内あんないしてくれた。わたしたちはそのいえまることになっていたのである。

17わたしたちがエルサレムに到着とうちゃくすると、兄弟きょうだいたちはよろこんでむかえてくれた。 18翌日よくじつパウロはわたしたちをれて、ヤコブを訪問ほうもんしにった。そこに長老ちょうろうたちがみなあつまっていた。 19パウロはかれらにあいさつをしたのちかみ自分じぶんはたらきをとおして、異邦人いほうじんあいだになさったことどもを一々いちいち説明せつめいした。 20一同いちどうはこれをいてかみをほめたたえ、そしてかれった、「兄弟きょうだいよ、ご承知しょうちのように、ユダヤじんなか信者しんじゃになったものが、数万すうまんにものぼっているが、みんな律法りっぽう熱心ねっしんひとたちである。 21ところが、かれらがつたいているところによれば、あなたは異邦人いほうじんなかにいるユダヤじん一同いちどうたいして、子供こども割礼かつれいほどこすな、またユダヤの慣例かんれいにしたがうなとって、モーセにそむくことをおしえている、ということである。 22どうしたらよいか。あなたがここにきていることは、かれらもきっとむにちがいない。 23ついては、いまわたしたちがうとおりのことをしなさい。わたしたちのなかに、誓願せいがんてているものが四にんいる。 24このひとたちをれてって、かれらとともにきよめをおこない、またかれらのあたまをそる費用ひようけてやりなさい。そうすれば、あなたについて、うわさされていることは、もないことで、あなたは律法りっぽうまもって、ただしい生活せいかつをしていることが、みんなにわかるであろう。 25異邦人いほうじん信者しんじゃになったひとたちには、すでに手紙てがみで、偶像ぐうぞうそなえたものと、と、ころしたものと、不品行ふひんこうとを、つつしむようにとの決議けつぎが、わたしたちかららせてある」。 26そこでパウロは、そのつぎに四にんものれて、かれらとともにきよめをけてからみやにはいった。そしてきよめの期間きかんおわって、ひとりびとりのためにそなものをささげるとき報告ほうこくしておいた。

27七日なぬか期間きかんおわろうとしていたとき、アジヤからきたユダヤじんたちが、みやうちでパウロをかけて、群衆ぐんしゅう全体ぜんたい煽動せんどうしはじめ、パウロにをかけてさけてた、 28「イスラエルの人々ひとびとよ、加勢かせいにきてくれ。このひとは、いたるところでたみ律法りっぽうとこの場所ばしょにそむくことを、みんなにおしえている。そのうえに、ギリシヤじんみやうちんで、この神聖しんせい場所ばしょけがしたのだ」。 29かれらは、まえにエペソびとトロピモが、パウロと一緒いっしょまちあるいていたのをかけて、そのひとをパウロがみやうちんだのだとおもったのである。 30そこで、全体ぜんたいさわし、民衆みんしゅうあつまってきて、パウロをとらえ、みやそときずりした。そして、すぐそのあとにみやもんざされた。 31かれらがパウロをころそうとしていたときに、エルサレム全体ぜんたい混乱こんらん状態じょうたいおちいっているとの情報じょうほうが、守備しゅびたい千卒長せんそつちょうにとどいた。 32そこで、かれはさっそく、兵卒へいそつ百卒長ひゃくそつちょうたちをひきいて、そのけつけた。人々ひとびと千卒長せんそつちょう兵卒へいそつたちをて、パウロをちたたくのをやめた。 33千卒長せんそつちょう近寄ちかよってきてパウロをとらえ、かれ二重にじゅうくさりしばっておくようにめいじたうえ、パウロは何者なにものか、またなにをしたのか、とたずねた。 34しかし、群衆ぐんしゅうがそれぞれちがったことをさけびつづけるため、さわがしくて、たしかなことがわからないので、かれはパウロを兵営へいえいれてくようにめいじた。 35パウロが階段かいだんにさしかかったときには、群衆ぐんしゅう暴行ぼうこうけるため、兵卒へいそつたちにかつがれてくという始末しまつであった。 36おおぜいの民衆みんしゅうが「あれをやっつけてしまえ」とさけびながら、ついてきたからである。

37パウロが兵営へいえいなかれてかれようとしたとき千卒長せんそつちょうに、「ひとことあなたにおはなしてもよろしいですか」とたずねると、千卒長せんそつちょうった、「おまえはギリシヤはなせるのか。 38では、もしかおまえは、さきごろ反乱はんらんおこしたのち、四千にん刺客しかくれて荒野あらのげてったあのエジプトじんではないのか」。 39パウロはこたえた、「わたしはタルソうまれのユダヤじんで、キリキヤのれっきとした都市とし市民しみんです。おねがいですが、民衆みんしゅうはなしをさせてください」。 40千卒長せんそつちょうゆるしてくれたので、パウロは階段かいだんうえち、民衆みんしゅうにむかってった。すると、一同いちどうがすっかり静粛せいしゅくになったので、パウロはヘブルはなした。

第二二章

1兄弟きょうだいたち、ちちたちよ、いまもうげるわたしの弁明べんめいいていただきたい」。 2パウロが、ヘブルでこうかたりかけるのをいて、人々ひとびとはますます静粛せいしゅくになった。 3そこでかれ言葉ことばをついでった、「わたしはキリキヤのタルソでうまれたユダヤじんであるが、このみやこそだてられ、ガマリエルのひざもとで先祖せんぞ伝来でんらい律法りっぽうについて、きびしい薫陶くんとうけ、今日きょうみなさんとおなじくかみたいして熱心ねっしんものであった。 4そして、このみち迫害はくがいし、おとこであれおんなであれ、しばりあげてごくとうじ、かれらをいたらせた。 5このことは、大祭司だいさいし長老ちょうろうたち一同いちどうも、証明しょうめいするところである。さらにわたしは、このひとたちからダマスコの同志どうしたちへあてた手紙てがみをもらって、そのにいるものたちをしばりあげ、エルサレムにひっぱってきて、処罰しょばつするため、かけてった。

