ヨハネによる福音書

第一章

1初(はじ)めに言(ことば)があった。言(ことば)は神(かみ)と共(とも)にあった。言(ことば)は神(かみ)であった。 2この言(ことば)は初(はじ)めに神(かみ)と共(とも)にあった。 3すべてのものは、これによってできた。できたもののうち、一つとしてこれによらないものはなかった。 4この言(ことば)に命(いのち)があった。そしてこの命(いのち)は人(ひと)の光(ひかり)であった。 5光(ひかり)はやみの中(なか)に輝(かがや)いている。そして、やみはこれに勝(か)たなかった。

6ここにひとりの人(ひと)があって、神(かみ)からつかわされていた。その名(な)をヨハネと言(い)った。 7この人(ひと)はあかしのためにきた。光(ひかり)についてあかしをし、彼(かれ)によってすべての人(ひと)が信(しん)じるためである。 8彼(かれ)は光(ひかり)ではなく、ただ、光(ひかり)についてあかしをするためにきたのである。

9すべての人(ひと)を照(てら)すまことの光(ひかり)があって、世(よ)にきた。 10彼(かれ)は世(よ)にいた。そして、世(よ)は彼(かれ)によってできたのであるが、世(よ)は彼(かれ)を知(し)らずにいた。 11彼(かれ)は自分(じぶん)のところにきたのに、自分(じぶん)の民(たみ)は彼(かれ)を受(う)けいれなかった。 12しかし、彼(かれ)を受(う)けいれた者(もの)、すなわち、その名(な)を信(しん)じた人々(ひとびと)には、彼(かれ)は神(かみ)の子(こ)となる力(ちから)を与(あた)えたのである。 13それらの人(ひと)は、血(ち)すじによらず、肉(にく)の欲(よく)によらず、また、人(ひと)の欲(よく)にもよらず、ただ神(かみ)によって生(うま)れたのである。

14そして言(ことば)は肉体(にくたい)となり、わたしたちのうちに宿(やど)った。わたしたちはその栄光(えいこう)を見(み)た。それは父(ちち)のひとり子(こ)としての栄光(えいこう)であって、めぐみとまこととに満(み)ちていた。 15ヨハネは彼(かれ)についてあかしをし、叫(さけ)んで言(い)った、「『わたしのあとに来(く)るかたは、わたしよりもすぐれたかたである。わたしよりも先(さき)におられたからである』とわたしが言(い)ったのは、この人(ひと)のことである」。 16わたしたちすべての者(もの)は、その満(み)ち満(み)ちているものの中(なか)から受(う)けて、めぐみにめぐみを加(くわ)えられた。 17律法(りっぽう)はモーセをとおして与(あた)えられ、めぐみとまこととは、イエス・キリストをとおしてきたのである。 18神(かみ)を見(み)た者(もの)はまだひとりもいない。ただ父(ちち)のふところにいるひとり子(こ)なる神(かみ)だけが、神(かみ)をあらわしたのである。

19さて、ユダヤ人(じん)たちが、エルサレムから祭司(さいし)たちやレビ人(ひと)たちをヨハネのもとにつかわして、「あなたはどなたですか」と問(と)わせたが、その時(とき)ヨハネが立(た)てたあかしは、こうであった。 20すなわち、彼(かれ)は告白(こくはく)して否(いな)まず、「わたしはキリストではない」と告白(こくはく)した。 21そこで、彼(かれ)らは問(と)うた、「それでは、どなたなのですか、あなたはエリヤですか」。彼(かれ)は「いや、そうではない」と言(い)った。「では、あの預言者(よげんしゃ)ですか」。彼(かれ)は「いいえ」と答(こた)えた。 22そこで、彼(かれ)らは言(い)った、「あなたはどなたですか。わたしたちをつかわした人々(ひとびと)に、答(こたえ)を持(も)って行(い)けるようにしていただきたい。あなた自身(じしん)をだれだと考(かんが)えるのですか」。 23彼(かれ)は言(い)った、「わたしは、預言者(よげんしゃ)イザヤが言(い)ったように、『主(しゅ)の道(みち)をまっすぐにせよと荒野(あらの)で呼(よ)ばわる者(もの)の声(こえ)』である」。

24つかわされた人(ひと)たちは、パリサイ人(びと)であった。 25彼(かれ)らはヨハネに問(と)うて言(い)った、「では、あなたがキリストでもエリヤでもまたあの預言者(よげんしゃ)でもないのなら、なぜバプテスマを授(さづ)けるのですか」。 26ヨハネは彼(かれ)らに答(こた)えて言(い)った、「わたしは水(みず)でバプテスマを授(さづ)けるが、あなたがたの知(し)らないかたが、あなたがたの中(なか)に立(た)っておられる。 27それがわたしのあとにあとにおいでになる方(かた)であって、わたしはその人(ひと)のくつのひもを解(と)く値(ね)うちもない」。 28これらのことは、ヨハネがバプテスマを授(さづ)けていたヨルダンの向(む)こうのベタニヤであったのである。

29その翌日(よくじつ)、ヨハネはイエスが自分(じぶん)の方(ほう)にこられるのを見(み)て言(い)った、「見(み)よ、世(よ)の罪(つみ)を取(と)り除(のぞ)く神(かみ)の小羊(こひつじ)。 30『わたしのあとに来(く)るかたは、わたしよりもすぐれたかたである。わたしよりも先(さき)におられたからである』とわたしが言(い)ったのは、この人(ひと)のことである。 31わたしはこのかたを知(し)らなかった。しかし、このかたがイスラエルに現(あらわ)れてくださるそのことのために、わたしはきて、水(みず)でバプテスマを授(さづ)けているのである」。 32ヨハネはまたあかしをして言(い)った、「わたしは、御霊(みたま)がはとのように天(てん)から下(くだ)って、彼(かれ)の上(うえ)にとどまるのを見(み)た。 33わたしはこの人(ひと)を知(し)らなかった。しかし、水(みず)でバプテスマを授(さづ)けるようにと、わたしをおつかわしになったそのかたが、わたしに言(い)われた、『ある人(ひと)の上(うえ)に、御霊(みたま)が下(くだ)ってとどまるのを見(み)たら、その人(ひと)こそは、御霊(みたま)によってバプテスマを授(さづ)けるかたである』。 34わたしはそれを見(み)たので、このかたこそ神(かみ)の子(こ)であると、あかしをしたのである」。

35その翌日(よくじつ)、ヨハネはまたふたりの弟子(でし)たちと一緒(いっしょ)に立(た)っていたが、 36イエスが歩(ある)いておられるのに目(め)をとめて言(い)った、「見(み)よ、神(かみ)の小羊(こひつじ)」。 37そのふたりの弟子(でし)は、ヨハネがそう言(い)うのを聞(き)いて、イエスについて行(い)った。 38イエスはふり向(む)き、彼(かれ)らがついてくるのを見(み)て言(い)われた、「何(なに)か願(ねが)いがあるのか」。彼(かれ)らは言(い)った、「ラビ(訳(やく)して言(い)えば、先生(せんせい))どこにおとまりなのですか」。 39イエスは彼(かれ)らに言(い)われた、「きてごらんなさい。そうしたらわかるだろう」。そこで彼(かれ)らはついて行(い)って、イエスの泊(と)まっておられる所(ところ)を見(み)た。そして、その日(ひ)はイエスのところに泊(と)まった。時(とき)は午後(ごご)四時(じ)ごろであった。 40ヨハネから聞(き)いて、イエスについて行(い)ったふたりのうちのひとりは、シモン・ペテロの兄弟(きょうだい)アンデレであった。 41彼(かれ)はまず自分(じぶん)の兄弟(きょうだい)シモンに出会(であ)って言(い)った、「わたしたちはメシヤ(訳(やく)せば、キリスト)にいま出会(であ)った」。 42そしてシモンをイエスのもとにつれてきた。イエスは彼(かれ)に目(め)をとめて言(い)われた、「あなたはヨハネの子(こ)シモンである。あなたをケパ(訳(やく)せば、ペテロ)と呼(よ)ぶことにする」。

43その翌日(よくじつ)、イエスはガリラヤに行(い)こうとされたが、ピリポに出会(であ)って言(い)われた、「わたしに従(したが)ってきなさい」。 44ピリポは、アンデレとペテロとの町(まち)ベツサイダの人(ひと)であった。 45このピリポがナタナエルに出会(であ)って言(い)った、「わたしたちは、モーセが律法(りっぽう)の中(なか)にしるしており、預言者(よげんしゃ)たちがしるしていた人(ひと)、ヨセフの子(こ)、ナザレのイエスにいま出会(であ)った」。 46ナタナエルは彼(かれ)に言(い)った、「ナザレから、なんのよいものが出(で)ようか」。ピリポは彼(かれ)に言(い)った、「きて見(み)なさい」。 47イエスはナタナエルが自分(じぶん)の方(ほう)に来(く)るのを見(み)て、彼(かれ)について言(い)われた、「見(み)よ、あの人(ひと)こそ、ほんとうのイスラエル人(びと)である。その心(こころ)には偽(いつわ)りがない」。 48ナタナエルは言(い)った、「どうしてわたしをご存(ぞん)じなのですか」。イエスは答(こた)えて言(い)われた、「ピリポがあなたを呼(よ)ぶ前(まえ)に、わたしはあなたが、いちじくの木(き)の下(した)にいるのを見(み)た」。 49ナタナエルは答(こた)えた、「先生(せんせい)、あなたは神(かみ)の子(こ)です。あなたはイスラエルの王(おう)です」。 50イエスは答(こた)えて言(い)われた、「あなたが、いちじくの木(き)の下(した)にいるのを見(み)たと、わたしが言(い)ったので信(しん)じるのか。これよりも、もっと大(おお)きなことを、あなたは見(み)るであろう」。 51また言(い)われた、「よくよくあなたがたに言(い)っておく。天(てん)が開(あ)けて、神(かみ)の御使(みつかい)たちが人(ひと)の子(こ)の上(うえ)に上(のぼ)り下(くだ)りするのを、あなたがたは見(み)るであろう」。

第二章

1三日(か)目(め)にガリラヤのカナに婚礼(こんれい)があって、イエスの母(はは)がそこにいた。 2イエスも弟子(でし)たちも、その婚礼(こんれい)に招(まね)かれた。 3ぶどう酒(しゅ)がなくなったので、母(はは)はイエスに言(い)った、「ぶどう酒(しゅ)がなくなってしまいました」。 4イエスは母(はは)に言(い)われた、「婦人(ふじん)よ、あなたは、わたしと、なんの係(かか)わりがありますか。わたしの時(とき)は、まだきていません」。 5母(はは)は僕(しもべ)たちに言(い)った、「このかたが、あなたがたに言(い)いつけることは、なんでもして下(くだ)さい」。 6そこには、ユダヤ人(じん)のきよめのならわしに従(したが)って、それぞれ四、五斗(と)もはいる石(いし)の水(みず)がめが、六つ置(お)いてあった。 7イエスは彼(かれ)らに「かめに水(みず)をいっぱい入(い)れなさい」と言(い)われたので、彼(かれ)らは口(くち)のところまでいっぱいに入(い)れた。 8そこで彼(かれ)らに言(い)われた、「さあ、くんで、料理(りょうり)がしらのところに持(も)って行(い)きなさい」。すると、彼(かれ)らは持(も)って行(い)った。 9料理(りょうり)がしらは、ぶどう酒(しゅ)になった水(みず)をなめてみたが、それがどこからきたのか知(し)らなかったので、(水(みず)をくんだ僕(しもべ)たちは知(し)っていた)花婿(はなむこ)を呼(よ)んで 10言(い)った、「どんな人(ひと)でも、初(はじ)めによいぶどう酒(しゅ)を出(だ)して、酔(よ)いがまわったころにわるいのを出(だ)すものだ。それだのに、あなたはよいぶどう酒(しゅ)を今(いま)までとっておかれました」。 11イエスは、この最初(さいしょ)のしるしをガリラヤのカナで行(おこな)い、その栄光(えいこう)を現(あらわ)された。そして弟子(でし)たちはイエスを信(しん)じた。

12そののち、イエスは、その母(はは)、兄弟(きょうだい)たち、弟子(でし)たちと一緒(いっしょ)に、カペナウムに下(くだ)って、幾日(いくにち)かそこにとどまられた。

13さて、ユダヤ人(じん)の過越(すぎこし)の祭(まつり)が近(ちか)づいたので、イエスはエルサレムに上(のぼ)られた。 14そして牛(うし)、羊(ひつじ)、はとを売(う)る者(もの)や両替(りょうがえ)する者(もの)などが宮(みや)の庭(にわ)にすわり込(こ)んでいるのをごらんになって、 15なわでむちを造(つく)り、羊(ひつじ)も牛(うし)もみな宮(みや)から追(お)いだし、両替人(りょうがえにん)の金(かね)を散(ち)らし、その台(だい)をひっくりかえし、 16はとを売(う)る人々(ひとびと)には「これらのものを持(も)って、ここから出(で)て行(い)け。わたしの父(ちち)の家(いえ)を商売(しょうばい)の家(いえ)とするな」と言(い)われた。 17弟子(でし)たちは、「あなたの家(いえ)を思(おも)う熱心(ねっしん)が、わたしを食(く)いつくすであろう」と書(か)いてあることを思(おも)い出(だ)した。 18そこで、ユダヤ人(じん)はイエスに言(い)った、「こんなことをするからには、どんなしるしをわたしたちに見(み)せてくれますか」。 19イエスは彼(かれ)らに答(こた)えて言(い)われた、「この神殿(しんでん)をこわしたら、わたしは三日(か)のうちに、それを起(おこ)すであろう」。 20そこで、ユダヤ人(じん)たちは言(い)った、「この神殿(しんでん)を建(た)てるのには、四十六年(ねん)もかかっています。それだのに、あなたは三日(か)のうちに、それを建(た)てるのですか」。 21イエスは自分(じぶん)のからだである神殿(しんでん)のことを言(い)われたのである。 22それで、イエスが死人(しにん)の中(なか)からよみがえったとき、弟子(でし)たちはイエスがこう言(い)われたことを思(おも)い出(だ)して、聖書(せいしょ)とイエスのこの言葉(ことば)とを信(しん)じた。 23過越(すぎこし)の祭(まつり)の間(あいだ)、イエスがエルサレムに滞在(たいざい)しておられたとき、多(おお)くの人々(ひとびと)は、その行(おこな)われたしるしを見(み)て、イエスの名(な)を信(しん)じた。 24しかしイエスご自身(じしん)は、彼(かれ)らに自分(じぶん)をお任(まか)せにならなかった。それは、すべての人(ひと)を知(し)っておられ、 25また人(ひと)についてあかしする者(もの)を、必要(ひつよう)とされなかったからである。それは、ご自身(じしん)人(ひと)の心(こころ)の中(なか)にあることを知(し)っておられたからである。

第三章

1パリサイ人(びと)のひとりで、その名(な)をニコデモというユダヤ人(じん)の指導者(しどうしゃ)があった。 2この人(ひと)が夜(よる)イエスのもとにきて言(い)った、「先生(せんせい)、わたしたちはあなたが神(かみ)からこられた教師(きょうし)であることを知(し)っています。神(かみ)がご一緒(いっしょ)でないなら、あなたがなさっておられるようなしるしは、だれにもできはしません」。 3イエスは答(こた)えて言(い)われた、「よくよくあなたに言(い)っておく。だれでも新(あたら)しく生(うま)れなければ、神(かみ)の国(くに)を見(み)ることはできない」。 4ニコデモは言(い)った、「人(ひと)は年(とし)をとってから生(うま)れることが、どうしてできますか。もう一度(いちど)、母(はは)の胎(たい)にはいって生(うま)れることができましょうか」。 5イエスは答(こた)えられた、「よくよくあなたに言(い)っておく。だれでも、水(みず)と霊(れい)とから生(うま)れなければ、神(かみ)の国(くに)にはいることはできない。 6肉(にく)から生(うま)れる者(もの)は肉(にく)であり、霊(れい)から生(うま)れる者(もの)は霊(れい)である。 7あなたがたは新(あたら)しく生(うま)れなければならないと、わたしが言(い)ったからとて、不思議(ふしぎ)に思(おも)うには及(およ)ばない。 8風(かぜ)は思(おも)いのままに吹(ふ)く。あなたはその音(おと)を聞(き)くが、それがどこからきて、どこへ行(い)くかは知(し)らない。霊(れい)から生(うま)れる者(もの)もみな、それと同(おな)じである」。 9ニコデモはイエスに答(こた)えて言(い)った、「どうして、そんなことがあり得(え)ましょうか」。 10イエスは彼(かれ)に答(こた)えて言(い)われた、「あなたはイスラエルの教師(きょうし)でありながら、これぐらいのことがわからないのか。 11よくよく言(い)っておく。わたしたちは自分(じぶん)の知(し)っていることを語(かた)り、また自分(じぶん)の見(み)たことをあかししているのに、あなたがたはわたしたちのあかしを受(う)けいれない。 12わたしが地上(ちじょう)のことを語(かた)っているのに、あなたがたが信(しん)じないならば、天上(てんじょう)のことを語(かた)った場合(ばあい)、どうしてそれを信(しん)じるだろうか。 13天(てん)から下(くだ)ってきた者(もの)、すなわち人(ひと)の子(こ)のほかには、だれも天(てん)に上(のぼ)った者(もの)はない。 14そして、ちょうどモーセが荒野(あらの)でへびを上(あ)げたように、人(ひと)の子(こ)もまた上(あ)げられなければならない。 15それは彼(かれ)を信(しん)じる者(もの)が、すべて永遠(えいえん)の命(いのち)を得(え)るためである」。

16神(かみ)はそのひとり子(こ)を賜(たま)わったほどに、この世(よ)を愛(あい)して下(くだ)さった。それは御子(みこ)を信(しん)じる者(もの)がひとりも滅(ほろ)びないで、永遠(えいえん)の命(いのち)を得(え)るためである。 17神(かみ)が御子(みこ)を世(よ)につかわされたのは、世(よ)をさばくためではなく、御子(みこ)によって、この世(よ)が救(すく)われるためである。 18彼(かれ)を信(しん)じる者(もの)は、さばかれない。信(しん)じない者(もの)は、すでにさばかれている。神(かみ)のひとり子(こ)の名(な)を信(しん)じることをしないからである。 19そのさばきというのは、光(ひかり)がこの世(よ)にきたのに、人々(ひとびと)はそのおこないが悪(わる)いために、光(ひかり)よりもやみの方(ほう)を愛(あい)したことである。 20悪(あく)を行(おこな)っている者(もの)はみな光(ひかり)を憎(にく)む。そして、そのおこないが明(あか)るみに出(だ)されるのを恐(おそ)れて、光(ひかり)にこようとはしない。 21しかし、真理(しんり)を行(おこな)っている者(もの)は光(ひかり)に来(く)る。その人(ひと)のおこないの、神(かみ)にあってなされたということが、明(あき)らかにされるためである。

22こののち、イエスは弟子(でし)たちとユダヤの地(ち)に行(い)き、彼(かれ)らと一緒(いっしょ)にそこに滞在(たいざい)して、バプテスマを授(さづ)けておられた。 23ヨハネもサリムに近(ちか)いアイノンで、バプテスマを授(さづ)けていた。そこには水(みず)がたくさんあったからである。人々(ひとびと)がぞくぞくとやってきてバプテスマを受(う)けていた。 24そのとき、ヨハネはまだ獄(ごく)に入(い)れられてはいなかった。 25ところが、ヨハネの弟子(でし)たちとひとりのユダヤ人(じん)との間(あいだ)に、きよめのことで争論(そうろん)が起(おこ)った。 26そこで彼(かれ)らはヨハネのところにきて言(い)った、「先生(せんせい)、ごらん下(くだ)さい。ヨルダンの向(む)こうであなたと一緒(いっしょ)にいたことがあり、そして、あなたがあかしをしておられたあのかたが、バプテスマを授(さづ)けており、皆(みな)の者(もの)が、そのかたのところへ出(で)かけています」。 27ヨハネは答(こた)えて言(い)った、「人(ひと)は天(てん)から与(あた)えられなければ、何(なに)ものも受(う)けることはできない。 28『わたしはキリストではなく、そのかたよりも先(さき)につかわされた者(もの)である』と言(い)ったことをあかししてくれるのは、あなたがた自身(じしん)である。 29花嫁(はなよめ)をもつ者(もの)は花婿(はなむこ)である。花婿(はなむこ)の友人(ゆうじん)は立(た)って彼(かれ)の声(こえ)を聞(き)き、その声(こえ)を聞(き)いて大(おお)いに喜(よろこ)ぶ。こうして、この喜(よろこ)びはわたしに満(み)ち足(た)りている。 30彼(かれ)は必(かなら)ず栄(さか)え、わたしは衰(おとろ)える。

31上(うえ)から来(く)る者(もの)は、すべてのものの上(うえ)にある。地(ち)から出(で)る者(もの)は、地(ち)に属(ぞく)する者(もの)であって、地(ち)のことを語(かた)る。天(てん)から来(く)る者(もの)は、すべてのものの上(うえ)にある。 32彼(かれ)はその見(み)たところ、聞(き)いたところをあかししているが、だれもそのあかしを受(う)けいれない。 33しかし、そのあかしを受(う)けいれる者(もの)は、神(かみ)がまことであることを、たしかに認(みと)めたのである。 34神(かみ)がおつかわしになったかたは、神(かみ)の言葉(ことば)を語(かた)る。神(かみ)は聖霊(せいれい)を限(かぎ)りなく賜(たま)うからである。 35父(ちち)は御子(みこ)を愛(あい)して、万物(ばんぶつ)をその手(て)にお与(あた)えになった。 36御子(みこ)を信(しん)じる者(もの)は永遠(えいえん)の命(いのち)をもつ。御子(みこ)に従(したが)わない者(もの)は、命(いのち)にあずかることがないばかりか、神(かみ)の怒(いか)りがその上(うえ)にとどまるのである」。

