創世記

第一章

1はじめに神(かみ)は天(てん)と地(ち)とを創造(そうぞう)された。 2地(ち)は形(かたち)なく、むなしく、やみが淵(ふち)のおもてにあり、神(かみ)の霊(れい)が水(みず)のおもてをおおっていた。

3神(かみ)は「光(ひかり)あれ」と言(い)われた。すると光(ひかり)があった。 4神(かみ)はその光(ひかり)を見(み)て、良(よ)しとされた。神(かみ)はその光(ひかり)とやみとを分(わ)けられた。 5神(かみ)は光(ひかり)を昼(ひる)と名(な)づけ、やみを夜(よる)と名(な)づけられた。夕(ゆう)となり、また朝(あさ)となった。第(だい)一日(にち)である。

6神(かみ)はまた言(い)われた、「水(みず)の間(あいだ)におおぞらがあって、水(みず)と水(みず)とを分(わ)けよ」。 7そのようになった。神(かみ)はおおぞらを造(つく)って、おおぞらの下(した)の水(みず)とおおぞらの上(うえ)の水(みず)とを分(わ)けられた。 8神(かみ)はそのおおぞらを天(てん)と名(な)づけられた。夕(ゆう)となり、また朝(あさ)となった。第(だい)二日(にち)である。

9神(かみ)はまた言(い)われた、「天(てん)の下(した)の水(みず)は一(ひと)つ所(ところ)に集(あつ)まり、かわいた地(ち)が現(あらわ)れよ」。そのようになった。 10神(かみ)はそのかわいた地(ち)を陸(りく)と名(な)づけ、水(みず)の集(あつ)まった所(ところ)を海(うみ)と名(な)づけられた。神(かみ)は見(み)て、良(よ)しとされた。 11神(かみ)はまた言(い)われた、「地(ち)は青草(あおくさ)と、種(たね)をもつ草(くさ)と、種類(しゅるい)にしたがって種(たね)のある実(み)を結(むす)ぶ果樹(かじゅ)とを地(ち)の上(うえ)にはえさせよ」。そのようになった。 12地(ち)は青草(あおくさ)と、種類(しゅるい)にしたがって種(たね)をもつ草(くさ)と、種類(しゅるい)にしたがって種(たね)のある実(み)を結(むす)ぶ木(き)とをはえさせた。神(かみ)は見(み)て、良(よ)しとされた。 13夕(ゆう)となり、また朝(あさ)となった。第(だい)三日(にち)である。

14神(かみ)はまた言(い)われた、「天(てん)のおおぞらに光(ひかり)があって昼(ひる)と夜(よる)とを分(わ)け、しるしのため、季節(きせつ)のため、日(ひ)のため、年(とし)のためになり、 15天(てん)のおおぞらにあって地(ち)を照(て)らす光(ひかり)となれ」。そのようになった。 16神(かみ)は二つの大(おお)きな光(ひかり)を造(つく)り、大(おお)きい光(ひかり)に昼(ひる)をつかさどらせ、小(ちい)さい光(ひかり)に夜(よる)をつかさどらせ、また星(ほし)を造(つく)られた。 17神(かみ)はこれらを天(てん)のおおぞらに置(お)いて地(ち)を照(て)らさせ、 18昼(ひる)と夜(よる)とをつかさどらせ、光(ひかり)とやみとを分(わ)けさせられた。神(かみ)は見(み)て、良(よ)しとされた。 19夕(ゆう)となり、また朝(あさ)となった。第(だい)四日(にち)である。

20神(かみ)はまた言(い)われた、「水(みず)は生(い)き物(もの)の群(む)れで満(み)ち、鳥(とり)は地(ち)の上(うえ)、天(てん)のおおぞらを飛(と)べ」。 21神(かみ)は海(うみ)の大(おお)いなる獣(けもの)と、水(みず)に群(むら)がるすべての動(うご)く生(い)き物(もの)とを、種類(しゅるい)にしたがって創造(そうぞう)し、また翼(つばさ)のあるすべての鳥(とり)を、種類(しゅるい)にしたがって創造(そうぞう)された。神(かみ)は見(み)て、良(よ)しとされた。 22神(かみ)はこれらを祝福(しゅくふく)して言(い)われた、「生(う)めよ、ふえよ、海(うみ)の水(みず)に満(み)ちよ、また鳥(とり)は地(ち)にふえよ」。 23夕(ゆう)となり、また朝(あさ)となった。第(だい)五日(にち)である。

24神(かみ)はまた言(い)われた、「地(ち)は生(い)き物(もの)を種類(しゅるい)にしたがっていだせ。家畜(かちく)と、這(は)うものと、地(ち)の獣(けもの)とを種類(しゅるい)にしたがっていだせ」。そのようになった。 25神(かみ)は地(ち)の獣(けもの)を種類(しゅるい)にしたがい、家畜(かちく)を種類(しゅるい)にしたがい、また地(ち)に這(は)うすべての物(もの)を種類(しゅるい)にしたがって造(つく)られた。神(かみ)は見(み)て、良(よ)しとされた。

26神(かみ)はまた言(い)われた、「われわれのかたちに、われわれにかたどって人(ひと)を造(つく)り、これに海(うみ)の魚(うお)と、空(そら)の鳥(とり)と、家畜(かちく)と、地(ち)のすべての獣(けもの)と、地(ち)のすべての這(は)うものとを治(おさ)めさせよう」。 27神(かみ)は自分(じぶん)のかたちに人(ひと)を創造(そうぞう)された。すなわち、神(かみ)のかたちに創造(そうぞう)し、男(おとこ)と女(おんな)とに創造(そうぞう)された。 28神(かみ)は彼(かれ)らを祝福(しゅくふく)して言(い)われた、「生(う)めよ、ふえよ、地(ち)に満(み)ちよ、地(ち)を従(したが)わせよ。また海(うみ)の魚(うお)と、空(そら)の鳥(とり)と、地(ち)に動(うご)くすべての生(い)き物(もの)とを治(おさ)めよ」。 29神(かみ)はまた言(い)われた、「わたしは全(ぜん)地(ち)のおもてにある種(たね)をもつすべての草(くさ)と、種(たね)のある実(み)を結(むす)ぶすべての木(き)とをあなたがたに与(あた)える。これはあなたがたの食物(しょくもつ)となるであろう。 30また地(ち)のすべての獣(けもの)、空(そら)のすべての鳥(とり)、地(ち)を這(は)うすべてのもの、すなわち命(いのち)あるものには、食物(しょくもつ)としてすべての青草(あおくさ)を与(あた)える」。そのようになった。 31神(かみ)が造(つく)ったすべての物(もの)を見(み)られたところ、それは、はなはだ良(よ)かった。夕(ゆう)となり、また朝(あさ)となった。第(だい)六日(にち)である。

第二章

1こうして天(てん)と地(ち)と、その万象(ばんしょう)とが完成(かんせい)した。 2神(かみ)は第(だい)七日(にち)にその作業(さぎょう)を終(お)えられた。すなわち、そのすべての作業(さぎょう)を終(おわ)って第(だい)七日(にち)に休(やす)まれた。 3神(かみ)はその第(だい)七日(にち)を祝福(しゅくふく)して、これを聖別(せいべつ)された。神(かみ)がこの日(ひ)に、そのすべての創造(そうぞう)のわざを終(おわ)って休(やす)まれたからである。

4これが天地(てんち)創造(そうぞう)の由来(ゆらい)である。

主(しゅ)なる神(かみ)が地(ち)と天(てん)とを造(つく)られた時(とき)、 5地(ち)にはまだ野(の)の木(き)もなく、また野(の)の草(くさ)もはえていなかった。主(しゅ)なる神(かみ)が地(ち)に雨(あめ)を降(ふ)らせず、また土(つち)を耕(たがや)す人(ひと)もなかったからである。 6しかし地(ち)から泉(いずみ)がわきあがって土(つち)の全面(ぜんめん)を潤(うるお)していた。 7主(しゅ)なる神(かみ)は土(つち)のちりで人(ひと)を造(つく)り、命(いのち)の息(いき)をその鼻(はな)に吹(ふ)きいれられた。そこで人(ひと)は生(い)きた者(もの)となった。 8主(しゅ)なる神(かみ)は東(ひがし)のかた、エデンに一つの園(その)を設(もう)けて、その造(つく)った人(ひと)をそこに置(お)かれた。 9また主(しゅ)なる神(かみ)は、見(み)て美(うつく)しく、食(た)べるに良(よ)いすべての木(き)を土(つち)からはえさせ、更(さら)に園(その)の中央(ちゅうおう)に命(いのち)の木(き)と、善悪(ぜんあく)を知(し)る木(き)とをはえさせられた。 10また一つの川(かわ)がエデンから流(なが)れ出(で)て園(その)を潤(うるお)し、そこから分(わか)れて四つの川(かわ)となった。 11その第(だい)一の名(な)はピソンといい、金(きん)のあるハビラの全(ぜん)地(ち)をめぐるもので、 12その地(ち)の金(きん)は良(よ)く、またそこはブドラクと、しまめのうとを産(さん)した。 13第(だい)二の川(かわ)の名(な)はギホンといい、クシの全(ぜん)地(ち)をめぐるもの。 14第(だい)三の川(かわ)の名(な)はヒデケルといい、アッスリヤの東(ひがし)を流(なが)れるもの。第(だい)四の川(かわ)はユフラテである。

15主(しゅ)なる神(かみ)は人(ひと)を連(つ)れて行(い)ってエデンの園(その)に置(お)き、これを耕(たがや)させ、これを守(まも)らせられた。 16主(しゅ)なる神(かみ)はその人(ひと)に命(めい)じて言(い)われた、「あなたは園(その)のどの木(き)からでも心(こころ)のままに取(と)って食(た)べてよろしい。 17しかし善悪(ぜんあく)を知(し)る木(き)からは取(と)って食(た)べてはならない。それを取(と)って食(た)べると、きっと死(し)ぬであろう」。

18また主(しゅ)なる神(かみ)は言(い)われた、「人(ひと)がひとりでいるのは良(よ)くない。彼(かれ)のために、ふさわしい助(たす)け手(て)を造(つく)ろう」。 19そして主(しゅ)なる神(かみ)は野(の)のすべての獣(けもの)と、空(そら)のすべての鳥(とり)とを土(つち)で造(つく)り、人(ひと)のところへ連(つ)れてきて、彼(かれ)がそれにどんな名(な)をつけるかを見(み)られた。人(ひと)がすべて生(い)き物(もの)に与(あた)える名(な)は、その名(な)となるのであった。 20それで人(ひと)は、すべての家畜(かちく)と、空(そら)の鳥(とり)と、野(の)のすべての獣(けもの)とに名(な)をつけたが、人(ひと)にはふさわしい助(たす)け手(て)が見(み)つからなかった。 21そこで主(しゅ)なる神(かみ)は人(ひと)を深(ふか)く眠(ねむ)らせ、眠(ねむ)った時(とき)に、そのあばら骨(ぼね)の一つを取(と)って、その所(ところ)を肉(にく)でふさがれた。 22主(しゅ)なる神(かみ)は人(ひと)から取(と)ったあばら骨(ぼね)でひとりの女(おんな)を造(つく)り、人(ひと)のところへ連(つ)れてこられた。 23そのとき、人(ひと)は言(い)った。
「これこそ、ついにわたしの骨(ほね)の骨(ほね)、
わたしの肉(にく)の肉(にく)。
男(おとこ)から取(と)ったものだから、
これを女(おんな)と名(な)づけよう」。
24それで人(ひと)はその父(ちち)と母(はは)を離(はな)れて、妻(つま)と結(むす)び合(あ)い、一体(いったい)となるのである。 25人(ひと)とその妻(つま)とは、ふたりとも裸(はだか)であったが、恥(は)ずかしいとは思(おも)わなかった。

第三章

1さて主(しゅ)なる神(かみ)が造(つく)られた野(の)の生(い)き物(もの)のうちで、へびが最(もっと)も狡猾(こうかつ)であった。へびは女(おんな)に言(い)った、「園(その)にあるどの木(き)からも取(と)って食(た)べるなと、ほんとうに神(かみ)が言(い)われたのですか」。 2女(おんな)はへびに言(い)った、「わたしたちは園(その)の木(き)の実(み)を食(た)べることは許(ゆる)されていますが、 3ただ園(その)の中央(ちゅうおう)にある木(き)の実(み)については、これを取(と)って食(た)べるな、これに触(ふ)れるな、死(し)んではいけないからと、神(かみ)は言(い)われました」。 4へびは女(おんな)に言(い)った、「あなたがたは決(けっ)して死(し)ぬことはないでしょう。 5それを食(た)べると、あなたがたの目(め)が開(ひら)け、神(かみ)のように善悪(ぜんあく)を知(し)る者(もの)となることを、神(かみ)は知(し)っておられるのです」。 6女(おんな)がその木(き)を見(み)ると、それは食(た)べるに良(よ)く、目(め)には美(うつく)しく、賢(かしこ)くなるには好(この)ましいと思(おも)われたから、その実(み)を取(と)って食(た)べ、また共(とも)にいた夫(おっと)にも与(あた)えたので、彼(かれ)も食(た)べた。 7すると、ふたりの目(め)が開(ひら)け、自分(じぶん)たちの裸(はだか)であることがわかったので、いちじくの葉(は)をつづり合(あ)わせて、腰(こし)に巻(ま)いた。

8彼(かれ)らは、日(ひ)の涼(すず)しい風(かぜ)の吹(ふ)くころ、園(その)の中(なか)に主(しゅ)なる神(かみ)の歩(あゆ)まれる音(おと)を聞(き)いた。そこで、人(ひと)とその妻(つま)とは主(しゅ)なる神(かみ)の顔(かお)を避(さ)けて、園(その)の木(き)の間(あいだ)に身(み)を隠(かく)した。 9主(しゅ)なる神(かみ)は人(ひと)に呼(よ)びかけて言(い)われた、「あなたはどこにいるのか」。 10彼(かれ)は答(こた)えた、「園(その)の中(なか)であなたの歩(あゆ)まれる音(おと)を聞(き)き、わたしは裸(はだか)だったので、恐(おそ)れて身(み)を隠(かく)したのです」。 11神(かみ)は言(い)われた、「あなたが裸(はだか)であるのを、だれが知(し)らせたのか。食(た)べるなと、命(めい)じておいた木(き)から、あなたは取(と)って食(た)べたのか」。 12人(ひと)は答(こた)えた、「わたしと一緒(いっしょ)にしてくださったあの女(おんな)が、木(き)から取(と)ってくれたので、わたしは食(た)べたのです」。 13そこで主(しゅ)なる神(かみ)は女(おんな)に言(い)われた、「あなたは、なんということをしたのです」。女(おんな)は答(こた)えた、「へびがわたしをだましたのです。それでわたしは食(た)べました」。 14主(しゅ)なる神(かみ)はへびに言(い)われた、
「おまえは、この事(こと)を、したので、
すべての家畜(かちく)、野(の)のすべての獣(けもの)のうち、
最(もっと)ものろわれる。
おまえは腹(はら)で、這(は)いあるき、
一生(いっしょう)、ちりを食(た)べるであろう。
15わたしは恨(うら)みをおく、
おまえと女(おんな)とのあいだに、
おまえのすえと女(おんな)のすえとの間(あいだ)に。
彼(かれ)はおまえのかしらを砕(くだ)き、
おまえは彼(かれ)のかかとを砕(くだ)くであろう」。
16つぎに女(おんな)に言(い)われた、
「わたしはあなたの産(う)みの苦(くる)しみを大(おお)いに増(ま)す。
あなたは苦(くる)しんで子(こ)を産(う)む。
それでもなお、あなたは夫(おっと)を慕(した)い、
彼(かれ)はあなたを治(おさ)めるであろう」。
17更(さら)に人(ひと)に言(い)われた、「あなたが妻(つま)の言葉(ことば)を聞(き)いて、食(た)べるなと、わたしが命(めい)じた木(き)から取(と)って食(た)べたので、
地(ち)はあなたのためにのろわれ、
あなたは一生(いっしょう)、苦(くる)しんで地(ち)から食物(しょくもつ)を取(と)る。
18地(ち)はあなたのために、いばらとあざみとを生(しょう)じ、
あなたは野(の)の草(くさ)を食(た)べるであろう。
19あなたは顔(かお)に汗(あせ)してパンを食(た)べ、ついに土(つち)に帰(かえ)る、
あなたは土(つち)から取(と)られたのだから。
あなたは、ちりだから、ちりに帰(かえ)る」。

20さて、人(ひと)はその妻(つま)の名(な)をエバと名(な)づけた。彼女(かのじょ)がすべて生(い)きた者(もの)の母(はは)だからである。 21主(しゅ)なる神(かみ)は人(ひと)とその妻(つま)とのために皮(かわ)の着物(きもの)を造(つく)って、彼(かれ)らに着(き)せられた。

22主(しゅ)なる神(かみ)は言(い)われた、「見(み)よ、人(ひと)はわれわれのひとりのようになり、善悪(ぜんあく)を知(し)るものとなった。彼(かれ)は手(て)を伸(の)べ、命(いのち)の木(き)からも取(と)って食(た)べ、永久(えいきゅう)に生(い)きるかも知(し)れない」。 23そこで主(しゅ)なる神(かみ)は彼(かれ)をエデンの園(その)から追(お)い出(だ)して、人(ひと)が造(つく)られたその土(つち)を耕(たがや)させられた。 24神(かみ)は人(ひと)を追(お)い出(だ)し、エデンの園(その)の東(ひがし)に、ケルビムと、回(まわ)る炎(ほのお)のつるぎとを置(お)いて、命(いのち)の木(き)の道(みち)を守(まも)らせられた。

第四章

1人(ひと)はその妻(つま)エバを知(し)った。彼女(かのじょ)はみごもり、カインを産(う)んで言(い)った、「わたしは主(しゅ)によって、ひとりの人(ひと)を得(え)た」。 2彼女(かのじょ)はまた、その弟(おとうと)アベルを産(う)んだ。アベルは羊(ひつじ)を飼(か)う者(もの)となり、カインは土(つち)を耕(たがや)す者(もの)となった。 3日(ひ)がたって、カインは地(ち)の産物(さんぶつ)を持(も)ってきて、主(しゅ)に供(そな)え物(もの)とした。 4アベルもまた、その群(む)れのういごと肥(こ)えたものとを持(も)ってきた。主(しゅ)はアベルとその供(そな)え物(もの)とを顧(かえり)みられた。 5しかしカインとその供(そな)え物(もの)とは顧(かえり)みられなかったので、カインは大(おお)いに憤(いきどお)って、顔(かお)を伏(ふ)せた。 6そこで主(しゅ)はカインに言(い)われた、「なぜあなたは憤(いきどお)るのですか、なぜ顔(かお)を伏(ふ)せるのですか。 7正(ただ)しい事(こと)をしているのでしたら、顔(かお)をあげたらよいでしょう。もし正(ただ)しい事(こと)をしていないのでしたら、罪(つみ)が門口(かどぐち)に待(ま)ち伏(ぶ)せています。それはあなたを慕(した)い求(もと)めますが、あなたはそれを治(おさ)めなければなりません」。

8カインは弟(おとうと)アベルに言(い)った、「さあ、野原(のはら)へ行(い)こう」。彼(かれ)らが野(の)にいたとき、カインは弟(おとうと)アベルに立(た)ちかかって、これを殺(ころ)した。 9主(しゅ)はカインに言(い)われた、「弟(おとうと)アベルは、どこにいますか」。カインは答(こた)えた、「知(し)りません。わたしが弟(おとうと)の番人(ばんにん)でしょうか」。 10主(しゅ)は言(い)われた、「あなたは何(なに)をしたのです。あなたの弟(おとうと)の血(ち)の声(こえ)が土(つち)の中(なか)からわたしに叫(さけ)んでいます。 11今(いま)あなたはのろわれてこの土地(とち)を離(はな)れなければなりません。この土地(とち)が口(くち)をあけて、あなたの手(て)から弟(おとうと)の血(ち)を受(う)けたからです。 12あなたが土地(とち)を耕(たがや)しても、土地(とち)は、もはやあなたのために実(み)を結(むす)びません。あなたは地上(ちじょう)の放浪者(ほうろうしゃ)となるでしょう」。 13カインは主(しゅ)に言(い)った、「わたしの罰(ばつ)は重(おも)くて負(お)いきれません。 14あなたは、きょう、わたしを地(ち)のおもてから追放(ついほう)されました。わたしはあなたを離(はな)れて、地上(ちじょう)の放浪者(ほうろうしゃ)とならねばなりません。わたしを見付(みつ)ける人(ひと)はだれでもわたしを殺(ころ)すでしょう」。 15主(しゅ)はカインに言(い)われた、「いや、そうではない。だれでもカインを殺(ころ)す者(もの)は七倍(ばい)の復讐(ふくしゅう)を受(う)けるでしょう」。そして主(しゅ)はカインを見付(みつ)ける者(もの)が、だれも彼(かれ)を打(う)ち殺(ころ)すことのないように、彼(かれ)に一つのしるしをつけられた。 16カインは主(しゅ)の前(まえ)を去(さ)って、エデンの東(ひがし)、ノドの地(ち)に住(す)んだ。

17カインはその妻(つま)を知(し)った。彼女(かのじょ)はみごもってエノクを産(う)んだ。カインは町(まち)を建(た)て、その町(まち)の名(な)をその子(こ)の名(な)にしたがって、エノクと名(な)づけた。 18エノクにはイラデが生(うま)れた。イラデの子(こ)はメホヤエル、メホヤエルの子(こ)はメトサエル、メトサエルの子(こ)はレメクである。 19レメクはふたりの妻(つま)をめとった。ひとりの名(な)はアダといい、ひとりの名(な)はチラといった。 20アダはヤバルを産(う)んだ。彼(かれ)は天幕(てんまく)に住(す)んで、家畜(かちく)を飼(か)う者(もの)の先祖(せんぞ)となった。 21その弟(おとうと)の名(な)はユバルといった。彼(かれ)は琴(こと)や笛(ふえ)を執(と)るすべての者(もの)の先祖(せんぞ)となった。 22チラもまたトバルカインを産(う)んだ。彼(かれ)は青銅(せいどう)や鉄(てつ)のすべての刃物(はもの)を鍛(きた)える者(もの)となった。トバルカインの妹(いもうと)をナアマといった。
23レメクはその妻(つま)たちに言(い)った、
「アダとチラよ、わたしの声(こえ)を聞(き)け、
レメクの妻(つま)たちよ、わたしの言葉(ことば)に耳(みみ)を傾(かたむ)けよ。
わたしは受(う)ける傷(きず)のために、人(ひと)を殺(ころ)し、
受(う)ける打(う)ち傷(きず)のために、わたしは若者(わかもの)を殺(ころ)す。
24カインのための復讐(ふくしゅう)が七倍(ばい)ならば、
レメクのための復讐(ふくしゅう)は七十七倍(ばい)」。

25アダムはまたその妻(つま)を知(し)った。彼女(かのじょ)は男(おとこ)の子(こ)を産(う)み、その名(な)をセツと名(な)づけて言(い)った、「カインがアベルを殺(ころ)したので、神(かみ)はアベルの代(かわ)りに、ひとりの子(こ)をわたしに授(さづ)けられました」。 26セツにもまた男(おとこ)の子(こ)が生(うま)れた。彼(かれ)はその名(な)をエノスと名(な)づけた。この時(とき)、人々(ひとびと)は主(しゅ)の名(な)を呼(よ)び始(はじ)めた。

第五章

1アダムの系図(けいず)は次(つぎ)のとおりである。神(かみ)が人(ひと)を創造(そうぞう)された時(とき)、神(かみ)をかたどって造(つく)り、 2彼(かれ)らを男(おとこ)と女(おんな)とに創造(そうぞう)された。彼(かれ)らが創造(そうぞう)された時(とき)、神(かみ)は彼(かれ)らを祝福(しゅくふく)して、その名(な)をアダムと名(な)づけられた。 3アダムは百三十歳(さい)になって、自分(じぶん)にかたどり、自分(じぶん)のかたちのような男(おとこ)の子(こ)を生(う)み、その名(な)をセツと名(な)づけた。 4アダムがセツを生(う)んで後(のち)、生(い)きた年(とし)は八百年(ねん)であって、ほかに男子(だんし)と女子(じょし)を生(う)んだ。 5アダムの生(い)きた年(とし)は合(あ)わせて九百三十歳(さい)であった。そして彼(かれ)は死(し)んだ。

6セツは百五歳(さい)になって、エノスを生(う)んだ。 7セツはエノスを生(う)んだ後(のち)、八百七年(ねん)生(い)きて、男子(だんし)と女子(じょし)を生(う)んだ。 8セツの年(とし)は合(あ)わせて九百十二歳(さい)であった。そして彼(かれ)は死(し)んだ。

9エノスは九十歳(さい)になって、カイナンを生(う)んだ。 10エノスはカイナンを生(う)んだ後(のち)、八百十五年(ねん)生(い)きて、男子(だんし)と女子(じょし)を生(う)んだ。 11エノスの年(とし)は合(あ)わせて九百五歳(さい)であった。そして彼(かれ)は死(し)んだ。

12カイナンは七十歳(さい)になって、マハラレルを生(う)んだ。 13カイナンはマハラレルを生(う)んだ後(のち)、八百四十年(ねん)生(い)きて、男子(だんし)と女子(じょし)を生(う)んだ。 14カイナンの年(とし)は合(あ)わせて九百十歳(さい)であった。そして彼(かれ)は死(し)んだ。

15マハラレルは六十五歳(さい)になって、ヤレドを生(う)んだ。 16マハラレルはヤレドを生(う)んだ後(のち)、八百三十年(ねん)生(い)きて、男子(だんし)と女子(じょし)を生(う)んだ。 17マハラレルの年(とし)は合(あ)わせて八百九十五歳(さい)であった。そして彼(かれ)は死(し)んだ。 18ヤレドは百六十二歳(さい)になって、エノクを生(う)んだ。 19ヤレドはエノクを生(う)んだ後(のち)、八百年(ねん)生(い)きて、男子(だんし)と女子(じょし)を生(う)んだ。 20ヤレドの年(とし)は合(あ)わせて九百六十二歳(さい)であった。そして彼(かれ)は死(し)んだ。

21エノクは六十五歳(さい)になって、メトセラを生(う)んだ。 22エノクはメトセラを生(う)んだ後(のち)、三百年(ねん)、神(かみ)とともに歩(あゆ)み、男子(だんし)と女子(じょし)を生(う)んだ。 23エノクの年(とし)は合(あ)わせて三百六十五歳(さい)であった。 24エノクは神(かみ)とともに歩(あゆ)み、神(かみ)が彼(かれ)を取(と)られたので、いなくなった。

25メトセラは百八十七歳(さい)になって、レメクを生(う)んだ。 26メトセラはレメクを生(う)んだ後(のち)、七百八十二年(ねん)生(い)きて、男子(だんし)と女子(じょし)を生(う)んだ。 27メトセラの年(とし)は合(あ)わせて九百六十九歳(さい)であった。そして彼(かれ)は死(し)んだ。

28レメクは百八十二歳(さい)になって、男(おとこ)の子(こ)を生(う)み、 29「この子(こ)こそ、主(しゅ)が地(ち)をのろわれたため、骨折(ほねお)り働(はたら)くわれわれを慰(なぐさ)めるもの」と言(い)って、その名(な)をノアと名(な)づけた。 30レメクはノアを生(う)んだ後(のち)、五百九十五年(ねん)生(い)きて、男子(だんし)と女子(じょし)を生(う)んだ。 31レメクの年(とし)は合(あ)わせて七百七十七歳(さい)であった。そして彼(かれ)は死(し)んだ。

32ノアは五百歳(さい)になって、セム、ハム、ヤペテを生(う)んだ。

第六章

1人(ひと)が地(ち)のおもてにふえ始(はじ)めて、娘(むすめ)たちが彼(かれ)らに生(うま)れた時(とき)、 2神(かみ)の子(こ)たちは人(ひと)の娘(むすめ)たちの美(うつく)しいのを見(み)て、自分(じぶん)の好(この)む者(もの)を妻(つま)にめとった。 3そこで主(しゅ)は言(い)われた、「わたしの霊(れい)はながく人(ひと)の中(なか)にとどまらない。彼(かれ)は肉(にく)にすぎないのだ。しかし、彼(かれ)の年(とし)は百二十年(ねん)であろう」。 4そのころ、またその後(のち)にも、地(ち)にネピリムがいた。これは神(かみ)の子(こ)たちが人(ひと)の娘(むすめ)たちのところにはいって、娘(むすめ)たちに産(う)ませたものである。彼(かれ)らは昔(むかし)の勇士(ゆうし)であり、有名(ゆうめい)な人々(ひとびと)であった。

5主(しゅ)は人(ひと)の悪(あく)が地(ち)にはびこり、すべてその心(こころ)に思(おも)いはかることが、いつも悪(わる)い事(こと)ばかりであるのを見(み)られた。 6主(しゅ)は地(ち)の上(うえ)に人(ひと)を造(つく)ったのを悔(く)いて、心(こころ)を痛(いた)め、 7「わたしが創造(そうぞう)した人(ひと)を地(ち)のおもてからぬぐい去(さ)ろう。人(ひと)も獣(けもの)も、這(は)うものも、空(そら)の鳥(とり)までも。わたしは、これらを造(つく)ったことを悔(く)いる」と言(い)われた。 8しかし、ノアは主(しゅ)の前(まえ)に恵(めぐ)みを得(え)た。

9ノアの系図(けいず)は次(つぎ)のとおりである。ノアはその時代(じだい)の人々(ひとびと)の中(なか)で正(ただ)しく、かつ全(まった)き人(ひと)であった。ノアは神(かみ)とともに歩(あゆ)んだ。 10ノアはセム、ハム、ヤペテの三人(にん)の子(こ)を生(う)んだ。

11時(とき)に世(よ)は神(かみ)の前(まえ)に乱(みだ)れて、暴虐(ぼうぎゃく)が地(ち)に満(み)ちた。 12神(かみ)が地(ち)を見(み)られると、それは乱(みだ)れていた。すべての人(ひと)が地(ち)の上(うえ)でその道(みち)を乱(みだ)したからである。 13そこで神(かみ)はノアに言(い)われた、「わたしは、すべての人(ひと)を絶(た)やそうと決心(けっしん)した。彼(かれ)らは地(ち)を暴虐(ぼうぎゃく)で満(み)たしたから、わたしは彼(かれ)らを地(ち)とともに滅(ほろ)ぼそう。 14あなたは、いとすぎの木(き)で箱舟(はこぶね)を造(つく)り、箱舟(はこぶね)の中(なか)にへやを設(もう)け、アスファルトでそのうちそとを塗(ぬ)りなさい。 15その造(つく)り方(かた)は次(つぎ)のとおりである。すなわち箱舟(はこぶね)の長(なが)さは三百キュビト、幅(はば)は五十キュビト、高(たか)さは三十キュビトとし、 16箱舟(はこぶね)に屋根(やね)を造(つく)り、上(うえ)へ一キュビトにそれを仕上(しあ)げ、また箱舟(はこぶね)の戸口(とぐち)をその横(よこ)に設(もう)けて、一階(かい)と二階(かい)と三階(かい)のある箱舟(はこぶね)を造(つく)りなさい。 17わたしは地(ち)の上(うえ)に洪水(こうずい)を送(おく)って、命(いのち)の息(いき)のある肉(にく)なるものを、みな天(てん)の下(した)から滅(ほろ)ぼし去(さ)る。地(ち)にあるものは、みな死(し)に絶(た)えるであろう。 18ただし、わたしはあなたと契約(けいやく)を結ぼ(むすぼ)う。あなたは子(こ)らと、妻(つま)と、子(こ)らの妻(つま)たちと共(とも)に箱舟(はこぶね)にはいりなさい。 19またすべての生(い)き物(もの)、すべての肉(にく)なるものの中(なか)から、それぞれ二つずつを箱舟(はこぶね)に入(い)れて、あなたと共(とも)にその命(いのち)を保(たも)たせなさい。それらは雄(おす)と雌(めす)とでなければならない。 20すなわち、鳥(とり)はその種類(しゅるい)にしたがい獣(けもの)はその種類(しゅるい)にしたがい、また地(ち)のすべての這(は)うものも、その種類(しゅるい)にしたがって、それぞれ二つずつ、あなたのところに入(い)れて、命(いのち)を保(たも)たせなさい。 21また、すべての食物(しょくもつ)となるものをとって、あなたのところにたくわえ、あなたとこれらのものとの食物(しょくもつ)としなさい」。 22ノアはすべて神(かみ)の命(めい)じられたようにした。

第七章

1主(しゅ)はノアに言(い)われた、「あなたと家族(かぞく)とはみな箱舟(はこぶね)にはいりなさい。あなたがこの時代(じだい)の人々(ひとびと)の中(なか)で、わたしの前(まえ)に正(ただ)しい人(ひと)であるとわたしは認(みと)めたからである。 2あなたはすべての清(きよ)い獣(けもの)の中(なか)から雄(おす)と雌(めす)とを七つずつ取(と)り、清(きよ)くない獣(けもの)の中(なか)から雄(おす)と雌(めす)とを二つずつ取(と)り、 3また空(そら)の鳥(とり)の中(なか)から雄(おす)と雌(めす)とを七つずつ取(と)って、その種類(しゅるい)が全(ぜん)地(ち)のおもてに生(い)き残(のこ)るようにしなさい。 4七日(なぬか)の後(のち)、わたしは四十日(にち)四十夜(や)、地(ち)に雨(あめ)を降(ふ)らせて、わたしの造(つく)ったすべての生(い)き物(もの)を、地(ち)のおもてからぬぐい去(さ)ります」。 5ノアはすべて主(しゅ)が命(めい)じられたようにした。

6さて洪水(こうずい)が地(ち)に起(た)った時(とき)、ノアは六百歳(さい)であった。 7ノアは子(こ)らと、妻(つま)と、子(こ)らの妻(つま)たちと共(とも)に洪水(こうずい)を避(さ)けて箱舟(はこぶね)にはいった。 8また清(きよ)い獣(けもの)と、清(きよ)くない獣(けもの)と、鳥(とり)と、地(ち)に這(は)うすべてのものとの、 9雄(おす)と雌(めす)とが、二つずつノアのもとにきて、神(かみ)がノアに命(めい)じられたように箱舟(はこぶね)にはいった。 10こうして七日(なぬか)の後(のち)、洪水(こうずい)が地(ち)に起(た)った。

11それはノアの六百歳(さい)の二月(がつ)十七日(にち)であって、その日(ひ)に大(おお)いなる淵(ふち)の源(みなもと)は、ことごとく破(やぶ)れ、天(てん)の窓(まど)が開(ひら)けて、 12雨(あめ)は四十日(にち)四十夜(や)、地(ち)に降(ふ)り注(そそ)いだ。 13その同(おな)じ日(ひ)に、ノアと、ノアの子(こ)セム、ハム、ヤペテと、ノアの妻(つま)と、その子(こ)らの三人(にん)の妻(つま)とは共(とも)に箱舟(はこぶね)にはいった。 14またすべての種類(しゅるい)の獣(けもの)も、すべての種類(しゅるい)の家畜(かちく)も、地(ち)のすべての種類(しゅるい)の這(は)うものも、すべての種類(しゅるい)の鳥(とり)も、すべての翼(つばさ)あるものも、皆(みな)はいった。 15すなわち命(いのち)の息(いき)のあるすべての肉(にく)なるものが、二つずつノアのもとにきて、箱舟(はこぶね)にはいった。 16そのはいったものは、すべて肉(にく)なるものの雄(おす)と雌(めす)とであって、神(かみ)が彼(かれ)に命(めい)じられたようにはいった。そこで主(しゅ)は彼(かれ)のうしろの戸(と)を閉(と)ざされた。

17洪水(こうずい)は四十日(にち)のあいだ地上(ちじょう)にあった。水(みず)が増(ま)して箱舟(はこぶね)を浮(うか)べたので、箱舟(はこぶね)は地(ち)から高(たか)く上(あ)がった。 18また水(みず)がみなぎり、地(ち)に増(ま)したので、箱舟(はこぶね)は水(みず)のおもてに漂(ただよ)った。 19水(みず)はまた、ますます地(ち)にみなぎり、天(てん)の下(した)の高(たか)い山々(やまやま)は皆(みな)おおわれた。 20水(みず)はその上(うえ)、さらに十五キュビトみなぎって、山々(やまやま)は全(まった)くおおわれた。 21地(ち)の上(うえ)に動(うご)くすべて肉(にく)なるものは、鳥(とり)も家畜(かちく)も獣(けもの)も、地(ち)に群(むら)がるすべての這(は)うものも、すべての人(ひと)もみな滅(ほろ)びた。 22すなわち鼻(はな)に命(いのち)の息(いき)のあるすべてのもの、陸(りく)にいたすべてのものは死(し)んだ。 23地(ち)のおもてにいたすべての生(い)き物(もの)は、人(ひと)も家畜(かちく)も、這(は)うものも、空(そら)の鳥(とり)もみな地(ち)からぬぐい去(さ)られて、ただノアと、彼(かれ)と共(とも)に箱舟(はこぶね)にいたものだけが残(のこ)った。 24水(みず)は百五十日(にち)のあいだ地上(ちじょう)にみなぎった。

第八章

1神(かみ)はノアと、箱舟(はこぶね)の中(なか)にいたすべての生(い)き物(もの)と、すべての家畜(かちく)とを心(こころ)にとめられた。神(かみ)が風(かぜ)を地(ち)の上(うえ)に吹(ふ)かせられたので、水(みず)は退(しりぞ)いた。 2また淵(ふち)の源(みなもと)と、天(てん)の窓(まど)とは閉(と)ざされて、天(てん)から雨(あめ)が降(ふ)らなくなった。 3それで水(みず)はしだいに地(ち)の上(うえ)から引(ひ)いて、百五十日(にち)の後(のち)には水(みず)が減(へ)り、 4箱舟(はこぶね)は七月(がつ)十七日(にち)にアララテの山(やま)にとどまった。 5水(みず)はしだいに減(へ)って、十月(がつ)になり、十月(がつ)一日(にち)に山々(やまやま)の頂(いただき)が現(あらわ)れた。

6四十日(にち)たって、ノアはその造(つく)った箱舟(はこぶね)の窓(まど)を開(ひら)いて、 7からすを放(はな)ったところ、からすは地(ち)の上(うえ)から水(みず)がかわききるまで、あちらこちらへ飛(と)びまわった。 8ノアはまた地(ち)のおもてから、水(みず)がひいたかどうかを見(み)ようと、彼(かれ)の所(ところ)から、はとを放(はな)ったが、 9はとは足(あし)の裏(うら)をとどめる所(ところ)が見(み)つからなかったので、箱舟(はこぶね)のノアのもとに帰(かえ)ってきた。水(みず)がまだ全(ぜん)地(ち)のおもてにあったからである。彼(かれ)は手(て)を伸(の)べて、これを捕(とら)え、箱舟(はこぶね)の中(なか)の彼(かれ)のもとに引(ひ)き入(い)れた。 10それから七日(なぬか)待(ま)って再(ふたた)びはとを箱舟(はこぶね)から放(はな)った。 11はとは夕方(ゆうがた)になって彼(かれ)のもとに帰(かえ)ってきた。見(み)ると、そのくちばしには、オリブの若葉(わかば)があった。ノアは地(ち)から水(みず)がひいたのを知(し)った。 12さらに七日(なぬか)待(ま)ってまた、はとを放(はな)ったところ、もはや彼(かれ)のもとには帰(かえ)ってこなかった。

13六百一歳(さい)の一月(がつ)一日(にち)になって、地(ち)の上(うえ)の水(みず)はかれた。ノアが箱舟(はこぶね)のおおいを取(と)り除(のぞ)いて見(み)ると、土(つち)のおもては、かわいていた。 14二月(がつ)二十七日(にち)になって、地(ち)は全(まった)くかわいた。 15この時(とき)、神(かみ)はノアに言(い)われた、 16「あなたは妻(つま)と、子(こ)らと、子(こ)らの妻(つま)たちと共(とも)に箱舟(はこぶね)を出(で)なさい。 17あなたは、共(とも)にいる肉(にく)なるすべての生(い)き物(もの)、すなわち鳥(とり)と家畜(かちく)と、地(ち)のすべての這(は)うものとを連(つ)れて出(で)て、これらのものが地(ち)に群(むら)がり、地(ち)の上(うえ)にふえ広(ひろ)がるようにしなさい」。 18ノアは共(とも)にいた子(こ)らと、妻(つま)と、子(こ)らの妻(つま)たちとを連(つ)れて出(で)た。 19またすべての獣(けもの)、すべての這(は)うもの、すべての鳥(とり)、すべて地(ち)の上(うえ)に動(うご)くものは皆(みな)、種類(しゅるい)にしたがって箱舟(はこぶね)を出(で)た。

20ノアは主(しゅ)に祭壇(さいだん)を築(きず)いて、すべての清(きよ)い獣(けもの)と、すべての清(きよ)い鳥(とり)とのうちから取(と)って、燔祭(はんさい)を祭壇(さいだん)の上(うえ)にささげた。 21主(しゅ)はその香(こう)ばしいかおりをかいで、心(こころ)に言(い)われた、「わたしはもはや二度(ど)と人(ひと)のゆえに地(ち)をのろわない。人(ひと)が心(こころ)に思(おも)い図(はか)ることは、幼(おさな)い時(とき)から悪(わる)いからである。わたしは、このたびしたように、もう二度(ど)と、すべての生(い)きたものを滅(ほろ)ぼさない。 22地(ち)のある限(かぎ)り、種(たね)まきの時(とき)も、刈入(かりい)れの時(とき)も、暑(あつ)さ寒(さむ)さも、夏(なつ)冬(ふゆ)も、昼(ひる)も夜(よる)もやむことはないであろう」。

第九章

1神(かみ)はノアとその子(こ)らとを祝福(しゅくふく)して彼(かれ)らに言(い)われた、「生(う)めよ、ふえよ、地(ち)に満(み)ちよ。 2地(ち)のすべての獣(けもの)、空(そら)のすべての鳥(とり)、地(ち)に這(は)うすべてのもの、海(うみ)のすべての魚(うお)は恐(おそ)れおののいて、あなたがたの支配(しはい)に服(ふく)し、 3すべて生(い)きて動(うご)くものはあなたがたの食物(しょくもつ)となるであろう。さきに青草(あおくさ)をあなたがたに与(あた)えたように、わたしはこれらのものを皆(みな)あなたがたに与(あた)える。 4しかし肉(にく)を、その命(いのち)である血(ち)のままで、食(た)べてはならない。 5あなたがたの命(いのち)の血(ち)を流(なが)すものには、わたしは必(かなら)ず報復(ほうふく)するであろう。いかなる獣(けもの)にも報復(ほうふく)する。兄弟(きょうだい)である人(ひと)にも、わたしは人(ひと)の命(いのち)のために、報復(ほうふく)するであろう。
6人(ひと)の血(ち)を流(なが)すものは、人(ひと)に血(ち)を流(なが)される、
神(かみ)が自分(じぶん)のかたちに人(ひと)を造(つく)られたゆえに。
7あなたがたは、生(う)めよ、ふえよ、
地(ち)に群(むら)がり、地(ち)の上(うえ)にふえよ」。