6たびをつづけてダマスコのちかくにきたときに、真昼まひるごろ、突然とつぜん、つよいひかりてんからわたしをめぐりてらした。 7わたしはたおれた。そして、『サウロ、サウロ、なぜわたしを迫害はくがいするのか』と、びかけるこえいた。 8これにたいしてわたしは、『しゅよ、あなたはどなたですか』とった。すると、そのこえが、『わたしは、あなたが迫害はくがいしているナザレびとイエスである』とこたえた。 9わたしと一緒いっしょにいたものたちは、そのひかりたが、わたしにかたりかけたかたのこえかなかった。 10わたしが『しゅよ、わたしはなにをしたらよいでしょうか』とたずねたところ、しゅわれた、『きあがってダマスコにきなさい。そうすれば、あなたがするようにめてあることが、すべてそこでげられるであろう』。 11わたしは、ひかりかがやきでがくらみ、なにえなくなっていたので、れのものたちにかれながら、ダマスコにった。

12すると、律法りっぽう忠実ちゅうじつで、ダマスコ在住ざいじゅうのユダヤじん全体ぜんたい評判ひょうばんのよいアナニヤというひとが、 13わたしのところにきて、そばにち、『兄弟きょうだいサウロよ、えるようになりなさい』とった。するとその瞬間しゅんかんに、わたしのひらいて、かれ姿すがたえた。 14かれった、『わたしたちの先祖せんぞかみが、あなたをえらんでみむねらせ、かの義人ぎじんさせ、そのくちからこえをおかせになった。 15それはあなたが、その見聞みききしたことにつき、すべてのひとたいして、かれ証人しょうにんになるためである。 16そこでいま、なんのためらうことがあろうか。すぐって、みをとなえてバプテスマをけ、あなたのつみあらおとしなさい』。

17それからわたしは、エルサレムにかえってみやいのっているうちに、ゆめうつつになり、 18しゅにまみえたが、しゅわれた、『いそいで、すぐにエルサレムをきなさい。わたしについてのあなたのあかしを、人々ひとびとけいれないから』。 19そこで、わたしがった、『しゅよ、かれらは、わたしがいたるところの会堂かいどうで、あなたをしんじる人々ひとびとごくとうじたり、むちったりしていたことを、っています。 20また、あなたの証人しょうにんステパノのながされたときも、わたしはっていてそれに賛成さんせいし、またかれころしたひとたちの上着うわぎばんをしていたのです』。 21すると、しゅがわたしにわれた、『きなさい。わたしが、あなたをとお異邦いほうたみへつかわすのだ』」。

22かれ言葉ことばをここまでいていた人々ひとびとは、このとき、こえりあげてった、「こんなおとこ地上ちじょうからのぞいてしまえ。かしおくべきではない」。 23人々ひとびとがこうわめきてて、空中くうちゅう上着うわぎげ、ちりをまきらす始末しまつであったので、 24千卒長せんそつちょうはパウロを兵営へいえいれるようにめいじ、どういうわけで、かれたいしてこんなにわめきてているのかをたしかめるため、かれをむちの拷問ごうもんにかけて、調しらべるようにいわたした。 25かれらがむちをてるため、かれしばりつけていたとき、パウロはそばにっている百卒長ひゃくそつちょうった、「ローマの市民しみんたるものを、裁判さいばんにかけもしないで、むちってよいのか」。 26百卒長ひゃくそつちょうはこれをき、千卒長せんそつちょうのところにって報告ほうこくし、そしてった、「どうなさいますか。あのひとはローマの市民しみんなのです」。 27そこで、千卒長せんそつちょうがパウロのところにきてった、「わたしにってくれ。あなたはローマの市民しみんなのか」。パウロは「そうです」とった。 28これにたいして千卒長せんそつちょうった、「わたしはこの市民しみんけんを、多額たがくかねったのだ」。するとパウロはった、「わたしはうまれながらの市民しみんです」。 29そこで、パウロを調しらべようとしていたひとたちは、ただちにかれからいた。千卒長せんそつちょうも、パウロがローマの市民しみんであること、また、そういうひとしばっていたことがわかって、おそれた。

30翌日よくじつかれは、ユダヤじんがなぜパウロをうったたのか、その真相しんそうろうとおもってかれいてやり、同時どうじ祭司長さいしちょうたちとぜん議会ぎかいとを召集しょうしゅうさせ、そこにかれして、かれらのまえたせた。

第二三章

1パウロは議会ぎかいつめてった、「兄弟きょうだいたちよ、わたしは今日きょうまで、かみまえに、ひたすらあきらかな良心りょうしんにしたがって行動こうどうしてきた」。 2すると、大祭司だいさいしアナニヤが、パウロのそばにっているものたちに、かれくちてとめいじた。 3そのとき、パウロはアナニヤにむかってった、「しろられたかべよ、かみがあなたをつであろう。あなたは、律法りっぽうにしたがって、わたしをさばくためにについているのに、律法りっぽうにそむいて、わたしをつことをめいじるのか」。 4すると、そばにっているものたちがった、「かみ大祭司だいさいしたいして無礼ぶれいなことをうのか」。 5パウロはった、「兄弟きょうだいたちよ、かれ大祭司だいさいしだとはらなかった。聖書せいしょに『たみのかしらをわるってはいけない』と、いてあるのだった」。