第四章

1イエスが、ヨハネよりも多(おお)く弟子(でし)をつくり、またバプテスマを授(さづ)けておられるということを、パリサイ人(びと)たちが聞(き)き、それを主(しゅ)が知(し)られたとき、 2(しかし、イエスみずからが、バプテスマをお授(さづ)けになったのではなく、その弟子(でし)たちであった) 3ユダヤを去(さ)って、またガリラヤへ行(い)かれた。 4しかし、イエスはサマリヤを通過(つうか)しなければならなかった。 5そこで、イエスはサマリヤのスカルという町(まち)においでになった。この町(まち)は、ヤコブがその子(こ)ヨセフに与(あた)えた土地(とち)の近(ちか)くにあったが、 6そこにヤコブの井戸(いど)があった。イエスは旅(たび)の疲(つか)れを覚(おぼ)えて、そのまま、この井戸(いど)のそばにすわっておられた。時(とき)は昼(ひる)の十二時(じ)ごろであった。 7ひとりのサマリヤの女(おんな)が水(みず)をくみにきたので、イエスはこの女(おんな)に、「水(みず)を飲(の)ませて下(くだ)さい」と言(い)われた。 8弟子(でし)たちは食物(しょくもつ)を買(か)いに町(まち)に行(い)っていたのである。 9すると、サマリヤの女(おんな)はイエスに言(い)った、「あなたはユダヤ人(じん)でありながら、どうしてサマリヤの女(おんな)のわたしに、飲(の)ませてくれとおっしゃるのですか」。これは、ユダヤ人(じん)はサマリヤ人(びと)と交際(こうさい)していなかったからである。 10イエスは答(こた)えて言(い)われた、「もしあなたが神(かみ)の賜物(たまもの)のことを知(し)り、また、『水(みず)を飲(の)ませてくれ』と言(い)った者(もの)が、だれであるか知(し)っていたならば、あなたの方(ほう)から願(ねが)い出(で)て、その人(ひと)から生(い)ける水(みず)をもらったことであろう」。 11女(おんな)はイエスに言(い)った、「主(しゅ)よ、あなたは、くむ物(もの)をお持(も)ちにならず、その上(うえ)、井戸(いど)は深(ふか)いのです。その生(い)ける水(みず)を、どこから手(て)に入(い)れるのですか。 12あなたは、この井戸(いど)を下(くだ)さったわたしたちの父(ちち)ヤコブよりも、偉(えら)いかたなのですか。ヤコブ自身(じしん)も飲(の)み、その子(こ)らも、その家畜(かちく)も、この井戸(いど)から飲(の)んだのですが」。 13イエスは女(おんな)に答(こた)えて言(い)われた、「この水(みず)を飲(の)む者(もの)はだれでも、またかわくであろう。 14しかし、わたしが与(あた)える水(みず)を飲(の)む者(もの)は、いつまでも、かわくことがないばかりか、わたしが与(あた)える水(みず)は、その人(ひと)のうちで泉(いずみ)となり、永遠(えいえん)の命(いのち)に至(いた)る水(みず)が、わきあがるであろう」。 15女(おんな)はイエスに言(い)った、「主(しゅ)よ、わたしがかわくことがなく、また、ここにくみにこなくてもよいように、その水(みず)をわたしに下(くだ)さい」。 16イエスは女(おんな)に言(い)われた、「あなたの夫(おっと)を呼(よ)びに行(い)って、ここに連(つ)れてきなさい」。 17女(おんな)は答(こた)えて言(い)った、「わたしには夫(おっと)はありません」。イエスは女(おんな)に言(い)われた、「夫(おっと)がないと言(い)ったのは、もっともだ。 18あなたには五人(にん)の夫(おっと)があったが、今(いま)のはあなたの夫(おっと)ではない。あなたの言葉(ことば)のとおりである」。 19女(おんな)はイエスに言(い)った、「主(しゅ)よ、わたしはあなたを預言者(よげんしゃ)と見(み)ます。 20わたしたちの先祖(せんぞ)は、この山(やま)で礼拝(れいはい)をしたのですが、あなたがたは礼拝(れいはい)すべき場所(ばしょ)は、エルサレムにあると言(い)っています」。 21イエスは女(おんな)に言(い)われた、「女(おんな)よ、わたしの言(い)うことを信(しん)じなさい。あなたがたが、この山(やま)でも、またエルサレムでもない所(ところ)で、父(ちち)を礼拝(れいはい)する時(とき)が来(く)る。 22あなたがたは自分(じぶん)の知(し)らないものを拝(おが)んでいるが、わたしたちは知(し)っているかたを礼拝(れいはい)している。救(すくい)はユダヤ人(じん)から来(く)るからである。 23しかし、まことの礼拝(れいはい)をする者(もの)たちが、霊(れい)とまこととをもって父(ちち)を礼拝(れいはい)する時(とき)が来(く)る。そうだ、今(いま)きている。父(ちち)は、このような礼拝(れいはい)をする者(もの)たちを求(もと)めておられるからである。 24神(かみ)は霊(れい)であるから、礼拝(れいはい)をする者(もの)も、霊(れい)とまこととをもって礼拝(れいはい)すべきである」。 25女(おんな)はイエスに言(い)った、「わたしは、キリストと呼(よ)ばれるメシヤがこられることを知(し)っています。そのかたがこられたならば、わたしたちに、いっさいのことを知(し)らせて下(くだ)さるでしょう」。 26イエスは女(おんな)に言(い)われた、「あなたと話(はなし)をしているこのわたしが、それである」。

27そのとき、弟子(でし)たちが帰(かえ)って来(き)て、イエスがひとりの女(おんな)と話(はな)しておられるのを見(み)て不思議(ふしぎ)に思(おも)ったが、しかし、「何(なに)を求(もと)めておられますか」とも、「何(なに)を彼女(かのじょ)と話(はな)しておられるのですか」とも、尋(たず)ねる者(もの)はひとりもなかった。 28この女(おんな)は水(みず)がめをそのままそこに置(お)いて町(まち)に行(い)き、人々(ひとびと)に言(い)った、 29「わたしのしたことを何(なに)もかも、言(い)いあてた人(ひと)がいます。さあ、見(み)にきてごらんなさい。もしかしたら、この人(ひと)がキリストかも知(し)れません」。 30人々(ひとびと)は町(まち)を出(で)て、ぞくぞくとイエスのところへ行(い)った。 31その間(あいだ)に弟子(でし)たちはイエスに、「先生(せんせい)、召(め)しあがってください」とすすめた。 32ところが、イエスは言(い)われた、「わたしには、あなたがたの知(し)らない食物(しょくもつ)がある」。 33そこで、弟子(でし)たちが互(たがい)に言(い)った、「だれかが、何(なに)か食(た)べるものを持(も)ってきてさしあげたのであろうか」。 34イエスは彼(かれ)らに言(い)われた、「わたしの食物(しょくもつ)というのは、わたしをつかわされたかたのみこころを行(おこな)い、そのみわざをなし遂(と)げることである。 35あなたがたは、刈入(かりい)れ時(とき)が来(く)るまでには、まだ四か月(げつ)あると、言(い)っているではないか。しかし、わたしはあなたがたに言(い)う。目(め)をあげて畑(はたけ)を見(み)なさい。はや色(いろ)づいて刈入(かりい)れを待(ま)っている。 36刈(か)る者(もの)は報酬(ほうしゅう)を受(う)けて、永遠(えいえん)の命(いのち)に至(いた)る実(み)を集(あつ)めている。まく者(もの)も刈(か)る者(もの)も、共々(ともども)に喜(よろこ)ぶためである。 37そこで、『ひとりがまき、ひとりが刈(か)る』ということわざが、ほんとうのこととなる。 38わたしは、あなたがたをつかわして、あなたがたがそのために労苦(ろうく)しなかったものを刈(か)りとらせた。ほかの人々(ひとびと)が労苦(ろうく)し、あなたがたは、彼(かれ)らの労苦(ろうく)の実(み)にあずかっているのである」。

39さて、この町(まち)からきた多(おお)くのサマリヤ人(ひと)は、「この人(ひと)は、わたしのしたことを何(なに)もかも言(い)いあてた」とあかしした女(おんな)の言葉(ことば)によって、イエスを信(しん)じた。 40そこで、サマリヤ人(ひと)たちはイエスのもとにきて、自分(じぶん)たちのところに滞在(たいざい)していただきたいと願(ねが)ったので、イエスはそこにふつか滞在(たいざい)された。 41そしてなお多(おお)くの人々(ひとびと)が、イエスの言葉(ことば)を聞(き)いて信(しん)じた。 42彼(かれ)らは女(おんな)に言(い)った、「わたしたちが信(しん)じるのは、もうあなたが話(はな)してくれたからではない。自分(じぶん)自身(じしん)で親(した)しく聞(き)いて、この人(ひと)こそまことに世(よ)の救主(すくいぬし)であることが、わかったからである」。

43ふつかの後(のち)に、イエスはここを去(さ)ってガリラヤへ行(い)かれた。 44イエスはみずからはっきり、「預言者(よげんしゃ)は自分(じぶん)の故郷(こきょう)では敬(うやま)われないものだ」と言(い)われたのである。 45ガリラヤに着(つ)かれると、ガリラヤの人(ひと)たちはイエスを歓迎(かんげい)した。それは、彼(かれ)らも祭(まつり)に行(い)っていたので、その祭(まつり)の時(とき)、イエスがエルサレムでなされたことをことごとく見(み)ていたからである。

46イエスは、またガリラヤのカナに行(い)かれた。そこは、かつて水(みず)をぶどう酒(しゅ)にかえられた所(ところ)である。ところが、病気(びょうき)をしているむすこを持(も)つある役人(やくにん)がカペナウムにいた。 47この人(ひと)が、ユダヤからガリラヤにイエスのきておられることを聞(き)き、みもとにきて、カペナウムに下(くだ)って、彼(かれ)の子(こ)をなおしていただきたいと、願(ねが)った。その子(こ)が死(し)にかかっていたからである。 48そこで、イエスは彼(かれ)に言(い)われた、「あなたがたは、しるしと奇跡(きせき)とを見(み)ない限(かぎ)り、決(けっ)して信(しん)じないだろう」。 49この役人(やくにん)はイエスに言(い)った、「主(しゅ)よ、どうぞ、子供(こども)が死(し)なないうちにきて下(くだ)さい」。 50イエスは彼(かれ)に言(い)われた、「お帰(かえ)りなさい。あなたのむすこは助(たす)かるのだ」。彼(かれ)は自分(じぶん)に言(い)われたイエスの言葉(ことば)を信(しん)じて帰(かえ)って行(い)った。 51その下(くだ)って行(い)く途中(とちゅう)、僕(しもべ)たちが彼(かれ)に出会(であ)い、その子(こ)が助(たす)かったことを告(つ)げた。 52そこで、彼(かれ)は僕(しもべ)たちに、そのなおりはじめた時刻(じこく)を尋(たず)ねてみたら、「きのうの午後(ごご)一時(じ)に熱(ねつ)が引(ひ)きました」と答(こた)えた。 53それは、イエスが「あなたのむすこは助(たす)かるのだ」と言(い)われたのと同(おな)じ時刻(じこく)であったことを、この父(ちち)は知(し)って、彼(かれ)自身(じしん)もその家族(かぞく)一同(いちどう)も信(しん)じた。 54これは、イエスがユダヤからガリラヤにきてなされた第(だい)二のしるしである。

第五章

1こののち、ユダヤ人(じん)の祭(まつり)があったので、イエスはエルサレムに上(のぼ)られた。

2エルサレムにある羊(ひつじ)の門(もん)のそばに、ヘブル語(ご)でベテスダと呼(よ)ばれる池(いけ)があった。そこには五つの廊(ろう)があった。 3その廊(ろう)の中(なか)には、病人(びょうにん)、盲人(もうじん)、足(あし)なえ、やせ衰(おとろ)えた者(もの)などが、大(おお)ぜいからだを横(よこ)たえていた。〔彼(かれ)らは水(みず)の動(うご)くのを待(ま)っていたのである。 4それは、時々(ときどき)、主(しゅ)の御使(みつかい)がこの池(いけ)に降(お)りてきて水(みず)を動(うご)かすことがあるが、水(みず)が動(うご)いた時(とき)まっ先(さき)にはいる者(もの)は、どんな病気(びょうき)にかかっていても、いやされたからである。〕 5さて、そこに三十八年(ねん)のあいだ、病気(びょうき)に悩(なや)んでいる人(ひと)があった。 6イエスはその人(ひと)が横(よこ)になっているのを見(み)、また長(なが)い間(あいだ)わずらっていたのを知(し)って、その人(ひと)に「なおりたいのか」と言(い)われた。 7この病人(びょうにん)はイエスに答(こた)えた、「主(しゅ)よ、水(みず)が動(うご)く時(とき)に、わたしを池(いけ)の中(なか)に入(い)れてくれる人(ひと)がいません。わたしがはいりかけると、ほかの人(ひと)が先(さき)に降(お)りて行(い)くのです」。 8イエスは彼(かれ)に言(い)われた、「起(お)きて、あなたの床(とこ)を取(と)りあげ、そして歩(ある)きなさい」。 9すると、この人(ひと)はすぐにいやされ、床(とこ)をとりあげて歩(ある)いて行(い)った。

その日(ひ)は安息日(あんそくにち)であった。 10そこでユダヤ人(じん)たちは、そのいやされた人(ひと)に言(い)った、「きょうは安息日(あんそくにち)だ。床(とこ)を取(と)りあげるのは、よろしくない」。 11彼(かれ)は答(こた)えた、「わたしをなおして下(くだ)さったかたが、床(とこ)を取(と)りあげて歩(ある)けと、わたしに言(い)われました」。 12彼(かれ)らは尋(たず)ねた、「取(と)りあげて歩(ある)けと言(い)った人(ひと)は、だれか」。 13しかし、このいやされた人(ひと)は、それがだれであるか知(し)らなかった。群衆(ぐんしゅう)がその場(ば)にいたので、イエスはそっと出(で)て行(い)かれたからである。 14そののち、イエスは宮(みや)でその人(ひと)に出会(であ)ったので、彼(かれ)に言(い)われた、「ごらん、あなたはよくなった。もう罪(つみ)を犯(おか)してはいけない。何(なに)かもっと悪(わる)いことが、あなたの身(み)に起(おこ)るかも知(し)れないから」。 15彼(かれ)は出(で)て行(い)って、自分(じぶん)をいやしたのはイエスであったと、ユダヤ人(じん)たちに告(つ)げた。 16そのためユダヤ人(じん)たちは、安息日(あんそくにち)にこのようなことをしたと言(い)って、イエスを責(せ)めた。 17そこで、イエスは彼(かれ)らに答(こた)えられた、「わたしの父(ちち)は今(いま)に至(いた)るまで働(はたら)いておられる。わたしも働(はたら)くのである」。 18このためにユダヤ人(じん)たちは、ますますイエスを殺(ころ)そうと計(はか)るようになった。それは、イエスが安息日(あんそくにち)を破(やぶ)られたばかりではなく、神(かみ)を自分(じぶん)の父(ちち)と呼(よ)んで、自分(じぶん)を神(かみ)と等(ひと)しいものとされたからである。

19さて、イエスは彼(かれ)らに答(こた)えて言(い)われた、「よくよくあなたがたに言(い)っておく。子(こ)は父(ちち)のなさることを見(み)てする以外(いがい)に、自分(じぶん)からは何事(なにごと)もすることができない。父(ちち)のなさることであればすべて、子(こ)もそのとおりにするのである。 20なぜなら、父(ちち)は子(こ)を愛(あい)して、みずからなさることは、すべて子(こ)にお示(しめ)しになるからである。そして、それよりもなお大(おお)きなわざを、お示(しめ)しになるであろう。あなたがたが、それによって不思議(ふしぎ)に思(おも)うためである。 21すなわち、父(ちち)が死人(しにん)を起(おこ)して命(いのち)をお与(あた)えになるように、子(こ)もまた、そのこころにかなう人々(ひとびと)に命(いのち)を与(あた)えるであろう。 22父(ちち)はだれをもさばかない。さばきのことはすべて、子(こ)にゆだねられたからである。 23それは、すべての人(ひと)が父(ちち)を敬(うやま)うと同様(どうよう)に、子(こ)を敬(うやま)うためである。子(こ)を敬(うやま)わない者(もの)は、子(こ)をつかわされた父(ちち)をも敬(うやま)わない。 24よくよくあなたがたに言(い)っておく。わたしの言葉(ことば)を聞(き)いて、わたしをつかわされたかたを信(しん)じる者(もの)は、永遠(えいえん)の命(いのち)を受(う)け、またさばかれることがなく、死(し)から命(いのち)に移(うつ)っているのである。 25よくよくあなたがたに言(い)っておく。死(し)んだ人(ひと)たちが、神(かみ)の子(こ)の声(こえ)を聞(き)く時(とき)が来(く)る。今(いま)すでにきている。そして聞(き)く人(ひと)は生(い)きるであろう。 26それは、父(ちち)がご自分(じぶん)のうちに生命(せいめい)をお持(も)ちになっていると同様(どうよう)に、子(こ)にもまた、自分(じぶん)のうちに生命(せいめい)を持(も)つことをお許(ゆる)しになったからである。 27そして子(こ)は人(ひと)の子(こ)であるから、子(こ)にさばきを行(おこな)う権威(けんい)をお与(あた)えになった。 28このことを驚(おどろ)くには及(およ)ばない。墓(はか)の中(なか)にいる者(もの)たちがみな神(かみ)の子(こ)の声(こえ)を聞(き)き、 29善(ぜん)をおこなった人々(ひとびと)は、生命(せいめい)を受(う)けるためによみがえり、悪(あく)をおこなった人々(ひとびと)は、さばきを受(う)けるためによみがえって、それぞれ出(で)てくる時(とき)が来(く)るであろう。

30わたしは、自分(じぶん)からは何事(なにごと)もすることができない。ただ聞(き)くままにさばくのである。そして、わたしのこのさばきは正(ただ)しい。それは、わたし自身(じしん)の考(かんが)えでするのではなく、わたしをつかわされたかたの、み旨(むね)を求(もと)めているからである。 31もし、わたしが自分(じぶん)自身(じしん)についてあかしをするならば、わたしのあかしはほんとうではない。 32わたしについてあかしをするかたはほかにあり、そして、その人(ひと)がするあかしがほんとうであることを、わたしは知(し)っている。 33あなたがたはヨハネのもとへ人(ひと)をつかわしたが、そのとき彼(かれ)は真理(しんり)についてあかしをした。 34わたしは人(ひと)からあかしを受(う)けないが、このことを言(い)うのは、あなたがたが救(すく)われるためである。 35ヨハネは燃(も)えて輝(かがや)くあかりであった。あなたがたは、しばらくの間(あいだ)その光(ひかり)を喜(よろこ)び楽(たの)しもうとした。 36しかし、わたしには、ヨハネのあかしよりも、もっと力(ちから)あるあかしがある。父(ちち)がわたしに成就(じょうじゅ)させようとしてお与(あた)えになったわざ、すなわち、今(いま)わたしがしているこのわざが、父(ちち)のわたしをつかわされたことをあかししている。 37また、わたしをつかわされた父(ちち)も、ご自分(じぶん)でわたしについてあかしをされた。あなたがたは、まだそのみ声(こえ)を聞(き)いたこともなく、そのみ姿(すがた)を見(み)たこともない。 38また、神(かみ)がつかわされた者(もの)を信(しん)じないから、神(かみ)の御言(みことば)はあなたがたのうちにとどまっていない。 39あなたがたは、聖書(せいしょ)の中(なか)に永遠(えいえん)の命(いのち)があると思(おも)って調(しら)べているが、この聖書(せいしょ)は、わたしについてあかしをするものである。 40しかも、あなたがたは、命(いのち)を得(え)るためにわたしのもとにこようともしない。 41わたしは人(ひと)からの誉(ほまれ)を受(う)けることはしない。 42しかし、あなたがたのうちには神(かみ)を愛(あい)する愛(あい)がないことを知(し)っている。 43わたしは父(ちち)の名(な)によってきたのに、あなたがたはわたしを受(う)けいれない。もし、ほかの人(ひと)が彼(かれ)自身(じしん)の名(な)によって来(く)るならば、その人(ひと)を受(う)けいれるのであろう。 44互(たがい)に誉(ほまれ)を受(う)けながら、ただひとりの神(かみ)からの誉(ほまれ)を求(もと)めようとしないあなたがたは、どうして信(しん)じることができようか。 45わたしがあなたがたのことを父(ちち)に訴(うった)えると、考(かんが)えてはいけない。あなたがたを訴(うった)える者(もの)は、あなたがたが頼(たの)みとしているモーセその人(ひと)である。 46もし、あなたがたがモーセを信(しん)じたならば、わたしをも信(しん)じたであろう。モーセは、わたしについて書(か)いたのである。 47しかし、モーセの書(か)いたものを信(しん)じないならば、どうしてわたしの言葉(ことば)を信(しん)じるだろうか」。

第六章

1そののち、イエスはガリラヤの海(うみ)、すなわち、テベリヤ湖(みずうみ)の向(む)こう岸(ぎし)へ渡(わた)られた。 2すると、大(おお)ぜいの群衆(ぐんしゅう)がイエスについてきた。病人(びょうにん)たちになさっていたしるしを見(み)たからである。 3イエスは山(やま)に登(のぼ)って、弟子(でし)たちと一緒(いっしょ)にそこで座(ざ)につかれた。 4時(とき)に、ユダヤ人(じん)の祭(まつり)である過越(すぎこし)が間近(まぢか)になっていた。 5イエスは目(め)をあげ、大(おお)ぜいの群衆(ぐんしゅう)が自分(じぶん)の方(ほう)に集(あつ)まって来(く)るのを見(み)て、ピリポに言(い)われた、「どこからパンを買(か)ってきて、この人々(ひとびと)に食(た)べさせようか」。 6これはピリポをためそうとして言(い)われたのであって、ご自分(じぶん)ではしようとすることを、よくご承知(しょうち)であった。 7すると、ピリポはイエスに答(こた)えた、「二百デナリのパンがあっても、めいめいが少(すこ)しずついただくにも足(た)りますまい」。 8弟子(でし)のひとり、シモン・ペテロの兄弟(きょうだい)アンデレがイエスに言(い)った、 9「ここに、大麦(おおむぎ)のパン五つと、さかな二ひきとを持(も)っている子供(こども)がいます。しかし、こんなに大(おお)ぜいの人(ひと)では、それが何(なに)になりましょう」。 10イエスは「人々(ひとびと)をすわらせなさい」と言(い)われた。その場所(ばしょ)には草(くさ)が多(おお)かった。そこにすわった男(おとこ)の数(かず)は五千人(にん)ほどであった。 11そこで、イエスはパンを取(と)り、感謝(かんしゃ)してから、すわっている人々(ひとびと)に分(わ)け与(あた)え、また、さかなをも同様(どうよう)にして、彼(かれ)らの望(のぞ)むだけ分(わ)け与(あた)えられた。 12人々(ひとびと)がじゅうぶんに食(た)べたのち、イエスは弟子(でし)たちに言(い)われた、「少(すこ)しでもむだにならないように、パンくずのあまりを集(あつ)めなさい」。 13そこで彼(かれ)らが集(あつ)めると、五つの大麦(おおむぎ)のパンを食(た)べて残(のこ)ったパンくずは、十二のかごにいっぱいになった。 14人々(ひとびと)はイエスのなさったこのしるしを見(み)て、「ほんとうに、この人(ひと)こそ世(よ)にきたるべき預言者(よげんしゃ)である」と言(い)った。

15イエスは人々(ひとびと)がきて、自分(じぶん)をとらえて王(おう)にしようとしていると知(し)って、ただひとり、また山(やま)に退(しりぞ)かれた。

16夕方(ゆうがた)になったとき、弟子(でし)たちは海(うみ)べに下(くだ)り、 17舟(ふね)に乗(の)って海(うみ)を渡(わた)り、向(む)こう岸(ぎし)のカペナウムに行(い)きかけた。すでに暗(くら)くなっていたのに、イエスはまだ彼(かれ)らのところにおいでにならなかった。 18その上(うえ)、強(つよ)い風(かぜ)が吹(ふ)いてきて、海(うみ)は荒(あ)れ出(だ)した。 19四、五十丁(ちょう)こぎ出(だ)したとき、イエスが海(うみ)の上(うえ)を歩(ある)いて舟(ふね)に近(ちか)づいてこられるのを見(み)て、彼(かれ)らは恐(おそ)れた。 20すると、イエスは彼(かれ)らに言(い)われた、「わたしだ、恐(おそ)れることはない」。 21そこで、彼(かれ)らは喜(よろこ)んでイエスを舟(ふね)に迎(むか)えようとした。すると舟(ふね)は、すぐ、彼(かれ)らが行(い)こうとしていた地(ち)に着(つ)いた。