8神(かみ)はノアおよび共(とも)にいる子(こ)らに言(い)われた、 9「わたしはあなたがた及(およ)びあなたがたの後(のち)の子孫(しそん)と契約(けいやく)を立(た)てる。 10またあなたがたと共(とも)にいるすべての生(い)き物(もの)、あなたがたと共(とも)にいる鳥(とり)、家畜(かちく)、地(ち)のすべての獣(けもの)、すなわち、すべて箱舟(はこぶね)から出(で)たものは、地(ち)のすべての獣(けもの)にいたるまで、わたしはそれと契約(けいやく)を立(た)てよう。 11わたしがあなたがたと立(た)てるこの契約(けいやく)により、すべて肉(にく)なる者(もの)は、もはや洪水(こうずい)によって滅(ほろ)ぼされることはなく、また地(ち)を滅(ほろ)ぼす洪水(こうずい)は、再(ふたた)び起(おこ)らないであろう」。 12さらに神(かみ)は言(い)われた、「これはわたしと、あなたがた及(およ)びあなたがたと共(とも)にいるすべての生(い)き物(もの)との間(あいだ)に代々(よよ)かぎりなく、わたしが立(た)てる契約(けいやく)のしるしである。 13すなわち、わたしは雲(くも)の中(なか)に、にじを置(お)く。これがわたしと地(ち)との間(あいだ)の契約(けいやく)のしるしとなる。 14わたしが雲(くも)を地(ち)の上(うえ)に起(おこ)すとき、にじは雲(くも)の中(なか)に現(あらわ)れる。 15こうして、わたしは、わたしとあなたがた、及(およ)びすべて肉(にく)なるあらゆる生(い)き物(もの)との間(あいだ)に立(た)てた契約(けいやく)を思(おも)いおこすゆえ、水(みず)はふたたび、すべて肉(にく)なる者(もの)を滅(ほろ)ぼす洪水(こうずい)とはならない。 16にじが雲(くも)の中(なか)に現(あらわ)れるとき、わたしはこれを見(み)て、神(かみ)が地上(ちじょう)にあるすべて肉(にく)なるあらゆる生(い)き物(もの)との間(あいだ)に立(た)てた永遠(えいえん)の契約(けいやく)を思(おも)いおこすであろう」。 17そして神(かみ)はノアに言(い)われた、「これがわたしと地(ち)にあるすべて肉(にく)なるものとの間(あいだ)に、わたしが立(た)てた契約(けいやく)のしるしである」。

18箱舟(はこぶね)から出(で)たノアの子(こ)らはセム、ハム、ヤペテであった。ハムはカナンの父(ちち)である。 19この三人(にん)はノアの子(こ)らで、全(ぜん)地(ち)の民(たみ)は彼(かれ)らから出(で)て、広(ひろ)がったのである。

20さてノアは農夫(のうふ)となり、ぶどう畑(はたけ)をつくり始(はじ)めたが、 21彼(かれ)はぶどう酒(しゅ)を飲(の)んで酔(よ)い、天幕(てんまく)の中(なか)で裸(はだか)になっていた。 22カナンの父(ちち)ハムは父(ちち)の裸(はだか)を見(み)て、外(そと)にいるふたりの兄弟(きょうだい)に告(つ)げた。 23セムとヤペテとは着物(きもの)を取(と)って、肩(かた)にかけ、うしろ向(む)きに歩(あゆ)み寄(よ)って、父(ちち)の裸(はだか)をおおい、顔(かお)をそむけて父(ちち)の裸(はだか)を見(み)なかった。 24やがてノアは酔(よ)いがさめて、末(すえ)の子(こ)が彼(かれ)にした事(こと)を知(し)ったとき、 25彼(かれ)は言(い)った、
「カナンはのろわれよ。
彼(かれ)はしもべのしもべとなって、
その兄弟(きょうだい)たちに仕(つか)える」。
26また言(い)った、
「セムの神(かみ)、主(しゅ)はほむべきかな、
カナンはそのしもべとなれ。
27神(かみ)はヤペテを大(おお)いならしめ、
セムの天幕(てんまく)に彼(かれ)を住(す)まわせられるように。
カナンはそのしもべとなれ」。

28ノアは洪水(こうずい)の後(のち)、なお三百五十年(ねん)生(い)きた。 29ノアの年(とし)は合(あ)わせて九百五十歳(さい)であった。そして彼(かれ)は死(し)んだ。

第一〇章

1ノアの子(こ)セム、ハム、ヤペテの系図(けいず)は次(つぎ)のとおりである。洪水(こうずい)の後(のち)、彼(かれ)らに子(こ)が生(うま)れた。 2ヤペテの子孫(しそん)はゴメル、マゴグ、マダイ、ヤワン、トバル、メセク、テラスであった。   3ゴメルの子孫(しそん)はアシケナズ、リパテ、トガルマ。 4ヤワンの子孫(しそん)はエリシャ、タルシシ、キッテム、ドダニムであった。 5これらから海沿(うみぞ)いの地(ち)の国民(こくみん)が分(わか)れて、おのおのその土地(とち)におり、その言語(げんご)にしたがい、その氏族(しぞく)にしたがって、その国々(くにぐに)に住(す)んだ。

6ハムの子孫(しそん)はクシ、ミツライム、プテ、カナンであった。 7クシの子孫(しそん)はセバ、ハビラ、サブタ、ラアマ、サブテカであり、ラアマの子孫(しそん)はシバとデダンであった。 8クシの子(こ)はニムロデであって、このニムロデは世(よ)の権力者(けんりょくしゃ)となった最初(さいしょ)の人(ひと)である。 9彼(かれ)は主(しゅ)の前(まえ)に力(ちから)ある狩猟者(しゅりょうしゃ)であった。これから「主(しゅ)の前(まえ)に力(ちから)ある狩猟者(しゅりょうしゃ)ニムロデのごとし」ということわざが起(た)った。 10彼(かれ)の国(くに)は最初(さいしょ)シナルの地(ち)にあるバベル、エレク、アカデ、カルネであった。 11彼(かれ)はその地(ち)からアッスリヤに出(で)て、ニネベ、レホボテイリ、カラ、 12およびニネベとカラとの間(あいだ)にある大(おお)いなる町(まち)レセンを建(た)てた。 13ミツライムからルデ族(ぞく)、アナミ族(ぞく)、レハビ族(ぞく)、ナフト族(ぞく)、 14パテロス族(ぞく)、カスル族(ぞく)、カフトリ族(ぞく)が出(で)た。カフトリ族(ぞく)からペリシテ族(ぞく)が出(で)た。

15カナンからその長子(ちょうし)シドンが出(で)て、またヘテが出(で)た。 16その他(た)エブスびと、アモリびと、ギルガシびと、 17ヒビびと、アルキびと、セニびと、 18アルワデびと、ゼマリびと、ハマテびとが出(で)た。後(のち)になってカナンびとの氏族(しぞく)がひろがった。 19カナンびとの境(さかい)はシドンからゲラルを経(へ)てガザに至(いた)り、ソドム、ゴモラ、アデマ、ゼボイムを経(へ)て、レシャに及(およ)んだ。 20これらはハムの子孫(しそん)であって、その氏族(しぞく)とその言語(げんご)とにしたがって、その土地(とち)と、その国々(くにぐに)にいた。

21セムにも子(こ)が生(うま)れた。セムはエベルのすべての子孫(しそん)の先祖(せんぞ)であって、ヤペテの兄(あに)であった。 22セムの子孫(しそん)はエラム、アシュル、アルパクサデ、ルデ、アラムであった。 23アラムの子孫(しそん)はウヅ、ホル、ゲテル、マシであった。 24アルパクサデの子(こ)はシラ、シラの子(こ)はエベルである。 25エベルにふたりの子(こ)が生(うま)れた。そのひとりの名(な)をペレグといった。これは彼(かれ)の代(よ)に地(ち)の民(たみ)が分(わか)れたからである。その弟(おとうと)の名(な)をヨクタンといった。 26ヨクタンにアルモダデ、シャレフ、ハザルマウテ、エラ、 27ハドラム、ウザル、デクラ、 28オバル、アビマエル、シバ、 29オフル、ハビラ、ヨバブが生(うま)れた。これらは皆(みな)ヨクタンの子(こ)であった。 30彼(かれ)らが住(す)んだ所(ところ)はメシャから東(ひがし)の山地(さんち)セパルに及(およ)んだ。 31これらはセムの子孫(しそん)であって、その氏族(しぞく)とその言語(げんご)とにしたがって、その土地(とち)と、その国々(くにぐに)にいた。

32これらはノアの子(こ)らの氏族(しぞく)であって、血統(けっとう)にしたがって国々(くにぐに)に住(す)んでいたが、洪水(こうずい)の後(のち)、これらから地上(ちじょう)の諸(しょ)国民(こくみん)が分(わか)れたのである。

第一一章

1全(ぜん)地(ち)は同(おな)じ発音(はつおん)、同(おな)じ言葉(ことば)であった。 2時(とき)に人々(ひとびと)は東(ひがし)に移(うつ)り、シナルの地(ち)に平野(へいや)を得(え)て、そこに住(す)んだ。 3彼(かれ)らは互(たがい)に言(い)った、「さあ、れんがを造(つく)って、よく焼(や)こう」。こうして彼(かれ)らは石(いし)の代(かわ)りに、れんがを得(え)、しっくいの代(かわ)りに、アスファルトを得(え)た。 4彼(かれ)らはまた言(い)った、「さあ、町(まち)と塔(とう)とを建(た)てて、その頂(いただき)を天(てん)に届(とど)かせよう。そしてわれわれは名(な)を上(あ)げて、全(ぜん)地(ち)のおもてに散(ち)るのを免(まぬか)れよう」。 5時(とき)に主(しゅ)は下(くだ)って、人(ひと)の子(こ)たちの建(た)てる町(まち)と塔(とう)とを見(み)て、 6言(い)われた、「民(たみ)は一つで、みな同(おな)じ言葉(ことば)である。彼(かれ)らはすでにこの事(こと)をしはじめた。彼(かれ)らがしようとする事(こと)は、もはや何事(なにごと)もとどめ得(え)ないであろう。 7さあ、われわれは下(くだ)って行(い)って、そこで彼(かれ)らの言葉(ことば)を乱(みだ)し、互(たがい)に言葉(ことば)が通(つう)じないようにしよう」。 8こうして主(しゅ)が彼(かれ)らをそこから全(ぜん)地(ち)のおもてに散(ち)らされたので、彼(かれ)らは町(まち)を建(た)てるのをやめた。 9これによってその町(まち)の名(な)はバベルと呼(よ)ばれた。主(しゅ)がそこで全(ぜん)地(ち)の言葉(ことば)を乱(みだ)されたからである。主(しゅ)はそこから彼(かれ)らを全(ぜん)地(ち)のおもてに散(ち)らされた。

10セムの系図(けいず)は次(つぎ)のとおりである。セムは百歳(さい)になって洪水(こうずい)の二年(ねん)の後(のち)にアルパクサデを生(う)んだ。 11セムはアルパクサデを生(う)んで後(のち)、五百年(ねん)生(い)きて、男子(だんし)と女子(じょし)を生(う)んだ。

12アルパクサデは三十五歳(さい)になってシラを生(う)んだ。 13アルパクサデはシラを生(う)んで後(のち)、四百三年(ねん)生(い)きて、男子(だんし)と女子(じょし)を生(う)んだ。

14シラは三十歳(さい)になってエベルを生(う)んだ。 15シラはエベルを生(う)んで後(のち)、四百三年(ねん)生(い)きて、男子(だんし)と女子(じょし)を生(う)んだ。

16エベルは三十四歳(さい)になってペレグを生(う)んだ。 17エベルはペレグを生(う)んで後(のち)、四百三十年(ねん)生(い)きて、男子(だんし)と女子(じょし)を生(う)んだ。

18ペレグは三十歳(さい)になってリウを生(う)んだ。 19ペレグはリウを生(う)んで後(のち)、二百九年(ねん)生(い)きて、男子(だんし)と女子(じょし)を生(う)んだ。

20リウは三十二歳(さい)になってセルグを生(う)んだ。 21リウはセルグを生(う)んで後(のち)、二百七年(ねん)生(い)きて、男子(だんし)と女子(じょし)を生(う)んだ。

22セルグは三十歳(さい)になってナホルを生(う)んだ。 23セルグはナホルを生(う)んで後(のち)、二百年(ねん)生(い)きて、男子(だんし)と女子(じょし)を生(う)んだ。

24ナホルは二十九歳(さい)になってテラを生(う)んだ。 25ナホルはテラを生(う)んで後(のち)、百十九年(ねん)生(い)きて、男子(だんし)と女子(じょし)を生(う)んだ。

26テラは七十歳(さい)になってアブラム、ナホルおよびハランを生(う)んだ。

27テラの系図(けいず)は次(つぎ)のとおりである。テラはアブラム、ナホルおよびハランを生(う)み、ハランはロトを生(う)んだ。 28ハランは父(ちち)テラにさきだって、その生(うま)れた地(ち)、カルデヤのウルで死(し)んだ。 29アブラムとナホルは妻(つま)をめとった。アブラムの妻(つま)の名(な)はサライといい、ナホルの妻(つま)の名(な)はミルカといってハランの娘(むすめ)である。ハランはミルカの父(ちち)、またイスカの父(ちち)である。 30サライはうまずめで、子(こ)がなかった。

31テラはその子(こ)アブラムと、ハランの子(こ)である孫(まご)ロトと、子(こ)アブラムの妻(つま)である嫁(よめ)サライとを連(つ)れて、カナンの地(ち)へ行(い)こうとカルデヤのウルを出(で)たが、ハランに着(つ)いてそこに住(す)んだ。 32テラの年(とし)は二百五歳(さい)であった。テラはハランで死(し)んだ。

第一二章

1時(とき)に主(しゅ)はアブラムに言(い)われた、「あなたは国(くに)を出(で)て、親族(しんぞく)に別(わか)れ、父(ちち)の家(いえ)を離(はな)れ、わたしが示(しめ)す地(ち)に行(い)きなさい。 2わたしはあなたを大(おお)いなる国民(こくみん)とし、あなたを祝福(しゅくふく)し、あなたの名(な)を大(おお)きくしよう。あなたは祝福(しゅくふく)の基(もとい)となるであろう。
3あなたを祝福(しゅくふく)する者(もの)をわたしは祝福(しゅくふく)し、
あなたをのろう者(もの)をわたしはのろう。
地(ち)のすべてのやからは、
あなたによって祝福(しゅくふく)される」。

4アブラムは主(しゅ)が言(い)われたようにいで立(た)った。ロトも彼(かれ)と共(とも)に行(い)った。アブラムはハランを出(で)たとき七十五歳(さい)であった。 5アブラムは妻(つま)サライと、弟(おとうと)の子(こ)ロトと、集(あつ)めたすべての財産(ざいさん)と、ハランで獲(え)た人々(ひとびと)とを携(たずさ)えてカナンに行(い)こうとしていで立(た)ち、カナンの地(ち)にきた。 6アブラムはその地(ち)を通(とお)ってシケムの所(ところ)、モレのテレビンの木(き)のもとに着(つ)いた。そのころカナンびとがその地(ち)にいた。 7時(とき)に主(しゅ)はアブラムに現(あらわ)れて言(い)われた、「わたしはあなたの子孫(しそん)にこの地(ち)を与(あた)えます」。アブラムは彼(かれ)に現(あらわ)れた主(しゅ)のために、そこに祭壇(さいだん)を築(きず)いた。 8彼(かれ)はそこからベテルの東(ひがし)の山(やま)に移(うつ)って天幕(てんまく)を張(は)った。西(にし)にはベテル、東(ひがし)にはアイがあった。そこに彼(かれ)は主(しゅ)のために祭壇(さいだん)を築(きず)いて、主(しゅ)の名(な)を呼(よ)んだ。 9アブラムはなお進(すす)んでネゲブに移(うつ)った。

10さて、その地(ち)にききんがあったのでアブラムはエジプトに寄留(きりゅう)しようと、そこに下(くだ)った。ききんがその地(ち)に激(はげ)しかったからである。 11エジプトにはいろうとして、そこに近(ちか)づいたとき、彼(かれ)は妻(つま)サライに言(い)った、「わたしはあなたが美(うつく)しい女(おんな)であるのを知(し)っています。 12それでエジプトびとがあなたを見(み)る時(とき)、これは彼(かれ)の妻(つま)であると言(い)ってわたしを殺(ころ)し、あなたを生(い)かしておくでしょう。 13どうかあなたは、わたしの妹(いもうと)だと言(い)ってください。そうすればわたしはあなたのおかげで無事(ぶじ)であり、わたしの命(いのち)はあなたによって助(たす)かるでしょう」。 14アブラムがエジプトにはいった時(とき)エジプトびとはこの女(おんな)を見(み)て、たいそう美(うつく)しい人(ひと)であるとし、 15またパロの高官(こうかん)たちも彼女(かのじょ)を見(み)てパロの前(まえ)でほめたので、女(おんな)はパロの家(いえ)に召(め)し入(い)れられた。 16パロは彼女(かのじょ)のゆえにアブラムを厚(あつ)くもてなしたので、アブラムは多(おお)くの羊(ひつじ)、牛(うし)、雌雄(しゆう)のろば、男女(だんじょ)の奴隷(どれい)および、らくだを得(え)た。

17ところで主(しゅ)はアブラムの妻(つま)サライのゆえに、激(はげ)しい疫病(えきびょう)をパロとその家(いえ)に下(くだ)された。 18パロはアブラムを召(め)し寄(よ)せて言(い)った、「あなたはわたしになんという事(こと)をしたのですか。なぜ彼女(かのじょ)が妻(つま)であるのをわたしに告(つ)げなかったのですか。 19あなたはなぜ、彼女(かのじょ)はわたしの妹(いもうと)ですと言(い)ったのですか。わたしは彼女(かのじょ)を妻(つま)にしようとしていました。さあ、あなたの妻(つま)はここにいます。連(つ)れて行(い)ってください」。 20パロは彼(かれ)の事(こと)について人々(ひとびと)に命(めい)じ、彼(かれ)とその妻(つま)およびそのすべての持(も)ち物(もの)を送(おく)り去(さ)らせた。

第一三章

1アブラムは妻(つま)とすべての持(も)ち物(もの)を携(たずさ)え、エジプトを出(で)て、ネゲブに上(のぼ)った。ロトも彼(かれ)と共(とも)に上(のぼ)った。

2アブラムは家畜(かちく)と金銀(きんぎん)に非常(ひじょう)に富(と)んでいた。 3彼(かれ)はネゲブから旅路(たびじ)を進(すす)めてベテルに向(む)かい、ベテルとアイの間(あいだ)の、さきに天幕(てんまく)を張(は)った所(ところ)に行(い)った。 4すなわち彼(かれ)が初(はじ)めに築(きず)いた祭壇(さいだん)の所(ところ)に行(い)き、その所(ところ)でアブラムは主(しゅ)の名(な)を呼(よ)んだ。 5アブラムと共(とも)に行(い)ったロトも羊(ひつじ)、牛(うし)および天幕(てんまく)を持(も)っていた。 6その地(ち)は彼(かれ)らをささえて共(とも)に住(す)ませることができなかった。彼(かれ)らの財産(ざいさん)が多(おお)かったため、共(とも)に住(す)めなかったのである。 7アブラムの家畜(かちく)の牧者(ぼくしゃ)たちとロトの家畜(かちく)の牧者(ぼくしゃ)たちの間(あいだ)に争(あらそ)いがあった。そのころカナンびととペリジびとがその地(ち)に住(す)んでいた。

8アブラムはロトに言(い)った、「わたしたちは身内(みうち)の者(もの)です。わたしとあなたの間(あいだ)にも、わたしの牧者(ぼくしゃ)たちとあなたの牧者(ぼくしゃ)たちの間(あいだ)にも争(あらそ)いがないようにしましょう。 9全(ぜん)地(ち)はあなたの前(まえ)にあるではありませんか。どうかわたしと別(わか)れてください。あなたが左(ひだり)に行(い)けばわたしは右(みぎ)に行(い)きます。あなたが右(みぎ)に行(い)けばわたしは左(ひだり)に行(い)きましょう」。 10ロトが目(め)を上(あ)げてヨルダンの低地(ていち)をあまねく見(み)わたすと、主(しゅ)がソドムとゴモラを滅(ほろ)ぼされる前(まえ)であったから、ゾアルまで主(しゅ)の園(その)のように、またエジプトの地(ち)のように、すみずみまでよく潤(うるお)っていた。 11そこでロトはヨルダンの低地(ていち)をことごとく選(えら)びとって東(ひがし)に移(うつ)った。こうして彼(かれ)らは互(たがい)に別(わか)れた。 12アブラムはカナンの地(ち)に住(す)んだが、ロトは低地(ていち)の町々(まちまち)に住(す)み、天幕(てんまく)をソドムに移(うつ)した。 13ソドムの人々(ひとびと)はわるく、主(しゅ)に対(たい)して、はなはだしい罪(つみ)びとであった。

14ロトがアブラムに別(わか)れた後(のち)に、主(しゅ)はアブラムに言(い)われた、「目(め)をあげてあなたのいる所(ところ)から北(きた)、南(みなみ)、東(ひがし)、西(にし)を見(み)わたしなさい。 15すべてあなたが見(み)わたす地(ち)は、永久(えいきゅう)にあなたとあなたの子孫(しそん)に与(あた)えます。 16わたしはあなたの子孫(しそん)を地(ち)のちりのように多(おお)くします。もし人(ひと)が地(ち)のちりを数(かぞ)えることができるなら、あなたの子孫(しそん)も数(かぞ)えられることができましょう。 17あなたは立(た)って、その地(ち)をたてよこに行(い)き巡(めぐ)りなさい。わたしはそれをあなたに与(あた)えます」。 18アブラムは天幕(てんまく)を移(うつ)してヘブロンにあるマムレのテレビンの木(き)のかたわらに住(す)み、その所(ところ)で主(しゅ)に祭壇(さいだん)を築(きず)いた。

第一四章

1シナルの王(おう)アムラペル、エラサルの王(おう)アリオク、エラムの王(おう)ケダラオメルおよびゴイムの王(おう)テダルの世(よ)に、 2これらの王(おう)はソドムの王(おう)ベラ、ゴモラの王(おう)ビルシャ、アデマの王(おう)シナブ、ゼボイムの王(おう)セメベル、およびベラすなわちゾアルの王(おう)と戦(たたか)った。 3これら五人(にん)の王(おう)はみな同盟(どうめい)してシデムの谷(たに)、すなわち塩(しお)の海(うみ)に向(む)かって行(い)った。 4すなわち彼(かれ)らは十二年(ねん)の間(あいだ)ケダラオメルに仕(つか)えたが、十三年(ねん)目(め)にそむいたので、 5十四年(ねん)目(め)にケダラオメルは彼(かれ)と連合(れんごう)した王(おう)たちと共(とも)にきて、アシタロテ・カルナイムでレパイムびとを、ハムでズジびとを、シャベ・キリアタイムでエミびとを撃(う)ち、 6セイルの山地(さんち)でホリびとを撃(う)って、荒野(あらの)のほとりにあるエル・パランに及(およ)んだ。 7彼(かれ)らは引(ひ)き返(かえ)してエン・ミシパテすなわちカデシへ行(い)って、アマレクびとの国(くに)をことごとく撃(う)ち、またハザゾン・タマルに住(す)むアモリびとをも撃(う)った。 8そこでソドムの王(おう)、ゴモラの王(おう)、アデマの王(おう)、ゼボイムの王(おう)およびベラすなわちゾアルの王(おう)は出(で)てシデムの谷(たに)で彼(かれ)らに向(む)かい、戦(たたか)いの陣(じん)をしいた。 9すなわちエラムの王(おう)ケダラオメル、ゴイムの王(おう)テダル、シナルの王(おう)アムラペル、エラサルの王(おう)アリオクの四人(にん)の王(おう)に対(たい)する五人(にん)の王(おう)であった。 10シデムの谷(たに)にはアスファルトの穴(あな)が多(おお)かったので、ソドムの王(おう)とゴモラの王(おう)は逃(に)げてそこに落(お)ちたが、残(のこ)りの者(もの)は山(やま)にのがれた。 11そこで彼(かれ)らはソドムとゴモラの財産(ざいさん)と食料(しょくりょう)とをことごとく奪(うば)って去(さ)り、 12またソドムに住(す)んでいたアブラムの弟(おとうと)の子(こ)ロトとその財産(ざいさん)を奪(うば)って去(さ)った。

13時(とき)に、ひとりの人(ひと)がのがれてきて、ヘブルびとアブラムに告(つ)げた。この時(とき)アブラムはエシコルの兄弟(きょうだい)、またアネルの兄弟(きょうだい)であるアモリびとマムレのテレビンの木(き)のかたわらに住(す)んでいた。彼(かれ)らはアブラムと同盟(どうめい)していた。 14アブラムは身内(みうち)の者(もの)が捕虜(ほりょ)になったのを聞(き)き、訓練(くんれん)した家(いえ)の子(こ)三百十八人(にん)を引(ひ)き連(つ)れてダンまで追(お)って行(い)き、 15そのしもべたちを分(わ)けて、夜(よる)かれらを攻(せ)め、これを撃(う)ってダマスコの北(きた)、ホバまで彼(かれ)らを追(お)った。 16そして彼(かれ)はすべての財産(ざいさん)を取(と)り返(かえ)し、また身内(みうち)の者(もの)ロトとその財産(ざいさん)および女(おんな)たちと民(たみ)とを取(と)り返(かえ)した。

17アブラムがケダラオメルとその連合(れんごう)の王(おう)たちを撃(う)ち破(やぶ)って帰(かえ)った時(とき)、ソドムの王(おう)はシャベの谷(たに)、すなわち王(おう)の谷(たに)に出(で)て彼(かれ)を迎(むか)えた。 18その時(とき)、サレムの王(おう)メルキゼデクはパンとぶどう酒(しゅ)とを持(も)ってきた。彼(かれ)はいと高(たか)き神(かみ)の祭司(さいし)である。 19彼(かれ)はアブラムを祝福(しゅくふく)して言(い)った、
「願(ねが)わくは天地(てんち)の主(しゅ)なるいと高(たか)き神(かみ)が、
アブラムを祝福(しゅくふく)されるように。
20願(ねが)わくはあなたの敵(てき)をあなたの手(て)に渡(わた)された
いと高(たか)き神(かみ)があがめられるように」。
アブラムは彼(かれ)にすべての物(もの)の十分(ぶん)の一を贈(おく)った。 21時(とき)にソドムの王(おう)はアブラムに言(い)った、「わたしには人(ひと)をください。財産(ざいさん)はあなたが取(と)りなさい」。 22アブラムはソドムの王(おう)に言(い)った、「天地(てんち)の主(しゅ)なるいと高(たか)き神(かみ)、主(しゅ)に手(て)をあげて、わたしは誓(ちか)います。 23わたしは糸(いと)一本(ぽん)でも、くつひも一本(ぽん)でも、あなたのものは何(なに)にも受(う)けません。アブラムを富(と)ませたのはわたしだと、あなたが言(い)わないように。 24ただし若者(わかもの)たちがすでに食(た)べた物(もの)は別(べつ)です。そしてわたしと共(とも)に行(い)った人々(ひとびと)アネルとエシコルとマムレとにはその分(ぶん)を取(と)らせなさい」。

第一五章

1これらの事(こと)の後(のち)、主(しゅ)の言葉(ことば)が幻(まぼろし)のうちにアブラムに臨(のぞ)んだ、
「アブラムよ恐(おそ)れてはならない、
わたしはあなたの盾(たて)である。
あなたの受(う)ける報(むく)いは、
はなはだ大(おお)きいであろう」。
2アブラムは言(い)った、「主(しゅ)なる神(かみ)よ、わたしには子(こ)がなく、わたしの家(いえ)を継(つ)ぐ者(もの)はダマスコのエリエゼルであるのに、あなたはわたしに何(なに)をくださろうとするのですか」。 3アブラムはまた言(い)った、「あなたはわたしに子(こ)を賜(たま)わらないので、わたしの家(いえ)に生(うま)れたしもべが、あとつぎとなるでしょう」。 4この時(とき)、主(しゅ)の言葉(ことば)が彼(かれ)に臨(のぞ)んだ、「この者(もの)はあなたのあとつぎとなるべきではありません。あなたの身(み)から出(で)る者(もの)があとつぎとなるべきです」。 5そして主(しゅ)は彼(かれ)を外(そと)に連(つ)れ出(だ)して言(い)われた、「天(てん)を仰(あお)いで、星(ほし)を数(かぞ)えることができるなら、数(かぞ)えてみなさい」。また彼(かれ)に言(い)われた、「あなたの子孫(しそん)はあのようになるでしょう」。 6アブラムは主(しゅ)を信(しん)じた。主(しゅ)はこれを彼(かれ)の義(ぎ)と認(みと)められた。

7また主(しゅ)は彼(かれ)に言(い)われた、「わたしはこの地(ち)をあなたに与(あた)えて、これを継(つ)がせようと、あなたをカルデヤのウルから導(みちび)き出(だ)した主(しゅ)です」。 8彼(かれ)は言(い)った、「主(しゅ)なる神(かみ)よ、わたしがこれを継(つ)ぐのをどうして知(し)ることができますか」。 9主(しゅ)は彼(かれ)に言(い)われた、「三歳(さい)の雌牛(めうし)と、三歳(さい)の雌(め)やぎと、三歳(さい)の雄羊(おひつじ)と、山(やま)ばとと、家(いえ)ばとのひなとをわたしの所(ところ)に連(つ)れてきなさい」。 10彼(かれ)はこれらをみな連(つ)れてきて、二つに裂(さ)き、裂(さ)いたものを互(たがい)に向(む)かい合(あ)わせて置(お)いた。ただし、鳥(とり)は裂(さ)かなかった。   11荒(あら)い鳥(とり)が死体(したい)の上(うえ)に降(お)りるとき、アブラムはこれを追(お)い払(はら)った。

12日(ひ)の入(い)るころ、アブラムが深(ふか)い眠(ねむ)りにおそわれた時(とき)、大(おお)きな恐(おそ)ろしい暗(くら)やみが彼(かれ)に臨(のぞ)んだ。 13時(とき)に主(しゅ)はアブラムに言(い)われた、「あなたはよく心(こころ)にとめておきなさい。あなたの子孫(しそん)は他(た)の国(くに)に旅(たび)びととなって、その人々(ひとびと)に仕(つか)え、その人々(ひとびと)は彼(かれ)らを四百年(ねん)の間(あいだ)、悩(なや)ますでしょう。 14しかし、わたしは彼(かれ)らが仕(つか)えたその国民(こくみん)をさばきます。その後(のち)かれらは多(おお)くの財産(ざいさん)を携(たずさ)えて出(で)て来(く)るでしょう。 15あなたは安(やす)らかに先祖(せんぞ)のもとに行(い)きます。そして高齢(こうれい)に達(たっ)して葬(ほうむ)られるでしょう。 16四代(だい)目(め)になって彼(かれ)らはここに帰(かえ)って来(く)るでしょう。アモリびとの悪(あく)がまだ満(み)ちないからです」。

17やがて日(ひ)は入(い)り、暗(くら)やみになった時(とき)、煙(けむり)の立(た)つかまど、炎(ほのお)の出(で)るたいまつが、裂(さ)いたものの間(あいだ)を通(とお)り過(す)ぎた。 18その日(ひ)、主(しゅ)はアブラムと契約(けいやく)を結(むす)んで言(い)われた、
「わたしはこの地(ち)をあなたの子孫(しそん)に与(あた)える。
エジプトの川(かわ)から、かの大川(おおかわ)ユフラテまで。
19すなわちケニびと、ケニジびと、カドモニびと、 20ヘテびと、ペリジびと、レパイムびと、 21アモリびと、カナンびと、ギルガシびと、エブスびとの地(ち)を与(あた)える」。

第一六章

1アブラムの妻(つま)サライは子(こ)を産(う)まなかった。彼女(かのじょ)にひとりのつかえめがあった。エジプトの女(おんな)で名(な)をハガルといった。 2サライはアブラムに言(い)った、「主(しゅ)はわたしに子(こ)をお授(さづ)けになりません。どうぞ、わたしのつかえめの所(ところ)におはいりください。彼女(かのじょ)によってわたしは子(こ)をもつことになるでしょう」。アブラムはサライの言葉(ことば)を聞(き)きいれた。 3アブラムの妻(つま)サライはそのつかえめエジプトの女(おんな)ハガルをとって、夫(おっと)アブラムに妻(つま)として与(あた)えた。これはアブラムがカナンの地(ち)に十年(ねん)住(す)んだ後(のち)であった。 4彼(かれ)はハガルの所(ところ)にはいり、ハガルは子(こ)をはらんだ。彼女(かのじょ)は自分(じぶん)のはらんだのを見(み)て、女(おんな)主人(しゅじん)を見下(みさ)げるようになった。 5そこでサライはアブラムに言(い)った、「わたしが受(う)けた害(がい)はあなたの責任(せきにん)です。わたしのつかえめをあなたのふところに与(あた)えたのに、彼女(かのじょ)は自分(じぶん)のはらんだのを見(み)て、わたしを見下(み)さげます。どうか、主(しゅ)があなたとわたしの間(あいだ)をおさばきになるように」。 6アブラムはサライに言(い)った、「あなたのつかえめはあなたの手(て)のうちにある。あなたの好(す)きなように彼女(かのじょ)にしなさい」。そしてサライが彼女(かのじょ)を苦(くる)しめたので、彼女(かのじょ)はサライの顔(かお)を避(さ)けて逃(に)げた。

7主(しゅ)の使(つかい)は荒野(あらの)にある泉(いずみ)のほとり、すなわちシュルの道(みち)にある泉(いずみ)のほとりで、彼女(かのじょ)に会(あ)い、 8そして言(い)った、「サライのつかえめハガルよ、あなたはどこからきたのですか、またどこへ行(い)くのですか」。彼女(かのじょ)は言(い)った、「わたしは女(おんな)主人(しゅじん)サライの顔(かお)を避(さ)けて逃(に)げているのです」。 9主(しゅ)の使(つかい)は彼女(かのじょ)に言(い)った、「あなたは女(おんな)主人(しゅじん)のもとに帰(かえ)って、その手(て)に身(み)を任(まか)せなさい」。 10主(しゅ)の使(つかい)はまた彼女(かのじょ)に言(い)った、「わたしは大(おお)いにあなたの子孫(しそん)を増(ま)して、数(かぞ)えきれないほどに多(おお)くしましょう」。 11主(しゅ)の使(つかい)はまた彼女(かのじょ)に言(い)った、「あなたは、みごもっています。あなたは男(おとこ)の子(こ)を産(う)むでしょう。名(な)をイシマエルと名(な)づけなさい。主(しゅ)があなたの苦(くる)しみを聞(き)かれたのです。 12彼(かれ)は野(の)ろばのような人(ひと)となり、その手(て)はすべての人(ひと)に逆(さか)らい、すべての人(ひと)の手(て)は彼(かれ)に逆(さか)らい、彼(かれ)はすべての兄弟(きょうだい)に敵(てき)して住(す)むでしょう」。 13そこで、ハガルは自分(じぶん)に語(かた)られた主(しゅ)の名(な)を呼(よ)んで、「あなたはエル・ロイです」と言(い)った。彼女(かのじょ)が「ここでも、わたしを見(み)ていられるかたのうしろを拝(おが)めたのか」と言(い)ったことによる。 14それでその井戸(いど)は「ベエル・ラハイ・ロイ」と呼(よ)ばれた。これはカデシとベレデの間(あいだ)にある。

15ハガルはアブラムに男(おとこ)の子(こ)を産(う)んだ。アブラムはハガルが産(う)んだ子(こ)の名(な)をイシマエルと名(な)づけた。 16ハガルがイシマエルをアブラムに産(う)んだ時(とき)、アブラムは八十六歳(さい)であった。

第一七章

1アブラムの九十九歳(さい)の時(とき)、主(しゅ)はアブラムに現(あらわ)れて言(い)われた、
「わたしは全能(ぜんのう)の神(かみ)である。
あなたはわたしの前(まえ)に歩(あゆ)み、全(まった)き者(もの)であれ。
2わたしはあなたと契約(けいやく)を結(むす)び、
大(おお)いにあなたの子孫(しそん)を増(ま)すであろう」。
3アブラムは、ひれ伏(ふ)した。神(かみ)はまた彼(かれ)に言(い)われた、
4「わたしはあなたと契約(けいやく)を結(むす)ぶ。
あなたは多(おお)くの国民(こくみん)の父(ちち)となるであろう。
5あなたの名(な)は、もはやアブラムとは言(い)われず、
あなたの名(な)はアブラハムと呼(よ)ばれるであろう。
わたしはあなたを多(おお)くの国民(こくみん)の
父(ちち)とするからである。
6わたしはあなたに多(おお)くの子孫(しそん)を得(え)させ、国々(くにぐに)の民(たみ)をあなたから起(おこ)そう。また、王(おう)たちもあなたから出(で)るであろう。 7わたしはあなた及(およ)び後(のち)の代々(よよ)の子孫(しそん)と契約(けいやく)を立(た)てて、永遠(えいえん)の契約(けいやく)とし、あなたと後(のち)の子孫(しそん)との神(かみ)となるであろう。 8わたしはあなたと後(のち)の子孫(しそん)とにあなたの宿(やど)っているこの地(ち)、すなわちカナンの全(ぜん)地(ち)を永久(えいきゅう)の所有(しょゆう)として与(あた)える。そしてわたしは彼(かれ)らの神(かみ)となるであろう」。

9神(かみ)はまたアブラハムに言(い)われた、「あなたと後(のち)の子孫(しそん)とは共(とも)に代々(よよ)わたしの契約(けいやく)を守(まも)らなければならない。あなたがたのうち 10男子(だんし)はみな割礼(かつれい)をうけなければならない。これはわたしとあなたがた及(およ)び後(のち)の子孫(しそん)との間(あいだ)のわたしの契約(けいやく)であって、あなたがたの守(まも)るべきものである。 11あなたがたは前(まえ)の皮(かわ)に割礼(かつれい)を受(う)けなければならない。それがわたしとあなたがたとの間(あいだ)の契約(けいやく)のしるしとなるであろう。 12あなたがたのうちの男子(だんし)はみな代々(よよ)、家(いえ)に生(うま)れた者(もの)も、また異邦人(いほうじん)から銀(ぎん)で買(か)い取(と)った、あなたの子孫(しそん)でない者(もの)も、生(うま)れて八日(か)目(め)に割礼(かつれい)を受(う)けなければならない。 13あなたの家(いえ)に生(うま)れた者(もの)も、あなたが銀(ぎん)で買(か)い取(と)った者(もの)も必(かなら)ず割礼(かつれい)を受(う)けなければならない。こうしてわたしの契約(けいやく)はあなたがたの身(み)にあって永遠(えいえん)の契約(けいやく)となるであろう。 14割礼(かつれい)を受(う)けない男子(だんし)、すなわち前(まえ)の皮(かわ)を切(き)らない者(もの)はわたしの契約(けいやく)を破(やぶ)るゆえ、その人(ひと)は民(たみ)のうちから断(た)たれるであろう」。

15神(かみ)はまたアブラハムに言(い)われた、「あなたの妻(つま)サライは、もはや名(な)をサライといわず、名(な)をサラと言(い)いなさい。 16わたしは彼女(かのじょ)を祝福(しゅくふく)し、また彼女(かのじょ)によって、あなたにひとりの男(おとこ)の子(こ)を授(さづ)けよう。わたしは彼女(かのじょ)を祝福(しゅくふく)し、彼女(かのじょ)を国々(くにぐに)の民(たみ)の母(はは)としよう。彼女(かのじょ)から、もろもろの民(たみ)の王(おう)たちが出(で)るであろう」。 17アブラハムはひれ伏(ふ)して笑(わら)い、心(こころ)の中(なか)で言(い)った、「百歳(さい)の者(もの)にどうして子(こ)が生(うま)れよう。サラはまた九十歳(さい)にもなって、どうして産(う)むことができようか」。 18そしてアブラハムは神(かみ)に言(い)った、「どうかイシマエルがあなたの前(まえ)に生(い)きながらえますように」。 19神(かみ)は言(い)われた、「いや、あなたの妻(つま)サラはあなたに男(おとこ)の子(こ)を産(う)むでしょう。名(な)をイサクと名(な)づけなさい。わたしは彼(かれ)と契約(けいやく)を立(た)てて、後(のち)の子孫(しそん)のために永遠(えいえん)の契約(けいやく)としよう。 20またイシマエルについてはあなたの願(ねが)いを聞(き)いた。わたしは彼(かれ)を祝福(しゅくふく)して多(おお)くの子孫(しそん)を得(え)させ、大(おお)いにそれを増(ま)すであろう。彼(かれ)は十二人(にん)の君(きみ)たちを生(う)むであろう。わたしは彼(かれ)を大(おお)いなる国民(こくみん)としよう。 21しかしわたしは来年(らいねん)の今(いま)ごろサラがあなたに産(う)むイサクと、わたしの契約(けいやく)を立(た)てるであろう」。

22神(かみ)はアブラハムと語(かた)り終(お)え、彼(かれ)を離(はな)れて、のぼられた。 23アブラハムは神(かみ)が自分(じぶん)に言(い)われたように、この日(ひ)その子(こ)イシマエルと、すべて家(いえ)に生(うま)れた者(もの)およびすべて銀(ぎん)で買(か)い取(と)った者(もの)、すなわちアブラハムの家(いえ)の人々(ひとびと)のうち、すべての男子(だんし)を連(つ)れてきて、前(まえ)の皮(かわ)に割礼(かつれい)を施(ほどこ)した。 24アブラハムが前(まえ)の皮(かわ)に割礼(かつれい)を受(う)けた時(とき)は九十九歳(さい)、 25その子(こ)イシマエルが前(まえ)の皮(かわ)に割礼(かつれい)を受(う)けた時(とき)は十三歳(さい)であった。 26この日(ひ)アブラハムとその子(こ)イシマエルは割礼(かつれい)を受(う)けた。 27またその家(いえ)の人々(ひとびと)は家(いえ)に生(うま)れた者(もの)も、銀(ぎん)で異邦人(いほうじん)から買(か)い取(と)った者(もの)も皆(みな)、彼(かれ)と共(とも)に割礼(かつれい)を受(う)けた。