6パウロは、議員ぎいん一部いちぶがサドカイびとであり、一部いちぶはパリサイびとであるのをて、議会ぎかいなかこえたかめてった、「兄弟きょうだいたちよ、わたしはパリサイびとであり、パリサイびとである。わたしは、死人しにん復活ふっかつのぞみをいだいていることで、裁判さいばんけているのである」。 7かれがこうったところ、パリサイびととサドカイびととのあいだ争論そうろんしょうじ、会衆かいしゅうあいわかれた。 8元来がんらい、サドカイびとは、復活ふっかつとか天使てんしとかれいとかは、いっさい存在そんざいしないとい、パリサイびとは、それらは、みな存在そんざいすると主張しゅちょうしている。 9そこで、大騒おおさわぎとなった。パリサイのある律法りっぽう学者がくしゃたちがって、つよ主張しゅちょうしてった、「われわれは、このひとにはなにわるいことがないとおもう。あるいは、れい天使てんしかが、かれげたのかもれない」。 10こうして、争論そうろんはげしくなったので、千卒長せんそつちょうは、パウロがかれらにかれるのをづかって、兵卒へいそつどもに、りてってパウロをかれらのなかからちからづくでし、兵営へいえいれてるように、めいじた。

11そのしゅがパウロにのぞんでわれた、「しっかりせよ。あなたは、エルサレムでわたしのことをあかししたように、ローマでもあかしをしなくてはならない」。

12けると、ユダヤじんらはもうわせをして、パウロをころすまでは飲食いんしょくをいっさいつと、ちかった。 13この陰謀いんぼうくわわったものは、四十にんあまりであった。 14かれらは、祭司長さいしちょうたちや長老ちょうろうたちのところにって、こうった。「われわれは、パウロをころすまではなにべないと、かたちかいました。 15ついては、あなたがたは議会ぎかいんで、かれのことでなおくわしく取調とりしらべをするようにせかけ、パウロをあなたがたのところにすように、千卒長せんそつちょうたのんでください。われわれとしては、パウロがそこにこないうちにころしてしまうはずをしています」。

16ところが、パウロの姉妹しまいが、この待伏まちぶせのことをみみにし、兵営へいえいにはいってって、パウロにそれをらせた。 17そこでパウロは、百卒長ひゃくそつちょうのひとりをんでった、「この若者わかもの千卒長せんそつちょうのところにれてってください。なに報告ほうこくすることがあるようですから」。 18この百卒長ひゃくそつちょう若者わかものれてき、千卒長せんそつちょうきあわせてった、「囚人しゅうじんのパウロが、この若者わかものがあなたにはなしたいことがあるので、あなたのところにれてってくれるようにと、わたしをんでたのみました」。 19そこで千卒長せんそつちょうは、若者わかものり、ひとのいないところへれてってたずねた、「わたしにはなしたいことというのは、なにか」。 20若者わかものった、「ユダヤじんたちが、パウロのことをもっとくわしく取調とりしらべをするとせかけて、あす議会ぎかいかれすように、あなたにたのむことにめています。 21どうぞ、かれらのたのみをげないでください。四十にんあまりのものが、パウロを待伏まちぶせしているのです。かれらは、パウロをころすまでは飲食いんしょくをいっさいつと、かたちかっています。そして、いまはずをととのえて、あなたの許可きょかっているところなのです」。 22そこで千卒長せんそつちょうは、「このことをわたしにらせたことは、だれにも口外こうがいするな」とめいじて、若者わかものかえした。

23それからかれは、百卒長ひゃくそつちょうふたりをんでった、「歩兵ほへい二百めい騎兵きへい七十めいそうへい二百めいを、カイザリヤに出発しゅっぱつできるように、今夜こんやまでに用意よういせよ。 24また、パウロをせるためにうま用意よういして、かれ総督そうとくペリクスのもとへ無事ぶじれてけ」。 25さらにかれは、つぎのような文面ぶんめん手紙てがみいた。 26「クラウデオ・ルシヤ、つつしんで総督そうとくペリクス閣下かっか平安へいあんいのります。 27本人ほんにんのパウロが、ユダヤじんらにとらえられ、まさにころされようとしていたのを、かれのローマ市民しみんであることをったので、わたしは兵卒へいそつたちをひきいてって、かれすくしました。 28それから、かれうったえられた理由りゆうろうとおもい、かれ議会ぎかいれてきました。 29ところが、かれはユダヤじん律法りっぽう問題もんだいうったえられたものであり、なんら死刑しけいまたは投獄とうごくあたつみのないことがわかりました。 30しかし、このひとたいして陰謀いんぼうがめぐらされているとの報告ほうこくがありましたので、わたしはりあえず、かれ閣下かっかのもとにおおくりすることにし、うったえるものたちには、閣下かっかまえで、かれたいするもうしてをするようにと、めいじておきました」。

31そこで歩兵ほへいたちは、めいじられたとおりパウロをって、よるあいだにアンテパトリスまでれてき、 32翌日よくじつは、騎兵きへいたちにパウロを護送ごそうさせることにして、兵営へいえいかえってった。 33騎兵きへいたちは、カイザリヤにくと、手紙てがみ総督そうとく手渡てわたし、さらにパウロをかれきあわせた。 34総督そうとく手紙てがみんでから、パウロに、どのしゅうものかとたずね、キリキヤのだとって、 35うったひとたちがきたときに、おまえを調しらべることにする」とった。そして、ヘロデの官邸かんていかれまもっておくようにめいじた。

第二四章

1のち大祭司だいさいしアナニヤは、長老ちょうろう数名すうめいと、テルトロという弁護人べんごにんとをれてくだり、総督そうとくにパウロをうったた。 2パウロがされたので、テルトロは論告ろんこくはじめた。

