ヤコブの手紙

第一章

1神(かみ)と主(しゅ)イエス・キリストとの僕(しもべ)ヤコブから、離散(りさん)している十二部族(ぶぞく)の人々(ひとびと)へ、あいさつをおくる。

2わたしの兄弟(きょうだい)たちよ。あなたがたが、いろいろな試錬(しれん)に会(あ)った場合(ばあい)、それをむしろ非常(ひじょう)に喜(よろこ)ばしいことと思(おも)いなさい。 3あなたがたの知(し)っているとおり、信仰(しんこう)がためされることによって、忍耐(にんたい)が生(う)み出(だ)されるからである。 4だから、なんら欠点(けってん)のない、完全(かんぜん)な、でき上(あ)がった人(ひと)となるように、その忍耐力(にんたいりょく)を十分(じゅうぶん)に働(はたら)かせるがよい。

5あなたがたのうち、知恵(ちえ)に不足(ふそく)している者(もの)があれば、その人(ひと)は、とがめもせずに惜(お)しみなくすべての人(ひと)に与(あた)える神(かみ)に、願(ねが)い求(もと)めるがよい。そうすれば、与(あた)えられるであろう。 6ただ、疑(うたが)わないで、信仰(しんこう)をもって願(ねが)い求(もと)めなさい。疑(うたが)う人(ひと)は、風(かぜ)の吹(ふ)くままに揺(ゆ)れ動(うご)く海(うみ)の波(なみ)に似(に)ている。 7そういう人(ひと)は、主(しゅ)から何(なに)かをいただけるもののように思(おも)うべきではない。 8そんな人間(にんげん)は、二心(ふたごころ)の者(もの)であって、そのすべての行動(こうどう)に安定(あんてい)がない。

9低(ひく)い身分(みぶん)の兄弟(きょうだい)は、自分(じぶん)が高(たか)くされたことを喜(よろこ)びなさい。 10また、富(と)んでいる者(もの)は、自分(じぶん)が低(ひく)くされたことを喜(よろこ)ぶがよい。富(と)んでいる者(もの)は、草花(くさばな)のように過(す)ぎ去(さ)るからである。 11たとえば、太陽(たいよう)が上(のぼ)って熱風(ねっぷう)をおくると、草(くさ)を枯(か)らす。そしてその花(はな)は落(お)ち、その美(うつく)しい姿(すがた)は消(き)えうせてしまう。それと同(おな)じように、富(と)んでいる者(もの)も、その一生(いっしょう)の旅(たび)なかばで没落(ぼつらく)するであろう。

12試錬(しれん)を耐(た)え忍(しの)ぶ人(ひと)は、さいわいである。それを忍(しの)びとおしたなら、神(かみ)を愛(あい)する者(もの)たちに約束(やくそく)されたいのちの冠(かんむり)を受(う)けるであろう。 13だれでも誘惑(ゆうわく)に会(あ)う場合(ばあい)、「この誘惑(ゆうわく)は、神(かみ)からきたものだ」と言(い)ってはならない。神(かみ)は悪(あく)の誘惑(ゆうわく)に陥(おちい)るようなかたではなく、また自(みずか)ら進(すす)んで人(ひと)を誘惑(ゆうわく)することもなさらない。 14人(ひと)が誘惑(ゆうわく)に陥(おちい)るのは、それぞれ、欲(よく)に引(ひ)かれ、さそわれるからである。 15欲(よく)がはらんで罪(つみ)を生(う)み、罪(つみ)が熟(じゅく)して死(し)を生(う)み出(だ)す。 16愛(あい)する兄弟(きょうだい)たちよ。思(おも)い違(ちが)いをしてはいけない。