第一八章

1主(しゅ)はマムレのテレビンの木(き)のかたわらでアブラハムに現(あらわ)れられた。それは昼(ひる)の暑(あつ)いころで、彼(かれ)は天幕(てんまく)の入口(いりぐち)にすわっていたが、 2目(め)を上(あ)げて見(み)ると、三人(にん)の人(ひと)が彼(かれ)に向(む)かって立(た)っていた。彼(かれ)はこれを見(み)て、天幕(てんまく)の入口(いりぐち)から走(はし)って行(い)って彼(かれ)らを迎(むか)え、地(ち)に身(み)をかがめて、 3言(い)った、「わが主(しゅ)よ、もしわたしがあなたの前(まえ)に恵(めぐ)みを得(え)ているなら、どうぞしもべを通(とお)り過(す)ごさないでください。 4水(みず)をすこし取(と)ってこさせますから、あなたがたは足(あし)を洗(あら)って、この木(き)の下(した)でお休(やす)みください。 5わたしは一口(ひとくち)のパンを取(と)ってきます。元気(げんき)をつけて、それからお出(で)かけください。せっかくしもべの所(ところ)においでになったのですから」。彼(かれ)らは言(い)った、「お言葉(ことば)どおりにしてください」。 6そこでアブラハムは急(いそ)いで天幕(てんまく)に入(い)り、サラの所(ところ)に行(い)って言(い)った、「急(いそ)いで細(こま)かい麦粉(むぎこ)三セヤをとり、こねてパンを造(つく)りなさい」。 7アブラハムは牛(うし)の群(む)れに走(はし)って行(い)き、柔(やわ)らかな良(よ)い子(こ)牛(うし)を取(と)って若者(わかもの)に渡(わた)したので、急(いそ)いで調理(ちょうり)した。 8そしてアブラハムは凝乳(ぎょうにゅう)と牛乳(ぎゅうにゅう)および子(こ)牛(うし)の調理(ちょうり)したものを取(と)って、彼(かれ)らの前(まえ)に供(そな)え、木(き)の下(した)で彼(かれ)らのかたわらに立(た)って給仕(きゅうじ)し、彼(かれ)らは食事(しょくじ)した。

9彼(かれ)らはアブラハムに言(い)った、「あなたの妻(つま)サラはどこにおられますか」。彼(かれ)は言(い)った、「天幕(てんまく)の中(なか)です」。 10そのひとりが言(い)った、「来年(らいねん)の春(はる)、わたしはかならずあなたの所(ところ)に帰(かえ)ってきましょう。その時(とき)、あなたの妻(つま)サラには男(おとこ)の子(こ)が生(うま)れているでしょう」。サラはうしろの方(ほう)の天幕(てんまく)の入口(いりぐち)で聞(き)いていた。 11さてアブラハムとサラとは年(とし)がすすみ、老人(ろうじん)となり、サラは女(おんな)の月(つき)のものが、すでに止(と)まっていた。 12それでサラは心(こころ)の中(なか)で笑(わら)って言(い)った、「わたしは衰(おとろ)え、主人(しゅじん)もまた老人(ろうじん)であるのに、わたしに楽(たの)しみなどありえようか」。 13主(しゅ)はアブラハムに言(い)われた、「なぜサラは、わたしは老人(ろうじん)であるのに、どうして子(こ)を産(う)むことができようかと言(い)って笑(わら)ったのか。 14主(しゅ)にとって不可能(ふかのう)なことがありましょうか。来年(らいねん)の春(はる)、定(さだ)めの時(とき)に、わたしはあなたの所(ところ)に帰(かえ)ってきます。そのときサラには男(おとこ)の子(こ)が生(うま)れているでしょう」。 15サラは恐(おそ)れたので、これを打(う)ち消(け)して言(い)った、「わたしは笑(わら)いません」。主(しゅ)は言(い)われた、「いや、あなたは笑(わら)いました」。

16その人々(ひとびと)はそこを立(た)ってソドムの方(ほう)に向(む)かったので、アブラハムは彼(かれ)らを見送(みおく)って共(とも)に行(い)った。 17時(とき)に主(しゅ)は言(い)われた、「わたしのしようとする事(こと)をアブラハムに隠(かく)してよいであろうか。 18アブラハムは必(かなら)ず大(おお)きな強(つよ)い国民(こくみん)となって、地(ち)のすべての民(たみ)がみな、彼(かれ)によって祝福(しゅくふく)を受(う)けるのではないか。 19わたしは彼(かれ)が後(のち)の子(こ)らと家族(かぞく)とに命(めい)じて主(しゅ)の道(みち)を守(まも)らせ、正義(せいぎ)と公道(こうどう)とを行(おこな)わせるために彼(かれ)を知(し)ったのである。これは主(しゅ)がかつてアブラハムについて言(い)った事(こと)を彼(かれ)の上(うえ)に臨(のぞ)ませるためである」。 20主(しゅ)はまた言(い)われた、「ソドムとゴモラの叫(さけ)びは大(おお)きく、またその罪(つみ)は非常(ひじょう)に重(おも)いので、 21わたしはいま下(くだ)って、わたしに届(とど)いた叫(さけ)びのとおりに、すべて彼(かれ)らがおこなっているかどうかを見(み)て、それを知(し)ろう」。

22その人々(ひとびと)はそこから身(み)を巡(めぐ)らしてソドムの方(ほう)に行(い)ったが、アブラハムはなお、主(しゅ)の前(まえ)に立(た)っていた。 23アブラハムは近寄(ちかよ)って言(い)った、「まことにあなたは正(ただ)しい者(もの)を、悪(わる)い者(もの)と一緒(いっしょ)に滅(ほろ)ぼされるのですか。 24たとい、あの町(まち)に五十人(にん)の正(ただ)しい者(もの)があっても、あなたはなお、その所(ところ)を滅(ほろ)ぼし、その中(なか)にいる五十人(にん)の正(ただ)しい者(もの)のためにこれをゆるされないのですか。 25正(ただ)しい者(もの)と悪(わる)い者(もの)とを一緒(いっしょ)に殺(ころ)すようなことを、あなたは決(けっ)してなさらないでしょう。正(ただ)しい者(もの)と悪(わる)い者(もの)とを同(おな)じようにすることも、あなたは決(けっ)してなさらないでしょう。全(ぜん)地(ち)をさばく者(もの)は公義(こうぎ)を行(おこな)うべきではありませんか」。 26主(しゅ)は言(い)われた、「もしソドムで町(まち)の中(なか)に五十人(にん)の正(ただ)しい者(もの)があったら、その人々(ひとびと)のためにその所(ところ)をすべてゆるそう」。 27アブラハムは答(こた)えて言(い)った、「わたしはちり灰(はい)に過(す)ぎませんが、あえてわが主(しゅ)に申(もう)します。 28もし五十人(にん)の正(ただ)しい者(もの)のうち五人(にん)欠(か)けたなら、その五人(にん)欠(か)けたために町(まち)を全(まった)く滅(ほろ)ぼされますか」。主(しゅ)は言(い)われた、「もしそこに四十五人(にん)いたら、滅(ほろ)ぼさないであろう」。 29アブラハムはまた重(かさ)ねて主(しゅ)に言(い)った、「もしそこに四十人(にん)いたら」。主(しゅ)は言(い)われた、「その四十人(にん)のために、これをしないであろう」。 30アブラハムは言(い)った、「わが主(しゅ)よ、どうかお怒(いか)りにならぬよう。わたしは申(もう)します。もしそこに三十人(にん)いたら」。主(しゅ)は言(い)われた、「そこに三十人(にん)いたら、これをしないであろう」。 31アブラハムは言(い)った、「いまわたしはあえてわが主(しゅ)に申(もう)します。もしそこに二十人(にん)いたら」。主(しゅ)は言(い)われた、「わたしはその二十人(にん)のために滅(ほろ)ぼさないであろう」。 32アブラハムは言(い)った、「わが主(しゅ)よ、どうかお怒(いか)りにならぬよう。わたしはいま一度(ど)申(もう)します、もしそこに十人(にん)いたら」。主(しゅ)は言(い)われた、「わたしはその十人(にん)のために滅(ほろ)ぼさないであろう」。 33主(しゅ)はアブラハムと語(かた)り終(おわ)り、去(さ)って行(い)かれた。アブラハムは自分(じぶん)の所(ところ)に帰(かえ)った。

第一九章

1そのふたりのみ使(つかい)は夕暮(ゆうぐれ)にソドムに着(つ)いた。そのときロトはソドムの門(もん)にすわっていた。ロトは彼(かれ)らを見(み)て、立(た)って迎(むか)え、地(ち)に伏(ふ)して、 2言(い)った、「わが主(しゅ)よ、どうぞしもべの家(いえ)に立寄(たちよ)って足(あし)を洗(あら)い、お泊(と)まりください。そして朝(あさ)早(はや)く起(お)きてお立(た)ちください」。彼(かれ)らは言(い)った、「いや、われわれは広場(ひろば)で夜(よ)を過(す)ごします」。 3しかしロトがしいて勧(すす)めたので、彼(かれ)らはついに彼(かれ)の所(ところ)に寄(よ)り、家(いえ)にはいった。ロトは彼(かれ)らのためにふるまいを設(もう)け、種(たね)入(い)れぬパンを焼(や)いて食(た)べさせた。 4ところが彼(かれ)らの寝(ね)ないうちに、ソドムの町(まち)の人々(ひとびと)は、若(わか)い者(もの)も老人(ろうじん)も、民(たみ)がみな四方(しほう)からきて、その家(いえ)を囲(かこ)み、 5ロトに叫(さけ)んで言(い)った、「今夜(こんや)おまえの所(ところ)にきた人々(ひとびと)はどこにいるか。それをここに出(だ)しなさい。われわれは彼(かれ)らを知(し)るであろう」。 6ロトは入口(いりぐち)におる彼(かれ)らの所(ところ)に出(で)て行(い)き、うしろの戸(と)を閉(と)じて、 7言(い)った、「兄弟(きょうだい)たちよ、どうか悪(わる)い事(こと)はしないでください。 8わたしにまだ男(おとこ)を知(し)らない娘(むすめ)がふたりあります。わたしはこれをあなたがたに、さし出(だ)しますから、好(す)きなようにしてください。ただ、わたしの屋根(やね)の下(した)にはいったこの人(ひと)たちには、何(なに)もしないでください」。 9彼(かれ)らは言(い)った、「退(しりぞ)け」。また言(い)った、「この男(おとこ)は渡(わた)ってきたよそ者(もの)であるのに、いつも、さばきびとになろうとする。それで、われわれは彼(かれ)らに加(くわ)えるよりも、おまえに多(おお)くの害(がい)を加(くわ)えよう」。彼(かれ)らはロトの身(み)に激(はげ)しく迫(せま)り、進(すす)み寄(よ)って戸(と)を破(やぶ)ろうとした。 10その時(とき)、かのふたりは手(て)を伸(の)べてロトを家(いえ)の内(うち)に引(ひ)き入(い)れ、戸(と)を閉(と)じた。 11そして家(いえ)の入口(いりぐち)におる人々(ひとびと)を、老若(ろうにゃく)の別(べつ)なく打(う)って目(め)をくらましたので、彼(かれ)らは入口(いりぐち)を捜(さが)すのに疲(つか)れた。

12ふたりはロトに言(い)った、「ほかにあなたの身内(みうち)の者(もの)がここにおりますか。あなたのむこ、むすこ、娘(むすめ)およびこの町(まち)におるあなたの身内(みうち)の者(もの)を、皆(みな)ここから連(つ)れ出(だ)しなさい。 13われわれがこの所(ところ)を滅(ほろ)ぼそうとしているからです。人々(ひとびと)の叫(さけ)びが主(しゅ)の前(まえ)に大(おお)きくなり、主(しゅ)はこの所(ところ)を滅(ほろ)ぼすために、われわれをつかわされたのです」。 14そこでロトは出(で)て行(い)って、その娘(むすめ)たちをめとるむこたちに告(つ)げて言(い)った、「立(た)ってこの所(ところ)から出(で)なさい。主(しゅ)がこの町(まち)を滅(ほろ)ぼされます」。しかしそれはむこたちには戯(たわむ)むれごとに思(おも)えた。

15夜(よ)が明(あ)けて、み使(つかい)たちはロトを促(うなが)して言(い)った  「立(た)って、ここにいるあなたの妻(つま)とふたりの娘(むすめ)とを連(つ)れ出(だ)しなさい。そうしなければ、あなたもこの町(まち)の不義(ふぎ)のために滅(ほろ)ぼされるでしょう」。 16彼(かれ)はためらっていたが、主(しゅ)は彼(かれ)にあわれみを施(ほどこ)されたので、かのふたりは彼(かれ)の手(て)と、その妻(つま)の手(て)と、ふたりの娘(むすめ)の手(て)を取(と)って連(つ)れ出(だ)し、町(まち)の外(そと)に置(お)いた。 17彼(かれ)らを外(そと)に連(つ)れ出(だ)した時(とき)そのひとりは言(い)った、「のがれて、自分(じぶん)の命(いのち)を救(すく)いなさい。うしろをふりかえって見(み)てはならない。低地(ていち)にはどこにも立(た)ち止(ど)まってはならない。山(やま)にのがれなさい。そうしなければ、あなたは滅(ほろ)びます」。 18ロトは彼(かれ)らに言(い)った、「わが主(しゅ)よ、どうか、そうさせないでください。 19しもべはすでにあなたの前(まえ)に恵(めぐ)みを得(え)ました。あなたはわたしの命(いのち)を救(すく)って、大(おお)いなるいつくしみを施(ほどこ)されました。しかしわたしは山(やま)まではのがれる事(こと)ができません。災(わざわい)が身(み)に追(お)い迫(せま)ってわたしは死(し)ぬでしょう。 20あの町(まち)をごらんなさい。逃(に)げていくのに近(ちか)く、また小(ちい)さい町(まち)です。どうかわたしをそこにのがれさせてください。それは小(ちい)さいではありませんか。そうすればわたしの命(いのち)は助(たす)かるでしょう」。 21み使(つかい)は彼(かれ)に言(い)った、「わたしはこの事(こと)でもあなたの願(ねが)いをいれて、あなたの言(い)うその町(まち)は滅(ほろ)ぼしません。 22急(いそ)いでそこへのがれなさい。あなたがそこに着(つ)くまでは、わたしは何事(なにごと)もすることができません」。これによって、その町(まち)の名(な)はゾアルと呼(よ)ばれた。 23ロトがゾアルに着(つ)いた時(とき)、日(ひ)は地(ち)の上(うえ)にのぼった。

24主(しゅ)は硫黄(いおう)と火(ひ)とを主(しゅ)の所(ところ)すなわち天(てん)からソドムとゴモラの上(うえ)に降(ふ)らせて、 25これらの町(まち)と、すべての低地(ていち)と、その町々(まちまち)のすべての住民(じゅうみん)と、その地(ち)にはえている物(もの)を、ことごとく滅(ほろ)ぼされた。 26しかしロトの妻(つま)はうしろを顧(かえり)みたので塩(しお)の柱(はしら)になった。 27アブラハムは朝(あさ)早(はや)く起(お)き、さきに主(しゅ)の前(まえ)に立(た)った所(ところ)に行(い)って、 28ソドムとゴモラの方(ほう)、および低地(ていち)の全面(ぜんめん)をながめると、その地(ち)の煙(けむり)が、かまどの煙(けむり)のように立(た)ちのぼっていた。

29こうして神(かみ)が低地(ていち)の町々(まちまち)をこぼたれた時(とき)、すなわちロトの住(す)んでいた町々(まちまち)を滅(ほろ)ぼされた時(とき)、神(かみ)はアブラハムを覚(おぼ)えて、その滅(ほろ)びの中(なか)からロトを救(すく)い出(だ)された。

30ロトはゾアルを出(で)て上(のぼ)り、ふたりの娘(むすめ)と共(とも)に山(やま)に住(す)んだ。ゾアルに住(す)むのを恐(おそ)れたからである。彼(かれ)はふたりの娘(むすめ)と共(とも)に、ほら穴(あな)の中(なか)に住(す)んだ。 31時(とき)に姉(あね)が妹(いもうと)に言(い)った、「わたしたちの父(ちち)は老(お)い、またこの地(ち)には世(よ)のならわしのように、わたしたちの所(ところ)に来(く)る男(おとこ)はいません。 32さあ、父(ちち)に酒(さけ)を飲(の)ませ、共(とも)に寝(ね)て、父(ちち)によって子(こ)を残(のこ)しましょう」。 33彼女(かのじょ)たちはその夜(よ)、父(ちち)に酒(さけ)を飲(の)ませ、姉(あね)がはいって父(ちち)と共(とも)に寝(ね)た。ロトは娘(むすめ)が寝(ね)たのも、起(お)きたのも知(し)らなかった。 34あくる日(ひ)、姉(あね)は妹(いもうと)に言(い)った、「わたしは昨夜(さくや)、父(ちち)と寝(ね)ました。わたしたちは今夜(こんや)もまた父(ちち)に酒(さけ)を飲(の)ませましょう。そしてあなたがはいって共(とも)に寝(ね)なさい。わたしたちは父(ちち)によって子(こ)を残(のこ)しましょう」。 35彼(かれ)らはその夜(よ)もまた父(ちち)に酒(さけ)を飲(の)ませ、妹(いもうと)が行(い)って父(ちち)と共(とも)に寝(ね)た。ロトは娘(むすめ)の寝(ね)たのも、起(お)きたのも知(し)らなかった。 36こうしてロトのふたりの娘(むすめ)たちは父(ちち)によってはらんだ。 37姉(あね)娘(むすめ)は子(こ)を産(う)み、その名(な)をモアブと名(な)づけた。これは今(いま)のモアブびとの先祖(せんぞ)である。 38妹(いもうと)もまた子(こ)を産(う)んで、その名(な)をベニアンミと名(な)づけた。これは今(いま)のアンモンびとの先祖(せんぞ)である。

第二〇章

1アブラハムはそこからネゲブの地(ち)に移(うつ)って、カデシとシュルの間(あいだ)に住(す)んだ。彼(かれ)がゲラルにとどまっていた時(とき)、 2アブラハムは妻(つま)サラのことを、「これはわたしの妹(いもうと)です」と言(い)ったので、ゲラルの王(おう)アビメレクは、人(ひと)をつかわしてサラを召(め)し入(い)れた。 3ところが神(かみ)は夜(よ)の夢(ゆめ)にアビメレクに臨(のぞ)んで言(い)われた、「あなたは召(め)し入(い)れたあの女(おんな)のゆえに死(し)なねばならない。彼女(かのじょ)は夫(おっと)のある身(み)である」。 4アビメレクはまだ彼女(かのじょ)に近(ちか)づいていなかったので言(い)った、「主(しゅ)よ、あなたは正(ただ)しい民(たみ)でも殺(ころ)されるのですか。 5彼(かれ)はわたしに、これはわたしの妹(いもうと)ですと言(い)ったではありませんか。また彼女(かのじょ)も自分(じぶん)で、彼(かれ)はわたしの兄(あに)ですと言(い)いました。わたしは心(こころ)も清(きよ)く、手(て)もいさぎよく、このことをしました」。 6神(かみ)はまた夢(ゆめ)で彼(かれ)に言(い)われた、「そうです、あなたが清(きよ)い心(こころ)をもってこのことをしたのを知(し)っていたから、わたしもあなたを守(まも)って、わたしに対(たい)して罪(つみ)を犯(おか)させず、彼女(かのじょ)にふれることを許(ゆる)さなかったのです。 7いま彼(かれ)の妻(つま)を返(かえ)しなさい。彼(かれ)は預言者(よげんしゃ)ですから、あなたのために祈(いの)って、命(いのち)を保(たも)たせるでしょう。もし返(かえ)さないなら、あなたも身内(みうち)の者(もの)もみな必(かなら)ず死(し)ぬと知(し)らなければなりません」。

8そこでアビメレクは朝(あさ)早(はや)く起(お)き、しもべたちをことごとく召(め)し集(あつ)めて、これらの事(こと)をみな語(かた)り聞(き)かせたので、人々(ひとびと)は非常(ひじょう)に恐(おそ)れた。 9そしてアビメレクはアブラハムを召(め)して言(い)った、「あなたはわれわれに何(なに)をするのですか。あなたに対(たい)してわたしがどんな罪(つみ)を犯(おか)したために、あなたはわたしとわたしの国(くに)とに、大(おお)きな罪(つみ)を負(お)わせるのですか。あなたはしてはならぬことをわたしにしたのです」。 10アビメレクはまたアブラハムに言(い)った、「あなたはなんと思(おも)って、この事(こと)をしたのですか」。 11アブラハムは言(い)った、「この所(ところ)には神(かみ)を恐(おそ)れるということが、まったくないので、わたしの妻(つま)のゆえに人々(ひとびと)がわたしを殺(ころ)すと思(おも)ったからです。 12また彼女(かのじょ)はほんとうにわたしの妹(いもうと)なのです。わたしの父(ちち)の娘(むすめ)ですが、母(はは)の娘(むすめ)ではありません。そして、わたしの妻(つま)になったのです。 13神(かみ)がわたしに父(ちち)の家(いえ)を離(はな)れて、行(い)き巡(めぐ)らせた時(とき)、わたしは彼女(かのじょ)に、あなたはわたしたちの行(い)くさきざきでわたしを兄(あに)であると言(い)ってください。これはあなたがわたしに施(ほどこ)す恵(めぐ)みであると言(い)いました」。 14そこでアビメレクは羊(ひつじ)、牛(うし)および男女(だんじょ)の奴隷(どれい)を取(と)ってアブラハムに与(あた)え、その妻(つま)サラを彼(かれ)に返(かえ)した。 15そしてアビメレクは言(い)った、「わたしの地(ち)はあなたの前(まえ)にあります。あなたの好(す)きな所(ところ)に住(す)みなさい」。 16またサラに言(い)った、「わたしはあなたの兄(あに)に銀(ぎん)千(せん)シケルを与(あた)えました。これはあなたの身(み)に起(た)ったすべての事(こと)について、あなたに償(つぐな)いをするものです。こうしてすべての人(ひと)にあなたは正(ただ)しいと認(みと)められます」。 17そこでアブラハムは神(かみ)に祈(いの)った。神(かみ)はアビメレクとその妻(つま)および、はしためたちをいやされたので、彼(かれ)らは子(こ)を産(う)むようになった。 18これは主(しゅ)がさきにアブラハムの妻(つま)サラのゆえに、アビメレクの家(いえ)のすべての者(もの)の胎(たい)を、かたく閉(と)ざされたからである。

第二一章

1主(しゅ)は、さきに言(い)われたようにサラを顧(かえり)み、告(つ)げられたようにサラに行(おこな)われた。 2サラはみごもり、神(かみ)がアブラハムに告(つ)げられた時(とき)になって、年老(としお)いたアブラハムに男(おとこ)の子(こ)を産(う)んだ。 3アブラハムは生(うま)れた子(こ)、サラが産(う)んだ男(おとこ)の子(こ)の名(な)をイサクと名(な)づけた。 4アブラハムは神(かみ)が命(めい)じられたように八日(か)目(め)にその子(こ)イサクに割礼(かつれい)を施(ほどこ)した。 5アブラハムはその子(こ)イサクが生(うま)れた時(とき)百歳(さい)であった。 6そしてサラは言(い)った、「神(かみ)はわたしを笑(わら)わせてくださった。聞(き)く者(もの)は皆(みな)わたしのことで笑(わら)うでしょう」。 7また言(い)った、「サラが子(こ)に乳(ちち)を飲(の)ませるだろうと、だれがアブラハムに言(い)い得(え)たであろう。それなのに、わたしは彼(かれ)が年(とし)とってから、子(こ)を産(う)んだ」。

8さて、おさなごは育(そだ)って乳離(ちばな)れした。イサクが乳離(ちばな)れした日(ひ)にアブラハムは盛(さか)んなふるまいを設(もう)けた。 9サラはエジプトの女(おんな)ハガルのアブラハムに産(う)んだ子(こ)が、自分(じぶん)の子(こ)イサクと遊(あそ)ぶのを見(み)て、 10アブラハムに言(い)った、「このはしためとその子(こ)を追(お)い出(だ)してください。このはしための子(こ)はわたしの子(こ)イサクと共(とも)に、世継(よつぎ)となるべき者(もの)ではありません」。 11この事(こと)で、アブラハムはその子(こ)のために非常(ひじょう)に心配(しんぱい)した。 12神(かみ)はアブラハムに言(い)われた、「あのわらべのため、またあなたのはしためのために心配(しんぱい)することはない。サラがあなたに言(い)うことはすべて聞(き)きいれなさい。イサクに生(うま)れる者(もの)が、あなたの子孫(しそん)と唱(とな)えられるからです。 13しかし、はしための子(こ)もあなたの子(こ)ですから、これをも、一つの国民(こくみん)とします」。 14そこでアブラハムは明(あ)くる朝(あさ)はやく起(お)きて、パンと水(みず)の皮(かわ)袋(ぶくろ)とを取(と)り、ハガルに与(あた)えて、肩(かた)に負(お)わせ、その子(こ)を連(つ)れて去(さ)らせた。ハガルは去(さ)ってベエルシバの荒野(あらの)にさまよった。

15やがて皮(かわ)袋(ぶくろ)の水(みず)が尽(つ)きたので、彼女(かのじょ)はその子(こ)を木(き)の下(した)におき、 16「わたしはこの子(こ)の死(し)ぬのを見(み)るに忍(しの)びない」と言(い)って、矢(や)の届(とど)くほど離(はな)れて行(い)き、子供(こども)の方(ほう)に向(む)いてすわった。彼女(かのじょ)が子供(こども)の方(ほう)に向(む)いてすわったとき、子供(こども)は声(こえ)をあげて泣(な)いた。 17神(かみ)はわらべの声(こえ)を聞(き)かれ、神(かみ)の使(つかい)は天(てん)からハガルを呼(よ)んで言(い)った、「ハガルよ、どうしたのか。恐(おそ)れてはいけない。神(かみ)はあそこにいるわらべの声(こえ)を聞(き)かれた。 18立(た)って行(い)き、わらべを取(と)り上(あ)げてあなたの手(て)に抱(だ)きなさい。わたしは彼(かれ)を大(おお)いなる国民(こくみん)とするであろう」。 19神(かみ)がハガルの目(め)を開(ひら)かれたので、彼女(かのじょ)は水(みず)の井戸(いど)のあるのを見(み)た。彼女(かのじょ)は行(い)って皮(かわ)袋(ぶくろ)に水(みず)を満(み)たし、わらべに飲(の)ませた。 20神(かみ)はわらべと共(とも)にいまし、わらべは成長(せいちょう)した。彼(かれ)は荒野(あらの)に住(す)んで弓(ゆみ)を射(い)る者(もの)となった。 21彼(かれ)はパランの荒野(あらの)に住(す)んだ。母(はは)は彼(かれ)のためにエジプトの国(くに)から妻(つま)を迎(むか)えた。

22そのころアビメレクとその軍勢(ぐんぜい)の長(ちょう)ピコルはアブラハムに言(い)った、「あなたが何事(なにごと)をなさっても、神(かみ)はあなたと共(とも)におられる。 23それゆえ、今(いま)ここでわたしをも、わたしの子(こ)をも、孫(まご)をも欺(あざむ)かないと、神(かみ)をさしてわたしに誓(ちか)ってください。わたしがあなたに親切(しんせつ)にしたように、あなたもわたしと、このあなたの寄留(きりゅう)の地(ち)とに、しなければなりません」。 24アブラハムは言(い)った、「わたしは誓(ちか)います」。

25アブラハムはアビメレクの家来(けらい)たちが、水(みず)の井戸(いど)を奪(うば)い取(と)ったことについてアビメルクを責(せ)めた。 26しかしアビメレクは言(い)った、「だれがこの事(こと)をしたかわたしは知(し)りません。あなたもわたしに告(つ)げたことはなく、わたしもきょうまで聞(き)きませんでした」。 27そこでアブラハムは羊(ひつじ)と牛(うし)とを取(と)ってアビメレクに与(あた)え、ふたりは契約(けいやく)を結(むす)んだ。 28アブラハムが雌(めす)の小羊(こひつじ)七頭(とう)を分(わ)けて置(お)いたところ、 29アビメレクはアブラハムに言(い)った、「あなたがこれらの雌(めす)の小羊(こひつじ)七頭(とう)を分(わ)けて置(お)いたのは、なんのためですか」。 30アブラハムは言(い)った、「あなたはわたしの手(て)からこれらの雌(めす)の小羊(こひつじ)七頭(とう)を受(う)け取(と)って、わたしがこの井戸(いど)を掘(ほ)ったことの証拠(しょうこ)としてください」。 31これによってその所(ところ)をベエルシバと名(な)づけた。彼(かれ)らがふたりそこで誓(ちか)いをしたからである。 32このように彼(かれ)らはベエルシバで契約(けいやく)を結(むす)び、アビメレクとその軍勢(ぐんぜい)の長(ちょう)ピコルは立(た)ってペリシテの地(ち)に帰(かえ)った。 33アブラハムはベエルシバに一本(ぽん)のぎょりゅうの木(き)を植(う)え、その所(ところ)で永遠(えいえん)の神(かみ)、主(しゅ)の名(な)を呼(よ)んだ。 34こうしてアブラハムは長(なが)い間(あいだ)ペリシテびとの地(ち)にとどまった。

第二二章

1これらの事(こと)の後(のち)、神(かみ)はアブラハムを試(こころ)みて彼(かれ)に言(い)われた、「アブラハムよ」。彼(かれ)は言(い)った、「ここにおります」。 2神(かみ)は言(い)われた、「あなたの子(こ)、あなたの愛(あい)するひとり子(こ)イサクを連(つ)れてモリヤの地(ち)に行(い)き、わたしが示(しめ)す山(やま)で彼(かれ)を燔祭(はんさい)としてささげなさい」。 3アブラハムは朝(あさ)はやく起(お)きて、ろばにくらを置(お)き、ふたりの若者(わかもの)と、その子(こ)イサクとを連(つ)れ、また燔祭(はんさい)のたきぎを割(わ)り、立(た)って神(かみ)が示(しめ)された所(ところ)に出(で)かけた。 4三日(か)目(め)に、アブラハムは目(め)をあげて、はるかにその場所(ばしょ)を見(み)た。 5そこでアブラハムは若者(わかもの)たちに言(い)った、「あなたがたは、ろばと一緒(いっしょ)にここにいなさい。わたしとわらべは向(む)こうへ行(い)って礼拝(れいはい)し、そののち、あなたがたの所(ところ)に帰(かえ)ってきます」。 6アブラハムは燔祭(はんさい)のたきぎを取(と)って、その子(こ)イサクに負(お)わせ、手(て)に火(ひ)と刃物(はもの)とを執(と)って、ふたり一緒(いっしょ)に行(い)った。 7やがてイサクは父(ちち)アブラハムに言(い)った、「父(ちち)よ」。彼(かれ)は答(こた)えた、「子(こ)よ、わたしはここにいます」。イサクは言(い)った、「火(ひ)とたきぎとはありますが、燔祭(はんさい)の小羊(こひつじ)はどこにありますか」。 8アブラハムは言(い)った、「子(こ)よ、神(かみ)みずから燔祭(はんさい)の小羊(こひつじ)を備(そな)えてくださるであろう」。こうしてふたりは一緒(いっしょ)に行(い)った。

9彼(かれ)らが神(かみ)の示(しめ)された場所(ばしょ)にきたとき、アブラハムはそこに祭壇(さいだん)を築(きず)き、たきぎを並(なら)べ、その子(こ)イサクを縛(しば)って祭壇(さいだん)のたきぎの上(うえ)に載(の)せた。 10そしてアブラハムが手(て)を差(さ)し伸(の)べ、刃物(はもの)を執(と)ってその子(こ)を殺(ころ)そうとした時(とき)、 11主(しゅ)の使(つかい)が天(てん)から彼(かれ)を呼(よ)んで言(い)った、「アブラハムよ、アブラハムよ」。彼(かれ)は答(こた)えた、「はい、ここにおります」。 12み使(つかい)が言(い)った、「わらべを手(て)にかけてはならない。また何(なに)も彼(かれ)にしてはならない。あなたの子(こ)、あなたのひとり子(こ)をさえ、わたしのために惜(お)しまないので、あなたが神(かみ)を恐(おそ)れる者(もの)であることをわたしは今(いま)知(し)った」。 13この時(とき)アブラハムが目(め)をあげて見(み)ると、うしろに、角(つの)をやぶに掛(か)けている一頭(とう)の雄羊(おひつじ)がいた。アブラハムは行(い)ってその雄羊(おひつじ)を捕(とら)え、それをその子(こ)のかわりに燔祭(はんさい)としてささげた。 14それでアブラハムはその所(ところ)の名(な)をアドナイ・エレと呼(よ)んだ。これにより、人々(ひとびと)は今日(こんにち)もなお「主(しゅ)の山(やま)に備(そな)えあり」と言(い)う。

15主(しゅ)の使(つかい)は再(ふたた)び天(てん)からアブラハムを呼(よ)んで、 16言(い)った、「主(しゅ)は言(い)われた、『わたしは自分(じぶん)をさして誓(ちか)う。あなたがこの事(こと)をし、あなたの子(こ)、あなたのひとり子(こ)をも惜(お)しまなかったので、 17わたしは大(おお)いにあなたを祝福(しゅくふく)し、大(おお)いにあなたの子孫(しそん)をふやして、天(てん)の星(ほし)のように、浜(はま)べの砂(すな)のようにする。あなたの子孫(しそん)は敵(てき)の門(もん)を打(う)ち取(と)り、 18また地(ち)のもろもろの国民(こくみん)はあなたの子孫(しそん)によって祝福(しゅくふく)を得(え)るであろう。あなたがわたしの言葉(ことば)に従(したが)ったからである』」。 19アブラハムは若者(わかもの)たちの所(ところ)に帰(かえ)り、みな立(た)って、共(とも)にベエルシバへ行(い)った。そしてアブラハムはベエルシバに住(す)んだ。

20これらの事(こと)の後(のち)、ある人(ひと)がアブラハムに告(つ)げて言(い)った、「ミルカもまたあなたの兄弟(きょうだい)ナホルに子(こ)どもを産(う)みました。 21長男(ちょうなん)はウヅ、弟(おとうと)はブズ、次(つぎ)はアラムの父(ちち)ケムエル、 22次(つぎ)はケセデ、ハゾ、ピルダシ、エデラフ、ベトエルです」。 23ベトエルの子(こ)はリベカであって、これら八人(にん)はミルカがアブラハムの兄弟(きょうだい)ナホルに産(う)んだのである。 24ナホルのそばめで、名(な)をルマという女(おんな)もまたテバ、ガハム、タハシおよびマアカを産(う)んだ。

第二三章

1サラの一生(いっしょう)は百二十七年(ねん)であった。これがサラの生(い)きながらえた年(とし)である。 2サラはカナンの地(ち)のキリアテ・アルバすなわちヘブロンで死(し)んだ。アブラハムは中(なか)にはいってサラのために悲(かな)しみ泣(な)いた。 3アブラハムは死人(しにん)のそばから立(た)って、ヘテの人々(ひとびと)に言(い)った、 4「わたしはあなたがたのうちの旅(たび)の者(もの)で寄留者(きりゅうしゃ)ですが、わたしの死人(しにん)を出(だ)して葬(ほうむ)るため、あなたがたのうちにわたしの所有(しょゆう)として一つの墓地(ぼち)をください」。 5ヘテの人々(ひとびと)はアブラハムに答(こた)えて言(い)った、 6「わが主(しゅ)よ、お聞(き)きなさい。あなたはわれわれのうちにおられて、神(かみ)のような主君(しゅくん)です。われわれの墓地(ぼち)の最(もっと)も良(よ)い所(ところ)にあなたの死人(しにん)を葬(ほうむ)りなさい。その墓地(ぼち)を拒(こば)んで、あなたにその死人(しにん)を葬(ほうむ)らせない者(もの)はわれわれのうちには、ひとりもないでしょう」。 7アブラハムは立(た)ちあがり、その地(ち)の民(たみ)ヘテの人々(ひとびと)に礼(れい)をして、 8彼(かれ)らに言(い)った、「もしわたしの死人(しにん)を葬(ほうむ)るのに同意(どうい)されるなら、わたしの願(ねが)いをいれて、わたしのためにゾハルの子(こ)エフロンに頼(たの)み、 9彼(かれ)が持(も)っている畑(はたけ)の端(はし)のマクペラのほら穴(あな)をじゅうぶんな代価(だいか)でわたしに与(あた)え、あなたがたのうちに墓地(ぼち)を持(も)たせてください」。 10時(とき)にエフロンはヘテの人々(ひとびと)のうちにすわっていた。そこでヘテびとエフロンはヘテの人々(ひとびと)、すなわちすべてその町(まち)の門(もん)にはいる人々(ひとびと)の聞(き)いているところで、アブラハムに答(こた)えて言(い)った、 11「いいえ、わが主(しゅ)よ、お聞(き)きなさい。わたしはあの畑(はたけ)をあなたにさしあげます。またその中(なか)にあるほら穴(あな)もさしあげます。わたしの民(たみ)の人々(ひとびと)の前(まえ)で、それをさしあげます。あなたの死人(しにん)を葬(ほうむ)りなさい」。 12アブラハムはその地(ち)の民(たみ)の前(まえ)で礼(れい)をし、 13その地(ち)の民(たみ)の聞(き)いているところでエフロンに言(い)った、「あなたがそれを承諾(しょうだく)されるなら、お聞(き)きなさい。わたしはその畑(はたけ)の代価(だいか)を払(はら)います。お受(う)け取(と)りください。わたしの死人(しにん)をそこに葬(ほうむ)りましょう」。 14エフロンはアブラハムに答(こた)えて言(い)った、 15「わが主(しゅ)よ、お聞(き)きなさい。あの地(ち)は銀(ぎん)四百シケルですが、これはわたしとあなたの間(あいだ)で、なにほどのことでしょう。あなたの死人(しにん)を葬(ほうむ)りなさい」。 16そこでアブラハムはエフロンの言葉(ことば)にしたがい、エフロンがヘテの人々(ひとびと)の聞(き)いているところで言(い)った銀(ぎん)、すなわち商人(しょうにん)の通用(つうよう)銀(ぎん)四百シケルを量(はか)ってエフロンに与(あた)えた。

17こうしてマムレの前(まえ)のマクペラにあるエフロンの畑(はたけ)は、畑(はたけ)も、その中(なか)のほら穴(あな)も、畑(はたけ)の中(なか)およびその周囲(しゅうい)の境(さかい)にあるすべての木(き)も皆(みな)、 18ヘテの人々(ひとびと)の前(まえ)、すなわちその町(まち)の門(もん)にはいるすべての人々(ひとびと)の前(まえ)で、アブラハムの所有(しょゆう)と決(き)まった。 19その後(のち)、アブラハムはその妻(つま)サラをカナンの地(ち)にあるマムレ、すなわちヘブロンの前(まえ)のマクペラの畑(はたけ)のほら穴(あな)に葬(ほうむ)った。 20このように畑(はたけ)とその中(なか)にあるほら穴(あな)とはヘテの人々(ひとびと)によってアブラハムの所有(しょゆう)の墓地(ぼち)と定(さだ)められた。

第二四章

1アブラハムは年(とし)が進(すす)んで老人(ろうじん)となった。主(しゅ)はすべての事(こと)にアブラハムを恵(めぐ)まれた。 2さてアブラハムは所有(しょゆう)のすべてを管理(かんり)させていた家(いえ)の年長(ねんちょう)のしもべに言(い)った、「あなたの手(て)をわたしのももの下(した)に入(い)れなさい。 3わたしはあなたに天地(てんち)の神(かみ)、主(しゅ)をさして誓(ちか)わせる。あなたはわたしが今(いま)一緒(いっしょ)に住(す)んでいるカナンびとのうちから、娘(むすめ)をわたしの子(こ)の妻(つま)にめとってはならない。 4あなたはわたしの国(くに)へ行(い)き、親族(しんぞく)の所(ところ)へ行(い)って、わたしの子(こ)イサクのために妻(つま)をめとらなければならない」。 5しもべは彼(かれ)に言(い)った、「もしその女(おんな)がわたしについてこの地(ち)に来(く)ることを好(この)まない時(とき)は、わたしはあなたの子(こ)をあなたの出身(しゅっしん)地(ち)に連(つ)れ帰(かえ)るべきでしょうか」。 6アブラハムは彼(かれ)に言(い)った、「わたしの子(こ)は決(けっ)して向(む)こうへ連(つ)れ帰(かえ)ってはならない。 7天(てん)の神(かみ)、主(しゅ)はわたしを父(ちち)の家(いえ)、親族(しんぞく)の地(ち)から導(みちび)き出(だ)してわたしに語(かた)り、わたしに誓(ちか)って、おまえの子孫(しそん)にこの地(ち)を与(あた)えると言(い)われた。主(しゅ)は、み使(つかい)をあなたの前(まえ)につかわされるであろう。あなたはあそこからわたしの子(こ)に妻(つま)をめとらねばならない。 8けれどもその女(おんな)があなたについて来(く)ることを好(この)まないなら、あなたはこの誓(ちか)いを解(と)かれる。ただわたしの子(こ)を向(む)こうへ連(つ)れ帰(かえ)ってはならない」。 9そこでしもべは手(て)を主人(しゅじん)アブラハムのももの下(した)に入(い)れ、この事(こと)について彼(かれ)に誓(ちか)った。

10しもべは主人(しゅじん)のらくだのうちから十頭(とう)のらくだを取(と)って出(で)かけた。すなわち主人(しゅじん)のさまざまの良(よ)い物(もの)を携(たずさ)え、立(た)ってアラム・ナハライムにむかい、ナホルの町(まち)へ行(い)った。 11彼(かれ)はらくだを町(まち)の外(そと)の、水(みず)の井戸(いど)のそばに伏(ふ)させた。時(とき)は夕暮(ゆうぐれ)で、女(おんな)たちが水(みず)をくみに出(で)る時刻(じこく)であった。 12彼(かれ)は言(い)った、「主人(しゅじん)アブラハムの神(かみ)、主(しゅ)よ、どうか、きょう、わたしにしあわせを授(さづ)け、主人(しゅじん)アブラハムに恵(めぐ)みを施(ほどこ)してください。 13わたしは泉(いずみ)のそばに立(た)っています。町(まち)の人々(ひとびと)の娘(むすめ)たちが水(みず)をくみに出(で)てきたとき、 14娘(むすめ)に向(む)かって『お願(ねが)いです、あなたの水(みず)がめを傾(かたむ)けてわたしに飲(の)ませてください』と言(い)い、娘(むすめ)が答(こた)えて、『お飲(の)みください。あなたのらくだにも飲(の)ませましょう』と言(い)ったなら、その者(もの)こそ、あなたがしもべイサクのために定(さだ)められた者(もの)ということにしてください。わたしはこれによって、あなたがわたしの主人(しゅじん)に恵(めぐ)みを施(ほどこ)されることを知(し)りましょう」。

15彼(かれ)がまだ言(い)い終(おわ)らないうちに、アブラハムの兄弟(きょうだい)ナホルの妻(つま)ミルカの子(こ)ベトエルの娘(むすめ)リベカが、水(みず)がめを肩(かた)に載(の)せて出(で)てきた。 16その娘(むすめ)は非常(ひじょう)に美(うつく)しく、男(おとこ)を知(し)らぬ処女(しょじょ)であった。彼女(かのじょ)が泉(いずみ)に降(ふ)りて、水(みず)がめを満(み)たし、上(あ)がってきた時(とき)、 17しもべは走(はし)り寄(よ)って、彼女(かのじょ)に会(あ)って言(い)った、「お願(ねが)いです。あなたの水(みず)がめの水(みず)を少(すこ)し飲(の)ませてください」。 18すると彼女(かのじょ)は「わが主(しゅ)よ、お飲(の)みください」と言(い)って、急(いそ)いで水(みず)がめを自分(じぶん)の手(て)に取(と)りおろして彼(かれ)に飲(の)ませた。 19飲(の)ませ終(おわ)って、彼女(かのじょ)は言(い)った、「あなたのらくだもみな飲(の)み終(おわ)るまで、わたしは水(みず)をくみましょう」。 20彼女(かのじょ)は急(いそ)いでかめの水(みず)を水(みず)ぶねにあけ、再(ふたた)び水(みず)をくみに井戸(いど)に走(はし)って行(い)って、すべてのらくだのために水(みず)をくんだ。 21その間(かん)その人(ひと)は主(しゅ)が彼(かれ)の旅(たび)の祝福(しゅくふく)されるか、どうかを知(し)ろうと、黙(だま)って彼女(かのじょ)を見(み)つめていた。

