ヘブル人への手紙

第一章

1神(かみ)は、むかしは、預言者(よげんしゃ)たちにより、いろいろな時(とき)に、いろいろな方法(ほうほう)で、先祖(せんぞ)たちに語(かた)られたが、 2この終(おわ)りの時(とき)には、御子(みこ)によって、わたしたちに語(かた)られたのである。神(かみ)は御子(みこ)を万物(ばんぶつ)の相続者(そうぞくしゃ)と定(さだ)め、また、御子(みこ)によって、もろもろの世界(せかい)を造(つく)られた。 3御子(みこ)は神(かみ)の栄光(えいこう)の輝(かがや)きであり、神(かみ)の本質(ほんしつ)の真(しん)の姿(すがた)であって、その力(ちから)ある言葉(ことば)をもって万物(ばんぶつ)を保(たも)っておられる。そして罪(つみ)のきよめのわざをなし終(お)えてから、いと高(たか)き所(ところ)にいます大能者(たいのうしゃ)の右(みぎ)に、座(ざ)につかれたのである。 4御子(みこ)は、その受(う)け継(つ)がれた名(な)が御使(みつかい)たちの名(な)にまさっているので、彼(かれ)らよりもすぐれた者(もの)となられた。 5いったい、神(かみ)は御使(みつかい)たちのだれに対(たい)して、
「あなたこそは、わたしの子(こ)。
きょう、わたしはあなたを生(う)んだ」
と言(い)い、さらにまた、
「わたしは彼(かれ)の父(ちち)となり、
彼(かれ)はわたしの子(こ)となるであろう」
と言(い)われたことがあるか。 6さらにまた、神(かみ)は、その長子(ちょうし)を世界(せかい)に導(みちび)き入(い)れるに当(あた)って、
「神(かみ)の御使(みつかい)たちはことごとく、彼(かれ)を拝(はい)すべきである」
と言(い)われた。 7また、御使(みつかい)たちについては、
「神(かみ)は、御使(みつかい)たちを風(かぜ)とし、
ご自分(じぶん)に仕(つか)える者(もの)たちを炎(ほのお)とされる」
と言(い)われているが、 8御子(みこ)については、
「神(かみ)よ、あなたの御座(みざ)は、世々(よよ)限(かぎ)りなく続(つづ)き、
あなたの支配(しはい)のつえは、公平(こうへい)のつえである。
9あなたは義(ぎ)を愛(あい)し、不法(ふほう)を憎(にく)まれた。
それゆえに、神(かみ)、あなたの神(かみ)は、喜(よろこ)びのあぶらを、
あなたの友(とも)に注(そそ)ぐよりも多(おお)く、あなたに注(そそ)がれた」
と言(い)い、 10さらに、
「主(しゅ)よ、あなたは初(はじ)めに、地(ち)の基(もとい)をおすえになった。
もろもろの天(てん)も、み手(て)のわざである。
11これらのものは滅(ほろ)びてしまうが、
あなたは、いつまでもいますかたである。
すべてのものは衣(ころも)のように古(ふる)び、
12それらをあなたは、外套(がいとう)のように巻(ま)かれる。
これらのものは、衣(ころも)のように変(かわ)るが、
あなたは、いつも変(かわ)ることがなく、
あなたのよわいは、尽(つ)きることがない」
とも言(い)われている。 13神(かみ)は、御使(みつかい)たちのだれに対(たい)して、
「あなたの敵(てき)を、あなたの足(あし)台(だい)とするときまでは、
わたしの右(みぎ)に座(ざ)していなさい」
と言(い)われたことがあるか。 14御使(みつかい)たちはすべて仕(つか)える霊(れい)であって、救(すくい)を受(う)け継(つ)ぐべき人々(ひとびと)に奉仕(ほうし)するため、つかわされたものではないか。

第二章

1こういうわけだから、わたしたちは聞(き)かされていることを、いっそう強(つよ)く心(こころ)に留(と)めねばならない。そうでないと、おし流(なが)されてしまう。 2というのは、御使(みつかい)たちをとおして語(かた)られた御言(みことば)が効力(こうりょく)を持(も)ち、あらゆる罪過(ざいか)と不(ふ)従順(じゅうじゅん)とに対(たい)して正当(せいとう)な報(むく)いが加(くわ)えられたとすれば、 3わたしたちは、こんなに尊(たっと)い救(すくい)をなおざりにしては、どうして報(むく)いをのがれることができようか。この救(すくい)は、初(はじ)め主(しゅ)によって語(かた)られたものであって、聞(き)いた人々(ひとびと)からわたしたちにあかしされ、 4さらに神(かみ)も、しるしと不思議(ふしぎ)とさまざまな力(ちから)あるわざとにより、また、御旨(みむね)に従(したが)い聖霊(せいれい)を各自(かくじ)に賜(たま)うことによって、あかしをされたのである。

5いったい、神(かみ)は、わたしたちがここで語(かた)っているきたるべき世界(せかい)を、御使(みつかい)たちに服従(ふくじゅう)させることは、なさらなかった。 6聖書(せいしょ)はある箇所(かしょ)で、こうあかししている、
「人間(にんげん)が何者(なにもの)だから、
これを御(み)心(こころ)に留(と)められるのだろうか。
人(ひと)の子(こ)が何者(なにもの)だから、
これをかえりみられるのだろうか。
7あなたは、しばらくの間(あいだ)、
彼(かれ)を御使(みつかい)たちよりも低(ひく)い者(もの)となし、
栄光(えいこう)とほまれとを冠(かんむり)として彼(かれ)に与(あた)え、
8万物(ばんぶつ)をその足(あし)の下(した)に服従(ふくじゅう)させて下(くだ)さった」。
「万物(ばんぶつ)を彼(かれ)に服従(ふくじゅう)させて下(くだ)さった」という以上(いじょう)、服従(ふくじゅう)しないものは、何(なに)ひとつ残(のこ)されていないはずである。しかし、今(いま)もなお万物(ばんぶつ)が彼(かれ)に服従(ふくじゅう)している事実(じじつ)を、わたしたちは見(み)ていない。 9ただ、「しばらくの間(あいだ)、御使(みつかい)たちよりも低(ひく)い者(もの)とされた」イエスが、死(し)の苦(くる)しみのゆえに、栄光(えいこう)とほまれとを冠(かんむり)として与(あた)えられたのを見(み)る。それは、彼(かれ)が神(かみ)の恵(めぐ)みによって、すべての人(ひと)のために死(し)を味(あじ)わわれるためであった。 10なぜなら、万物(ばんぶつ)の帰(き)すべきかた、万物(ばんぶつ)を造(つく)られたかたが、多(おお)くの子(こ)らを栄光(えいこう)に導(みちび)くのに、彼(かれ)らの救(すくい)の君(きみ)を、苦難(くなん)をとおして全(まっと)うされたのは、彼(かれ)にふさわしいことであったからである。 11実(じつ)に、きよめるかたも、きよめられる者(もの)たちも、皆(みな)ひとりのかたから出(で)ている。それゆえに主(しゅ)は、彼(かれ)らを兄弟(きょうだい)と呼(よ)ぶことを恥(はじ)とされない。 12すなわち、
「わたしは、御名(みな)をわたしの兄弟(きょうだい)たちに告(つ)げ知(し)らせ、
教会(きょうかい)の中(なか)で、あなたをほめ歌(うた)おう」
と言(い)い、 13また、
「わたしは、彼(かれ)により頼(たの)む」、
また、
「見(み)よ、わたしと、神(かみ)がわたしに賜(たま)わった子(こ)らとは」
と言(い)われた。 14このように、子(こ)たちは血(ち)と肉(にく)とに共(とも)にあずかっているので、イエスもまた同様(どうよう)に、それらをそなえておられる。それは、死(し)の力(ちから)を持(も)つ者(もの)、すなわち悪魔(あくま)を、ご自分(じぶん)の死(し)によって滅(ほろ)ぼし、 15死(し)の恐怖(きょうふ)のために一(いっ)生涯(しょうがい)、奴隷(どれい)となっていた者(もの)たちを、解(と)き放(はな)つためである。 16確(たし)かに、彼(かれ)は天使(てんし)たちを助(たす)けることはしないで、アブラハムの子孫(しそん)を助(たす)けられた。 17そこで、イエスは、神(かみ)のみまえにあわれみ深(ぶか)い忠実(ちゅうじつ)な大祭司(だいさいし)となって、民(たみ)の罪(つみ)をあがなうために、あらゆる点(てん)において兄弟(きょうだい)たちと同(おな)じようにならねばならなかった。 18主(しゅ)ご自身(じしん)、試錬(しれん)を受(う)けて苦(くる)しまれたからこそ、試錬(しれん)の中(なか)にある者(もの)たちを助(たす)けることができるのである。