22その翌日(よくじつ)、海(うみ)の向(む)こう岸(ぎし)に立(た)っていた群衆(ぐんしゅう)は、そこに小舟(こぶね)が一そうしかなく、またイエスは弟子(でし)たちと一緒(いっしょ)に小舟(こぶね)にお乗(の)りにならず、ただ弟子(でし)たちだけが船出(ふなで)したのを見(み)た。 23しかし、数(すう)そうの小舟(こぶね)がテベリヤからきて、主(しゅ)が感謝(かんしゃ)されたのちパンを人々(ひとびと)に食(た)べさせた場所(ばしょ)に近(ちか)づいた。 24群衆(ぐんしゅう)は、イエスも弟子(でし)たちもそこにいないと知(し)って、それらの小舟(こぶね)に乗(の)り、イエスをたずねてカペナウムに行(い)った。 25そして、海(うみ)の向(む)こう岸(ぎし)でイエスに出会(であ)ったので言(い)った、「先生(せんせい)、いつ、ここにおいでになったのですか」。 26イエスは答(こた)えて言(い)われた、「よくよくあなたがたに言(い)っておく。あなたがたがわたしを尋(たず)ねてきているのは、しるしを見(み)たためではなく、パンを食(た)べて満腹(まんぷく)したからである。 27朽(く)ちる食物(しょくもつ)のためではなく、永遠(えいえん)の命(いのち)に至(いた)る朽(く)ちない食物(しょくもつ)のために働(はたら)くがよい。これは人(ひと)の子(こ)があなたがたに与(あた)えるものである。父(ちち)なる神(かみ)は、人(ひと)の子(こ)にそれをゆだねられたのである」。 28そこで、彼(かれ)らはイエスに言(い)った、「神(かみ)のわざを行(おこな)うために、わたしたちは何(なに)をしたらよいでしょうか」。 29イエスは彼(かれ)らに答(こた)えて言(い)われた、「神(かみ)がつかわされた者(もの)を信(しん)じることが、神(かみ)のわざである」。 30彼(かれ)らはイエスに言(い)った、「わたしたちが見(み)てあなたを信(しん)じるために、どんなしるしを行(おこな)って下(くだ)さいますか。どんなことをして下(くだ)さいますか。 31わたしたちの先祖(せんぞ)は荒野(あらの)でマナを食(た)べました。それは『天(てん)よりのパンを彼(かれ)らに与(あた)えて食(た)べさせた』と書(か)いてあるとおりです」。 32そこでイエスは彼(かれ)らに言(い)われた、「よくよく言(い)っておく。天(てん)からのパンをあなたがたに与(あた)えたのは、モーセではない。天(てん)からのまことのパンをあなたがたに与(あた)えるのは、わたしの父(ちち)なのである。 33神(かみ)のパンは、天(てん)から下(くだ)ってきて、この世(よ)に命(いのち)を与(あた)えるものである」。 34彼(かれ)らはイエスに言(い)った、「主(しゅ)よ、そのパンをいつもわたしたちに下(くだ)さい」。 35イエスは彼(かれ)らに言(い)われた、「わたしが命(いのち)のパンである。わたしに来(く)る者(もの)は決(けっ)して飢(う)えることがなく、わたしを信(しん)じる者(もの)は決(けっ)してかわくことがない。 36しかし、あなたがたに言(い)ったが、あなたがたはわたしを見(み)たのに信(しん)じようとはしない。 37父(ちち)がわたしに与(あた)えて下(くだ)さる者(もの)は皆(みな)、わたしに来(く)るであろう。そして、わたしに来(く)る者(もの)を決(けっ)して拒(こば)みはしない。 38わたしが天(てん)から下(くだ)ってきたのは、自分(じぶん)のこころのままを行(おこな)うためではなく、わたしをつかわされたかたのみこころを行(おこな)うためである。 39わたしをつかわされたかたのみこころは、わたしに与(あた)えて下(くだ)さった者(もの)を、わたしがひとりも失(うしな)わずに、終(おわ)りの日(ひ)によみがえらせることである。 40わたしの父(ちち)のみこころは、子(こ)を見(み)て信(しん)じる者(もの)が、ことごとく永遠(えいえん)の命(いのち)を得(え)ることなのである。そして、わたしはその人々(ひとびと)を終(おわ)りの日(ひ)によみがえらせるであろう」。

41ユダヤ人(じん)らは、イエスが「わたしは天(てん)から下(くだ)ってきたパンである」と言(い)われたので、イエスについてつぶやき始(はじ)めた。 42そして言(い)った、「これはヨセフの子(こ)イエスではないか。わたしたちはその父母(ふぼ)を知(し)っているではないか。わたしは天(てん)から下(くだ)ってきたと、どうして今(いま)いうのか」。 43イエスは彼(かれ)らに答(こた)えて言(い)われた、「互(たがい)につぶやいてはいけない。 44わたしをつかわされた父(ちち)が引(ひ)きよせて下(くだ)さらなければ、だれもわたしに来(く)ることはできない。わたしは、その人々(ひとびと)を終(おわ)りの日(ひ)によみがえらせるであろう。 45預言者(よげんしゃ)の書(しょ)に、『彼(かれ)らはみな神(かみ)に教(おし)えられるであろう』と書(か)いてある。父(ちち)から聞(き)いて学(まな)んだ者(もの)は、みなわたしに来(く)るのである。 46神(かみ)から出(で)た者(もの)のほかに、だれかが父(ちち)を見(み)たのではない。その者(もの)だけが父(ちち)を見(み)たのである。 47よくよくあなたがたに言(い)っておく。信(しん)じる者(もの)には永遠(えいえん)の命(いのち)がある。 48わたしは命(いのち)のパンである。 49あなたがたの先祖(せんぞ)は荒野(あらの)でマナを食(た)べたが、死(し)んでしまった。 50しかし、天(てん)から下(くだ)ってきたパンを食(た)べる人(ひと)は、決(けっ)して死(し)ぬことはない。 51わたしは天(てん)から下(くだ)ってきた生(い)きたパンである。それを食(た)べる者(もの)は、いつまでも生(い)きるであろう。わたしが与(あた)えるパンは、世(よ)の命(いのち)のために与(あた)えるわたしの肉(にく)である」。

52そこで、ユダヤ人(じん)らが互(たがい)に論(ろん)じて言(い)った、「この人(ひと)はどうして、自分(じぶん)の肉(にく)をわたしたちに与(あた)えて食(た)べさせることができようか」。 53イエスは彼(かれ)らに言(い)われた、「よくよく言(い)っておく。人(ひと)の子(こ)の肉(にく)を食(た)べず、また、その血(ち)を飲(の)まなければ、あなたがたの内(うち)に命(いのち)はない。 54わたしの肉(にく)を食(た)べ、わたしの血(ち)を飲(の)む者(もの)には、永遠(えいえん)の命(いのち)があり、わたしはその人(ひと)を終(おわ)りの日(ひ)によみがえらせるであろう。 55わたしの肉(にく)はまことの食物(しょくもつ)、わたしの血(ち)はまことの飲(の)み物(もの)である。 56わたしの肉(にく)を食(た)べ、わたしの血(ち)を飲(の)む者(もの)はわたしにおり、わたしもまたその人(ひと)におる。 57生(い)ける父(ちち)がわたしをつかわされ、また、わたしが父(ちち)によって生(い)きているように、わたしを食(た)べる者(もの)もわたしによって生(い)きるであろう。 58天(てん)から下(くだ)ってきたパンは、先祖(せんぞ)たちが食(た)べたが死(し)んでしまったようなものではない。このパンを食(た)べる者(もの)は、いつまでも生(い)きるであろう」。 59これらのことは、イエスがカペナウムの会堂(かいどう)で教(おし)えておられたときに言(い)われたものである。

60弟子(でし)たちのうちの多(おお)くの者(もの)は、これを聞(き)いて言(い)った、「これは、ひどい言葉(ことば)だ。だれがそんなことを聞(き)いておられようか」。 61しかしイエスは、弟子(でし)たちがそのことでつぶやいているのを見破(みやぶ)って、彼(かれ)らに言(い)われた、「このことがあなたがたのつまずきになるのか。 62それでは、もし人(ひと)の子(こ)が前(まえ)にいた所(ところ)に上(のぼ)るのを見(み)たら、どうなるのか。 63人(ひと)を生(い)かすものは霊(れい)であって、肉(にく)はなんの役(やく)にも立(た)たない。わたしがあなたがたに話(はな)した言葉(ことば)は霊(れい)であり、また命(いのち)である。 64しかし、あなたがたの中(なか)には信(しん)じない者(もの)がいる」。イエスは、初(はじ)めから、だれが信(しん)じないか、また、だれが彼(かれ)を裏切(うらぎ)るかを知(し)っておられたのである。 65そしてイエスは言(い)われた、「それだから、父(ちち)が与(あた)えて下(くだ)さった者(もの)でなければ、わたしに来(く)ることはできないと、言(い)ったのである」。

66それ以来(いらい)、多(おお)くの弟子(でし)たちは去(さ)っていって、もはやイエスと行動(こうどう)を共(とも)にしなかった。 67そこでイエスは十二弟子(でし)に言(い)われた、「あなたがたも去(さ)ろうとするのか」。 68シモン・ペテロが答(こた)えた、「主(しゅ)よ、わたしたちは、だれのところに行(い)きましょう。永遠(えいえん)の命(いのち)の言(ことば)をもっているのはあなたです。 69わたしたちは、あなたが神(かみ)の聖者(せいじゃ)であることを信(しん)じ、また知(し)っています」。 70イエスは彼(かれ)らに答(こた)えられた、「あなたがた十二人(にん)を選(えら)んだのは、わたしではなかったか。それだのに、あなたがたのうちのひとりは悪魔(あくま)である」。 71これは、イスカリオテのシモンの子(こ)ユダをさして言(い)われたのである。このユダは、十二弟子(でし)のひとりでありながら、イエスを裏切(うらぎ)ろうとしていた。

第七章

1そののち、イエスはガリラヤを巡回(じゅんかい)しておられた。ユダヤ人(じん)たちが自分(じぶん)を殺(ころ)そうとしていたので、ユダヤを巡回(じゅんかい)しようとはされなかった。 2時(とき)に、ユダヤ人(じん)の仮庵(かりいお)の祭(まつり)が近(ちか)づいていた。 3そこで、イエスの兄弟(きょうだい)たちがイエスに言(い)った、「あなたがしておられるわざを弟子(でし)たちにも見(み)せるために、ここを去(さ)りユダヤに行(い)ってはいかがです。 4自分(じぶん)を公(おおやけ)けにあらわそうと思(おも)っている人(ひと)で、隠(かく)れて仕事(しごと)をするものはありません。あなたがこれらのことをするからには、自分(じぶん)をはっきりと世(よ)にあらわしなさい」。 5こう言(い)ったのは、兄弟(きょうだい)たちもイエスを信(しん)じていなかったからである。 6そこでイエスは彼(かれ)らに言(い)われた、「わたしの時(とき)はまだきていない。しかし、あなたがたの時(とき)はいつも備(そな)わっている。 7世(よ)はあなたがたを憎(にく)み得(え)ないが、わたしを憎(にく)んでいる。わたしが世(よ)のおこないの悪(わる)いことを、あかししているからである。 8あなたがたこそ祭(まつり)に行(い)きなさい。わたしはこの祭(まつり)には行(い)かない。わたしの時(とき)はまだ満(み)ちていないから」。 9彼(かれ)らにこう言(い)って、イエスはガリラヤにとどまっておられた。

10しかし、兄弟(きょうだい)たちが祭(まつり)に行(い)ったあとで、イエスも人目(ひとめ)にたたぬように、ひそかに行(い)かれた。 11ユダヤ人(じん)らは祭(まつり)の時(とき)に、「あの人(ひと)はどこにいるのか」と言(い)って、イエスを捜(さが)していた。 12群衆(ぐんしゅう)の中(なか)に、イエスについていろいろとうわさが立(た)った。ある人々(ひとびと)は、「あれはよい人(ひと)だ」と言(い)い、他(た)の人々(ひとびと)は、「いや、あれは群衆(ぐんしゅう)を惑(まど)わしている」と言(い)った。 13しかし、ユダヤ人(じん)らを恐(おそ)れて、イエスのことを公然(こうぜん)と口(くち)にする者(もの)はいなかった。

14祭(まつり)も半(なか)ばになってから、イエスは宮(みや)に上(のぼ)って教(おし)え始(はじ)められた。 15すると、ユダヤ人(じん)たちは驚(おどろ)いて言(い)った、「この人(ひと)は学問(がくもん)をしたこともないのに、どうして律法(りっぽう)の知識(ちしき)をもっているのだろう」。 16そこでイエスは彼(かれ)らに答(こた)えて言(い)われた、「わたしの教(おしえ)はわたし自身(じしん)の教(おしえ)ではなく、わたしをつかわされたかたの教(おしえ)である。 17神(かみ)のみこころを行(おこな)おうと思(おも)う者(もの)であれば、だれでも、わたしの語(かた)っているこの教(おしえ)が神(かみ)からのものか、それとも、わたし自身(じしん)から出(で)たものか、わかるであろう。 18自分(じぶん)から出(で)たことを語(かた)る者(もの)は、自分(じぶん)の栄光(えいこう)を求(もと)めるが、自分(じぶん)をつかわされたかたの栄光(えいこう)を求(もと)める者(もの)は真実(しんじつ)であって、その人(ひと)の内(うち)には偽(いつわ)りがない。 19モーセはあなたがたに律法(りっぽう)を与(あた)えたではないか。それだのに、あなたがたのうちには、その律法(りっぽう)を行(おこな)う者(もの)がひとりもない。あなたがたは、なぜわたしを殺(ころ)そうと思(おも)っているのか」。 20群衆(ぐんしゅう)は答(こた)えた、「あなたは悪霊(あくれい)に取(と)りつかれている。だれがあなたを殺(ころ)そうと思(おも)っているものか」。 21イエスは彼(かれ)らに答(こた)えて言(い)われた、「わたしが一つのわざをしたところ、あなたがたは皆(みな)それを見(み)て驚(おどろ)いている。 22モーセはあなたがたに割礼(かつれい)を命(めい)じたので、(これは、実(じつ)は、モーセから始(はじ)まったのではなく、先祖(せんぞ)たちから始(はじ)まったものである)あなたがたは安息日(あんそくにち)にも人(ひと)に割礼(かつれい)を施(ほどこ)している。 23もし、モーセの律法(りっぽう)が破(やぶ)られないように、安息日(あんそくにち)であっても割礼(かつれい)を受(う)けるのなら、安息日(あんそくにち)に人(ひと)の全身(ぜんしん)を丈夫(じょうぶ)にしてやったからといって、どうして、そんなにおこるのか。 24うわべで人(ひと)をさばかないで、正(ただ)しいさばきをするがよい」。

25さて、エルサレムのある人(ひと)たちが言(い)った、「この人(ひと)は人々(ひとびと)が殺(ころ)そうと思(おも)っている者(もの)ではないか。 26見(み)よ、彼(かれ)は公然(こうぜん)と語(かた)っているのに、人々(ひとびと)はこれに対(たい)して何(なに)も言(い)わない。役人(やくにん)たちは、この人(ひと)がキリストであることを、ほんとうに知(し)っているのではなかろうか。 27わたしたちはこの人(ひと)がどこからきたのか知(し)っている。しかし、キリストが現(あらわ)れる時(とき)には、どこから来(く)るのか知(し)っている者(もの)は、ひとりもいない」。 28イエスは宮(みや)の内(うち)で教(おし)えながら、叫(さけ)んで言(い)われた、「あなたがたは、わたしを知(し)っており、また、わたしがどこからきたかも知(し)っている。しかし、わたしは自分(じぶん)からきたのではない。わたしをつかわされたかたは真実(しんじつ)であるが、あなたがたは、そのかたを知(し)らない。 29わたしは、そのかたを知(し)っている。わたしはそのかたのもとからきた者(もの)で、そのかたがわたしをつかわされたのである」。 30そこで人々(ひとびと)はイエスを捕(とら)えようと計(はか)ったが、だれひとり手(て)をかける者(もの)はなかった。イエスの時(とき)が、まだきていなかったからである。 31しかし、群衆(ぐんしゅう)の中(なか)の多(おお)くの者(もの)が、イエスを信(しん)じて言(い)った、「キリストがきても、この人(ひと)が行(おこな)ったよりも多(おお)くのしるしを行(おこな)うだろうか」。

32群衆(ぐんしゅう)がイエスについてこのようなうわさをしているのを、パリサイ人(びと)たちは耳(みみ)にした。そこで、祭司長(さいしちょう)たちやパリサイ人(びと)たちは、イエスを捕(とら)えようとして、下役(したやく)どもをつかわした。 33イエスは言(い)われた、「今(いま)しばらくの間(あいだ)、わたしはあなたがたと一緒(いっしょ)にいて、それから、わたしをおつかわしになったかたのみもとに行(い)く。 34あなたがたはわたしを捜(さが)すであろうが、見(み)つけることはできない。そしてわたしのいる所(ところ)に、あなたがたは来(く)ることができない」。 35そこでユダヤ人(じん)たちは互(たがい)に言(い)った、「わたしたちが見(み)つけることができないというのは、どこへ行(い)こうとしているのだろう。ギリシヤ人(じん)の中(なか)に離散(りさん)している人(ひと)たちのところにでも行(い)って、ギリシヤ人(じん)を教(おし)えようというのだろうか。 36また、『わたしを捜(さが)すが、見(み)つけることはできない。そしてわたしのいる所(ところ)には来(く)ることができないだろう』と言(い)ったその言葉(ことば)は、どういう意味(いみ)だろう」。

37祭(まつり)の終(おわ)りの大事(だいじ)な日(ひ)に、イエスは立(た)って、叫(さけ)んで言(い)われた、「だれでもかわく者(もの)は、わたしのところにきて飲(の)むがよい。 38わたしを信(しん)じる者(もの)は、聖書(せいしょ)に書(か)いてあるとおり、その腹(はら)から生(い)ける水(みず)が川(かわ)となって流(な)れ出(で)るであろう」。 39これは、イエスを信(しん)じる人々(ひとびと)が受(う)けようとしている御霊(みたま)をさして言(い)われたのである。すなわち、イエスはまだ栄光(えいこう)を受(う)けておられなかったので、御霊(みたま)がまだ下(くだ)っていなかったのである。 40群衆(ぐんしゅう)のある者(もの)がこれらの言葉(ことば)を聞(き)いて、「このかたは、ほんとうに、あの預言者(よげんしゃ)である」と言(い)い、 41ほかの人(ひと)たちは「このかたはキリストである」と言(い)い、また、ある人々(ひとびと)は、「キリストはまさか、ガリラヤからは出(で)てこないだろう。 42キリストは、ダビデの子孫(しそん)から、またダビデのいたベツレヘムの村(むら)から出(で)ると、聖書(せいしょ)に書(か)いてあるではないか」と言(い)った。 43こうして、群衆(ぐんしゅう)の間(あいだ)にイエスのことで分争(ぶんそう)が生(しょう)じた。 44彼(かれ)らのうちのある人々(ひとびと)は、イエスを捕(とら)えようと思(おも)ったが、だれひとり手(て)をかける者(もの)はなかった。

45さて、下役(したやく)どもが祭司長(さいしちょう)たちやパリサイ人(びと)たちのところに帰(かえ)ってきたので、彼(かれ)らはその下役(したやく)どもに言(い)った、「なぜ、あの人(ひと)を連(つ)れてこなかったのか」。 46下役(したやく)どもは答(こた)えた、「この人(ひと)の語(かた)るように語(かた)った者(もの)は、これまでにありませんでした」。 47パリサイ人(びと)たちが彼(かれ)らに答(こた)えた、「あなたがたまでが、だまされているのではないか。 48役人(やくにん)たちやパリサイ人(びと)たちの中(なか)で、ひとりでも彼(かれ)を信(しん)じた者(もの)があっただろうか。 49律法(りっぽう)をわきまえないこの群衆(ぐんしゅう)は、のろわれている」。 50彼(かれ)らの中(なか)のひとりで、以前(いぜん)にイエスに会(あ)いにきたことのあるニコデモが、彼(かれ)らに言(い)った、 51「わたしたちの律法(りっぽう)によれば、まずその人(ひと)の言(い)い分(ぶん)を聞(き)き、その人(ひと)のしたことを知(し)った上(うえ)でなければ、さばくことをしないのではないか」。 52彼(かれ)らは答(こた)えて言(い)った、「あなたもガリラヤ出(で)なのか。よく調(しら)べてみなさい、ガリラヤからは預言者(よげんしゃ)が出(で)るものではないことが、わかるだろう」。

〔 53そして、人々(ひとびと)はおのおの家(いえ)に帰(かえ)って行(い)った。

第八章

1イエスはオリブ山(やま)に行(い)かれた。 2朝(あさ)早(はや)くまた宮(みや)にはいられると、人々(ひとびと)が皆(みな)みもとに集(あつ)まってきたので、イエスはすわって彼(かれ)らを教(おし)えておられた。 3すると、律法(りっぽう)学者(がくしゃ)たちやパリサイ人(びと)たちが、姦淫(かんいん)をしている時(とき)につかまえられた女(おんな)をひっぱってきて、中(なか)に立(た)たせた上(うえ)、イエスに言(い)った、 4「先生(せんせい)、この女(おんな)は姦淫(かんいん)の場(ば)でつかまえられました。 5モーセは律法(りっぽう)の中(なか)で、こういう女(おんな)を石(いし)で打(う)ち殺(ころ)せと命(めい)じましたが、あなたはどう思(おも)いますか」。 6彼(かれ)らがそう言(い)ったのは、イエスをためして、訴(うった)える口実(こうじつ)を得(え)るためであった。しかし、イエスは身(み)をかがめて、指(ゆび)で地面(じめん)に何(なに)か書(か)いておられた。 7彼(かれ)らが問(と)い続(つづ)けるので、イエスは身(み)を起(おこ)して彼(かれ)らに言(い)われた、「あなたがたの中(なか)で罪(つみ)のない者(もの)が、まずこの女(おんな)に石(いし)を投(な)げつけるがよい」。 8そしてまた身(み)をかがめて、地面(じめん)に物(もの)を書(か)きつづけられた。 9これを聞(き)くと、彼(かれ)らは年寄(としより)から始(はじ)めて、ひとりびとり出(で)て行(い)き、ついに、イエスだけになり、女(おんな)は中(なか)にいたまま残(のこ)された。 10そこでイエスは身(み)を起(おこ)して女(おんな)に言(い)われた、「女(おんな)よ、みんなはどこにいるか。あなたを罰(ばっ)する者(もの)はなかったのか」。 11女(おんな)は言(い)った、「主(しゅ)よ、だれもございません」。イエスは言(い)われた、「わたしもあなたを罰(ばっ)しない。お帰(かえ)りなさい。今後(こんご)はもう罪(つみ)を犯(おか)さないように」。〕

12イエスは、また人々(ひとびと)に語(かた)ってこう言(い)われた、「わたしは世(よ)の光(ひかり)である。わたしに従(したが)って来(く)る者(もの)は、やみのうちを歩(ある)くことがなく、命(いのち)の光(ひかり)をもつであろう」。 13するとパリサイ人(びと)たちがイエスに言(い)った、「あなたは、自分(じぶん)のことをあかししている。あなたのあかしは真実(しんじつ)ではない」。 14イエスは彼(かれ)らに答(こた)えて言(い)われた、「たとい、わたしが自分(じぶん)のことをあかししても、わたしのあかしは真実(しんじつ)である。それは、わたしがどこからきたのか、また、どこへ行(い)くのかを知(し)っているからである。しかし、あなたがたは、わたしがどこからきて、どこへ行(い)くのかを知(し)らない。 15あなたがたは肉(にく)によって人(ひと)をさばくが、わたしはだれもさばかない。 16しかし、もしわたしがさばくとすれば、わたしのさばきは正(ただ)しい。なぜなら、わたしはひとりではなく、わたしをつかわされたかたが、わたしと一緒(いっしょ)だからである。 17あなたがたの律法(りっぽう)には、ふたりによる証言(しょうげん)は真実(しんじつ)だと、書(か)いてある。 18わたし自身(じしん)のことをあかしするのは、わたしであるし、わたしをつかわされた父(ちち)も、わたしのことをあかしして下(くだ)さるのである」。 19すると、彼(かれ)らはイエスに言(い)った、「あなたの父(ちち)はどこにいるのか」。イエスは答(こた)えられた、「あなたがたは、わたしをもわたしの父(ちち)をも知(し)っていない。もし、あなたがたがわたしを知(し)っていたなら、わたしの父(ちち)をも知(し)っていたであろう」。 20イエスが宮(みや)の内(うち)で教(おし)えていた時(とき)、これらの言葉(ことば)をさいせん箱(はこ)のそばで語(かた)られたのであるが、イエスの時(とき)がまだきていなかったので、だれも捕(とら)える者(もの)がなかった。