22らくだが飲(の)み終(おわ)ったとき、その人(ひと)は重(おも)さ半(はん)シケルの金(きん)の鼻輪(はなわ)一つと、重(おも)さ十シケルの金(きん)の腕輪(うでわ)二つを取(と)って、 23言(い)った、「あなたはだれの娘(むすめ)か、わたしに話(はな)してください。あなたの父(ちち)の家(いえ)にわたしどもの泊(と)まる場所(ばしょ)がありましょうか」。 24彼女(かのじょ)は彼(かれ)に言(い)った、「わたしはナホルの妻(つま)ミルカの子(こ)ベトエルの娘(むすめ)です」。 25また彼(かれ)に言(い)った、「わたしどもには、わらも、飼葉(かいば)もたくさんあります。また泊(と)まる場所(ばしょ)もあります」。 26その人(ひと)は頭(とう)を下(さ)げ、主(しゅ)を拝(はい)して、 27言(い)った、「主人(しゅじん)アブラハムの神(かみ)、主(しゅ)はほむべきかな。主(しゅ)はわたしの主人(しゅじん)にいつくしみと、まこととを惜(お)しまれなかった。そして主(しゅ)は旅(たび)にあるわたしを主人(しゅじん)の兄弟(きょうだい)の家(いえ)に導(みちび)かれた」。

28娘(むすめ)は走(はし)って行(い)って、母(はは)の家(いえ)のものにこれらの事(こと)を告(つ)げた。 29リベカにひとりの兄(あに)があって、名(な)をラバンといった。ラバンは泉(いずみ)のそばにいるその人(ひと)の所(ところ)へ走(はし)って行(い)った。 30彼(かれ)は鼻輪(はなわ)と妹(いもうと)の手(て)にある腕輪(うでわ)とを見(み)、また妹(いもうと)リベカが「その人(ひと)はわたしにこう言(い)った」というのを聞(き)いて、その人(ひと)の所(ところ)へ行(い)ってみると、その人(ひと)は泉(いずみ)のほとりで、らくだのそばに立(た)っていた。 31そこでその人(ひと)に言(い)った、「主(しゅ)に祝福(しゅくふく)された人(ひと)よ、おはいりください。なぜ外(そと)に立(た)っておられますか。わたしは家(いえ)を準備(じゅんび)し、らくだのためにも場所(ばしょ)を準備(じゅんび)しておきました」。 32その人(ひと)は家(いえ)にはいった。ラバンはらくだの荷(に)を解(と)いて、わらと飼葉(かいば)をらくだに与(あた)え、また水(みず)を与(あた)えてその人(ひと)の足(あし)と、その従者(じゅうしゃ)たちの足(あし)を洗(あら)わせた。 33そして彼(かれ)の前(まえ)に食物(しょくもつ)を供(そな)えたが、彼(かれ)は言(い)った、「わたしは用向(ようむ)きを話(はな)すまでは食(た)べません」。ラバンは言(い)った、「お話(はな)しください」。

34そこで彼(かれ)は言(い)った、「わたしはアブラハムのしもべです。 35主(しゅ)はわたしの主人(しゅじん)を大(おお)いに祝福(しゅくふく)して、大(おお)いなる者(もの)とされました。主(しゅ)はまた彼(かれ)に羊(ひつじ)、牛(うし)、銀(ぎん)、金(きん)、男女(だんじょ)の奴隷(どれい)、らくだ、ろばを与(あた)えられました。 36主人(しゅじん)の妻(つま)サラは年老(としお)いてから、主人(しゅじん)に男(おとこ)の子(こ)を産(う)みました。主人(しゅじん)はその所有(しょゆう)を皆(みな)これに与(あた)えました。 37ところで主人(しゅじん)はわたしに誓(ちか)わせて言(い)いました、『わたしの住(す)んでいる地(ち)のカナンびとの娘(むすめ)を、わたしの子(こ)の妻(つま)にめとってはならない。 38おまえはわたしの父(ちち)の家(いえ)、親族(しんぞく)の所(ところ)へ行(い)って、わたしの子(こ)に妻(つま)をめとらなければならない』。 39わたしは主人(しゅじん)に言(い)いました、『もしその女(おんな)がわたしについてこない時(とき)はどういたしましょうか』。 40主人(しゅじん)はわたしに言(い)いました、『わたしの仕(つか)えている主(しゅ)は、み使(つかい)をおまえと一緒(いっしょ)につかわして、おまえの旅(たび)にさいわいを与(あた)えられるであろう。おまえはわたしの親族(しんぞく)、わたしの父(ちち)の家(いえ)からわたしの子(こ)に妻(つま)をめとらなければならない。 41そのとき、おまえはわたしにした誓(ちか)いから解(と)かれるであろう。またおまえがわたしの親族(しんぞく)に行(い)く時(とき)、彼(かれ)らがおまえにその娘(むすめ)を与(あた)えないなら、おまえはわたしにした誓(ちか)いから解(と)かれるであろう』。

42わたしはきょう、泉(いずみ)のところにきて言(い)いました、『主人(しゅじん)アブラハムの神(かみ)、主(しゅ)よ、どうか今(いま)わたしのゆく道(みち)にさいわいを与(あた)えてください。 43わたしはこの泉(いずみ)のそばに立(た)っていますが、水(みず)をくみに出(で)てくる娘(むすめ)に向(む)かって、「お願(ねが)いです。あなたの水(みず)がめの水(みず)を少(すこ)し飲(の)ませてください」と言(い)い、 44「お飲(の)みください。あなたのらくだのためにも、くみましょう」とわたしに言(い)うなら、その娘(むすめ)こそ、主(しゅ)がわたしの主人(しゅじん)の子(こ)のために定(さだ)められた女(おんな)ということにしてください』。

45わたしが心(こころ)のうちでそう言(い)い終(おわ)らないうちに、リベカが水(みず)がめを肩(かた)に載(の)せて出(で)てきて、水(みず)をくみに泉(いずみ)に降(ふ)りたので、わたしは『お願(ねが)いです、飲(の)ませてください』と言(い)いますと、 46彼女(かのじょ)は急(いそ)いで水(みず)がめを肩(かた)からおろし、『お飲(の)みください。わたしはあなたのらくだにも飲(の)ませましょう』と言(い)いました。それでわたしは飲(の)みましたが、彼女(かのじょ)はらくだにも飲(の)ませました。 47わたしは彼女(かのじょ)に尋(たず)ねて、『あなたはだれの娘(むすめ)ですか』と言(い)いますと、『ナホルとその妻(つま)ミルカの子(こ)ベトエルの娘(むすめ)です』と答(こた)えました。そこでわたしは彼女(かのじょ)の鼻(はな)に鼻輪(はなわ)をつけ、手(て)に腕輪(うでわ)をつけました。 48そしてわたしは頭(あたま)をさげて主(しゅ)を拝(はい)し、主人(しゅじん)アブラハムの神(かみ)、主(しゅ)をほめたたえました。主(しゅ)は主人(しゅじん)の兄弟(きょうだい)の娘(むすめ)を子(こ)にめとらせようと、わたしを正(ただ)しい道(みち)に導(みちび)かれたからです。 49あなたがたが、もしわたしの主人(しゅじん)にいつくしみと、まことを尽(つく)そうと思(おも)われるなら、そうとわたしにお話(はな)しください。そうでなければ、そうでないとお話(はな)しください。それによってわたしは右(みぎ)か左(ひだり)に決(き)めましょう」。

50ラバンとベトエルは答(こた)えて言(い)った、「この事(こと)は主(しゅ)から出(で)たことですから、わたしどもはあなたによしあしを言(い)うことができません。 51リベカがここにおりますから連(つ)れて行(い)って、主(しゅ)が言(い)われたように、あなたの主人(しゅじん)の子(こ)の妻(つま)にしてください」。

52アブラハムのしもべは彼(かれ)らの言葉(ことば)を聞(き)いて、地(ち)に伏(ふ)し、主(しゅ)を拝(はい)した。 53そしてしもべは銀(ぎん)の飾(かざ)りと、金(きん)の飾(かざ)り、および衣服(いふく)を取(と)り出(だ)してリベカに与(あた)え、その兄(あに)と母(はは)とにも価(あたい)の高(たか)い品々(しなじな)を与(あた)えた。 54彼(かれ)と従者(じゅうしゃ)たちは飲(の)み食(く)いして宿(やど)ったが、あくる朝(あさ)彼(かれ)らが起(お)きた時(とき)、しもべは言(い)った、「わたしを主人(しゅじん)のもとに帰(かえ)らせてください」。 55リベカの兄(あに)と母(はは)とは言(い)った、「娘(むすめ)は数日(すうじつ)、少(すく)なくとも十日(か)、わたしどもと共(とも)にいて、それから行(い)かせましょう」。 56しもべは彼(かれ)らに言(い)った、「主(しゅ)はわたしの道(みち)にさいわいを与(あた)えられましたから、わたしを引(ひ)きとめずに、主人(しゅじん)のもとに帰(かえ)らせてください」。 57彼(かれ)らは言(い)った、「娘(むすめ)を呼(よ)んで聞(き)いてみましょう」。 58彼(かれ)らはリベカを呼(よ)んで言(い)った、「あなたはこの人(ひと)と一緒(いっしょ)に行(い)きますか」。彼女(かのじょ)は言(い)った、「行(い)きます」。 59そこで彼(かれ)らは妹(いもうと)リベカと、そのうばと、アブラハムのしもべと、その従者(じゅうしゃ)とを送(おく)り去(さ)らせた。 60彼(かれ)らはリベカを祝福(しゅくふく)して彼女(かのじょ)に言(い)った、
「妹(いもうと)よ、あなたは、ちよろずの人(ひと)の母(はは)となれ。
あなたの子孫(しそん)はその敵(てき)の門(もん)を打(う)ち取(と)れ」。
61リベカは立(た)って侍女(じじょ)たちと共(とも)にらくだに乗(の)り、その人(ひと)に従(したが)って行(い)った。しもべはリベカを連(つ)れて立(た)ち去(さ)った。

62さてイサクはベエル・ラハイ・ロイからきて、ネゲブの地(ち)に住(す)んでいた。 63イサクは夕暮(ゆうぐれ)、野(の)に出(で)て歩(ある)いていたが、目(め)をあげて、らくだの来(く)るのを見(み)た。 64リベカは目(め)をあげてイサクを見(み)、らくだからおりて、 65しもべに言(い)った、「わたしたちに向(む)かって、野(の)を歩(ある)いて来(く)るあの人(ひと)はだれでしょう」。しもべは言(い)った、「あれはわたしの主人(しゅじん)です」。するとリベカは、被衣(かずき)で身(み)をおおった。 66しもべは自分(じぶん)がしたことのすべてをイサクに話(はな)した。 67イサクはリベカを天幕(てんまく)に連(つ)れて行(い)き、リベカをめとって妻(つま)とし、彼女(かのじょ)を愛(あい)した。こうしてイサクは母(はは)の死後(しご)、慰(なぐさ)めを得(え)た。

第二五章

1アブラハムは再(ふたた)び妻(つま)をめとった。名(な)をケトラという。 2彼女(かのじょ)はジムラン、ヨクシャン、メダン、ミデアン、イシバクおよびシュワを産(う)んだ。 3ヨクシャンの子(こ)はシバとデダン。デダンの子孫(しそん)はアシュリびと、レトシびと、レウミびとである。 4ミデアンの子孫(しそん)はエパ、エペル、ヘノク、アビダ、エルダアであって、これらは皆(みな)ケトラの子孫(しそん)であった。 5アブラハムはその所有(しょゆう)をことごとくイサクに与(あた)えた。 6またそのそばめたちの子(こ)らにもアブラハムは物(もの)を与(あた)え、なお生(い)きている間(あいだ)に彼(かれ)らをその子(こ)イサクから離(はな)して、東(ひがし)の方(ほう)、東(ひがし)の国(くに)に移(うつ)らせた。

7アブラハムの生(い)きながらえた年(とし)は百七十五年(ねん)である。 8アブラハムは高齢(こうれい)に達(たっ)し、老人(ろうじん)となり、年(とし)が満(み)ちて息(いき)絶(た)え、死(し)んでその民(たみ)に加(くわ)えられた。 9その子(こ)イサクとイシマエルは彼(かれ)をヘテびとゾハルの子(こ)エフロンの畑(はたけ)にあるマクペラのほら穴(あな)に葬(ほうむ)った。これはマムレの向(む)かいにあり、 10アブラハムがヘテの人々(ひとびと)から、買(か)い取(と)った畑(はたけ)であって、そこにアブラハムとその妻(つま)サラが葬(ほうむ)られた。 11アブラハムが死(し)んだ後(のち)、神(かみ)はその子(こ)イサクを祝福(しゅくふく)された。イサクはベエル・ラハイ・ロイのほとりに住(す)んだ。

12サラのつかえめエジプトびとハガルがアブラハムに産(う)んだアブラハムの子(こ)イシマエルの系図(けいず)は次(つぎ)のとおりである。 13イシマエルの子(こ)らの名(な)を世代(せだい)にしたがって、その名(な)をいえば次(つぎ)のとおりである。すなわちイシマエルの長子(ちょうし)はネバヨテ、次(つぎ)はケダル、アデビエル、ミブサム、 14ミシマ、ドマ、マッサ、 15ハダデ、テマ、エトル、ネフシ、ケデマ。 16これはイシマエルの子(こ)らであり、村(むら)と宿営(しゅくえい)とによる名(な)であって、その氏族(しぞく)による十二人(にん)の君(きみ)たちである。 17イシマエルのよわいは百三十七年(ねん)である。彼(かれ)は息(いき)絶(た)えて死(し)に、その民(たみ)に加(くわ)えられた。 18イシマエルの子(こ)らはハビラからエジプトの東(ひがし)、シュルまでの間(あいだ)に住(す)んで、アシュルに及(およ)んだ。イシマエルはすべての兄弟(きょうだい)の東(ひがし)に住(す)んだ。

19アブラハムの子(こ)イサクの系図(けいず)は次(つぎ)のとおりである。アブラハムの子(こ)はイサクであって、 20イサクは四十歳(さい)の時(とき)、パダンアラムのアラムびとベトエルの娘(むすめ)で、アラムびとラバンの妹(いもうと)リベカを妻(つま)にめとった。 21イサクは妻(つま)が子(こ)を産(う)まなかったので、妻(つま)のために主(しゅ)に祈(いの)り願(ねが)った。主(しゅ)はその願(ねが)いを聞(き)かれ、妻(つま)リベカはみごもった。 22ところがその子(こ)らが胎内(たいない)で押(お)し合(あ)ったので、リベカは言(い)った、「こんなことでは、わたしはどうなるでしょう」。彼女(かのじょ)は行(い)って主(しゅ)に尋(たず)ねた。 23主(しゅ)は彼女(かのじょ)に言(い)われた、
「二つの国民(こくみん)があなたの胎内(たいない)にあり、
二つの民(たみ)があなたの腹(はら)から別(わか)れて出(で)る。
一つの民(たみ)は他(た)の民(たみ)よりも強(つよ)く、
兄(あに)は弟(おとうと)に仕(つか)えるであろう」。
24彼女(かのじょ)の出産(しゅっさん)の日(ひ)がきたとき、胎内(たいない)にはふたごがあった。 25さきに出(で)たのは赤(あか)くて全身(ぜんしん)毛(け)ごろものようであった。それで名(な)をエサウと名(な)づけた。 26その後(のち)に弟(おとうと)が出(で)た。その手(て)はエサウのかかとをつかんでいた。それで名(な)をヤコブと名(な)づけた。リベカが彼(かれ)らを産(う)んだ時(とき)、イサクは六十歳(さい)であった。

27さてその子(こ)らは成長(せいちょう)し、エサウは巧(たく)みな狩猟者(しゅりょうしゃ)となり、野(の)の人(ひと)となったが、ヤコブは穏(おだ)やかな人(ひと)で、天幕(てんまく)に住(す)んでいた。 28イサクは、しかの肉(にく)が好(す)きだったので、エサウを愛(あい)したが、リベカはヤコブを愛(あい)した。

29ある日(ひ)ヤコブが、あつものを煮(に)ていた時(とき)、エサウは飢(う)え疲(つか)れて野(の)から帰(かえ)ってきた。 30エサウはヤコブに言(い)った、「わたしは飢(う)え疲(つか)れた。お願(ねが)いだ。赤(あか)いもの、その赤(あか)いものをわたしに食(た)べさせてくれ」。彼(かれ)が名(な)をエドムと呼(よ)ばれたのはこのためである。 31ヤコブは言(い)った、「まずあなたの長子(ちょうし)の特権(とっけん)をわたしに売(う)りなさい」。 32エサウは言(い)った、「わたしは死(し)にそうだ。長子(ちょうし)の特権(とっけん)などわたしに何(なに)になろう」。 33ヤコブはまた言(い)った、「まずわたしに誓(ちか)いなさい」。彼(かれ)は誓(ちか)って長子(ちょうし)の特権(とっけん)をヤコブに売(う)った。 34そこでヤコブはパンとレンズ豆(まめ)のあつものとをエサウに与(あた)えたので、彼(かれ)は飲(の)み食(く)いして、立(た)ち去(さ)った。このようにしてエサウは長子(ちょうし)の特権(とっけん)を軽(かろ)んじた。

第二六章

1アブラハムの時(とき)にあった初(はじ)めのききんのほか、またききんがその国(くに)にあったので、イサクはゲラルにいるペリシテびとの王(おう)アビメレクの所(ところ)へ行(い)った。 2その時(とき)、主(しゅ)は彼(かれ)に現(あらわ)れて言(い)われた、「エジプトへ下(くだ)ってはならない。わたしがあなたに示(しめ)す地(ち)にとどまりなさい。 3あなたがこの地(ち)にとどまるなら、わたしはあなたと共(とも)にいて、あなたを祝福(しゅくふく)し、これらの国(くに)をことごとくあなたと、あなたの子孫(しそん)とに与(あた)え、わたしがあなたの父(ちち)アブラハムに誓(ちか)った誓(ちか)いを果(はた)そう。 4またわたしはあなたの子孫(しそん)を増(ま)して天(てん)の星(ほし)のようにし、あなたの子孫(しそん)にこれらの地(ち)をみな与(あた)えよう。そして地(ち)のすべての国民(こくみん)はあなたの子孫(しそん)によって祝福(しゅくふく)をえるであろう。 5アブラハムがわたしの言葉(ことば)にしたがってわたしのさとしと、いましめと、さだめと、おきてとを守(まも)ったからである」。

6こうしてイサクはゲラルに住(す)んだ。 7その所(ところ)の人々(ひとびと)が彼(かれ)の妻(つま)のことを尋(たず)ねたとき、「彼女(かのじょ)はわたしの妹(いもうと)です」と彼(かれ)は言(い)った。リベカは美(うつく)しかったので、その所(ところ)の人々(ひとびと)がリベカのゆえに自分(じぶん)を殺(ころ)すかもしれないと思(おも)って、「わたしの妻(つま)です」と言(い)うのを恐(おそ)れたからである。 8イサクは長(なが)らくそこにいたが、ある日(ひ)ペリシテびとの王(おう)アビメレクは窓(まど)から外(そと)をながめていて、イサクがその妻(つま)リベカと戯(たわむ)れているのを見(み)た。 9そこでアビメレクはイサクを召(め)して言(い)った、「彼女(かのじょ)は確(たし)かにあなたの妻(つま)です。あなたはどうして『彼女(かのじょ)はわたしの妹(いもうと)です』と言(い)われたのですか」。イサクは彼(かれ)に言(い)った、「わたしは彼女(かのじょ)のゆえに殺(ころ)されるかもしれないと思(おも)ったからです」。 10アビメレクは言(い)った、「あなたはどうしてこんな事(こと)をわれわれにされたのですか。民(たみ)のひとりが軽々(かるがる)しくあなたの妻(つま)と寝(ね)るような事(こと)があれば、その時(とき)あなたはわれわれに罪(つみ)を負(お)わせるでしょう」。 11それでアビメレクはすべての民(たみ)に命(めい)じて言(い)った、「この人(ひと)、またはその妻(つま)にさわる者(もの)は必(かなら)ず死(し)ななければならない」。

12イサクはその地(ち)に種(たね)をまいて、その年(とし)に百倍(ばい)の収穫(しゅうかく)を得(え)た。このように主(しゅ)が彼(かれ)を祝福(しゅくふく)されたので、 13彼(かれ)は富(と)み、またますます栄(さか)えて非常(ひじょう)に裕福(ゆうふく)になり、 14羊(ひつじ)の群(む)れ、牛(うし)の群(む)れ及(およ)び多(おお)くのしもべを持(も)つようになったので、ペリシテびとは彼(かれ)をねたんだ。 15またペリシテびとは彼(かれ)の父(ちち)アブラハムの時(とき)に、父(ちち)のしもべたちが掘(ほ)ったすべての井戸(いど)をふさぎ、土(つち)で埋(う)めた。 16アビメレクはイサクに言(い)った、「あなたはわれわれよりも、はるかに強(つよ)くなられたから、われわれの所(ところ)を去(さ)ってください」。

17イサクはそこを去(さ)り、ゲラルの谷(たに)に天幕(てんまく)を張(は)ってその所(ところ)に住(す)んだ。 18そしてイサクは父(ちち)アブラハムの時(とき)に人々(ひとびと)の掘(ほ)った水(みず)の井戸(いど)を再(ふたた)び掘(ほ)った。アブラハムの死後(しご)、ペリシテびとがふさいだからである。イサクは父(ちち)がつけた名(な)にしたがってそれらに名(な)をつけた。 19しかしイサクのしもべたちが谷(たに)の中(なか)を掘(ほ)って、そこにわき出(で)る水(みず)の井戸(いど)を見(み)つけたとき、 20ゲラルの羊飼(ひつじかい)たちは、「この水(みず)はわれわれのものだ」と言(い)って、イサクの羊飼(ひつじかい)たちと争(あらそ)ったので、イサクはその井戸(いど)の名(な)をエセクと名(な)づけた。彼(かれ)らが彼(かれ)と争(あらそ)ったからである。 21彼(かれ)らはまた一つの井戸(いど)を掘(ほ)ったが、これをも争(あらそ)ったので、名(な)をシテナと名(な)づけた。 22イサクはそこから移(うつ)ってまた一つの井戸(いど)を掘(ほ)ったが、彼(かれ)らはこれを争(あらそ)わなかったので、その名(な)をレホボテと名(な)づけて言(い)った、「いま主(しゅ)がわれわれの場所(ばしょ)を広(ひろ)げられたから、われわれはこの地(ち)にふえるであろう」。

23彼(かれ)はそこからベエルシバに上(のぼ)った。 24その夜(よ)、主(しゅ)は彼(かれ)に現(あらわ)れて言(い)われた、「わたしはあなたの父(ちち)アブラハムの神(かみ)である。あなたは恐(おそ)れてはならない。わたしはあなたと共(とも)におって、あなたを祝福(しゅくふく)し、わたしのしもべアブラハムのゆえにあなたの子孫(しそん)を増(ま)すであろう」。 25それで彼(かれ)はその所(ところ)に祭壇(さいだん)を築(きず)いて、主(しゅ)の名(な)を呼(よ)び、そこに天幕(てんまく)を張(は)った。またイサクのしもべたちはそこに一つの井戸(いど)を掘(ほ)った。

26時(とき)にアビメレクがその友(とも)アホザテと、軍勢(ぐんぜい)の長(ちょう)ピコルと共(とも)にゲラルからイサクのもとにきたので、 27イサクは彼(かれ)らに言(い)った、「あなたがたはわたしを憎(にく)んで、あなたがたの中(なか)からわたしを追(お)い出(だ)されたのに、どうしてわたしの所(ところ)にこられたのですか」。 28彼(かれ)らは言(い)った、「われわれは主(しゅ)があなたと共(とも)におられるのを、はっきり見(み)ましたので、いまわれわれの間(あいだ)、すなわちわれわれとあなたとの間(あいだ)に一つの誓(ちか)いを立(た)てて、あなたと契約(けいやく)を結ぼ(むすぼ)うと思(おも)います。 29われわれはあなたに害(がい)を加(くわ)えたことはなく、ただ良(よ)い事(こと)だけをして、安(やす)らかに去(さ)らせたのですから、あなたはわれわれに悪(わる)い事(こと)をしてはなりません。まことにあなたは主(しゅ)に祝福(しゅくふく)されたかたです」。 30そこでイサクは彼(かれ)らのためにふるまいを設(もう)けた。彼(かれ)らは飲(の)み食(く)いし、 31あくる朝(あさ)、はやく起(お)きて互(たがい)に誓(ちか)った。こうしてイサクは彼(かれ)らを去(さ)らせたので、彼(かれ)らはイサクのもとから穏(おだ)やかに去(さ)った。 32その日(ひ)、イサクのしもべたちがきて、自分(じぶん)たちが掘(ほ)った井戸(いど)について彼(かれ)に告(つ)げて言(い)った、「わたしたちは水(みず)を見(み)つけました」。 33イサクはそれをシバと名(な)づけた。これによってその町(まち)の名(な)は今日(こんにち)にいたるまでベエルシバといわれている。

34エサウは四十歳(さい)の時(とき)、ヘテびとベエリの娘(むすめ)ユデテとヘテびとエロンの娘(むすめ)バスマテとを妻(つま)にめとった。 35彼女(かのじょ)たちはイサクとリベカにとって心(こころ)の痛(いた)みとなった。

第二七章

1イサクは年老(としお)い、目(め)がかすんで見(み)えなくなった時(とき)、長子(ちょうし)エサウを呼(よ)んで言(い)った、「子(こ)よ」。彼(かれ)は答(こた)えて言(い)った、「ここにおります」。 2イサクは言(い)った。「わたしは年老(としお)いて、いつ死(し)ぬかも知(し)れない。 3それであなたの武器(ぶき)、弓矢(ゆみや)をもって野(の)に出(で)かけ、わたしのために、しかの肉(にく)をとってきて、 4わたしの好(す)きなおいしい食(た)べ物(もの)を作(つく)り、持(も)ってきて食(た)べさせよ。わたしは死(し)ぬ前(まえ)にあなたを祝福(しゅくふく)しよう」。

5イサクがその子(こ)エサウに語(かた)るのをリベカは聞(き)いていた。やがてエサウが、しかの肉(にく)を獲(え)ようと野(の)に出(で)かけたとき、 6リベカはその子(こ)ヤコブに言(い)った、「わたしは聞(き)いていましたが、父(ちち)は兄(あに)エサウに、 7『わたしのために、しかの肉(にく)をとってきて、おいしい食(た)べ物(もの)を作(つく)り、わたしに食(た)べさせよ。わたしは死(し)ぬ前(まえ)に、主(しゅ)の前(まえ)であなたを祝福(しゅくふく)しよう』と言(い)いました。 8それで、子(こ)よ、わたしの言葉(ことば)にしたがい、わたしの言(い)うとおりにしなさい。 9群(む)れの所(ところ)へ行(い)って、そこからやぎの子(こ)の良(よ)いのを二頭(とう)わたしの所(ところ)に取(と)ってきなさい。わたしはそれで父(ちち)のために、父(ちち)の好(す)きなおいしい食(た)べ物(もの)を作(つく)りましょう。 10あなたはそれを持(も)って行(い)って父(ちち)に食(た)べさせなさい。父(ちち)は死(し)ぬ前(まえ)にあなたを祝福(しゅくふく)するでしょう」。 11ヤコブは母(はは)リベカに言(い)った、「兄(あに)エサウは毛深(けぶか)い人(ひと)ですが、わたしはなめらかです。 12おそらく父(ちち)はわたしにさわってみるでしょう。そうすればわたしは父(ちち)を欺(あざむ)く者(もの)と思(おも)われ、祝福(しゅくふく)を受(う)けず、かえってのろいを受(う)けるでしょう」。 13母(はは)は彼(かれ)に言(い)った、「子(こ)よ、あなたがうけるのろいはわたしが受(う)けます。ただ、わたしの言葉(ことば)に従(したが)い、行(い)って取(と)ってきなさい」。 14そこで彼(かれ)は行(い)ってやぎの子(こ)を取(と)り、母(はは)の所(ところ)に持(も)ってきたので、母(はは)は父(ちち)の好(す)きなおいしい食(た)べ物(もの)を作(つく)った。 15リベカは家(いえ)にあった長子(ちょうし)エサウの晴着(はれぎ)を取(と)って、弟(おとうと)ヤコブに着(き)せ、 16また子(こ)やぎの皮(かわ)を手(て)と首(くび)のなめらかな所(ところ)とにつけさせ、 17彼女(かのじょ)が作(つく)ったおいしい食(た)べ物(もの)とパンとをその子(こ)ヤコブの手(て)にわたした。

18そこでヤコブは父(ちち)の所(ところ)へ行(い)って言(い)った、「父(ちち)よ」。すると父(ちち)は言(い)った、「わたしはここにいる。子(こ)よ、あなたはだれか」。 19ヤコブは父(ちち)に言(い)った、「長子(ちょうし)エサウです。あなたがわたしに言(い)われたとおりにいたしました。どうぞ起(お)きて、すわってわたしのしかの肉(にく)を食(た)べ、あなたみずからわたしを祝福(しゅくふく)してください」。 20イサクはその子(こ)に言(い)った、「子(こ)よ、どうしてあなたはこんなに早(はや)く手(て)に入(い)れたのか」。彼(かれ)は言(い)った、「あなたの神(かみ)、主(しゅ)がわたしにしあわせを授(さづ)けられたからです」。 21イサクはヤコブに言(い)った、「子(こ)よ、近寄(ちかよ)りなさい。わたしは、さわってみて、あなたが確(たし)かにわが子(こ)エサウであるかどうかをみよう」。 22ヤコブが、父(ちち)イサクに近寄(ちかよ)ったので、イサクは彼(かれ)にさわってみて言(い)った、「声(こえ)はヤコブの声(こえ)だが、手(て)はエサウの手(て)だ」。 23ヤコブの手(て)が兄(あに)エサウの手(て)のように毛深(けぶか)かったため、イサクはヤコブを見(み)わけることができなかったので、彼(かれ)を祝福(しゅくふく)した。 24イサクは言(い)った、「あなたは確(たし)かにわが子(こ)エサウですか」。彼(かれ)は言(い)った、「そうです」。 25イサクは言(い)った、「わたしの所(ところ)へ持(も)ってきなさい。わが子(こ)のしかの肉(にく)を食(た)べて、わたしみずから、あなたを祝福(しゅくふく)しよう」。ヤコブがそれを彼(かれ)の所(ところ)に持(も)ってきたので、彼(かれ)は食(た)べた。またぶどう酒(しゅ)を持(も)ってきたので、彼(かれ)は飲(の)んだ。 26そして父(ちち)イサクは彼(かれ)に言(い)った、「子(こ)よ、さあ、近寄(ちかよ)ってわたしに口(くち)づけしなさい」。 27彼(かれ)が近寄(ちかよ)って口(くち)づけした時(とき)、イサクはその着物(きもの)のかおりをかぎ、彼(かれ)を祝福(しゅくふく)して言(い)った、
「ああ、わが子(こ)のかおりは、
主(しゅ)が祝福(しゅくふく)された野(の)のかおりのようだ。
28どうか神(かみ)が、天(てん)の露(つゆ)と、
地(ち)の肥(こ)えたところと、多(おお)くの穀物(こくもつ)と、
新(あたら)しいぶどう酒(しゅ)とをあなたに賜(たま)わるように。
29もろもろの民(たみ)はあなたに仕(つか)え、
もろもろの国(くに)はあなたに身(み)をかがめる。
あなたは兄弟(きょうだい)たちの主(しゅ)となり、
あなたの母(はは)の子(こ)らは、
あなたに身(み)をかがめるであろう。
あなたをのろう者(もの)はのろわれ、
あなたを祝福(しゅくふく)する者(もの)は祝福(しゅくふく)される」。

30イサクがヤコブを祝福(しゅくふく)し終(おわ)って、ヤコブが父(ちち)イサクの前(まえ)から出(で)て行(い)くとすぐ、兄(あに)エサウが狩(かり)から帰(かえ)ってきた。 31彼(かれ)もまたおいしい食(た)べ物(もの)を作(つく)って、父(ちち)の所(ところ)に持(も)ってきて、言(い)った、「父(ちち)よ、起(お)きてあなたの子(こ)のしかの肉(にく)を食(た)べ、あなたみずから、わたしを祝福(しゅくふく)してください」。 32父(ちち)イサクは彼(かれ)に言(い)った、「あなたは、だれか」。彼(かれ)は言(い)った、「わたしはあなたの子(こ)、長子(ちょうし)エサウです」。 33イサクは激(はげ)しくふるえて言(い)った、「それでは、あのしかの肉(にく)を取(と)って、わたしに持(も)ってきた者(もの)はだれか。わたしはあなたが来(く)る前(まえ)に、みんな食(た)べて彼(かれ)を祝福(しゅくふく)した。ゆえに彼(かれ)が祝福(しゅくふく)を得(え)るであろう」。 34エサウは父(ちち)の言葉(ことば)を聞(き)いた時(とき)、大声(おおごえ)をあげ、激(はげ)しく叫(さけ)んで、父(ちち)に言(い)った、「父(ちち)よ、わたしを、わたしをも祝福(しゅくふく)してください」。 35イサクは言(い)った、「あなたの弟(おとうと)が偽(いつわ)ってやってきて、あなたの祝福(しゅくふく)を奪(うば)ってしまった」。 36エサウは言(い)った、「よくもヤコブと名(な)づけたものだ。彼(かれ)は二度(ど)までもわたしをおしのけた。さきには、わたしの長子(ちょうし)の特権(とっけん)を奪(うば)い、こんどはわたしの祝福(しゅくふく)を奪(うば)った」。また言(い)った、「あなたはわたしのために祝福(しゅくふく)を残(のこ)しておかれませんでしたか」。 37イサクは答(こた)えてエサウに言(い)った、「わたしは彼(かれ)をあなたの主人(しゅじん)とし、兄弟(きょうだい)たちを皆(みな)しもべとして彼(かれ)に与(あた)え、また穀物(こくもつ)とぶどう酒(しゅ)を彼(かれ)に授(さづ)けた。わが子(こ)よ、今(いま)となっては、あなたのために何(なに)ができようか」。 38エサウは父(ちち)に言(い)った、「父(ちち)よ、あなたの祝福(しゅくふく)はただ一つだけですか。父(ちち)よ、わたしを、わたしをも祝福(しゅくふく)してください」。エサウは声(こえ)をあげて泣(な)いた。

39父(ちち)イサクは答(こた)えて彼(かれ)に言(い)った、
「あなたのすみかは地(ち)の肥(こ)えた所(ところ)から離(はな)れ、
また上(うえ)なる天(てん)の露(つゆ)から離(はな)れるであろう。
40あなたはつるぎをもって世(よ)を渡(わた)り、
あなたの弟(おとうと)に仕(つか)えるであろう。
しかし、あなたが勇(いさ)み立(た)つ時(とき)、
首(くび)から、そのくびきを振(ふ)り落(おと)すであろう」。

41こうしてエサウは父(ちち)がヤコブに与(あた)えた祝福(しゅくふく)のゆえにヤコブを憎(にく)んだ。エサウは心(こころ)の内(うち)で言(い)った、「父(ちち)の喪(も)の日(ひ)も遠(とお)くはないであろう。その時(とき)、弟(おとうと)ヤコブを殺(ころ)そう」。 42しかしリベカは長子(ちょうし)エサウのこの言葉(ことば)を人(ひと)づてに聞(き)いたので、人(ひと)をやり、弟(おとうと)ヤコブを呼(よ)んで言(い)った、「兄(あに)エサウはあなたを殺(ころ)そうと考(かんが)えて、みずから慰(なぐさ)めています。 43子(こ)よ、今(いま)わたしの言葉(ことば)に従(したが)って、すぐハランにいるわたしの兄(あに)ラバンのもとにのがれ、 44あなたの兄(あに)の怒(いか)りが解(と)けるまで、しばらく彼(かれ)の所(ところ)にいなさい。 45兄(あに)の憤(いきどお)りが解(と)けて、あなたのした事(こと)を兄(あに)が忘(わす)れるようになったならば、わたしは人(ひと)をやって、あなたをそこから迎(むか)えましょう。どうして、わたしは一日(にち)のうちにあなたがたふたりを失(うしな)ってよいでしょうか」。

46リベカはイサクに言(い)った、「わたしはヘテびとの娘(むすめ)どものことで、生(い)きているのがいやになりました。もしヤコブがこの地(ち)の、あの娘(むすめ)どものようなヘテびとの娘(むすめ)を妻(つま)にめとるなら、わたしは生(い)きていて、何(なに)になりましょう」。

第二八章

1イサクはヤコブを呼(よ)んで、これを祝福(しゅくふく)し、命(めい)じて言(い)った、「あなたはカナンの娘(むすめ)を妻(つま)にめとってはならない。 2立(た)ってパダンアラムへ行(い)き、あなたの母(はは)の父(ちち)ベトエルの家(いえ)に行(い)って、そこであなたの母(はは)の兄(あに)ラバンの娘(むすめ)を妻(つま)にめとりなさい。 3全能(ぜんのう)の神(かみ)が、あなたを祝福(しゅくふく)し、多(おお)くの子(こ)を得(え)させ、かつふえさせて、多(おお)くの国民(こくみん)とし、 4またアブラハムの祝福(しゅくふく)をあなたと子孫(しそん)とに与(あた)えて、神(かみ)がアブラハムに授(さづ)けられたあなたの寄留(きりゅう)の地(ち)を継(つ)がせてくださるように」。 5こうしてイサクはヤコブを送(おく)り出(だ)した。ヤコブはパダンアラムに向(む)かい、アラムびとベトエルの子(こ)で、ヤコブとエサウとの母(はは)リベカの兄(あに)ラバンのもとへ行(い)った。

6さてエサウは、イサクがヤコブを祝福(しゅくふく)して、パダンアラムにつかわし、そこから妻(つま)をめとらせようとしたこと、彼(かれ)を祝福(しゅくふく)し、命(めい)じて「あなたはカナンの娘(むすめ)を妻(つま)にめとってはならない」と言(い)ったこと、 7そしてヤコブが父母(ふぼ)の言葉(ことば)に従(したが)って、パダンアラムへ行(い)ったことを知(し)ったとき、 8彼(かれ)はカナンの娘(むすめ)が父(ちち)イサクの心(こころ)にかなわないのを見(み)た。 9そこでエサウはイシマエルの所(ところ)に行(い)き、すでにある妻(つま)たちのほかにアブラハムの子(こ)イシマエルの娘(むすめ)で、ネバヨテの妹(いもうと)マハラテを妻(つま)にめとった。

10さてヤコブはベエルシバを立(た)って、ハランへ向(む)かったが、 11一つの所(ところ)に着(つ)いた時(とき)、日(ひ)が暮(く)れたので、そこに一夜(や)を過(す)ごし、その所(ところ)の石(いし)を取(と)ってまくらとし、そこに伏(ふ)して寝(ね)た。 12時(とき)に彼(かれ)は夢(ゆめ)をみた。一つのはしごが地(ち)の上(うえ)に立(た)っていて、その頂(いただき)は天(てん)に達(たっ)し、神(かみ)の使(つかい)たちがそれを上(のぼ)り下(くだ)りしているのを見(み)た。 13そして主(しゅ)は彼(かれ)のそばに立(た)って言(い)われた、「わたしはあなたの父(ちち)アブラハムの神(かみ)、イサクの神(かみ)、主(しゅ)である。あなたが伏(ふ)している地(ち)を、あなたと子孫(しそん)とに与(あた)えよう。 14あなたの子孫(しそん)は地(ち)のちりのように多(おお)くなって、西(にし)、東(ひがし)、北(きた)、南(みなみ)にひろがり、地(ち)の諸(しょ)族(ぞく)はあなたと子孫(しそん)とによって祝福(しゅくふく)をうけるであろう。 15わたしはあなたと共(とも)にいて、あなたがどこへ行(い)くにもあなたを守(まも)り、あなたをこの地(ち)に連(つ)れ帰(かえ)るであろう。わたしは決(けっ)してあなたを捨(す)てず、あなたに語(かた)った事(こと)を行(おこな)うであろう」。 16ヤコブは眠(ねむ)りからさめて言(い)った、「まことに主(しゅ)がこの所(ところ)におられるのに、わたしは知(し)らなかった」。 17そして彼(かれ)は恐(おそ)れて言(い)った、「これはなんという恐(おそ)るべき所(ところ)だろう。これは神(かみ)の家(いえ)である。これは天(てん)の門(もん)だ」。

18ヤコブは朝(あさ)はやく起(お)きて、まくらとしていた石(いし)を取(と)り、それを立(た)てて柱(はしら)とし、その頂(いただき)に油(あぶら)を注(そそ)いで、 19その所(ところ)の名(な)をベテルと名(な)づけた。その町(まち)の名(な)は初(はじ)めはルズといった。 20ヤコブは誓(ちか)いを立(た)てて言(い)った、「神(かみ)がわたしと共(とも)にいまし、わたしの行(い)くこの道(みち)でわたしを守(まも)り、食(た)べるパンと着(き)る着物(きもの)を賜(たま)い、 21安(やす)らかに父(ちち)の家(いえ)に帰(かえ)らせてくださるなら、主(しゅ)をわたしの神(かみ)といたしましょう。 22またわたしが柱(はしら)に立(た)てたこの石(いし)を神(かみ)の家(いえ)といたしましょう。そしてあなたがくださるすべての物(もの)の十分(ぶん)の一を、わたしは必(かなら)ずあなたにささげます」。

第二九章

1ヤコブはその旅(たび)を続(つづ)けて東(ひがし)の民(たみ)の地(ち)へ行(い)った。 2見(み)ると野(の)に一つの井戸(いど)があって、そのかたわらに羊(ひつじ)の三つの群(む)れが伏(ふ)していた。人々(ひとびと)はその井戸(いど)から群(む)れに水(みず)を飲(の)ませるのであったが、井戸(いど)の口(くち)には大(おお)きな石(いし)があった。 3群(む)れが皆(みな)そこに集(あつ)まると、人々(ひとびと)は井戸(いど)の口(くち)から石(いし)をころがして羊(ひつじ)に水(みず)を飲(の)ませ、その石(いし)をまた井戸(いど)の口(くち)の元(もと)のところに返(かえ)しておくのである。