17あらゆる良(よ)い贈(おく)り物(もの)、あらゆる完全(かんぜん)な賜物(たまもの)は、上(うえ)から、光(ひかり)の父(ちち)から下(くだ)って来(く)る。父(ちち)には、変化(へんか)とか回転(かいてん)の影(かげ)とかいうものはない。 18父(ちち)は、わたしたちを、いわば被(ひ)造物(ぞうぶつ)の初穂(はつほ)とするために、真理(しんり)の言葉(ことば)によって御旨(みむね)のままに、生(う)み出(だ)して下(くだ)さったのである。

19愛(あい)する兄弟(きょうだい)たちよ。このことを知(し)っておきなさい。人(ひと)はすべて、聞(き)くに早(はや)く、語(かた)るにおそく、怒(いか)るにおそくあるべきである。 20人(ひと)の怒(いか)りは、神(かみ)の義(ぎ)を全(まっと)うするものではないからである。 21だから、すべての汚(けが)れや、はなはだしい悪(あく)を捨(す)て去(さ)って、心(こころ)に植(う)えつけられている御言(みことば)を、すなおに受(う)け入(い)れなさい。御言(みことば)には、あなたがたのたましいを救(すく)う力(ちから)がある。 22そして、御言(みことば)を行(おこな)う人(ひと)になりなさい。おのれを欺(あざむ)いて、ただ聞(き)くだけの者(もの)となってはいけない。 23おおよそ御言(みことば)を聞(き)くだけで行(おこな)わない人(ひと)は、ちょうど、自分(じぶん)の生(うま)れつきの顔(かお)を鏡(かがみ)に映(うつ)して見(み)る人(ひと)のようである。 24彼(かれ)は自分(じぶん)を映(うつ)して見(み)てそこから立(た)ち去(さ)ると、そのとたんに、自分(じぶん)の姿(すがた)がどんなであったかを忘(わす)れてしまう。 25これに反(はん)して、完全(かんぜん)な自由(じゆう)の律法(りっぽう)を一心(いっしん)に見(み)つめてたゆまない人(ひと)は、聞(き)いて忘(わす)れてしまう人(ひと)ではなくて、実際(じっさい)に行(おこな)う人(ひと)である。こういう人(ひと)は、その行(おこな)いによって祝福(しゅくふく)される。

26もし人(ひと)が信心(しんじん)深(ぶか)い者(もの)だと自任(じにん)しながら、舌(した)を制(せい)することをせず、自分(じぶん)の心(こころ)を欺(あざむ)いているならば、その人(ひと)の信心(しんじん)はむなしいものである。 27父(ちち)なる神(かみ)のみまえに清(きよ)く汚(けが)れのない信心(しんじん)とは、困(こま)っている孤児(こじ)や、やもめを見舞(みま)い、自(みずか)らは世(よ)の汚(けが)れに染(そ)まずに、身(み)を清(きよ)く保(たも)つことにほかならない。