21さて、また彼(かれ)らに言(い)われた、「わたしは去(さ)って行(い)く。あなたがたはわたしを捜(さが)し求(もと)めるであろう。そして自分(じぶん)の罪(つみ)のうちに死(し)ぬであろう。わたしの行(い)く所(ところ)には、あなたがたは来(く)ることができない」。 22そこでユダヤ人(じん)たちは言(い)った、「わたしの行(い)く所(ところ)に、あなたがたは来(く)ることができないと、言(い)ったのは、あるいは自殺(じさつ)でもしようとするつもりか」。 23イエスは彼(かれ)らに言(い)われた、「あなたがたは下(した)から出(で)た者(もの)だが、わたしは上(うえ)からきた者(もの)である。あなたがたはこの世(よ)の者(もの)であるが、わたしはこの世(よ)の者(もの)ではない。 24だからわたしは、あなたがたは自分(じぶん)の罪(つみ)のうちに死(し)ぬであろうと、言(い)ったのである。もしわたしがそういう者(もの)であることをあなたがたが信(しん)じなければ、罪(つみ)のうちに死(し)ぬことになるからである」。 25そこで彼(かれ)らはイエスに言(い)った、「あなたは、いったい、どういうかたですか」。イエスは彼(かれ)らに言(い)われた、「わたしがどういう者(もの)であるかは、初(はじ)めからあなたがたに言(い)っているではないか。 26あなたがたについて、わたしの言(い)うべきこと、さばくべきことが、たくさんある。しかし、わたしをつかわされたかたは真実(しんじつ)なかたである。わたしは、そのかたから聞(き)いたままを世(よ)にむかって語(かた)るのである」。 27彼(かれ)らは、イエスが父(ちち)について話(はな)しておられたことを悟(さと)らなかった。 28そこでイエスは言(い)われた、「あなたがたが人(ひと)の子(こ)を上(あ)げてしまった後(のち)はじめて、わたしがそういう者(もの)であること、また、わたしは自分(じぶん)からは何(なに)もせず、ただ父(ちち)が教(おし)えて下(くだ)さったままを話(はな)していたことが、わかってくるであろう。 29わたしをつかわされたかたは、わたしと一緒(いっしょ)におられる。わたしは、いつも神(かみ)のみこころにかなうことをしているから、わたしをひとり置(お)きざりになさることはない」。 30これらのことを語(かた)られたところ、多(おお)くの人々(ひとびと)がイエスを信(しん)じた。

31イエスは自分(じぶん)を信(しん)じたユダヤ人(じん)たちに言(い)われた、「もしわたしの言葉(ことば)のうちにとどまっておるなら、あなたがたは、ほんとうにわたしの弟子(でし)なのである。 32また真理(しんり)を知(し)るであろう。そして真理(しんり)は、あなたがたに自由(じゆう)を得(え)させるであろう」。 33そこで、彼(かれ)らはイエスに言(い)った、「わたしたちはアブラハムの子孫(しそん)であって、人(ひと)の奴隷(どれい)になったことなどは、一度(いちど)もない。どうして、あなたがたに自由(じゆう)を得(え)させるであろうと、言(い)われるのか」。 34イエスは彼(かれ)らに答(こた)えられた、「よくよくあなたがたに言(い)っておく。すべて罪(つみ)を犯(おか)す者(もの)は罪(つみ)の奴隷(どれい)である。 35そして、奴隷(どれい)はいつまでも家(いえ)にいる者(もの)ではない。しかし、子(こ)はいつまでもいる。 36だから、もし子(こ)があなたがたに自由(じゆう)を得(え)させるならば、あなたがたは、ほんとうに自由(じゆう)な者(もの)となるのである。 37わたしは、あなたがたがアブラハムの子孫(しそん)であることを知(し)っている。それだのに、あなたがたはわたしを殺(ころ)そうとしている。わたしの言葉(ことば)が、あなたがたのうちに根(ね)をおろしていないからである。 38わたしはわたしの父(ちち)のもとで見(み)たことを語(かた)っているが、あなたがたは自分(じぶん)の父(ちち)から聞(き)いたことを行(おこな)っている」。 39彼(かれ)らはイエスに答(こた)えて言(い)った、「わたしたちの父(ちち)はアブラハムである」。イエスは彼(かれ)らに言(い)われた、「もしアブラハムの子(こ)であるなら、アブラハムのわざをするがよい。 40ところが今(いま)、神(かみ)から聞(き)いた真理(しんり)をあなたがたに語(かた)ってきたこのわたしを、殺(ころ)そうとしている。そんなことをアブラハムはしなかった。 41あなたがたは、あなたがたの父(ちち)のわざを行(おこな)っているのである」。彼(かれ)らは言(い)った、「わたしたちは、不品行(ふひんこう)の結果(けっか)うまれた者(もの)ではない。わたしたちにはひとりの父(ちち)がある。それは神(かみ)である」。 42イエスは彼(かれ)らに言(い)われた、「神(かみ)があなたがたの父(ちち)であるならば、あなたがたはわたしを愛(あい)するはずである。わたしは神(かみ)から出(で)た者(もの)、また神(かみ)からきている者(もの)であるからだ。わたしは自分(じぶん)からきたのではなく、神(かみ)からつかわされたのである。 43どうしてあなたがたは、わたしの話(はな)すことがわからないのか。あなたがたが、わたしの言葉(ことば)を悟(さと)ることができないからである。 44あなたがたは自分(じぶん)の父(ちち)、すなわち、悪魔(あくま)から出(で)てきた者(もの)であって、その父(ちち)の欲望(よくぼう)どおりを行(おこな)おうと思(おも)っている。彼(かれ)は初(はじ)めから、人殺(ひとごろ)しであって、真理(しんり)に立(た)つ者(もの)ではない。彼(かれ)のうちには真理(しんり)がないからである。彼(かれ)が偽(いつわ)りを言(い)うとき、いつも自分(じぶん)の本音(ほんね)をはいているのである。彼(かれ)は偽(いつわ)り者(もの)であり、偽(いつわ)りの父(ちち)であるからだ。 45しかし、わたしが真理(しんり)を語(かた)っているので、あなたがたはわたしを信(しん)じようとしない。 46あなたがたのうち、だれがわたしに罪(つみ)があると責(せ)めうるのか。わたしは真理(しんり)を語(かた)っているのに、なぜあなたがたは、わたしを信(しん)じないのか。 47神(かみ)からきた者(もの)は神(かみ)の言葉(ことば)に聞(き)き従(したが)うが、あなたがたが聞(き)き従(したが)わないのは、神(かみ)からきた者(もの)でないからである」。

48ユダヤ人(じん)たちはイエスに答(こた)えて言(い)った、「あなたはサマリヤ人(びと)で、悪霊(あくれい)に取(と)りつかれていると、わたしたちが言(い)うのは、当然(とうぜん)ではないか」。 49イエスは答(こた)えられた、「わたしは、悪霊(あくれい)に取(と)りつかれているのではなくて、わたしの父(ちち)を重(おも)んじているのだが、あなたがたはわたしを軽(かろ)んじている。 50わたしは自分(じぶん)の栄光(えいこう)を求(もと)めてはいない。それを求(もと)めるかたが別(べつ)にある。そのかたは、またさばくかたである。 51よくよく言(い)っておく。もし人(ひと)がわたしの言葉(ことば)を守(まも)るならば、その人(ひと)はいつまでも死(し)を見(み)ることがないであろう」。 52ユダヤ人(じん)たちが言(い)った、「あなたが悪霊(あくれい)に取(と)りつかれていることが、今(いま)わかった。アブラハムは死(し)に、預言者(よげんしゃ)たちも死(し)んでいる。それだのに、あなたは、わたしの言葉(ことば)を守(まも)る者(もの)はいつまでも死(し)を味(あじ)わうことがないであろうと、言(い)われる。 53あなたは、わたしたちの父(ちち)アブラハムより偉(えら)いのだろうか。彼(かれ)も死(し)に、預言者(よげんしゃ)たちも死(し)んだではないか。あなたは、いったい、自分(じぶん)をだれと思(おも)っているのか」。 54イエスは答(こた)えられた、「わたしがもし自分(じぶん)に栄光(えいこう)を帰(き)するなら、わたしの栄光(えいこう)は、むなしいものである。わたしに栄光(えいこう)を与(あた)えるかたは、わたしの父(ちち)であって、あなたがたが自分(じぶん)の神(かみ)だと言(い)っているのは、そのかたのことである。 55あなたがたはその神(かみ)を知(し)っていないが、わたしは知(し)っている。もしわたしが神(かみ)を知(し)らないと言(い)うならば、あなたがたと同(おな)じような偽(いつわ)り者(もの)であろう。しかし、わたしはそのかたを知(し)り、その御言(みことば)を守(まも)っている。 56あなたがたの父(ちち)アブラハムは、わたしのこの日(ひ)を見(み)ようとして楽(たの)しんでいた。そしてそれを見(み)て喜(よろこ)んだ」。 57そこでユダヤ人(じん)たちはイエスに言(い)った、「あなたはまだ五十にもならないのに、アブラハムを見(み)たのか」。 58イエスは彼(かれ)らに言(い)われた、「よくよくあなたがたに言(い)っておく。アブラハムの生(うま)れる前(まえ)からわたしは、いるのである」。 59そこで彼(かれ)らは石(いし)をとって、イエスに投(な)げつけようとした。しかし、イエスは身(み)を隠(かく)して、宮(みや)から出(で)て行(い)かれた。

第九章

1イエスが道(みち)をとおっておられるとき、生(うま)れつきの盲人(もうじん)を見(み)られた。 2弟子(でし)たちはイエスに尋(たず)ねて言(い)った、「先生(せんせい)、この人(ひと)が生(うま)れつき盲人(もうじん)なのは、だれが罪(つみ)を犯(おか)したためですか。本人(ほんにん)ですか、それともその両親(りょうしん)ですか」。 3イエスは答(こた)えられた、「本人(ほんにん)が罪(つみ)を犯(おか)したのでもなく、また、その両親(りょうしん)が犯(おか)したのでもない。ただ神(かみ)のみわざが、彼(かれ)の上(うえ)に現(あらわ)れるためである。 4わたしたちは、わたしをつかわされたかたのわざを、昼(ひる)の間(あいだ)にしなければならない。夜(よる)が来(く)る。すると、だれも働(はたら)けなくなる。 5わたしは、この世(よ)にいる間(あいだ)は、世(よ)の光(ひかり)である」。 6イエスはそう言(い)って、地(ち)につばきをし、そのつばきで、どろをつくり、そのどろを盲人(もうじん)の目(め)に塗(ぬ)って言(い)われた、 7「シロアム(つかわされた者(もの)、の意(い))の池(いけ)に行(い)って洗(あら)いなさい」。そこで彼(かれ)は行(い)って洗(あら)った。そして見(み)えるようになって、帰(かえ)って行(い)った。 8近所(きんじょ)の人々(ひとびと)や、彼(かれ)がもと、こじきであったのを見知(みし)っていた人々(ひとびと)が言(い)った、「この人(ひと)は、すわってこじきをしていた者(もの)ではないか」。 9ある人々(ひとびと)は「その人(ひと)だ」と言(い)い、他(た)の人々(ひとびと)は「いや、ただあの人(ひと)に似(に)ているだけだ」と言(い)った。しかし、本人(ほんにん)は「わたしがそれだ」と言(い)った。 10そこで人々(ひとびと)は彼(かれ)に言(い)った、「では、おまえの目(め)はどうしてあいたのか」。 11彼(かれ)は答(こた)えた、「イエスというかたが、どろをつくって、わたしの目(め)に塗(ぬ)り、『シロアムに行(い)って洗(あら)え』と言(い)われました。それで、行(い)って洗(あら)うと、見(み)えるようになりました」。 12人々(ひとびと)は彼(かれ)に言(い)った、「その人(ひと)はどこにいるのか」。彼(かれ)は「知(し)りません」と答(こた)えた。

13人々(ひとびと)は、もと盲人(もうじん)であったこの人(ひと)を、パリサイ人(びと)たちのところにつれて行(い)った。 14イエスがどろをつくって彼(かれ)の目(め)をあけたのは、安息日(あんそくにち)であった。 15パリサイ人(びと)たちもまた、「どうして見(み)えるようになったのか」、と彼(かれ)に尋(たず)ねた。彼(かれ)は答(こた)えた、「あのかたがわたしの目(め)にどろを塗(ぬ)り、わたしがそれを洗(あら)い、そして見(み)えるようになりました」。 16そこで、あるパリサイ人(びと)たちが言(い)った、「その人(ひと)は神(かみ)からきた人(ひと)ではない。安息日(あんそくにち)を守(まも)っていないのだから」。しかし、ほかの人々(ひとびと)は言(い)った、「罪(つみ)のある人(ひと)が、どうしてそのようなしるしを行(おこな)うことができようか」。そして彼(かれ)らの間(あいだ)に分争(ぶんそう)が生(しょう)じた。 17そこで彼(かれ)らは、もう一度(ど)この盲人(もうじん)に聞(き)いた、「おまえの目(め)をあけてくれたその人(ひと)を、どう思(おも)うか」。「預言者(よげんしゃ)だと思(おも)います」と彼(かれ)は言(い)った。 18ユダヤ人(じん)たちは、彼(かれ)がもと盲人(もうじん)であったが見(み)えるようになったことを、まだ信(しん)じなかった。ついに彼(かれ)らは、目(め)が見(み)えるようになったこの人(ひと)の両親(りょうしん)を呼(よ)んで、 19尋(たず)ねて言(い)った、「これが、生(うま)れつき盲人(もうじん)であったと、おまえたちの言(い)っているむすこか。それではどうして、いま目(め)が見(み)えるのか」。 20両親(りょうしん)は答(こた)えて言(い)った、「これがわたしどものむすこであること、また生(うま)れつき盲人(もうじん)であったことは存(ぞん)じています。 21しかし、どうしていま見(み)えるようになったのか、それは知(し)りません。また、だれがその目(め)をあけて下(くだ)さったのかも知(し)りません。あれに聞(き)いて下(くだ)さい。あれはもうおとなですから、自分(じぶん)のことは自分(じぶん)で話(はな)せるでしょう」。 22両親(りょうしん)はユダヤ人(じん)たちを恐(おそ)れていたので、こう答(こた)えたのである。それは、もしイエスをキリストと告白(こくはく)する者(もの)があれば、会堂(かいどう)から追(お)い出(だ)すことに、ユダヤ人(じん)たちが既(すで)に決(き)めていたからである。 23彼(かれ)の両親(りょうしん)が「おとなですから、あれに聞(き)いて下(くだ)さい」と言(い)ったのは、そのためであった。

24そこで彼(かれ)らは、盲人(もうじん)であった人(ひと)をもう一度(いちど)呼(よ)んで言(い)った、「神(かみ)に栄光(えいこう)を帰(き)するがよい。あの人(ひと)が罪人(つみびと)であることは、わたしたちにはわかっている」。 25すると彼(かれ)は言(い)った、「あのかたが罪人(つみびと)であるかどうか、わたしは知(し)りません。ただ一つのことだけ知(し)っています。わたしは盲(めくら)であったが、今(いま)は見(み)えるということです」。 26そこで彼(かれ)らは言(い)った、「その人(ひと)はおまえに何(なに)をしたのか。どんなにしておまえの目(め)をあけたのか」。 27彼(かれ)は答(こた)えた、「そのことはもう話(はな)してあげたのに、聞(き)いてくれませんでした。なぜまた聞(き)こうとするのですか。あなたがたも、あの人(ひと)の弟子(でし)になりたいのですか」。 28そこで彼(かれ)らは彼(かれ)をののしって言(い)った、「おまえはあれの弟子(でし)だが、わたしたちはモーセの弟子(でし)だ。 29モーセに神(かみ)が語(かた)られたということは知(し)っている。だが、あの人(ひと)がどこからきた者(もの)か、わたしたちは知(し)らぬ」。 30そこで彼(かれ)が答(こた)えて言(い)った、「わたしの目(め)をあけて下(くだ)さったのに、そのかたがどこからきたか、ご存(ぞん)じないとは、不思議(ふしぎ)千万(せんばん)です。 31わたしたちはこのことを知(し)っています。神(かみ)は罪人(つみびと)の言(い)うことはお聞(き)きいれになりませんが、神(かみ)を敬(うやま)い、そのみこころを行(おこな)う人(ひと)の言(い)うことは、聞(き)きいれて下(くだ)さいます。 32生(うま)れつき盲(めくら)であった者(もの)の目(め)をあけた人(ひと)があるということは、世界(せかい)が始(はじ)まって以来(いらい)、聞(き)いたことがありません。 33もしあのかたが神(かみ)からきた人(ひと)でなかったら、何一(なにひと)つできなかったはずです」。 34これを聞(き)いて彼(かれ)らは言(い)った、「おまえは全(まった)く罪(つみ)の中(なか)に生(うま)れていながら、わたしたちを教(おし)えようとするのか」。そして彼(かれ)を外(そと)へ追(お)い出(だ)した。

35イエスは、その人(ひと)が外(そと)へ追(お)い出(だ)されたことを聞(き)かれた。そして彼(かれ)に会(あ)って言(い)われた、「あなたは人(ひと)の子(こ)を信(しん)じるか」。 36彼(かれ)は答(こた)えて言(い)った、「主(しゅ)よ、それはどなたですか。そのかたを信(しん)じたいのですが」。 37イエスは彼(かれ)に言(い)われた、「あなたは、もうその人(ひと)に会(あ)っている。今(いま)あなたと話(はな)しているのが、その人(ひと)である」。 38すると彼(かれ)は、「主(しゅ)よ、信(しん)じます」と言(い)って、イエスを拝(はい)した。 39そこでイエスは言(い)われた、「わたしがこの世(よ)にきたのは、さばくためである。すなわち、見(み)えない人(ひと)たちが見(み)えるようになり、見(み)える人(ひと)たちが見(み)えないようになるためである」。 40そこにイエスと一緒(いっしょ)にいたあるパリサイ人(びと)たちが、それを聞(き)いてイエスに言(い)った、「それでは、わたしたちも盲(めくら)なのでしょうか」。 41イエスは彼(かれ)らに言(い)われた、「もしあなたがたが盲人(もうじん)であったなら、罪(つみ)はなかったであろう。しかし、今(いま)あなたがたが『見(み)える』と言(い)い張(は)るところに、あなたがたの罪(つみ)がある。

第一〇章

1よくよくあなたがたに言(い)っておく。羊(ひつじ)の囲(かこ)いにはいるのに、門(もん)からでなく、ほかの所(ところ)からのりこえて来(く)る者(もの)は、盗人(ぬすびと)であり、強盗(ごうとう)である。 2門(もん)からはいる者(もの)は、羊(ひつじ)の羊飼(ひつじかい)である。 3門番(もんばん)は彼(かれ)のために門(もん)を開(ひら)き、羊(ひつじ)は彼(かれ)の声(こえ)を聞(き)く。そして彼(かれ)は自分(じぶん)の羊(ひつじ)の名(な)をよんで連(つ)れ出(だ)す。 4自分(じぶん)の羊(ひつじ)をみな出(だ)してしまうと、彼(かれ)は羊(ひつじ)の先頭(せんとう)に立(た)って行(い)く。羊(ひつじ)はその声(こえ)を知(し)っているので、彼(かれ)について行(い)くのである。 5ほかの人(ひと)には、ついて行(い)かないで逃(に)げ去(さ)る。その人(ひと)の声(こえ)を知(し)らないからである」。 6イエスは彼(かれ)らにこの比喩(ひゆ)を話(はな)されたが、彼(かれ)らは自分(じぶん)たちにお話(はな)しになっているのが何(なに)のことだか、わからなかった。

7そこで、イエスはまた言(い)われた、「よくよくあなたがたに言(い)っておく。わたしは羊(ひつじ)の門(もん)である。 8わたしよりも前(まえ)にきた人(ひと)は、みな盗人(ぬすびと)であり、強盗(ごうとう)である。羊(ひつじ)は彼(かれ)らに聞(き)き従(したが)わなかった。 9わたしは門(もん)である。わたしをとおってはいる者(もの)は救(すく)われ、また出入(でい)りし、牧草(ぼくそう)にありつくであろう。 10盗人(ぬすびと)が来(く)るのは、盗(ぬす)んだり、殺(ころ)したり、滅(ほろ)ぼしたりするためにほかならない。わたしがきたのは、羊(ひつじ)に命(いのち)を得(え)させ、豊(ゆた)かに得(え)させるためである。 11わたしはよい羊飼(ひつじかい)である。よい羊飼(ひつじかい)は、羊(ひつじ)のために命(いのち)を捨(す)てる。 12羊飼(ひつじかい)ではなく、羊(ひつじ)が自分(じぶん)のものでもない雇人(やといにん)は、おおかみが来(く)るのを見(み)ると、羊(ひつじ)をすてて逃(に)げ去(さ)る。そして、おおかみは羊(ひつじ)を奪(うば)い、また追(お)い散(ち)らす。 13彼(かれ)は雇人(やといにん)であって、羊(ひつじ)のことを心(こころ)にかけていないからである。 14わたしはよい羊飼(ひつじかい)であって、わたしの羊(ひつじ)を知(し)り、わたしの羊(ひつじ)はまた、わたしを知(し)っている。 15それはちょうど、父(ちち)がわたしを知(し)っておられ、わたしが父(ちち)を知(し)っているのと同(おな)じである。そして、わたしは羊(ひつじ)のために命(いのち)を捨(す)てるのである。 16わたしにはまた、この囲(かこ)いにいない他(た)の羊(ひつじ)がある。わたしは彼(かれ)らをも導(みちび)かねばならない。彼(かれ)らも、わたしの声(こえ)に聞(き)き従(したが)うであろう。そして、ついに一つの群(む)れ、ひとりの羊飼(ひつじかい)となるであろう。 17父(ちち)は、わたしが自分(じぶん)の命(いのち)を捨(す)てるから、わたしを愛(あい)して下(くだ)さるのである。命(いのち)を捨(す)てるのは、それを再(ふたた)び得(え)るためである。 18だれかが、わたしからそれを取(と)り去(さ)るのではない。わたしが、自分(じぶん)からそれを捨(す)てるのである。わたしには、それを捨(す)てる力(ちから)があり、またそれを受(う)ける力(ちから)もある。これはわたしの父(ちち)から授(さず)かった定(さだ)めである」。

19これらの言葉(ことば)を語(かた)られたため、ユダヤ人(じん)の間(あいだ)にまたも分争(ぶんそう)が生(しょう)じた。 20そのうちの多(おお)くの者(もの)が言(い)った、「彼(かれ)は悪霊(あくれい)に取(と)りつかれて、気(き)が狂(くる)っている。どうして、あなたがたはその言(い)うことを聞(き)くのか」。 21他(た)の人々(ひとびと)は言(い)った、「それは悪霊(あくれい)に取(と)りつかれた者(もの)の言葉(ことば)ではない。悪霊(あくれい)は盲人(もうじん)の目(め)をあけることができようか」。