4ヤコブは人々(ひとびと)に言(い)った、「兄弟(きょうだい)たちよ、あなたがたはどこからこられたのですか」。彼(かれ)らは言(い)った、「わたしたちはハランからです」。 5ヤコブは彼(かれ)らに言(い)った、「あなたがたはナホルの子(こ)ラバンを知(し)っていますか」。彼(かれ)らは言(い)った、「知(し)っています」。 6ヤコブはまた彼(かれ)らに言(い)った、「彼(かれ)は無事(ぶじ)ですか」。彼(かれ)らは言(い)った、「無事(ぶじ)です。御覧(ごらん)なさい。彼(かれ)の娘(むすめ)ラケルはいま羊(ひつじ)と一緒(いっしょ)にここへきます」。 7ヤコブは言(い)った、「日(ひ)はまだ高(たか)いし、家畜(かちく)を集(あつ)める時(とき)でもない。あなたがたは羊(ひつじ)に水(みず)を飲(の)ませてから、また行(い)って飼(か)いなさい」。 8彼(かれ)らは言(い)った、「わたしたちはそれはできないのです。群(む)れがみな集(あつ)まった上(うえ)で、井戸(いど)の口(くち)から石(いし)をころがし、それから羊(ひつじ)に水(みず)を飲(の)ませるのです」。

9ヤコブがなお彼(かれ)らと語(かた)っている時(とき)に、ラケルは父(ちち)の羊(ひつじ)と一緒(いっしょ)にきた。彼女(かのじょ)は羊(ひつじ)を飼(か)っていたからである。 10ヤコブは母(はは)の兄(あに)ラバンの娘(むすめ)ラケルと母(はは)の兄(あに)ラバンの羊(ひつじ)とを見(み)た。そしてヤコブは進(すす)み寄(よ)って井戸(いど)の口(くち)から石(いし)をころがし、母(はは)の兄(あに)ラバンの羊(ひつじ)に水(みず)を飲(の)ませた。 11ヤコブはラケルに口(くち)づけし、声(こえ)をあげて泣(な)いた。 12ヤコブはラケルに、自分(じぶん)がラケルの父(ちち)のおいであり、リベカの子(こ)であることを告(つ)げたので、彼女(かのじょ)は走(はし)って行(い)って父(ちち)に話(はな)した。

13ラバンは妹(いもうと)の子(こ)ヤコブがきたという知(し)らせを聞(き)くとすぐ、走(はし)って行(い)ってヤコブを迎(むか)え、これを抱(だ)いて口(くち)づけし、家(いえ)に連(つ)れてきた。そこでヤコブはすべての事(こと)をラバンに話(はな)した。 14ラバンは彼(かれ)に言(い)った、「あなたはほんとうにわたしの骨肉(こつにく)です」。ヤコブは一か月(げつ)の間(あいだ)彼(かれ)と共(とも)にいた。

15時(とき)にラバンはヤコブに言(い)った、「あなたはわたしのおいだからといって、ただでわたしのために働(はたら)くこともないでしょう。どんな報酬(ほうしゅう)を望(のぞ)みますか、わたしに言(い)ってください」。 16さてラバンにはふたりの娘(むすめ)があった。姉(あね)の名(な)はレアといい、妹(いもうと)の名(な)はラケルといった。 17レアは目(め)が弱(よわ)かったが、ラケルは美(うつく)しくて愛(あい)らしかった。 18ヤコブはラケルを愛(あい)したので、「わたしは、あなたの妹(いもうと)娘(むすめ)ラケルのために七年(ねん)あなたに仕(つか)えましょう」と言(い)った。 19ラバンは言(い)った、「彼女(かのじょ)を他人(たにん)にやるよりもあなたにやる方(ほう)がよい。わたしと一緒(いっしょ)にいなさい」。 20こうして、ヤコブは七年(ねん)の間(あいだ)ラケルのために働(はたら)いたが、彼女(かのじょ)を愛(あい)したので、ただ数日(すうじつ)のように思(おも)われた。

21ヤコブはラバンに言(い)った、「期日(きじつ)が満(み)ちたから、わたしの妻(つま)を与(あた)えて、妻(つま)の所(ところ)にはいらせてください」。 22そこでラバンはその所(ところ)の人々(ひとびと)をみな集(あつ)めて、ふるまいを設(もう)けた。 23夕暮(ゆうぐれ)となったとき、娘(むすめ)レアをヤコブのもとに連(つ)れてきたので、ヤコブは彼女(かのじょ)の所(ところ)にはいった。 24ラバンはまた自分(じぶん)のつかえめジルパを娘(むすめ)レアにつかえめとして与(あた)えた。 25朝(あさ)になって、見(み)ると、それはレアであったので、ヤコブはラバンに言(い)った、「あなたはどうしてこんな事(こと)をわたしにされたのですか。わたしはラケルのために働(はたら)いたのではありませんか。どうしてあなたはわたしを欺(あざむ)いたのですか」。 26ラバンは言(い)った、「妹(いもうと)を姉(あね)より先(さき)にとつがせる事(こと)はわれわれの国(くに)ではしません。 27まずこの娘(むすめ)のために一週(しゅう)間(かん)を過(す)ごしなさい。そうすればあの娘(むすめ)もあなたにあげよう。あなたは、そのため更(さら)に七年(ねん)わたしに仕(つか)えなければならない」。 28ヤコブはそのとおりにして、その一週(しゅう)間(かん)が終(おわ)ったので、ラバンは娘(むすめ)ラケルをも妻(つま)として彼(かれ)に与(あた)えた。 29ラバンはまた自分(じぶん)のつかえめビルハを娘(むすめ)ラケルにつかえめとして与(あた)えた。 30ヤコブはまたラケルの所(ところ)にはいった。彼(かれ)はレアよりもラケルを愛(あい)して、更(さら)に七年(ねん)ラバンに仕(つか)えた。

31主(しゅ)はレアがきらわれるのを見(み)て、その胎(たい)を開(ひら)かれたが、ラケルは、みごもらなかった。 32レアは、みごもって子(こ)を産(う)み、名(な)をルベンと名(な)づけて、言(い)った、「主(しゅ)がわたしの悩(なや)みを顧(かえり)みられたから、今(いま)は夫(おっと)もわたしを愛(あい)するだろう」。 33彼女(かのじょ)はまた、みごもって子(こ)を産(う)み、「主(しゅ)はわたしが嫌(きら)われるのをお聞(き)きになって、わたしにこの子(こ)をも賜(たま)わった」と言(い)って、名(な)をシメオンと名(な)づけた。 34彼女(かのじょ)はまた、みごもって子(こ)を産(う)み、「わたしは彼(かれ)に三人(にん)の子(こ)を産(う)んだから、こんどこそは夫(おっと)もわたしに親(した)しむだろう」と言(い)って、名(な)をレビと名(な)づけた。 35彼女(かのじょ)はまた、みごもって子(こ)を産(う)み、「わたしは今(いま)、主(しゅ)をほめたたえる」と言(い)って名(な)をユダと名(な)づけた。そこで彼女(かのじょ)の、子(こ)を産(う)むことはやんだ。

第三〇章

1ラケルは自分(じぶん)がヤコブに子(こ)を産(う)まないのを知(し)った時(とき)、姉(あね)をねたんでヤコブに言(い)った、「わたしに子(こ)どもをください。さもないと、わたしは死(し)にます」。 2ヤコブはラケルに向(む)かい怒(いか)って言(い)った、「あなたの胎(たい)に子(こ)どもをやどらせないのは神(かみ)です。わたしが神(かみ)に代(かわ)ることができようか」。 3ラケルは言(い)った、「わたしのつかえめビルハがいます。彼女(かのじょ)の所(ところ)におはいりなさい。彼女(かのじょ)が子(こ)を産(う)んで、わたしのひざに置(お)きます。そうすれば、わたしもまた彼女(かのじょ)によって子(こ)を持(も)つでしょう」。 4ラケルはつかえめビルハを彼(かれ)に与(あた)えて、妻(つま)とさせたので、ヤコブは彼女(かのじょ)の所(ところ)にはいった。 5ビルハは、みごもってヤコブに子(こ)を産(う)んだ。 6そこでラケルは、「神(かみ)はわたしの訴(うった)えに答(こた)え、またわたしの声(こえ)を聞(き)いて、わたしに子(こ)を賜(たま)わった」と言(い)って、名(な)をダンと名(な)づけた。 7ラケルのつかえめビルハはまた、みごもって第(だい)二の子(こ)をヤコブに産(う)んだ。 8そこでラケルは、「わたしは激(はげ)しい争(あらそ)いで、姉(あね)と争(あらそ)って勝(か)った」と言(い)って、名(な)をナフタリと名(な)づけた。

9さてレアは自分(じぶん)が子(こ)を産(う)むことのやんだのを見(み)たとき、つかえめジルパを取(と)り、妻(つま)としてヤコブに与(あた)えた。 10レアのつかえめジルパはヤコブに子(こ)を産(う)んだ。 11そこでレアは、「幸運(こううん)がきた」と言(い)って、名(な)をガドと名(な)づけた。 12レアのつかえめジルパは第(だい)二の子(こ)をヤコブに産(う)んだ。 13そこでレアは、「わたしは、しあわせです。娘(むすめ)たちはわたしをしあわせな者(もの)と言(い)うでしょう」と言(い)って、名(な)をアセルと名(な)づけた。

14さてルベンは麦(むぎ)刈(か)りの日(ひ)に野(の)に出(で)て、野(の)で恋(こい)なすびを見(み)つけ、それを母(はは)レアのもとに持(も)ってきた。ラケルはレアに言(い)った、「あなたの子(こ)の恋(こい)なすびをどうぞわたしにください」。 15レアはラケルに言(い)った、「あなたがわたしの夫(おっと)を取(と)ったのは小(ちい)さな事(こと)でしょうか。その上(うえ)、あなたはまたわたしの子(こ)の恋(こい)なすびをも取(と)ろうとするのですか」。ラケルは言(い)った、「それではあなたの子(こ)の恋(こい)なすびに換(か)えて、今夜(こんや)彼(かれ)をあなたと共(とも)に寝(ね)させましょう」。 16夕方(ゆうがた)になって、ヤコブが野(の)から帰(かえ)ってきたので、レアは彼(かれ)を出迎(でむか)えて言(い)った、「わたしの子(こ)の恋(こい)なすびをもって、わたしがあなたを雇(やと)ったのですから、あなたはわたしの所(ところ)に、はいらなければなりません」。ヤコブはその夜(よ)レアと共(とも)に寝(ね)た。 17神(かみ)はレアの願(ねが)いを聞(き)かれたので、彼女(かのじょ)はみごもって五番目(ばんめ)の子(こ)をヤコブに産(う)んだ。 18そこでレアは、「わたしがつかえめを夫(おっと)に与(あた)えたから、神(かみ)がわたしにその価(あたい)を賜(たま)わったのです」と言(い)って、名(な)をイッサカルと名(な)づけた。 19レアはまた、みごもって六番目(ばんめ)の子(こ)をヤコブに産(う)んだ。 20そこでレアは、「神(かみ)はわたしに良(よ)い賜物(たまもの)をたまわった。わたしは六人(にん)の子(こ)を夫(おっと)に産(う)んだから、今(いま)こそ彼(かれ)はわたしと一緒(いっしょ)に住(す)むでしょう」と言(い)って、その名(な)をゼブルンと名(な)づけた。 21その後(のち)、彼女(かのじょ)はひとりの娘(むすめ)を産(う)んで、名(な)をデナと名(な)づけた。 22次(つぎ)に神(かみ)はラケルを心(こころ)にとめられ、彼女(かのじょ)の願(ねが)いを聞(き)き、その胎(たい)を開(ひら)かれたので、 23彼女(かのじょ)は、みごもって男(おとこ)の子(こ)を産(う)み、「神(かみ)はわたしの恥(はじ)をすすいでくださった」と言(い)って、 24名(な)をヨセフと名(な)づけ、「主(しゅ)がわたしに、なおひとりの子(こ)を加(くわ)えられるように」と言(い)った。

25ラケルがヨセフを産(う)んだ時(とき)、ヤコブはラバンに言(い)った、「わたしを去(さ)らせて、わたしの故郷(こきょう)、わたしの国(くに)へ行(い)かせてください。 26あなたに仕(つか)えて得(え)たわたしの妻子(さいし)を、わたしに与(あた)えて行(い)かせてください。わたしがあなたのために働(はたら)いた骨折(ほねお)りは、あなたがごぞんじです」。 27ラバンは彼(かれ)に言(い)った、「もし、あなたの心(こころ)にかなうなら、とどまってください。わたしは主(しゅ)があなたのゆえに、わたしを恵(めぐ)まれるしるしを見(み)ました」。 28また言(い)った、「あなたの報酬(ほうしゅう)を申(もう)し出(で)てください。わたしはそれを払(はら)います」。 29ヤコブは彼(かれ)に言(い)った、「わたしがどのようにあなたに仕(つか)えたか、またどのようにあなたの家畜(かちく)を飼(か)ったかは、あなたがごぞんじです。 30わたしが来(く)る前(まえ)には、あなたの持(も)っておられたものはわずかでしたが、ふえて多(おお)くなりました。主(しゅ)はわたしの行(い)く所(ところ)どこでも、あなたを恵(めぐ)まれました。しかし、いつになったらわたしも自分(じぶん)の家(いえ)を成(な)すようになるでしょうか」。 31彼(かれ)は言(い)った、「何(なに)をあなたにあげようか」。ヤコブは言(い)った、「なにもわたしにくださるに及(およ)びません。もしあなたが、わたしのためにこの一つの事(こと)をしてくださるなら、わたしは今(いま)一度(ど)あなたの群(む)れを飼(か)い、守(まも)りましょう。 32わたしはきょう、あなたの群(む)れをみな回(まわ)ってみて、その中(なか)からすべてぶちとまだらの羊(ひつじ)、およびすべて黒(くろ)い小羊(こひつじ)と、やぎの中(なか)のまだらのものと、ぶちのものとを移(うつ)しますが、これをわたしの報酬(ほうしゅう)としましょう。 33あとで、あなたがきて、あなたの前(まえ)でわたしの報酬(ほうしゅう)をしらべる時(とき)、わたしの正(ただ)しい事(こと)が証明(しょうめい)されるでしょう。もしも、やぎの中(なか)にぶちのないもの、まだらでないものがあったり、小羊(こひつじ)の中(なか)に黒(くろ)くないものがあれば、それはみなわたしが盗(ぬす)んだものとなるでしょう」。 34ラバンは言(い)った、「よろしい。あなたの言(い)われるとおりにしましょう」。 35そこでラバンはその日(ひ)、雄(お)やぎのしまのあるもの、まだらのもの、すべて雌(め)やぎのぶちのもの、まだらのもの、すべて白(しろ)みをおびているもの、またすべて小羊(こひつじ)の中(なか)の黒(くろ)いものを移(うつ)して子(こ)らの手(て)にわたし、 36ヤコブとの間(あいだ)に三日(か)路(じ)の隔(へだ)たりを設(もう)けた。ヤコブはラバンの残(のこ)りの群(む)れを飼(か)った。

37ヤコブは、はこやなぎと、あめんどうと、すずかけの木(き)のなまの枝(えだ)を取(と)り、皮(かわ)をはいでそれに白(しろ)い筋(すじ)をつくり、枝(えだ)の白(しろ)い所(ところ)を表(あら)わし、 38皮(かわ)をはいだ枝(えだ)を、群(む)れがきて水(みず)を飲(の)む鉢(はち)、すなわち水(みず)ぶねの中(なか)に、群(む)れに向(む)かわせて置(お)いた。群(む)れは水(みず)を飲(の)みにきた時(とき)に、はらんだ。 39すなわち群(む)れは枝(えだ)の前(まえ)で、はらんで、しまのあるもの、ぶちのもの、まだらのものを産(う)んだ。 40ヤコブはその小羊(こひつじ)を別(べつ)においた。彼(かれ)はまた群(む)れの顔(かお)をラバンの群(む)れのしまのあるものと、すべて黒(くろ)いものとに向(む)かわせた。そして自分(じぶん)の群(む)れを別(べつ)にまとめておいて、ラバンの群(む)れには、入(い)れなかった。 41また群(む)れの強(つよ)いものが発情(はつじょう)した時(とき)には、ヤコブは水(みず)ぶねの中(なか)に、その群(む)れの目(め)の前(まえ)に、かの枝(えだ)を置(お)いて、枝(えだ)の間(あいだ)で、はらませた。 42けれども群(む)れの弱(よわ)いものの時(とき)には、それを置(お)かなかった。こうして弱(よわ)いものはラバンのものとなり、強(つよ)いものはヤコブのものとなったので、 43この人(ひと)は大(おお)いに富(と)み、多(おお)くの群(む)れと、男女(だんじょ)の奴隷(どれい)、およびらくだ、ろばを持(も)つようになった。

第三一章

1さてヤコブはラバンの子(こ)らが、「ヤコブはわれわれの父(ちち)の物(もの)をことごとく奪(うば)い、父(ちち)の物(もの)によってあのすべての富(とみ)を獲(え)たのだ」と言(い)っているのを聞(き)いた。 2またヤコブがラバンの顔(かお)を見(み)るのに、それは自分(じぶん)に対(たい)して以前(いぜん)のようではなかった。 3主(しゅ)はヤコブに言(い)われた、「あなたの先祖(せんぞ)の国(くに)へ帰(かえ)り、親族(しんぞく)のもとに行(い)きなさい。わたしはあなたと共(とも)にいるであろう」。 4そこでヤコブは人(ひと)をやって、ラケルとレアとを、野(の)にいる自分(じぶん)の群(む)れのところに招(まね)き、 5彼女(かのじょ)らに言(い)った、「わたしがあなたがたの父(ちち)の顔(かお)を見(み)るのに、わたしに対(たい)して以前(いぜん)のようではない。しかし、わたしの父(ちち)の神(かみ)はわたしと共(とも)におられる。 6あなたがたが知(し)っているように、わたしは力(ちから)のかぎり、あなたがたの父(ちち)に仕(つか)えてきた。 7しかし、あなたがたの父(ちち)はわたしを欺(あざむ)いて、十度(ど)もわたしの報酬(ほうしゅう)を変(か)えた。けれども神(かみ)は彼(かれ)がわたしに害(がい)を加(くわ)えることをお許(ゆる)しにならなかった。 8もし彼(かれ)が、『ぶちのものはあなたの報酬(ほうしゅう)だ』と言(い)えば、群(む)れは皆(みな)ぶちのものを産(う)んだ。もし彼(かれ)が、『しまのあるものはあなたの報酬(ほうしゅう)だ』と言(い)えば、群(む)れは皆(みな)しまのあるものを産(う)んだ。 9こうして神(かみ)はあなたがたの父(ちち)の家畜(かちく)をとってわたしに与(あた)えられた。 10また群(む)れが発情(はつじょう)した時(とき)、わたしが夢(ゆめ)に目(め)をあげて見(み)ると、群(む)れの上(うえ)に乗(の)っている雄(お)やぎは皆(みな)しまのあるもの、ぶちのもの、霜(しも)ふりのものであった。 11その時(とき)、神(かみ)の使(つかい)が夢(ゆめ)の中(なか)でわたしに言(い)った、『ヤコブよ』。わたしは答(こた)えた、『ここにおります』。 12神(かみ)の使(つかい)は言(い)った、『目(め)を上(あ)げて見(み)てごらん。群(む)れの上(うえ)に乗(の)っている雄(お)やぎは皆(みな)しまのあるもの、ぶちのもの、霜(しも)ふりのものです。わたしはラバンがあなたにしたことをみな見(み)ています。 13わたしはベテルの神(かみ)です。かつてあなたはあそこで柱(はしら)に油(あぶら)を注(そそ)いで、わたしに誓(ちか)いを立(た)てましたが、いま立(た)ってこの地(ち)を出(で)て、あなたの生(うま)れた国(くに)へ帰(かえ)りなさい』」。 14ラケルとレアは答(こた)えて言(い)った、「わたしたちの父(ちち)の家(いえ)に、なおわたしたちの受(う)くべき分(ぶん)、また嗣(し)業(ぎょう)がありましょうか。 15わたしたちは父(ちち)に他人(たにん)のように思(おも)われているではありませんか。彼(かれ)はわたしたちを売(う)ったばかりでなく、わたしたちのその金(かね)をさえ使(つか)い果(は)たしたのです。 16神(かみ)がわたしたちの父(ちち)から取(と)りあげられた富(とみ)は、みなわたしたちとわたしたちの子(こ)どものものです。だから何事(なにごと)でも神(かみ)があなたにお告(つ)げになった事(こと)をしてください」。

17そこでヤコブは立(た)って、子(こ)らと妻(つま)たちをらくだに乗(の)せ、 18またすべての家畜(かちく)、すなわち彼(かれ)がパダンアラムで獲(え)た家畜(かちく)と、すべての財産(ざいさん)を携(たずさ)えて、カナンの地(ち)におる父(ちち)イサクのもとへ赴(おもむ)いた。 19その時(とき)ラバンは羊(ひつじ)の毛(け)を切(き)るために出(で)ていたので、ラケルは父(ちち)の所有(しょゆう)のテラピムを盗(ぬす)み出(だ)した。 20またヤコブはアラムびとラバンを欺(あざむ)き、自分(じぶん)の逃(に)げ去(さ)るのを彼(かれ)に告(つ)げなかった。 21こうして彼(かれ)はすべての持(も)ち物(もの)を携(たずさ)えて逃(に)げ、立(た)って川(かわ)を渡(わた)り、ギレアデの山地(さんち)へ向(む)かった。

22三日(か)目(め)になって、ヤコブの逃(に)げ去(さ)ったことが、ラバンに聞(きこ)えたので、 23彼(かれ)は一族(いちぞく)を率(ひき)いて、七日(なぬか)の間(あいだ)そのあとを追(お)い、ギレアデの山地(さんち)で追(お)いついた。 24しかし、神(かみ)は夜(よ)の夢(ゆめ)にアラムびとラバンに現(あらわ)れて言(い)われた、「あなたは心(こころ)してヤコブに、よしあしを言(い)ってはなりません」。

25ラバンはついにヤコブに追(お)いついたが、ヤコブが山(やま)に天幕(てんまく)を張(は)っていたので、ラバンも一族(いちぞく)と共(とも)にギレアデの山(やま)に天幕(てんまく)を張(は)った。 26ラバンはヤコブに言(い)った、「あなたはなんという事(こと)をしたのですか。あなたはわたしを欺(あざむ)いてわたしの娘(むすめ)たちをいくさのとりこのように引(ひ)いて行(い)きました。 27なぜあなたはわたしに告(つ)げずに、ひそかに逃(に)げ去(さ)ってわたしを欺(あざむ)いたのですか。わたしは手(て)鼓(つづみ)や琴(こと)で喜(よろこ)び歌(うた)ってあなたを送(おく)りだそうとしていたのに。 28なぜわたしの孫(まご)や娘(むすめ)にわたしが口(くち)づけするのを許(ゆる)さなかったのですか。あなたは愚(おろ)かな事(こと)をしました。 29わたしはあなたがたに害(がい)を加(くわ)える力(ちから)をもっているが、あなたがたの父(ちち)の神(かみ)が昨夜(さくや)わたしに告(つ)げて、『おまえは心(こころ)して、ヤコブによしあしを言(い)うな』と言(い)われました。 30今(いま)あなたが逃(に)げ出(だ)したのは父(ちち)の家(いえ)が非常(ひじょう)に恋(こい)しくなったからでしょうが、なぜあなたはわたしの神(かみ)を盗(ぬす)んだのですか」。 31ヤコブはラバンに答(こた)えた、「たぶんあなたが娘(むすめ)たちをわたしから奪(うば)いとるだろうと思(おも)ってわたしは恐(おそ)れたからです。 32だれの所(ところ)にでもあなたの神(かみ)が見(み)つかったら、その者(もの)を生(い)かしてはおきません。何(なに)かあなたの物(もの)がわたしのところにあるか、われわれの一族(いちぞく)の前(まえ)で、調(しら)べてみて、それをお取(と)りください」。ラケルが神(かみ)を盗(ぬす)んだことをヤコブは知(し)らなかったからである。

33そこでラバンはヤコブの天幕(てんまく)にはいり、またレアの天幕(てんまく)にはいり、更(さら)にふたりのはしための天幕(てんまく)にはいってみたが、見(み)つからなかったので、レアの天幕(てんまく)を出(で)てラケルの天幕(てんまく)にはいった。 34しかし、ラケルはすでにテラピムを取(と)って、らくだのくらの下(した)に入(い)れ、その上(うえ)にすわっていたので、ラバンは、くまなく天幕(てんまく)の中(なか)を捜(さが)したが、見(み)つからなかった。 35その時(とき)ラケルは父(ちち)に言(い)った、「わたしは女(おんな)の常(つね)のことがあって、あなたの前(まえ)に立(た)ち上(あ)がることができません。わが主(しゅ)よ、どうかお怒(いか)りにならぬよう」。彼(かれ)は捜(さが)したがテラピムは見(み)つからなかった。

36そこでヤコブは怒(いか)ってラバンを責(せ)めた。そしてヤコブはラバンに言(い)った、「わたしにどんなあやまちがあり、どんな罪(つみ)があって、あなたはわたしのあとを激(はげ)しく追(お)ったのですか。 37あなたはわたしの物(もの)をことごとく探(さぐ)られたが、何(なに)かあなたの家(いえ)の物(もの)が見(み)つかりましたか。それを、ここに、わたしの一族(いちぞく)と、あなたの一族(いちぞく)の前(まえ)に置(お)いて、われわれふたりの間(あいだ)をさばかせましょう。 38わたしはこの二十年(ねん)、あなたと一緒(いっしょ)にいましたが、その間(かん)あなたの雌(め)羊(ひつじ)も雌(め)やぎも子(こ)を産(う)みそこねたことはなく、またわたしはあなたの群(む)れの雄羊(おひつじ)を食(た)べたこともありませんでした。 39また野獣(やじゅう)が、かみ裂(さ)いたものは、あなたのもとに持(も)ってこないで、自分(じぶん)でそれを償(つぐな)いました。また昼(ひる)盗(ぬす)まれたものも、夜(よる)盗(ぬす)まれたものも、あなたはわたしにその償(つぐな)いを求(もと)められました。 40わたしのことを言(い)えば、昼(ひる)は暑(あつ)さに、夜(よる)は寒(さむ)さに悩(なや)まされて、眠(ねむ)ることもできませんでした。 41わたしはこの二十年(ねん)あなたの家族(かぞく)のひとりでありました。わたしはあなたのふたりの娘(むすめ)のために十四年(ねん)、またあなたの群(む)れのために六年(ねん)、あなたに仕(つか)えましたが、あなたは十(じゅう)度(ど)もわたしの報酬(ほうしゅう)を変(か)えられました。 42もし、わたしの父(ちち)の神(かみ)、アブラハムの神(かみ)、イサクのかしこむ者(もの)がわたしと共(とも)におられなかったなら、あなたはきっとわたしを、から手(て)で去(さ)らせたでしょう。神(かみ)はわたしの悩(なや)みと、わたしの労苦(ろうく)とを顧(かえり)みられて昨夜(さくや)あなたを戒(いまし)められたのです」。

43ラバンは答(こた)えてヤコブに言(い)った、「娘(むすめ)たちはわたしの娘(むすめ)、子(こ)どもたちはわたしの孫(まご)です。また群(む)れはわたしの群(む)れ、あなたの見(み)るものはみなわたしのものです。これらのわたしの娘(むすめ)たちのため、また彼(かれ)らが産(う)んだ子(こ)どもたちのため、きょうわたしは何(なに)をすることができましょうか。 44さあ、それではわたしとあなたと契約(けいやく)を結(むす)んで、これをわたしとあなたとの間(あいだ)の証拠(しょうこ)としましょう」。 45そこでヤコブは石(いし)を取(と)り、それを立(た)てて柱(はしら)とした。 46ヤコブはまた一族(いちぞく)の者(もの)に言(い)った、「石(いし)を集(あつ)めてください」。彼(かれ)らは石(いし)を取(と)って、一つの石塚(いしづか)を造(つく)った。こうして彼(かれ)らはその石塚(いしづか)のかたわらで食事(しょくじ)をした。 47ラバンはこれをエガル・サハドタと名(な)づけ、ヤコブはこれをガルエドと名(な)づけた。 48そしてラバンは言(い)った、「この石塚(いしづか)はきょうわたしとあなたとの間(あいだ)の証拠(しょうこ)となります」。それでその名(な)はガルエドと呼(よ)ばれた。 49またミズパとも呼(よ)ばれた。彼(かれ)がこう言(い)ったからである、「われわれが互(たがい)に別(わか)れたのちも、どうか主(しゅ)がわたしとあなたとの間(あいだ)を見守(みまも)られるように。 50もしあなたがわたしの娘(むすめ)を虐待(ぎゃくたい)したり、わたしの娘(むすめ)のほかに妻(つま)をめとることがあれば、たといそこにだれひとりいなくても、神(かみ)はわたしとあなたとの間(あいだ)の証人(しょうにん)でいらせられる」。

51更(さら)にラバンはヤコブに言(い)った、「あなたとわたしとの間(あいだ)にわたしが建(た)てたこの石塚(いしづか)をごらんなさい、この柱(はしら)をごらんなさい。 52この石塚(いしづか)を越(こ)えてわたしがあなたに害(がい)を加(くわ)えず、またこの石塚(いしづか)とこの柱(はしら)を越(こ)えてあなたがわたしに害(がい)を加(くわ)えないように、どうかこの石塚(いしづか)があかしとなり、この柱(はしら)があかしとなるように。 53どうかアブラハムの神(かみ)、ナホルの神(かみ)、彼(かれ)らの父(ちち)の神(かみ)がわれわれの間(あいだ)をさばかれるように」。ヤコブは父(ちち)イサクのかしこむ者(もの)によって誓(ちか)った。 54そしてヤコブは山(やま)で犠牲(ぎせい)をささげ、一族(いちぞく)を招(まね)いて、食事(しょくじ)をした。彼(かれ)らは食事(しょくじ)をして山(やま)に宿(やど)った。

55あくる朝(あさ)ラバンは早(はや)く起(お)き、孫(まご)と娘(むすめ)たちに口(くち)づけして彼(かれ)らを祝福(しゅくふく)し、去(さ)って家(いえ)に帰(かえ)った。

第三二章

1さて、ヤコブが旅路(たびじ)に進(すす)んだとき、神(かみ)の使(つかい)たちが彼(かれ)に会(あ)った。 2ヤコブは彼(かれ)らを見(み)て、「これは神(かみ)の陣営(じんえい)です」と言(い)って、その所(ところ)の名(な)をマハナイムと名(な)づけた。

3ヤコブはセイルの地(ち)、エドムの野(の)に住(す)む兄(あに)エサウのもとに、さきだって使者(ししゃ)をつかわした。 4すなわちそれに命(めい)じて言(い)った、「あなたがたはわたしの主人(しゅじん)エサウにこう言(い)いなさい、『あなたのしもべヤコブはこう言(い)いました。わたしはラバンのもとに寄留(きりゅう)して今(いま)までとどまりました。 5わたしは牛(うし)、ろば、羊(ひつじ)、男女(だんじょ)の奴隷(どれい)を持(も)っています。それでわが主(しゅ)に申(もう)し上(あ)げて、あなたの前(まえ)に恵(めぐ)みを得(え)ようと人(ひと)をつかわしたのです』」。

6使者(ししゃ)はヤコブのもとに帰(かえ)って言(い)った、「わたしたちはあなたの兄(あに)エサウのもとへ行(い)きました。彼(かれ)もまたあなたを迎(むか)えようと四百人(にん)を率(ひき)いてきます」。 7そこでヤコブは大(おお)いに恐(おそ)れ、苦(くる)しみ、共(とも)にいる民(たみ)および羊(ひつじ)、牛(うし)、らくだを二つの組(くみ)に分(わ)けて、 8言(い)った、「たとい、エサウがきて、一つの組(くみ)を撃(う)っても、残(のこ)りの組(くみ)はのがれるであろう」。

9ヤコブはまた言(い)った、「父(ちち)アブラハムの神(かみ)、父(ちち)イサクの神(かみ)よ、かつてわたしに『おまえの国(くに)へ帰(かえ)り、おまえの親族(しんぞく)に行(い)け。わたしはおまえを恵(めぐ)もう』と言(い)われた主(しゅ)よ、 10あなたがしもべに施(ほどこ)されたすべての恵(めぐ)みとまことをわたしは受(う)けるに足(た)りない者(もの)です。わたしは、つえのほか何(なに)も持(も)たないでこのヨルダンを渡(わた)りましたが、今(いま)は二つの組(くみ)にもなりました。 11どうぞ、兄(あに)エサウの手(て)からわたしをお救(すく)いください。わたしは彼(かれ)がきて、わたしを撃(う)ち、母(はは)や子供(こども)たちにまで及(およ)ぶのを恐(おそ)れます。 12あなたは、かつて、『わたしは必(かなら)ずおまえを恵(めぐ)み、おまえの子孫(しそん)を海(うみ)の砂(すな)の数(かぞ)えがたいほど多(おお)くしよう』と言(い)われました」。

13彼(かれ)はその夜(よ)そこに宿(やど)り、持(も)ち物(もの)のうちから兄(あに)エサウへの贈(おく)り物(もの)を選(えら)んだ。 14すなわち雌(め)やぎ二百、雄(お)やぎ二十、雌(め)羊(ひつじ)二百、雄羊(おひつじ)二十、 15乳(ちち)らくだ三十とその子(こ)、雌牛(めうし)四十、雄牛(おうし)十、雌(め)ろば二十、雄(お)ろば十。 16彼(かれ)はこれらをそれぞれの群(む)れに分(わ)けて、しもべたちの手(て)にわたし、しもべたちに言(い)った、「あなたがたはわたしの先(さき)に進(すす)みなさい、そして群(む)れと群(む)れとの間(あいだ)には隔(へだ)たりをおきなさい」。 17また先頭(せんとう)の者(もの)に命(めい)じて言(い)った、「もし、兄(あに)エサウがあなたに会(あ)って『だれのしもべで、どこへ行(い)くのか。あなたの前(まえ)にあるこれらのものはだれの物(もの)か』と尋(たず)ねたら、 18『あなたのしもべヤコブの物(もの)で、わが主(しゅ)エサウにおくる贈(おく)り物(もの)です。彼(かれ)もわたしたちのうしろにおります』と言(い)いなさい」。 19彼(かれ)は第(だい)二の者(もの)にも、第(だい)三の者(もの)にも、また群(む)れ群(む)れについて行(い)くすべての者(もの)にも命(めい)じて言(い)った、「あなたがたがエサウに会(あ)うときは、同(おな)じように彼(かれ)に告(つ)げて、 20『あなたのしもべヤコブもわれわれのうしろにおります』と言(い)いなさい」。ヤコブは、「わたしがさきに送(おく)る贈(おく)り物(もの)をもってまず彼(かれ)をなだめ、それから、彼(かれ)の顔(かお)を見(み)よう。そうすれば、彼(かれ)はわたしを迎(むか)えてくれるであろう」と思(おも)ったからである。 21こうして贈(おく)り物(もの)は彼(かれ)に先立(さきだ)って渡(わた)り、彼(かれ)はその夜(よ)、宿営(しゅくえい)にやどった。

22彼(かれ)はその夜(よ)起(お)きて、ふたりの妻(つま)とふたりのつかえめと十一人(にん)の子(こ)どもとを連(つ)れてヤボクの渡(わた)しをわたった。 23すなわち彼(かれ)らを導(みちび)いて川(かわ)を渡(わた)らせ、また彼(かれ)の持(も)ち物(もの)を渡(わた)らせた。 24ヤコブはひとりあとに残(のこ)ったが、ひとりの人(ひと)が、夜明(よあ)けまで彼(かれ)と組打(くみう)ちした。 25ところでその人(ひと)はヤコブに勝(か)てないのを見(み)て、ヤコブのもものつがいにさわったので、ヤコブのもものつがいが、その人(ひと)と組打(くみう)ちするあいだにはずれた。 26その人(ひと)は言(い)った、「夜(よ)が明(あ)けるからわたしを去(さ)らせてください」。ヤコブは答(こた)えた、「わたしを祝福(しゅくふく)してくださらないなら、あなたを去(さ)らせません」。 27その人(ひと)は彼(かれ)に言(い)った、「あなたの名(な)はなんと言(い)いますか」。彼(かれ)は答(こた)えた、「ヤコブです」。 28その人(ひと)は言(い)った、「あなたはもはや名(な)をヤコブと言(い)わず、イスラエルと言(い)いなさい。あなたが神(かみ)と人(ひと)とに、力(ちから)を争(あらそ)って勝(か)ったからです」。 29ヤコブは尋(たず)ねて言(い)った、「どうかわたしにあなたの名(な)を知(し)らせてください」。するとその人(ひと)は、「なぜあなたはわたしの名(な)をきくのですか」と言(い)ったが、その所(ところ)で彼(かれ)を祝福(しゅくふく)した。 30そこでヤコブはその所(ところ)の名(な)をペニエルと名(な)づけて言(い)った、「わたしは顔(かお)と顔(かお)をあわせて神(かみ)を見(み)たが、なお生(い)きている」。 31こうして彼(かれ)がペニエルを過(す)ぎる時(とき)、日(ひ)は彼(かれ)の上(うえ)にのぼったが、彼(かれ)はそのもものゆえにびっこを引(ひ)いていた。 32そのため、イスラエルの子(こ)らは今日(こんにち)まで、もものつがいの上(うえ)にある腰(こし)の筋(すじ)を食(た)べない。かの人(ひと)がヤコブのもものつがい、すなわち腰(こし)の筋(すじ)にさわったからである。

第三三章

1さてヤコブは目(め)をあげ、エサウが四百人(にん)を率(ひき)いて来(く)るのを見(み)た。そこで彼(かれ)は子供(こども)たちを分(わ)けてレアとラケルとふたりのつかえめとにわたし、 2つかえめとその子(こ)供(とも)たちをまっ先(さき)に置(お)き、レアとその子(こ)供(とも)たちを次(つぎ)に置(お)き、ラケルとヨセフを最後(さいご)に置(お)いて、 3みずから彼(かれ)らの前(まえ)に進(すす)み、七たび身(み)を地(ち)にかがめて、兄(あに)に近(ちか)づいた。

4するとエサウは走(はし)ってきて迎(むか)え、彼(かれ)を抱(だ)き、そのくびをかかえて口(くち)づけし、共(とも)に泣(な)いた。 5エサウは目(め)をあげて女(おんな)と子供(こども)たちを見(み)て言(い)った、「あなたと一緒(いっしょ)にいるこれらの者(もの)はだれですか」。ヤコブは言(い)った、「神(かみ)がしもべに授(さづ)けられた子供(こども)たちです」。 6そこでつかえめたちはその子(こ)供(とも)たちと共(とも)に近寄(ちかよ)ってお辞儀(じぎ)した。 7レアもまたその子(こ)供(とも)たちと共(とも)に近寄(ちかよ)ってお辞儀(じぎ)し、それからヨセフとラケルが近寄(ちかよ)ってお辞儀(じぎ)した。 8するとエサウは言(い)った、「わたしが出会(であ)ったあのすべての群(む)れはどうしたのですか」。ヤコブは言(い)った、「わが主(しゅ)の前(まえ)に恵(めぐ)みを得(え)るためです」。 9エサウは言(い)った、「弟(おとうと)よ、わたしはじゅうぶんもっている。あなたの物(もの)はあなたのものにしなさい」。 10ヤコブは言(い)った、「いいえ、もしわたしがあなたの前(まえ)に恵(めぐ)みを得(え)るなら、どうか、わたしの手(て)から贈(おく)り物(もの)を受(う)けてください。あなたが喜(よろこ)んでわたしを迎(むか)えてくださるので、あなたの顔(かお)を見(み)て、神(かみ)の顔(かお)を見(み)るように思(おも)います。 11どうかわたしが持(も)ってきた贈(おく)り物(もの)を受(う)けてください。神(かみ)がわたしを恵(めぐ)まれたので、わたしはじゅうぶんもっていますから」。こうして彼(かれ)がしいたので、彼(かれ)は受(う)け取(と)った。

12そしてエサウは言(い)った、「さあ、立(た)って行(い)こう。わたしが先(さき)に行(い)く」。 13ヤコブは彼(かれ)に言(い)った、「ごぞんじのように、子供(こども)たちは、かよわく、また乳(ちち)を飲(の)ませている羊(ひつじ)や牛(うし)をわたしが世話(せわ)をしています。もし一日(にち)でも歩(ある)かせ過(す)ぎたら群(む)れはみな死(し)んでしまいます。 14わが主(しゅ)よ、どうか、しもべの先(さき)においでください。わたしはわたしの前(まえ)にいる家畜(かちく)と子供(こども)たちの歩(あゆ)みに合(あ)わせて、ゆっくり歩(ある)いて行(い)き、セイルでわが主(しゅ)と一緒(いっしょ)になりましょう」。

15エサウは言(い)った、「それならわたしが連(つ)れている者(もの)どものうち幾(いく)人(ひと)かをあなたのもとに残(のこ)しましょう」。ヤコブは言(い)った、「いいえ、それには及(およ)びません。わが主(しゅ)の前(まえ)に恵(めぐ)みを得(え)させてください」。 16その日(ひ)エサウはセイルへの帰途(きと)についた。 17ヤコブは立(た)ってスコテに行(い)き、自分(じぶん)のために家(いえ)を建(た)て、また家畜(かちく)のために小屋(こや)を造(つく)った。これによってその所(ところ)の名(な)はスコテと呼(よ)ばれている。

18こうしてヤコブはパダンアラムからきて、無事(ぶじ)カナンの地(ち)のシケムの町(まち)に着(つ)き、町(まち)の前(まえ)に宿営(しゅくえい)した。 19彼(かれ)は天幕(てんまく)を張(は)った野(の)の一部(いちぶ)をシケムの父(ちち)ハモルの子(こ)らの手(て)から百ケシタで買(か)い取(と)り、 20そこに祭壇(さいだん)を建(た)てて、これをエル・エロヘ・イスラエルと名(な)づけた。

第三四章

1レアがヤコブに産(う)んだ娘(むすめ)デナはその地(ち)の女(おんな)たちに会(あ)おうと出(で)かけて行(い)ったが、 2その地(ち)のつかさ、ヒビびとハモルの子(こ)シケムが彼女(かのじょ)を見(み)て、引(ひ)き入(い)れ、これと寝(ね)てはずかしめた。 3彼(かれ)は深(ふか)くヤコブの娘(むすめ)デナを慕(した)い、この娘(むすめ)を愛(あい)して、ねんごろに娘(むすめ)に語(かた)った。 4シケムは父(ちち)ハモルに言(い)った、「この娘(むすめ)をわたしの妻(つま)にめとってください」。 5さてヤコブはシケムが、娘(むすめ)デナを汚(けが)したことを聞(き)いたけれども、その子(こ)らが家畜(かちく)を連(つ)れて野(の)にいたので、彼(かれ)らの帰(かえ)るまで黙(だま)っていた。 6シケムの父(ちち)ハモルはヤコブと話(はな)し合(あ)おうと、ヤコブの所(ところ)に出(で)てきた。 7ヤコブの子(こ)らは野(の)から帰(かえ)り、この事(こと)を聞(き)いて、悲(かな)しみ、かつ非常(ひじょう)に怒(いか)った。シケムがヤコブの娘(むすめ)と寝(ね)て、イスラエルに愚(おろ)かなことをしたためで、こんなことは、してはならぬ事(こと)だからである。

