ヨハネによる福音書

第一章

1はじめにことばがあった。ことばかみともにあった。ことばかみであった。 2このことばはじめにかみともにあった。 3すべてのものは、これによってできた。できたもののうち、一つとしてこれによらないものはなかった。 4このことばいのちがあった。そしてこのいのちひとひかりであった。 5ひかりはやみのなかかがやいている。そして、やみはこれにたなかった。

6ここにひとりのひとがあって、かみからつかわされていた。そのをヨハネとった。 7このひとはあかしのためにきた。ひかりについてあかしをし、かれによってすべてのひとしんじるためである。 8かれひかりではなく、ただ、ひかりについてあかしをするためにきたのである。

9すべてのひとてらすまことのひかりがあって、にきた。 10かれにいた。そして、かれによってできたのであるが、かれらずにいた。 11かれ自分じぶんのところにきたのに、自分じぶんたみかれけいれなかった。 12しかし、かれけいれたもの、すなわち、そのしんじた人々ひとびとには、かれかみとなるちからあたえたのである。 13それらのひとは、すじによらず、にくよくによらず、また、ひとよくにもよらず、ただかみによってうまれたのである。

14そしてことば肉体にくたいとなり、わたしたちのうちに宿やどった。わたしたちはその栄光えいこうた。それはちちのひとりとしての栄光えいこうであって、めぐみとまこととにちていた。 15ヨハネはかれについてあかしをし、さけんでった、「『わたしのあとにるかたは、わたしよりもすぐれたかたである。わたしよりもさきにおられたからである』とわたしがったのは、このひとのことである」。 16わたしたちすべてのものは、そのちているもののなかからけて、めぐみにめぐみをくわえられた。 17律法りっぽうはモーセをとおしてあたえられ、めぐみとまこととは、イエス・キリストをとおしてきたのである。 18かみものはまだひとりもいない。ただちちのふところにいるひとりなるかみだけが、かみをあらわしたのである。

19さて、ユダヤじんたちが、エルサレムから祭司さいしたちやレビひとたちをヨハネのもとにつかわして、「あなたはどなたですか」とわせたが、そのときヨハネがてたあかしは、こうであった。 20すなわち、かれ告白こくはくしていなまず、「わたしはキリストではない」と告白こくはくした。 21そこで、かれらはうた、「それでは、どなたなのですか、あなたはエリヤですか」。かれは「いや、そうではない」とった。「では、あの預言者よげんしゃですか」。かれは「いいえ」とこたえた。 22そこで、かれらはった、「あなたはどなたですか。わたしたちをつかわした人々ひとびとに、こたえってけるようにしていただきたい。あなた自身じしんをだれだとかんがえるのですか」。 23かれった、「わたしは、預言者よげんしゃイザヤがったように、『しゅみちをまっすぐにせよと荒野あらのばわるものこえ』である」。

24つかわされたひとたちは、パリサイびとであった。 25かれらはヨハネにうてった、「では、あなたがキリストでもエリヤでもまたあの預言者よげんしゃでもないのなら、なぜバプテスマをさづけるのですか」。 26ヨハネはかれらにこたえてった、「わたしはみずでバプテスマをさづけるが、あなたがたのらないかたが、あなたがたのなかっておられる。 27それがわたしのあとにあとにおいでになるかたであって、わたしはそのひとのくつのひもをうちもない」。 28これらのことは、ヨハネがバプテスマをさづけていたヨルダンのこうのベタニヤであったのである。

29その翌日よくじつ、ヨハネはイエスが自分じぶんほうにこられるのをった、「よ、つみのぞかみ小羊こひつじ 30『わたしのあとにるかたは、わたしよりもすぐれたかたである。わたしよりもさきにおられたからである』とわたしがったのは、このひとのことである。 31わたしはこのかたをらなかった。しかし、このかたがイスラエルにあらわれてくださるそのことのために、わたしはきて、みずでバプテスマをさづけているのである」。 32ヨハネはまたあかしをしてった、「わたしは、御霊みたまがはとのようにてんからくだって、かれうえにとどまるのをた。 33わたしはこのひとらなかった。しかし、みずでバプテスマをさづけるようにと、わたしをおつかわしになったそのかたが、わたしにわれた、『あるひとうえに、御霊みたまくだってとどまるのをたら、そのひとこそは、御霊みたまによってバプテスマをさづけるかたである』。 34わたしはそれをたので、このかたこそかみであると、あかしをしたのである」。

35その翌日よくじつ、ヨハネはまたふたりの弟子でしたちと一緒いっしょっていたが、 36イエスがあるいておられるのにをとめてった、「よ、かみ小羊こひつじ」。 37そのふたりの弟子でしは、ヨハネがそううのをいて、イエスについてった。 38イエスはふりき、かれらがついてくるのをわれた、「なにねがいがあるのか」。かれらはった、「ラビ(やくしてえば、先生せんせい)どこにおとまりなのですか」。 39イエスはかれらにわれた、「きてごらんなさい。そうしたらわかるだろう」。そこでかれらはついてって、イエスのまっておられるところた。そして、そのはイエスのところにまった。とき午後ごごごろであった。 40ヨハネからいて、イエスについてったふたりのうちのひとりは、シモン・ペテロの兄弟きょうだいアンデレであった。 41かれはまず自分じぶん兄弟きょうだいシモンに出会であってった、「わたしたちはメシヤ(やくせば、キリスト)にいま出会であった」。 42そしてシモンをイエスのもとにつれてきた。イエスはかれをとめてわれた、「あなたはヨハネのシモンである。あなたをケパ(やくせば、ペテロ)とぶことにする」。

43その翌日よくじつ、イエスはガリラヤにこうとされたが、ピリポに出会であってわれた、「わたしにしたがってきなさい」。 44ピリポは、アンデレとペテロとのまちベツサイダのひとであった。 45このピリポがナタナエルに出会であってった、「わたしたちは、モーセが律法りっぽうなかにしるしており、預言者よげんしゃたちがしるしていたひと、ヨセフの、ナザレのイエスにいま出会であった」。 46ナタナエルはかれった、「ナザレから、なんのよいものがようか」。ピリポはかれった、「きてなさい」。 47イエスはナタナエルが自分じぶんほうるのをて、かれについてわれた、「よ、あのひとこそ、ほんとうのイスラエルびとである。そのこころにはいつわりがない」。 48ナタナエルはった、「どうしてわたしをごぞんじなのですか」。イエスはこたえてわれた、「ピリポがあなたをまえに、わたしはあなたが、いちじくのしたにいるのをた」。 49ナタナエルはこたえた、「先生せんせい、あなたはかみです。あなたはイスラエルのおうです」。 50イエスはこたえてわれた、「あなたが、いちじくのしたにいるのをたと、わたしがったのでしんじるのか。これよりも、もっとおおきなことを、あなたはるであろう」。 51またわれた、「よくよくあなたがたにっておく。てんけて、かみ御使みつかいたちがひとうえのぼくだりするのを、あなたがたはるであろう」。