第三章

1そこで、天(てん)の召(め)しにあずかっている聖(せい)なる兄弟(きょうだい)たちよ。あなたがたは、わたしたちが告白(こくはく)する信仰(しんこう)の使者(ししゃ)また大祭司(だいさいし)なるイエスを、思(おも)いみるべきである。 2彼(かれ)は、モーセが神(かみ)の家(いえ)の全体(ぜんたい)に対(たい)して忠実(ちゅうじつ)であったように、自分(じぶん)を立(た)てたかたに対(たい)して忠実(ちゅうじつ)であられた。 3おおよそ、家(いえ)を造(つく)る者(もの)が家(いえ)そのものよりもさらに尊(たっと)ばれるように、彼(かれ)は、モーセ以上(いじょう)に、大(おお)いなる光栄(こうえい)を受(う)けるにふさわしい者(もの)とされたのである。 4家(いえ)はすべて、だれかによって造(つく)られるものであるが、すべてのものを造(つく)られたかたは、神(かみ)である。 5さて、モーセは、後(のち)に語(かた)らるべき事(こと)がらについてあかしをするために、仕(つか)える者(もの)として、神(かみ)の家(いえ)の全体(ぜんたい)に対(たい)して忠実(ちゅうじつ)であったが、 6キリストは御子(みこ)として、神(かみ)の家(いえ)を治(おさ)めるのに忠実(ちゅうじつ)であられたのである。もしわたしたちが、望(のぞ)みの確信(かくしん)と誇(ほこり)とを最後(さいご)までしっかりと持(も)ち続(つづ)けるなら、わたしたちは神(かみ)の家(いえ)なのである。 7だから、聖霊(せいれい)が言(い)っているように、
「きょう、あなたがたがみ声(こえ)を聞(き)いたなら、
8荒野(あらの)における試錬(しれん)の日(ひ)に、
神(かみ)にそむいた時(とき)のように、
あなたがたの心(こころ)を、かたくなにしてはいけない。
9あなたがたの先祖(せんぞ)たちは、
そこでわたしを試(こころ)みためし、
10しかも、四十年(ねん)の間(あいだ)わたしのわざを見(み)たのである。
だから、わたしはその時代(じだい)の人々(ひとびと)に対(たい)して、
いきどおって言(い)った、
彼(かれ)らの心(こころ)は、いつも迷(まよ)っており、
彼(かれ)らは、わたしの道(みち)を認(みと)めなかった。
11そこで、わたしは怒(いか)って、彼(かれ)らをわたしの安息(あんそく)にはいらせることはしない、と誓(ちか)った」。
12兄弟(きょうだい)たちよ。気(き)をつけなさい。あなたがたの中(なか)には、あるいは、不(ふ)信仰(しんこう)な悪(わる)い心(こころ)をいだいて、生(い)ける神(かみ)から離(はな)れ去(さ)る者(もの)があるかも知(し)れない。 13あなたがたの中(なか)に、罪(つみ)の惑(まど)わしに陥(おちい)って、心(こころ)をかたくなにする者(もの)がないように、「きょう」といううちに、日々(ひび)、互(たがい)に励(はげ)まし合(あ)いなさい。 14もし最初(さいしょ)の確信(かくしん)を、最後(さいご)までしっかりと持(も)ち続(つづ)けるならば、わたしたちはキリストにあずかる者(もの)となるのである。 15それについて、こう言(い)われている、
「きょう、み声(こえ)を聞(き)いたなら、
神(かみ)にそむいた時(とき)のように、
あなたがたの心(こころ)を、かたくなにしてはいけない」。
16すると、聞(き)いたのにそむいたのは、だれであったのか。モーセに率(ひき)いられて、エジプトから出(で)て行(い)ったすべての人々(ひとびと)ではなかったか。 17また、四十年(ねん)の間(あいだ)、神(かみ)がいきどおられたのはだれに対(たい)してであったか。罪(つみ)を犯(おか)して、その死(し)かばねを荒野(あらの)にさらした者(もの)たちに対(たい)してではなかったか。 18また、神(かみ)が、わたしの安息(あんそく)に、はいらせることはしない、と誓(ちか)われたのは、だれに向(む)かってであったか。不(ふ)従順(じゅうじゅん)な者(もの)に向(む)かってではなかったか。 19こうして、彼(かれ)らがはいることのできなかったのは、不(ふ)信仰(しんこう)のゆえであることがわかる。

第四章

1それだから、神(かみ)の安息(あんそく)にはいるべき約束(やくそく)が、まだ存続(そんぞく)しているにかかわらず、万一(まんいち)にも、はいりそこなう者(もの)が、あなたがたの中(なか)から出(で)ることがないように、注意(ちゅうい)しようではないか。 2というのは、彼(かれ)らと同(おな)じく、わたしたちにも福音(ふくいん)が伝(つた)えられているのである。しかし、その聞(き)いた御言(みことば)は、彼(かれ)らには無益(むえき)であった。それが、聞(き)いた者(もの)たちに、信仰(しんこう)によって結(むす)びつけられなかったからである。 3ところが、わたしたち信(しん)じている者(もの)は、安息(あんそく)にはいることができる。それは、
「わたしが怒(いか)って、
彼(かれ)らをわたしの安息(あんそく)に、はいらせることはしないと、誓(ちか)ったように」
と言(い)われているとおりである。しかも、みわざは世(よ)の初(はじ)めに、でき上(あ)がっていた。 4すなわち、聖書(せいしょ)のある箇所(かしょ)で、七日(なぬか)目(め)のことについて、「神(かみ)は、七日(なぬか)目(め)にすべてのわざをやめて休(やす)まれた」と言(い)われており、 5またここで、「彼(かれ)らをわたしの安息(あんそく)に、はいらせることはしない」と言(い)われている。 6そこで、その安息(あんそく)にはいる機会(きかい)が、人々(ひとびと)になお残(のこ)されているのであり、しかも、初(はじ)めに福音(ふくいん)を伝(つた)えられた人々(ひとびと)は、不(ふ)従順(じゅうじゅん)のゆえに、はいることをしなかったのであるから、 7神(かみ)は、あらためて、ある日(ひ)を「きょう」として定(さだ)め、長(なが)く時(とき)がたってから、先(さき)に引用(いんよう)したとおり、
「きょう、み声(こえ)を聞(き)いたなら、
あなたがたの心(こころ)を、かたくなにしてはいけない」
とダビデをとおして言(い)われたのである。 8もしヨシュアが彼(かれ)らを休(やす)ませていたとすれば、神(かみ)はあとになって、ほかの日(ひ)のことについて語(かた)られたはずはない。 9こういうわけで、安息日(あんそくにち)の休(やす)みが、神(かみ)の民(たみ)のためにまだ残(のこ)されているのである。 10なぜなら、神(かみ)の安息(あんそく)にはいった者(もの)は、神(かみ)がみわざをやめて休(やす)まれたように、自分(じぶん)もわざを休(やす)んだからである。 11したがって、わたしたちは、この安息(あんそく)にはいるように努力(どりょく)しようではないか。そうでないと、同(おな)じような不(ふ)従順(じゅうじゅん)の悪例(あくれい)にならって、落(お)ちて行(ゆ)く者(もの)が出(で)るかもしれない。 12というのは、神(かみ)の言(ことば)は生(い)きていて、力(ちから)があり、もろ刃(は)のつるぎよりも鋭(するど)くて、精神(せいしん)と霊魂(れいこん)と、関節(かんせつ)と骨髄(こつづい)とを切(き)り離(はな)すまでに刺(さ)しとおして、心(こころ)の思(おも)いと志(こころざし)とを見分(みわ)けることができる。 13そして、神(かみ)のみまえには、あらわでない被(ひ)造物(ぞうぶつ)はひとつもなく、すべてのものは、神(かみ)の目(め)には裸(はだか)であり、あらわにされているのである。この神(かみ)に対(たい)して、わたしたちは言(い)い開(ひら)きをしなくてはならない。

14さて、わたしたちには、もろもろの天(てん)をとおって行(い)かれた大祭司(だいさいし)なる神(かみ)の子(こ)イエスがいますのであるから、わたしたちの告白(こくはく)する信仰(しんこう)をかたく守(まも)ろうではないか。 15この大祭司(だいさいし)は、わたしたちの弱(よわ)さを思(おも)いやることのできないようなかたではない。罪(つみ)は犯(おか)されなかったが、すべてのことについて、わたしたちと同(おな)じように試錬(しれん)に会(あ)われたのである。 16だから、わたしたちは、あわれみを受(う)け、また、恵(めぐ)みにあずかって時機(じき)を得(え)た助(たす)けを受(う)けるために、はばかることなく恵(めぐ)みの御座(みざ)に近(ちか)づこうではないか。

第五章

1大祭司(だいさいし)なるものはすべて、人間(にんげん)の中(なか)から選(えら)ばれて、罪(つみ)のために供(そな)え物(もの)といけにえとをささげるように、人々(ひとびと)のために神(かみ)に仕(つか)える役(やく)に任(にん)じられた者(もの)である。 2彼(かれ)は自分(じぶん)自身(じしん)、弱(よわ)さを身(み)に負(お)うているので、無知(むち)な迷(まよ)っている人々(ひとびと)を、思(おも)いやることができると共(とも)に、 3その弱(よわ)さのゆえに、民(たみ)のためだけではなく自分(じぶん)自身(じしん)のためにも、罪(つみ)についてささげものをしなければならないのである。 4かつ、だれもこの栄誉(えいよ)ある務(つとめ)を自分(じぶん)で得(え)るのではなく、アロンの場合(ばあい)のように、神(かみ)の召(め)しによって受(う)けるのである。 5同様(どうよう)に、キリストもまた、大祭司(だいさいし)の栄誉(えいよ)を自分(じぶん)で得(え)たのではなく、
「あなたこそは、わたしの子(こ)。
きょう、わたしはあなたを生(う)んだ」
と言(い)われたかたから、お受(う)けになったのである。 6また、ほかの箇所(かしょ)でこう言(い)われている、
「あなたこそは、永遠(えいえん)に、
メルキゼデクに等(ひと)しい祭司(さいし)である」。
7キリストは、その肉(にく)の生活(せいかつ)の時(とき)には、激(はげ)しい叫(さけ)びと涙(なみだ)とをもって、ご自分(じぶん)を死(し)から救(すく)う力(ちから)のあるかたに、祈(いのり)と願(ねが)いとをささげ、そして、その深(ふか)い信仰(しんこう)のゆえに聞(き)きいれられたのである。 8彼(かれ)は御子(みこ)であられたにもかかわらず、さまざまの苦(くる)しみによって従順(じゅうじゅん)を学(まな)び、 9そして、全(まった)き者(もの)とされたので、彼(かれ)に従順(じゅうじゅん)であるすべての人(ひと)に対(たい)して、永遠(えいえん)の救(すくい)の源(みなもと)となり、 10神(かみ)によって、メルキゼデクに等(ひと)しい大祭司(だいさいし)と、となえられたのである。