8ハモルは彼(かれ)らと語(かた)って言(い)った、「わたしの子(こ)シケムはあなたがたの娘(むすめ)を心(こころ)に慕(した)っています。どうか彼女(かのじょ)を彼(かれ)の妻(つま)にください。 9あなたがたはわたしたちと婚姻(こんいん)し、あなたがたの娘(むすめ)をわたしたちに与(あた)え、わたしたちの娘(むすめ)をあなたがたにめとってください。 10こうしてあなたがたとわたしたちとは一緒(いっしょ)に住(す)みましょう。地(ち)はあなたがたの前(まえ)にあります。ここに住(す)んで取引(とりひき)し、ここで財産(ざいさん)を獲(え)なさい」。 11シケムはまたデナの父(ちち)と兄弟(きょうだい)たちとに言(い)った、「あなたがたの前(まえ)に恵(めぐ)みを得(え)させてください。あなたがたがわたしに言(い)われるものは、なんでもさしあげましょう。 12たくさんの結納(ゆいのう)金(きん)と贈(おく)り物(もの)とをお求(もと)めになっても、あなたがたの言(い)われるとおりさしあげます。ただこの娘(むすめ)はわたしの妻(つま)にください」。

13しかし、ヤコブの子(こ)らはシケムが彼(かれ)らの妹(いもうと)デナを汚(けが)したので、シケムとその父(ちち)ハモルに偽(いつわ)って答(こた)え、 14彼(かれ)らに言(い)った、「われわれは割礼(かつれい)を受(う)けない者(もの)に妹(いもうと)をやる事(こと)はできません。それはわれわれの恥(はじ)とするところですから。 15ただ、こうなさればわれわれはあなたがたに同意(どうい)します。もしあなたがたのうち男子(だんし)がみな割礼(かつれい)を受(う)けて、われわれのようになるなら、 16われわれの娘(むすめ)をあなたがたに与(あた)え、あなたがたの娘(むすめ)をわれわれにめとりましょう。そしてわれわれはあなたがたと一緒(いっしょ)に住(す)んで一つの民(たみ)となりましょう。 17けれども、もしあなたがたがわれわれに聞(き)かず、割礼(かつれい)を受(う)けないなら、われわれは娘(むすめ)を連(つ)れて行(い)きます」。

18彼(かれ)らの言葉(ことば)がハモルとハモルの子(こ)シケムとの心(こころ)にかなったので、 19若者(わかもの)は、ためらわずにこの事(こと)をした。彼(かれ)がヤコブの娘(むすめ)を愛(あい)したからである。また彼(かれ)は父(ちち)の家(いえ)のうちで一番(ばん)重(おも)んじられた者(もの)であった。 20そこでハモルとその子(こ)シケムとは町(まち)の門(もん)に行(い)き、町(まち)の人々(ひとびと)に語(かた)って言(い)った、 21「この人々(ひとびと)はわれわれと親(した)しいから、この地(ち)に住(す)まわせて、ここで取引(とりひき)をさせよう。地(ち)は広(ひろ)く、彼(かれ)らをいれるにじゅうぶんである。そしてわれわれは彼(かれ)らの娘(むすめ)を妻(つま)にめとり、われわれの娘(むすめ)を彼(かれ)らに与(あた)えよう。 22彼(かれ)らが割礼(かつれい)を受(う)けているように、もしわれわれのうちの男子(だんし)が皆(みな)、割礼(かつれい)を受(う)けるなら、ただこの事(こと)だけで、この人々(ひとびと)はわれわれに同意(どうい)し、われわれと一緒(いっしょ)に住(す)んで一つの民(たみ)となるのだ。 23そうすれば彼(かれ)らの家畜(かちく)と財産(ざいさん)とすべての獣(けもの)とは、われわれのものとなるではないか。ただわれわれが彼(かれ)らに同意(どうい)すれば、彼(かれ)らはわれわれと一緒(いっしょ)に住(す)むであろう」。 24そこで町(まち)の門(もん)に出入(でい)りする者(もの)はみなハモルとその子(こ)シケムとに聞(き)き従(したが)って、町(まち)の門(もん)に出入(でい)りするすべての男子(だんし)は割礼(かつれい)を受(う)けた。

25三日(か)目(め)になって彼(かれ)らが痛(いた)みを覚(おぼ)えている時(とき)、ヤコブのふたりの子(こ)、すなわちデナの兄弟(きょうだい)シメオンとレビとは、おのおのつるぎを取(と)って、不意(ふい)に町(まち)を襲(おそ)い、男子(だんし)をことごとく殺(ころ)し、 26またつるぎの刃(は)にかけてハモルとその子(こ)シケムとを殺(ころ)し、シケムの家(いえ)からデナを連(つ)れ出(だ)した。 27そしてヤコブの子(こ)らは殺(ころ)された人々(ひとびと)をはぎ、町(まち)をかすめた。彼(かれ)らが妹(いもうと)を汚(けが)したからである。 28すなわち羊(ひつじ)、牛(うし)、ろば及(およ)び町(まち)にあるものと、野(の)にあるもの、 29並(なら)びにすべての貨(か)財(ざい)を奪(うば)い、その子(こ)女(おんな)と妻(つま)たちを皆(みな)とりこにし、家(いえ)の中(なか)にある物(もの)をことごとくかすめた。 30そこでヤコブはシメオンとレビとに言(い)った、「あなたがたはわたしをこの地(ち)の住民(じゅうみん)、カナンびととペリジびとに忌(い)みきらわせ、わたしに迷惑(めいわく)をかけた。わたしは、人数(にんずう)が少(すく)ないから、彼(かれ)らが集(あつ)まってわたしを攻(せ)め撃(う)つならば、わたしも家族(かぞく)も滅(ほろ)ぼされるであろう」。 31彼(かれ)らは言(い)った、「わたしたちの妹(いもうと)を遊女(ゆうじょ)のように彼(かれ)が扱(あつか)ってよいのですか」。

第三五章

1ときに神(かみ)はヤコブに言(い)われた、「あなたは立(た)ってベテルに上(のぼ)り、そこに住(す)んで、あなたがさきに兄(あに)エサウの顔(かお)を避(さ)けてのがれる時(とき)、あなたに現(あらわ)れた神(かみ)に祭壇(さいだん)を造(つく)りなさい」。 2ヤコブは、その家族(かぞく)および共(とも)にいるすべての者(もの)に言(い)った、「あなたがたのうちにある異(こと)なる神々(かみがみ)を捨(す)て、身(み)を清(きよ)めて着物(きもの)を着替(きが)えなさい。 3われわれは立(た)ってベテルに上(のぼ)り、その所(ところ)でわたしの苦難(くなん)の日(ひ)にわたしにこたえ、かつわたしの行(い)く道(みち)で共(とも)におられた神(かみ)に祭壇(さいだん)を造(つく)ろう」。 4そこで彼(かれ)らは持(も)っている異(こと)なる神々(かみがみ)と、耳(みみ)につけている耳輪(みみわ)をことごとくヤコブに与(あた)えたので、ヤコブはこれをシケムのほとりにあるテレビンの木(き)の下(した)に埋(う)めた。

5そして彼(かれ)らは、いで立(た)ったが、大(おお)いなる恐(おそ)れが周囲(しゅうい)の町々(まちまち)に起(た)ったので、ヤコブの子(こ)らのあとを追(お)う者(もの)はなかった。 6こうしてヤコブは共(とも)にいたすべての人々(ひとびと)と一緒(いっしょ)にカナンの地(ち)にあるルズ、すなわちベテルにきた。 7彼(かれ)はそこに祭壇(さいだん)を築(きず)き、その所(ところ)をエル・ベテルと名(な)づけた。彼(かれ)が兄(あに)の顔(かお)を避(さ)けてのがれる時(とき)、神(かみ)がそこで彼(かれ)に現(あらわ)れたからである。 8時(とき)にリベカのうばデボラが死(し)んで、ベテルのしもの、かしの木(き)の下(した)に葬(ほうむ)られた。これによってその木(き)の名(な)をアロン・バクテと呼(よ)ばれた。

9さてヤコブがパダンアラムから帰(かえ)ってきた時(とき)、神(かみ)は再(ふたた)び彼(かれ)に現(あらわ)れて彼(かれ)を祝福(しゅくふく)された。 10神(かみ)は彼(かれ)に言(い)われた、「あなたの名(な)はヤコブである。しかしあなたの名(な)をもはやヤコブと呼(よ)んではならない。あなたの名(な)をイスラエルとしなさい」。こうして彼(かれ)をイスラエルと名(な)づけられた。 11神(かみ)はまた彼(かれ)に言(い)われた、
「わたしは全能(ぜんのう)の神(かみ)である。
あなたは生(う)めよ、またふえよ。
一つの国民(こくみん)、また多(おお)くの国民(こくみん)があなたから出(で)て、
王(おう)たちがあなたの身(み)から出(で)るであろう。
12わたしはアブラハムとイサクとに与(あた)えた地(ち)を、
あなたに与(あた)えよう。
またあなたの後(のち)の子孫(しそん)にその地(ち)を与(あた)えよう」。
13神(かみ)は彼(かれ)と語(かた)っておられたその場所(ばしょ)から彼(かれ)を離(はな)れてのぼられた。 14そこでヤコブは神(かみ)が自分(じぶん)と語(かた)られたその場所(ばしょ)に、一本(ぽん)の石(いし)の柱(はしら)を立(た)て、その上(うえ)に灌祭(かんさい)をささげ、また油(あぶら)を注(そそ)いだ。 15そしてヤコブは神(かみ)が自分(じぶん)と語(かた)られたその場所(ばしょ)をベテルと名(な)づけた。

16こうして彼(かれ)らはベテルを立(た)ったが、エフラタに行(い)き着(つ)くまでに、なお隔(へだ)たりのある所(ところ)でラケルは産気(さんけ)づき、その産(さん)は重(おも)かった。 17その難産(なんざん)に当(あた)って、産婆(さんば)は彼女(かのじょ)に言(い)った、「心配(しんぱい)することはありません。今度(こんど)も男(おとこ)の子(こ)です」。 18彼女(かのじょ)は死(し)にのぞみ、魂(たましい)の去(さ)ろうとする時(とき)、子(こ)の名(な)をベノニと呼(よ)んだ。しかし、父(ちち)はこれをベニヤミンと名(な)づけた。 19ラケルは死(し)んでエフラタ、すなわちベツレヘムの道(みち)に葬(ほうむ)られた。 20ヤコブはその墓(はか)に柱(はしら)を立(た)てた。これはラケルの墓(はか)の柱(はしら)であって、今日(こんにち)に至(いた)っている。 21イスラエルはまた、いで立(た)ってミグダル・エダルの向(む)こうに天幕(てんまく)を張(は)った。

22イスラエルがその地(ち)に住(す)んでいた時(とき)、ルベンは父(ちち)のそばめビルハのところへ行(い)って、これと寝(ね)た。イスラエルはこれを聞(き)いた。

さてヤコブの子(こ)らは十二人(にん)であった。 23すなわちレアの子(こ)らはヤコブの長子(ちょうし)ルベンとシメオン、レビ、ユダ、イッサカル、ゼブルン。 24ラケルの子(こ)らはヨセフとベニヤミン。 25ラケルのつかえめビルハの子(こ)らはダンとナフタリ。 26レアのつかえめジルパの子(こ)らはガドとアセル。これらはヤコブの子(こ)らであって、パダンアラムで彼(かれ)に生(うま)れた者(もの)である。

27ヤコブはキリアテ・アルバ、すなわちヘブロンのマムレにいる父(ちち)イサクのもとへ行(い)った。ここはアブラハムとイサクとが寄留(きりゅう)した所(ところ)である。 28イサクの年(とし)は百八十歳(さい)であった。 29イサクは年老(としお)い、日(ひ)満(み)ちて息(いき)絶(た)え、死(し)んで、その民(たみ)に加(くわ)えられた。その子(こ)エサウとヤコブとは、これを葬(ほうむ)った。

第三六章

1エサウ、すなわちエドムの系図(けいず)は次(つぎ)のとおりである。 2エサウはカナンの娘(むすめ)たちのうちから妻(つま)をめとった。すなわちヘテびとエロンの娘(むすめ)アダと、ヒビびとヂベオンの子(こ)アナの娘(むすめ)アホリバマとである。 3また、イシマエルの娘(むすめ)ネバヨテの妹(いもうと)バスマテをめとった。 4アダはエリパズをエサウに産(う)み、バスマテはリウエルを産(う)み、 5アホリバマはエウシ、ヤラム、コラを産(う)んだ。これらはエサウの子(こ)であって、カナンの地(ち)で彼(かれ)に生(うま)れた者(もの)である。

6エサウは妻(つま)と子(こ)と娘(むすめ)と家(いえ)のすべての人(ひと)、家畜(かちく)とすべての獣(けもの)、またカナンの地(ち)で獲(え)たすべての財産(ざいさん)を携(たずさ)え、兄弟(きょうだい)ヤコブを離(はな)れてほかの地(ち)へ行(い)った。 7彼(かれ)らの財産(ざいさん)が多(おお)くて、一緒(いっしょ)にいることができなかったからである。すなわち彼(かれ)らが寄留(きりゅう)した地(ち)は彼(かれ)らの家畜(かちく)のゆえに、彼(かれ)らをささえることができなかったのである。 8こうしてエサウはセイルの山地(さんち)に住(す)んだ。エサウはすなわちエドムである。

9セイルの山地(さんち)におったエドムびとの先祖(せんぞ)エサウの系図(けいず)は次(つぎ)のとおりである。 10エサウの子(こ)らの名(な)は次(つぎ)のとおりである。すなわちエサウの妻(つま)アダの子(こ)はエリパズ。エサウの妻(つま)バスマテの子(こ)はリウエル。 11エリパズの子(こ)らはテマン、オマル、ゼポ、ガタム、ケナズである。 12テムナはエサウの子(こ)エリパズのそばめで、アマレクをエリパズに産(う)んだ。これらはエサウの妻(つま)アダの子(こ)らである。 13リウエルの子(こ)らは次(つぎ)のとおりである。すなわちナハテ、ゼラ、シャンマ、ミザであって、これらはエサウの妻(つま)バスマテの子(こ)らである。 14ヂベオンの子(こ)アナの娘(むすめ)で、エサウの妻(つま)アホリバマの子(こ)らは次(つぎ)のとおりである。すなわち彼女(かのじょ)はエウシ、ヤラム、コラをエサウに産(う)んだ。

15エサウの子(こ)らの中(なか)で、族(ぞく)長(ちょう)たる者(もの)は次(つぎ)のとおりである。すなわちエサウの長子(ちょうし)エリパズの子(こ)らはテマンの族長(ぞくちょう)、オマルの族長(ぞくちょう)、ゼポの族長(ぞくちょう)、ケナズの族長(ぞくちょう)、 16コラの族長(ぞくちょう)、ガタムの族長(ぞくちょう)、アマレクの族長(ぞくちょう)である。これらはエリパズから出(で)た族長(ぞくちょう)で、エドムの地(ち)におった。これらはアダの子(こ)らである。 17エサウの子(こ)リウエルの子(こ)らは次(つぎ)のとおりである。すなわちナハテの族長(ぞくちょう)、ゼラの族長(ぞくちょう)、シャンマの族長(ぞくちょう)、ミザの族長(ぞくちょう)。これらはリウエルから出(で)た族長(ぞくちょう)で、エドムの地(ち)におった。これらはエサウの妻(つま)バスマテの子(こ)らである。 18エサウの妻(つま)アホリバマの子(こ)らは次(つぎ)のとおりである。すなわちエウシの族長(ぞくちょう)、ヤラムの族長(ぞくちょう)、コラの族長(ぞくちょう)。これらはアナの娘(むすめ)で、エサウの妻(つま)アホリバマから出(で)た族長(ぞくちょう)である。 19これらはエサウすなわちエドムの子(こ)らで、族(ぞく)長(ちょう)たる者(もの)である。

20この地(ち)の住民(じゅうみん)ホリびとセイルの子(こ)らは次(つぎ)のとおりである。すなわちロタン、ショバル、ヂベオン、アナ、 21デション、エゼル、デシャン。これらはセイルの子(こ)ホリびとから出(で)た族長(ぞくちょう)で、エドムの地(ち)におった。 22ロタンの子(こ)らはホリ、ヘマムであり、ロタンの妹(いもうと)はテムナであった。 23ショバルの子(こ)らは次(つぎ)のとおりである。すなわちアルワン、マナハテ、エバル、シポ、オナム。 24ヂベオンの子(こ)らは次(つぎ)のとおりである。すなわちアヤとアナ。このアナは父(ちち)ヂベオンのろばを飼(か)っていた時(とき)、荒野(あらの)で温泉(おんせん)を発見(はっけん)した者(もの)である。 25アナの子(こ)らは次(つぎ)のとおりである。すなわちデションとアホリバマ。アホリバマはアナの娘(むすめ)である。 26デションの子(こ)らは次(つぎ)のとおりである。すなわちヘムダン、エシバン、イテラン、ケラン。 27エゼルの子(こ)らは次(つぎ)のとおりである。すなわちビルハン、ザワン、アカン。 28デシャンの子(こ)らは次(つぎ)のとおりである。すなわちウズとアラン。 29ホリびとから出(で)た族長(ぞくちょう)は次(つぎ)のとおりである。すなわちロタンの族長(ぞくちょう)、ショバルの族長(ぞくちょう)、ヂベオンの族長(ぞくちょう)、アナの族長(ぞくちょう)、 30デションの族長(ぞくちょう)、エゼルの族長(ぞくちょう)、デシャンの族長(ぞくちょう)。これらはホリびとから出(で)た族長(ぞくちょう)であって、その氏族(しぞく)に従(したが)ってセイルの地(ち)におった者(もの)である。

31イスラエルの人々(ひとびと)を治(おさ)める王(おう)がまだなかった時(とき)、エドムの地(ち)を治(おさ)めた王(おう)たちは次(つぎ)のとおりである。 32ベオルの子(こ)ベラはエドムを治(おさ)め、その都(みやこ)の名(な)はデナバであった。 33ベラが死(し)んで、ボズラのゼラの子(こ)ヨバブがこれに代(かわ)って王(おう)となった。 34ヨバブが死(し)んで、テマンびとの地(ち)のホシャムがこれに代(かわ)って王(おう)となった。 35ホシャムが死(し)んで、ベダデの子(こ)ハダデがこれに代(かわ)って王(おう)となった。彼(かれ)はモアブの野(の)でミデアンを撃(う)った者(もの)である。その都(みやこ)の名(な)はアビテであった。 36ハダデが死(し)んで、マスレカのサムラがこれに代(かわ)って王(おう)となった。 37サムラが死(し)んでユフラテ川(かわ)のほとりにあるレホボテのサウルがこれに代(かわ)って王(おう)となった。 38サウルが死(し)んでアクボルの子(こ)バアル・ハナンがこれに代(かわ)って王(おう)となった。 39アクボルの子(こ)バアル・ハナンが死(し)んで、ハダルがこれに代(かわ)って王(おう)となった。その都(みやこ)の名(な)はパウであった。その妻(つま)の名(な)はメヘタベルといって、メザハブの娘(むすめ)マテレデの娘(むすめ)であった。

40エサウから出(で)た族長(ぞくちょう)の名(な)は、その氏族(しぞく)と住所(じゅうしょ)と名(な)に従(したが)って言(い)えば次(つぎ)のとおりである。すなわちテムナの族長(ぞくちょう)、アルワの族長(ぞくちょう)、エテテの族長(ぞくちょう)、 41アホリバマの族長(ぞくちょう)、エラの族長(ぞくちょう)、ピノンの族長(ぞくちょう)、 42ケナズの族長(ぞくちょう)、テマンの族長(ぞくちょう)、ミブザルの族長(ぞくちょう)、 43マグデエルの族長(ぞくちょう)、イラムの族長(ぞくちょう)。これらはエドムの族長(ぞくちょう)たちであって、その領地(りょうち)内(うち)の住所(じゅうしょ)に従(したが)っていったものである。エドムびとの先祖(せんぞ)はエサウである。

第三七章

1ヤコブは父(ちち)の寄留(きりゅう)の地(ち)、すなわちカナンの地(ち)に住(す)んだ。 2ヤコブの子孫(しそん)は次(つぎ)のとおりである。

ヨセフは十七歳(さい)の時(とき)、兄弟(きょうだい)たちと共(とも)に羊(ひつじ)の群(む)れを飼(か)っていた。彼(かれ)はまだ子供(こども)で、父(ちち)の妻(つま)たちビルハとジルパとの子(こ)らと共(とも)にいたが、ヨセフは彼(かれ)らの悪(わる)いうわさを父(ちち)に告(つ)げた。 3ヨセフは年寄(としよ)り子(こ)であったから、イスラエルは他(た)のどの子(こ)よりも彼(かれ)を愛(あい)して、彼(かれ)のために長(なが)そでの着物(きもの)をつくった。 4兄弟(きょうだい)たちは父(ちち)がどの兄弟(きょうだい)よりも彼(かれ)を愛(あい)するのを見(み)て、彼(かれ)を憎(にく)み、穏(おだ)やかに彼(かれ)に語(かた)ることができなかった。

5ある時(とき)、ヨセフは夢(ゆめ)を見(み)て、それを兄弟(きょうだい)たちに話(はな)したので、彼(かれ)らは、ますます彼(かれ)を憎(にく)んだ。 6ヨセフは彼(かれ)らに言(い)った、「どうぞわたしが見(み)た夢(ゆめ)を聞(き)いてください。 7わたしたちが畑(はたけ)の中(なか)で束(たば)を結(ゆ)わえていたとき、わたしの束(たば)が起(お)きて立(た)つと、あなたがたの束(たば)がまわりにきて、わたしの束(たば)を拝(おが)みました」。 8すると兄弟(きょうだい)たちは彼(かれ)に向(む)かって、「あなたはほんとうにわたしたちの王(おう)になるのか。あなたは実際(じっさい)わたしたちを治(おさ)めるのか」と言(い)って、彼(かれ)の夢(ゆめ)とその言葉(ことば)のゆえにますます彼(かれ)を憎(にく)んだ。 9ヨセフはまた一つの夢(ゆめ)を見(み)て、それを兄弟(きょうだい)たちに語(かた)って言(い)った、「わたしはまた夢(ゆめ)を見(み)ました。日(ひ)と月(つき)と十一の星(ほし)とがわたしを拝(おが)みました」。 10彼(かれ)はこれを父(ちち)と兄弟(きょうだい)たちに語(かた)ったので、父(ちち)は彼(かれ)をとがめて言(い)った、「あなたが見(み)たその夢(ゆめ)はどういうのか。ほんとうにわたしとあなたの母(はは)と、兄弟(きょうだい)たちとが行(い)って地(ち)に伏(ふ)し、あなたを拝(おが)むのか」。 11兄弟(きょうだい)たちは彼(かれ)をねたんだ。しかし父(ちち)はこの言葉(ことば)を心(こころ)にとめた。

12さて兄弟(きょうだい)たちがシケムに行(い)って、父(ちち)の羊(ひつじ)の群(む)れを飼(か)っていたとき、 13イスラエルはヨセフに言(い)った、「あなたの兄弟(きょうだい)たちはシケムで羊(ひつじ)を飼(か)っているではないか。さあ、あなたを彼(かれ)らの所(ところ)へつかわそう」。ヨセフは父(ちち)に言(い)った、「はい、行(い)きます」。 14父(ちち)は彼(かれ)に言(い)った、「どうか、行(い)って、あなたの兄弟(きょうだい)たちは無事(ぶじ)であるか、また群(む)れは無事(ぶじ)であるか見(み)てきて、わたしに知(し)らせてください」。父(ちち)が彼(かれ)をヘブロンの谷(たに)からつかわしたので、彼(かれ)はシケムに行(い)った。 15ひとりの人(ひと)が彼(かれ)に会(あ)い、彼(かれ)が野(の)をさまよっていたので、その人(ひと)は彼(かれ)に尋(たず)ねて言(い)った、「あなたは何(なに)を捜(さが)しているのですか」。 16彼(かれ)は言(い)った、「兄弟(きょうだい)たちを捜(さが)しているのです。彼(かれ)らが、どこで羊(ひつじ)を飼(か)っているのか、どうぞわたしに知(し)らせてください」。 17その人(ひと)は言(い)った、「彼(かれ)らはここを去(さ)りました。彼(かれ)らが『ドタンへ行(い)こう』と言(い)うのをわたしは聞(き)きました」。そこでヨセフは兄弟(きょうだい)たちのあとを追(お)って行(い)って、ドタンで彼(かれ)らに会(あ)った。 18ヨセフが彼(かれ)らに近(ちか)づかないうちに、彼(かれ)らははるかにヨセフを見(み)て、これを殺(ころ)そうと計(はか)り、 19互(たがい)に言(い)った、「あの夢見(ゆめみ)る者(もの)がやって来(く)る。 20さあ、彼(かれ)を殺(ころ)して穴(あな)に投(な)げ入(い)れ、悪(わる)い獣(けもの)が彼(かれ)を食(く)ったと言(い)おう。そして彼(かれ)の夢(ゆめ)がどうなるか見(み)よう」。 21ルベンはこれを聞(き)いて、ヨセフを彼(かれ)らの手(て)から救(すく)い出(だ)そうとして言(い)った、「われわれは彼(かれ)の命(いのち)を取(と)ってはならない」。 22ルベンはまた彼(かれ)らに言(い)った、「血(ち)を流(なが)してはいけない。彼(かれ)を荒野(あらの)のこの穴(あな)に投(な)げ入(い)れよう。彼(かれ)に手(て)をくだしてはならない」。これはヨセフを彼(かれ)らの手(て)から救(すく)いだして父(ちち)に返(かえ)すためであった。 23さて、ヨセフが兄弟(きょうだい)たちのもとへ行(い)くと、彼(かれ)らはヨセフの着物(きもの)、彼(かれ)が着(き)ていた長(なが)そでの着物(きもの)をはぎとり、 24彼(かれ)を捕(とら)えて穴(あな)に投(な)げ入(い)れた。その穴(あな)はからで、その中(なか)に水(みず)はなかった。

25こうして彼(かれ)らはすわってパンを食(た)べた。時(とき)に彼(かれ)らが目(め)をあげて見(み)ると、イシマエルびとの隊商(たいしょう)が、らくだに香料(こうりょう)と、乳香(にゅうこう)と、もつやくとを負(お)わせてエジプトへ下(くだ)り行(い)こうとギレアデからやってきた。   26そこでユダは兄弟(きょうだい)たちに言(い)った、「われわれが弟(おとうと)を殺(ころ)し、その血(ち)を隠(かく)して何(なに)の益(えき)があろう。 27さあ、われわれは彼(かれ)をイシマエルびとに売(う)ろう。彼(かれ)はわれわれの兄弟(きょうだい)、われわれの肉(にく)身(み)だから、彼(かれ)に手(て)を下(くだ)してはならない」。兄弟(きょうだい)たちはこれを聞(き)き入(い)れた。 28時(とき)にミデアンびとの商人(しょうにん)たちが通(とお)りかかったので、彼(かれ)らはヨセフを穴(あな)から引(ひ)き上(あ)げ、銀(ぎん)二十シケルでヨセフをイシマエルびとに売(う)った。彼(かれ)らはヨセフをエジプトへ連(つ)れて行(い)った。

29さてルベンは穴(あな)に帰(かえ)って見(み)たが、ヨセフが穴(あな)の中(なか)にいなかったので、彼(かれ)は衣服(いふく)を裂(さ)き、 30兄弟(きょうだい)たちのもとに帰(かえ)って言(い)った、「あの子(こ)はいない。ああ、わたしはどこへ行(い)くことができよう」。 31彼(かれ)らはヨセフの着物(きもの)を取(と)り、雄(お)やぎを殺(ころ)して、着物(きもの)をその血(ち)に浸(ひた)し、 32その長(なが)そでの着物(きもの)を父(ちち)に持(も)ち帰(かえ)って言(い)った、「わたしたちはこれを見(み)つけましたが、これはあなたの子(こ)の着物(きもの)か、どうか見(み)さだめてください」。 33父(ちち)はこれを見(み)さだめて言(い)った、「わが子(こ)の着物(きもの)だ。悪(わる)い獣(けもの)が彼(かれ)を食(く)ったのだ。確(たし)かにヨセフはかみ裂(さ)かれたのだ」。 34そこでヤコブは衣服(いふく)を裂(さ)き、荒布(あらぬの)を腰(こし)にまとって、長(なが)い間(あいだ)その子(こ)のために嘆(なげ)いた。 35子(こ)らと娘(むすめ)らとは皆(みな)立(た)って彼(かれ)を慰(なぐさ)めようとしたが、彼(かれ)は慰(なぐさ)められるのを拒(こば)んで言(い)った、「いや、わたしは嘆(なげ)きながら陰府(よみ)に下(くだ)って、わが子(こ)のもとへ行(い)こう」。こうして父(ちち)は彼(かれ)のために泣(な)いた。 36さて、かのミデアンびとらはエジプトでパロの役人(やくにん)、侍衛(じえい)長(ちょう)ポテパルにヨセフを売(う)った。

第三八章

1そのころユダは兄弟(きょうだい)たちを離(はな)れて下(くだ)り、アドラムびとで、名(な)をヒラという者(もの)の所(ところ)へ行(い)った。 2ユダはその所(ところ)で、名(な)をシュアというカナンびとの娘(むすめ)を見(み)て、これをめとり、その所(ところ)にはいった。 3彼女(かのじょ)はみごもって男(おとこ)の子(こ)を産(う)んだので、ユダは名(な)をエルと名(な)づけた。 4彼女(かのじょ)は再(ふたた)びみごもって男(おとこ)の子(こ)を産(う)み、名(な)をオナンと名(な)づけた。 5また重(かさ)ねて、男(おとこ)の子(こ)を産(う)み、名(な)をシラと名(な)づけた。彼女(かのじょ)はこの男(おとこ)の子(こ)を産(う)んだとき、クジブにおった。 6ユダは長子(ちょうし)エルのために、名(な)をタマルという妻(つま)を迎(むか)えた。 7しかしユダの長子(ちょうし)エルは主(しゅ)の前(まえ)に悪(わる)い者(もの)であったので、主(しゅ)は彼(かれ)を殺(ころ)された。 8そこでユダはオナンに言(い)った、「兄(あに)の妻(つま)の所(ところ)にはいって、彼女(かのじょ)をめとり、兄(あに)に子供(こども)を得(え)させなさい」。 9しかしオナンはその子(こ)が自分(じぶん)のものとならないのを知(し)っていたので、兄(あに)の妻(つま)の所(ところ)にはいった時(とき)、兄(あに)に子(こ)を得(え)させないために地(ち)に洩(も)らした。 10彼(かれ)のした事(こと)は主(しゅ)の前(まえ)に悪(わる)かったので、主(しゅ)は彼(かれ)をも殺(ころ)された。 11そこでユダはその子(こ)の妻(つま)タマルに言(い)った、「わたしの子(こ)シラが成人(せいじん)するまで、寡婦(かふ)のままで、あなたの父(ちち)の家(いえ)にいなさい」。彼(かれ)は、シラもまた兄弟(きょうだい)たちのように死(し)ぬかもしれないと、思(おも)ったからである。それでタマルは行(い)って父(ちち)の家(いえ)におった。

12日(ひ)がたってシュアの娘(むすめ)ユダの妻(つま)は死(し)んだ。その後(のち)、ユダは喪(も)を終(おわ)ってその友(とも)アドラムびとヒラと共(とも)にテムナに上(のぼ)り、自分(じぶん)の羊(ひつじ)の毛(け)を切(き)る者(もの)のところへ行(い)った。 13時(とき)に、ひとりの人(ひと)がタマルに告(つ)げて、「あなたのしゅうとが羊(ひつじ)の毛(け)を切(き)るためにテムナに上(のぼ)って来(く)る」と言(い)ったので、 14彼女(かのじょ)は寡婦(かふ)の衣服(いふく)を脱(ぬ)ぎすて、被衣(かずき)で身(み)をおおい隠(かく)して、テムナへ行(い)く道(みち)のかたわらにあるエナイムの入口(いりぐち)にすわっていた。彼女(かのじょ)はシラが成人(せいじん)したのに、自分(じぶん)がその妻(つま)にされないのを知(し)ったからである。 15ユダは彼女(かのじょ)を見(み)たとき、彼女(かのじょ)が顔(かお)をおおっていたため、遊女(ゆうじょ)だと思(おも)い、 16道(みち)のかたわらで彼女(かのじょ)に向(む)かって言(い)った、「さあ、あなたの所(ところ)にはいらせておくれ」。彼(かれ)はこの女(おんな)がわが子(こ)の妻(つま)であることを知(し)らなかったからである。彼女(かのじょ)は言(い)った、「わたしの所(ところ)にはいるため、何(なに)をくださいますか」。 17ユダは言(い)った、「群(む)れのうちのやぎの子(こ)をあなたにあげよう」。彼女(かのじょ)は言(い)った、「それをくださるまで、しるしをわたしにくださいますか」。 18ユダは言(い)った、「どんなしるしをあげようか」。彼女(かのじょ)は言(い)った、「あなたの印(いん)と紐(ひも)と、あなたの手(て)にあるつえとを」。彼(かれ)はこれらを与(あた)えて彼女(かのじょ)の所(ところ)にはいった。彼女(かのじょ)はユダによってみごもった。 19彼女(かのじょ)は起(お)きて去(さ)り、被衣(かずき)を脱(ぬ)いで寡婦(かふ)の衣服(いふく)を着(き)た。

20やがてユダはその女(おんな)からしるしを取(と)りもどそうと、その友(とも)アドラムびとに託(たく)してやぎの子(こ)を送(おく)ったけれども、その女(おんな)を見(み)いだせなかった。 21そこで彼(かれ)はその所(ところ)の人々(ひとびと)に尋(たず)ねて言(い)った、「エナイムで道(みち)のかたわらにいた遊女(ゆうじょ)はどこにいますか」。彼(かれ)らは言(い)った、「ここには遊女(ゆうじょ)はいません」。 22彼(かれ)はユダのもとに帰(かえ)って言(い)った、「わたしは彼女(かのじょ)を見(み)いだせませんでした。またその所(ところ)の人々(ひとびと)は、『ここには遊女(ゆうじょ)はいない』と言(い)いました」。 23そこでユダは言(い)った、「女(おんな)に持(も)たせておこう。わたしたちは恥(はじ)をかくといけないから。とにかく、わたしはこのやぎの子(こ)を送(おく)ったが、あなたは彼女(かのじょ)を見(み)いだせなかったのだ」。

24ところが三月(がつ)ほどたって、ひとりの人(ひと)がユダに言(い)った、「あなたの嫁(よめ)タマルは姦淫(かんいん)しました。そのうえ、彼女(かのじょ)は姦淫(かんいん)によってみごもりました」。ユダは言(い)った、「彼女(かのじょ)を引(ひ)き出(だ)して焼(や)いてしまえ」。 25彼女(かのじょ)は引(ひ)き出(だ)された時(とき)、そのしゅうとに人(ひと)をつかわして言(い)った、「わたしはこれをもっている人(ひと)によって、みごもりました」。彼女(かのじょ)はまた言(い)った、「どうか、この印(いん)と、紐(ひも)と、つえとはだれのものか、見定(みさだ)めてください」。 26ユダはこれを見定(みさだ)めて言(い)った、「彼女(かのじょ)はわたしよりも正(ただ)しい。わたしが彼女(かのじょ)をわが子(こ)シラに与(あた)えなかったためである」。彼(かれ)は再(ふたた)び彼女(かのじょ)を知(し)らなかった。

27さて彼女(かのじょ)の出産(しゅっさん)の時(とき)がきたが、胎内(たいない)には、ふたごがあった。 28出産(しゅっさん)の時(とき)に、ひとりの子(こ)が手(て)を出(だ)したので、産婆(さんば)は、「これがさきに出(で)た」と言(い)い、緋(ひ)の糸(いと)を取(と)って、その手(て)に結(むす)んだ。 29そして、その子(こ)が手(て)をひっこめると、その弟(おとうと)が出(で)たので、「どうしてあなたは自分(じぶん)で破(やぶ)って出(で)るのか」と言(い)った。これによって名(な)はペレヅと呼(よ)ばれた。 30その後(のち)、手(て)に緋(ひ)の糸(いと)のある兄(あに)が出(で)たので、名(な)はゼラと呼(よ)ばれた。

第三九章

1さてヨセフは連(つ)れられてエジプトに下(くだ)ったが、パロの役人(やくにん)で侍衛(じえい)長(ちょう)であったエジプトびとポテパルは、彼(かれ)をそこに連(つ)れ下(くだ)ったイシマエルびとらの手(て)から買(か)い取(と)った。 2主(しゅ)がヨセフと共(とも)におられたので、彼(かれ)は幸運(こううん)な者(もの)となり、その主人(しゅじん)エジプトびとの家(いえ)におった。 3その主人(しゅじん)は主(しゅ)が彼(かれ)とともにおられることと、主(しゅ)が彼(かれ)の手(て)のすることをすべて栄(さか)えさせられるのを見(み)た。 4そこで、ヨセフは彼(かれ)の前(まえ)に恵(めぐ)みを得(え)、そのそば近(ちか)く仕(つか)えた。彼(かれ)はヨセフに家(いえ)をつかさどらせ、持(も)ち物(もの)をみな彼(かれ)の手(て)にゆだねた。 5彼(かれ)がヨセフに家(いえ)とすべての持(も)ち物(もの)をつかさどらせた時(とき)から、主(しゅ)はヨセフのゆえにそのエジプトびとの家(いえ)を恵(めぐ)まれたので、主(しゅ)の恵(めぐ)みは彼(かれ)の家(いえ)と畑(はたけ)とにあるすべての持(も)ち物(もの)に及(およ)んだ。 6そこで彼(かれ)は持(も)ち物(もの)をみなヨセフの手(て)にゆだねて、自分(じぶん)が食(た)べる物(もの)のほかは、何(なに)をも顧(かえり)みなかった。

さてヨセフは姿(すがた)がよく、顔(かお)が美(うつく)しかった。 7これらの事(こと)の後(のち)、主人(しゅじん)の妻(つま)はヨセフに目(め)をつけて言(い)った、「わたしと寝(ね)なさい」。 8ヨセフは拒(こば)んで、主人(しゅじん)の妻(つま)に言(い)った、「御(ご)主人(しゅじん)はわたしがいるので家(いえ)の中(なか)の何(なに)をも顧(かえり)みず、その持(も)ち物(もの)をみなわたしの手(て)にゆだねられました。 9この家(いえ)にはわたしよりも大(おお)いなる者(もの)はありません。また御(ご)主人(しゅじん)はあなたを除(のぞ)いては、何(なに)をもわたしに禁(きん)じられませんでした。あなたが御(ご)主人(しゅじん)の妻(つま)であるからです。どうしてわたしはこの大(おお)きな悪(あく)をおこなって、神(かみ)に罪(つみ)を犯(おか)すことができましょう」。 10彼女(かのじょ)は毎日(まいにち)ヨセフに言(い)い寄(よ)ったけれども、ヨセフは聞(き)きいれず、彼女(かのじょ)と寝(ね)なかった。また共(とも)にいなかった。 11ある日(ひ)ヨセフが務(つとめ)をするために家(いえ)にはいった時(とき)、家(いえ)の者(もの)がひとりもそこにいなかったので、 12彼女(かのじょ)はヨセフの着物(きもの)を捕(とら)えて、「わたしと寝(ね)なさい」と言(い)った。ヨセフは着物(きもの)を彼女(かのじょ)の手(て)に残(のこ)して外(そと)にのがれ出(で)た。 13彼女(かのじょ)はヨセフが着物(きもの)を自分(じぶん)の手(て)に残(のこ)して外(そと)にのがれたのを見(み)て、 14その家(いえ)の者(もの)どもを呼(よ)び、彼(かれ)らに告(つ)げて言(い)った、「主人(しゅじん)がわたしたちの所(ところ)に連(つ)れてきたヘブルびとは、わたしたちに戯(たわむ)れます。彼(かれ)はわたしと寝(ね)ようとして、わたしの所(ところ)にはいったので、わたしは大声(おおごえ)で叫(さけ)びました。 15彼(かれ)はわたしが声(こえ)をあげて叫(さけ)ぶのを聞(き)くと、着物(きもの)をわたしの所(ところ)に残(のこ)して外(そと)にのがれ出(で)ました」。 16彼女(かのじょ)はその着物(きもの)をかたわらに置(お)いて、主人(しゅじん)の帰(かえ)って来(く)るのを待(ま)った。 17そして彼女(かのじょ)は次(つぎ)のように主人(しゅじん)に告(つ)げた、「あなたがわたしたちに連(つ)れてこられたヘブルのしもべはわたしに戯(たわむ)れようとして、わたしの所(ところ)にはいってきました。 18わたしが声(こえ)をあげて叫(さけ)んだので、彼(かれ)は着物(きもの)をわたしの所(ところ)に残(のこ)して外(そと)にのがれました」。

19主人(しゅじん)はその妻(つま)が「あなたのしもべは、わたしにこんな事(こと)をした」と告(つ)げる言葉(ことば)を聞(き)いて、激(はげ)しく怒(いか)った。 20そしてヨセフの主人(しゅじん)は彼(かれ)を捕(とら)えて、王(おう)の囚人(しゅうじん)をつなぐ獄屋(ごくや)に投(な)げ入(い)れた。こうしてヨセフは獄屋(ごくや)の中(なか)におったが、 21主(しゅ)はヨセフと共(とも)におられて彼(かれ)にいつくしみを垂(た)れ、獄屋(ごくや)番(ばん)の恵(めぐ)みをうけさせられた。 22獄屋(ごくや)番(ばん)は獄屋(ごくや)におるすべての囚人(しゅうじん)をヨセフの手(て)にゆだねたので、彼(かれ)はそこでするすべての事(こと)をおこなった。 23獄屋(ごくや)番(ばん)は彼(かれ)の手(て)にゆだねた事(こと)はいっさい顧(かえり)みなかった。主(しゅ)がヨセフと共(とも)におられたからである。主(しゅ)は彼(かれ)のなす事(こと)を栄(さか)えさせられた。