第二章

1にガリラヤのカナに婚礼こんれいがあって、イエスのははがそこにいた。 2イエスも弟子でしたちも、その婚礼こんれいまねかれた。 3ぶどうしゅがなくなったので、はははイエスにった、「ぶどうしゅがなくなってしまいました」。 4イエスはははわれた、「婦人ふじんよ、あなたは、わたしと、なんのかかわりがありますか。わたしのときは、まだきていません」。 5ははしもべたちにった、「このかたが、あなたがたにいつけることは、なんでもしてください」。 6そこには、ユダヤじんのきよめのならわしにしたがって、それぞれ四、五もはいるいしみずがめが、六ついてあった。 7イエスはかれらに「かめにみずをいっぱいれなさい」とわれたので、かれらはくちのところまでいっぱいにれた。 8そこでかれらにわれた、「さあ、くんで、料理りょうりがしらのところにってきなさい」。すると、かれらはってった。 9料理りょうりがしらは、ぶどうしゅになったみずをなめてみたが、それがどこからきたのからなかったので、(みずをくんだしもべたちはっていた)花婿はなむこんで 10った、「どんなひとでも、はじめによいぶどうしゅして、いがまわったころにわるいのをすものだ。それだのに、あなたはよいぶどうしゅいままでとっておかれました」。 11イエスは、この最初さいしょのしるしをガリラヤのカナでおこない、その栄光えいこうあらわされた。そして弟子でしたちはイエスをしんじた。

12そののち、イエスは、そのはは兄弟きょうだいたち、弟子でしたちと一緒いっしょに、カペナウムにくだって、幾日いくにちかそこにとどまられた。

13さて、ユダヤじん過越すぎこしまつりちかづいたので、イエスはエルサレムにのぼられた。 14そしてうしひつじ、はとをもの両替りょうがえするものなどがみやにわにすわりんでいるのをごらんになって、 15なわでむちをつくり、ひつじうしもみなみやからいだし、両替人りょうがえにんかねらし、そのだいをひっくりかえし、 16はとを人々ひとびとには「これらのものをって、ここからけ。わたしのちちいえ商売しょうばいいえとするな」とわれた。 17弟子でしたちは、「あなたのいえおも熱心ねっしんが、わたしをいつくすであろう」といてあることをおもした。 18そこで、ユダヤじんはイエスにった、「こんなことをするからには、どんなしるしをわたしたちにせてくれますか」。 19イエスはかれらにこたえてわれた、「この神殿しんでんをこわしたら、わたしは三のうちに、それをおこすであろう」。 20そこで、ユダヤじんたちはった、「この神殿しんでんてるのには、四十六ねんもかかっています。それだのに、あなたは三のうちに、それをてるのですか」。 21イエスは自分じぶんのからだである神殿しんでんのことをわれたのである。 22それで、イエスが死人しにんなかからよみがえったとき、弟子でしたちはイエスがこうわれたことをおもして、聖書せいしょとイエスのこの言葉ことばとをしんじた。 23過越すぎこしまつりあいだ、イエスがエルサレムに滞在たいざいしておられたとき、おおくの人々ひとびとは、そのおこなわれたしるしをて、イエスのしんじた。 24しかしイエスご自身じしんは、かれらに自分じぶんをおまかせにならなかった。それは、すべてのひとっておられ、 25またひとについてあかしするものを、必要ひつようとされなかったからである。それは、ご自身じしんひとこころなかにあることをっておられたからである。

第三章

1パリサイびとのひとりで、そのをニコデモというユダヤじん指導者しどうしゃがあった。 2このひとよるイエスのもとにきてった、「先生せんせい、わたしたちはあなたがかみからこられた教師きょうしであることをっています。かみがご一緒いっしょでないなら、あなたがなさっておられるようなしるしは、だれにもできはしません」。 3イエスはこたえてわれた、「よくよくあなたにっておく。だれでもあたらしくうまれなければ、かみくにることはできない」。 4ニコデモはった、「ひととしをとってからうまれることが、どうしてできますか。もう一度いちどははたいにはいってうまれることができましょうか」。 5イエスはこたえられた、「よくよくあなたにっておく。だれでも、みずれいとからうまれなければ、かみくににはいることはできない。 6にくからうまれるものにくであり、れいからうまれるものれいである。 7あなたがたはあたらしくうまれなければならないと、わたしがったからとて、不思議ふしぎおもうにはおよばない。 8かぜおもいのままにく。あなたはそのおとくが、それがどこからきて、どこへくかはらない。れいからうまれるものもみな、それとおなじである」。 9ニコデモはイエスにこたえてった、「どうして、そんなことがありましょうか」。 10イエスはかれこたえてわれた、「あなたはイスラエルの教師きょうしでありながら、これぐらいのことがわからないのか。 11よくよくっておく。わたしたちは自分じぶんっていることをかたり、また自分じぶんたことをあかししているのに、あなたがたはわたしたちのあかしをけいれない。 12わたしが地上ちじょうのことをかたっているのに、あなたがたがしんじないならば、天上てんじょうのことをかたった場合ばあい、どうしてそれをしんじるだろうか。 13てんからくだってきたもの、すなわちひとのほかには、だれもてんのぼったものはない。 14そして、ちょうどモーセが荒野あらのでへびをげたように、ひともまたげられなければならない。 15それはかれしんじるものが、すべて永遠えいえんいのちるためである」。

16かみはそのひとりたまわったほどに、このあいしてくださった。それは御子みこしんじるものがひとりもほろびないで、永遠えいえんいのちるためである。 17かみ御子みこにつかわされたのは、をさばくためではなく、御子みこによって、このすくわれるためである。 18かれしんじるものは、さばかれない。しんじないものは、すでにさばかれている。かみのひとりしんじることをしないからである。 19そのさばきというのは、ひかりがこのにきたのに、人々ひとびとはそのおこないがわるいために、ひかりよりもやみのほうあいしたことである。 20あくおこなっているものはみなひかりにくむ。そして、そのおこないがあかるみにされるのをおそれて、ひかりにこようとはしない。 21しかし、真理しんりおこなっているものひかりる。そのひとのおこないの、かみにあってなされたということが、あきらかにされるためである。

22こののち、イエスは弟子でしたちとユダヤのき、かれらと一緒いっしょにそこに滞在たいざいして、バプテスマをさづけておられた。 23ヨハネもサリムにちかいアイノンで、バプテスマをさづけていた。そこにはみずがたくさんあったからである。人々ひとびとがぞくぞくとやってきてバプテスマをけていた。 24そのとき、ヨハネはまだごくれられてはいなかった。 25ところが、ヨハネの弟子でしたちとひとりのユダヤじんとのあいだに、きよめのことで争論そうろんおこった。 26そこでかれらはヨハネのところにきてった、「先生せんせい、ごらんください。ヨルダンのこうであなたと一緒いっしょにいたことがあり、そして、あなたがあかしをしておられたあのかたが、バプテスマをさづけており、みなものが、そのかたのところへかけています」。 27ヨハネはこたえてった、「ひとてんからあたえられなければ、なにものもけることはできない。 28『わたしはキリストではなく、そのかたよりもさきにつかわされたものである』とったことをあかししてくれるのは、あなたがた自身じしんである。 29花嫁はなよめをもつもの花婿はなむこである。花婿はなむこ友人ゆうじんってかれこえき、そのこえいておおいによろこぶ。こうして、このよろこびはわたしにりている。 30かれかならさかえ、わたしはおとろえる。

31うえからものは、すべてのもののうえにある。からものは、ぞくするものであって、のことをかたる。てんからものは、すべてのもののうえにある。 32かれはそのたところ、いたところをあかししているが、だれもそのあかしをけいれない。 33しかし、そのあかしをけいれるものは、かみがまことであることを、たしかにみとめたのである。 34かみがおつかわしになったかたは、かみ言葉ことばかたる。かみ聖霊せいれいかぎりなくたまうからである。 35ちち御子みこあいして、万物ばんぶつをそのにおあたえになった。 36御子みこしんじるもの永遠えいえんいのちをもつ。御子みこしたがわないものは、いのちにあずかることがないばかりか、かみいかりがそのうえにとどまるのである」。