「ペリクス閣下かっか、わたしたちが、閣下かっかのおかげでじゅうぶんに平和へいわたのしみ、またこのくにが、ご配慮はいりょによって、 3あらゆる方面ほうめんに、またいたるところで改善かいぜんされていることは、わたしたちの感謝かんしゃしてやまないところであります。 4しかし、ご迷惑めいわくをかけないように、くどくどとべずに、手短てみじかかにもうげますから、どうぞ、しのんでおりのほど、おねがいいたします。 5さて、このおとこは、疫病えきびょうのような人間にんげんで、世界中せかいじゅうのすべてのユダヤじんなかさわぎをおこしているものであり、また、ナザレびとらの異端いたんのかしらであります。 6このものみやまでもけがそうとしていたので、わたしたちはかれ捕縛ほばくしたのです。〔そして、律法りっぽうにしたがって、さばこうとしていたところ、 7千卒長せんそつちょうルシヤが干渉かんしょうして、かれ無理むりにわたしたちのからはなしてしまい、 8かれうったえたひとたちには、閣下かっかのところにるようにとめいじました。〕それで、閣下かっか自身じしんでお調しらべになれば、わたしたちがかれうった理由りゆうが、全部ぜんぶおわかりになるでしょう」。 9ユダヤじんたちも、このうったえに同調どうちょうして、まったくそのとおりだとった。 10そこで、総督そうとく合図あいずをして発言はつげんうながしたので、パウロは答弁とうべんしてった。

閣下かっかが、多年たねんにわたり、この国民こくみん裁判さいばんをつかさどっておられることを、よく承知しょうちしていますので、わたしはよろこんで、自分じぶんのことを弁明べんめいいたします。 11調しらべになればわかるはずですが、わたしが礼拝れいはいをしにエルサレムにのぼってから、まだ十二にちそこそこにしかなりません。 12そして、みやうちでも、会堂かいどううちでも、あるいは市内しないでも、わたしがだれかと争論そうろんしたり、群衆ぐんしゅう煽動せんどうしたりするのをたものはありませんし、 13いまわたしをうったていることについて、閣下かっかまえに、その証拠しょうこをあげうるものはありません。 14ただ、わたしはこのことみとめます。わたしは、かれらが異端いたんだとしているみちにしたがって、わたしたちの先祖せんぞかみつかえ、律法りっぽうおしえるところ、また預言者よげんしゃしょいてあることを、ことごとくしんじ、 15また、ただしいものただしくないものも、やがてよみがえるとの希望きぼうを、かみあおいでいだいているものです。この希望きぼうは、かれ自身じしんっているのです。 16わたしはまた、かみたいしまたひとたいして、良心りょうしんめられることのないように、つねつとめています。 17さてわたしは、幾年いくねんぶりかにかえってきて、同胞どうほうほどこしをし、また、そなものをしていました。 18そのとき、かれらはわたしがみやできよめをおこなっているのをただけであって、群衆ぐんしゅうもいず、騒動そうどうもなかったのです。 19ところが、アジヤからきた数人すうにんのユダヤじんが――かれらが、わたしにたいして、なにかとがめてをすることがあったなら、よろしく閣下かっかまえにきて、うったえるべきでした。 20あるいは、なにかわたしに不正ふせいなことがあったなら、わたしが議会ぎかいまえっていたときかれらみずから、それを指摘してきすべきでした。 21ただ、わたしは、かれらのなかって、『わたしは、死人しにんのよみがえりのことで、きょう、あなたがたのまえでさばきをけているのだ』とさけんだだけのことです」。

22ここでペリクスは、このみちのことを相当そうとうわきまえていたので、「千卒長せんそつちょうルシヤがくだってるのをって、おまえたちの事件じけん判決はんけつすることにする」とって、裁判さいばん延期えんきした。 23そして百卒長ひゃくそつちょうに、パウロを監禁かんきんするように、しかしかれ寛大かんだいあつかい、友人ゆうじんらが世話せわをするのをめないようにと、めいじた。

24数日すうじつたってから、ペリクスは、ユダヤじんであるつまドルシラと一緒いっしょにきて、パウロをし、キリスト・イエスにたいする信仰しんこうのことを、かれからいた。 25そこで、パウロが、正義せいぎ節制せっせい未来みらい審判しんぱんなどについてろんじていると、ペリクスは不安ふあんかんじてきて、った、「きょうはこれでかえるがよい。また、よい機会きかいたら、すことにする」。 26かれは、それと同時どうじに、パウロからかねをもらいたいしたごころがあったので、たびたびパウロをしてはかたった。

27さて、二かねんたったとき、ポルキオ・フェストが、ペリクスと交代こうたいしてにんについた。ペリクスは、ユダヤじん歓心かんしんおうとおもって、パウロを監禁かんきんしたままにしておいた。

第二五章

1さて、フェストは、任地にんちいてから三のち、カイザリヤからエルサレムにのぼったところ、 2祭司長さいしちょうたちやユダヤじん重立おもだったものたちが、パウロをうったて、 3かれをエルサレムにすようはからっていただきたいと、しきりにねがった。かれらは途中とちゅうせして、かれころかんがえであった。 4ところがフェストは、パウロがカイザリヤに監禁かんきんしてあり、自分じぶんもすぐそこへかえることになっているとこたえ、 5そしてった、「では、もしあのおとこなに不都合ふつごうなことがあるなら、おまえたちのうちの有力ゆうりょくしゃらが、わたしと一緒いっしょくだってって、うったえるがよかろう」。