11このことについては、言(い)いたいことがたくさんあるが、あなたがたの耳(みみ)が鈍(にぶ)くなっているので、それを説(と)き明(あ)かすことはむずかしい。 12あなたがたは、久(ひさ)しい以前(いぜん)からすでに教師(きょうし)となっているはずなのに、もう一度(ど)神(かみ)の言(ことば)の初歩(しょほ)を、人(ひと)から手(て)ほどきしてもらわねばならない始末(しまつ)である。あなたがたは堅(かた)い食物(しょくもつ)ではなく、乳(ちち)を必要(ひつよう)としている。 13すべて乳(ちち)を飲(の)んでいる者(もの)は、幼(おさ)な子(ご)なのだから、義(ぎ)の言葉(ことば)を味(あじ)わうことができない。 14しかし、堅(かた)い食物(しょくもつ)は、善悪(ぜんあく)を見(み)わける感覚(かんかく)を実際(じっさい)に働(はたら)かせて訓練(くんれん)された成人(せいじん)のとるべきものである。

第六章

1そういうわけだから、わたしたちは、キリストの教(おしえ)の初歩(しょほ)をあとにして、完成(かんせい)を目(め)ざして進(すすむ)もうではないか。今(いま)さら、死(し)んだ行(おこな)いの悔改(くいあらた)めと神(かみ)への信仰(しんこう)、 2洗(あら)いごとについての教(おしえ)と按手(あんしゅ)、死人(しにん)の復活(ふっかつ)と永遠(えいえん)のさばき、などの基本(きほん)の教(おしえ)をくりかえし学(まな)ぶことをやめようではないか。 3神(かみ)の許(ゆる)しを得(え)て、そうすることにしよう。 4いったん、光(ひかり)を受(う)けて天(てん)よりの賜物(たまもの)を味(あじ)わい、聖霊(せいれい)にあずかる者(もの)となり、 5また、神(かみ)の良(よ)きみ言葉(ことば)と、きたるべき世(よ)の力(ちから)とを味(あじ)わった者(もの)たちが、 6そののち堕落(だらく)した場合(ばあい)には、またもや神(かみ)の御子(みこ)を、自(みずか)ら十字架(じゅうじか)につけて、さらしものにするわけであるから、ふたたび悔改(くいあらた)めにたち帰(かえ)ることは不可能(ふかのう)である。 7たとえば、土地(とち)が、その上(うえ)にたびたび降(ふ)る雨(あめ)を吸(す)い込(こん)で、耕(たがや)す人々(ひとびと)に役立(やくだ)つ作物(さくもつ)を育(そだ)てるなら、神(かみ)の祝福(しゅくふく)にあずかる。 8しかし、いばらやあざみをはえさせるなら、それは無用(むよう)になり、やがてのろわれ、ついには焼(や)かれてしまう。

9しかし、愛(あい)する者(もの)たちよ。こうは言(い)うものの、わたしたちは、救(すくい)にかかわる更(さら)に良(よ)いことがあるのを、あなたがたについて確信(かくしん)している。 10神(かみ)は不義(ふぎ)なかたではないから、あなたがたの働(はたら)きや、あなたがたがかつて聖徒(せいと)に仕(つか)え、今(いま)もなお仕(つか)えて、御名(みな)のために示(しめ)してくれた愛(あい)を、お忘(わす)れになることはない。 11わたしたちは、あなたがたがひとり残(のこ)らず、最後(さいご)まで望(のぞ)みを持(も)ちつづけるためにも、同(おな)じ熱意(ねつい)を示(しめ)し、 12怠(おこた)ることがなく、信仰(しんこう)と忍耐(にんたい)とをもって約束(やくそく)のものを受(う)け継(つ)ぐ人々(ひとびと)に見習(みなら)う者(もの)となるように、と願(ねが)ってやまない。

13さて、神(かみ)がアブラハムに対(たい)して約束(やくそく)されたとき、さして誓(ちか)うのに、ご自分(じぶん)よりも上(うえ)のものがないので、ご自分(じぶん)をさして誓(ちか)って、 14「わたしは、必(かなら)ずあなたを祝福(しゅくふく)し、必(かなら)ずあなたの子孫(しそん)をふやす」と言(い)われた。 15このようにして、アブラハムは忍耐(にんたい)強(づよ)く待(ま)ったので、約束(やくそく)のものを得(え)たのである。 16いったい、人間(にんげん)は自分(じぶん)より上(うえ)のものをさして誓(ちか)うのであり、そして、その誓(ちか)いはすべての反対(はんたい)論(ろん)を封(ふう)じる保証(ほしょう)となるのである。 17そこで、神(かみ)は、約束(やくそく)のものを受(う)け継(つ)ぐ人々(ひとびと)に、ご計画(けいかく)の不変(ふへん)であることを、いっそうはっきり示(しめ)そうと思(おも)われ、誓(ちか)いによって保証(ほしょう)されたのである。 18それは、偽(いつわ)ることのあり得(え)ない神(かみ)に立(た)てられた二つの不変(ふへん)の事(こと)がらによって、前(まえ)におかれている望(のぞ)みを捕(とら)えようとして世(よ)をのがれてきたわたしたちが、力強(ちからづよ)い励(はげ)ましを受(う)けるためである。 19この望(のぞ)みは、わたしたちにとって、いわば、たましいを安全(あんぜん)にし不動(ふどう)にする錨(いかり)であり、かつ「幕(まく)の内(うち)」にはいり行(い)かせるものである。 20その幕(まく)の内(うち)に、イエスは、永遠(えいえん)にメルキゼデクに等(ひと)しい大祭司(だいさいし)として、わたしたちのためにさきがけとなって、はいられたのである。

第七章

1このメルキゼデクはサレムの王(おう)であり、いと高(たか)き神(かみ)の祭司(さいし)であったが、王(おう)たちを撃破(げきは)して帰(かえ)るアブラハムを迎(むか)えて祝福(しゅくふく)し、 2それに対(たい)して、アブラハムは彼(かれ)にすべての物(もの)の十分(ぶん)の一を分(わ)け与(あた)えたのである。その名(な)の意味(いみ)は、第(だい)一に義(ぎ)の王(おう)、次(つぎ)にまたサレムの王(おう)、すなわち平和(へいわ)の王(おう)である。 3彼(かれ)には父(ちち)がなく、母(はは)がなく、系図(けいず)がなく、生涯(しょうがい)の初(はじ)めもなく、生命(せいめい)の終(おわ)りもなく、神(かみ)の子(こ)のようであって、いつまでも祭司(さいし)なのである。

4そこで、族長(ぞくちょう)のアブラハムが最(もっと)もよいぶんどり品(ひん)の十分(ぶん)の一を与(あた)えたのだから、この人(ひと)がどんなにすぐれた人物(じんぶつ)であったかが、あなたがたにわかるであろう。 5さて、レビの子(こ)のうちで祭司(さいし)の務(つとめ)をしている者(もの)たちは、兄弟(きょうだい)である民(たみ)から、同(おな)じくアブラハムの子孫(しそん)であるにもかかわらず、十分(ぶん)の一を取(と)るように、律法(りっぽう)によって命(めい)じられている。 6ところが、彼(かれ)らの血統(けっとう)に属(ぞく)さないこの人(ひと)が、アブラハムから十分(ぶん)の一を受(う)けとり、約束(やくそく)を受(う)けている者(もの)を祝福(しゅくふく)したのである。 7言(い)うまでもなく、小(しょう)なる者(もの)が大(おお)なる者(もの)から祝福(しゅくふく)を受(う)けるのである。 8その上(うえ)、一方(いっぽう)では死(し)ぬべき人間(にんげん)が、十分(ぶん)の一を受(う)けているが、他方(たほう)では「彼(かれ)は生(い)きている者(もの)」とあかしされた人(ひと)が、それを受(う)けている。 9そこで、十分(ぶん)の一を受(う)けるべきレビでさえも、アブラハムを通(つう)じて十分(ぶん)の一を納(おさ)めた、と言(い)える。 10なぜなら、メルキゼデクがアブラハムを迎(むか)えた時(とき)には、レビはまだこの父祖(ふそ)の腰(こし)の中(なか)にいたからである。