第四章

1イエスが、ヨハネよりもおお弟子でしをつくり、またバプテスマをさづけておられるということを、パリサイびとたちがき、それをしゅられたとき、 2(しかし、イエスみずからが、バプテスマをおさづけになったのではなく、その弟子でしたちであった) 3ユダヤをって、またガリラヤへかれた。 4しかし、イエスはサマリヤを通過つうかしなければならなかった。 5そこで、イエスはサマリヤのスカルというまちにおいでになった。このまちは、ヤコブがそのヨセフにあたえた土地とちちかくにあったが、 6そこにヤコブの井戸いどがあった。イエスはたびつかれをおぼえて、そのまま、この井戸いどのそばにすわっておられた。ときひるの十二ごろであった。 7ひとりのサマリヤのおんなみずをくみにきたので、イエスはこのおんなに、「みずませてください」とわれた。 8弟子でしたちは食物しょくもついにまちっていたのである。 9すると、サマリヤのおんなはイエスにった、「あなたはユダヤじんでありながら、どうしてサマリヤのおんなのわたしに、ませてくれとおっしゃるのですか」。これは、ユダヤじんはサマリヤびと交際こうさいしていなかったからである。 10イエスはこたえてわれた、「もしあなたがかみ賜物たまもののことをり、また、『みずませてくれ』とったものが、だれであるかっていたならば、あなたのほうからねがて、そのひとからけるみずをもらったことであろう」。 11おんなはイエスにった、「しゅよ、あなたは、くむものをおちにならず、そのうえ井戸いどふかいのです。そのけるみずを、どこかられるのですか。 12あなたは、この井戸いどくださったわたしたちのちちヤコブよりも、えらいかたなのですか。ヤコブ自身じしんみ、そのらも、その家畜かちくも、この井戸いどからんだのですが」。 13イエスはおんなこたえてわれた、「このみずものはだれでも、またかわくであろう。 14しかし、わたしがあたえるみずものは、いつまでも、かわくことがないばかりか、わたしがあたえるみずは、そのひとのうちでいずみとなり、永遠えいえんいのちいたみずが、わきあがるであろう」。 15おんなはイエスにった、「しゅよ、わたしがかわくことがなく、また、ここにくみにこなくてもよいように、そのみずをわたしにください」。 16イエスはおんなわれた、「あなたのおっとびにって、ここにれてきなさい」。 17おんなこたえてった、「わたしにはおっとはありません」。イエスはおんなわれた、「おっとがないとったのは、もっともだ。 18あなたには五にんおっとがあったが、いまのはあなたのおっとではない。あなたの言葉ことばのとおりである」。 19おんなはイエスにった、「しゅよ、わたしはあなたを預言者よげんしゃます。 20わたしたちの先祖せんぞは、このやま礼拝れいはいをしたのですが、あなたがたは礼拝れいはいすべき場所ばしょは、エルサレムにあるとっています」。 21イエスはおんなわれた、「おんなよ、わたしのうことをしんじなさい。あなたがたが、このやまでも、またエルサレムでもないところで、ちち礼拝れいはいするときる。 22あなたがたは自分じぶんらないものをおがんでいるが、わたしたちはっているかたを礼拝れいはいしている。すくいはユダヤじんからるからである。 23しかし、まことの礼拝れいはいをするものたちが、れいとまこととをもってちち礼拝れいはいするときる。そうだ、いまきている。ちちは、このような礼拝れいはいをするものたちをもとめておられるからである。 24かみれいであるから、礼拝れいはいをするものも、れいとまこととをもって礼拝れいはいすべきである」。 25おんなはイエスにった、「わたしは、キリストとばれるメシヤがこられることをっています。そのかたがこられたならば、わたしたちに、いっさいのことをらせてくださるでしょう」。 26イエスはおんなわれた、「あなたとはなしをしているこのわたしが、それである」。

27そのとき、弟子でしたちがかえってて、イエスがひとりのおんなはなしておられるのを不思議ふしぎおもったが、しかし、「なにもとめておられますか」とも、「なに彼女かのじょはなしておられるのですか」とも、たずねるものはひとりもなかった。 28このおんなみずがめをそのままそこにいてまちき、人々ひとびとった、 29「わたしのしたことをなにもかも、いあてたひとがいます。さあ、にきてごらんなさい。もしかしたら、このひとがキリストかもれません」。 30人々ひとびとまちて、ぞくぞくとイエスのところへった。 31そのあいだ弟子でしたちはイエスに、「先生せんせいしあがってください」とすすめた。 32ところが、イエスはわれた、「わたしには、あなたがたのらない食物しょくもつがある」。 33そこで、弟子でしたちがたがいった、「だれかが、なにべるものをってきてさしあげたのであろうか」。 34イエスはかれらにわれた、「わたしの食物しょくもつというのは、わたしをつかわされたかたのみこころをおこない、そのみわざをなしげることである。 35あなたがたは、刈入かりいときるまでには、まだ四かげつあると、っているではないか。しかし、わたしはあなたがたにう。をあげてはたけなさい。はやいろづいて刈入かりいれをっている。 36もの報酬ほうしゅうけて、永遠えいえんいのちいたあつめている。まくものものも、共々ともどもよろこぶためである。 37そこで、『ひとりがまき、ひとりがる』ということわざが、ほんとうのこととなる。 38わたしは、あなたがたをつかわして、あなたがたがそのために労苦ろうくしなかったものをりとらせた。ほかの人々ひとびと労苦ろうくし、あなたがたは、かれらの労苦ろうくにあずかっているのである」。

39さて、このまちからきたおおくのサマリヤひとは、「このひとは、わたしのしたことをなにもかもいあてた」とあかししたおんな言葉ことばによって、イエスをしんじた。 40そこで、サマリヤひとたちはイエスのもとにきて、自分じぶんたちのところに滞在たいざいしていただきたいとねがったので、イエスはそこにふつか滞在たいざいされた。 41そしてなおおおくの人々ひとびとが、イエスの言葉ことばいてしんじた。 42かれらはおんなった、「わたしたちがしんじるのは、もうあなたがはなしてくれたからではない。自分じぶん自身じしんしたしくいて、このひとこそまことに救主すくいぬしであることが、わかったからである」。

43ふつかののちに、イエスはここをってガリラヤへかれた。 44イエスはみずからはっきり、「預言者よげんしゃ自分じぶん故郷こきょうではうやまわれないものだ」とわれたのである。 45ガリラヤにかれると、ガリラヤのひとたちはイエスを歓迎かんげいした。それは、かれらもまつりっていたので、そのまつりとき、イエスがエルサレムでなされたことをことごとくていたからである。