第二章

1わたしの兄弟(きょうだい)たちよ。わたしたちの栄光(えいこう)の主(しゅ)イエス・キリストへの信仰(しんこう)を守(まも)るのに、分(わ)け隔(へだ)てをしてはならない。 2たとえば、あなたがたの会堂(かいどう)に、金(きん)の指輪(ゆびわ)をはめ、りっぱな着物(きもの)を着(き)た人(ひと)がはいって来(く)ると同時(どうじ)に、みすぼらしい着物(きもの)を着(き)た貧(まず)しい人(ひと)がはいってきたとする。 3その際(さい)、りっぱな着物(きもの)を着(き)た人(ひと)に対(たい)しては、うやうやしく「どうぞ、こちらの良(よ)い席(せき)にお掛(か)け下(くだ)さい」と言(い)い、貧(まず)しい人(ひと)には、「あなたは、そこに立(た)っていなさい。それとも、わたしの足(あし)もとにすわっているがよい」と言(い)ったとしたら、 4あなたがたは、自分(じぶん)たちの間(あいだ)で差別(さべつ)立(だ)てをし、よからぬ考(かんが)えで人(ひと)をさばく者(もの)になったわけではないか。 5愛(あい)する兄弟(きょうだい)たちよ。よく聞(き)きなさい。神(かみ)は、この世(よ)の貧(まず)しい人(ひと)たちを選(えら)んで信仰(しんこう)に富(と)ませ、神(かみ)を愛(あい)する者(もの)たちに約束(やくそく)された御国(みくに)の相続者(そうぞくしゃ)とされたではないか。 6しかるに、あなたがたは貧(まず)しい人(ひと)をはずかしめたのである。あなたがたをしいたげ、裁判所(さいばんしょ)に引(ひ)きずり込(こ)むのは、富(と)んでいる者(もの)たちではないか。 7あなたがたに対(たい)して唱(とな)えられた尊(たっと)い御名(みな)を汚(けが)すのは、実(じつ)に彼(かれ)らではないか。 8しかし、もしあなたがたが、「自分(じぶん)を愛(あい)するように、あなたの隣(とな)り人(ひと)を愛(あい)せよ」という聖書(せいしょ)の言葉(ことば)に従(したが)って、このきわめて尊(たっと)い律法(りっぽう)を守(まも)るならば、それは良(よ)いことである。 9しかし、もし分(わ)け隔(へだ)てをするならば、あなたがたは罪(つみ)を犯(おか)すことになり、律法(りっぽう)によって違反者(いはんしゃ)として宣告(せんこく)される。 10なぜなら、律法(りっぽう)をことごとく守(まも)ったとしても、その一つの点(てん)にでも落(お)ち度(ど)があれば、全体(ぜんたい)を犯(おか)したことになるからである。 11たとえば、「姦淫(かんいん)するな」と言(い)われたかたは、また「殺(ころ)すな」とも仰(おお)せになった。そこで、たとい姦淫(かんいん)はしなくても、人殺(ひとごろ)しをすれば、律法(りっぽう)の違反者(いはんしゃ)になったことになる。 12だから、自由(じゆう)の律法(りっぽう)によってさばかるべき者(もの)らしく語(かた)り、かつ行(おこな)いなさい。 13あわれみを行(おこな)わなかった者(もの)に対(たい)しては、仮借(かしゃく)のないさばきが下(くだ)される。あわれみは、さばきにうち勝(か)つ。

14わたしの兄弟(きょうだい)たちよ。ある人(ひと)が自分(じぶん)には信仰(しんこう)があると称(しょう)していても、もし行(おこな)いがなかったら、なんの役(やく)に立(た)つか。その信仰(しんこう)は彼(かれ)を救(すく)うことができるか。 15ある兄弟(きょうだい)または姉妹(しまい)が裸(はだか)でいて、その日(ひ)の食物(しょくもつ)にもこと欠(か)いている場合(ばあい)、 16あなたがたのうち、だれかが、「安(やす)らかに行(い)きなさい。暖(あたた)まって、食(た)べ飽(あ)きなさい」と言(い)うだけで、そのからだに必要(ひつよう)なものを何(なに)ひとつ与(あた)えなかったとしたら、なんの役(やく)に立(た)つか。 17信仰(しんこう)も、それと同様(どうよう)に、行(おこな)いを伴(ともな)わなければ、それだけでは死(し)んだものである。 18しかし、「ある人(ひと)には信仰(しんこう)があり、またほかの人(ひと)には行(おこな)いがある」と言(い)う者(もの)があろう。それなら、行(おこな)いのないあなたの信仰(しんこう)なるものを見(み)せてほしい。そうしたら、わたしの行(おこな)いによって信仰(しんこう)を見(み)せてあげよう。 19あなたは、神(かみ)はただひとりであると信(しん)じているのか。それは結構(けっこう)である。悪霊(あくりょう)どもでさえ、信(しん)じておののいている。 20ああ、愚(おろ)かな人(ひと)よ。行(おこな)いを伴(ともな)わない信仰(しんこう)のむなしいことを知(し)りたいのか。 21わたしたちの父祖(ふそ)アブラハムは、その子(こ)イサクを祭壇(さいだん)にささげた時(とき)、行(おこな)いによって義(ぎ)とされたのではなかったか。 22あなたが知(し)っているとおり、彼(かれ)においては、信仰(しんこう)が行(おこな)いと共(とも)に働(はたら)き、その行(おこな)いによって信仰(しんこう)が全(まっと)うされ、 23こうして、「アブラハムは神(かみ)を信(しん)じた。それによって、彼(かれ)は義(ぎ)と認(みと)められた」という聖書(せいしょ)の言葉(ことば)が成就(じょうじゅ)し、そして、彼(かれ)は「神(かみ)の友(とも)」と唱(とな)えられたのである。 24これでわかるように、人(ひと)が義(ぎ)とされるのは、行(おこな)いによるのであって、信仰(しんこう)だけによるのではない。 25同(おな)じように、かの遊女(ゆうじょ)ラハブでさえも、使者(ししゃ)たちをもてなし、彼(かれ)らを別(べつ)な道(みち)から送(おく)り出(だ)した時(とき)、行(おこな)いによって義(ぎ)とされたではないか。 26霊魂(れいこん)のないからだが死(し)んだものであると同様(どうよう)に、行(おこな)いのない信仰(しんこう)も死(し)んだものなのである。