6フェストは、かれらのあいだに八か十ほど滞在たいざいしたのち、カイザリヤにくだってき、その翌日よくじつ裁判さいばんせきについて、パウロをすようにめいじた。 7パウロが姿すがたをあらわすと、エルサレムからくだってきたユダヤじんたちが、かれりかこみ、かれたいしてさまざまのおも罪状ざいじょうもうてたが、いずれもその証拠しょうこをあげることはできなかった。 8パウロは「わたしは、ユダヤじん律法りっぽうたいしても、みやたいしても、またカイザルにたいしても、なんらつみおかしたことはない」と弁明べんめいした。 9ところが、フェストはユダヤじん歓心かんしんおうとおもって、パウロにむかってった、「おまえはエルサレムにのぼり、この事件じけんかんし、わたしからそこで裁判さいばんけることを承知しょうちするか」。 10パウロはった、「わたしはいま、カイザルの法廷ほうていっています。わたしはこの法廷ほうてい裁判さいばんされるべきです。よくご承知しょうちのとおり、わたしはユダヤじんたちに、なにわるいことをしてはいません。 11もしわたしがわるいことをし、あたるようなことをしているのなら、まぬかれようとはしません。しかし、もしかれらのうったえることに、なんの根拠こんきょもないとすれば、だれもわたしをかれらにわた権利けんりはありません。わたしはカイザルに上訴じょうそします」。 12そこでフェストは、陪席ばいせきものたちと協議きょうぎしたうえこたえた、「おまえはカイザルに上訴じょうそもうた。カイザルのところにくがよい」。

13数日すうじつたったのち、アグリッパおうとベルニケとが、フェストに敬意けいいひょうするため、カイザリヤにきた。 14ふたりは、そこになに日間にちかん滞在たいざいしていたので、フェストは、パウロのことをおうはなしてった、「ここに、ペリクスが囚人しゅうじんとしてのこしてったひとりのおとこがいる。 15わたしがエルサレムにったとき、このおとこのことを、祭司長さいしちょうたちやユダヤじん長老ちょうろうたちが、わたしに報告ほうこくし、かれつみさだめるようにと要求ようきゅうした。 16そこでわたしは、かれらにこたえた、『うったえられたものが、うったえたものまえって、告訴こくそたい弁明べんめいする機会きかいあたえられないまえに、そのひと見放みはなしてしまうのは、ローマじん慣例かんれいにはないことである』。 17それで、かれらがここにあつまってきたとき、わたしはときをうつさず、つぎ裁判さいばんせきについて、そのおとこさせた。 18うったえたものたちはがったが、わたしが推測すいそくしていたような悪事あくじは、かれについて何一なにひともうてはしなかった。 19ただ、かれあらそっているのは、かれ自身じしん宗教しゅうきょうかんし、また、んでしまったのにきているとパウロが主張しゅちょうしているイエスなるものかんする問題もんだいぎない。 20これらの問題もんだいを、どうあつかってよいかわからなかったので、わたしはかれに、『エルサレムにって、これらの問題もんだいについて、そこでさばいてもらいたくはないか』とたずねてみた。 21ところがパウロは、皇帝こうてい判決はんけつけるときまで、このまま自分じぶんをとどめておいてほしいとうので、カイザルにかれおくりとどけるときまでとどめておくようにと、めいじておいた」。 22そこで、アグリッパがフェストに「わたしも、そのひとぶんいてたい」とったので、フェストは、「では、あすかれからきとるようにしてあげよう」とこたえた。

23翌日よくじつ、アグリッパとベルニケとは、おおいに威儀いぎをととのえて、千卒長せんそつちょうたちや重立おもだったひとたちとともに、引見所いんけんじょにはいってきた。すると、フェストのめいによって、パウロがそこにされた。 24そこで、フェストがった、「アグリッパおう、ならびにご臨席りんせき諸君しょくん。ごらんになっているこの人物じんぶつは、ユダヤじんたちがこぞって、エルサレムにおいても、また、このにおいても、これ以上いじょうかしておくべきでないとさけんで、わたしにうったているものである。 25しかし、かれあたることはなにもしていないと、わたしはているのだが、かれ自身じしん皇帝こうてい上訴じょうそするとしたので、かれをそちらへおくることにめた。 26ところが、かれについて、主君しゅくんきおくるたしかなものがなにもないので、わたしは、かれ諸君しょくんまえに、とくに、アグリッパおうよ、あなたのまえして、取調とりしらべをしたのち、上書じょうしょすべき材料ざいりょうようとおもう。 27囚人しゅうじんおくるのに、その告訴こくそ理由りゆうしめさないということは、不合理ふごうりだとおもえるからである」。

第二六章

1アグリッパはパウロに、「おまえ自身じしんのことをはなしてもよい」とった。そこでパウロは、をさしべて、弁明べんめいをしはじめた。

2「アグリッパおうよ、ユダヤじんたちからうったえられているすべてのことかんして、きょう、あなたのまえ弁明べんめいすることになったのは、わたしのしあわせにおもうところであります。 3あなたは、ユダヤじんのあらゆる慣例かんれい問題もんだいを、よくいておられるかたですから、わたしのもうすことを、寛大かんだいなおこころいていただきたいのです。

4さて、わたしはわか時代じだいには、はじめから国民こくみんなかで、またエルサレムでごしたのですが、そのころのわたしの生活せいかつぶりは、ユダヤじんがみんなよくっているところです。 5かれらはわたしをはじめからっているので、証言しょうげんしようとおもえばできるのですが、わたしは、わたしたちの宗教しゅうきょうもっと厳格げんかくにしたがって、パリサイびととしての生活せいかつをしていたのです。 6いまわたしは、かみがわたしたちの先祖せんぞ約束やくそくなさった希望きぼうをいだいているために、裁判さいばんけているのであります。 7わたしたちの十二の部族ぶぞくは、夜昼よるひる熱心ねっしんかみつかえて、その約束やくそくようとのぞんでいるのです。おうよ、この希望きぼうのために、わたしはユダヤじんからうったえられています。 8かみ死人しにんをよみがえらせるということが、あなたがたには、どうしてしんじられないこととおもえるのでしょうか。