46イエスは、またガリラヤのカナにかれた。そこは、かつてみずをぶどうしゅにかえられたところである。ところが、病気びょうきをしているむすこをつある役人やくにんがカペナウムにいた。 47このひとが、ユダヤからガリラヤにイエスのきておられることをき、みもとにきて、カペナウムにくだって、かれをなおしていただきたいと、ねがった。そのにかかっていたからである。 48そこで、イエスはかれわれた、「あなたがたは、しるしと奇跡きせきとをないかぎり、けっしてしんじないだろう」。 49この役人やくにんはイエスにった、「しゅよ、どうぞ、子供こどもなないうちにきてください」。 50イエスはかれわれた、「おかえりなさい。あなたのむすこはたすかるのだ」。かれ自分じぶんわれたイエスの言葉ことばしんじてかえってった。 51そのくだって途中とちゅうしもべたちがかれ出会であい、そのたすかったことをげた。 52そこで、かれしもべたちに、そのなおりはじめた時刻じこくたずねてみたら、「きのうの午後ごごねつきました」とこたえた。 53それは、イエスが「あなたのむすこはたすかるのだ」とわれたのとおな時刻じこくであったことを、このちちって、かれ自身じしんもその家族かぞく一同いちどうしんじた。 54これは、イエスがユダヤからガリラヤにきてなされただい二のしるしである。

第五章

1こののち、ユダヤじんまつりがあったので、イエスはエルサレムにのぼられた。

2エルサレムにあるひつじもんのそばに、ヘブルでベテスダとばれるいけがあった。そこには五つのろうがあった。 3そのろうなかには、病人びょうにん盲人もうじんあしなえ、やせおとろえたものなどが、おおぜいからだをよこたえていた。〔かれらはみずうごくのをっていたのである。 4それは、時々ときどきしゅ御使みつかいがこのいけりてきてみずうごかすことがあるが、みずうごいたときまっさきにはいるものは、どんな病気びょうきにかかっていても、いやされたからである。〕 5さて、そこに三十八ねんのあいだ、病気びょうきなやんでいるひとがあった。 6イエスはそのひとよこになっているのを、またながあいだわずらっていたのをって、そのひとに「なおりたいのか」とわれた。 7この病人びょうにんはイエスにこたえた、「しゅよ、みずうごときに、わたしをいけなかれてくれるひとがいません。わたしがはいりかけると、ほかのひとさきりてくのです」。 8イエスはかれわれた、「きて、あなたのとこりあげ、そしてあるきなさい」。 9すると、このひとはすぐにいやされ、とこをとりあげてあるいてった。

その安息日あんそくにちであった。 10そこでユダヤじんたちは、そのいやされたひとった、「きょうは安息日あんそくにちだ。とこりあげるのは、よろしくない」。 11かれこたえた、「わたしをなおしてくださったかたが、とこりあげてあるけと、わたしにわれました」。 12かれらはたずねた、「りあげてあるけとったひとは、だれか」。 13しかし、このいやされたひとは、それがだれであるからなかった。群衆ぐんしゅうがそのにいたので、イエスはそっとかれたからである。 14そののち、イエスはみやでそのひと出会であったので、かれわれた、「ごらん、あなたはよくなった。もうつみおかしてはいけない。なにかもっとわるいことが、あなたのおこるかもれないから」。 15かれって、自分じぶんをいやしたのはイエスであったと、ユダヤじんたちにげた。 16そのためユダヤじんたちは、安息日あんそくにちにこのようなことをしたとって、イエスをめた。 17そこで、イエスはかれらにこたえられた、「わたしのちちいまいたるまではたらいておられる。わたしもはたらくのである」。 18このためにユダヤじんたちは、ますますイエスをころそうとはかるようになった。それは、イエスが安息日あんそくにちやぶられたばかりではなく、かみ自分じぶんちちんで、自分じぶんかみひとしいものとされたからである。

19さて、イエスはかれらにこたえてわれた、「よくよくあなたがたにっておく。ちちのなさることをてする以外いがいに、自分じぶんからは何事なにごともすることができない。ちちのなさることであればすべて、もそのとおりにするのである。 20なぜなら、ちちあいして、みずからなさることは、すべてにおしめしになるからである。そして、それよりもなおおおきなわざを、おしめしになるであろう。あなたがたが、それによって不思議ふしぎおもうためである。 21すなわち、ちち死人しにんおこしていのちをおあたえになるように、もまた、そのこころにかなう人々ひとびといのちあたえるであろう。 22ちちはだれをもさばかない。さばきのことはすべて、にゆだねられたからである。 23それは、すべてのひとちちうやまうと同様どうように、うやまうためである。うやまわないものは、をつかわされたちちをもうやまわない。 24よくよくあなたがたにっておく。わたしの言葉ことばいて、わたしをつかわされたかたをしんじるものは、永遠えいえんいのちけ、またさばかれることがなく、からいのちうつっているのである。 25よくよくあなたがたにっておく。んだひとたちが、かみこえときる。いますでにきている。そしてひときるであろう。 26それは、ちちがご自分じぶんのうちに生命せいめいをおちになっていると同様どうように、にもまた、自分じぶんのうちに生命せいめいつことをおゆるしになったからである。 27そしてひとであるから、にさばきをおこな権威けんいをおあたえになった。 28このことをおどろくにはおよばない。はかなかにいるものたちがみなかみこえき、 29ぜんをおこなった人々ひとびとは、生命せいめいけるためによみがえり、あくをおこなった人々ひとびとは、さばきをけるためによみがえって、それぞれてくるときるであろう。

30わたしは、自分じぶんからは何事なにごともすることができない。ただくままにさばくのである。そして、わたしのこのさばきはただしい。それは、わたし自身じしんかんがえでするのではなく、わたしをつかわされたかたの、みむねもとめているからである。 31もし、わたしが自分じぶん自身じしんについてあかしをするならば、わたしのあかしはほんとうではない。 32わたしについてあかしをするかたはほかにあり、そして、そのひとがするあかしがほんとうであることを、わたしはっている。 33あなたがたはヨハネのもとへひとをつかわしたが、そのときかれ真理しんりについてあかしをした。 34わたしはひとからあかしをけないが、このことをうのは、あなたがたがすくわれるためである。 35ヨハネはえてかがやくあかりであった。あなたがたは、しばらくのあいだそのひかりよろこたのしもうとした。 36しかし、わたしには、ヨハネのあかしよりも、もっとちからあるあかしがある。ちちがわたしに成就じょうじゅさせようとしておあたえになったわざ、すなわち、いまわたしがしているこのわざが、ちちのわたしをつかわされたことをあかししている。 37また、わたしをつかわされたちちも、ご自分じぶんでわたしについてあかしをされた。あなたがたは、まだそのみこえいたこともなく、そのみ姿すがたたこともない。 38また、かみがつかわされたものしんじないから、かみ御言みことばはあなたがたのうちにとどまっていない。 39あなたがたは、聖書せいしょなか永遠えいえんいのちがあるとおもって調しらべているが、この聖書せいしょは、わたしについてあかしをするものである。 40しかも、あなたがたは、いのちるためにわたしのもとにこようともしない。 41わたしはひとからのほまれけることはしない。 42しかし、あなたがたのうちにはかみあいするあいがないことをっている。 43わたしはちちによってきたのに、あなたがたはわたしをけいれない。もし、ほかのひとかれ自身じしんによってるならば、そのひとけいれるのであろう。 44たがいほまれけながら、ただひとりのかみからのほまれもとめようとしないあなたがたは、どうしてしんじることができようか。 45わたしがあなたがたのことをちちうったえると、かんがえてはいけない。あなたがたをうったえるものは、あなたがたがたのみとしているモーセそのひとである。 46もし、あなたがたがモーセをしんじたならば、わたしをもしんじたであろう。モーセは、わたしについていたのである。 47しかし、モーセのいたものをしんじないならば、どうしてわたしの言葉ことばしんじるだろうか」。