11もし全(まっと)うされることがレビ系(けい)の祭司(さいし)制(せい)によって可能(かのう)であったら――民(たみ)は祭司(さいし)制(せい)の下(もと)に律法(りっぽう)を与(あた)えられたのであるが――なんの必要(ひつよう)があって、なお、「アロンに等(ひと)しい」と呼(よ)ばれない、別(べつ)な「メルキゼデクに等(ひと)しい」祭司(さいし)が立(た)てられるのであるか。 12祭司(さいし)制(せい)に変更(へんこう)があれば、律法(りっぽう)にも必(かなら)ず変更(へんこう)があるはずである。 13さて、これらのことは、いまだかつて祭壇(さいだん)に奉仕(ほうし)したことのない、他(た)の部族(ぶぞく)に関(かん)して言(い)われているのである。 14というのは、わたしたちの主(しゅ)がユダ族(ぞく)の中(なか)から出(で)られたことは、明(あき)らかであるが、モーセは、この部族(ぶぞく)について、祭司(さいし)に関(かん)することでは、ひとことも言(い)っていない。 15そしてこの事(こと)は、メルキゼデクと同様(どうよう)な、ほかの祭司(さいし)が立(た)てられたことによって、ますます明白(めいはく)になる。 16彼(かれ)は、肉(にく)につける戒(いまし)めの律法(りっぽう)によらないで、朽(く)ちることのないいのちの力(ちから)によって立(た)てられたのである。 17それについては、聖書(せいしょ)に「あなたこそは、永遠(えいえん)に、メルキゼデクに等(ひと)しい祭司(さいし)である」とあかしされている。 18このようにして、一方(いっぽう)では、前(まえ)の戒(いまし)めが弱(よわ)くかつ無益(むえき)であったために無効(むこう)になると共(とも)に、 19(律法(りっぽう)は、何事(なにごと)をも全(まっと)うし得(え)なかったからである)、他方(たほう)では、さらにすぐれた望(のぞ)みが現(あらわ)れてきて、わたしたちを神(かみ)に近(ちか)づかせるのである。 20その上(うえ)に、このことは誓(ちか)いをもってなされた。人々(ひとびと)は、誓(ちか)いをしないで祭司(さいし)とされるのであるが、 21この人(ひと)の場合(ばあい)は、次(つぎ)のような誓(ちか)いをもってされたのである。すなわち、彼(かれ)について、こう言(い)われている、「主(しゅ)は誓(ちか)われたが、心(こころ)を変(か)えることをされなかった。あなたこそは、永遠(えいえん)に祭司(さいし)である」。 22このようにして、イエスは更(さら)にすぐれた契約(けいやく)の保証(ほしょう)となられたのである。 23かつ、死(し)ということがあるために、務(つとめ)を続(つづ)けることができないので、多(おお)くの人々(ひとびと)が祭司(さいし)に立(た)てられるのである。 24しかし彼(かれ)は、永遠(えいえん)にいますかたであるので、変(かわ)らない祭司(さいし)の務(つとめ)を持(も)ちつづけておられるのである。 25そこでまた、彼(かれ)は、いつも生(い)きていて彼(かれ)らのためにとりなしておられるので、彼(かれ)によって神(かみ)に来(く)る人々(ひとびと)を、いつも救(すく)うことができるのである。

26このように、聖(せい)にして、悪(あく)も汚(けが)れもなく、罪人(つみびと)とは区別(くべつ)され、かつ、もろもろの天(てん)よりも高(たか)くされている大祭司(だいさいし)こそ、わたしたちにとってふさわしいかたである。 27彼(かれ)は、ほかの大祭司(だいさいし)のように、まず自分(じぶん)の罪(つみ)のため、次(つぎ)に民(たみ)の罪(つみ)のために、日々(ひび)、いけにえをささげる必要(ひつよう)はない。なぜなら、自分(じぶん)をささげて、一度(ど)だけ、それをされたからである。 28律法(りっぽう)は、弱(よわ)さを身(み)に負(お)う人間(にんげん)を立(た)てて大祭司(だいさいし)とするが、律法(りっぽう)の後(のち)にきた誓(ちか)いの御言(みことば)は、永遠(えいえん)に全(まっと)うされた御子(みこ)を立(た)てて、大祭司(だいさいし)としたのである。

第八章

1以上(いじょう)述(の)べたことの要点(ようてん)は、このような大祭司(だいさいし)がわたしたちのためにおられ、天(てん)にあって大能者(たいのうしゃ)の御座(みざ)の右(みぎ)に座(ざ)し、 2人間(にんげん)によらず主(しゅ)によって設(もう)けられた真(しん)の幕屋(まくや)なる聖所(せいじょ)で仕(つか)えておられる、ということである。 3おおよそ、大祭司(だいさいし)が立(た)てられるのは、供(そな)え物(もの)やいけにえをささげるためにほかならない。したがって、この大祭司(だいさいし)もまた、何(なに)かささぐべき物(もの)を持(も)っておられねばならない。 4そこで、もし彼(かれ)が地上(ちじょう)におられたなら、律法(りっぽう)にしたがって供(そな)え物(もの)をささげる祭司(さいし)たちが、現(げん)にいるのだから、彼(かれ)は祭司(さいし)ではあり得(え)なかったであろう。 5彼(かれ)らは、天(てん)にある聖所(せいじょ)のひな型(がた)と影(かげ)とに仕(つか)えている者(もの)にすぎない。それについては、モーセが幕屋(まくや)を建(た)てようとしたとき、御(み)告(つ)げを受(う)け、「山(やま)で示(しめ)された型(かた)どおりに、注意(ちゅうい)してそのいっさいを作(つく)りなさい」と言(い)われたのである。 6ところがキリストは、はるかにすぐれた務(つとめ)を得(え)られたのである。それは、さらにまさった約束(やくそく)に基(もとづ)いて立(た)てられた、さらにまさった契約(けいやく)の仲保者(ちゅうほしゃ)となられたことによる。 7もし初(はじ)めの契約(けいやく)に欠(か)けたところがなかったなら、あとのものが立(た)てられる余地(よち)はなかったであろう。 8ところが、神(かみ)は彼(かれ)らを責(せ)めて言(い)われた、
「主(しゅ)は言(い)われる、見(み)よ、
わたしがイスラエルの家(いえ)およびユダの家(いえ)と、
新(あたら)しい契約(けいやく)を結(むす)ぶ日(ひ)が来(く)る。
9それは、わたしが彼(かれ)らの先祖(せんぞ)たちの手(て)をとって、
エジプトの地(ち)から導(みち)き出(だ)した日(ひ)に、
彼(かれ)らと結(むす)んだ契約(けいやく)のようなものではない。
彼(かれ)らがわたしの契約(けいやく)にとどまることをしないので、
わたしも彼(かれ)らをかえりみなかったからであると、
主(しゅ)が言(い)われる。
10わたしが、それらの日(ひ)の後(のち)、イスラエルの家(いえ)と立(た)てようとする契約(けいやく)はこれである、と主(しゅ)が言(い)われる。
すなわち、わたしの律法(りっぽう)を彼(かれ)らの思(おも)いの中(なか)に入(い)れ、
彼(かれ)らの心(こころ)に書(か)きつけよう。
こうして、わたしは彼(かれ)らの神(かみ)となり、
彼(かれ)らはわたしの民(たみ)となるであろう。
11彼(かれ)らは、それぞれ、その同胞(どうほう)に、
また、それぞれ、その兄弟(きょうだい)に、
主(しゅ)を知(し)れ、と言(い)って教(おし)えることはなくなる。
なぜなら、大(おお)なる者(もの)から小(しょう)なる者(もの)に至(いた)るまで、
彼(かれ)らはことごとく、
わたしを知(し)るようになるからである。
12わたしは、彼(かれ)らの不義(ふぎ)をあわれみ、
もはや、彼(かれ)らの罪(つみ)を思(おも)い出(だ)すことはしない」。

13神(かみ)は、「新(あたら)しい」と言(い)われたことによって、初(はじ)めの契約(けいやく)を古(ふる)いとされたのである。年(とし)を経(へ)て古(ふる)びたものは、やがて消(き)えていく。