22そのころ、エルサレムで宮(みや)きよめの祭(まつり)が行(おこな)われた。時(とき)は冬(ふゆ)であった。 23イエスは、宮(みや)の中(なか)にあるソロモンの廊(ろう)を歩(ある)いておられた。 24するとユダヤ人(じん)たちが、イエスを取(と)り囲(かこ)んで言(い)った、「いつまでわたしたちを不安(ふあん)のままにしておくのか。あなたがキリストであるなら、そうとはっきり言(い)っていただきたい」。 25イエスは彼(かれ)らに答(こた)えられた、「わたしは話(はな)したのだが、あなたがたは信(しん)じようとしない。わたしの父(ちち)の名(な)によってしているすべてのわざが、わたしのことをあかししている。 26あなたがたが信(しん)じないのは、わたしの羊(ひつじ)でないからである。 27わたしの羊(ひつじ)はわたしの声(こえ)に聞(き)き従(したが)う。わたしは彼(かれ)らを知(し)っており、彼(かれ)らはわたしについて来(く)る。 28わたしは、彼(かれ)らに永遠(えいえん)の命(いのち)を与(あた)える。だから、彼(かれ)らはいつまでも滅(ほろ)びることがなく、また、彼(かれ)らをわたしの手(て)から奪(うば)い去(さ)る者(もの)はない。 29わたしの父(ちち)がわたしに下(くだ)さったものは、すべてにまさるものである。そしてだれも父(ちち)のみ手(て)から、それを奪(うば)い取(と)ることはできない。 30わたしと父(ちち)とは一つである」。 31そこでユダヤ人(じん)たちは、イエスを打(う)ち殺(ころ)そうとして、また石(いし)を取(と)りあげた。 32するとイエスは彼(かれ)らに答(こた)えられた、「わたしは、父(ちち)による多(おお)くのよいわざを、あなたがたに示(しめ)した。その中(なか)のどのわざのために、わたしを石(いし)で打(う)ち殺(ころ)そうとするのか」。 33ユダヤ人(じん)たちは答(こた)えた、「あなたを石(いし)で殺(ころ)そうとするのは、よいわざをしたからではなく、神(かみ)を汚(けが)したからである。また、あなたは人間(にんげん)であるのに、自分(じぶん)を神(かみ)としているからである」。 34イエスは彼(かれ)らに答(こた)えられた、「あなたがたの律法(りっぽう)に、『わたしは言(い)う、あなたがたは神々(かみがみ)である』と書(か)いてあるではないか。 35神(かみ)の言(ことば)を託(たく)された人々(ひとびと)が、神々(かみがみ)といわれておるとすれば、(そして聖書(せいしょ)の言(ことば)は、すたることがあり得(え)ない) 36父(ちち)が聖(せい)別(べつ)して、世(よ)につかわされた者(もの)が、『わたしは神(かみ)の子(こ)である』と言(い)ったからとて、どうして『あなたは神(かみ)を汚(けが)す者(もの)だ』と言(い)うのか。 37もしわたしが父(ちち)のわざを行(おこな)わないとすれば、わたしを信(しん)じなくてもよい。 38しかし、もし行(おこな)っているなら、たといわたしを信(しん)じなくても、わたしのわざを信(しん)じるがよい。そうすれば、父(ちち)がわたしにおり、また、わたしが父(ちち)におることを知(し)って悟(さと)るであろう」。 39そこで、彼(かれ)らはまたイエスを捕(とら)えようとしたが、イエスは彼(かれ)らの手(て)をのがれて、去(さ)って行(い)かれた。

40さて、イエスはまたヨルダンの向(む)こう岸(ぎし)、すなわち、ヨハネが初(はじ)めにバプテスマを授(さづ)けていた所(ところ)に行(い)き、そこに滞在(たいざい)しておられた。 41多(おお)くの人々(ひとびと)がイエスのところにきて、互(たがい)に言(い)った、「ヨハネはなんのしるしも行(おこな)わなかったが、ヨハネがこのかたについて言(い)ったことは、皆(みな)ほんとうであった」。 42そして、そこで多(おお)くの者(もの)がイエスを信(しん)じた。

第一一章

1さて、ひとりの病人(びょうにん)がいた。ラザロといい、マリヤとその姉妹(しまい)マルタの村(むら)ベタニヤの人(ひと)であった。 2このマリヤは主(しゅ)に香油(こうゆ)をぬり、自分(じぶん)の髪(かみ)の毛(け)で、主(しゅ)の足(あし)をふいた女(おんな)であって、病気(びょうき)であったのは、彼女(かのじょ)の兄弟(きょうだい)ラザロであった。 3姉妹(しまい)たちは人(ひと)をイエスのもとにつかわして、「主(しゅ)よ、ただ今(いま)、あなたが愛(あい)しておられる者(もの)が病気(びょうき)をしています」と言(い)わせた。 4イエスはそれを聞(き)いて言(い)われた、「この病気(びょうき)は死(し)ぬほどのものではない。それは神(かみ)の栄光(えいこう)のため、また、神(かみ)の子(こ)がそれによって栄光(えいこう)を受(う)けるためのものである」。

5イエスは、マルタとその姉妹(しまい)とラザロとを愛(あい)しておられた。 6ラザロが病気(びょうき)であることを聞(き)いてから、なおふつか、そのおられた所(ところ)に滞在(たいざい)された。 7それから弟子(でし)たちに、「もう一度(ど)ユダヤに行(い)こう」と言(い)われた。 8弟子(でし)たちは言(い)った、「先生(せんせい)、ユダヤ人(じん)らが、さきほどもあなたを石(いし)で殺(ころ)そうとしていましたのに、またそこに行(い)かれるのですか」。 9イエスは答(こた)えられた、「一日(にち)には十二時間(じかん)あるではないか。昼間(ひるま)あるけば、人(ひと)はつまずくことはない。この世(よ)の光(ひかり)を見(み)ているからである。 10しかし、夜(よる)あるけば、つまずく。その人(ひと)のうちに、光(ひかり)がないからである」。 11そう言(い)われたが、それからまた、彼(かれ)らに言(い)われた、「わたしたちの友(とも)ラザロが眠(ねむ)っている。わたしは彼(かれ)を起(おこ)しに行(い)く」。 12すると弟子(でし)たちは言(い)った、「主(しゅ)よ、眠(ねむ)っているのでしたら、助(たす)かるでしょう」。 13イエスはラザロが死(し)んだことを言(い)われたのであるが、弟子(でし)たちは、眠(ねむ)って休(やす)んでいることをさして言(い)われたのだと思(おも)った。 14するとイエスは、あからさまに彼(かれ)らに言(い)われた、「ラザロは死(し)んだのだ。 15そして、わたしがそこにいあわせなかったことを、あなたがたのために喜(よろこ)ぶ。それは、あなたがたが信(しん)じるようになるためである。では、彼(かれ)のところに行(い)こう」。 16するとデドモと呼(よ)ばれているトマスが、仲間(なかま)の弟子(でし)たちに言(い)った、「わたしたちも行(い)って、先生(せんせい)と一緒(いっしょ)に死(し)のうではないか」。

17さて、イエスが行(い)ってごらんになると、ラザロはすでに四日間(かかん)も墓(はか)の中(なか)に置(お)かれていた。 18ベタニヤはエルサレムに近(ちか)く、二十五丁(ちょう)ばかり離(はな)れたところにあった。 19大(おお)ぜいのユダヤ人(じん)が、その兄弟(きょうだい)のことで、マルタとマリヤとを慰(なぐさ)めようとしてきていた。 20マルタはイエスがこられたと聞(き)いて、出迎(でむか)えに行(い)ったが、マリヤは家(いえ)ですわっていた。 21マルタはイエスに言(い)った、「主(しゅ)よ、もしあなたがここにいて下(くだ)さったなら、わたしの兄弟(きょうだい)は死(し)ななかったでしょう。 22しかし、あなたがどんなことをお願(ねが)いになっても、神(かみ)はかなえて下(くだ)さることを、わたしは今(いま)でも存(ぞん)じています」。 23イエスはマルタに言(い)われた、「あなたの兄弟(きょうだい)はよみがえるであろう」。 24マルタは言(い)った、「終(おわ)りの日(ひ)のよみがえりの時(とき)よみがえることは、存(ぞん)じています」。 25イエスは彼女(かのじょ)に言(い)われた、「わたしはよみがえりであり、命(いのち)である。わたしを信(しん)じる者(もの)は、たとい死(し)んでも生(い)きる。 26また、生(い)きていて、わたしを信(しん)じる者(もの)は、いつまでも死(し)なない。あなたはこれを信(しん)じるか」。 27マルタはイエスに言(い)った、「主(しゅ)よ、信(しん)じます。あなたがこの世(よ)にきたるべきキリスト、神(かみ)の御子(みこ)であると信(しん)じております」。 28マルタはこう言(い)ってから、帰(かえ)って姉妹(しまい)のマリヤを呼(よ)び、「先生(せんせい)がおいでになって、あなたを呼(よ)んでおられます」と小声(こごえ)で言(い)った。 29これを聞(き)いたマリヤはすぐ立(た)ち上(あ)がって、イエスのもとに行(い)った。 30イエスはまだ村(むら)に、はいってこられず、マルタがお迎(むか)えしたその場所(ばしょ)におられた。 31マリヤと一緒(いっしょ)に家(いえ)にいて彼女(かのじょ)を慰(なぐさ)めていたユダヤ人(じん)たちは、マリヤが急(いそ)いで立(た)ち上(あ)がって出(で)て行(い)くのを見(み)て、彼女(かのじょ)は墓(はか)に泣(な)きに行(い)くのであろうと思(おも)い、そのあとからついて行(い)った。 32マリヤは、イエスのおられる所(ところ)に行(い)ってお目(め)にかかり、その足(あし)もとにひれ伏(ふ)して言(い)った、「主(しゅ)よ、もしあなたがここにいて下(くだ)さったなら、わたしの兄弟(きょうだい)は死(し)ななかったでしょう」。 33イエスは、彼女(かのじょ)が泣(な)き、また、彼女(かのじょ)と一緒(いっしょ)にきたユダヤ人(じん)たちも泣(な)いているのをごらんになり、激(はげ)しく感動(かんどう)し、また心(こころ)を騒(さわ)がせ、そして言(い)われた、 34「彼(かれ)をどこに置(お)いたのか」。彼(かれ)らはイエスに言(い)った、「主(しゅ)よ、きて、ごらん下(くだ)さい」。 35イエスは涙(なみだ)を流(なが)された。 36するとユダヤ人(じん)たちは言(い)った、「ああ、なんと彼(かれ)を愛(あい)しておられたことか」。 37しかし、彼(かれ)らのある人(ひと)たちは言(い)った、「あの盲人(もうじん)の目(め)をあけたこの人(ひと)でも、ラザロを死(し)なせないようには、できなかったのか」。 38イエスはまた激(はげ)しく感動(かんどう)して、墓(はか)にはいられた。それは洞穴(ほらあな)であって、そこに石(いし)がはめてあった。 39イエスは言(い)われた、「石(いし)を取(と)りのけなさい」。死(し)んだラザロの姉妹(しまい)マルタが言(い)った、「主(しゅ)よ、もう臭(くさ)くなっております。四日(か)もたっていますから」。 40イエスは彼女(かのじょ)に言(い)われた、「もし信(しん)じるなら神(かみ)の栄光(えいこう)を見(み)るであろうと、あなたに言(い)ったではないか」。 41人々(ひとびと)は石(いし)を取(と)りのけた。すると、イエスは目(め)を天(てん)にむけて言(い)われた、「父(ちち)よ、わたしの願(ねが)いをお聞(き)き下(くだ)さったことを感謝(かんしゃ)します。 42あなたがいつでもわたしの願(ねが)いを聞(き)きいれて下(くだ)さることを、よく知(し)っています。しかし、こう申(もう)しますのは、そばに立(た)っている人々(ひとびと)に、あなたがわたしをつかわされたことを、信(しん)じさせるためであります」。 43こう言(い)いながら、大声(おおごえ)で「ラザロよ、出(で)てきなさい」と呼(よ)ばわれた。 44すると、死人(しにん)は手足(てあし)を布(ぬの)でまかれ、顔(かお)も顔(かお)おおいで包(つつ)まれたまま、出(で)てきた。イエスは人々(ひとびと)に言(い)われた、「彼(かれ)をほどいてやって、帰(かえ)らせなさい」。

45マリヤのところにきて、イエスのなさったことを見(み)た多(おお)くのユダヤ人(じん)たちは、イエスを信(しん)じた。 46しかし、そのうちの数人(すうにん)がパリサイ人(びと)たちのところに行(い)って、イエスのされたことを告(つ)げた。 47そこで、祭司長(さいしちょう)たちとパリサイ人(びと)たちとは、議会(ぎかい)を召集(しょうしゅう)して言(い)った、「この人(ひと)が多(おお)くのしるしを行(おこな)っているのに、お互(たがい)は何(なに)をしているのだ。 48もしこのままにしておけば、みんなが彼(かれ)を信(しん)じるようになるだろう。そのうえ、ローマ人(じん)がやってきて、わたしたちの土地(とち)も人民(じんみん)も奪(うば)ってしまうであろう」。 49彼(かれ)らのうちのひとりで、その年(とし)の大祭司(だいさいし)であったカヤパが、彼(かれ)らに言(い)った、「あなたがたは、何(なに)もわかっていないし、 50ひとりの人(ひと)が人民(じんみん)に代(かわ)って死(し)んで、全国民(ぜんこくみん)が滅(ほろ)びないようになるのがわたしたちにとって得(え)だということを、考(かんが)えてもいない」。 51このことは彼(かれ)が自分(じぶん)から言(い)ったのではない。彼(かれ)はこの年(とし)の大祭司(だいさいし)であったので、預言(よげん)をして、イエスが国民(こくみん)のために、 52ただ国民(こくみん)のためだけではなく、また散在(さんざい)している神(かみ)の子(こ)らを一つに集(あつ)めるために、死(し)ぬことになっていると、言(い)ったのである。 53彼(かれ)らはこの日(ひ)からイエスを殺(ころ)そうと相談(そうだん)した。 54そのためイエスは、もはや公然(こうぜん)とユダヤ人(じん)の間(あいだ)を歩(ある)かないで、そこを出(で)て、荒野(あらの)に近(ちか)い地方(ちほう)のエフライムという町(まち)に行(い)かれ、そこに弟子(でし)たちと一緒(いっしょ)に滞在(たいざい)しておられた。

55さて、ユダヤ人(じん)の過越(すぎこし)の祭(まつり)が近(ちか)づいたので、多(おお)くの人々(ひとびと)は身(み)をきよめるために、祭(まつり)の前(まえ)に、地方(ちほう)からエルサレムへ上(のぼ)った。 56人々(ひとびと)はイエスを捜(さが)し求(もと)め、宮(みや)の庭(にわ)に立(た)って互(たがい)に言(い)った、「あなたがたはどう思(おも)うか。イエスはこの祭(まつり)にこないのだろうか」。 57祭司長(さいしちょう)たちとパリサイ人(びと)たちとは、イエスを捕(とら)えようとして、そのいどころを知(し)っている者(もの)があれば申(もう)し出(で)よ、という指令(しれい)を出(だ)していた。

第一二章

1過越(すぎこし)の祭(まつり)の六日(か)まえに、イエスはベタニヤに行(い)かれた。そこは、イエスが死人(しにん)の中(なか)からよみがえらせたラザロのいた所(ところ)である。 2イエスのためにそこで夕食(ゆうしょく)の用意(ようい)がされ、マルタは給仕(きゅうじ)をしていた。イエスと一緒(いっしょ)に食卓(しょくたく)についていた者(もの)のうちに、ラザロも加(くわ)わっていた。 3その時(とき)、マリヤは高価(こうか)で純粋(じゅんすい)なナルドの香油(こうゆ)一斤(きん)を持(も)ってきて、イエスの足(あし)にぬり、自分(じぶん)の髪(かみ)の毛(け)でそれをふいた。すると、香油(こうゆ)のかおりが家(いえ)にいっぱいになった。 4弟子(でし)のひとりで、イエスを裏切(うらぎ)ろうとしていたイスカリオテのユダが言(い)った、 5「なぜこの香油(こうゆ)を三百デナリに売(う)って、貧(まず)しい人(ひと)たちに、施(ほどこ)さなかったのか」。 6彼(かれ)がこう言(い)ったのは、貧(まず)しい人(ひと)たちに対(たい)する思(おも)いやりがあったからではなく、自分(じぶん)が盗人(ぬすびと)であり、財布(さいふ)を預(あず)かっていて、その中身(なかみ)をごまかしていたからであった。 7イエスは言(い)われた、「この女(おんな)のするままにさせておきなさい。わたしの葬(ほうむ)りの日(ひ)のために、それをとっておいたのだから。 8貧(まず)しい人(ひと)たちはいつもあなたがたと共(とも)にいるが、わたしはいつも共(とも)にいるわけではない」。 9大(おお)ぜいのユダヤ人(じん)たちが、そこにイエスのおられるのを知(し)って、押(お)しよせてきた。それはイエスに会(あ)うためだけではなく、イエスが死人(しにん)のなかから、よみがえらせたラザロを見(み)るためでもあった。 10そこで祭司長(さいしちょう)たちは、ラザロも殺(ころ)そうと相談(そうだん)した。 11それは、ラザロのことで、多(おお)くのユダヤ人(じん)が彼(かれ)らを離(はな)れ去(さ)って、イエスを信(しん)じるに至(いた)ったからである。

12その翌日(よくじつ)、祭(まつり)にきていた大(おお)ぜいの群衆(ぐんしゅう)は、イエスがエルサレムにこられると聞(き)いて、 13しゅろの枝(えだ)を手(て)にとり、迎(むか)えに出(で)て行(い)った。そして叫(さけ)んだ、
「ホサナ、
主(しゅ)の御名(みな)によってきたる者(もの)に祝福(しゅくふく)あれ、
イスラエルの王(おう)に」。
14イエスは、ろばの子(こ)を見(み)つけて、その上(うえ)に乗(の)られた。それは
15「シオンの娘(むすめ)よ、恐(おそ)れるな。
見(み)よ、あなたの王(おう)が
ろばの子(こ)に乗(の)っておいでになる」
と書(か)いてあるとおりであった。 16弟子(でし)たちは初(はじ)めにはこのことを悟(さと)らなかったが、イエスが栄光(えいこう)を受(う)けられた時(とき)に、このことがイエスについて書(か)かれてあり、またそのとおりに、人々(ひとびと)がイエスに対(たい)してしたのだということを、思(おも)い起(おこ)した。 17また、イエスがラザロを墓(はか)から呼(よ)び出(だ)して、死人(しにん)の中(なか)からよみがえらせたとき、イエスと一緒(いっしょ)にいた群衆(ぐんしゅう)が、そのあかしをした。 18群衆(ぐんしゅう)がイエスを迎(むか)えに出(で)たのは、イエスがこのようなしるしを行(おこな)われたことを、聞(き)いていたからである。 19そこで、パリサイ人(びと)たちは互(たがい)に言(い)った、「何(なに)をしてもむだだった。世(よ)をあげて彼(かれ)のあとを追(お)って行(い)ったではないか」。

20祭(まつり)で礼拝(れいはい)するために上(のぼ)ってきた人々(ひとびと)のうちに、数人(すうにん)のギリシヤ人(じん)がいた。 21彼(かれ)らはガリラヤのベツサイダ出(で)であるピリポのところにきて、「君(きみ)よ、イエスにお目(め)にかかりたいのですが」と言(い)って頼(たの)んだ。 22ピリポはアンデレのところに行(い)ってそのことを話(はな)し、アンデレとピリポは、イエスのもとに行(い)って伝(つた)えた。 23すると、イエスは答(こた)えて言(い)われた、「人(ひと)の子(こ)が栄光(えいこう)を受(う)ける時(とき)がきた。 24よくよくあなたがたに言(い)っておく。一粒(つぶ)の麦(むぎ)が地(ち)に落(お)ちて死(し)ななければ、それはただ一粒(つぶ)のままである。しかし、もし死(し)んだなら、豊(ゆた)かに実(み)を結(むす)ぶようになる。 25自分(じぶん)の命(いのち)を愛(あい)する者(もの)はそれを失(うしな)い、この世(よ)で自分(じぶん)の命(いのち)を憎(にく)む者(もの)は、それを保(たも)って永遠(えいえん)の命(いのち)に至(いた)るであろう。 26もしわたしに仕(つか)えようとする人(ひと)があれば、その人(ひと)はわたしに従(したが)って来(く)るがよい。そうすれば、わたしのおる所(ところ)に、わたしに仕(つか)える者(もの)もまた、おるであろう。もしわたしに仕(つか)えようとする人(ひと)があれば、その人(ひと)を父(ちち)は重(おも)んじて下(くだ)さるであろう。 27今(いま)わたしは心(こころ)が騒(さわ)いでいる。わたしはなんと言(い)おうか。父(ちち)よ、この時(とき)からわたしをお救(すく)い下(くだ)さい。しかし、わたしはこのために、この時(とき)に至(いた)ったのです。 28父(ちち)よ、み名(な)があがめられますように」。すると天(てん)から声(こえ)があった、「わたしはすでに栄光(えいこう)をあらわした。そして、更(さら)にそれをあらわすであろう」。 29すると、そこに立(た)っていた群衆(ぐんしゅう)がこれを聞(き)いて、「雷(かみなり)がなったのだ」と言(い)い、ほかの人(ひと)たちは、「御使(みつかい)が彼(かれ)に話(はな)しかけたのだ」と言(い)った。 30イエスは答(こた)えて言(い)われた、「この声(こえ)があったのは、わたしのためではなく、あなたがたのためである。 31今(いま)はこの世(よ)がさばかれる時(とき)である。今(いま)こそこの世(よ)の君(きみ)は追(お)い出(だ)されるであろう。 32そして、わたしがこの地(ち)から上(あ)げられる時(とき)には、すべての人(ひと)をわたしのところに引(ひ)きよせるであろう」。 33イエスはこう言(い)って、自分(じぶん)がどんな死(し)に方(ほう)で死(し)のうとしていたかを、お示(しめ)しになったのである。 34すると群衆(ぐんしゅう)はイエスにむかって言(い)った、「わたしたちは律法(りっぽう)によって、キリストはいつまでも生(い)きておいでになるのだ、と聞(き)いていました。それだのに、どうして人(ひと)の子(こ)は上(あ)げられねばならないと、言(い)われるのですか。その人(ひと)の子(こ)とは、だれのことですか」。 35そこでイエスは彼(かれ)らに言(い)われた、「もうしばらくの間(あいだ)、光(ひかり)はあなたがたと一緒(いっしょ)にここにある。光(ひかり)がある間(あいだ)に歩(ある)いて、やみに追(お)いつかれないようにしなさい。やみの中(なか)を歩(ある)く者(もの)は、自分(じぶん)がどこへ行(い)くのかわかっていない。 36光(ひかり)のある間(あいだ)に、光(ひかり)の子(こ)となるために、光(ひかり)を信(しん)じなさい」。

イエスはこれらのことを話(はな)してから、そこを立(た)ち去(さ)って、彼(かれ)らから身(み)をお隠(かく)しになった。 37このように多(おお)くのしるしを彼(かれ)らの前(まえ)でなさったが、彼(かれ)らはイエスを信(しん)じなかった。 38それは、預言者(よげんしゃ)イザヤの次(つぎ)の言葉(ことば)が成就(じょうじゅ)するためである、「主(しゅ)よ、わたしたちの説(と)くところを、だれが信(しん)じたでしょうか。また、主(しゅ)のみ腕(うで)はだれに示(しめ)されたでしょうか」。 39こういうわけで、彼(かれ)らは信(しん)じることができなかった。イザヤはまた、こうも言(い)った、 40「神(かみ)は彼(かれ)らの目(め)をくらまし、心(こころ)をかたくなになさった。それは、彼(かれ)らが目(め)で見(み)ず、心(こころ)で悟(さと)らず、悔(く)い改(あらた)めていやされることがないためである」。 41イザヤがこう言(い)ったのは、イエスの栄光(えいこう)を見(み)たからであって、イエスのことを語(かた)ったのである。 42しかし、役人(やくにん)たちの中(なか)にも、イエスを信(しん)じた者(もの)が多(おお)かったが、パリサイ人(びと)をはばかって、告白(こくはく)はしなかった。会堂(かいどう)から追(お)い出(だ)されるのを恐(おそ)れていたのである。 43彼(かれ)らは神(かみ)のほまれよりも、人(ひと)のほまれを好(この)んだからである。