第六章

1そののち、イエスはガリラヤのうみ、すなわち、テベリヤみずうみこうぎしわたられた。 2すると、おおぜいの群衆ぐんしゅうがイエスについてきた。病人びょうにんたちになさっていたしるしをたからである。 3イエスはやまのぼって、弟子でしたちと一緒いっしょにそこでにつかれた。 4ときに、ユダヤじんまつりである過越すぎこし間近まぢかになっていた。 5イエスはをあげ、おおぜいの群衆ぐんしゅう自分じぶんほうあつまってるのをて、ピリポにわれた、「どこからパンをってきて、この人々ひとびとべさせようか」。 6これはピリポをためそうとしてわれたのであって、ご自分じぶんではしようとすることを、よくご承知しょうちであった。 7すると、ピリポはイエスにこたえた、「二百デナリのパンがあっても、めいめいがすこしずついただくにもりますまい」。 8弟子でしのひとり、シモン・ペテロの兄弟きょうだいアンデレがイエスにった、 9「ここに、大麦おおむぎのパン五つと、さかな二ひきとをっている子供こどもがいます。しかし、こんなにおおぜいのひとでは、それがなにになりましょう」。 10イエスは「人々ひとびとをすわらせなさい」とわれた。その場所ばしょにはくさおおかった。そこにすわったおとこかずは五千にんほどであった。 11そこで、イエスはパンをり、感謝かんしゃしてから、すわっている人々ひとびとあたえ、また、さかなをも同様どうようにして、かれらののぞむだけあたえられた。 12人々ひとびとがじゅうぶんにべたのち、イエスは弟子でしたちにわれた、「すこしでもむだにならないように、パンくずのあまりをあつめなさい」。 13そこでかれらがあつめると、五つの大麦おおむぎのパンをべてのこったパンくずは、十二のかごにいっぱいになった。 14人々ひとびとはイエスのなさったこのしるしをて、「ほんとうに、このひとこそにきたるべき預言者よげんしゃである」とった。

15イエスは人々ひとびとがきて、自分じぶんをとらえておうにしようとしているとって、ただひとり、またやま退しりぞかれた。

16夕方ゆうがたになったとき、弟子でしたちはうみべにくだり、 17ふねってうみわたり、こうぎしのカペナウムにきかけた。すでにくらくなっていたのに、イエスはまだかれらのところにおいでにならなかった。 18そのうえつよかぜいてきて、うみした。 19四、五十ちょうこぎしたとき、イエスがうみうえあるいてふねちかづいてこられるのをて、かれらはおそれた。 20すると、イエスはかれらにわれた、「わたしだ、おそれることはない」。 21そこで、かれらはよろこんでイエスをふねむかえようとした。するとふねは、すぐ、かれらがこうとしていたいた。

22その翌日よくじつうみこうぎしっていた群衆ぐんしゅうは、そこに小舟こぶねが一そうしかなく、またイエスは弟子でしたちと一緒いっしょ小舟こぶねにおりにならず、ただ弟子でしたちだけが船出ふなでしたのをた。 23しかし、すうそうの小舟こぶねがテベリヤからきて、しゅ感謝かんしゃされたのちパンを人々ひとびとべさせた場所ばしょちかづいた。 24群衆ぐんしゅうは、イエスも弟子でしたちもそこにいないとって、それらの小舟こぶねり、イエスをたずねてカペナウムにった。 25そして、うみこうぎしでイエスに出会であったのでった、「先生せんせい、いつ、ここにおいでになったのですか」。 26イエスはこたえてわれた、「よくよくあなたがたにっておく。あなたがたがわたしをたずねてきているのは、しるしをたためではなく、パンをべて満腹まんぷくしたからである。 27ちる食物しょくもつのためではなく、永遠えいえんいのちいたちない食物しょくもつのためにはたらくがよい。これはひとがあなたがたにあたえるものである。ちちなるかみは、ひとにそれをゆだねられたのである」。 28そこで、かれらはイエスにった、「かみのわざをおこなうために、わたしたちはなにをしたらよいでしょうか」。 29イエスはかれらにこたえてわれた、「かみがつかわされたものしんじることが、かみのわざである」。 30かれらはイエスにった、「わたしたちがてあなたをしんじるために、どんなしるしをおこなってくださいますか。どんなことをしてくださいますか。 31わたしたちの先祖せんぞ荒野あらのでマナをべました。それは『てんよりのパンをかれらにあたえてべさせた』といてあるとおりです」。 32そこでイエスはかれらにわれた、「よくよくっておく。てんからのパンをあなたがたにあたえたのは、モーセではない。てんからのまことのパンをあなたがたにあたえるのは、わたしのちちなのである。 33かみのパンは、てんからくだってきて、このいのちあたえるものである」。 34かれらはイエスにった、「しゅよ、そのパンをいつもわたしたちにください」。 35イエスはかれらにわれた、「わたしがいのちのパンである。わたしにものけっしてえることがなく、わたしをしんじるものけっしてかわくことがない。 36しかし、あなたがたにったが、あなたがたはわたしをたのにしんじようとはしない。 37ちちがわたしにあたえてくださるものみな、わたしにるであろう。そして、わたしにものけっしてこばみはしない。 38わたしがてんからくだってきたのは、自分じぶんのこころのままをおこなうためではなく、わたしをつかわされたかたのみこころをおこなうためである。 39わたしをつかわされたかたのみこころは、わたしにあたえてくださったものを、わたしがひとりもうしなわずに、おわりのによみがえらせることである。 40わたしのちちのみこころは、しんじるものが、ことごとく永遠えいえんいのちることなのである。そして、わたしはその人々ひとびとおわりのによみがえらせるであろう」。

41ユダヤじんらは、イエスが「わたしはてんからくだってきたパンである」とわれたので、イエスについてつぶやきはじめた。 42そしてった、「これはヨセフのイエスではないか。わたしたちはその父母ふぼっているではないか。わたしはてんからくだってきたと、どうしていまいうのか」。 43イエスはかれらにこたえてわれた、「たがいにつぶやいてはいけない。 44わたしをつかわされたちちきよせてくださらなければ、だれもわたしにることはできない。わたしは、その人々ひとびとおわりのによみがえらせるであろう。 45預言者よげんしゃしょに、『かれらはみなかみおしえられるであろう』といてある。ちちからいてまなんだものは、みなわたしにるのである。 46かみからもののほかに、だれかがちちたのではない。そのものだけがちちたのである。 47よくよくあなたがたにっておく。しんじるものには永遠えいえんいのちがある。 48わたしはいのちのパンである。 49あなたがたの先祖せんぞ荒野あらのでマナをべたが、んでしまった。 50しかし、てんからくだってきたパンをべるひとは、けっしてぬことはない。 51わたしはてんからくだってきたきたパンである。それをべるものは、いつまでもきるであろう。わたしがあたえるパンは、いのちのためにあたえるわたしのにくである」。

52そこで、ユダヤじんらがたがいろんじてった、「このひとはどうして、自分じぶんにくをわたしたちにあたえてべさせることができようか」。 53イエスはかれらにわれた、「よくよくっておく。ひとにくべず、また、そのまなければ、あなたがたのうちいのちはない。 54わたしのにくべ、わたしのものには、永遠えいえんいのちがあり、わたしはそのひとおわりのによみがえらせるであろう。 55わたしのにくはまことの食物しょくもつ、わたしのはまことのものである。 56わたしのにくべ、わたしのものはわたしにおり、わたしもまたそのひとにおる。 57けるちちがわたしをつかわされ、また、わたしがちちによってきているように、わたしをべるものもわたしによってきるであろう。 58てんからくだってきたパンは、先祖せんぞたちがべたがんでしまったようなものではない。このパンをべるものは、いつまでもきるであろう」。 59これらのことは、イエスがカペナウムの会堂かいどうおしえておられたときにわれたものである。