9わたし自身じしんも、以前いぜんには、ナザレびとイエスのさからって反対はんたい行動こうどうをすべきだと、おもっていました。 10そしてわたしは、それをエルサレムで敢行かんこうし、祭司長さいしちょうたちから権限けんげんあたえられて、おおくの聖徒せいとたちをごくめ、かれらがころされるときには、それに賛成さんせいあらわしました。 11それから、いたるところの会堂かいどうで、しばしばかれらをばっして、無理むりやりにかみをけがす言葉ことばわせようとし、かれらにたいしてひどくくるい、ついに外国がいこく町々まちまちにまで、迫害はくがいをのばすにいたりました。

12こうして、わたしは、祭司長さいしちょうたちから権限けんげん委任いにんとをけて、ダマスコにったのですが、 13おうよ、その途中とちゅう真昼まひるに、ひかりてんからさしてるのをました。それは、太陽たいようよりも、もっとひかかがやいて、わたしと同行者どうこうしゃたちとをめぐりてらしました。 14わたしたちはみなたおれましたが、そのときヘブルでわたしにこうびかけるこえきました、『サウロ、サウロ、なぜわたしを迫害はくがいするのか。とげのあるむちをければ、きずうだけである』。 15そこで、わたしが『しゅよ、あなたはどなたですか』とたずねると、しゅわれた、『わたしは、あなたが迫害はくがいしているイエスである。 16さあ、きあがって、自分じぶんあしちなさい。わたしがあなたにあらわれたのは、あなたがわたしにったことと、あなたにあらわれてしめそうとしていることとをあかしし、これをつたえるつとめに、あなたをにんじるためである。 17わたしは、この国民こくみん異邦人いほうじんとのなかから、あなたをすくし、あらためてあなたをかれらにつかわすが、 18それは、かれらのひらき、かれらをやみからひかりへ、悪魔あくま支配しはいからかみのみもとへかえらせ、また、かれらがつみのゆるしを、わたしをしんじる信仰しんこうによって、せいべつされた人々ひとびとくわわるためである』。

19それですから、アグリッパおうよ、わたしはてんよりの啓示けいじにそむかず、 20まずはじめにダマスコにいる人々ひとびとに、それからエルサレムにいる人々ひとびと、さらにユダヤ全土ぜんど、ならびに異邦人いほうじんたちに、あらためてかみかえり、悔改くいあらためにふさわしいわざをおこなうようにと、すすめました。 21そのために、ユダヤじんは、わたしをみやとらえてころそうとしたのです。 22しかし、わたしは今日こんにちいたるまでかみ加護かごけ、このようにって、ちいさいものにもおおきいものにもあかしをなし、預言者よげんしゃたちやモーセが、今後こんごおこるべきだとかたったことを、そのままべてきました。 23すなわち、キリストが苦難くなんけること、また、死人しにんなかから最初さいしょによみがえって、この国民こくみん異邦人いほうじんとに、ひかりつたえるにいたることを、あかししたのです」。 24パウロがこのように弁明べんめいをしていると、フェストは大声おおごえった、「パウロよ、おまえはくるっている。博学はくがくが、おまえをくるわせている」。 25パウロがった、「フェスト閣下かっかよ、わたしはくるってはいません。わたしは、まじめな真実しんじつ言葉ことばかたっているだけです。 26おうはこれらのことをよくっておられるので、おうたいしても、率直そっちょくもうげているのです。それは、かたすみでおこなわれたのではないのですから、一つとして、おうのがされたことはないとしんじます。 27アグリッパおうよ、あなたは預言者よげんしゃしんじますか。しんじておられるとおもいます」。 28アグリッパがパウロにった、「おまえはすこいただけで、わたしをクリスチャンにしようとしている」。 29パウロがった、「くことがすこしであろうと、おおくであろうと、わたしがかみいのるのは、ただあなただけでなく、きょう、わたしの言葉ことばいたひともみな、わたしのようになってくださることです。このようなくさりべつですが」。

30それから、おう総督そうとくもベルニケも、また列席れっせき人々ひとびとも、みなちあがった。 31退場たいじょうしてから、たがいかたってった、「あのひとは、投獄とうごくあたるようなことをしてはいない」。 32そして、アグリッパがフェストにった、「あのひとは、カイザルに上訴じょうそしていなかったら、ゆるされたであろうに」。

第二七章

1さて、わたしたちが、ふねでイタリヤにくことがまったとき、パウロとそのほか数人すうにん囚人しゅうじんとは、近衛このえたい百卒長ひゃくそつちょうユリアスにたくされた。 2そしてわたしたちは、アジヤ沿岸えんがん各所かくしょ寄港きこうすることになっているアドラミテオのふねんで、出帆しゅっぱんした。テサロニケのマケドニヤびとアリスタルコも同行どうこうした。 3つぎ、シドンに入港にゅうこうしたが、ユリアスは、パウロを親切しんせつあつかい、友人ゆうじんをおとずれてかんたいをけることを、ゆるした。 4それからわたしたちは、ここから船出ふなでしたが、逆風ぎゃくふうにあったので、クプロのしまかげを航行こうこうし、 5キリキヤとパンフリヤのおきぎて、ルキヤのミラに入港にゅうこうした。 6そこに、イタリヤきのアレキサンドリヤのふねがあったので、百卒長ひゃくそつちょうは、わたしたちをそのふねませた。 7幾日いくにちものあいだ、ふねすすみがおそくて、わたしたちは、かろうじてクニドの沖合おきあいにきたが、かぜがわたしたちのをはばむので、サルモネのおき、クレテのしまかげを航行こうこうし、 8そのきし沿ってすすみ、かろうじて「みなと」とばれるところいた。そのちかくにラサヤのまちがあった。