44イエスは大声(おおごえ)で言(い)われた、「わたしを信(しん)じる者(もの)は、わたしを信(しん)じるのではなく、わたしをつかわされたかたを信(しん)じるのであり、 45また、わたしを見(み)る者(もの)は、わたしをつかわされたかたを見(み)るのである。 46わたしは光(ひかり)としてこの世(よ)にきた。それは、わたしを信(しん)じる者(もの)が、やみのうちにとどまらないようになるためである。 47たとい、わたしの言(い)うことを聞(き)いてそれを守(まも)らない人(ひと)があっても、わたしはその人(ひと)をさばかない。わたしがきたのは、この世(よ)をさばくためではなく、この世(よ)を救(すく)うためである。 48わたしを捨(す)てて、わたしの言葉(ことば)を受(う)けいれない人(ひと)には、その人(ひと)をさばくものがある。わたしの語(かた)ったその言葉(ことば)が、終(おわ)りの日(ひ)にその人(ひと)をさばくであろう。 49わたしは自分(じぶん)から語(かた)ったのではなく、わたしをつかわされた父(ちち)ご自身(じしん)が、わたしの言(い)うべきこと、語(かた)るべきことをお命(めい)じになったのである。 50わたしは、この命令(めいれい)が永遠(えいえん)の命(いのち)であることを知(し)っている。それゆえに、わたしが語(かた)っていることは、わたしの父(ちち)がわたしに仰(おお)せになったことを、そのまま語(かた)っているのである」。

第一三章

1過越(すぎこし)の祭(まつり)の前(まえ)に、イエスは、この世(よ)を去(さ)って父(ちち)のみもとに行(い)くべき自分(じぶん)の時(とき)がきたことを知(し)り、世(よ)にいる自分(じぶん)の者(もの)たちを愛(あい)して、彼(かれ)らを最後(さいご)まで愛(あい)し通(とお)された。 2夕食(ゆうしょく)のとき、悪魔(あくま)はすでにシモンの子(こ)イスカリオテのユダの心(こころ)に、イエスを裏切(うらぎ)ろうとする思(おも)いを入(い)れていたが、 3イエスは、父(ちち)がすべてのものを自分(じぶん)の手(て)にお与(あた)えになったこと、また、自分(じぶん)は神(かみ)から出(で)てきて、神(かみ)にかえろうとしていることを思(おも)い、 4夕食(ゆうしょく)の席(せき)から立(た)ち上(あ)がって、上着(うわぎ)を脱(ぬ)ぎ、手(て)ぬぐいをとって腰(こし)に巻(ま)き、 5それから水(みず)をたらいに入(い)れて、弟子(でし)たちの足(あし)を洗(あら)い、腰(こし)に巻(ま)いた手(て)ぬぐいでふき始(はじ)められた。 6こうして、シモン・ペテロの番(ばん)になった。すると彼(かれ)はイエスに、「主(しゅ)よ、あなたがわたしの足(あし)をお洗(あら)いになるのですか」と言(い)った。 7イエスは彼(かれ)に答(こた)えて言(い)われた、「わたしのしていることは今(いま)あなたにはわからないが、あとでわかるようになるだろう」。 8ペテロはイエスに言(い)った、「わたしの足(あし)を決(けっ)して洗(あら)わないで下(くだ)さい」。イエスは彼(かれ)に答(こた)えられた、「もしわたしがあなたの足(あし)を洗(あら)わないなら、あなたはわたしとなんの係(かか)わりもなくなる」。 9シモン・ペテロはイエスに言(い)った、「主(しゅ)よ、では、足(あし)だけではなく、どうぞ、手(て)も頭(あたま)も」。 10イエスは彼(かれ)に言(い)われた、「すでにからだを洗(あら)った者(もの)は、足(あし)のほかは洗(あら)う必要(ひつよう)がない。全身(ぜんしん)がきれいなのだから。あなたがたはきれいなのだ。しかし、みんながそうなのではない」。 11イエスは自分(じぶん)を裏切(うらぎ)る者(もの)を知(し)っておられた。それで、「みんながきれいなのではない」と言(い)われたのである。

12こうして彼(かれ)らの足(あし)を洗(あら)ってから、上着(うわぎ)をつけ、ふたたび席(せき)にもどって、彼(かれ)らに言(い)われた、「わたしがあなたがたにしたことがわかるか。 13あなたがたはわたしを教師(きょうし)、また主(しゅ)と呼(よ)んでいる。そう言(い)うのは正(ただ)しい。わたしはそのとおりである。 14しかし、主(しゅ)であり、また教師(きょうし)であるわたしが、あなたがたの足(あし)を洗(あら)ったからには、あなたがたもまた、互(たがい)に足(あし)を洗(あら)い合(あ)うべきである。 15わたしがあなたがたにしたとおりに、あなたがたもするように、わたしは手本(てほん)を示(しめ)したのだ。 16よくよくあなたがたに言(い)っておく。僕(しもべ)はその主人(しゅじん)にまさるものではなく、つかわされた者(もの)はつかわした者(もの)にまさるものではない。 17もしこれらのことがわかっていて、それを行(おこな)うなら、あなたがたはさいわいである。 18あなたがた全部(ぜんぶ)の者(もの)について、こう言(い)っているのではない。わたしは自分(じぶん)が選(えら)んだ人(ひと)たちを知(し)っている。しかし、『わたしのパンを食(た)べている者(もの)が、わたしにむかってそのかかとをあげた』とある聖書(せいしょ)は成就(じょうじゅ)されなければならない。 19そのことがまだ起(おこ)らない今(いま)のうちに、あなたがたに言(い)っておく。いよいよ事(こと)が起(おこ)ったとき、わたしがそれであることを、あなたがたが信(しん)じるためである。 20よくよくあなたがたに言(い)っておく。わたしがつかわす者(もの)を受(う)けいれる者(もの)は、わたしを受(う)けいれるのである。わたしを受(う)けいれる者(もの)は、わたしをつかわされたかたを、受(う)けいれるのである」。

21イエスがこれらのことを言(い)われた後(のち)、その心(こころ)が騒(さわ)ぎ、おごそかに言(い)われた、「よくよくあなたがたに言(い)っておく。あなたがたのうちのひとりが、わたしを裏切(うらぎ)ろうとしている」。 22弟子(でし)たちはだれのことを言(い)われたのか察(さっ)しかねて、互(たがい)に顔(かお)を見合(みあ)わせた。 23弟子(でし)たちのひとりで、イエスの愛(あい)しておられた者(もの)が、み胸(むね)に近(ちか)く席(せき)についていた。 24そこで、シモン・ペテロは彼(かれ)に合図(あいず)をして言(い)った、「だれのことをおっしゃったのか、知(し)らせてくれ」。 25その弟子(でし)はそのままイエスの胸(むね)によりかかって、「主(しゅ)よ、だれのことですか」と尋(たず)ねると、 26イエスは答(こた)えられた、「わたしが一きれの食物(しょくもつ)をひたして与(あた)える者(もの)が、それである」。そして、一きれの食物(しょくもつ)をひたしてとり上(あ)げ、シモンの子(こ)イスカリオテのユダにお与(あた)えになった。 27この一きれの食物(しょくもつ)を受(う)けるやいなや、サタンがユダにはいった。そこでイエスは彼(かれ)に言(い)われた、「しようとしていることを、今(いま)すぐするがよい」。 28席(せき)を共(とも)にしていた者(もの)のうち、なぜユダにこう言(い)われたのか、わかっていた者(もの)はひとりもなかった。 29ある人々(ひとびと)は、ユダが金入(かねい)れをあずかっていたので、イエスが彼(かれ)に、「祭(まつり)のために必要(ひつよう)なものを買(か)え」と言(い)われたか、あるいは、貧(まず)しい者(もの)に何(なに)か施(ほどこ)させようとされたのだと思(おも)っていた。 30ユダは一きれの食物(しょくもつ)を受(う)けると、すぐに出(で)て行(い)った。時(とき)は夜(よる)であった。

31さて、彼(かれ)が出(で)て行(い)くと、イエスは言(い)われた、「今(いま)や人(ひと)の子(こ)は栄光(えいこう)を受(う)けた。神(かみ)もまた彼(かれ)によって栄光(えいこう)をお受(う)けになった。 32彼(かれ)によって栄光(えいこう)をお受(う)けになったのなら、神(かみ)ご自身(じしん)も彼(かれ)に栄光(えいこう)をお授(さづ)けになるであろう。すぐにもお授(さづ)けになるであろう。 33子(こ)たちよ、わたしはまだしばらく、あなたがたと一緒(いっしょ)にいる。あなたがたはわたしを捜(さが)すだろうが、すでにユダヤ人(じん)たちに言(い)ったとおり、今(いま)あなたがたにも言(い)う、『あなたがたはわたしの行(い)く所(ところ)に来(く)ることはできない』。 34わたしは、新(あたら)しいいましめをあなたがたに与(あた)える、互(たがい)に愛(あい)し合(あ)いなさい。わたしがあなたがたを愛(あい)したように、あなたがたも互(たがい)に愛(あい)し合(あ)いなさい。 35互(たがい)に愛(あい)し合(あ)うならば、それによって、あなたがたがわたしの弟子(でし)であることを、すべての者(もの)が認(みと)めるであろう」。

36シモン・ペテロがイエスに言(い)った、「主(しゅ)よ、どこへおいでになるのですか」。イエスは答(こた)えられた、「あなたはわたしの行(い)くところに、今(いま)はついて来(く)ることはできない。しかし、あとになってから、ついて来(く)ることになろう」。 37ペテロはイエスに言(い)った、「主(しゅ)よ、なぜ、今(いま)あなたについて行(い)くことができないのですか。あなたのためには、命(いのち)も捨(す)てます」。 38イエスは答(こた)えられた、「わたしのために命(いのち)を捨(す)てると言(い)うのか。よくよくあなたに言(い)っておく。鶏(にわとり)が鳴(な)く前(まえ)に、あなたはわたしを三度(ど)知(し)らないと言(い)うであろう」。

第一四章

1「あなたがたは、心(こころ)を騒(さわ)がせないがよい。神(かみ)を信(しん)じ、またわたしを信(しん)じなさい。 2わたしの父(ちち)の家(いえ)には、すまいがたくさんある。もしなかったならば、わたしはそう言(い)っておいたであろう。あなたがたのために、場所(ばしょ)を用意(ようい)しに行(い)くのだから。 3そして、行(い)って、場所(ばしょ)の用意(ようい)ができたならば、またきて、あなたがたをわたしのところに迎(むか)えよう。わたしのおる所(ところ)にあなたがたもおらせるためである。 4わたしがどこへ行(い)くのか、その道(みち)はあなたがたにわかっている」。 5トマスはイエスに言(い)った、「主(しゅ)よ、どこへおいでになるのか、わたしたちにはわかりません。どうしてその道(みち)がわかるでしょう」。 6イエスは彼(かれ)に言(い)われた、「わたしは道(みち)であり、真理(しんり)であり、命(いのち)である。だれでもわたしによらないでは、父(ちち)のみもとに行(い)くことはできない。 7もしあなたがたがわたしを知(し)っていたならば、わたしの父(ちち)をも知(し)ったであろう。しかし、今(いま)は父(ちち)を知(し)っており、またすでに父(ちち)を見(み)たのである」。 8ピリポはイエスに言(い)った、「主(しゅ)よ、わたしたちに父(ちち)を示(しめ)して下(くだ)さい。そうして下(くだ)されば、わたしたちは満足(まんぞく)します」。 9イエスは彼(かれ)に言(い)われた、「ピリポよ、こんなに長(なが)くあなたがたと一緒(いっしょ)にいるのに、わたしがわかっていないのか。わたしを見(み)た者(もの)は、父(ちち)を見(み)たのである。どうして、わたしたちに父(ちち)を示(しめ)してほしいと、言(い)うのか。 10わたしが父(ちち)におり、父(ちち)がわたしにおられることをあなたは信(しん)じないのか。わたしがあなたがたに話(はな)している言葉(ことば)は、自分(じぶん)から話(はな)しているのではない。父(ちち)がわたしのうちにおられて、みわざをなさっているのである。 11わたしが父(ちち)におり、父(ちち)がわたしにおられることを信(しん)じなさい。もしそれが信(しん)じられないならば、わざそのものによって信(しん)じなさい。 12よくよくあなたがたに言(い)っておく。わたしを信(しん)じる者(もの)は、またわたしのしているわざをするであろう。そればかりか、もっと大(おお)きいわざをするであろう。わたしが父(ちち)のみもとに行(い)くからである。 13わたしの名(な)によって願(ねが)うことは、なんでもかなえてあげよう。父(ちち)が子(こ)によって栄光(えいこう)をお受(う)けになるためである。 14何事(なにごと)でもわたしの名(な)によって願(ねが)うならば、わたしはそれをかなえてあげよう。 15もしあなたがたがわたしを愛(あい)するならば、わたしのいましめを守(まも)るべきである。 16わたしは父(ちち)にお願(ねが)いしよう。そうすれば、父(ちち)は別(べつ)に助(たす)け主(ぬし)を送(おく)って、いつまでもあなたがたと共(とも)におらせて下(くだ)さるであろう。 17それは真理(しんり)の御霊(みたま)である。この世(よ)はそれを見(み)ようともせず、知(し)ろうともしないので、それを受(う)けることができない。あなたがたはそれを知(し)っている。なぜなら、それはあなたがたと共(とも)におり、またあなたがたのうちにいるからである。

18わたしはあなたがたを捨(す)てて孤児(こじ)とはしない。あなたがたのところに帰(かえ)って来(く)る。 19もうしばらくしたら、世(よ)はもはやわたしを見(み)なくなるだろう。しかし、あなたがたはわたしを見(み)る。わたしが生(い)きるので、あなたがたも生(い)きるからである。 20その日(ひ)には、わたしはわたしの父(ちち)におり、あなたがたはわたしにおり、また、わたしがあなたがたにおることが、わかるであろう。 21わたしのいましめを心(こころ)にいだいてこれを守(まも)る者(もの)は、わたしを愛(あい)する者(もの)である。わたしを愛(あい)する者(もの)は、わたしの父(ちち)に愛(あい)されるであろう。わたしもその人(ひと)を愛(あい)し、その人(ひと)にわたし自身(じしん)をあらわすであろう」。 22イスカリオテでない方(ほう)のユダがイエスに言(い)った、「主(しゅ)よ、あなたご自身(じしん)をわたしたちにあらわそうとして、世(よ)にはあらわそうとされないのはなぜですか」。 23イエスは彼(かれ)に答(こた)えて言(い)われた、「もしだれでもわたしを愛(あい)するならば、わたしの言葉(ことば)を守(まも)るであろう。そして、わたしの父(ちち)はその人(ひと)を愛(あい)し、また、わたしたちはその人(ひと)のところに行(い)って、その人(ひと)と一緒(いっしょ)に住(す)むであろう。 24わたしを愛(あい)さない者(もの)はわたしの言葉(ことば)を守(まも)らない。あなたがたが聞(き)いている言葉(ことば)は、わたしの言葉(ことば)ではなく、わたしをつかわされた父(ちち)の言葉(ことば)である。

25これらのことは、あなたがたと一緒(いっしょ)にいた時(とき)、すでに語(かた)ったことである。 26しかし、助(たす)け主(ぬし)、すなわち、父(ちち)がわたしの名(な)によってつかわされる聖霊(せいれい)は、あなたがたにすべてのことを教(おし)え、またわたしが話(はな)しておいたことを、ことごとく思(おも)い起(おこ)させるであろう。 27わたしは平安(へいあん)をあなたがたに残(のこ)して行(い)く。わたしの平安(へいあん)をあなたがたに与(あた)える。わたしが与(あた)えるのは、世(よ)が与(あた)えるようなものとは異(こと)なる。あなたがたは心(こころ)を騒(さわ)がせるな、またおじけるな。 28『わたしは去(さ)って行(い)くが、またあなたがたのところに帰(かえ)って来(く)る』と、わたしが言(い)ったのを、あなたがたは聞(き)いている。もしわたしを愛(あい)しているなら、わたしが父(ちち)のもとに行(い)くのを喜(よろこ)んでくれるであろう。父(ちち)がわたしより大(おお)きいかたであるからである。 29今(いま)わたしは、そのことが起(おこ)らない先(さき)にあなたがたに語(かた)った。それは、事(こと)が起(おこ)った時(とき)にあなたがたが信(しん)じるためである。 30わたしはもはや、あなたがたに、多(おお)くを語(かた)るまい。この世(よ)の君(きみ)が来(く)るからである。だが、彼(かれ)はわたしに対(たい)して、なんの力(ちから)もない。 31しかし、わたしが父(ちち)を愛(あい)していることを世(よ)が知(し)るように、わたしは父(ちち)がお命(めい)じになったとおりのことを行(おこな)うのである。立(た)て。さあ、ここから出(で)かけて行(い)こう。

第一五章

1わたしはまことのぶどうの木(き)、わたしの父(ちち)は農夫(のうふ)である。 2わたしにつながっている枝(えだ)で実(み)を結(むす)ばないものは、父(ちち)がすべてこれをとりのぞき、実(み)を結(むす)ぶものは、もっと豊(ゆた)かに実(みの)らせるために、手入(てい)れしてこれをきれいになさるのである。 3あなたがたは、わたしが語(かた)った言葉(ことば)によって既(すで)にきよくされている。 4わたしにつながっていなさい。そうすれば、わたしはあなたがたとつながっていよう。枝(えだ)がぶどうの木(き)につながっていなければ、自分(じぶん)だけでは実(み)を結(むす)ぶことができないように、あなたがたもわたしにつながっていなければ実(み)を結(むす)ぶことができない。 5わたしはぶどうの木(き)、あなたがたはその枝(えだ)である。もし人(ひと)がわたしにつながっており、またわたしがその人(ひと)とつながっておれば、その人(ひと)は実(み)を豊(ゆた)かに結(むす)ぶようになる。わたしから離(はな)れては、あなたがたは何一(なにひと)つできないからである。 6人(ひと)がわたしにつながっていないならば、枝(えだ)のように外(そと)に投(な)げすてられて枯(か)れる。人々(ひとびと)はそれをかき集(あつ)め、火(ひ)に投(な)げ入(い)れて、焼(や)いてしまうのである。 7あなたがたがわたしにつながっており、わたしの言葉(ことば)があなたがたにとどまっているならば、なんでも望(のぞ)むものを求(もと)めるがよい。そうすれば、与(あた)えられるであろう。 8あなたがたが実(み)を豊(ゆた)かに結(むす)び、そしてわたしの弟子(でし)となるならば、それによって、わたしの父(ちち)は栄光(えいこう)をお受(う)けになるであろう。 9父(ちち)がわたしを愛(あい)されたように、わたしもあなたがたを愛(あい)したのである。わたしの愛(あい)のうちにいなさい。 10もしわたしのいましめを守(まも)るならば、あなたがたはわたしの愛(あい)のうちにおるのである。それはわたしがわたしの父(ちち)のいましめを守(まも)ったので、その愛(あい)のうちにおるのと同(おな)じである。 11わたしがこれらのことを話(はな)したのは、わたしの喜(よろこ)びがあなたがたのうちにも宿(やど)るため、また、あなたがたの喜(よろこ)びが満(み)ちあふれるためである。

12わたしのいましめは、これである。わたしがあなたがたを愛(あい)したように、あなたがたも互(たがい)に愛(あい)し合(あ)いなさい。 13人(ひと)がその友(とも)のために自分(じぶん)の命(いのち)を捨(す)てること、これよりも大(おお)きな愛(あい)はない。 14あなたがたにわたしが命(めい)じることを行(おこな)うならば、あなたがたはわたしの友(とも)である。 15わたしはもう、あなたがたを僕(しもべ)とは呼(よ)ばない。僕(しもべ)は主人(しゅじん)のしていることを知(し)らないからである。わたしはあなたがたを友(とも)と呼(よ)んだ。わたしの父(ちち)から聞(き)いたことを皆(みな)、あなたがたに知(し)らせたからである。 16あなたがたがわたしを選(えら)んだのではない。わたしがあなたがたを選(えら)んだのである。そして、あなたがたを立(た)てた。それは、あなたがたが行(い)って実(み)をむすび、その実(み)がいつまでも残(のこ)るためであり、また、あなたがたがわたしの名(な)によって父(ちち)に求(もと)めるものはなんでも、父(ちち)が与(あた)えて下(くだ)さるためである。 17これらのことを命(めい)じるのは、あなたがたが互(たがい)に愛(あい)し合(あ)うためである。

18もしこの世(よ)があなたがたを憎(にく)むならば、あなたがたよりも先(さき)にわたしを憎(にく)んだことを、知(し)っておくがよい。 19もしあなたがたがこの世(よ)から出(で)たものであったなら、この世(よ)は、あなたがたを自分(じぶん)のものとして愛(あい)したであろう。しかし、あなたがたはこの世(よ)のものではない。かえって、わたしがあなたがたをこの世(よ)から選(えら)び出(だ)したのである。だから、この世(よ)はあなたがたを憎(にく)むのである。 20わたしがあなたがたに『僕(しもべ)はその主人(しゅじん)にまさるものではない』と言(い)ったことを、おぼえていなさい。もし人々(ひとびと)がわたしを迫害(はくがい)したなら、あなたがたをも迫害(はくがい)するであろう。また、もし彼(かれ)らがわたしの言葉(ことば)を守(まも)っていたなら、あなたがたの言葉(ことば)をも守(まも)るであろう。 21彼(かれ)らはわたしの名(な)のゆえに、あなたがたに対(たい)してすべてそれらのことをするであろう。それは、わたしをつかわされたかたを彼(かれ)らが知(し)らないからである。 22もしわたしがきて彼(かれ)らに語(かた)らなかったならば、彼(かれ)らは罪(つみ)を犯(おか)さないですんだであろう。しかし今(いま)となっては、彼(かれ)らには、その罪(つみ)について言(い)いのがれる道(みち)がない。 23わたしを憎(にく)む者(もの)は、わたしの父(ちち)をも憎(にく)む。 24もし、ほかのだれもがしなかったようなわざを、わたしが彼(かれ)らの間(あいだ)でしなかったならば、彼(かれ)らは罪(つみ)を犯(おか)さないですんだであろう。しかし事実(じじつ)、彼(かれ)らはわたしとわたしの父(ちち)とを見(み)て、憎(にく)んだのである。 25それは、『彼(かれ)らは理由(りゆう)なしにわたしを憎(にく)んだ』と書(か)いてある彼(かれ)らの律法(りっぽう)の言葉(ことば)が成就(じょうじゅ)するためである。 26わたしが父(ちち)のみもとからあなたがたにつかわそうとしている助(たす)け主(ぬし)、すなわち、父(ちち)のみもとから来(く)る真理(しんり)の御霊(みたま)が下(くだ)る時(とき)、それはわたしについてあかしをするであろう。 27あなたがたも、初(はじ)めからわたしと一緒(いっしょ)にいたのであるから、あかしをするのである。