60弟子でしたちのうちのおおくのものは、これをいてった、「これは、ひどい言葉ことばだ。だれがそんなことをいておられようか」。 61しかしイエスは、弟子でしたちがそのことでつぶやいているのを見破みやぶって、かれらにわれた、「このことがあなたがたのつまずきになるのか。 62それでは、もしひとまえにいたところのぼるのをたら、どうなるのか。 63ひとかすものはれいであって、にくはなんのやくにもたない。わたしがあなたがたにはなした言葉ことばれいであり、またいのちである。 64しかし、あなたがたのなかにはしんじないものがいる」。イエスは、はじめから、だれがしんじないか、また、だれがかれ裏切うらぎるかをっておられたのである。 65そしてイエスはわれた、「それだから、ちちあたえてくださったものでなければ、わたしにることはできないと、ったのである」。

66それ以来いらいおおくの弟子でしたちはっていって、もはやイエスと行動こうどうともにしなかった。 67そこでイエスは十二弟子でしわれた、「あなたがたもろうとするのか」。 68シモン・ペテロがこたえた、「しゅよ、わたしたちは、だれのところにきましょう。永遠えいえんいのちことばをもっているのはあなたです。 69わたしたちは、あなたがかみ聖者せいじゃであることをしんじ、またっています」。 70イエスはかれらにこたえられた、「あなたがた十二にんえらんだのは、わたしではなかったか。それだのに、あなたがたのうちのひとりは悪魔あくまである」。 71これは、イスカリオテのシモンのユダをさしてわれたのである。このユダは、十二弟子でしのひとりでありながら、イエスを裏切うらぎろうとしていた。

第七章

1そののち、イエスはガリラヤを巡回じゅんかいしておられた。ユダヤじんたちが自分じぶんころそうとしていたので、ユダヤを巡回じゅんかいしようとはされなかった。 2ときに、ユダヤじん仮庵かりいおまつりちかづいていた。 3そこで、イエスの兄弟きょうだいたちがイエスにった、「あなたがしておられるわざを弟子でしたちにもせるために、ここをりユダヤにってはいかがです。 4自分じぶんおおやけけにあらわそうとおもっているひとで、かくれて仕事しごとをするものはありません。あなたがこれらのことをするからには、自分じぶんをはっきりとにあらわしなさい」。 5こうったのは、兄弟きょうだいたちもイエスをしんじていなかったからである。 6そこでイエスはかれらにわれた、「わたしのときはまだきていない。しかし、あなたがたのときはいつもそなわっている。 7はあなたがたをにくないが、わたしをにくんでいる。わたしがのおこないのわるいことを、あかししているからである。 8あなたがたこそまつりきなさい。わたしはこのまつりにはかない。わたしのときはまだちていないから」。 9かれらにこうって、イエスはガリラヤにとどまっておられた。

10しかし、兄弟きょうだいたちがまつりったあとで、イエスも人目ひとめにたたぬように、ひそかにかれた。 11ユダヤじんらはまつりときに、「あのひとはどこにいるのか」とって、イエスをさがしていた。 12群衆ぐんしゅうなかに、イエスについていろいろとうわさがった。ある人々ひとびとは、「あれはよいひとだ」とい、人々ひとびとは、「いや、あれは群衆ぐんしゅうまどわしている」とった。 13しかし、ユダヤじんらをおそれて、イエスのことを公然こうぜんくちにするものはいなかった。

14まつりなかばになってから、イエスはみやのぼっておしはじめられた。 15すると、ユダヤじんたちはおどろいてった、「このひと学問がくもんをしたこともないのに、どうして律法りっぽう知識ちしきをもっているのだろう」。 16そこでイエスはかれらにこたえてわれた、「わたしのおしえはわたし自身じしんおしえではなく、わたしをつかわされたかたのおしえである。 17かみのみこころをおこなおうとおもものであれば、だれでも、わたしのかたっているこのおしえかみからのものか、それとも、わたし自身じしんからたものか、わかるであろう。 18自分じぶんからたことをかたものは、自分じぶん栄光えいこうもとめるが、自分じぶんをつかわされたかたの栄光えいこうもとめるもの真実しんじつであって、そのひとうちにはいつわりがない。 19モーセはあなたがたに律法りっぽうあたえたではないか。それだのに、あなたがたのうちには、その律法りっぽうおこなものがひとりもない。あなたがたは、なぜわたしをころそうとおもっているのか」。 20群衆ぐんしゅうこたえた、「あなたは悪霊あくれいりつかれている。だれがあなたをころそうとおもっているものか」。 21イエスはかれらにこたえてわれた、「わたしが一つのわざをしたところ、あなたがたはみなそれをおどろいている。 22モーセはあなたがたに割礼かつれいめいじたので、(これは、じつは、モーセからはじまったのではなく、先祖せんぞたちからはじまったものである)あなたがたは安息日あんそくにちにもひと割礼かつれいほどこしている。 23もし、モーセの律法りっぽうやぶられないように、安息日あんそくにちであっても割礼かつれいけるのなら、安息日あんそくにちひと全身ぜんしん丈夫じょうぶにしてやったからといって、どうして、そんなにおこるのか。 24うわべでひとをさばかないで、ただしいさばきをするがよい」。

25さて、エルサレムのあるひとたちがった、「このひと人々ひとびところそうとおもっているものではないか。 26よ、かれ公然こうぜんかたっているのに、人々ひとびとはこれにたいしてなにわない。役人やくにんたちは、このひとがキリストであることを、ほんとうにっているのではなかろうか。 27わたしたちはこのひとがどこからきたのかっている。しかし、キリストがあらわれるときには、どこからるのかっているものは、ひとりもいない」。 28イエスはみやうちおしえながら、さけんでわれた、「あなたがたは、わたしをっており、また、わたしがどこからきたかもっている。しかし、わたしは自分じぶんからきたのではない。わたしをつかわされたかたは真実しんじつであるが、あなたがたは、そのかたをらない。 29わたしは、そのかたをっている。わたしはそのかたのもとからきたもので、そのかたがわたしをつかわされたのである」。 30そこで人々ひとびとはイエスをとらえようとはかったが、だれひとりをかけるものはなかった。イエスのときが、まだきていなかったからである。 31しかし、群衆ぐんしゅうなかおおくのものが、イエスをしんじてった、「キリストがきても、このひとおこなったよりもおおくのしるしをおこなうだろうか」。

32群衆ぐんしゅうがイエスについてこのようなうわさをしているのを、パリサイびとたちはみみにした。そこで、祭司長さいしちょうたちやパリサイびとたちは、イエスをとらえようとして、下役したやくどもをつかわした。 33イエスはわれた、「いましばらくのあいだ、わたしはあなたがたと一緒いっしょにいて、それから、わたしをおつかわしになったかたのみもとにく。 34あなたがたはわたしをさがすであろうが、つけることはできない。そしてわたしのいるところに、あなたがたはることができない」。 35そこでユダヤじんたちはたがいった、「わたしたちがつけることができないというのは、どこへこうとしているのだろう。ギリシヤじんなか離散りさんしているひとたちのところにでもって、ギリシヤじんおしえようというのだろうか。 36また、『わたしをさがすが、つけることはできない。そしてわたしのいるところにはることができないだろう』とったその言葉ことばは、どういう意味いみだろう」。