第三章

1わたしの兄弟(きょうだい)たちよ。あなたがたのうち多(おお)くの者(もの)は、教師(きょうし)にならないがよい。わたしたち教師(きょうし)が、他(た)の人(ひと)たちよりも、もっときびしいさばきを受(う)けることが、よくわかっているからである。 2わたしたちは皆(みな)、多(おお)くのあやまちを犯(おか)すものである。もし、言葉(ことば)の上(うえ)であやまちのない人(ひと)があれば、そういう人(ひと)は、全身(ぜんしん)をも制(せい)御(ぎょ)することのできる完全(かんぜん)な人(ひと)である。 3馬(うま)を御(ぎょ)するために、その口(くち)にくつわをはめるなら、その全身(ぜんしん)を引(ひ)きまわすことができる。 4また船(ふね)を見(み)るがよい。船体(せんたい)が非常(ひじょう)に大(おお)きく、また激(はげ)しい風(かぜ)に吹(ふ)きまくられても、ごく小(ちい)さなかじ一つで、操縦者(そうじゅうしゃ)の思(おも)いのままに運転(うんてん)される。 5それと同(おな)じく、舌(した)は小(ちい)さな器官(きかん)ではあるが、よく大言壮語(たいげんそうご)する。見(み)よ、ごく小(ちい)さな火(ひ)でも、非常(ひじょう)に大(おお)きな森(もり)を燃(も)やすではないか。 6舌(した)は火(ひ)である。不義(ふぎ)の世界(せかい)である。舌(した)は、わたしたちの器官(きかん)の一つとしてそなえられたものであるが、全身(ぜんしん)を汚(けが)し、生存(せいぞん)の車輪(しゃりん)を燃(も)やし、自(みずか)らは地獄(じごく)の火(ひ)で焼(や)かれる。 7あらゆる種類(しゅるい)の獣(けもの)、鳥(とり)、這(は)うもの、海(うみ)の生物(せいぶつ)は、すべて人類(じんるい)に制(せい)せられるし、また制(せい)せられてきた。 8ところが、舌(した)を制(せい)しうる人(ひと)は、ひとりもいない。それは、制(せい)しにくい悪(あく)であって、死(し)の毒(どく)に満(み)ちている。 9わたしたちは、この舌(した)で父(ちち)なる主(しゅ)をさんびし、また、その同(おな)じ舌(した)で、神(かみ)にかたどって造(つく)られた人間(にんげん)をのろっている。 10同(おな)じ口(くち)から、さんびとのろいとが出(で)て来(く)る。わたしの兄弟(きょうだい)たちよ。このような事(こと)は、あるべきでない。 11泉(いずみ)が、甘(あま)い水(みず)と苦(にが)い水(みず)とを、同(おな)じ穴(あな)からふき出(だ)すことがあろうか。 12わたしの兄弟(きょうだい)たちよ。いちじくの木(き)がオリブの実(み)を結(むす)び、ぶどうの木(き)がいちじくの実(み)を結(むす)ぶことができようか。塩水(しおみず)も、甘(あま)い水(みず)を出(だ)すことはできない。