9ながとき経過けいかし、断食だんじきぎてしまい、すでに航海こうかい危険きけん季節きせつになったので、パウロは人々ひとびと警告けいこくしてった、 10みなさん、わたしのるところでは、この航海こうかいでは、積荷つみに船体せんたいばかりでなく、われわれの生命せいめいにも、危害きがいおおきな損失そんしつおよぶであろう」。 11しかし百卒長ひゃくそつちょうは、パウロのよりも、船長せんちょう船主せんしゅほう信頼しんらいした。 12なお、このみなとふゆごすのにてきしないので、大多数だいたすうものは、ここからて、できればなんとかして、南西なんせい北西ほくせいとにめんしているクレテのピニクスこうって、そこでふゆごしたいと主張しゅちょうした。

13ときに、南風なんぷうしずかにいてきたので、かれらは、このときとばかりにいかりをげて、クレテのきし沿って航行こうこうした。 14するともなく、ユーラクロンとばれる暴風ぼうふうが、しまからきおろしてきた。 15そのために、ふねながされてかぜさからうことができないので、わたしたちはながされるままにまかせた。 16それから、クラウダという小島こじまかげに、はいりんだので、わたしたちは、やっとのことで小舟こぶね処置しょちすることができ、 17それをふねげてから、つな船体せんたいきつけた。また、スルテスのげるのをおそれ、をおろしてながれるままにした。 18わたしたちは、暴風ぼうふうにひどくなやまされつづけたので、つぎに、人々ひとびと積荷つみにてはじめ、 19には、船具ふなぐまでも、てずからげすてた。 20幾日いくにちものあいだ、太陽たいようほしえず、暴風ぼうふうはげしくきすさぶので、わたしたちのたすかる最後さいごのぞみもなくなった。

21みんなのものは、ながいあいだ食事しょくじもしないでいたが、そのとき、パウロがかれらのなかってった、「みなさん、あなたがたが、わたしの忠告ちゅうこくきいれて、クレテからなかったら、このような危害きがい損失そんしつこうむらなくてすんだはずであった。 22だが、このさい、おすすめする。元気げんきしなさい。ふねうしなわれるだけで、あなたがたのなか生命せいめいうしなうものは、ひとりもいないであろう。 23昨夜さくや、わたしがつかえ、またおがんでいるかみからの御使みつかいが、わたしのそばにってった、 24『パウロよ、おそれるな。あなたはかならずカイザルのまえたなければならない。たしかにかみは、あなたと同船どうせんものを、ことごとくあなたにたまわっている』。 25だから、みなさん、元気げんきしなさい。万事ばんじはわたしにげられたとおりにってくと、わたしは、かみかけてしんじている。 26われわれは、どこかのしまちあげられるに相違そういない」。

27わたしたちがアドリヤうみただよってから十四よるになったとき真夜中まよなかごろ、水夫すいふらはどこかの陸地りくちちかづいたようにかんじた。 28そこで、みずふかさをはかってみたところ、二十ひろであることがわかった。それからすこすすんで、もう一度いちどはかってみたら、十五ひろであった。 29わたしたちが、万一まんいち暗礁あんしょうげては大変たいへんだと、人々ひとびとづかって、ともから四つのいかりをげおろし、けるのをちわびていた。 30そのとき水夫すいふらがふねからそうとおもって、へさきからいかりをげおろすとせかけ、小舟こぶねうみにおろしていたので、 31パウロは、百卒長ひゃくそつちょう兵卒へいそつたちにった、「あのひとたちが、ふねのこっていなければ、あなたがたはたすからない」。 32そこで兵卒へいそつたちは、小舟こぶねつなって、そのながれてくままにまかせた。

33けかけたころ、パウロは一同いちどうものに、食事しょくじをするようにすすめてった、「あなたがたが食事しょくじもせずに、見張みはりをつづけてから、なにべないで、きょうが十四あたる。 34だから、いま食事しょくじることをおすすめする。それが、あなたがたをすくうことになるのだから。たしかにかみひとすじでも、あなたがたのあたまからうしなわれることはないであろう」。 35かれはこうって、パンをり、みんなのまえかみ感謝かんしゃし、それをさいてべはじめた。 36そこで、みんなのものもとづいて食事しょくじをした。 37ふねにいたわたしたちは、わせて二百七十六にんであった。 38みんなのものは、じゅうぶんに食事しょくじをしたのち穀物こくもつうみげすててふねかろくした。

39けて、どこの土地とちかよくわからなかったが、砂浜すなはまのある入江いりええたので、できれば、それにふねれようということになった。 40そこで、いかりをはなしてうみて、同時どうじにかじのつなをゆるめ、かぜまえをあげて、砂浜すなはまにむかってすすんだ。 41ところが、潮流ちょうりゅうながところすすんだため、ふね浅瀬あさせりあげてしまって、へさきがめりんでうごかなくなり、とものほう激浪げきろうのためにこわされた。 42兵卒へいそつたちは、囚人しゅうじんらがおよいでげるおそれがあるので、ころしてしまおうとはかったが、 43百卒長ひゃくそつちょうは、パウロをすくいたいとおもうところから、その意図いとをしりぞけ、およげるものはまずうみんでりくき、 44そのものは、いたふね破片はへんってくようにめいじた。こうして、全部ぜんぶもの上陸じょうりくしてすくわれたのであった。