第九章

1さて、初(はじ)めの契約(けいやく)にも、礼拝(れいはい)についてのさまざまな規定(きてい)と、地上(ちじょう)の聖所(せいじょ)とがあった。 2すなわち、まず幕屋(まくや)が設(もう)けられ、その前(まえ)の場所(ばしょ)には燭台(しょくだい)と机(つくえ)と供(そな)えのパンとが置(お)かれていた。これが、聖所(せいじょ)と呼(よ)ばれた。 3また第(だい)二の幕(まく)の後(のち)に、別(べつ)の場所(ばしょ)があり、それは至聖所(しせいじょ)と呼(よ)ばれた。 4そこには金(きん)の香(こう)壇(だん)と全面(ぜんめん)金(きん)でおおわれた契約(けいやく)の箱(はこ)とが置(お)かれ、その中(なか)にはマナのはいっている金(きん)のつぼと、芽(め)を出(だ)したアロンのつえと、契約(けいやく)の石板(いしいた)とが入(い)れてあり、 5箱(はこ)の上(うえ)には栄光(えいこう)に輝(かがや)くケルビムがあって、贖罪所(しょくざいしょ)をおおっていた。これらのことについては、今(いま)ここで、いちいち述(の)べることができない。 6これらのものが、以上(いじょう)のように整(ととの)えられた上(うえ)で、祭司(さいし)たちは常(つね)に幕屋(まくや)の前(まえ)の場所(ばしょ)にはいって礼拝(れいはい)をするのであるが、 7幕屋(まくや)の奥(おく)には大祭司(だいさいし)が年(ねん)に一度(ど)だけはいるのであり、しかも自分(じぶん)自身(じしん)と民(たみ)とのあやまちのためにささげる血(ち)をたずさえないで行(ゆ)くことはない。 8それによって聖霊(せいれい)は、前方(ぜんぽう)の幕屋(まくや)が存在(そんざい)している限(かぎ)り、聖所(せいじょ)にはいる道(みち)はまだ開(ひら)かれていないことを、明(あき)らかに示(しめ)している。 9この幕屋(まくや)というのは今(いま)の時代(じだい)に対(たい)する比喩(ひゆ)である。すなわち、供(そな)え物(もの)やいけにえはささげられるが、儀式(ぎしき)にたずさわる者(もの)の良心(りょうしん)を全(まっと)うすることはできない。 10それらは、ただ食物(しょくもつ)と飲(の)み物(もの)と種々(しゅじゅ)の洗(あら)いごとに関(かん)する行事(ぎょうじ)であって、改革(かいかく)の時(とき)まで課(か)せられている肉(にく)の規定(きてい)にすぎない。

11しかしキリストがすでに現(あらわ)れた祝福(しゅくふく)の大祭司(だいさいし)としてこられたとき、手(て)で造(つく)られず、この世(よ)界に属(ぞく)さない、さらに大(おお)きく、完全(かんぜん)な幕屋(まくや)をとおり、 12かつ、やぎと子(こ)牛(うし)との血(ち)によらず、ご自身(じしん)の血(ち)によって、一度(ど)だけ聖所(せいじょ)にはいられ、それによって永遠(えいえん)のあがないを全(まっと)うされたのである。 13もし、やぎや雄(お)牛(うし)の血(ち)や雌牛(めうし)の灰(はい)が、汚(けが)れた人(ひと)たちの上(うえ)にまきかけられて、肉体(にくたい)をきよめ聖(せい)別(べつ)するとすれば、 14永遠(えいえん)の聖霊(せいれい)によって、ご自身(じしん)を傷(きず)なき者(もの)として神(かみ)にささげられたキリストの血(ち)は、なおさら、わたしたちの良心(りょうしん)をきよめて死(し)んだわざを取(と)り除(のぞ)き、生(い)ける神(かみ)に仕(つか)える者(もの)としないであろうか。 15それだから、キリストは新(あたら)しい契約(けいやく)の仲保者(ちゅうほしゃ)なのである。それは、彼(かれ)が初(はじ)めの契約(けいやく)のもとで犯(おか)した罪過(ざいか)をあがなうために死(し)なれた結果(けっか)、召(め)された者(もの)たちが、約束(やくそく)された永遠(えいえん)の国(くに)を受(う)け継(つ)ぐためにほかならない。

16いったい、遺言(ゆいごん)には、遺言者(ゆいごんしゃ)の死(し)の証明(しょうめい)が必要(ひつよう)である。 17遺言(ゆいごん)は死(し)によってのみその効力(こうりょく)を生(しょう)じ、遺言者(ゆいごんしゃ)が生(い)きている間(あいだ)は、効力(こうりょく)がない。 18だから、初(はじ)めの契約(けいやく)も、血(ち)を流(なが)すことなしに成立(せいりつ)したのではない。 19すなわち、モーセが、律法(りっぽう)に従(したが)ってすべての戒(いまし)めを民(たみ)全体(ぜんたい)に宣言(せんげん)したとき、水(みず)と赤色(あかいろ)の羊毛(ようもう)とヒソプとの外(ほか)に、子(こ)牛(うし)とやぎとの血(ち)を取(と)って、契約(けいやく)書(しょ)と民(たみ)全体(ぜんたい)とにふりかけ、 20そして、「これは、神(かみ)があなたがたに対(たい)して立(た)てられた契約(けいやく)の血(ち)である」と言(い)った。 21彼(かれ)はまた、幕屋(まくや)と儀式(ぎしき)用(よう)の器具(きぐ)いっさいにも、同様(どうよう)に血(ち)をふりかけた。 22こうして、ほとんどすべての物(もの)が、律法(りっぽう)に従(したが)い、血(ち)によってきよめられたのである。血(ち)を流(なが)すことなしには、罪(つみ)のゆるしはあり得(え)ない。

23このように、天(てん)にあるもののひな型(がた)は、これらのものできよめられる必要(ひつよう)があるが、天(てん)にあるものは、これらより更(さら)にすぐれたいけにえで、きよめられねばならない。 24ところが、キリストは、ほんとうのものの模型(もけい)にすぎない、手(て)で造(つく)った聖所(せいじょ)にはいらないで、上(うえ)なる天(てん)にはいり、今(いま)やわたしたちのために神(かみ)のみまえに出(で)て下(くだ)さったのである。 25大祭司(だいさいし)は、年(とし)ごとに、自分(じぶん)以外(いがい)のものの血(ち)をたずさえて聖所(せいじょ)にはいるが、キリストは、そのように、たびたびご自身(じしん)をささげられるのではなかった。 26もしそうだとすれば、世(よ)の初(はじ)めから、たびたび苦難(くなん)を受(う)けねばならなかったであろう。しかし事実(じじつ)、ご自身(じしん)をいけにえとしてささげて罪(つみ)を取(と)り除(のぞ)くために、世(よ)の終(おわ)りに、一度(ど)だけ現(あらわ)れたのである。 27そして、一度(ど)だけ死(し)ぬことと、死(し)んだ後(のち)さばきを受(う)けることとが、人間(にんげん)に定(さだ)まっているように、 28キリストもまた、多(おお)くの人(ひと)の罪(つみ)を負(お)うために、一度(ど)だけご自身(じしん)をささげられた後(のち)、彼(かれ)を待(ま)ち望(のぞ)んでいる人々(ひとびと)に、罪(つみ)を負(お)うためではなしに二度目(どめ)に現(あらわ)れて、救(すくい)を与(あた)えられるのである。

第一〇章

1いったい、律法(りっぽう)はきたるべき良(よ)いことの影(かげ)をやどすにすぎず、そのものの真(しん)のかたちをそなえているものではないから、年(とし)ごとに引(ひ)きつづきささげられる同(おな)じようないけにえによっても、みまえに近(ちか)づいて来(く)る者(もの)たちを、全(まっと)うすることはできないのである。 2もしできたとすれば、儀式(ぎしき)にたずさわる者(もの)たちは、一度(ど)きよめられた以上(いじょう)、もはや罪(つみ)の自覚(じかく)がなくなるのであるから、ささげ物(もの)をすることがやんだはずではあるまいか。 3しかし実際(じっさい)は、年(とし)ごとに、いけにえによって罪(つみ)の思(おも)い出(で)がよみがえって来(く)るのである。 4なぜなら、雄(お)牛(うし)ややぎなどの血(ち)は、罪(つみ)を除(のぞ)き去(さ)ることができないからである。 5それだから、キリストがこの世(よ)にこられたとき、次(つぎ)のように言(い)われた、
「あなたは、いけにえやささげ物(もの)を望(のぞ)まれないで、
わたしのために、からだを備(そな)えて下(くだ)さった。
6あなたは燔祭(はんさい)や罪祭(ざいさい)を好(この)まれなかった。
7その時(とき)、わたしは言(い)った、
『神(かみ)よ、わたしにつき、
巻物(まきもの)の書物(しょもつ)に書(か)いてあるとおり、
見(み)よ、御旨(みむね)を行(おこな)うためにまいりました』」。

8ここで、初(はじ)めに、「あなたは、いけにえとささげ物(もの)と燔祭(はんさい)と罪祭(ざいさい)と(すなわち、律法(りっぽう)に従(したが)ってささげられるもの)を望(のぞ)まれず、好(この)まれもしなかった」とあり、 9次(つぎ)に、「見(み)よ、わたしは御旨(みむね)を行(おこな)うためにまいりました」とある。すなわち、彼(かれ)は、後(のち)のものを立(た)てるために、初(はじ)めのものを廃止(はいし)されたのである。 10この御旨(みむね)に基(もとづ)きただ一度(ど)イエス・キリストのからだがささげられたことによって、わたしたちはきよめられたのである。

11こうして、すべての祭司(さいし)は立(た)って日(ひ)ごとに儀式(ぎしき)を行(おこな)い、たびたび同(おな)じようないけにえをささげるが、それらは決(けっ)して罪(つみ)を除(のぞ)き去(さ)ることはできない。 12しかるに、キリストは多(おお)くの罪(つみ)のために一つの永遠(えいえん)のいけにえをささげた後(のち)、神(かみ)の右(みぎ)に座(ざ)し、 13それから、敵(てき)をその足(あし)台(だい)とするときまで、待(ま)っておられる。 14彼(かれ)は一つのささげ物(もの)によって、きよめられた者(もの)たちを永遠(えいえん)に全(まっと)うされたのである。 15聖霊(せいれい)もまた、わたしたちにあかしをして、
16「わたしが、それらの日(ひ)の後(のち)、
彼(かれ)らに対(たい)して立(た)てようとする契約(けいやく)はこれであると、
主(しゅ)が言(い)われる。
わたしの律法(りっぽう)を彼(かれ)らの心(こころ)に与(あた)え、
彼(かれ)らの思(おも)いのうちに書(か)きつけよう」
と言(い)い、 17さらに、「もはや、彼(かれ)らの罪(つみ)と彼(かれ)らの不法(ふほう)とを、思(おも)い出(だ)すことはしない」と述(の)べている。 18これらのことに対(たい)するゆるしがある以上(いじょう)、罪(つみ)のためのささげ物(もの)は、もはやあり得(え)ない。