第四〇章

1これらの事(こと)の後(のち)、エジプト王(おう)の給仕(きゅうじ)役(やく)と料理(りょうり)役(やく)とがその主君(しゅくん)エジプト王(おう)に罪(つみ)を犯(おか)した。 2パロはふたりの役人(やくにん)、すなわち給仕(きゅうじ)役(やく)の長(ちょう)と料理(りょうり)役(やく)の長(ちょう)に向(む)かって憤(いきどお)り、 3侍衛(じえい)長(ちょう)の家(いえ)の監禁所(かんきんじょ)、すなわちヨセフがつながれている獄屋(ごくや)に入(い)れた。 4侍衛(じえい)長(ちょう)はヨセフに命(めい)じて彼(かれ)らと共(とも)におらせたので、ヨセフは彼(かれ)らに仕(つか)えた。こうして彼(かれ)らは監禁所(かんきんじょ)で幾日(いくにち)かを過(す)ごした。 5さて獄屋(ごくや)につながれたエジプト王(おう)の給仕(きゅうじ)役(やく)と料理(りょうり)役(やく)のふたりは一夜(いちや)のうちにそれぞれ意味(いみ)のある夢(ゆめ)を見(み)た。 6ヨセフが朝(あさ)、彼(かれ)らのところへ行(い)って見(み)ると、彼(かれ)らは悲(かな)しみに沈(しず)んでいた。 7そこでヨセフは自分(じぶん)と一緒(いっしょ)に主人(しゅじん)の家(いえ)の監禁所(かんきんじょ)にいるパロの役人(やくにん)たちに尋(たず)ねて言(い)った、「どうして、きょう、あなたがたの顔色(かおいろ)が悪(わる)いのですか」。 8彼(かれ)らは言(い)った、「わたしたちは夢(ゆめ)を見(み)ましたが、解(と)いてくれる者(もの)がいません」。ヨセフは彼(かれ)らに言(い)った、「解(と)くことは神(かみ)によるのではありませんか。どうぞ、わたしに話(はな)してください」。

9給仕(きゅうじ)役(やく)の長(ちょう)はその夢(ゆめ)をヨセフに話(はな)して言(い)った、「わたしが見(み)た夢(ゆめ)で、わたしの前(まえ)に一本(ぽん)のぶどうの木(き)がありました。 10そのぶどうの木(き)に三つの枝(えだ)があって、芽(め)を出(だ)し、花(はな)が咲(さ)き、ぶどうのふさが熟(じゅく)しました。 11時(とき)にわたしの手(て)に、パロの杯(さかずき)があって、わたしはそのぶどうを取(と)り、それをパロの杯(さかずき)にしぼり、その杯(さかずき)をパロの手(て)にささげました」。 12ヨセフは言(い)った、「その解(と)き明(あ)かしはこうです。三つの枝(えだ)は三日(か)です。 13今(いま)から三日(か)のうちにパロはあなたの頭(あたま)を上(あ)げて、あなたを元(もと)の役目(やくめ)に返(かえ)すでしょう。あなたはさきに給仕(きゅうじ)役(やく)だった時(とき)にされたように、パロの手(て)に杯(さかずき)をささげられるでしょう。 14それで、あなたがしあわせになられたら、わたしを覚(おぼ)えていて、どうかわたしに恵(めぐ)みを施(ほどこ)し、わたしの事(こと)をパロに話(はな)して、この家(いえ)からわたしを出(だ)してください。 15わたしは、実(み)はヘブルびとの地(ち)からさらわれてきた者(もの)です。またここでもわたしは地下(ちか)の獄屋(ごくや)に入(い)れられるような事(こと)はしなかったのです」。

16料理(りょうり)役(やく)の長(ちょう)はその解(と)き明(あ)かしの良(よ)かったのを見(み)て、ヨセフに言(い)った、「わたしも夢(ゆめ)を見(み)たが、白(しろ)いパンのかごが三つ、わたしの頭(あたま)の上(うえ)にあった。 17一番(ばん)上(うえ)のかごには料理(りょうり)役(やく)がパロのために作(つく)ったさまざまの食物(しょくもつ)があったが、鳥(とり)がわたしの頭(あたま)の上(うえ)のかごからそれを食(た)べていた」。 18ヨセフは答(こた)えて言(い)った、「その解(と)き明(あ)かしはこうです。三つのかごは三日(か)です。 19今(いま)から三日(か)のうちにパロはあなたの頭(あたま)を上(あ)げ離(はな)して、あなたを木(き)に掛(か)けるでしょう。そして鳥(とり)があなたの肉(にく)を食(く)い取(と)るでしょう」。

20さて三日(か)目(め)はパロの誕生(たんじょう)日(ひ)であったので、パロはすべての家来(けらい)のためにふるまいを設(もう)け、家来(けらい)のうちの給仕(きゅうじ)役(やく)の長(ちょう)の頭(あたま)と、料理(りょうり)役(やく)の長(ちょう)の頭(あたま)を上(あ)げた。 21すなわちパロは給仕(きゅうじ)役(やく)の長(ちょう)を給仕(きゅうじ)役(やく)の職(しょく)に返(かえ)したので、彼(かれ)はパロの手(て)に杯(さかずき)をささげた。 22しかしパロは料理(りょうり)役(やく)の長(ちょう)を木(き)に掛(か)けた。ヨセフが彼(かれ)らに解(と)き明(あ)かしたとおりである。 23ところが、給仕(きゅうじ)役(やく)の長(ちょう)はヨセフを思(おも)い出(だ)さず、忘(わす)れてしまった。

第四一章

1二年(ねん)の後(のち)パロは夢(ゆめ)を見(み)た。夢(ゆめ)に、彼(かれ)はナイル川(かわ)のほとりに立(た)っていた。 2すると、その川(かわ)から美(うつく)しい、肥(こ)え太(ふと)った七頭(とう)の雌牛(めうし)が上(あ)がってきて葦(あし)を食(く)っていた。 3その後(のち)、また醜(みにく)い、やせ細(ほそ)った他(た)の七頭(とう)の雌牛(めうし)が川(かわ)から上(あ)がってきて、川(かわ)の岸(きし)にいた雌牛(めうし)のそばに立(た)ち、 4その醜(みにく)い、やせ細(ほそ)った雌牛(めうし)が、あの美(うつく)しい、肥(こ)えた七頭(とう)の雌牛(めうし)を食(く)いつくした。ここでパロは目(め)が覚(さ)めた。 5彼(かれ)はまた眠(ねむ)って、再(ふたた)び夢(ゆめ)を見(み)た。夢(ゆめ)に、一本(ぽん)の茎(くき)に太(ふと)った良(よ)い七つの穂(ほ)が出(で)てきた。 6その後(のち)また、やせて、東風(ひがしかぜ)に焼(や)けた七つの穂(ほ)が出(で)てきて、 7そのやせた穂(ほ)が、あの太(ふと)って実(みの)った七つの穂(ほ)をのみつくした。ここでパロは目(め)が覚(さ)めたが、それは夢(ゆめ)であった。 8朝(あさ)になって、パロは心(こころ)が騒(さわ)ぎ、人(ひと)をつかわして、エジプトのすべての魔術(まじゅつ)師(し)とすべての知者(ちしゃ)とを呼(よ)び寄(よ)せ、彼(かれ)らに夢(ゆめ)を告(つ)げたが、これをパロに解(と)き明(あ)かしうる者(もの)がなかった。

9そのとき給仕(きゅうじ)役(やく)の長(ちょう)はパロに告(つ)げて言(い)った、「わたしはきょう、自分(じぶん)のあやまちを思(おも)い出(だ)しました。 10かつてパロがしもべらに向(む)かって憤(いきどお)り、わたしと料理(りょうり)役(やく)の長(ちょう)とを侍衛(じえい)長(ちょう)の家(いえ)の監禁所(かんきんじょ)にお入(い)れになった時(とき)、 11わたしも彼(かれ)も一夜(いちや)のうちに夢(ゆめ)を見(み)、それぞれ意味(いみ)のある夢(ゆめ)を見(み)ましたが、 12そこに侍衛(じえい)長(ちょう)のしもべで、ひとりの若(わか)いヘブルびとがわれわれと共(とも)にいたので、彼(かれ)に話(はな)したところ、彼(かれ)はわれわれの夢(ゆめ)を解(と)き明(あ)かし、その夢(ゆめ)によって、それぞれ解(と)き明(あ)かしをしました。 13そして彼(かれ)が解(と)き明(あ)かしたとおりになって、パロはわたしを職(しょく)に返(かえ)し、彼(かれ)を木(き)に掛(か)けられました」。

14そこでパロは人(ひと)をつかわしてヨセフを呼(よ)んだ。人々(ひとびと)は急(いそ)いで彼(かれ)を地下(ちか)の獄屋(ごくや)から出(だ)した。ヨセフは、ひげをそり、着物(きもの)を着替(きが)えてパロのもとに行(い)った。 15パロはヨセフに言(い)った、「わたしは夢(ゆめ)を見(み)たが、これを解(と)き明(あ)かす者(もの)がない。聞(き)くところによると、あなたは夢(ゆめ)を聞(き)いて、解(と)き明(あ)かしができるそうだ」。 16ヨセフはパロに答(こた)えて言(い)った、「いいえ、わたしではありません。神(かみ)がパロに平安(へいあん)をお告(つ)げになりましょう」。 17パロはヨセフに言(い)った、「夢(ゆめ)にわたしは川(かわ)の岸(きし)に立(た)っていた。 18その川(かわ)から肥(こ)え太(ふと)った、美(うつく)しい七頭(とう)の雌牛(めうし)が上(あ)がってきて葦(あし)を食(く)っていた。 19その後(のち)、弱(よわ)く、非常(ひじょう)に醜(みにく)い、やせ細(ほそ)った他(た)の七頭(とう)の雌牛(めうし)がまた上(うえ)がってきた。わたしはエジプト全国(ぜんこく)で、このような醜(みにく)いものをまだ見(み)たことがない。 20ところがそのやせた醜(みにく)い雌牛(めうし)が、初(はじ)めの七頭(とう)の肥(こ)えた雌牛(めうし)を食(く)いつくしたが、 21腹(はら)にはいっても、腹(はら)にはいった事(こと)が知(し)れず、やはり初(はじ)めのように醜(みにく)かった。ここでわたしは目(め)が覚(さ)めた。 22わたしはまた夢(ゆめ)をみた。一本(ぽん)の茎(くき)に七つの実(み)った良(よ)い穂(ほ)が出(で)てきた。 23その後(のち)、やせ衰(おとろ)えて、東風(ひがしかぜ)に焼(や)けた七つの穂(ほ)が出(で)てきたが、 24そのやせた穂(ほ)が、あの七つの良(よ)い穂(ほ)をのみつくした。わたしは魔術(まじゅつ)師(し)に話(はな)したが、わたしにそのわけを示(しめ)しうる者(もの)はなかった」。

25ヨセフはパロに言(い)った、「パロの夢(ゆめ)は一つです。神(かみ)がこれからしようとすることをパロに示(しめ)されたのです。 26七頭(とう)の良(よ)い雌牛(めうし)は七年(ねん)です。七つの良(よ)い穂(ほ)も七年(ねん)で、夢(ゆめ)は一つです。 27あとに続(つづ)いて、上(あ)がってきた七頭(とう)のやせた醜(みにく)い雌牛(めうし)は七年(ねん)で、東風(ひがしかぜ)に焼(や)けた実(み)の入(い)らない七つの穂(ほ)は七年(ねん)のききんです。 28わたしがパロに申(もう)し上(あ)げたように、神(かみ)がこれからしようとすることをパロに示(しめ)されたのです。 29エジプト全国(ぜんこく)に七年(ねん)の大(だい)豊作(ほうさく)があり、 30その後(のち)七年(ねん)のききんが起(おこ)り、その豊作(ほうさく)はみなエジプトの国(くに)で忘(わす)れられて、そのききんは国(くに)を滅(ほろ)ぼすでしょう。 31後(のち)に来(く)るそのききんが、非常(ひじょう)に激(はげ)しいから、その豊作(ほうさく)は国(くに)のうちで記憶(きおく)されなくなるでしょう。 32パロが二度(ど)重(かさ)ねて夢(ゆめ)を見(み)られたのは、この事(こと)が神(かみ)によって定(さだ)められ、神(かみ)がすみやかにこれをされるからです。 33それゆえパロは今(いま)、さとく、かつ賢(かしこ)い人(ひと)を尋(たず)ね出(だ)してエジプトの国(くに)を治(おさ)めさせなさい。 34パロはこうして国中(くにぢゅう)に監督(かんとく)を置(お)き、その七年(ねん)の豊作(ほうさく)のうちに、エジプトの国(くに)の産物(さんぶつ)の五分(ぶん)の一を取(と)り、 35続(つづ)いて来(く)る良(よ)い年々(ねんねん)のすべての食糧(しょくりょう)を彼(かれ)らに集(あつ)めさせ、穀物(こくもつ)を食糧(しょくりょう)として、パロの手(て)で町々(まちまち)にたくわえ守(まも)らせなさい。 36こうすれば食糧(しょくりょう)は、エジプトの国(くに)に臨(のぞ)む七年(ねん)のききんに備(そな)えて、この国(くに)のためにたくわえとなり、この国(くに)はききんによって滅(ほろ)びることがないでしょう」。

37この事(こと)はパロとそのすべての家来(けらい)たちの目(め)にかなった。 38そこでパロは家来(けらい)たちに言(い)った、「われわれは神(かみ)の霊(れい)をもつこのような人(ひと)を、ほかに見(み)いだし得(え)ようか」。 39またパロはヨセフに言(い)った、「神(かみ)がこれを皆(みな)あなたに示(しめ)された。あなたのようにさとく賢(かしこ)い者(もの)はない。 40あなたはわたしの家(いえ)を治(おさ)めてください。わたしの民(たみ)はみなあなたの言葉(ことば)に従(したが)うでしょう。わたしはただ王(おう)の位(くらい)でだけあなたにまさる」。 41パロは更(さら)にヨセフに言(い)った、「わたしはあなたをエジプト全国(ぜんこく)のつかさとする」。 42そしてパロは指輪(ゆびわ)を手(て)からはずして、ヨセフの手(て)にはめ、亜麻(あま)布(ぬの)の衣服(いふく)を着(き)せ、金(きん)の鎖(くさり)をくびにかけ、 43自分(じぶん)の第(だい)二の車(くるま)に彼(かれ)を乗(の)せ、「ひざまずけ」とその前(まえ)に呼(よ)ばわらせ、こうして彼(かれ)をエジプト全国(ぜんこく)のつかさとした。 44ついでパロはヨセフに言(い)った、「わたしはパロである。あなたの許(ゆる)しがなければエジプト全国(ぜんこく)で、だれも手足(てあし)を上(あ)げることはできない」。 45パロはヨセフの名(な)をザフナテ・パネアと呼(よ)び、オンの祭司(さいし)ポテペラの娘(むすめ)アセナテを妻(つま)として彼(かれ)に与(あた)えた。ヨセフはエジプトの国(くに)を巡(めぐ)った。

46ヨセフがエジプトの王(おう)パロの前(まえ)に立(た)った時(とき)は三十歳(さい)であった。ヨセフはパロの前(まえ)を出(で)て、エジプト全国(ぜんこく)をあまねく巡(めぐ)った。 47さて七年(ねん)の豊作(ほうさく)のうちに地(ち)は豊(ゆた)かに物(もの)を産(さん)した。 48そこでヨセフはエジプトの国(くに)にできたその七年間(ねんかん)の食糧(しょくりょう)をことごとく集(あつ)め、その食糧(しょくりょう)を町々(まちまち)に納(おさ)めさせた。すなわち町(まち)の周囲(しゅうい)にある畑(はたけ)の食糧(しょくりょう)をその町(まち)の中(なか)に納(おさ)めさせた。 49ヨセフは穀物(こくもつ)を海(うみ)の砂(すな)のように、非常(ひじょう)に多(おお)くたくわえ、量(はか)りきれなくなったので、ついに量(はか)ることをやめた。

50ききんの年(とし)の来(く)る前(まえ)にヨセフにふたりの子(こ)が生(うま)れた。これらはオンの祭司(さいし)ポテペラの娘(むすめ)アセナテが産(う)んだのである。 51ヨセフは長子(ちょうし)の名(な)をマナセと名(な)づけて言(い)った、「神(かみ)がわたしにすべての苦難(くなん)と父(ちち)の家(いえ)のすべての事(こと)を忘(わす)れさせられた」。 52また次(つぎ)の子(こ)の名(な)をエフライムと名(な)づけて言(い)った、「神(かみ)がわたしを悩(なや)みの地(ち)で豊(ゆた)かにせられた」。

53エジプトの国(くに)にあった七年(ねん)の豊作(ほうさく)が終(おわ)り、 54ヨセフの言(い)ったように七年(ねん)のききんが始(はじ)まった。そのききんはすべての国(くに)にあったが、エジプト全国(ぜんこく)には食物(しょくもつ)があった。 55やがてエジプト全国(ぜんこく)が飢(う)えた時(とき)、民(たみ)はパロに食物(しょくもつ)を叫(さけ)び求(もと)めた。そこでパロはすべてのエジプトびとに言(い)った、「ヨセフのもとに行(い)き、彼(かれ)の言(い)うようにせよ」。 56ききんが地(ち)の全面(ぜんめん)にあったので、ヨセフはすべての穀倉(こくぐら)を開(ひら)いて、エジプトびとに売(う)った。ききんはますますエジプトの国(くに)に激(はげ)しくなった。 57ききんが全(ぜん)地(ち)に激(はげ)しくなったので、諸国(しょこく)の人々(ひとびと)がエジプトのヨセフのもとに穀物(こくもつ)を買(か)うためにきた。

第四二章

1ヤコブはエジプトに穀物(こくもつ)があると知(し)って、むすこたちに言(い)った、「あなたがたはなぜ顔(かお)を見合(みあ)わせているのですか」。 2また言(い)った、「エジプトに穀物(こくもつ)があるということだが、あなたがたはそこへ下(くだ)って行(い)って、そこから、われわれのため穀物(こくもつ)を買(か)ってきなさい。そうすれば、われわれは生(い)きながらえて、死(し)を免(まぬか)れるであろう」。 3そこでヨセフの十人(にん)の兄弟(きょうだい)は穀物(こくもつ)を買(か)うためにエジプトへ下(くだ)った。 4しかし、ヤコブはヨセフの弟(おとうと)ベニヤミンを兄弟(きょうだい)たちと一緒(いっしょ)にやらなかった。彼(かれ)が災(わざわい)に会(あ)うのを恐(おそ)れたからである。 5こうしてイスラエルの子(こ)らは穀物(こくもつ)を買(か)おうと人々(ひとびと)に交(ま)じってやってきた。カナンの地(ち)にききんがあったからである。

6ときにヨセフは国(くに)のつかさであって、国(くに)のすべての民(たみ)に穀物(こくもつ)を売(う)ることをしていた。ヨセフの兄弟(きょうだい)たちはきて、地(ち)にひれ伏(ふ)し、彼(かれ)を拝(はい)した。 7ヨセフは兄弟(きょうだい)たちを見(み)て、それと知(し)ったが、彼(かれ)らに向(む)かっては知(し)らぬ者(もの)のようにし、荒々(あらあら)しく語(かた)った。すなわち彼(かれ)らに言(い)った、「あなたがたはどこからきたのか」。彼(かれ)らは答(こた)えた、「食糧(しょくりょう)を買(か)うためにカナンの地(ち)からきました」。 8ヨセフは、兄弟(きょうだい)たちであるのを知(し)っていたが、彼(かれ)らはヨセフとは知(し)らなかった。 9ヨセフはかつて彼(かれ)らについて見(み)た夢(ゆめ)を思(おも)い出(だ)して、彼(かれ)らに言(い)った、「あなたがたは回(まわ)し者(もの)で、この国(くに)のすきをうかがうためにきたのです」。 10彼(かれ)らはヨセフに答(こた)えた、「いいえ、わが主(しゅ)よ、しもべらはただ食糧(しょくりょう)を買(か)うためにきたのです。 11われわれは皆(みな)、ひとりの人(ひと)の子(こ)で、真実(しんじつ)な者(もの)です。しもべらは回(まわ)し者(もの)ではありません」。 12ヨセフは彼(かれ)らに言(い)った、「いや、あなたがたはこの国(くに)のすきをうかがうためにきたのです」。 13彼(かれ)らは言(い)った、「しもべらは十二人(にん)兄弟(きょうだい)で、カナンの地(ち)にいるひとりの人(ひと)の子(こ)です。末(すえ)の弟(おとうと)は今(いま)、父(ちち)と一緒(いっしょ)にいますが、他(た)のひとりはいなくなりました」。 14ヨセフは彼(かれ)らに言(い)った、「わたしが言(い)ったとおり、あなたがたは回(まわ)し者(もの)です。 15あなたがたをこうしてためしてみよう。パロのいのちにかけて誓(ちか)います。末(すえ)の弟(おとうと)がここにこなければ、あなたがたはここを出(で)ることはできません。 16あなたがたのひとりをやって弟(おとうと)を連(つ)れてこさせなさい。それまであなたがたをつないでおいて、あなたがたに誠実(せいじつ)があるかどうか、あなたがたの言葉(ことば)をためしてみよう。パロのいのちにかけて誓(ちか)います。あなたがたは確(たし)かに回(まわ)し者(もの)です」。 17ヨセフは彼(かれ)らをみな一緒(いっしょ)に三日(か)の間(あいだ)、監禁所(かんきんじょ)に入(い)れた。

18三日(か)目(め)にヨセフは彼(かれ)らに言(い)った、「こうすればあなたがたは助(たす)かるでしょう。わたしは神(かみ)を恐(おそ)れます。 19もしあなたがたが真実(しんじつ)な者(もの)なら、兄弟(きょうだい)のひとりをあなたがたのいる監禁所(かんきんじょ)に残(のこ)し、あなたがたは穀物(こくもつ)を携(たずさ)えて行(い)って、家族(かぞく)の飢(う)えを救(すく)いなさい。 20そして末(すえ)の弟(おとうと)をわたしのもとに連(つ)れてきなさい。そうすればあなたがたの言葉(ことば)のほんとうであることがわかって、死(し)を免(まぬか)れるでしょう」。彼(かれ)らはそのようにした。 21彼(かれ)らは互(たがい)に言(い)った、「確(たし)かにわれわれは弟(おとうと)の事(こと)で罪(つみ)がある。彼(かれ)がしきりに願(ねが)った時(とき)、その心(こころ)の苦(くる)しみを見(み)ながら、われわれは聞(き)き入(い)れなかった。それでこの苦(くる)しみに会(あ)うのだ」。 22ルベンが彼(かれ)らに答(こた)えて言(い)った、「わたしはあなたがたに、この子供(こども)に罪(つみ)を犯(おか)すなと言(い)ったではないか。それにもかかわらず、あなたがたは聞(き)き入(い)れなかった。それで彼(かれ)の血(ち)の報(むく)いを受(う)けるのです」。 23彼(かれ)らはヨセフが聞(き)きわけているのを知(し)らなかった。相互(そうご)の間(あいだ)に通訳者(つうやくしゃ)がいたからである。 24ヨセフは彼(かれ)らを離(はな)れて行(い)って泣(な)き、また帰(かえ)ってきて彼(かれ)らと語(かた)り、そのひとりシメオンを捕(とら)えて、彼(かれ)らの目(め)の前(まえ)で縛(しば)った。 25そしてヨセフは人々(ひとびと)に命(めい)じて、彼(かれ)らの袋(ふくろ)に穀物(こくもつ)を満(み)たし、めいめいの銀(ぎん)を袋(ふくろ)に返(かえ)し、道中(どうちゅう)の食料(しょくりょう)を与(あた)えさせた。ヨセフはこのように彼(かれ)らにした。

26彼(かれ)らは穀物(こくもつ)をろばに負(お)わせてそこを去(さ)った。 27そのひとりが宿(やど)で、ろばに飼葉(かいば)をやるため袋(ふくろ)をあけて見(み)ると、袋(ふくろ)の口(くち)に自分(じぶん)の銀(ぎん)があった。 28彼(かれ)は兄弟(きょうだい)たちに言(い)った、「わたしの銀(ぎん)は返(かえ)してある。しかも見(み)よ、それは袋(ふくろ)の中(なか)にある」。そこで彼(かれ)らは非常(ひじょう)に驚(おどろ)き、互(たがい)に震(ふる)えながら言(い)った、「神(かみ)がわれわれにされたこのことは何事(なにごと)だろう」。

29こうして彼(かれ)らはカナンの地(ち)にいる父(ちち)ヤコブのもとに帰(かえ)り、その身(み)に起(た)った事(こと)をことごとく告(つ)げて言(い)った、 30「あの国(くに)の君(きみ)は、われわれに荒々(あらあら)しく語(かた)り、国(くに)をうかがう回(まわ)し者(もの)だと言(い)いました。 31われわれは彼(かれ)に答(こた)えました、『われわれは真実(しんじつ)な者(もの)であって回(まわ)し者(もの)ではない。 32われわれは十二人(にん)兄弟(きょうだい)で、同(おな)じ父(ちち)の子(こ)である。ひとりはいなくなり、末(すえ)の弟(おとうと)は今(いま)父(ちち)と共(とも)にカナンの地(ち)にいる』。 33その国(くに)の君(きみ)であるその人(ひと)はわれわれに言(い)いました、『わたしはこうしてあなたがたの真実(しんじつ)な者(もの)であるのを知(し)ろう。あなたがたは兄弟(きょうだい)のひとりをわたしのもとに残(のこ)し、穀物(こくもつ)を携(たずさ)えて行(い)って、家族(かぞく)の飢(う)えを救(すく)いなさい。 34そして末(すえ)の弟(おとうと)をわたしのもとに連(つ)れてきなさい。そうすればあなたがたが回(まわ)し者(もの)ではなく、真実(しんじつ)な者(もの)であるのを知(し)って、あなたがたの兄弟(きょうだい)を返(かえ)し、この国(くに)であなたがたに取引(とりひき)させましょう』」。

35彼(かれ)らが袋(ふくろ)のものを出(だ)して見(み)ると、めいめいの金(かね)包(つつ)みが袋(ふくろ)の中(なか)にあったので、彼(かれ)らも父(ちち)も金(かね)包(つつ)みを見(み)て恐(おそ)れた。 36父(ちち)ヤコブは彼(かれ)らに言(い)った、「あなたがたはわたしに子(こ)を失(うしな)わせた。ヨセフはいなくなり、シメオンもいなくなった。今度(こんど)はベニヤミンをも取(と)り去(さ)る。これらはみなわたしの身(み)にふりかかって来(く)るのだ」。 37ルベンは父(ちち)に言(い)った、「もしわたしが彼(かれ)をあなたのもとに連(つ)れて帰(かえ)らなかったら、わたしのふたりの子(こ)を殺(ころ)してください。ただ彼(かれ)をわたしの手(て)にまかせてください。わたしはきっと、あなたのもとに彼(かれ)を連(つ)れて帰(かえ)ります」。 38ヤコブは言(い)った、「わたしの子(こ)はあなたがたと共(とも)に下(くだ)って行(い)ってはならない。彼(かれ)の兄(あに)は死(し)に、ただひとり彼(かれ)が残(のこ)っているのだから。もしあなたがたの行(い)く道(みち)で彼(かれ)が災(わざわい)に会(あ)えば、あなたがたは、しらがのわたしを悲(かな)しんで陰府(よみ)に下(くだ)らせるであろう」。

第四三章

1ききんはその地(ち)に激(はげ)しかった。 2彼(かれ)らがエジプトから携(たずさ)えてきた穀物(こくもつ)を食(く)い尽(つく)した時(とき)、父(ちち)は彼(かれ)らに言(い)った、「また行(い)って、われわれのために少(すこ)しの食糧(しょくりょう)を買(か)ってきなさい」。 3ユダは父(ちち)に答(こた)えて言(い)った、「あの人(ひと)はわれわれをきびしく戒(いまし)めて、弟(おとうと)が一緒(いっしょ)でなければ、わたしの顔(かお)を見(み)てはならないと言(い)いました。 4もしあなたが弟(おとうと)をわれわれと一緒(いっしょ)にやってくださるなら、われわれは下(くだ)って行(い)って、あなたのために食糧(しょくりょう)を買(か)ってきましょう。 5しかし、もし彼(かれ)をやられないなら、われわれは下(くだ)って行(い)きません。あの人(ひと)がわれわれに、弟(おとうと)が一緒(いっしょ)でなければわたしの顔(かお)を見(み)てはならないと言(い)ったのですから」。 6イスラエルは言(い)った、「なぜ、もうひとりの弟(おとうと)があるとあの人(ひと)に言(い)って、わたしを苦(くる)しめるのか」。 7彼(かれ)らは言(い)った、「あの人(ひと)がわれわれと一族(いちぞく)とのことを問(と)いただして、父(ちち)はまだ生(い)きているか、もうひとりの弟(おとうと)があるかと言(い)ったので、問(と)われるままに答(こた)えましたが、その人(ひと)が、弟(おとうと)を連(つ)れてこいと言(い)おうとは、どうして知(し)ることができたでしょう」。 8ユダは父(ちち)イスラエルに言(い)った、「あの子(こ)をわたしと一緒(いっしょ)にやってくだされば、われわれは立(た)って行(い)きましょう。そしてわれわれもあなたも、われわれの子供(こども)らも生(い)きながらえ、死(し)を免(まぬか)れましょう。 9わたしが彼(かれ)の身(み)を請(う)け合(あ)います。わたしの手(て)から彼(かれ)を求(もと)めなさい。もしわたしが彼(かれ)をあなたのもとに連(つ)れ帰(かえ)って、あなたの前(まえ)に置(お)かなかったら、わたしはあなたに対(たい)して永久(えいきゅう)に罪(つみ)を負(お)いましょう。 10もしわれわれがこんなにためらわなかったら、今(いま)ごろは二度(ど)も行(い)ってきたでしょう」。

11父(ちち)イスラエルは彼(かれ)らに言(い)った、「それではこうしなさい。この国(くに)の名産(めいさん)を器(うつわ)に入(い)れ、携(たずさ)え下(くだ)ってその人(ひと)に贈(おく)り物(もの)にしなさい。すなわち少(すこ)しの乳香(にゅうこう)、少(すこ)しの蜜(みつ)、香料(こうりょう)、もつやく、ふすだしう、あめんどう。 12そしてその上(うえ)に、倍額(ばいがく)の銀(ぎん)を手(て)に持(も)って行(い)きなさい。また袋(ふくろ)の口(くち)に返(かえ)してあった銀(ぎん)は持(も)って行(い)って返(かえ)しなさい。たぶんそれは誤(あやま)りであったのでしょう。 13弟(おとうと)も連(つ)れ、立(た)って、またその人(ひと)の所(ところ)へ行(い)きなさい。 14どうか全能(ぜんのう)の神(かみ)がその人(ひと)の前(まえ)であなたがたをあわれみ、もうひとりの兄弟(きょうだい)とベニヤミンとを、返(かえ)させてくださるように。もしわたしが子(こ)を失(うしな)わなければならないのなら、失(うしな)ってもよい」。 15そこでその人々(ひとびと)は贈(おく)り物(もの)を取(と)り、また倍額(ばいがく)の銀(ぎん)を携(たずさ)え、ベニヤミンを連(つ)れ、立(た)ってエジプトへ下(くだ)り、ヨセフの前(まえ)に立(た)った。

16ヨセフはベニヤミンが彼(かれ)らと共(とも)にいるのを見(み)て、家(いえ)づかさに言(い)った、「この人々(ひとびと)を家(いえ)に連(つ)れて行(い)き、獣(けもの)をほふって、したくするように。この人々(ひとびと)は昼(ひる)、わたしと一緒(いっしょ)に食事(しょくじ)をします」。 17その人(ひと)はヨセフの言(い)ったようにして、この人々(ひとびと)をヨセフの家(いえ)へ連(つ)れて行(い)った。 18ところがこの人々(ひとびと)はヨセフの家(いえ)へ連(つ)れて行(い)かれたので恐(おそ)れて言(い)った、「初(はじ)めの時(とき)に袋(ふくろ)に返(かえ)してあったあの銀(ぎん)のゆえに、われわれを引(ひ)き入(い)れたのです。そしてわれわれを襲(おそ)い、攻(せ)め、捕(とら)えて奴隷(どれい)とし、われわれのろばをも奪(うば)うのです」。 19彼(かれ)らはヨセフの家(いえ)づかさに近(ちか)づいて、家(いえ)の入口(いりぐち)で、言(い)った、 20「ああ、わが主(しゅ)よ、われわれは最初(さいしょ)、食糧(しょくりょう)を買(か)うために下(くだ)ってきたのです。 21ところが宿(やど)に行(い)って袋(ふくろ)をあけて見(み)ると、めいめいの銀(ぎん)は袋(ふくろ)の口(くち)にあって、銀(ぎん)の重(おも)さは元(もと)のままでした。それでわれわれはそれを持(も)って参(まい)りました。 22そして食糧(しょくりょう)を買(か)うために、ほかの銀(ぎん)をも持(も)って下(くだ)ってきました。われわれの銀(ぎん)を袋(ふくろ)に入(い)れた者(もの)が、だれであるかは分(わか)りません」。 23彼(かれ)は言(い)った、「安心(あんしん)しなさい。恐(おそ)れてはいけません。その宝(たから)はあなたがたの神(かみ)、あなたがたの父(ちち)の神(かみ)が、あなたがたの袋(ふくろ)に入(い)れてあなたがたに賜(たま)わったのです。あなたがたの銀(ぎん)はわたしが受(う)け取(と)りました」。そして彼(かれ)はシメオンを彼(かれ)らの所(ところ)へ連(つ)れてきた。 24こうしてその人(ひと)はこの人々(ひとびと)をヨセフの家(いえ)へ導(みちび)き、水(みず)を与(あた)えて足(あし)を洗(あら)わせ、また、ろばに飼葉(かいば)を与(あた)えた。 25彼(かれ)らはその所(ところ)で食事(しょくじ)をするのだと聞(き)き、贈(おく)り物(もの)を整(ととの)えて、昼(ひる)にヨセフの来(く)るのを待(ま)った。

26さてヨセフが家(いえ)に帰(かえ)ってきたので、彼(かれ)らはその家(いえ)に携(たずさ)えてきた贈(おく)り物(もの)をヨセフにささげ、地(ち)に伏(ふ)して、彼(かれ)を拝(はい)した。 27ヨセフは彼(かれ)らの安否(あんぴ)を問(と)うて言(い)った、「あなたがたの父(ちち)、あなたがたがさきに話(はな)していたその老人(ろうじん)は無事(ぶじ)ですか。なお生(い)きながらえておられますか」。 28彼(かれ)らは答(こた)えた、「あなたのしもべ、われわれの父(ちち)は無事(ぶじ)で、なお生(い)きながらえています」。そして彼(かれ)らは、頭(とう)をさげて拝(はい)した。 29ヨセフは目(め)をあげて同(おな)じ母(はは)の子(こ)である弟(おとうと)ベニヤミンを見(み)て言(い)った、「これはあなたがたが前(まえ)にわたしに話(はな)した末(すえ)の弟(おとうと)ですか」。また言(い)った、「わが子(こ)よ、どうか神(かみ)があなたを恵(めぐ)まれるように」。 30ヨセフは弟(おとうと)なつかしさに心(こころ)がせまり、急(いそ)いで泣(な)く場所(ばしょ)をたずね、へやにはいって泣(な)いた。 31やがて彼(かれ)は顔(かお)を洗(あら)って出(で)てきた。そして自分(じぶん)を制(せい)して言(い)った、「食事(しょくじ)にしよう」。 32そこでヨセフはヨセフ、彼(かれ)らは彼(かれ)ら、陪食(ばいしょく)のエジプトびとはエジプトびと、と別々(べつべつ)に席(せき)に着(つ)いた。エジプトびとはヘブルびとと共(とも)に食事(しょくじ)することができなかった。それはエジプトびとの忌(い)むところであったからである。 33こうして彼(かれ)らはヨセフの前(まえ)に、長子(ちょうし)は長子(ちょうし)として、弟(おとうと)は弟(おとうと)としてすわらせられたので、その人々(ひとびと)は互(たがい)に驚(おどろ)いた。 34またヨセフの前(まえ)から、めいめいの分(ぶん)が運(はこ)ばれたが、ベニヤミンの分(ぶん)は他(た)のいずれの者(もの)の分(ぶん)よりも五倍(ばい)多(おお)かった。こうして彼(かれ)らは飲(の)み、ヨセフと共(とも)に楽(たの)しんだ。

第四四章

1さてヨセフは家(いえ)づかさに命(めい)じて言(い)った、「この人々(ひとびと)の袋(ふくろ)に、運(はこ)べるだけ多(おお)くの食糧(しょくりょう)を満(み)たし、めいめいの銀(ぎん)を袋(ふくろ)の口(くち)に入(い)れておきなさい。 2またわたしの杯(さかずき)、銀(ぎん)の杯(さかずき)をあの年下(としした)の者(もの)の袋(ふくろ)の口(くち)に、穀物(こくもつ)の代金(だいきん)と共(とも)に入(い)れておきなさい」。家(いえ)づかさはヨセフの言葉(ことば)のとおりにした。 3夜(よ)が明(あ)けると、その人々(ひとびと)と、ろばとは送(おく)り出(だ)されたが、 4町(まち)を出(で)て、まだ遠(とお)くへ行(い)かないうちに、ヨセフは家(いえ)づかさに言(い)った、「立(た)って、あの人々(ひとびと)のあとを追(お)いなさい。追(お)いついて、彼(かれ)らに言(い)いなさい、『あなたがたはなぜ悪(あく)をもって善(ぜん)に報(むく)いるのですか。なぜわたしの銀(ぎん)の杯(さかずき)を盗(ぬす)んだのですか。 5これはわたしの主人(しゅじん)が飲(の)む時(とき)に使(つか)い、またいつも占(うらな)いに用(もち)いるものではありませんか。あなたがたのした事(こと)は悪(わる)いことです』」。

6家(いえ)づかさが彼(かれ)らに追(お)いついて、これらの言葉(ことば)を彼(かれ)らに告(つ)げたとき、 7彼(かれ)らは言(い)った、「わが主(しゅ)は、どうしてそのようなことを言(い)われるのですか。しもべらは決(けっ)してそのようなことはいたしません。 8袋(ふくろ)の口(くち)で見(み)つけた銀(ぎん)でさえ、カナンの地(ち)からあなたの所(ところ)に持(も)ち帰(かえ)ったほどです。どうして、われわれは御(ご)主人(しゅじん)の家(いえ)から銀(ぎん)や金(きん)を盗(ぬす)みましょう。 9しもべらのうちのだれの所(ところ)でそれが見(み)つかっても、その者(もの)は死(し)に、またわれわれはわが主(しゅ)の奴隷(どれい)となりましょう」。 10家(いえ)づかさは言(い)った、「それではあなたがたの言葉(ことば)のようにしよう。杯(さかずき)の見(み)つかった者(もの)はわたしの奴隷(どれい)とならなければならない。ほかの者(もの)は無罪(むざい)です」。 11そこで彼(かれ)らは、めいめい急(いそ)いで袋(ふくろ)を地(ち)におろし、ひとりひとりその袋(ふくろ)を開(ひら)いた。 12家(いえ)づかさは年上(としうえ)から捜(さが)し始(はじ)めて年下(としした)に終(おわ)ったが、杯(さかずき)はベニヤミンの袋(ふくろ)の中(なか)にあった。 13そこで彼(かれ)らは衣服(いふく)を裂(さ)き、おのおの、ろばに荷(に)を負(お)わせて町(まち)に引(ひ)き返(かえ)した。

14ユダと兄弟(きょうだい)たちとは、ヨセフの家(いえ)にはいったが、ヨセフがなおそこにいたので、彼(かれ)らはその前(まえ)で地(ち)にひれ伏(ふ)した。 15ヨセフは彼(かれ)らに言(い)った、「あなたがたのこのしわざは何事(なにごと)ですか。わたしのような人(ひと)は、必(かなら)ず占(うらな)い当(あ)てることを知(し)らないのですか」。 16ユダは言(い)った、「われわれはわが主(しゅ)に何(なに)を言(い)い、何(なに)を述(の)べ得(え)ましょう。どうしてわれわれは身(み)の潔白(けっぱく)をあらわし得(え)ましょう。神(かみ)がしもべらの罪(つみ)をあばかれました。われわれと、杯(さかずき)を持(も)っていた者(もの)とは共(とも)にわが主(しゅ)の奴隷(どれい)となりましょう」。 17ヨセフは言(い)った、「わたしは決(けっ)してそのようなことはしない。杯(さかずき)を持(も)っている者(もの)だけがわたしの奴隷(どれい)とならなければならない。ほかの者(もの)は安全(あんぜん)に父(ちち)のもとへ上(のぼ)って行(い)きなさい」。

18この時(とき)ユダは彼(かれ)に近(ちか)づいて言(い)った、「ああ、わが主(しゅ)よ、どうぞわが主(しゅ)の耳(みみ)にひとこと言(い)わせてください。しもべをおこらないでください。あなたはパロのようなかたです。 19わが主(しゅ)はしもべらに尋(たず)ねて、『父(ちち)があるか、また弟(おとうと)があるか』と言(い)われたので、 20われわれはわが主(しゅ)に言(い)いました、『われわれには老齢(ろうれい)の父(ちち)があり、また年寄(としよ)り子(こ)の弟(おとうと)があります。その兄(あに)は死(し)んで、同(おな)じ母(はは)の子(こ)で残(のこ)っているのは、ただこれだけですから父(ちち)はこれを愛(あい)しています』。 21その時(とき)あなたはしもべらに言(い)われました、『その者(もの)をわたしの所(ところ)へ連(つ)れてきなさい。わたしはこの目(め)で彼(かれ)を見(み)よう』。 22われわれはわが主(しゅ)に言(い)いました。『その子(こ)供(とも)は父(ちち)を離(はな)れることができません。もし父(ちち)を離(はな)れたら父(ちち)は死(し)ぬでしょう』。 23しかし、あなたはしもべらに言(い)われました、『末(すえ)の弟(おとうと)が一緒(いっしょ)に下(くだ)ってこなければ、おまえたちは再(ふたた)びわたしの顔(かお)を見(み)ることはできない』。 24それであなたのしもべである父(ちち)のもとに上(のぼ)って、わが主(しゅ)の言葉(ことば)を彼(かれ)に告(つ)げました。 25ところで、父(ちち)が『おまえたちは再(ふたた)び行(い)って、われわれのために少(すこ)しの食糧(しょくりょう)を買(か)ってくるように』と言(い)ったので、 26われわれは言(い)いました、『われわれは下(くだ)って行(い)けません。もし末(すえ)の弟(おとうと)が一緒(いっしょ)であれば行(い)きましょう。末(すえ)の弟(おとうと)が一緒(いっしょ)でなければ、あの人(ひと)の顔(かお)を見(み)ることができません』。 27あなたのしもべである父(ちち)は言(い)いました、『おまえたちの知(し)っているとおり、妻(つま)はわたしにふたりの子(こ)を産(う)んだ。 28ひとりは外(そと)へ出(で)たが、きっと裂(さ)き殺(ころ)されたのだと思(おも)う。わたしは今(いま)になっても彼(かれ)を見(み)ない。 29もしおまえたちがこの子(こ)をもわたしから取(と)って行(い)って、彼(かれ)が災(わざわい)に会(あ)えば、おまえたちは、しらがのわたしを悲(かな)しんで陰府(よみ)に下(くだ)らせるであろう』。 30わたしがあなたのしもべである父(ちち)のもとに帰(かえ)って行(い)くとき、もしこの子供(こども)が一緒(いっしょ)にいなかったら、どうなるでしょう。父(ちち)の魂(たましい)は子供(こども)の魂(たましい)に結(むす)ばれているのです。 31この子供(こども)がわれわれと一緒(いっしょ)にいないのを見(み)たら、父(ちち)は死(し)ぬでしょう。そうすればしもべらは、あなたのしもべであるしらがの父(ちち)を悲(かな)しんで陰府(よみ)に下(くだ)らせることになるでしょう。 32しもべは父(ちち)にこの子供(こども)の身(み)を請(う)け合(あ)って『もしわたしがこの子(こ)をあなたのもとに連(つ)れ帰(かえ)らなかったら、わたしは父(ちち)に対(たい)して永久(えいきゅう)に罪(つみ)を負(お)いましょう』と言(い)ったのです。 33どうか、しもべをこの子供(こども)の代(かわ)りに、わが主(しゅ)の奴隷(どれい)としてとどまらせ、この子供(こども)を兄弟(きょうだい)たちと一緒(いっしょ)に上(のぼ)り行(い)かせてください、 34この子供(こども)を連(つ)れずに、どうしてわたしは父(ちち)のもとに上(のぼ)り行(い)くことができましょう。父(ちち)が災(わざわい)に会(あ)うのを見(み)るに忍(しの)びません」。