37まつりおわりの大事だいじに、イエスはって、さけんでわれた、「だれでもかわくものは、わたしのところにきてむがよい。 38わたしをしんじるものは、聖書せいしょいてあるとおり、そのはらからけるみずかわとなってるであろう」。 39これは、イエスをしんじる人々ひとびとけようとしている御霊みたまをさしてわれたのである。すなわち、イエスはまだ栄光えいこうけておられなかったので、御霊みたまがまだくだっていなかったのである。 40群衆ぐんしゅうのあるものがこれらの言葉ことばいて、「このかたは、ほんとうに、あの預言者よげんしゃである」とい、 41ほかのひとたちは「このかたはキリストである」とい、また、ある人々ひとびとは、「キリストはまさか、ガリラヤからはてこないだろう。 42キリストは、ダビデの子孫しそんから、またダビデのいたベツレヘムのむらからると、聖書せいしょいてあるではないか」とった。 43こうして、群衆ぐんしゅうあいだにイエスのことで分争ぶんそうしょうじた。 44かれらのうちのある人々ひとびとは、イエスをとらえようとおもったが、だれひとりをかけるものはなかった。

45さて、下役したやくどもが祭司長さいしちょうたちやパリサイびとたちのところにかえってきたので、かれらはその下役したやくどもにった、「なぜ、あのひとれてこなかったのか」。 46下役したやくどもはこたえた、「このひとかたるようにかたったものは、これまでにありませんでした」。 47パリサイびとたちがかれらにこたえた、「あなたがたまでが、だまされているのではないか。 48役人やくにんたちやパリサイびとたちのなかで、ひとりでもかれしんじたものがあっただろうか。 49律法りっぽうをわきまえないこの群衆ぐんしゅうは、のろわれている」。 50かれらのなかのひとりで、以前いぜんにイエスにいにきたことのあるニコデモが、かれらにった、 51「わたしたちの律法りっぽうによれば、まずそのひとぶんき、そのひとのしたことをったうえでなければ、さばくことをしないのではないか」。 52かれらはこたえてった、「あなたもガリラヤなのか。よく調しらべてみなさい、ガリラヤからは預言者よげんしゃるものではないことが、わかるだろう」。

53そして、人々ひとびとはおのおのいえかえってった。

第八章

1イエスはオリブやまかれた。 2あさはやくまたみやにはいられると、人々ひとびとみなみもとにあつまってきたので、イエスはすわってかれらをおしえておられた。 3すると、律法りっぽう学者がくしゃたちやパリサイびとたちが、姦淫かんいんをしているときにつかまえられたおんなをひっぱってきて、なかたせたうえ、イエスにった、 4先生せんせい、このおんな姦淫かんいんでつかまえられました。 5モーセは律法りっぽうなかで、こういうおんないしころせとめいじましたが、あなたはどうおもいますか」。 6かれらがそうったのは、イエスをためして、うったえる口実こうじつるためであった。しかし、イエスはをかがめて、ゆび地面じめんなにいておられた。 7かれらがつづけるので、イエスはおこしてかれらにわれた、「あなたがたのなかつみのないものが、まずこのおんないしげつけるがよい」。 8そしてまたをかがめて、地面じめんものきつづけられた。 9これをくと、かれらは年寄としよりからはじめて、ひとりびとりき、ついに、イエスだけになり、おんななかにいたままのこされた。 10そこでイエスはおこしておんなわれた、「おんなよ、みんなはどこにいるか。あなたをばっするものはなかったのか」。 11おんなった、「しゅよ、だれもございません」。イエスはわれた、「わたしもあなたをばっしない。おかえりなさい。今後こんごはもうつみおかさないように」。〕

12イエスは、また人々ひとびとかたってこうわれた、「わたしはひかりである。わたしにしたがってものは、やみのうちをあるくことがなく、いのちひかりをもつであろう」。 13するとパリサイびとたちがイエスにった、「あなたは、自分じぶんのことをあかししている。あなたのあかしは真実しんじつではない」。 14イエスはかれらにこたえてわれた、「たとい、わたしが自分じぶんのことをあかししても、わたしのあかしは真実しんじつである。それは、わたしがどこからきたのか、また、どこへくのかをっているからである。しかし、あなたがたは、わたしがどこからきて、どこへくのかをらない。 15あなたがたはにくによってひとをさばくが、わたしはだれもさばかない。 16しかし、もしわたしがさばくとすれば、わたしのさばきはただしい。なぜなら、わたしはひとりではなく、わたしをつかわされたかたが、わたしと一緒いっしょだからである。 17あなたがたの律法りっぽうには、ふたりによる証言しょうげん真実しんじつだと、いてある。 18わたし自身じしんのことをあかしするのは、わたしであるし、わたしをつかわされたちちも、わたしのことをあかししてくださるのである」。 19すると、かれらはイエスにった、「あなたのちちはどこにいるのか」。イエスはこたえられた、「あなたがたは、わたしをもわたしのちちをもっていない。もし、あなたがたがわたしをっていたなら、わたしのちちをもっていたであろう」。 20イエスがみやうちおしえていたとき、これらの言葉ことばをさいせんはこのそばでかたられたのであるが、イエスのときがまだきていなかったので、だれもとらえるものがなかった。

21さて、またかれらにわれた、「わたしはってく。あなたがたはわたしをさがもとめるであろう。そして自分じぶんつみのうちにぬであろう。わたしのところには、あなたがたはることができない」。 22そこでユダヤじんたちはった、「わたしのところに、あなたがたはることができないと、ったのは、あるいは自殺じさつでもしようとするつもりか」。 23イエスはかれらにわれた、「あなたがたはしたからものだが、わたしはうえからきたものである。あなたがたはこのものであるが、わたしはこのものではない。 24だからわたしは、あなたがたは自分じぶんつみのうちにぬであろうと、ったのである。もしわたしがそういうものであることをあなたがたがしんじなければ、つみのうちにぬことになるからである」。 25そこでかれらはイエスにった、「あなたは、いったい、どういうかたですか」。イエスはかれらにわれた、「わたしがどういうものであるかは、はじめからあなたがたにっているではないか。 26あなたがたについて、わたしのうべきこと、さばくべきことが、たくさんある。しかし、わたしをつかわされたかたは真実しんじつなかたである。わたしは、そのかたからいたままをにむかってかたるのである」。 27かれらは、イエスがちちについてはなしておられたことをさとらなかった。 28そこでイエスはわれた、「あなたがたがひとげてしまったのちはじめて、わたしがそういうものであること、また、わたしは自分じぶんからはなにもせず、ただちちおしえてくださったままをはなしていたことが、わかってくるであろう。 29わたしをつかわされたかたは、わたしと一緒いっしょにおられる。わたしは、いつもかみのみこころにかなうことをしているから、わたしをひとりきざりになさることはない」。 30これらのことをかたられたところ、おおくの人々ひとびとがイエスをしんじた。