19兄弟(きょうだい)たちよ。こういうわけで、わたしたちはイエスの血(ち)によって、はばかることなく聖所(せいじょ)にはいることができ、 20彼(かれ)の肉体(にくたい)なる幕(まく)をとおり、わたしたちのために開(ひら)いて下(くだ)さった新(あたら)しい生(い)きた道(みち)をとおって、はいって行(ゆ)くことができるのであり、 21さらに、神(かみ)の家(いえ)を治(おさ)める大(おお)いなる祭司(さいし)があるのだから、 22心(こころ)はすすがれて良心(りょうしん)のとがめを去(さ)り、からだは清(きよ)い水(みず)で洗(あら)われ、まごころをもって信仰(しんこう)の確信(かくしん)に満(み)たされつつ、みまえに近(ちか)づこうではないか。 23また、約束(やくそく)をして下(くだ)さったのは忠実(ちゅうじつ)なかたであるから、わたしたちの告白(こくはく)する望(のぞ)みを、動(うご)くことなくしっかりと持(も)ち続(つづ)け、 24愛(あい)と善行(ぜんこう)とを励(はげ)むように互(たがい)に努(つと)め、 25ある人(ひと)たちがいつもしているように、集会(しゅうかい)をやめることはしないで互(たがい)に励(はげ)まし、かの日(ひ)が近(ちか)づいているのを見(み)て、ますます、そうしようではないか。

26もしわたしたちが、真理(しんり)の知識(ちしき)を受(う)けたのちにもなお、ことさらに罪(つみ)を犯(おか)しつづけるなら、罪(つみ)のためのいけにえは、もはやあり得(え)ない。 27ただ、さばきと、逆(さか)らう者(もの)たちを焼(や)きつくす激(はげ)しい火(ひ)とを、恐(おそ)れつつ待(ま)つことだけがある。 28モーセの律法(りっぽう)を無視(むし)する者(もの)が、あわれみを受(う)けることなしに、二、三の人(ひと)の証言(しょうげん)に基(もとづ)いて死刑(しけい)に処(しょ)せられるとすれば、 29神(かみ)の子(こ)を踏(ふ)みつけ、自分(じぶん)がきよめられた契約(けいやく)の血(ち)を汚(けが)れたものとし、さらに恵(めぐ)みの御霊(みたま)を侮(あなど)る者(もの)は、どんなにか重(おも)い刑罰(けいばつ)に価(あたい)することであろう。 30「復讐(ふくしゅう)はわたしのすることである。わたし自身(じしん)が報復(ほうふく)する」と言(い)われ、また「主(しゅ)はその民(たみ)をさばかれる」と言(い)われたかたを、わたしたちは知(し)っている。 31生(い)ける神(かみ)のみ手(て)のうちに落(お)ちるのは、恐(おそ)ろしいことである。

32あなたがたは、光(ひかり)に照(てら)されたのち、苦(くる)しい大(おお)きな戦(たたか)いによく耐(た)えた初(はじ)めのころのことを、思(おも)い出(だ)してほしい。 33そしられ苦(くる)しめられて見(み)せ物(もの)にされたこともあれば、このようなめに会(あ)った人々(ひとびと)の仲間(なかま)にされたこともあった。 34さらに獄(ごく)に入(い)れられた人々(ひとびと)を思(おも)いやり、また、もっとまさった永遠(えいえん)の宝(たから)を持(も)っていることを知(し)って、自分(じぶん)の財産(ざいさん)が奪(うば)われても喜(よろこ)んでそれを忍(しの)んだ。 35だから、あなたがたは自分(じぶん)の持(も)っている確信(かくしん)を放棄(ほうき)してはいけない。その確信(かくしん)には大(おお)きな報(むく)いが伴(ともな)っているのである。 36神(かみ)の御旨(みむね)を行(おこな)って約束(やくそく)のものを受(う)けるため、あなたがたに必要(ひつよう)なのは、忍耐(にんたい)である。
37「もうしばらくすれば、
きたるべきかたがお見(み)えになる。
遅(おそ)くなることはない。
38わが義人(ぎじん)は、信仰(しんこう)によって生(い)きる。
もし信仰(しんこう)を捨(す)てるなら、
わたしのたましいはこれを喜(よろこ)ばない」。

39しかしわたしたちは、信仰(しんこう)を捨(す)てて滅(ほろ)びる者(もの)ではなく、信仰(しんこう)に立(た)って、いのちを得(え)る者(もの)である。

第一一章

1さて、信仰(しんこう)とは、望(のぞ)んでいる事(こと)がらを確信(かくしん)し、まだ見(み)ていない事実(じじつ)を確認(かくにん)することである。 2昔(むかし)の人(ひと)たちは、この信仰(しんこう)のゆえに賞賛(しょうさん)された。 3信仰(しんこう)によって、わたしたちは、この世(よ)界が神(かみ)の言葉(ことば)で造(つく)られたのであり、したがって、見(み)えるものは現(あらわ)れているものから出(で)てきたのでないことを、悟(さと)るのである。 4信仰(しんこう)によって、アベルはカインよりもまさったいけにえを神(かみ)にささげ、信仰(しんこう)によって義(ぎ)なる者(もの)と認(みと)められた。神(かみ)が、彼(かれ)の供(そな)え物(もの)をよしとされたからである。彼(かれ)は死(し)んだが、信仰(しんこう)によって今(いま)もなお語(かた)っている。 5信仰(しんこう)によって、エノクは死(し)を見(み)ないように天(てん)に移(うつ)された。神(かみ)がお移(うつ)しになったので、彼(かれ)は見(み)えなくなった。彼(かれ)が移(うつ)される前(まえ)に、神(かみ)に喜(よろこ)ばれた者(もの)と、あかしされていたからである。 6信仰(しんこう)がなくては、神(かみ)に喜(よろこ)ばれることはできない。なぜなら、神(かみ)に来(く)る者(もの)は、神(かみ)のいますことと、ご自身(じしん)を求(もと)める者(もの)に報(むく)いて下(くだ)さることとを、必(かなら)ず信(しん)じるはずだからである。 7信仰(しんこう)によって、ノアはまだ見(み)ていない事(こと)がらについて御(み)告(つ)げを受(う)け、恐(おそ)れかしこみつつ、その家族(かぞく)を救(すく)うために箱舟(はこぶね)を造(つく)り、その信仰(しんこう)によって世(よ)の罪(つみ)をさばき、そして、信仰(しんこう)による義(ぎ)を受(う)け継(つ)ぐ者(もの)となった。 8信仰(しんこう)によって、アブラハムは、受(う)け継(つ)ぐべき地(ち)に出(で)て行(い)けとの召(め)しをこうむった時(とき)、それに従(したが)い、行(ゆ)く先(さき)を知(し)らないで出(で)て行(い)った。 9信仰(しんこう)によって、他国(たこく)にいるようにして約束(やくそく)の地(ち)に宿(やど)り、同(おな)じ約束(やくそく)を継(つ)ぐイサク、ヤコブと共(とも)に、幕屋(まくや)に住(す)んだ。 10彼(かれ)は、ゆるがぬ土台(どだい)の上(うえ)に建(た)てられた都(みやこ)を、待(ま)ち望(のぞ)んでいたのである。その都(みやこ)をもくろみ、また建(た)てたのは、神(かみ)である。 11信仰(しんこう)によって、サラもまた、年老(としお)いていたが、種(たね)を宿(やど)す力(ちから)を与(あた)えられた。約束(やくそく)をなさったかたは真実(しんじつ)であると、信(しん)じていたからである。 12このようにして、ひとりの死(し)んだと同様(どうよう)な人(ひと)から、天(てん)の星(ほし)のように、海(うみ)べの数(かぞ)えがたい砂(すな)のように、おびただしい人(ひと)が生(うま)れてきたのである。

13これらの人(ひと)はみな、信仰(しんこう)をいだいて死(し)んだ。まだ約束(やくそく)のものは受(う)けていなかったが、はるかにそれを望(のぞ)み見(み)て喜(よろこ)び、そして、地上(ちじょう)では旅人(たびびと)であり寄留者(きりゅうしゃ)であることを、自(みずか)ら言(い)いあらわした。 14そう言(い)いあらわすことによって、彼(かれ)らがふるさとを求(もと)めていることを示(しめ)している。 15もしその出(で)てきた所(ところ)のことを考(かんが)えていたなら、帰(かえ)る機会(きかい)はあったであろう。 16しかし実際(じっさい)、彼(かれ)らが望(のぞ)んでいたのは、もっと良(よ)い、天(てん)にあるふるさとであった。だから神(かみ)は、彼(かれ)らの神(かみ)と呼(よ)ばれても、それを恥(はじ)とはされなかった。事実(じじつ)、神(かみ)は彼(かれ)らのために、都(みやこ)を用意(ようい)されていたのである。