13あなたがたのうちで、知恵(ちえ)があり物(もの)わかりのよい人(ひと)は、だれであるか。その人(ひと)は、知恵(ちえ)にかなう柔和(にゅうわ)な行(おこな)いをしていることを、よい生活(せいかつ)によって示(しめ)すがよい。 14しかし、もしあなたがたの心(こころ)の中(なか)に、苦々(にがにが)しいねたみや党派心(とうはしん)をいだいているのなら、誇(ほこ)り高(たか)ぶってはならない。また、真理(しんり)にそむいて偽(いつわ)ってはならない。 15そのような知恵(ちえ)は、上(うえ)から下(くだ)ってきたものではなくて、地(ち)につくもの、肉(にく)に属(ぞく)するもの、悪魔(あくま)的(てき)なものである。 16ねたみと党派心(とうはしん)とのあるところには、混乱(こんらん)とあらゆる忌(い)むべき行為(こうい)とがある。 17しかし上(うえ)からの知恵(ちえ)は、第(だい)一に清(きよ)く、次(つぎ)に平和(へいわ)、寛容(かんよう)、温順(おんじゅん)であり、あわれみと良(よ)い実(み)とに満(み)ち、かたより見(み)ず、偽(いつわ)りがない。 18義(ぎ)の実(み)は、平和(へいわ)を造(つく)り出(りだ)す人(ひと)たちによって、平和(へいわ)のうちにまかれるものである。

第四章

1あなたがたの中(なか)の戦(たたか)いや争(あらそ)いは、いったい、どこから起(おこ)るのか。それはほかではない。あなたがたの肢体(したい)の中(なか)で相戦(あいたたか)う欲情(よくじょう)からではないか。 2あなたがたは、むさぼるが得(え)られない。そこで人殺(ひとごろ)しをする。熱望(ねつぼう)するが手(て)に入(い)れることができない。そこで争(あらそ)い戦(たたか)う。あなたがたは、求(もと)めないから得(え)られないのだ。 3求(もと)めても与(あた)えられないのは、快楽(かいらく)のために使(つか)おうとして、悪(わる)い求(もと)め方(ほう)をするからだ。 4不貞(ふてい)のやからよ。世(よ)を友(とも)とするのは、神(かみ)への敵対(てきたい)であることを、知(し)らないか。おおよそ世(よ)の友(とも)となろうと思(おも)う者(もの)は、自(みずか)らを神(かみ)の敵(てき)とするのである。 5それとも、「神(かみ)は、わたしたちの内(うち)に住(す)まわせた霊(れい)を、ねたむほどに愛(あい)しておられる」と聖書(せいしょ)に書(か)いてあるのは、むなしい言葉(ことば)だと思(おも)うのか。 6しかし神(かみ)は、いや増(ま)しに恵(めぐ)みを賜(たま)う。であるから、「神(かみ)は高(たか)ぶる者(もの)をしりぞけ、へりくだる者(もの)に恵(めぐ)みを賜(たま)う」とある。 7そういうわけだから、神(かみ)に従(したが)いなさい。そして、悪魔(あくま)に立(た)ちむかいなさい。そうすれば、彼(かれ)はあなたがたから逃(に)げ去(さ)るであろう。 8神(かみ)に近(ちか)づきなさい。そうすれば、神(かみ)はあなたがたに近(ちか)づいて下(くだ)さるであろう。罪人(つみびと)どもよ、手(て)をきよめよ。二心(ふたごころ)の者(もの)どもよ、心(こころ)を清(きよ)くせよ。 9苦(くる)しめ、悲(かな)しめ、泣(な)け。あなたがたの笑(わら)いを悲(かな)しみに、喜(よろこ)びを憂(うれ)いに変(か)えよ。 10主(しゅ)のみまえにへりくだれ。そうすれば、主(しゅ)は、あなたがたを高(たか)くして下(くだ)さるであろう。