第一六章

1わたしがこれらのことを語(かた)ったのは、あなたがたがつまずくことのないためである。 2人々(ひとびと)はあなたがたを会堂(かいどう)から追(お)い出(だ)すであろう。更(さら)にあなたがたを殺(ころ)す者(もの)がみな、それによって自分(じぶん)たちは神(かみ)に仕(つか)えているのだと思(おも)う時(とき)が来(く)るであろう。 3彼(かれ)らがそのようなことをするのは、父(ちち)をもわたしをも知(し)らないからである。 4わたしがあなたがたにこれらのことを言(い)ったのは、彼(かれ)らの時(とき)がきた場合(ばあい)、わたしが彼(かれ)らについて言(い)ったことを、思(おも)い起(おこ)させるためである。これらのことを初(はじ)めから言(い)わなかったのは、わたしがあなたがたと一緒(いっしょ)にいたからである。 5けれども今(いま)わたしは、わたしをつかわされたかたのところに行(い)こうとしている。しかし、あなたがたのうち、だれも『どこへ行(い)くのか』と尋(たず)ねる者(もの)はない。 6かえって、わたしがこれらのことを言(い)ったために、あなたがたの心(こころ)は憂(うれ)いで満(み)たされている。 7しかし、わたしはほんとうのことをあなたがたに言(い)うが、わたしが去(さ)って行(い)くことは、あなたがたの益(えき)になるのだ。わたしが去(さ)って行(い)かなければ、あなたがたのところに助(たす)け主(ぬし)はこないであろう。もし行(い)けば、それをあなたがたにつかわそう。 8それがきたら、罪(つみ)と義(ぎ)とさばきとについて、世(よ)の人(ひと)の目(め)を開(ひら)くであろう。 9罪(つみ)についてと言(い)ったのは、彼(かれ)らがわたしを信(しん)じないからである。 10義(ぎ)についてと言(い)ったのは、わたしが父(ちち)のみもとに行(い)き、あなたがたは、もはやわたしを見(み)なくなるからである。 11さばきについてと言(い)ったのは、この世(よ)の君(きみ)がさばかれるからである。

12わたしには、あなたがたに言(い)うべきことがまだ多(おお)くあるが、あなたがたは今(いま)はそれに堪(た)えられない。 13けれども真理(しんり)の御霊(みたま)が来(く)る時(とき)には、あなたがたをあらゆる真理(しんり)に導(みちび)いてくれるであろう。それは自分(じぶん)から語(かた)るのではなく、その聞(き)くところを語(かた)り、きたるべき事(こと)をあなたがたに知(し)らせるであろう。 14御霊(みたま)はわたしに栄光(えいこう)を得(え)させるであろう。わたしのものを受(う)けて、それをあなたがたに知(し)らせるからである。 15父(ちち)がお持(も)ちになっているものはみな、わたしのものである。御霊(みたま)はわたしのものを受(う)けて、それをあなたがたに知(し)らせるのだと、わたしが言(い)ったのは、そのためである。

16しばらくすれば、あなたがたはもうわたしを見(み)なくなる。しかし、またしばらくすれば、わたしに会(あ)えるであろう」。 17そこで、弟子(でし)たちのうちのある者(もの)は互(たがい)に言(い)い合(あ)った、「『しばらくすれば、わたしを見(み)なくなる。またしばらくすれば、わたしに会(あ)えるであろう』と言(い)われ、『わたしの父(ちち)のところに行(い)く』と言(い)われたのは、いったい、どういうことなのであろう」。 18彼(かれ)らはまた言(い)った、「『しばらくすれば』と言(い)われるのは、どういうことか。わたしたちには、その言葉(ことば)の意味(いみ)がわからない」。 19イエスは、彼(かれ)らが尋(たず)ねたがっていることに気(き)がついて、彼(かれ)らに言(い)われた、「しばらくすればわたしを見(み)なくなる、またしばらくすればわたしに会(あ)えるであろうと、わたしが言(い)ったことで、互(たがい)に論(ろん)じ合(あ)っているのか。 20よくよくあなたがたに言(い)っておく。あなたがたは泣(な)き悲(かな)しむが、この世(よ)は喜(よろこ)ぶであろう。あなたがたは憂(うれ)えているが、その憂(うれ)いは喜(よろこ)びに変(かわ)るであろう。 21女(おんな)が子(こ)を産(う)む場合(ばあい)には、その時(とき)がきたというので、不安(ふあん)を感(かん)じる。しかし、子(こ)を産(う)んでしまえば、もはやその苦(くる)しみをおぼえてはいない。ひとりの人(ひと)がこの世(よ)に生(うま)れた、という喜(よろこ)びがあるためである。 22このように、あなたがたにも今(いま)は不安(ふあん)がある。しかし、わたしは再(ふたた)びあなたがたと会(あ)うであろう。そして、あなたがたの心(こころ)は喜(よろこ)びに満(み)たされるであろう。その喜(よろこ)びをあなたがたから取(と)り去(さ)る者(もの)はいない。 23その日(ひ)には、あなたがたがわたしに問(と)うことは、何(なに)もないであろう。よくよくあなたがたに言(い)っておく。あなたがたが父(ちち)に求(もと)めるものはなんでも、わたしの名(な)によって下(くだ)さるであろう。 24今(いま)までは、あなたがたはわたしの名(な)によって求(もと)めたことはなかった。求(もと)めなさい、そうすれば、与(あた)えられるであろう。そして、あなたがたの喜(よろこ)びが満(み)ちあふれるであろう。

25わたしはこれらのことを比喩(ひゆ)で話(はな)したが、もはや比喩(ひゆ)では話(はな)さないで、あからさまに、父(ちち)のことをあなたがたに話(はな)してきかせる時(とき)が来(く)るであろう。 26その日(ひ)には、あなたがたは、わたしの名(な)によって求(もと)めるであろう。わたしは、あなたがたのために父(ちち)に願(ねが)ってあげようとは言(い)うまい。 27父(ちち)ご自身(じしん)があなたがたを愛(あい)しておいでになるからである。それは、あなたがたがわたしを愛(あい)したため、また、わたしが神(かみ)のみもとからきたことを信(しん)じたためである。 28わたしは父(ちち)から出(で)てこの世(よ)にきたが、またこの世(よ)を去(さ)って、父(ちち)のみもとに行(い)くのである」。

29弟子(でし)たちは言(い)った、「今(いま)はあからさまにお話(はな)しになって、少(すこ)しも比喩(ひゆ)ではお話(はな)しになりません。 30あなたはすべてのことをご存(ぞん)じであり、だれもあなたにお尋(たず)ねする必要(ひつよう)のないことが、今(いま)わかりました。このことによって、わたしたちはあなたが神(かみ)からこられたかたであると信(しん)じます」。 31イエスは答(こた)えられた、「あなたがたは今(いま)信(しん)じているのか。 32見(み)よ、あなたがたは散(ち)らされて、それぞれ自分(じぶん)の家(いえ)に帰(かえ)り、わたしをひとりだけ残(のこ)す時(とき)が来(く)るであろう。いや、すでにきている。しかし、わたしはひとりでいるのではない。父(ちち)がわたしと一緒(いっしょ)におられるのである。 33これらのことをあなたがたに話(はな)したのは、わたしにあって平安(へいあん)を得(え)るためである。あなたがたは、この世(よ)ではなやみがある。しかし、勇気(ゆうき)を出(だ)しなさい。わたしはすでに世(よ)に勝(か)っている」。

第一七章

1これらのことを語(かた)り終(お)えると、イエスは天(てん)を見(み)あげて言(い)われた、「父(ちち)よ、時(とき)がきました。あなたの子(こ)があなたの栄光(えいこう)をあらわすように、子(こ)の栄光(えいこう)をあらわして下(くだ)さい。 2あなたは、子(こ)に賜(たま)わったすべての者(もの)に、永遠(えいえん)の命(いのち)を授(さづ)けさせるため、万民(ばんみん)を支配(しはい)する権威(けんい)を子(こ)にお与(あた)えになったのですから。 3永遠(えいえん)の命(いのち)とは、唯一(ゆいいつ)の、まことの神(かみ)でいますあなたと、また、あなたがつかわされたイエス・キリストとを知(し)ることであります。 4わたしは、わたしにさせるためにお授(さづ)けになったわざをなし遂(と)げて、地上(ちじょう)であなたの栄光(えいこう)をあらわしました。 5父(ちち)よ、世(よ)が造(つく)られる前(まえ)に、わたしがみそばで持(も)っていた栄光(えいこう)で、今(いま)み前(まえ)にわたしを輝(かがや)かせて下(くだ)さい。

6わたしは、あなたが世(よ)から選(えら)んでわたしに賜(たま)わった人々(ひとびと)に、み名(な)をあらわしました。彼(かれ)らはあなたのものでありましたが、わたしに下(くだ)さいました。そして、彼(かれ)らはあなたの言葉(ことば)を守(まも)りました。 7いま彼(かれ)らは、わたしに賜(たま)わったものはすべて、あなたから出(で)たものであることを知(し)りました。 8なぜなら、わたしはあなたからいただいた言葉(ことば)を彼(かれ)らに与(あた)え、そして彼(かれ)らはそれを受(う)け、わたしがあなたから出(で)たものであることをほんとうに知(し)り、また、あなたがわたしをつかわされたことを信(しん)じるに至(いた)ったからです。 9わたしは彼(かれ)らのためにお願(ねが)いします。わたしがお願(ねが)いするのは、この世(よ)のためにではなく、あなたがわたしに賜(たま)わった者(もの)たちのためです。彼(かれ)らはあなたのものなのです。 10わたしのものは皆(みな)あなたのもの、あなたのものはわたしのものです。そして、わたしは彼(かれ)らによって栄光(えいこう)を受(う)けました。 11わたしはもうこの世(よ)にはいなくなりますが、彼(かれ)らはこの世(よ)に残(のこ)っており、わたしはみもとに参(まい)ります。聖(せい)なる父(ちち)よ、わたしに賜(たま)わった御名(みな)によって彼(かれ)らを守(まも)って下(くだ)さい。それはわたしたちが一つであるように、彼(かれ)らも一つになるためであります。 12わたしが彼(かれ)らと一緒(いっしょ)にいた間(あいだ)は、あなたからいただいた御名(みな)によって彼(かれ)らを守(まも)り、また保護(ほご)してまいりました。彼(かれ)らのうち、だれも滅(ほろ)びず、ただ滅(ほろ)びの子(こ)だけが滅(ほろ)びました。それは聖書(せいしょ)が成就(じょうじゅ)するためでした。 13今(いま)わたしはみもとに参(まい)ります。そして世(よ)にいる間(あいだ)にこれらのことを語(かた)るのは、わたしの喜(よろこ)びが彼(かれ)らのうちに満(み)ちあふれるためであります。 14わたしは彼(かれ)らに御言(みことば)を与(あた)えましたが、世(よ)は彼(かれ)らを憎(にく)みました。わたしが世(よ)のものでないように、彼(かれ)らも世(よ)のものではないからです。 15わたしがお願(ねが)いするのは、彼(かれ)らを世(よ)から取(と)り去(さ)ることではなく、彼(かれ)らを悪(あ)しき者(もの)から守(まも)って下(くだ)さることであります。 16わたしが世(よ)のものでないように、彼(かれ)らも世(よ)のものではありません。 17真理(しんり)によって彼(かれ)らを聖(せい)別(べつ)して下(くだ)さい。あなたの御言(みことば)は真理(しんり)であります。 18あなたがわたしを世(よ)につかわされたように、わたしも彼(かれ)らを世(よ)につかわしました。 19また彼(かれ)らが真理(しんり)によって聖(せい)別(べつ)されるように、彼(かれ)らのためわたし自身(じしん)を聖(せい)別(べつ)いたします。

20わたしは彼(かれ)らのためばかりではなく、彼(かれ)らの言葉(ことば)を聞(き)いてわたしを信(しん)じている人々(ひとびと)のためにも、お願(ねが)いいたします。 21父(ちち)よ、それは、あなたがわたしのうちにおられ、わたしがあなたのうちにいるように、みんなの者(もの)が一つとなるためであります。すなわち、彼(かれ)らをもわたしたちのうちにおらせるためであり、それによって、あなたがわたしをおつかわしになったことを、世(よ)が信(しん)じるようになるためであります。 22わたしは、あなたからいただいた栄光(えいこう)を彼(かれ)らにも与(あた)えました。それは、わたしたちが一つであるように、彼(かれ)らも一つになるためであります。 23わたしが彼(かれ)らにおり、あなたがわたしにいますのは、彼(かれ)らが完全(かんぜん)に一つとなるためであり、また、あなたがわたしをつかわし、わたしを愛(あい)されたように、彼(かれ)らをお愛(あい)しになったことを、世(よ)が知(し)るためであります。 24父(ちち)よ、あなたがわたしに賜(たま)わった人々(ひとびと)が、わたしのいる所(ところ)に一緒(いっしょ)にいるようにして下(くだ)さい。天地(てんち)が造(つく)られる前(まえ)からわたしを愛(あい)して下(くだ)さって、わたしに賜(たま)わった栄光(えいこう)を、彼(かれ)らに見(み)させて下(くだ)さい。 25正(ただ)しい父(ちち)よ、この世(よ)はあなたを知(し)っていません。しかし、わたしはあなたを知(し)り、また彼(かれ)らも、あなたがわたしをおつかわしになったことを知(し)っています。 26そしてわたしは彼(かれ)らに御名(みな)を知(し)らせました。またこれからも知(し)らせましょう。それは、あなたがわたしを愛(あい)して下(くだ)さったその愛(あい)が彼(かれ)らのうちにあり、またわたしも彼(かれ)らのうちにおるためであります」。

第一八章

1イエスはこれらのことを語(かた)り終(お)えて、弟子(でし)たちと一緒(いっしょ)にケデロンの谷(たに)の向(む)こうへ行(い)かれた。そこには園(その)があって、イエスは弟子(でし)たちと一緒(いっしょ)にその中(なか)にはいられた。 2イエスを裏切(うらぎ)ったユダは、その所(ところ)をよく知(し)っていた。イエスと弟子(でし)たちとがたびたびそこで集(あつ)まったことがあるからである。 3さてユダは、一隊(いったい)の兵卒(へいそつ)と祭司長(さいしちょう)やパリサイ人(びと)たちの送(おく)った下役(したやく)どもを引(ひ)き連(つ)れ、たいまつやあかりや武器(ぶき)を持(も)って、そこへやってきた。 4しかしイエスは、自分(じぶん)の身(み)に起(おこ)ろうとすることをことごとく承知(しょうち)しておられ、進(すす)み出(で)て彼(かれ)らに言(い)われた、「だれを捜(さが)しているのか」。 5彼(かれ)らは「ナザレのイエスを」と答(こた)えた。イエスは彼(かれ)らに言(い)われた、「わたしが、それである」。イエスを裏切(うらぎ)ったユダも、彼(かれ)らと一緒(いっしょ)に立(た)っていた。 6イエスが彼(かれ)らに「わたしが、それである」と言(い)われたとき、彼(かれ)らはうしろに引(ひ)きさがって地(ち)に倒(たお)れた。 7そこでまた彼(かれ)らに、「だれを捜(さが)しているのか」とお尋(たず)ねになると、彼(かれ)らは「ナザレのイエスを」と言(い)った。 8イエスは答(こた)えられた、「わたしがそれであると、言(い)ったではないか。わたしを捜(さが)しているのなら、この人(ひと)たちを去(さ)らせてもらいたい」。 9それは、「あなたが与(あた)えて下(くだ)さった人(ひと)たちの中(なか)のひとりも、わたしは失(うしな)わなかった」とイエスの言(い)われた言葉(ことば)が、成就(じょうじゅ)するためである。 10シモン・ペテロは剣(けん)を持(も)っていたが、それを抜(ぬ)いて、大祭司(だいさいし)の僕(しもべ)に切(き)りかかり、その右(みぎ)の耳(みみ)を切(き)り落(おと)した。その僕(しもべ)の名(な)はマルコスであった。 11すると、イエスはペテロに言(い)われた、「剣(けん)をさやに納(おさ)めなさい。父(ちち)がわたしに下(くだ)さった杯(さかずき)は、飲(の)むべきではないか」。

12それから一隊(いったい)の兵卒(へいそつ)やその千卒長(せんそつちょう)やユダヤ人(じん)の下役(したやく)どもが、イエスを捕(とら)え、縛(しば)りあげて、 13まずアンナスのところに引(ひ)き連(つ)れて行(い)った。彼(かれ)はその年(とし)の大祭司(だいさいし)カヤパのしゅうとであった。 14カヤパは前(まえ)に、ひとりの人(ひと)が民(たみ)のために死(し)ぬのはよいことだと、ユダヤ人(じん)に助言(じょげん)した者(もの)であった。

15シモン・ペテロともうひとりの弟子(でし)とが、イエスについて行(い)った。この弟子(でし)は大祭司(だいさいし)の知(し)り合(あ)いであったので、イエスと一緒(いっしょ)に大祭司(だいさいし)の中庭(なかにわ)にはいった。 16しかし、ペテロは外(そと)で戸口(とぐち)に立(た)っていた。すると大祭司(だいさいし)の知(し)り合(あ)いであるその弟子(でし)が、外(そと)に出(で)て行(い)って門番(もんばん)の女(おんな)に話(はな)し、ペテロを内(うち)に入(い)れてやった。 17すると、この門番(もんばん)の女(おんな)がペテロに言(い)った、「あなたも、あの人(ひと)の弟子(でし)のひとりではありませんか」。ペテロは「いや、そうではない」と答(こた)えた。 18僕(しもべ)や下役(したやく)どもは、寒(さむ)い時(とき)であったので、炭火(すみび)をおこし、そこに立(た)ってあたっていた。ペテロもまた彼(かれ)らに交(ま)じり、立(た)ってあたっていた。

19大祭司(だいさいし)はイエスに、弟子(でし)たちのことやイエスの教(おしえ)のことを尋(たず)ねた。 20イエスは答(こた)えられた、「わたしはこの世(よ)に対(たい)して公然(こうぜん)と語(かた)ってきた。すべてのユダヤ人(じん)が集(あつ)まる会堂(かいどう)や宮(みや)で、いつも教(おし)えていた。何事(なにごと)も隠(かく)れて語(かた)ったことはない。 21なぜ、わたしに尋(たず)ねるのか。わたしが彼(かれ)らに語(かた)ったことは、それを聞(き)いた人々(ひとびと)に尋(たず)ねるがよい。わたしの言(い)ったことは、彼(かれ)らが知(し)っているのだから」。 22イエスがこう言(い)われると、そこに立(た)っていた下役(したやく)のひとりが、「大祭司(だいさいし)にむかって、そのような答(こたえ)をするのか」と言(い)って、平手(ひらて)でイエスを打(う)った。 23イエスは答(こた)えられた、「もしわたしが何(なに)か悪(わる)いことを言(い)ったのなら、その悪(わる)い理由(りゆう)を言(い)いなさい。しかし、正(ただ)しいことを言(い)ったのなら、なぜわたしを打(う)つのか」。 24それからアンナスは、イエスを縛(しば)ったまま大祭司(だいさいし)カヤパのところへ送(おく)った。 25シモン・ペテロは、立(た)って火(ひ)にあたっていた。すると人々(ひとびと)が彼(かれ)に言(い)った、「あなたも、あの人(ひと)の弟子(でし)のひとりではないか」。彼(かれ)はそれをうち消(け)して、「いや、そうではない」と言(い)った。 26大祭司(だいさいし)の僕(しもべ)のひとりで、ペテロに耳(みみ)を切(き)りおとされた人(ひと)の親族(しんぞく)の者(もの)が言(い)った、「あなたが園(その)であの人(ひと)と一緒(いっしょ)にいるのを、わたしは見(み)たではないか」。 27ペテロはまたそれを打(う)ち消(け)した。するとすぐに、鶏(にわとり)が鳴(な)いた。

28それから人々(ひとびと)は、イエスをカヤパのところから官邸(かんてい)につれて行(い)った。時(とき)は夜明(よあ)けであった。彼(かれ)らは、けがれを受(う)けないで過越(すぎこし)の食事(しょくじ)ができるように、官邸(かんてい)にはいらなかった。 29そこで、ピラトは彼(かれ)らのところに出(で)てきて言(い)った、「あなたがたは、この人(ひと)に対(たい)してどんな訴(うった)えを起(おこ)すのか」。 30彼(かれ)らはピラトに答(こた)えて言(い)った、「もしこの人(ひと)が悪事(あくじ)をはたらかなかったなら、あなたに引(ひ)き渡(わた)すようなことはしなかったでしょう」。 31そこでピラトは彼(かれ)らに言(い)った、「あなたがたは彼(かれ)を引(ひ)き取(と)って、自分(じぶん)たちの律法(りっぽう)でさばくがよい」。ユダヤ人(じん)らは彼(かれ)に言(い)った、「わたしたちには、人(ひと)を死刑(しけい)にする権限(けんげん)がありません」。 32これは、ご自身(じしん)がどんな死(し)にかたをしようとしているかを示(しめ)すために言(い)われたイエスの言葉(ことば)が、成就(じょうじゅ)するためである。

33さて、ピラトはまた官邸(かんてい)にはいり、イエスを呼(よ)び出(だ)して言(い)った、「あなたは、ユダヤ人(じん)の王(おう)であるか」。 34イエスは答(こた)えられた、「あなたがそう言(い)うのは、自分(じぶん)の考(かんが)えからか。それともほかの人々(ひとびと)が、わたしのことをあなたにそう言(い)ったのか」。 35ピラトは答(こた)えた、「わたしはユダヤ人(じん)なのか。あなたの同族(どうぞく)や祭司長(さいしちょう)たちが、あなたをわたしに引(ひ)き渡(わた)したのだ。あなたは、いったい、何(なに)をしたのか」。 36イエスは答(こた)えられた、「わたしの国(くに)はこの世(よ)のものではない。もしわたしの国(くに)がこの世(よ)のものであれば、わたしに従(したが)っている者(もの)たちは、わたしをユダヤ人(じん)に渡(わた)さないように戦(たたか)ったであろう。しかし事実(じじつ)、わたしの国(くに)はこの世(よ)のものではない」。 37そこでピラトはイエスに言(い)った、「それでは、あなたは王(おう)なのだな」。イエスは答(こた)えられた、「あなたの言(い)うとおり、わたしは王(おう)である。わたしは真理(しんり)についてあかしをするために生(うま)れ、また、そのためにこの世(よ)にきたのである。だれでも真理(しんり)につく者(もの)は、わたしの声(こえ)に耳(みみ)を傾(かたむ)ける」。 38ピラトはイエスに言(い)った、「真理(しんり)とは何(なに)か」。こう言(い)って、彼(かれ)はまたユダヤ人(じん)の所(ところ)に出(で)て行(い)き、彼(かれ)らに言(い)った、「わたしには、この人(ひと)になんの罪(つみ)も見(み)いだせない。 39過越(すぎこし)の時(とき)には、わたしがあなたがたのために、ひとりの人(ひと)を許(ゆる)してやるのが、あなたがたのしきたりになっている。ついては、あなたがたは、このユダヤ人(じん)の王(おう)を許(ゆる)してもらいたいのか」。 40すると彼(かれ)らは、また叫(さけ)んで「その人(ひと)ではなく、バラバを」と言(い)った。このバラバは強盗(ごうとう)であった。