第四五章

1そこでヨセフはそばに立(た)っているすべての人(ひと)の前(まえ)で、自分(じぶん)を制(せい)しきれなくなったので、「人(ひと)は皆(みな)ここから出(で)てください」と呼(よ)ばわった。それゆえヨセフが兄弟(きょうだい)たちに自分(じぶん)のことを明(あ)かした時(とき)、ひとりも彼(かれ)のそばに立(た)っている者(もの)はなかった。 2ヨセフは声(こえ)をあげて泣(な)いた。エジプトびとはこれを聞(き)き、パロの家(いえ)もこれを聞(き)いた。 3ヨセフは兄弟(きょうだい)たちに言(い)った、「わたしはヨセフです。父(ちち)はまだ生(い)きながらえていますか」。兄弟(きょうだい)たちは答(こた)えることができなかった。彼(かれ)らは驚(おどろ)き恐(おそ)れたからである。

4ヨセフは兄弟(きょうだい)たちに言(い)った、「わたしに近寄(ちかよ)ってください」。彼(かれ)らが近寄(ちかよ)ったので彼(かれ)は言(い)った、「わたしはあなたがたの弟(おとうと)ヨセフです。あなたがたがエジプトに売(う)った者(もの)です。 5しかしわたしをここに売(う)ったのを嘆(なげ)くことも、悔(くや)むこともいりません。神(かみ)は命(いのち)を救(すく)うために、あなたがたよりさきにわたしをつかわされたのです。 6この二年(ねん)の間(あいだ)、国中(くにぢゅう)にききんがあったが、なお五年(ねん)の間(あいだ)は耕(たがや)すことも刈(か)り入(い)れることもないでしょう。 7神(かみ)は、あなたがたのすえを地(ち)に残(のこ)すため、また大(おお)いなる救(すくい)をもってあなたがたの命(いのち)を助(たす)けるために、わたしをあなたがたよりさきにつかわされたのです。 8それゆえわたしをここにつかわしたのはあなたがたではなく、神(かみ)です。神(かみ)はわたしをパロの父(ちち)とし、その全家(ぜんか)の主(しゅ)とし、またエジプト全国(ぜんこく)のつかさとされました。 9あなたがたは父(ちち)のもとに急(いそ)ぎ上(のぼ)って言(い)いなさい、『あなたの子(こ)ヨセフが、こう言(い)いました。神(かみ)がわたしをエジプト全国(ぜんこく)の主(しゅ)とされたから、ためらわずにわたしの所(ところ)へ下(くだ)ってきなさい。 10あなたはゴセンの地(ち)に住(す)み、あなたも、あなたの子(こ)らも、孫(まご)たちも、羊(ひつじ)も牛(うし)も、その他(た)のものもみな、わたしの近(ちか)くにおらせます。 11ききんはなお五年(ねん)つづきますから、あなたも、家族(かぞく)も、その他(た)のものも、みな困(こま)らないように、わたしはそこで養(やしな)いましょう』。 12あなたがたと弟(おとうと)ベニヤミンが目(め)に見(み)るとおり、あなたがたに口(くちずか)ら語(かた)っているのはこのわたしです。 13あなたがたはエジプトでの、わたしのいっさいの栄(さか)えと、あなたがたが見(み)るいっさいの事(こと)をわたしの父(ちち)に告(つ)げ、急(いそ)いでわたしの父(ちち)をここへ連(つ)れ下(くだ)りなさい」。 14そしてヨセフは弟(おとうと)ベニヤミンのくびを抱(だ)いて泣(な)き、ベニヤミンも彼(かれ)のくびを抱(だ)いて泣(な)いた。 15またヨセフはすべての兄弟(きょうだい)たちに口(くち)づけし、彼(かれ)らを抱(だ)いて泣(な)いた。そして後(のち)、兄弟(きょうだい)たちは彼(かれ)と語(かた)った。

16時(とき)に、「ヨセフの兄弟(きょうだい)たちがきた」と言(い)ううわさがパロの家(いえ)に聞(きこ)えたので、パロとその家来(けらい)たちとは喜(よろこ)んだ。 17パロはヨセフに言(い)った、「兄弟(きょうだい)たちに言(い)いなさい、『あなたがたは、こうしなさい。獣(けもの)に荷(に)を負(お)わせてカナンの地(ち)へ行(い)き、 18父(ちち)と家族(かぞく)とを連(つ)れてわたしのもとへきなさい。わたしはあなたがたに、エジプトの地(ち)の良(よ)い物(もの)を与(あた)えます。あなたがたは、この国(くに)の最(もっと)も良(よ)いものを食(た)べるでしょう』。 19また彼(かれ)らに命(めい)じなさい、『あなたがたは、こうしなさい。幼(おさ)な子(ご)たちと妻(つま)たちのためにエジプトの地(ち)から車(くるま)をもって行(い)き、父(ちち)を連(つ)れてきなさい。 20家財(かざい)に心(こころ)を引(ひ)かれてはなりません。エジプト全国(ぜんこく)の良(よ)い物(もの)は、あなたがたのものだからです』」。

21イスラエルの子(こ)らはそのようにした。ヨセフはパロの命(いのち)に従(したが)って彼(かれ)らに車(くるま)を与(あた)え、また途中(とちゅう)の食料(しょくりょう)をも与(あた)えた。 22まためいめいに晴着(はれぎ)を与(あた)えたが、ベニヤミンには銀(ぎん)三百シケルと晴着(はれぎ)五着(ちゃく)とを与(あた)えた。 23また彼(かれ)は父(ちち)に次(つぎ)のようなものを贈(おく)った。すなわちエジプトの良(よ)い物(もの)を負(お)わせたろば十頭(とう)と、穀物(こくもつ)、パン及(およ)び父(ちち)の道中(どうちゅう)の食料(しょくりょう)を負(お)わせた雌(め)ろば十頭(とう)。 24こうしてヨセフは兄弟(きょうだい)たちを送(おく)り去(さ)らせ、彼(かれ)らに言(い)った、「途中(とちゅう)で争(あらそ)ってはなりません」。 25彼(かれ)らはエジプトから上(のぼ)ってカナンの地(ち)に入(い)り、父(ちち)ヤコブのもとへ行(い)って、 26彼(かれ)に言(い)った、「ヨセフはなお生(い)きていてエジプト全国(ぜんこく)のつかさです」。ヤコブは気(き)が遠(とお)くなった。彼(かれ)らの言(い)うことが信(しん)じられなかったからである。 27そこで彼(かれ)らはヨセフが語(かた)った言葉(ことば)を残(のこ)らず彼(かれ)に告(つ)げた。父(ちち)ヤコブはヨセフが自分(じぶん)を乗(の)せるために送(おく)った車(くるま)を見(み)て元(もと)気(き)づいた。 28そしてイスラエルは言(い)った、「満足(まんぞく)だ。わが子(こ)ヨセフがまだ生(い)きている。わたしは死(し)ぬ前(まえ)に行(い)って彼(かれ)を見(み)よう」。

第四六章

1イスラエルはその持(も)ち物(もの)をことごとく携(たずさ)えて旅立(たびだ)ち、ベエルシバに行(い)って、父(ちち)イサクの神(かみ)に犠牲(ぎせい)をささげた。 2この時(とき)、神(かみ)は夜(よ)の幻(まぼろし)のうちにイスラエルに語(かた)って言(い)われた、「ヤコブよ、ヤコブよ」。彼(かれ)は言(い)った、「ここにいます」。 3神(かみ)は言(い)われた、「わたしは神(かみ)、あなたの父(ちち)の神(かみ)である。エジプトに下(くだ)るのを恐(おそ)れてはならない。わたしはあそこであなたを大(おお)いなる国民(こくみん)にする。 4わたしはあなたと一緒(いっしょ)にエジプトに下(くだ)り、また必(かなら)ずあなたを導(みちび)き上(のぼ)るであろう。ヨセフが手(て)ずからあなたの目(め)を閉(と)じるであろう」。 5そしてヤコブはベエルシバを立(た)った。イスラエルの子(こ)らはヤコブを乗(の)せるためにパロの送(おく)った車(くるま)に、父(ちち)ヤコブと幼(おさ)な子(こ)たちと妻(つま)たちを乗(の)せ、 6またその家畜(かちく)とカナンの地(ち)で得(え)た財産(ざいさん)を携(たずさ)え、ヤコブとその子孫(しそん)は皆(みな)ともにエジプトへ行(い)った。 7こうしてヤコブはその子(こ)と、孫(まご)および娘(むすめ)と孫娘(まごむすめ)などその子孫(しそん)をみな連(つ)れて、エジプトへ行(い)った。

8イスラエルの子(こ)らでエジプトへ行(い)った者(もの)の名(な)は次(つぎ)のとおりである。すなわちヤコブとその子(こ)らであるが、ヤコブの長子(ちょうし)はルベン。 9ルベンの子(こ)らはハノク、パル、ヘヅロン、カルミ。 10シメオンの子(こ)らはエムエル、ヤミン、オハデ、ヤキン、ゾハル及(およ)びカナンの女(おんな)の産(う)んだ子(こ)シャウル。 11レビの子(こ)らはゲルション、コハテ、メラリ。 12ユダの子(こ)らはエル、オナン、シラ、ペレヅ、ゼラ。エルとオナンはカナンの地(ち)で死(し)んだ。ペレヅの子(こ)らはヘヅロンとハムル。 13イッサカルの子(こ)らはトラ、プワ、ヨブ、シムロン。 14ゼブルンの子(こ)らはセレデ、エロン、ヤリエル。 15これらと娘(むすめ)デナとはレアがパダンアラムでヤコブに産(う)んだ子(こ)らである。その子(こ)らと娘(むすめ)らは合(あ)わせて三十三人(にん)。 16ガドの子(こ)らはゼポン、ハギ、シュニ、エヅボン、エリ、アロデ、アレリ。 17アセルの子(こ)らはエムナ、イシワ、イスイ、ベリアおよび妹(いもうと)サラ。ベリアの子(こ)らはヘベルとマルキエル。 18これらはラバンが娘(むすめ)レアに与(あた)えたジルパの子(こ)らである。彼女(かのじょ)はこれらをヤコブに産(う)んだ。合(あ)わせて十六人(にん)。 19ヤコブの妻(つま)ラケルの子(こ)らはヨセフとベニヤミンとである。 20エジプトの国(くに)でヨセフにマナセとエフライムとが生(うま)れた。これはオンの祭司(さいし)ポテペラの娘(むすめ)アセナテが彼(かれ)に産(う)んだ者(もの)である。 21ベニヤミンの子(こ)らはベラ、ベケル、アシベル、ゲラ、ナアマン、エヒ、ロシ、ムッピム、ホパム、アルデ。 22これらはラケルがヤコブに産(う)んだ子(こ)らである。合(あ)わせて十四人(にん)。 23ダンの子(こ)はホシム。 24ナフタリの子(こ)らはヤジエル、グニ、エゼル、シレム。 25これらはラバンが娘(むすめ)ラケルに与(あた)えたビルハの子(こ)らである。彼女(かのじょ)はこれらをヤコブに産(う)んだ。合(あ)わせて七人(にん)。 26ヤコブと共(とも)にエジプトへ行(い)ったすべての者(もの)、すなわち彼(かれ)の身(み)から出(で)た者(もの)はヤコブの子(こ)らの妻(つま)をのぞいて、合(あ)わせて六十六人(にん)であった。 27エジプトでヨセフに生(うま)れた子(こ)がふたりあった。エジプトへ行(い)ったヤコブの家(いえ)の者(もの)は合(あ)わせて七十人(にん)であった。

28さてヤコブはユダをさきにヨセフにつかわして、ゴセンで会(あ)おうと言(い)わせた。そして彼(かれ)らはゴセンの地(ち)へ行(い)った。 29ヨセフは車(くるま)を整(ととの)えて、父(ちち)イスラエルを迎(むか)えるためにゴセンに上(のぼ)り、父(ちち)に会(あ)い、そのくびを抱(だ)き、くびをかかえて久(ひさ)しく泣(な)いた。 30時(とき)に、イスラエルはヨセフに言(い)った、「あなたがなお生(い)きていて、わたしはあなたの顔(かお)を見(み)たので今(いま)は死(し)んでもよい」。 31ヨセフは兄弟(きょうだい)たちと父(ちち)の家族(かぞく)とに言(い)った、「わたしは上(のぼ)ってパロに言(い)おう、『カナンの地(ち)にいたわたしの兄弟(きょうだい)たちと父(ちち)の家族(かぞく)とがわたしの所(ところ)へきました。 32この者(もの)らは羊(ひつじ)を飼(か)う者(もの)、家畜(かちく)の牧者(ぼくしゃ)で、その羊(ひつじ)、牛(うし)および持(も)ち物(もの)をみな携(たずさ)えてきました』。 33もしパロがあなたがたを召(め)して、『あなたがたの職業(しょくぎょう)は何(なに)か』と言(い)われたら、 34『しもべらは幼(おさな)い時(とき)から、ずっと家畜(かちく)の牧者(ぼくしゃ)です。われわれも、われわれの先祖(せんぞ)もそうです』と言(い)いなさい。そうすればあなたがたはゴセンの地(ち)に住(す)むことができましょう。羊飼(ひつじかい)はすべて、エジプトびとの忌(い)む者(もの)だからです」。

第四七章

1ヨセフは行(い)って、パロに言(い)った、「わたしの父(ちち)と兄弟(きょうだい)たち、その羊(ひつじ)、牛(うし)およびすべての持(も)ち物(もの)がカナンの地(ち)からきて、今(いま)ゴセンの地(ち)におります」。 2そしてその兄弟(きょうだい)のうちの五人(にん)を連(つ)れて行(い)って、パロに会(あ)わせた。 3パロはヨセフの兄弟(きょうだい)たちに言(い)った、「あなたがたの職業(しょくぎょう)は何(なに)か」。彼(かれ)らはパロに言(い)った、「しもべらは羊(ひつじ)を飼(か)う者(もの)です。われわれも、われわれの先祖(せんぞ)もそうです」。 4彼(かれ)らはまたパロに言(い)った、「この国(くに)に寄留(きりゅう)しようとしてきました。カナンの地(ち)はききんが激(はげ)しく、しもべらの群(む)れのための牧草(ぼくそう)がないのです。どうかしもべらをゴセンの地(ち)に住(す)ませてください」。 5パロはヨセフに言(い)った、「あなたの父(ちち)と兄弟(きょうだい)たちとがあなたのところにきた。 6エジプトの地(ち)はあなたの前(まえ)にある。地(ち)の最(もっと)も良(よ)い所(ところ)にあなたの父(ちち)と兄弟(きょうだい)たちとを住(す)ませなさい。ゴセンの地(ち)に彼(かれ)らを住(す)ませなさい。もしあなたが彼(かれ)らのうちに有能(ゆうのう)な者(もの)があるのを知(し)っているなら、その者(もの)にわたしの家畜(かちく)をつかさどらせなさい」。

7そこでヨセフは父(ちち)ヤコブを導(みちび)いてパロの前(まえ)に立(た)たせた。ヤコブはパロを祝福(しゅくふく)した。 8パロはヤコブに言(い)った、「あなたの年(とし)はいくつか」。 9ヤコブはパロに言(い)った、「わたしの旅路(たびじ)のとしつきは、百三十年(ねん)です。わたしのよわいの日(ひ)はわずかで、ふしあわせで、わたしの先祖(せんぞ)たちのよわいの日(ひ)と旅路(たびじ)の日(ひ)には及(およ)びません」。 10ヤコブはパロを祝福(しゅくふく)し、パロの前(まえ)を去(さ)った。 11ヨセフはパロの命(めい)じたように、父(ちち)と兄弟(きょうだい)たちとのすまいを定(さだ)め、彼(かれ)らにエジプトの国(くに)で最(もっと)も良(よ)い地(ち)、ラメセスの地(ち)を所有(しょゆう)として与(あた)えた。 12またヨセフは父(ちち)と兄弟(きょうだい)たちと父(ちち)の全家(ぜんか)とに、家族(かぞく)の数(かず)にしたがい、食物(しょくもつ)を与(あた)えて養(やしな)った。

13さて、ききんが非常(ひじょう)に激(はげ)しかったので、全(ぜん)地(ち)に食物(しょくもつ)がなく、エジプトの国(くに)もカナンの国(くに)も、ききんのために衰(おとろ)えた。 14それでヨセフは人々(ひとびと)が買(か)った穀物(こくもつ)の代金(だいきん)としてエジプトの国(くに)とカナンの国(くに)にあった銀(ぎん)をみな集(あつ)め、その銀(ぎん)をパロの家(いえ)に納(おさ)めた。 15こうしてエジプトの国(くに)とカナンの国(くに)に銀(ぎん)が尽(つ)きたとき、エジプトびとはみなヨセフのもとにきて言(い)った、「食物(しょくもつ)をください。銀(ぎん)が尽(つ)きたからとて、どうしてあなたの前(まえ)で死(し)んでよいでしょう」。 16ヨセフは言(い)った、「あなたがたの家畜(かちく)を出(だ)しなさい。銀(ぎん)が尽(つ)きたのなら、あなたがたの家畜(かちく)と引(ひ)き替(か)えで食物(しょくもつ)をわたそう」。 17彼(かれ)らはヨセフの所(ところ)へ家畜(かちく)をひいてきたので、ヨセフは馬(うま)と羊(ひつじ)の群(む)れと牛(うし)の群(む)れ及(およ)びろばと引(ひ)き替(か)えで、食物(しょくもつ)を彼(かれ)らにわたした。こうして彼(かれ)はその年(とし)、すべての家畜(かちく)と引(ひ)き替(か)えた食物(しょくもつ)で彼(かれ)らを養(やしな)った。 18やがてその年(とし)は暮(く)れ、次(つぎ)の年(とし)、人々(ひとびと)はまたヨセフの所(ところ)へきて言(い)った、「わが主(しゅ)には何事(なにごと)も隠(かく)しません。われわれの銀(ぎん)は尽(つ)き、獣(けもの)の群(む)れもわが主(しゅ)のものになって、われわれのからだと田地(でんち)のほかはわが主(しゅ)の前(まえ)に何(なに)も残(のこ)っていません。 19われわれはどうして田地(でんち)と一緒(いっしょ)に、あなたの目(め)の前(まえ)で滅(ほろ)んでよいでしょう。われわれと田地(でんち)とを食物(しょくもつ)と引(ひ)き替(か)えで買(か)ってください。われわれは田地(でんち)と一緒(いっしょ)にパロの奴隷(どれい)となりましょう。また種(たね)をください。そうすればわれわれは生(い)きながらえ、死(し)を免(まぬか)れて、田地(でんち)も荒(あ)れないでしょう」。

20そこでヨセフはエジプトの田地(でんち)をみなパロのために買(か)い取(と)った。ききんがエジプトびとに、きびしかったので、めいめいその田畑(たはた)を売(う)ったからである。こうして地(ち)はパロのものとなった。 21そしてヨセフはエジプトの国境(こっきょう)のこの端(はし)からかの端(はし)まで民(たみ)を奴隷(どれい)とした。 22ただ祭司(さいし)の田地(でんち)は買(か)い取(と)らなかった。祭司(さいし)にはパロの給与(きゅうよ)があって、パロが与(あた)える給与(きゅうよ)で生活(せいかつ)していたので、その田地(でんち)を売(う)らなかったからである。 23ヨセフは民(たみ)に言(い)った、「わたしはきょう、あなたがたとその田地(でんち)とを買(か)い取(と)って、パロのものとした。あなたがたに種(たね)をあげるから地(ち)にまきなさい。 24収穫(しゅうかく)の時(とき)は、その五分(ぶん)の一をパロに納(おさ)め、五分(ぶん)の四を自分(じぶん)のものとして田畑(たはた)の種(たね)とし、自分(じぶん)と家族(かぞく)の食糧(しょくりょう)とし、また子供(こども)の食糧(しょくりょう)としなさい」。 25彼(かれ)らは言(い)った、「あなたはわれわれの命(いのち)をお救(すく)いくださった。どうかわが主(しゅ)の前(まえ)に恵(めぐ)みを得(え)させてください。われわれはパロの奴隷(どれい)になりましょう」。 26ヨセフはエジプトの田地(でんち)について、収穫(しゅうかく)の五分(ぶん)の一をパロに納(おさ)めることをおきてとしたが、それは今日(こんにち)に及(およ)んでいる。ただし祭司(さいし)の田地(でんち)だけはパロのものとならなかった。

27さてイスラエルはエジプトの国(くに)でゴセンの地(ち)に住(す)み、そこで財産(ざいさん)を得(え)、子(こ)を生(う)み、大(おお)いにふえた。 28ヤコブはエジプトの国(くに)で十七年(ねん)生(い)きながらえた。ヤコブのよわいの日(ひ)は百四十七年(ねん)であった。

29イスラエルは死(し)ぬ時(とき)が近(ちか)づいたので、その子(こ)ヨセフを呼(よ)んで言(い)った、「もしわたしがあなたの前(まえ)に恵(めぐ)みを得(え)るなら、どうか手(て)をわたしのももの下(した)に入(い)れて誓(ちか)い、親切(しんせつ)と誠実(せいじつ)とをもってわたしを取(と)り扱(あつか)ってください。どうかわたしをエジプトには葬(ほうむ)らないでください。 30わたしが先祖(せんぞ)たちと共(とも)に眠(ねむ)るときには、わたしをエジプトから運(はこ)び出(だ)して先祖(せんぞ)たちの墓(はか)に葬(ほうむ)ってください」。ヨセフは言(い)った、「あなたの言(い)われたようにいたします」。 31ヤコブがまた、「わたしに誓(ちか)ってください」と言(い)ったので、彼(かれ)は誓(ちか)った。イスラエルは床(ゆか)のかしらで拝(おが)んだ。

第四八章

1これらの事(こと)の後(のち)に、「あなたの父(ちち)は、いま病気(びょうき)です」とヨセフに告(つ)げる者(もの)があったので、彼(かれ)はふたりの子(こ)、マナセとエフライムとを連(つ)れて行(い)った。 2時(とき)に人(ひと)がヤコブに告(つ)げて、「あなたの子(こ)ヨセフがあなたのもとにきました」と言(い)ったので、イスラエルは努(つと)めて床(ゆか)の上(うえ)にすわった。 3そしてヤコブはヨセフに言(い)った、「先(さき)に全能(ぜんのう)の神(かみ)がカナンの地(ち)ルズでわたしに現(あらわ)れ、わたしを祝福(しゅくふく)して、 4言(い)われた、『わたしはおまえに多(おお)くの子(こ)を得(え)させ、おまえをふやし、おまえを多(おお)くの国民(こくみん)としよう。また、この地(ち)をおまえの後(のち)の子孫(しそん)に与(あた)えて永久(えいきゅう)の所有(しょゆう)とさせる』。 5エジプトにいるあなたの所(ところ)にわたしが来(く)る前(まえ)に、エジプトの国(くに)で生(うま)れたあなたのふたりの子(こ)はいまわたしの子(こ)とします。すなわちエフライムとマナセとはルベンとシメオンと同(おな)じようにわたしの子(こ)とします。 6ただし彼(かれ)らの後(のち)にあなたに生(うま)れた子(こ)らはあなたのものとなります。しかし、その嗣(し)業(ぎょう)はその兄弟(きょうだい)の名(な)で呼(よ)ばれるでしょう。 7わたしがパダンから帰(かえ)って来(く)る途中(とちゅう)ラケルはカナンの地(ち)で死(し)に、わたしは悲(かな)しんだ。そこはエフラタに行(い)くまでには、なお隔(へだ)たりがあった。わたしはエフラタ、すなわちベツレヘムへ行(い)く道(みち)のかたわらに彼女(かのじょ)を葬(ほうむ)った」。

8ところで、イスラエルはヨセフの子(こ)らを見(み)て言(い)った、「これはだれですか」。 9ヨセフは父(ちち)に言(い)った、「神(かみ)がここでわたしにくださった子(こ)どもです」。父(ちち)は言(い)った、「彼(かれ)らをわたしの所(ところ)に連(つ)れてきて、わたしに祝福(しゅくふく)させてください」。 10イスラエルの目(め)は老齢(ろうれい)のゆえに、かすんで見(み)えなかったが、ヨセフが彼(かれ)らを父(ちち)の所(ところ)に近寄(ちかよ)らせたので、父(ちち)は彼(かれ)らに口(くち)づけし、彼(かれ)らを抱(だ)いた。 11そしてイスラエルはヨセフに言(い)った、「あなたの顔(かお)が見(み)られようとは思(おも)わなかったのに、神(かみ)はあなたの子(こ)らをもわたしに見(み)させてくださった」。 12そこでヨセフは彼(かれ)らをヤコブのひざの間(あいだ)から取(と)り出(だ)し、地(ち)に伏(ふ)して拝(はい)した。 13ヨセフはエフライムを右(みぎ)の手(て)に取(と)ってイスラエルの左(ひだり)の手(て)に向(む)かわせ、マナセを左(ひだり)の手(て)に取(と)ってイスラエルの右(みぎ)の手(て)に向(む)かわせ、ふたりを近寄(ちかよ)らせた。 14すると、イスラエルは右(みぎ)の手(て)を伸(の)べて弟(おとうと)エフライムの頭(あたま)に置(お)き、左(ひだり)の手(て)をマナセの頭(あたま)に置(お)いた。マナセは長子(ちょうし)であるが、ことさらそのように手(て)を置(お)いたのである。 15そしてヨセフを祝福(しゅくふく)して言(い)った、
「わが先祖(せんぞ)アブラハムとイサクの仕(つか)えた神(かみ)、
生(うま)れてからきょうまでわたしを養(やしな)われた神(かみ)、
16すべての災(わざわい)からわたしをあがなわれたみ使(つかい)よ、
この子供(こども)たちを祝福(しゅくふく)してください。
またわが名(な)と先祖(せんぞ)アブラハムとイサクの名(な)とが、
彼(かれ)らによって唱(とな)えられますように、
また彼(かれ)らが地(ち)の上(うえ)にふえひろがりますように」。

17ヨセフは父(ちち)が右(みぎ)の手(て)をエフライムの頭(あたま)に置(お)いているのを見(み)て不満(ふまん)に思(おも)い、父(ちち)の手(て)を取(と)ってエフライムの頭(あたま)からマナセの頭(あたま)へ移(うつ)そうとした。 18そしてヨセフは父(ちち)に言(い)った、「父(ちち)よ、そうではありません。こちらが長子(ちょうし)です。その頭(あたま)に右(みぎ)の手(て)を置(お)いてください」。 19父(ちち)は拒(こば)んで言(い)った、「わかっている。子(こ)よ、わたしにはわかっている。彼(かれ)もまた一つの民(たみ)となり、また大(おお)いなる者(もの)となるであろう。しかし弟(おとうと)は彼(かれ)よりも大(おお)いなる者(もの)となり、その子孫(しそん)は多(おお)くの国民(こくみん)となるであろう」。 20こうして彼(かれ)はこの日(ひ)、彼(かれ)らを祝福(しゅくふく)して言(い)った、
「あなたを指(さ)して、イスラエルは、
人(ひと)を祝福(しゅくふく)して言(い)うであろう、
『神(かみ)があなたをエフライムのごとく、
またマナセのごとくにせられるように』」。
このように、彼(かれ)はエフライムをマナセの先(さき)に立(た)てた。 21イスラエルはまたヨセフに言(い)った、「わたしはやがて死(し)にます。しかし、神(かみ)はあなたがたと共(とも)におられて、あなたがたを先祖(せんぞ)の国(くに)に導(みちび)き返(かえ)されるであろう。 22なおわたしは一つの分(ぶん)を兄弟(きょうだい)よりも多(おお)くあなたに与(あた)える。これはわたしがつるぎと弓(ゆみ)とを持(も)ってアモリびとの手(て)から取(と)ったものである」。

第四九章

1ヤコブはその子(こ)らを呼(よ)んで言(い)った、「集(あつ)まりなさい。後(のち)の日(ひ)に、あなたがたの上(うえ)に起(おこ)ることを、告(つ)げましょう、
2ヤコブの子(こ)らよ、集(あつ)まって聞(き)け。
父(ちち)イスラエルのことばを聞(き)け。
3ルベンよ、あなたはわが長子(ちょうし)、
わが勢(いきお)い、わが力(ちから)のはじめ、
威光(いこう)のすぐれた者(もの)、権力(けんりょく)のすぐれた者(もの)。
4しかし、沸(わ)き立(た)つ水(みず)のようだから、
もはや、すぐれた者(もの)ではあり得(え)ない。
あなたは父(ちち)の床(ゆか)に上(のぼ)って汚(けが)した。
ああ、あなたはわが寝床(ねどこ)に上(のぼ)った。
5シメオンとレビとは兄弟(きょうだい)。
彼(かれ)らのつるぎは暴虐(ぼうぎゃく)の武器(ぶき)。
6わが魂(たましい)よ、彼(かれ)らの会議(かいぎ)に臨(のぞ)むな。
わが栄(さか)えよ、彼(かれ)らのつどいに連(つら)なるな。
彼(かれ)らは怒(いか)りに任(まか)せて人(ひと)を殺(ころ)し、
ほしいままに雄牛(おうし)の足(あし)の筋(すじ)を切(き)った。
7彼(かれ)らの怒(いか)りは、激(はげ)しいゆえにのろわれ、
彼(かれ)らの憤(いきどお)りは、はなはだしいゆえにのろわれる。
わたしは彼(かれ)らをヤコブのうちに分(わ)け、
イスラエルのうちに散(ち)らそう。
8ユダよ、兄弟(きょうだい)たちはあなたをほめる。
あなたの手(て)は敵(てき)のくびを押(おさ)え、
父(ちち)の子(こ)らはあなたの前(まえ)に身(み)をかがめるであろう。
9ユダは、ししの子(こ)。
わが子(こ)よ、あなたは獲物(えもの)をもって上(のぼ)って来(く)る。
彼(かれ)は雄(お)じしのようにうずくまり、
雌(め)じしのように身(み)を伏(ふ)せる。
だれがこれを起(おこ)すことができよう。
10つえはユダを離(はな)れず、
立法(りっぽう)者(しゃ)のつえはその足(あし)の間(あいだ)を離(はな)れることなく、
シロの来(く)る時(とき)までに及(およ)ぶであろう。
もろもろの民(たみ)は彼(かれ)に従(したが)う。
11彼(かれ)はそのろばの子(こ)をぶどうの木(き)につなぎ、
その雌(め)ろばの子(こ)を良(よ)きぶどうの木(き)につなぐ。
彼(かれ)はその衣服(いふく)をぶどう酒(しゅ)で洗(あら)い、
その着物(きもの)をぶどうの汁(しる)で洗(あら)うであろう。
12その目(め)はぶどう酒(しゅ)によって赤(あか)く、
その歯(は)は乳(ちち)によって白(しろ)い。
13ゼブルンは海(うみ)べに住(す)み、
舟(ふね)の泊(と)まる港(みなと)となって、
その境(さかい)はシドンに及(およ)ぶであろう。
14イッサカルはたくましいろば、
彼(かれ)は羊(ひつじ)のおりの間(あいだ)に伏(ふ)している。
15彼(かれ)は定住(ていじゅう)の地(ち)を見(み)て良(よ)しとし、
その国(くに)を見(み)て楽(たの)しとした。
彼(かれ)はその肩(かた)を下(さ)げてにない、
奴隷(どれい)となって追(お)い使(つか)われる。
16ダンはおのれの民(たみ)をさばくであろう、
イスラエルのほかの部族(ぶぞく)のように。
17ダンは道(みち)のかたわらのへび、
道(みち)のほとりのまむし。
馬(うま)のかかとをかんで、
乗(の)る者(もの)をうしろに落(おと)すであろう。
18主(しゅ)よ、わたしはあなたの救(すくい)を待(ま)ち望(のぞ)む。
19ガドには略奪者(りゃくだつしゃ)が迫(せま)る。
しかし彼(かれ)はかえって敵(てき)のかかとに迫(せま)るであろう。
20アセルはその食物(しょくもつ)がゆたかで、
王(おう)の美味(びみ)をいだすであろう。
21ナフタリは放(はな)たれた雌(め)じか、
彼(かれ)は美(うつく)しい子(こ)じかを生(う)むであろう。
22ヨセフは実(み)を結(むす)ぶ若木(わかぎ)、
泉(いずみ)のほとりの実(み)を結(むす)ぶ若木(わかぎ)。
その枝(えだ)は、かきねを越(こ)えるであろう。
23射(い)る者(もの)は彼(かれ)を激(はげ)しく攻(せ)め、
彼(かれ)を射(い)、彼(かれ)をいたく悩(なや)ました。
24しかし彼(かれ)の弓(ゆみ)はなお強(つよ)く、
彼(かれ)の腕(うで)は素早(すばや)い。
これはヤコブの全能者(ぜんのうしゃ)の手(て)により、
イスラエルの岩(いわ)なる牧者(ぼくしゃ)の名(な)により、
25あなたを助(たす)ける父(ちち)の神(かみ)により、
また上(うえ)なる天(てん)の祝福(しゅくふく)、
下(した)に横(よこ)たわる淵(ふち)の祝福(しゅくふく)、
乳(ち)ぶさと胎(たい)の祝福(しゅくふく)をもって、
あなたを恵(めぐ)まれる全能者(ぜんのうしゃ)による。
26あなたの父(ちち)の祝福(しゅくふく)は永遠(えいえん)の山(やま)の祝福(しゅくふく)にまさり、
永久(えいきゅう)の丘(おか)の賜物(たまもの)にまさる。
これらの祝福(しゅくふく)はヨセフのかしらに帰(き)し、
その兄弟(きょうだい)たちの君(きみ)たる者(もの)の頭(あたま)の頂(いただき)に帰(き)する。
27ベニヤミンはかき裂(さ)くおおかみ、
朝(あさ)にその獲物(えもの)を食(く)らい、
夕(ゆう)にその分(ぶん)捕物(とりもの)を分(わ)けるであろう」。

28すべてこれらはイスラエルの十二の部族(ぶぞく)である。そしてこれは彼(かれ)らの父(ちち)が彼(かれ)らに語(かた)り、彼(かれ)らを祝福(しゅくふく)したもので、彼(かれ)は祝福(しゅくふく)すべきところに従(したが)って、彼(かれ)らおのおのを祝福(しゅくふく)した。 29彼(かれ)はまた彼(かれ)らに命(めい)じて言(い)った、「わたしはわが民(たみ)に加(くわ)えられようとしている。あなたがたはヘテびとエフロンの畑(はたけ)にあるほら穴(あな)に、わたしの先祖(せんぞ)たちと共(とも)にわたしを葬(ほうむ)ってください。 30そのほら穴(あな)はカナンの地(ち)のマムレの東(ひがし)にあるマクペラの畑(はたけ)にあり、アブラハムがヘテびとエフロンから畑(はたけ)と共(とも)に買(か)い取(と)り、所有(しょゆう)の墓地(ぼち)としたもので、 31そこにアブラハムと妻(つま)サラとが葬(ほうむ)られ、イサクと妻(つま)リベカもそこに葬(ほうむ)られたが、わたしはまたそこにレアを葬(ほうむ)った。 32あの畑(はたけ)とその中(なか)にあるほら穴(あな)とはヘテの人々(ひとびと)から買(か)ったものです」。 33こうしてヤコブは子(こ)らに命(めい)じ終(おわ)って、足(あし)を床(ゆか)におさめ、息(いき)絶(た)えて、その民(たみ)に加(くわ)えられた。

第五〇章

1ヨセフは父(ちち)の顔(かお)に伏(ふ)して泣(な)き、口(くち)づけした。 2そしてヨセフは彼(かれ)のしもべである医者(いしゃ)たちに、父(ちち)に薬(くすり)を塗(ぬ)ることを命(めい)じたので、医者(いしゃ)たちはイスラエルに薬(くすり)を塗(ぬ)った。 3このために四十日(にち)を費(ついや)した。薬(くすり)を塗(ぬ)るにはこれほどの日(ひ)数(かず)を要(よう)するのである。エジプトびとは七十日(にち)の間(あいだ)、彼(かれ)のために泣(な)いた。

4彼(かれ)のために泣(な)く日(ひ)が過(す)ぎて、ヨセフはパロの家(いえ)の者(もの)に言(い)った、「今(いま)もしわたしがあなたがたの前(まえ)に恵(めぐ)みを得(え)るなら、どうかパロに伝(つた)えてください。 5『わたしの父(ちち)はわたしに誓(ちか)わせて言(い)いました「わたしはやがて死(し)にます。カナンの地(ち)に、わたしが掘(ほ)って置(お)いた墓(はか)に葬(ほうむ)ってください」。それで、どうかわたしを上(のぼ)って行(い)かせ、父(ちち)を葬(ほうむ)らせてください。そうすれば、わたしはまた帰(かえ)ってきます』」。 6パロは言(い)った、「あなたの父(ちち)があなたに誓(ちか)わせたように上(のぼ)って行(い)って彼(かれ)を葬(ほうむ)りなさい」。 7そこでヨセフは父(ちち)を葬(ほうむ)るために上(のぼ)って行(い)った。彼(かれ)と共(とも)に上(のぼ)った者(もの)はパロのもろもろの家来(けらい)たち、パロの家(いえ)の長老(ちょうろう)たち、エジプトの国(くに)のもろもろの長老(ちょうろう)たち、 8ヨセフの全家(ぜんか)とその兄弟(きょうだい)たち及(およ)びその父(ちち)の家族(かぞく)であった。ただ子供(こども)と羊(ひつじ)と牛(うし)はゴセンの地(ち)に残(のこ)した。 9また戦車(せんしゃ)と騎兵(きへい)も彼(かれ)と共(とも)に上(のぼ)ったので、その行列(ぎょうれつ)はたいそう盛(さか)んであった。 10彼(かれ)らはヨルダンの向(む)こうのアタデの打(う)ち場(ば)に行(い)き着(つ)いて、そこで大(おお)いに嘆(なげ)き、非常(ひじょう)に悲(かな)しんだ。そしてヨセフは七日(なぬか)の間(あいだ)父(ちち)のために嘆(なげ)いた。 11その地(ち)の住民(じゅうみん)、カナンびとがアタデの打(う)ち場(ば)の嘆(なげ)きを見(み)て、「これはエジプトびとの大(おお)いなる嘆(なげ)きだ」と言(い)ったので、その所(ところ)の名(な)はアベル・ミツライムと呼(よ)ばれた。これはヨルダンの向(む)こうにある。 12ヤコブの子(こ)らは命(めい)じられたようにヤコブにおこなった。 13すなわちその子(こ)らは彼(かれ)をカナンの地(ち)へ運(はこ)んで行(い)って、マクペラの畑(はたけ)のほら穴(あな)に葬(ほうむ)った。このほら穴(あな)はマムレの東(ひがし)にあって、アブラハムがヘテびとエフロンから畑(はたけ)と共(とも)に買(か)って、所有(しょゆう)の墓地(ぼち)としたものである。 14ヨセフは父(ちち)を葬(ほうむ)った後(のち)、その兄弟(きょうだい)たち及(およ)びすべて父(ちち)を葬(ほうむ)るために一緒(いっしょ)に上(のぼ)った者(もの)と共(とも)にエジプトに帰(かえ)った。

15ヨセフの兄弟(きょうだい)たちは父(ちち)の死(し)んだのを見(み)て言(い)った、「ヨセフはことによるとわれわれを憎(にく)んで、われわれが彼(かれ)にしたすべての悪(あく)に、仕返(しかえ)しするに違(ちが)いない」。 16そこで彼(かれ)らはことづけしてヨセフに言(い)った、「あなたの父(ちち)は死(し)ぬ前(まえ)に命(めい)じて言(い)われました、 17『おまえたちはヨセフに言(い)いなさい、「あなたの兄弟(きょうだい)たちはあなたに悪(あく)をおこなったが、どうかそのとがと罪(つみ)をゆるしてやってください」』。今(いま)どうかあなたの父(ちち)の神(かみ)に仕(つか)えるしもべらのとがをゆるしてください」。ヨセフはこの言葉(ことば)を聞(き)いて泣(な)いた。 18やがて兄弟(きょうだい)たちもきて、彼(かれ)の前(まえ)に伏(ふ)して言(い)った、「このとおり、わたしたちはあなたのしもべです」。 19ヨセフは彼(かれ)らに言(い)った、「恐(おそ)れることはいりません。わたしが神(かみ)に代(かわ)ることができましょうか。 20あなたがたはわたしに対(たい)して悪(あく)をたくらんだが、神(かみ)はそれを良(よ)きに変(かわ)らせて、今日(こんにち)のように多(おお)くの民(たみ)の命(いのち)を救(すく)おうと計(はか)らわれました。 21それゆえ恐(おそ)れることはいりません。わたしはあなたがたとあなたがたの子供(こども)たちを養(やしな)いましょう」。彼(かれ)は彼(かれ)らを慰(なぐさ)めて、親切(しんせつ)に語(かた)った。

22このようにしてヨセフは父(ちち)の家族(かぞく)と共(とも)にエジプトに住(す)んだ。そしてヨセフは百十年(ねん)生(い)きながらえた。 23ヨセフはエフライムの三代(だい)の子孫(しそん)を見(み)た。マナセの子(こ)マキルの子(こ)らも生(うま)れてヨセフのひざの上(うえ)に置(お)かれた。 24ヨセフは兄弟(きょうだい)たちに言(い)った、「わたしはやがて死(し)にます。神(かみ)は必(かなら)ずあなたがたを顧(かえり)みて、この国(くに)から連(つ)れ出(だ)し、アブラハム、イサク、ヤコブに誓(ちか)われた地(ち)に導(みちび)き上(のぼ)られるでしょう」。 25さらにヨセフは、「神(かみ)は必(かなら)ずあなたがたを顧(かえり)みられる。その時(とき)、あなたがたはわたしの骨(ほね)をここから携(たずさ)え上(のぼ)りなさい」と言(い)ってイスラエルの子(こ)らに誓(ちか)わせた。 26こうしてヨセフは百十歳(さい)で死(し)んだ。彼(かれ)らはこれに薬(くすり)を塗(ぬ)り、棺(かん)に納(おさ)めて、エジプトに置(お)いた。