11兄弟(きょうだい)たちよ。互(たがい)に悪口(わるぐち)を言(い)い合(あ)ってはならない。兄弟(きょうだい)の悪口(わるぐち)を言(い)ったり、自分(じぶん)の兄弟(きょうだい)をさばいたりする者(もの)は、律法(りっぽう)をそしり、律法(りっぽう)をさばくやからである。もしあなたが律法(りっぽう)をさばくなら、律法(りっぽう)の実行(じっこう)者(もの)ではなくて、その審判者(しんぱんしゃ)なのである。 12しかし、立法(りっぽう)者(しゃ)であり審判者(しんぱんしゃ)であるかたは、ただひとりであって、救(すく)うことも滅(ほろ)ぼすこともできるのである。しかるに、隣(とな)り人(ひと)をさばくあなたは、いったい、何者(なにもの)であるか。

13よく聞(き)きなさい。「きょうか、あす、これこれの町(まち)へ行(い)き、そこに一か年(ねん)滞在(たいざい)し、商売(しょうばい)をして一(ひと)もうけしよう」と言(い)う者(もの)たちよ。 14あなたがたは、あすのこともわからぬ身(み)なのだ。あなたがたのいのちは、どんなものであるか。あなたがたは、しばしの間(あいだ)あらわれて、たちまち消(き)え行(い)く霧(きり)にすぎない。 15むしろ、あなたがたは「主(しゅ)のみこころであれば、わたしは生(い)きながらえもし、あの事(こと)この事(こと)もしよう」と言(い)うべきである。 16ところが、あなたがたは誇(ほこ)り高(たか)ぶっている。このような高慢(こうまん)は、すべて悪(あく)である。 17人(ひと)が、なすべき善(ぜん)を知(し)りながら行(おこな)わなければ、それは彼(かれ)にとって罪(つみ)である。

第五章

1富(と)んでいる人(ひと)たちよ。よく聞(き)きなさい。あなたがたは、自分(じぶん)の身(み)に降(ふ)りかかろうとしているわざわいを思(おも)って、泣(な)き叫(さけ)ぶがよい。 2あなたがたの富(とみ)は朽(く)ち果(は)て、着物(きもの)はむしばまれ、 3金銀(きんぎん)はさびている。そして、そのさびの毒(どく)は、あなたがたの罪(つみ)を責(せ)め、あなたがたの肉(にく)を火(ひ)のように食(く)いつくすであろう。あなたがたは、終(おわ)りの時(とき)にいるのに、なお宝(たから)をたくわえている。 4見(み)よ、あなたがたが労働者(ろうどうしゃ)たちに畑(はたけ)の刈入(かりい)れをさせながら、支払(しはら)わずにいる賃銀(ちんぎん)が、叫(さけ)んでいる。そして、刈入(かりい)れをした人(ひと)たちの叫(さけ)び声(ごえ)が、すでに万軍(ばんぐん)の主(しゅ)の耳(みみ)に達(たっ)している。 5あなたがたは、地上(ちじょう)でおごり暮(くら)し、快楽(かいらく)にふけり、「ほふらるる日(ひ)」のために、おのが心(こころ)を肥(こ)やしている。 6そして、義人(ぎじん)を罪(つみ)に定(さだ)め、これを殺(ころ)した。しかも彼(かれ)は、あなたがたに抵抗(ていこう)しない。