17信仰(しんこう)によって、アブラハムは、試錬(しれん)を受(う)けたとき、イサクをささげた。すなわち、約束(やくそく)を受(う)けていた彼(かれ)が、そのひとり子(こ)をささげたのである。 18この子(こ)については、「イサクから出(で)る者(もの)が、あなたの子孫(しそん)と呼(よ)ばれるであろう」と言(い)われていたのであった。 19彼(かれ)は、神(かみ)が死人(しにん)の中(なか)から人(ひと)をよみがえらせる力(ちから)がある、と信(しん)じていたのである。だから彼(かれ)は、いわば、イサクを生(い)きかえして渡(わた)されたわけである。 20信仰(しんこう)によって、イサクは、きたるべきことについて、ヤコブとエサウとを祝福(しゅくふく)した。 21信仰(しんこう)によって、ヤコブは死(し)のまぎわに、ヨセフの子(こ)らをひとりびとり祝福(しゅくふく)し、そしてそのつえのかしらによりかかって礼拝(れいはい)した。 22信仰(しんこう)によって、ヨセフはその臨終(りんじゅう)に、イスラエルの子(こ)らの出(で)て行(ゆ)くことを思(おも)い、自分(じぶん)の骨(ほね)のことについてさしずした。

23信仰(しんこう)によって、モーセの生(うま)れたとき、両親(りょうしん)は、三か月(げつ)のあいだ彼(かれ)を隠(かく)した。それは、彼(かれ)らが子供(こども)のうるわしいのを見(み)たからである。彼(かれ)らはまた、王(おう)の命令(めいれい)をも恐(おそ)れなかった。 24信仰(しんこう)によって、モーセは、成人(せいじん)したとき、パロの娘(むすめ)の子(こ)と言(い)われることを拒(こば)み、 25罪(つみ)のはかない歓楽(かんらく)にふけるよりは、むしろ神(かみ)の民(たみ)と共(とも)に虐待(ぎゃくたい)されることを選(えら)び、 26キリストのゆえに受(う)けるそしりを、エジプトの宝(たから)にまさる富(とみ)と考(かんが)えた。それは、彼(かれ)が報(むく)いを望(のぞ)み見(み)ていたからである。 27信仰(しんこう)によって、彼(かれ)は王(おう)の憤(いきどお)りをも恐(おそ)れず、エジプトを立(た)ち去(さ)った。彼(かれ)は、見(み)えないかたを見(み)ているようにして、忍(しの)びとおした。 28信仰(しんこう)によって、滅(ほろ)ぼす者(もの)が、長子(ちょうし)らに手(て)を下(くだ)すことのないように、彼(かれ)は過越(すぎこし)を行(おこな)い血(ち)を塗(ぬ)った。 29信仰(しんこう)によって、人々(ひとびと)は紅海(こうかい)をかわいた土地(とち)をとおるように渡(わた)ったが、同(おな)じことを企(くわだ)てたエジプト人(じん)はおぼれ死(し)んだ。 30信仰(しんこう)によって、エリコの城壁(じょうへき)は、七日(なぬか)にわたってまわったために、くずれおちた。 31信仰(しんこう)によって、遊女(ゆうじょ)ラハブは、探(さぐ)りにきた者(もの)たちをおだやかに迎(むか)えたので、不(ふ)従順(じゅうじゅん)な者(もの)どもと一緒(いっしょ)に滅(ほろ)びることはなかった。 32このほか、何(なに)を言(い)おうか。もしギデオン、バラク、サムソン、エフタ、ダビデ、サムエル及(およ)び預言者(よげんしゃ)たちについて語(かた)り出(だ)すなら、時間(じかん)が足(た)りないであろう。 33彼(かれ)らは信仰(しんこう)によって、国々(くにぐに)を征服(せいふく)し、義(ぎ)を行(おこな)い、約束(やくそく)のものを受(う)け、ししの口(くち)をふさぎ、 34火(ひ)の勢(いきお)いを消(け)し、つるぎの刃(は)をのがれ、弱(よわ)いものは強(つよ)くされ、戦(たたか)いの勇者(ゆうしゃ)となり、他国(たこく)の軍(ぐん)を退(しりぞ)かせた。 35女(おんな)たちは、その死者(ししゃ)たちをよみがえらさせてもらった。ほかの者(もの)は、更(さら)にまさったいのちによみがえるために、拷問(ごうもん)の苦(くる)しみに甘(あま)んじ、放免(ほうめん)されることを願(ねが)わなかった。 36なおほかの者(もの)たちは、あざけられ、むち打(う)たれ、しばり上(あ)げられ、投獄(とうごく)されるほどのめに会(あ)った。 37あるいは、石(いし)で打(う)たれ、さいなまれ、のこぎりで引(ひ)かれ、つるぎで切(き)り殺(ころ)され、羊(ひつじ)の皮(かわ)や、やぎの皮(かわ)を着(き)て歩(ある)きまわり、無一物(むいちもつ)になり、悩(なや)まされ、苦(くる)しめられ、 38(この世(よ)は彼(かれ)らの住(す)む所(ところ)ではなかった)、荒野(あらの)と山(やま)の中(なか)と岩(いわ)の穴(あな)と土(つち)の穴(あな)とを、さまよい続(つづ)けた。

39さて、これらの人々(ひとびと)はみな、信仰(しんこう)によってあかしされたが、約束(やくそく)のものは受(う)けなかった。 40神(かみ)はわたしたちのために、さらに良(よ)いものをあらかじめ備(そな)えて下(くだ)さっているので、わたしたちをほかにしては彼(かれ)らが全(まっと)うされることはない。

第一二章

1こういうわけで、わたしたちは、このような多(おお)くの証人(しょうにん)に雲(くも)のように囲(かこ)まれているのであるから、いっさいの重荷(おもに)と、からみつく罪(つみ)とをかなぐり捨(す)てて、わたしたちの参加(さんか)すべき競走(きょうそう)を、耐(た)え忍(しの)んで走(はし)りぬこうではないか。 2信仰(しんこう)の導(みちび)き手(て)であり、またその完成(かんせい)者(もの)であるイエスを仰(あお)ぎ見(み)つつ、走(はし)ろうではないか。彼(かれ)は、自分(じぶん)の前(まえ)におかれている喜(よろこ)びのゆえに、恥(はじ)をもいとわないで十字架(じゅうじか)を忍(しの)び、神(かみ)の御座(みざ)の右(みぎ)に座(ざ)するに至(いた)ったのである。 3あなたがたは、弱(よわ)り果(は)てて意気(いき)そそうしないために、罪人(つみびと)らのこのような反抗(はんこう)を耐(た)え忍(しの)んだかたのことを、思(おも)いみるべきである。 4あなたがたは、罪(つみ)と取(と)り組(く)んで戦(たたか)う時(とき)、まだ血(ち)を流(なが)すほどの抵抗(ていこう)をしたことがない。 5また子(こ)たちに対(たい)するように、あなたがたに語(かた)られたこの勧(すす)めの言葉(ことば)を忘(わす)れている、
「わたしの子(こ)よ、
主(しゅ)の訓練(くんれん)を軽(かろ)んじてはいけない。
主(しゅ)に責(せ)められるとき、弱(よわ)り果(は)ててはならない。
6主(しゅ)は愛(あい)する者(もの)を訓練(くんれん)し、
受(う)けいれるすべての子(こ)を、
むち打(う)たれるのである」。
7あなたがたは訓練(くんれん)として耐(た)え忍(しの)びなさい。神(かみ)はあなたがたを、子(こ)として取(と)り扱(あつか)っておられるのである。いったい、父(ちち)に訓練(くんれん)されない子(こ)があるだろうか。 8だれでも受(う)ける訓練(くんれん)が、あなたがたに与(あた)えられないとすれば、それこそ、あなたがたは私生子(しせいじ)であって、ほんとうの子(こ)ではない。 9その上(うえ)、肉親(にくしん)の父(ちち)はわたしたちを訓練(くんれん)するのに、なお彼(かれ)をうやまうとすれば、なおさら、わたしたちは、たましいの父(ちち)に服従(ふくじゅう)して、真(しん)に生(い)きるべきではないか。 10肉親(にくしん)の父(ちち)は、しばらくの間(あいだ)、自分(じぶん)の考(かんが)えに従(したが)って訓練(くんれん)を与(あた)えるが、たましいの父(ちち)は、わたしたちの益(えき)のため、そのきよさにあずからせるために、そうされるのである。 11すべての訓練(くんれん)は、当座(とうざ)は、喜(よろこ)ばしいものとは思(おも)われず、むしろ悲(かな)しいものと思(おも)われる。しかし後(のち)になれば、それによって鍛え(きたえ)られる者(もの)に、平安(へいあん)な義(ぎ)の実(み)を結(むす)ばせるようになる。