第二八章

1わたしたちが、こうしてすくわれてからわかったが、これはマルタとばれるしまであった。 2土地とち人々ひとびとは、わたしたちに並々なみなみならぬ親切しんせつをあらわしてくれた。すなわち、りしきるあめさむさをしのぐために、をたいてわたしたち一同いちどうをねぎらってくれたのである。 3そのとき、パウロはひとかかえのしばをたばねてにくべたところ、熱気ねっきのためにまむしがてきて、かれにかみついた。 4土地とち人々ひとびとは、このきものがパウロのからぶらがっているのをて、たがいった、「このひとは、きっと人殺ひとごろしにちがいない。うみからはのがれたが、ディケーの神様かみさまかれかしてはおかないのだ」。 5ところがパウロは、まむしをなかおとして、なんのがいこうむらなかった。 6かれらは、かれもなくはれがるか、あるいは、たちまちたおれてぬだろうと、様子ようすをうかがっていた。しかし、ながあいだうかがっていても、かれになんのかわったこともおこらないのをて、かれらはかんがえをえて、「このひと神様かみさまだ」とした。

7さて、その場所ばしょちかくに、しま首長しゅちょう、ポプリオというひと所有しょゆうがあった。かれは、そこにわたしたちを招待しょうたいして、三のあいだ親切しんせつにもてなしてくれた。 8たまたま、ポプリオのちち赤痢せきりをわずらい、高熱こうねつとこについていた。そこでパウロは、そのひとのところにはいってっていのり、かれうえにおいていやしてやった。 9このことがあってから、ほかに病気びょうきをしているしまひとたちが、ぞくぞくとやってきて、みないやされた。 10かれらはわたしたちを非常ひじょう尊敬そんけいし、出帆しゅっぱんときには、必要ひつよう品々しなじなってきてくれた。

11三かげつたったのち、わたしたちは、このしまふゆごもりをしていたデオスクリのふねかざりのあるアレキサンドリヤのふねで、出帆しゅっぱんした。 12そして、シラクサに寄港きこうして三のあいだ停泊ていはくし、 13そこからすすんでレギオンにった。それから一にちおいて、南風なんぷういてきたのにじょうじ、ふつかにポテオリにいた。 14そこで兄弟きょうだいたちにい、すすめられるまま、かれらのところに七日間なぬかかん滞在たいざいした。それからわたしたちは、ついにローマに到着とうちゃくした。 15ところが、兄弟きょうだいたちは、わたしたちのことをいて、アピオ・ポロおよびトレス・タベルネまで出迎でむかえてくれた。パウロはかれらにって、かみ感謝かんしゃいさった。

16わたしたちがローマにいたのち、パウロは、ひとりの番兵ばんぺいをつけられ、ひとりでむことをゆるされた。

17たってから、パウロは、重立おもだったユダヤじんたちをまねいた。みんなのものあつまったとき、かれらにった、「兄弟きょうだいたちよ、わたしは、わが国民こくみんたいしても、あるいは先祖せんぞ伝来でんらい慣例かんれいたいしても、何一なにひとつそむく行為こういがなかったのに、エルサレムで囚人しゅうじんとしてローマじんたちのわたされた。 18かれらはわたしを調しらべた結果けっか、なんらあた罪状ざいじょうもないので、わたしを釈放しゃくほうしようとおもったのであるが、 19ユダヤじんたちがこれに反対はんたいしたため、わたしはやむをず、カイザルに上訴じょうそするにいたったのである。しかしわたしは、わが同胞どうほううったえようなどとしているのではない。 20こういうわけで、あなたがたにってかたいたいとねがっていた。事実じじつ、わたしは、イスラエルのいだいている希望きぼうのゆえに、このくさりにつながれているのである」。 21そこでかれらは、パウロにった、「わたしたちは、ユダヤじんたちから、あなたについて、なんの文書ぶんしょっていないし、また、兄弟きょうだいたちのなかからここにきて、あなたについて不利ふり報告ほうこくをしたり、悪口あっこうったりしたものもなかった。 22わたしたちは、あなたのかんがえていることを、直接ちょくせつあなたからくのが、ただしいことだとおもっている。じつは、この宗派しゅうはについては、いたるところで反対はんたいのあることが、わたしたちのみみにもはいっている」。

23そこで、さだめて、おおぜいのひとが、パウロの宿やどにつめかけてきたので、あさからばんまで、パウロはかたつづけ、かみくにのことをあかしし、またモーセの律法りっぽう預言者よげんしゃしょいて、イエスについてかれらの説得せっとくにつとめた。 24あるものはパウロのうことをけいれ、あるものしんじようともしなかった。 25たがい意見いけんわなくて、みんなのものかえろうとしていたとき、パウロはひとことべてった、「聖霊せいれいはよくも預言者よげんしゃイザヤによって、あなたがたの先祖せんぞかたったものである。
26『このたみってえ、
あなたがたはくにはくが、けっしてさとらない。
るにはるが、けっしてみとめない。
27このたみこころにぶくなり、
そのみみきこえにくく、
そのじている。
それは、かれらがず、
みみかず、
こころさとらず、あらためて
いやされることがないためである』。
28そこで、あなたがたはっておくがよい。かみのこのすくい言葉ことばは、異邦人いほうじんおくられたのだ。かれらは、これにきしたがうであろう」。〔 29パウロがこれらのことをおわると、ユダヤじんらは、たがいろんいながらかえってった。〕

30パウロは、自分じぶんりたいえまんねんのあいだんで、たずねて人々ひとびとをみなむかれ、 31はばからず、またさまたげられることもなく、かみくにつたえ、しゅイエス・キリストのことをおしえつづけた。