7だから、兄弟(きょうだい)たちよ。主(しゅ)の来臨(らいりん)の時(とき)まで耐(た)え忍(しの)びなさい。見(み)よ、農夫(のうふ)は、地(ち)の尊(たっと)い実(みの)りを、前(まえ)の雨(あめ)と後(のち)の雨(あめ)とがあるまで、耐(た)え忍(しの)んで待(ま)っている。 8あなたがたも、主(しゅ)の来臨(らいりん)が近(ちか)づいているから、耐(た)え忍(しの)びなさい。心(こころ)を強(つよ)くしていなさい。 9兄弟(きょうだい)たちよ。互(たがい)に不平(ふへい)を言(い)い合(あ)ってはならない。さばきを受(う)けるかも知(し)れないから。見(み)よ、さばき主(しゅ)が、すでに戸口(とぐち)に立(た)っておられる。 10兄弟(きょうだい)たちよ。苦(くる)しみを耐(た)え忍(しの)ぶことについては、主(しゅ)の御名(みな)によって語(かた)った預言者(よげんしゃ)たちを模範(もはん)にするがよい。 11忍(しの)び抜(ぬ)いた人(ひと)たちはさいわいであると、わたしたちは思(おも)う。あなたがたは、ヨブの忍耐(にんたい)のことを聞(き)いている。また、主(しゅ)が彼(かれ)になさったことの結末(けつまつ)を見(み)て、主(しゅ)がいかに慈愛(じあい)とあわれみとに富(と)んだかたであるかが、わかるはずである。

12さて、わたしの兄弟(きょうだい)たちよ。何(なに)はともあれ、誓(ちか)いをしてはならない。天(てん)をさしても、地(ち)をさしても、あるいは、そのほかのどんな誓(ちか)いによっても、いっさい誓(ちか)ってはならない。むしろ、「しかり」を「しかり」とし、「否(いな)」を「否(いな)」としなさい。そうしないと、あなたがたは、さばきを受(う)けることになる。

13あなたがたの中(なか)に、苦(くる)しんでいる者(もの)があるか。その人(ひと)は、祈(いの)るがよい。喜(よろこ)んでいる者(もの)があるか。その人(ひと)は、さんびするがよい。 14あなたがたの中(なか)に、病(や)んでいる者(もの)があるか。その人(ひと)は、教会(きょうかい)の長老(ちょうろう)たちを招(まね)き、主(しゅ)の御名(みな)によって、オリブ油(ゆ)を注(そそ)いで祈(いの)ってもらうがよい。 15信仰(しんこう)による祈(いのり)は、病(や)んでいる人(ひと)を救(すく)い、そして、主(しゅ)はその人(ひと)を立(た)ちあがらせて下(くだ)さる。かつ、その人(ひと)が罪(つみ)を犯(おか)していたなら、それもゆるされる。 16だから、互(たがい)に罪(つみ)を告白(こくはく)し合(あ)い、また、いやされるようにお互(たがい)のために祈(いの)りなさい。義人(ぎじん)の祈(いのり)は、大(おお)いに力(ちから)があり、効果(こうか)のあるものである。 17エリヤは、わたしたちと同(おな)じ人間(にんげん)であったが、雨(あめ)が降(ふ)らないようにと祈(いのり)をささげたところ、三年(ねん)六か月(げつ)のあいだ、地上(ちじょう)に雨(あめ)が降(ふ)らなかった。 18それから、ふたたび祈(いの)ったところ、天(てん)は雨(あめ)を降(ふ)らせ、地(ち)はその実(み)をみのらせた。

19わたしの兄弟(きょうだい)たちよ。あなたがたのうち、真理(しんり)の道(みち)から踏(ふ)み迷(まよ)う者(もの)があり、だれかが彼(かれ)を引(ひ)きもどすなら、 20かように罪人(つみびと)を迷(まよ)いの道(みち)から引(ひ)きもどす人(ひと)は、そのたましいを死(し)から救(すく)い出(だ)し、かつ、多(おお)くの罪(つみ)をおおうものであることを、知(し)るべきである。