12それだから、あなたがたのなえた手(て)と、弱(よわ)くなっているひざとを、まっすぐにしなさい。 13また、足(あし)のなえている者(もの)が踏(ふ)みはずすことなく、むしろいやされるように、あなたがたの足(あし)のために、まっすぐな道(みち)をつくりなさい。 14すべての人(ひと)と相(あい)和(わ)し、また、自(みずか)らきよくなるように努(つと)めなさい。きよくならなければ、だれも主(しゅ)を見(み)ることはできない。 15気(き)をつけて、神(かみ)の恵(めぐ)みからもれることがないように、また、苦(にが)い根(ね)がはえ出(で)て、あなたがたを悩(なや)まし、それによって多(おお)くの人(ひと)が汚(けが)されることのないようにしなさい。 16また、一杯(いっぱい)の食(しょく)のために長子(ちょうし)の権利(けんり)を売(う)ったエサウのように、不品行(ふひんこう)な俗悪(ぞくあく)な者(もの)にならないようにしなさい。 17あなたがたの知(し)っているように、彼(かれ)はその後(のち)、祝福(しゅくふく)を受(う)け継(つ)ごうと願(ねが)ったけれども、捨(す)てられてしまい、涙(なみだ)を流(なが)してそれを求(もと)めたが、悔改(くいあらた)めの機会(きかい)を得(え)なかったのである。

18あなたがたが近(ちか)づいているのは、手(て)で触(ふ)れることができ、火(ひ)が燃(も)え、黒雲(くろくも)や暗(くら)やみやあらしにつつまれ、 19また、ラッパの響(ひびき)や、聞(き)いた者(もの)たちがそれ以上(いじょう)、耳(みみ)にしたくないと願(ねが)ったような言葉(ことば)がひびいてきた山(やま)ではない。 20そこでは、彼(かれ)らは、「けものであっても、山(やま)に触(ふれ)たら、石(いし)で打(う)ち殺(ころ)されてしまえ」という命令(めいれい)の言葉(ことば)に、耐(た)えることができなかったのである。 21その光景(こうけい)が恐(おそ)ろしかったのでモーセさえも、「わたしは恐(おそ)ろしさのあまり、おののいている」と言(い)ったほどである。 22しかしあなたがたが近(ちか)づいているのは、シオンの山(やま)、生(い)ける神(かみ)の都(みやこ)、天(てん)にあるエルサレム、無数(むすう)の天使(てんし)の祝(いわい)会(かい)、 23天(てん)に登録(とうろく)されている長子(ちょうし)たちの教会(きょうかい)、万民(ばんみん)の審判者(しんぱんしゃ)なる神(かみ)、全(まっと)うされた義人(ぎじん)の霊(れい)、 24新(あたら)しい契約(けいやく)の仲保者(ちゅうほしゃ)イエス、ならびに、アベルの血(ち)よりも力強(ちからづよ)く語(かた)るそそがれた血(ち)である。 25あなたがたは、語(かた)っておられるかたを拒(こば)むことがないように、注意(ちゅうい)しなさい。もし地上(ちじょう)で御旨(みむね)を告(つ)げた者(もの)を拒(こば)んだ人々(ひとびと)が、罰(ばつ)をのがれることができなかったなら、天(てん)から告(つ)げ示(しめ)すかたを退(しりぞ)けるわたしたちは、なおさらそうなるのではないか。 26あの時(とき)には、御(み)声(こえ)が地(ち)を震(ふる)わせた。しかし今(いま)は、約束(やくそく)して言(い)われた、「わたしはもう一度(ど)、地(ち)ばかりでなく天(てん)をも震(ふる)わそう」。 27この「もう一度(ど)」という言葉(ことば)は、震(ふる)われないものが残(のこ)るために、震(ふる)われるものが、造(つく)られたものとして取(と)り除(のぞ)かれることを示(しめ)している。 28このように、わたしたちは震(ふる)われない国(くに)を受(う)けているのだから、感謝(かんしゃ)をしようではないか。そして感謝(かんしゃ)しつつ、恐(おそ)れかしこみ、神(かみ)に喜(よろこ)ばれるように、仕(つか)えていこう。 29わたしたちの神(かみ)は、実(じつ)に、焼(や)きつくす火(ひ)である。

第一三章

1兄弟(きょうだい)愛(あい)を続(つづ)けなさい。 2旅人(たびびと)をもてなすことを忘(わす)れてはならない。このようにして、ある人々(ひとびと)は、気(き)づかないで御使(みつかい)たちをもてなした。 3獄(ごく)につながれている人(ひと)たちを、自分(じぶん)も一緒(いっしょ)につながれている心持(こころもち)で思(おも)いやりなさい。また、自分(じぶん)も同(おな)じ肉体(にくたい)にある者(もの)だから、苦(くる)しめられている人(ひと)たちのことを、心(こころ)にとめなさい。 4すべての人(ひと)は、結婚(けっこん)を重(おも)んずべきである。また寝床(ねどこ)を汚(けが)してはならない。神(かみ)は、不品行(ふひんこう)な者(もの)や姦淫(かんいん)をする者(もの)をさばかれる。 5金銭(きんせん)を愛(あい)することをしないで、自分(じぶん)の持(も)っているもので満足(まんぞく)しなさい。主(しゅ)は、「わたしは、決(けっ)してあなたを離(はな)れず、あなたを捨(す)てない」と言(い)われた。 6だから、わたしたちは、はばからずに言(い)おう、
「主(しゅ)はわたしの助(たす)け主(ぬし)である。
わたしには恐(おそ)れはない。
人(ひと)は、わたしに何(なに)ができようか」。

7神(かみ)の言(ことば)をあなたがたに語(かた)った指導者(しどうしゃ)たちのことを、いつも思(おも)い起(おこ)しなさい。彼(かれ)らの生活(せいかつ)の最後(さいご)を見(み)て、その信仰(しんこう)にならいなさい。 8イエス・キリストは、きのうも、きょうも、いつまでも変(かわ)ることがない。 9さまざまな違(ちが)った教(おしえ)によって、迷(まよ)わされてはならない。食物(しょくもつ)によらず、恵(めぐ)みによって、心(こころ)を強(つよ)くするがよい。食物(しょくもつ)によって歩(ある)いた者(もの)は、益(えき)を得(え)ることがなかった。 10わたしたちには一つの祭壇(さいだん)がある。幕屋(まくや)で仕(つか)えている者(もの)たちは、その祭壇(さいだん)の食物(しょくもつ)をたべる権利(けんり)はない。 11なぜなら、大祭司(だいさいし)によって罪(つみ)のためにささげられるけものの血(ち)は、聖所(せいじょ)のなかに携(たずさ)えて行(い)かれるが、そのからだは、営所(えいしょ)の外(そと)で焼(や)かれてしまうからである。 12だから、イエスもまた、ご自分(じぶん)の血(ち)で民(たみ)をきよめるために、門(もん)の外(そと)で苦難(くなん)を受(う)けられたのである。 13したがって、わたしたちも、彼(かれ)のはずかしめを身(み)に負(お)い、営所(えいしょ)の外(そと)に出(で)て、みもとに行(い)こうではないか。 14この地上(ちじょう)には、永遠(えいえん)の都(みやこ)はない。きたらんとする都(みやこ)こそ、わたしたちの求(もと)めているものである。 15だから、わたしたちはイエスによって、さんびのいけにえ、すなわち、彼(かれ)の御名(みな)をたたえるくちびるの実(み)を、たえず神(かみ)にささげようではないか。 16そして、善(ぜん)を行(おこな)うことと施(ほどこ)しをすることとを、忘(わす)れてはいけない。神(かみ)は、このようないけにえを喜(よろこ)ばれる。 17あなたがたの指導者(しどうしゃ)たちの言(い)うことを聞(き)きいれて、従(したが)いなさい。彼(かれ)らは、神(かみ)に言(い)いひらきをすべき者(もの)として、あなたがたのたましいのために、目(め)をさましている。彼(かれ)らが嘆(なげ)かないで、喜(よろこ)んでこのことをするようにしなさい。そうでないと、あなたがたの益(えき)にならない。

18わたしたちのために、祈(いの)ってほしい。わたしたちは明(あき)らかな良心(りょうしん)を持(も)っていると信(しん)じており、何事(なにごと)についても、正(ただ)しく行動(こうどう)しようと願(ねが)っている。 19わたしがあなたがたの所(ところ)に早(はや)く帰(かえ)れるため、祈(いの)ってくれるように、特(とく)にお願(ねが)いする。

20永遠(えいえん)の契約(けいやく)の血(ち)による羊(ひつじ)の大牧者(だいぼくしゃ)、わたしたちの主(しゅ)イエスを、死人(しにん)の中(なか)から引(ひ)き上(あ)げられた平和(へいわ)の神(かみ)が、 21イエス・キリストによって、みこころにかなうことをわたしたちにして下(くだ)さり、あなたがたが御旨(みむね)を行(おこな)うために、すべての良(よ)きものを備(そな)えて下(くだ)さるようにこい願(ねが)う。栄光(えいこう)が、世々(よよ)限(かぎ)りなく神(かみ)にあるように、アァメン。

22兄弟(きょうだい)たちよ。どうかわたしの勧(すす)めの言葉(ことば)を受(う)けいれてほしい。わたしは、ただ手(て)みじかに書(か)いたのだから。 23わたしたちの兄弟(きょうだい)テモテがゆるされたことを、お知(し)らせする。もし彼(かれ)が早(はや)く来(く)れば、彼(かれ)と一緒(いっしょ)にわたしはあなたがたに会(あ)えるだろう。

24あなたがたの指導者(しどうしゃ)一同(いちどう)と聖徒(せいと)たち一同(いちどう)に、よろしく伝(つた)えてほしい。イタリヤからきた人々(ひとびと)から、あなたがたによろしく。

25恵(めぐ)みが、あなたがた一同(いちどう)にあるように。