第一九章

1そこでピラトは、イエスを捕(とら)え、むちで打(う)たせた。 2兵卒(へいそつ)たちは、いばらで冠(かんむり)をあんで、イエスの頭(あたま)にかぶらせ、紫(むらさき)の上着(うわぎ)を着(き)せ、 3それから、その前(まえ)に進(すす)み出(で)て、「ユダヤ人(じん)の王(おう)、ばんざい」と言(い)った。そして平手(ひらて)でイエスを打(う)ちつづけた。 4するとピラトは、また出(で)て行(い)ってユダヤ人(じん)たちに言(い)った、「見(み)よ、わたしはこの人(ひと)をあなたがたの前(まえ)に引(ひ)き出(だ)すが、それはこの人(ひと)になんの罪(つみ)も見(み)いだせないことを、あなたがたに知(し)ってもらうためである」。 5イエスはいばらの冠(かんむり)をかぶり、紫(むらさき)の上着(うわぎ)を着(き)たままで外(そと)へ出(で)られると、ピラトは彼(かれ)らに言(い)った、「見(み)よ、この人(ひと)だ」。 6祭司長(さいしちょう)たちや下役(したやく)どもはイエスを見(み)ると、叫(さけ)んで「十字架(じゅうじか)につけよ、十字架(じゅうじか)につけよ」と言(い)った。ピラトは彼(かれ)らに言(い)った、「あなたがたが、この人(ひと)を引(ひ)き取(と)って十字架(じゅうじか)につけるがよい。わたしは、彼(かれ)にはなんの罪(つみ)も見(み)いだせない」。 7ユダヤ人(じん)たちは彼(かれ)に答(こた)えた、「わたしたちには律法(りっぽう)があります。その律法(りっぽう)によれば、彼(かれ)は自分(じぶん)を神(かみ)の子(こ)としたのだから、死罪(しざい)に当(あた)る者(もの)です」。 8ピラトがこの言葉(ことば)を聞(き)いたとき、ますますおそれ、 9もう一度(ど)官邸(かんてい)にはいってイエスに言(い)った、「あなたは、もともと、どこからきたのか」。しかし、イエスはなんの答(こたえ)もなさらなかった。 10そこでピラトは言(い)った、「何(なに)も答(こた)えないのか。わたしには、あなたを許(ゆる)す権威(けんい)があり、また十字架(じゅうじか)につける権威(けんい)があることを、知(し)らないのか」。 11イエスは答(こた)えられた、「あなたは、上(うえ)から賜(たま)わるのでなければ、わたしに対(たい)してなんの権威(けんい)もない。だから、わたしをあなたに引(ひ)き渡(わた)した者(もの)の罪(つみ)は、もっと大(おお)きい」。 12これを聞(き)いて、ピラトはイエスを許(ゆる)そうと努(つと)めた。しかしユダヤ人(じん)たちが叫(さけ)んで言(い)った、「もしこの人(ひと)を許(ゆる)したなら、あなたはカイザルの味方(みかた)ではありません。自分(じぶん)を王(おう)とするものはすべて、カイザルにそむく者(もの)です」。 13ピラトはこれらの言葉(ことば)を聞(き)いて、イエスを外(そと)へ引(ひ)き出(だ)して行(い)き、敷石(しきいし)(ヘブル語(ご)ではガバタ)という場所(ばしょ)で裁判(さいばん)の席(せき)についた。 14その日(ひ)は過越(すぎこし)の準備(じゅんび)の日(ひ)であって、時(とき)は昼(ひる)の十二時(じ)ころであった。ピラトはユダヤ人(じん)らに言(い)った、「見(み)よ、これがあなたがたの王(おう)だ」。 15すると彼(かれ)らは叫(さけ)んだ、「殺(ころ)せ、殺(ころ)せ、彼(かれ)を十字架(じゅうじか)につけよ」。ピラトは彼(かれ)らに言(い)った、「あなたがたの王(おう)を、わたしが十字架(じゅうじか)につけるのか」。祭司長(さいしちょう)たちは答(こた)えた、「わたしたちには、カイザル以外(いがい)に王(おう)はありません」。 16そこでピラトは、十字架(じゅうじか)につけさせるために、イエスを彼(かれ)らに引(ひ)き渡(わた)した。

彼(かれ)らはイエスを引(ひ)き取(と)った。 17イエスはみずから十字架(じゅうじか)を背負(せお)って、されこうべ(ヘブル語(ご)ではゴルゴダ)という場所(ばしょ)に出(で)て行(い)かれた。 18彼(かれ)らはそこで、イエスを十字架(じゅうじか)につけた。イエスをまん中(なか)にして、ほかのふたりの者(もの)を両側(りょうがわ)に、イエスと一緒(いっしょ)に十字架(じゅうじか)につけた。 19ピラトは罪状(ざいじょう)書(が)きを書(か)いて、十字架(じゅうじか)の上(うえ)にかけさせた。それには「ユダヤ人(じん)の王(おう)、ナザレのイエス」と書(か)いてあった。 20イエスが十字架(じゅうじか)につけられた場所(ばしょ)は都(みやこ)に近(ちか)かったので、多(おお)くのユダヤ人(じん)がこの罪状(ざいじょう)書(が)きを読(よ)んだ。それはヘブル、ローマ、ギリシヤの国語(こくご)で書(か)いてあった。 21ユダヤ人(じん)の祭司長(さいしちょう)たちがピラトに言(い)った、「『ユダヤ人(じん)の王(おう)』と書(か)かずに、『この人(ひと)はユダヤ人(じん)の王(おう)と自(じ)称(しょう)していた』と書(か)いてほしい」。 22ピラトは答(こた)えた、「わたしが書(か)いたことは、書(か)いたままにしておけ」。

23さて、兵卒(へいそつ)たちはイエスを十字架(じゅうじか)につけてから、その上着(うわぎ)をとって四つに分(わ)け、おのおの、その一つを取(と)った。また下着(したぎ)を手(て)に取(と)ってみたが、それには縫(ぬ)い目(め)がなく、上(うえ)の方(ほう)から全部(ぜんぶ)一つに織(お)ったものであった。 24そこで彼(かれ)らは互(たがい)に言(い)った、「それを裂(さ)かないで、だれのものになるか、くじを引(ひ)こう」。これは、「彼(かれ)らは互(たがい)にわたしの上着(うわぎ)を分(わ)け合(あ)い、わたしの衣(ころも)をくじ引にした」という聖書(せいしょ)が成就(じょうじゅ)するためで、兵卒(へいそつ)たちはそのようにしたのである。 25さて、イエスの十字架(じゅうじか)のそばには、イエスの母(はは)と、母(はは)の姉妹(しまい)と、クロパの妻(つま)マリヤと、マグダラのマリヤとが、たたずんでいた。 26イエスは、その母(はは)と愛弟子(あいでし)とがそばに立(た)っているのをごらんになって、母(はは)にいわれた、「婦人(ふじん)よ、ごらんなさい。これはあなたの子(こ)です」。 27それからこの弟子(でし)に言(い)われた、「ごらんなさい。これはあなたの母(はは)です」。そのとき以来(いらい)、この弟子(でし)はイエスの母(はは)を自分(じぶん)の家(いえ)に引(ひ)きとった。

28そののち、イエスは今(いま)や万事(ばんじ)が終(おわ)ったことを知(し)って、「わたしは、かわく」と言(い)われた。それは、聖書(せいしょ)が全(まっと)うされるためであった。 29そこに、酢(す)いぶどう酒(しゅ)がいっぱい入(い)れてある器(うつわ)がおいてあったので、人々(ひとびと)は、このぶどう酒(しゅ)を含(ふく)ませた海綿(かいめん)をヒソプの茎(くき)に結(むす)びつけて、イエスの口(くち)もとにさし出(だ)した。 30すると、イエスはそのぶどう酒(しゅ)を受(う)けて、「すべてが終(おわ)った」と言(い)われ、首(くび)をたれて息(いき)をひきとられた。

31さてユダヤ人(じん)たちは、その日(ひ)が準備(じゅんび)の日(ひ)であったので、安息日(あんそくにち)に死体(したい)を十字架(じゅうじか)の上(うえ)に残(のこ)しておくまいと、(特(とく)にその安息日(あんそくにち)は大事(だいじ)な日(ひ)であったから)、ピラトに願(ねが)って、足(あし)を折(お)った上(うえ)で、死体(したい)を取(と)りおろすことにした。 32そこで兵卒(へいそつ)らがきて、イエスと一緒(いっしょ)に十字架(じゅうじか)につけられた初(はじ)めの者(もの)と、もうひとりの者(もの)との足(あし)を折(お)った。 33しかし、彼(かれ)らがイエスのところにきた時(とき)、イエスはもう死(し)んでおられたのを見(み)て、その足(あし)を折(お)ることはしなかった。 34しかし、ひとりの兵卒(へいそつ)がやりでそのわきを突(つ)きさすと、すぐ血(ち)と水(みず)とが流(なが)れ出(で)た。 35それを見(み)た者(もの)があかしをした。そして、そのあかしは真実(しんじつ)である。その人(ひと)は、自分(じぶん)が真実(しんじつ)を語(かた)っていることを知(し)っている。それは、あなたがたも信(しん)ずるようになるためである。 36これらのことが起(おこ)ったのは、「その骨(ほね)はくだかれないであろう」との聖書(せいしょ)の言葉(ことば)が、成就(じょうじゅ)するためである。 37また聖書(せいしょ)のほかのところに、「彼(かれ)らは自分(じぶん)が刺(さ)し通(とお)した者(もの)を見(み)るであろう」とある。

38そののち、ユダヤ人(じん)をはばかって、ひそかにイエスの弟子(でし)となったアリマタヤのヨセフという人(ひと)が、イエスの死体(したい)を取(と)りおろしたいと、ピラトに願(ねが)い出(で)た。ピラトはそれを許(ゆる)したので、彼(かれ)はイエスの死体(したい)を取(と)りおろしに行(い)った。 39また、前(まえ)に、夜(よる)、イエスのみもとに行(い)ったニコデモも、没薬(もつやく)と沈香(ぢんこう)とをまぜたものを百斤(きん)ほど持(も)ってきた。 40彼(かれ)らは、イエスの死体(したい)を取(と)りおろし、ユダヤ人(じん)の埋葬(まいそう)の習慣(しゅうかん)にしたがって、香料(こうりょう)を入(い)れて亜麻布(あまぬの)で巻(ま)いた。 41イエスが十字架(じゅうじか)にかけられた所(ところ)には、一つの園(その)があり、そこにはまだだれも葬(ほうむ)られたことのない新(あたら)しい墓(はか)があった。 42その日(ひ)はユダヤ人(じん)の準備(じゅんび)の日(ひ)であったので、その墓(はか)が近(ちか)くにあったため、イエスをそこに納(おさ)めた。

第二〇章

1さて、一週(しゅう)の初(はじ)めの日(ひ)に、朝(あさ)早(はや)くまだ暗(くら)いうちに、マグダラのマリヤが墓(はか)に行(い)くと、墓(はか)から石(いし)がとりのけてあるのを見(み)た。 2そこで走(はし)って、シモン・ペテロとイエスが愛(あい)しておられた、もうひとりの弟子(でし)のところへ行(い)って、彼(かれ)らに言(い)った、「だれかが、主(しゅ)を墓(はか)から取(と)り去(さ)りました。どこへ置(お)いたのか、わかりません」。 3そこでペテロともうひとりの弟子(でし)は出(で)かけて、墓(はか)へむかって行(い)った。 4ふたりは一緒(いっしょ)に走(はし)り出(だ)したが、そのもうひとりの弟子(でし)の方(ほう)が、ペテロよりも早(はや)く走(はし)って先(さき)に墓(はか)に着(つ)き、 5そして身(み)をかがめてみると、亜麻布(あまぬの)がそこに置(お)いてあるのを見(み)たが、中(なか)へははいらなかった。 6シモン・ペテロも続(つづ)いてきて、墓(はか)の中(なか)にはいった。彼(かれ)は亜麻布(あまぬの)がそこに置(お)いてあるのを見(み)たが、 7イエスの頭(あたま)に巻(ま)いてあった布(ぬの)は亜麻布(あまぬの)のそばにはなくて、はなれた別(べつ)の場所(ばしょ)にくるめてあった。 8すると、先(さき)に墓(はか)に着(つ)いたもうひとりの弟子(でし)もはいってきて、これを見(み)て信(しん)じた。 9しかし、彼(かれ)らは死人(しにん)のうちからイエスがよみがえるべきことをしるした聖(せい)句(く)を、まだ悟(さと)っていなかった。 10それから、ふたりの弟子(でし)たちは自分(じぶん)の家(いえ)に帰(かえ)って行(い)った。

11しかし、マリヤは墓(はか)の外(そと)に立(た)って泣(な)いていた。そして泣(な)きながら、身(み)をかがめて墓(はか)の中(なか)をのぞくと、 12白(しろ)い衣(ころも)を着(き)たふたりの御使(みつかい)が、イエスの死体(したい)のおかれていた場所(ばしょ)に、ひとりは頭(あたま)の方(ほう)に、ひとりは足(あし)の方(ほう)に、すわっているのを見(み)た。 13すると、彼(かれ)らはマリヤに、「女(おんな)よ、なぜ泣(な)いているのか」と言(い)った。マリヤは彼(かれ)らに言(い)った、「だれかが、わたしの主(しゅ)を取(と)り去(さ)りました。そして、どこに置(お)いたのか、わからないのです」。 14そう言(い)って、うしろをふり向(む)くと、そこにイエスが立(た)っておられるのを見(み)た。しかし、それがイエスであることに気(き)がつかなかった。 15イエスは女(おんな)に言(い)われた、「女(おんな)よ、なぜ泣(な)いているのか。だれを捜(さが)しているのか」。マリヤは、その人(ひと)が園(その)の番人(ばんにん)だと思(おも)って言(い)った、「もしあなたが、あのかたを移(うつ)したのでしたら、どこへ置(お)いたのか、どうぞ、おっしゃって下(くだ)さい。わたしがそのかたを引(ひ)き取(と)ります」。 16イエスは彼女(かのじょ)に「マリヤよ」と言(い)われた。マリヤはふり返(かえ)って、イエスにむかってヘブル語(ご)で「ラボニ」と言(い)った。それは、先生(せんせい)という意味(いみ)である。 17イエスは彼女(かのじょ)に言(い)われた、「わたしにさわってはいけない。わたしは、まだ父(ちち)のみもとに上(のぼ)っていないのだから。ただ、わたしの兄弟(きょうだい)たちの所(ところ)に行(い)って、『わたしは、わたしの父(ちち)またあなたがたの父(ちち)であって、わたしの神(かみ)またあなたがたの神(かみ)であられるかたのみもとへ上(のぼ)って行(い)く』と、彼(かれ)らに伝(つた)えなさい」。 18マグダラのマリヤは弟子(でし)たちのところに行(い)って、自分(じぶん)が主(しゅ)に会(あ)ったこと、またイエスがこれこれのことを自分(じぶん)に仰(おお)せになったことを、報告(ほうこく)した。

19その日(ひ)、すなわち、一週(しゅう)の初(はじ)めの日(ひ)の夕方(ゆうがた)、弟子(でし)たちはユダヤ人(じん)をおそれて、自分(じぶん)たちのおる所(ところ)の戸(と)をみなしめていると、イエスがはいってきて、彼(かれ)らの中(なか)に立(た)ち、「安(やす)かれ」と言(い)われた。 20そう言(い)って、手(て)とわきとを、彼(かれ)らにお見(み)せになった。弟子(でし)たちは主(しゅ)を見(み)て喜(よろこ)んだ。 21イエスはまた彼(かれ)らに言(い)われた、「安(やす)かれ。父(ちち)がわたしをおつかわしになったように、わたしもまたあなたがたをつかわす」。 22そう言(い)って、彼(かれ)らに息(いき)を吹(ふ)きかけて仰(おお)せになった、「聖霊(せいれい)を受(う)けよ。 23あなたがたがゆるす罪(つみ)は、だれの罪(つみ)でもゆるされ、あなたがたがゆるさずにおく罪(つみ)は、そのまま残(のこ)るであろう」。

24十二弟子(でし)のひとりで、デドモと呼(よ)ばれているトマスは、イエスがこられたとき、彼(かれ)らと一緒(いっしょ)にいなかった。 25ほかの弟子(でし)たちが、彼(かれ)に「わたしたちは主(しゅ)にお目(め)にかかった」と言(い)うと、トマスは彼(かれ)らに言(い)った、「わたしは、その手(て)に釘(くぎ)あとを見(み)、わたしの指(ゆび)をその釘(くぎ)あとにさし入(い)れ、また、わたしの手(て)をそのわきにさし入(い)れてみなければ、決(けっ)して信(しん)じない」。

26八日(か)ののち、イエスの弟子(でし)たちはまた家(いえ)の内(うち)におり、トマスも一緒(いっしょ)にいた。戸(と)はみな閉(と)ざされていたが、イエスがはいってこられ、中(なか)に立(た)って「安(やす)かれ」と言(い)われた。 27それからトマスに言(い)われた、「あなたの指(ゆび)をここにつけて、わたしの手(て)を見(み)なさい。手(て)をのばしてわたしのわきにさし入(い)れてみなさい。信(しん)じない者(もの)にならないで、信(しん)じる者(もの)になりなさい」。 28トマスはイエスに答(こた)えて言(い)った、「わが主(しゅ)よ、わが神(かみ)よ」。 29イエスは彼(かれ)に言(い)われた、「あなたはわたしを見(み)たので信(しん)じたのか。見(み)ないで信(しん)ずる者(もの)は、さいわいである」。

30イエスは、この書(しょ)に書(か)かれていないしるしを、ほかにも多(おお)く、弟子(でし)たちの前(まえ)で行(おこな)われた。 31しかし、これらのことを書(か)いたのは、あなたがたがイエスは神(かみ)の子(こ)キリストであると信(しん)じるためであり、また、そう信(しん)じて、イエスの名(な)によって命(いのち)を得(え)るためである。

第二一章

1そののち、イエスはテベリヤの海(うみ)べで、ご自身(じしん)をまた弟子(でし)たちにあらわされた。そのあらわされた次第(しだい)は、こうである。 2シモン・ペテロが、デドモと呼(よ)ばれているトマス、ガリラヤのカナのナタナエル、ゼベダイの子(こ)らや、ほかのふたりの弟子(でし)たちと一緒(いっしょ)にいた時(とき)のことである。 3シモン・ペテロは彼(かれ)らに「わたしは漁(りょう)に行(い)くのだ」と言(い)うと、彼(かれ)らは「わたしたちも一緒(いっしょ)に行(い)こう」と言(い)った。彼(かれ)らは出(で)て行(い)って舟(ふね)に乗(の)った。しかし、その夜(よ)はなんの獲物(えもの)もなかった。 4夜(よ)が明(あ)けたころ、イエスが岸(きし)に立(た)っておられた。しかし弟子(でし)たちはそれがイエスだとは知(し)らなかった。 5イエスは彼(かれ)らに言(い)われた、「子(こ)たちよ、何(なに)か食(た)べるものがあるか」。彼(かれ)らは「ありません」と答(こた)えた。 6すると、イエスは彼(かれ)らに言(い)われた、「舟(ふね)の右(みぎ)の方(ほう)に網(あみ)をおろして見(み)なさい。そうすれば、何(なに)かとれるだろう」。彼(かれ)らは網(あみ)をおろすと、魚(うお)が多(おお)くとれたので、それを引(ひ)き上(あ)げることができなかった。 7イエスの愛(あい)しておられた弟子(でし)が、ペテロに「あれは主(しゅ)だ」と言(い)った。シモン・ペテロは主(しゅ)であると聞(き)いて、裸(はだか)になっていたため、上着(うわぎ)をまとって海(うみ)にとびこんだ。 8しかし、ほかの弟子(でし)たちは舟(ふね)に乗(の)ったまま、魚(うお)のはいっている網(あみ)を引(ひ)きながら帰(かえ)って行(い)った。陸(りく)からはあまり遠(とお)くない五十間(けん)ほどの所(ところ)にいたからである。

9彼(かれ)らが陸(りく)に上(のぼ)って見(み)ると、炭火(すみび)がおこしてあって、その上(うえ)に魚(うお)がのせてあり、またそこにパンがあった。 10イエスは彼(かれ)らに言(い)われた、「今(いま)とった魚(うお)を少(すこ)し持(も)ってきなさい」。 11シモン・ペテロが行(い)って、網(あみ)を陸(りく)へ引(ひ)き上(あ)げると、百五十三びきの大(おお)きな魚(うお)でいっぱいになっていた。そんなに多(おお)かったが、網(あみ)はさけないでいた。 12イエスは彼(かれ)らに言(い)われた、「さあ、朝(あさ)の食事(しょくじ)をしなさい」。弟子(でし)たちは、主(しゅ)であることがわかっていたので、だれも「あなたはどなたですか」と進(すす)んで尋(たず)ねる者(もの)がなかった。 13イエスはそこにきて、パンをとり彼(かれ)らに与(あた)え、また魚(うお)も同(おな)じようにされた。 14イエスが死人(しにん)の中(なか)からよみがえったのち、弟子(でし)たちにあらわれたのは、これで既(すで)に三度目(どめ)である。

15彼(かれ)らが食事(しょくじ)をすませると、イエスはシモン・ペテロに言(い)われた、「ヨハネの子(こ)シモンよ、あなたはこの人(ひと)たちが愛(あい)する以上(いじょう)に、わたしを愛(あい)するか」。ペテロは言(い)った、「主(しゅ)よ、そうです。わたしがあなたを愛(あい)することは、あなたがご存(ぞん)じです」。イエスは彼(かれ)に「わたしの小羊(こひつじ)を養(やしな)いなさい」と言(い)われた。 16またもう一度(いちど)彼(かれ)に言(い)われた、「ヨハネの子(こ)シモンよ、わたしを愛(あい)するか」。彼(かれ)はイエスに言(い)った、「主(しゅ)よ、そうです。わたしがあなたを愛(あい)することは、あなたがご存(ぞん)じです」。イエスは彼(かれ)に言(い)われた、「わたしの羊(ひつじ)を飼(か)いなさい」。 17イエスは三度目(どめ)に言(い)われた、「ヨハネの子(こ)シモンよ、わたしを愛(あい)するか」。ペテロは「わたしを愛(あい)するか」とイエスが三度(ど)も言(い)われたので、心(こころ)をいためてイエスに言(い)った、「主(しゅ)よ、あなたはすべてをご存(ぞん)じです。わたしがあなたを愛(あい)していることは、おわかりになっています」。イエスは彼(かれ)に言(い)われた、「わたしの羊(ひつじ)を養(やしな)いなさい。 18よくよくあなたに言(い)っておく。あなたが若(わか)かった時(とき)には、自分(じぶん)で帯(おび)をしめて、思(おも)いのままに歩(ある)きまわっていた。しかし年(とし)をとってからは、自分(じぶん)の手(て)をのばすことになろう。そして、ほかの人(ひと)があなたに帯(おび)を結(むす)びつけ、行(い)きたくない所(ところ)へ連(つ)れて行(い)くであろう」。 19これは、ペテロがどんな死(し)に方(かた)で、神(かみ)の栄光(えいこう)をあらわすかを示(しめ)すために、お話(はな)しになったのである。こう話(はな)してから、「わたしに従(したが)ってきなさい」と言(い)われた。 20ペテロはふり返(かえ)ると、イエスの愛(あい)しておられた弟子(でし)がついて来(く)るのを見(み)た。この弟子(でし)は、あの夕食(ゆうしょく)のときイエスの胸(むね)近(ちか)くに寄(よ)りかかって、「主(しゅ)よ、あなたを裏切(うらぎ)る者(もの)は、だれなのですか」と尋(たず)ねた人(ひと)である。 21ペテロはこの弟子(でし)を見(み)て、イエスに言(い)った、「主(しゅ)よ、この人(ひと)はどうなのですか」。 22イエスは彼(かれ)に言(い)われた、「たとい、わたしの来(く)る時(とき)まで彼(かれ)が生(い)き残(のこ)っていることを、わたしが望(のぞ)んだとしても、あなたにはなんの係(かか)わりがあるか。あなたは、わたしに従(したが)ってきなさい」。 23こういうわけで、この弟子(でし)は死(し)ぬことがないといううわさが、兄弟(きょうだい)たちの間(あいだ)にひろまった。しかし、イエスは彼(かれ)が死(し)ぬことはないと言(い)われたのではなく、ただ「たとい、わたしの来(く)る時(とき)まで彼(かれ)が生(い)き残(のこ)っていることを、わたしが望(のぞ)んだとしても、あなたにはなんの係(かか)わりがあるか」と言(い)われただけである。

24これらの事(こと)についてあかしをし、またこれらの事(こと)を書(か)いたのは、この弟子(でし)である。そして彼(かれ)のあかしが真実(しんじつ)であることを、わたしたちは知(し)っている。 25イエスのなさったことは、このほかにまだ数多(かずおお)くある。もしいちいち書(か)きつけるならば、世界(せかい)もその書(か)かれた文書(ぶんしょ)を収(おさ)めきれないであろうと思(おも)う。