31イエスは自分じぶんしんじたユダヤじんたちにわれた、「もしわたしの言葉ことばのうちにとどまっておるなら、あなたがたは、ほんとうにわたしの弟子でしなのである。 32また真理しんりるであろう。そして真理しんりは、あなたがたに自由じゆうさせるであろう」。 33そこで、かれらはイエスにった、「わたしたちはアブラハムの子孫しそんであって、ひと奴隷どれいになったことなどは、一度いちどもない。どうして、あなたがたに自由じゆうさせるであろうと、われるのか」。 34イエスはかれらにこたえられた、「よくよくあなたがたにっておく。すべてつみおかものつみ奴隷どれいである。 35そして、奴隷どれいはいつまでもいえにいるものではない。しかし、はいつまでもいる。 36だから、もしがあなたがたに自由じゆうさせるならば、あなたがたは、ほんとうに自由じゆうものとなるのである。 37わたしは、あなたがたがアブラハムの子孫しそんであることをっている。それだのに、あなたがたはわたしをころそうとしている。わたしの言葉ことばが、あなたがたのうちにをおろしていないからである。 38わたしはわたしのちちのもとでたことをかたっているが、あなたがたは自分じぶんちちからいたことをおこなっている」。 39かれらはイエスにこたえてった、「わたしたちのちちはアブラハムである」。イエスはかれらにわれた、「もしアブラハムのであるなら、アブラハムのわざをするがよい。 40ところがいまかみからいた真理しんりをあなたがたにかたってきたこのわたしを、ころそうとしている。そんなことをアブラハムはしなかった。 41あなたがたは、あなたがたのちちのわざをおこなっているのである」。かれらはった、「わたしたちは、不品行ふひんこう結果けっかうまれたものではない。わたしたちにはひとりのちちがある。それはかみである」。 42イエスはかれらにわれた、「かみがあなたがたのちちであるならば、あなたがたはわたしをあいするはずである。わたしはかみからもの、またかみからきているものであるからだ。わたしは自分じぶんからきたのではなく、かみからつかわされたのである。 43どうしてあなたがたは、わたしのはなすことがわからないのか。あなたがたが、わたしの言葉ことばさとることができないからである。 44あなたがたは自分じぶんちち、すなわち、悪魔あくまからてきたものであって、そのちち欲望よくぼうどおりをおこなおうとおもっている。かれはじめから、人殺ひとごろしであって、真理しんりものではない。かれのうちには真理しんりがないからである。かれいつわりをうとき、いつも自分じぶん本音ほんねをはいているのである。かれいつわものであり、いつわりのちちであるからだ。 45しかし、わたしが真理しんりかたっているので、あなたがたはわたしをしんじようとしない。 46あなたがたのうち、だれがわたしにつみがあるとめうるのか。わたしは真理しんりかたっているのに、なぜあなたがたは、わたしをしんじないのか。 47かみからきたものかみ言葉ことばしたがうが、あなたがたがしたがわないのは、かみからきたものでないからである」。

48ユダヤじんたちはイエスにこたえてった、「あなたはサマリヤびとで、悪霊あくれいりつかれていると、わたしたちがうのは、当然とうぜんではないか」。 49イエスはこたえられた、「わたしは、悪霊あくれいりつかれているのではなくて、わたしのちちおもんじているのだが、あなたがたはわたしをかろんじている。 50わたしは自分じぶん栄光えいこうもとめてはいない。それをもとめるかたがべつにある。そのかたは、またさばくかたである。 51よくよくっておく。もしひとがわたしの言葉ことばまもるならば、そのひとはいつまでもることがないであろう」。 52ユダヤじんたちがった、「あなたが悪霊あくれいりつかれていることが、いまわかった。アブラハムはに、預言者よげんしゃたちもんでいる。それだのに、あなたは、わたしの言葉ことばまもものはいつまでもあじわうことがないであろうと、われる。 53あなたは、わたしたちのちちアブラハムよりえらいのだろうか。かれに、預言者よげんしゃたちもんだではないか。あなたは、いったい、自分じぶんをだれとおもっているのか」。 54イエスはこたえられた、「わたしがもし自分じぶん栄光えいこうするなら、わたしの栄光えいこうは、むなしいものである。わたしに栄光えいこうあたえるかたは、わたしのちちであって、あなたがたが自分じぶんかみだとっているのは、そのかたのことである。 55あなたがたはそのかみっていないが、わたしはっている。もしわたしがかみらないとうならば、あなたがたとおなじようないつわものであろう。しかし、わたしはそのかたをり、その御言みことばまもっている。 56あなたがたのちちアブラハムは、わたしのこのようとしてたのしんでいた。そしてそれをよろこんだ」。 57そこでユダヤじんたちはイエスにった、「あなたはまだ五十にもならないのに、アブラハムをたのか」。 58イエスはかれらにわれた、「よくよくあなたがたにっておく。アブラハムのうまれるまえからわたしは、いるのである」。 59そこでかれらはいしをとって、イエスにげつけようとした。しかし、イエスはかくして、みやからかれた。

第九章

1イエスがみちをとおっておられるとき、うまれつきの盲人もうじんられた。 2弟子でしたちはイエスにたずねてった、「先生せんせい、このひとうまれつき盲人もうじんなのは、だれがつみおかしたためですか。本人ほんにんですか、それともその両親りょうしんですか」。 3イエスはこたえられた、「本人ほんにんつみおかしたのでもなく、また、その両親りょうしんおかしたのでもない。ただかみのみわざが、かれうえあらわれるためである。 4わたしたちは、わたしをつかわされたかたのわざを、ひるあいだにしなければならない。よるる。すると、だれもはたらけなくなる。 5わたしは、このにいるあいだは、ひかりである」。 6イエスはそうって、につばきをし、そのつばきで、どろをつくり、そのどろを盲人もうじんってわれた、 7「シロアム(つかわされたもの、の)のいけってあらいなさい」。そこでかれってあらった。そしてえるようになって、かえってった。 8近所きんじょ人々ひとびとや、かれがもと、こじきであったのを見知みしっていた人々ひとびとった、「このひとは、すわってこじきをしていたものではないか」。 9ある人々ひとびとは「そのひとだ」とい、人々ひとびとは「いや、ただあのひとているだけだ」とった。しかし、本人ほんにんは「わたしがそれだ」とった。 10そこで人々ひとびとかれった、「では、おまえのはどうしてあいたのか」。 11かれこたえた、「イエスというかたが、どろをつくって、わたしのり、『シロアムにってあらえ』とわれました。それで、ってあらうと、えるようになりました」。 12人々ひとびとかれった、「そのひとはどこにいるのか」。かれは「りません」とこたえた。

13人々ひとびとは、もと盲人もうじんであったこのひとを、パリサイびとたちのところにつれてった。 14イエスがどろをつくってかれをあけたのは、安息日あんそくにちであった。 15パリサイびとたちもまた、「どうしてえるようになったのか」、とかれたずねた。かれこたえた、「あのかたがわたしのにどろをり、わたしがそれをあらい、そしてえるようになりました」。 16そこで、あるパリサイびとたちがった、「そのひとかみからきたひとではない。安息日あんそくにちまもっていないのだから」。しかし、ほかの人々ひとびとった、「つみのあるひとが、どうしてそのようなしるしをおこなうことができようか」。そしてかれらのあいだ分争ぶんそうしょうじた。 17そこでかれらは、もう一この盲人もうじんいた、「おまえのをあけてくれたそのひとを、どうおもうか」。「預言者よげんしゃだとおもいます」とかれった。 18ユダヤじんたちは、かれがもと盲人もうじんであったがえるようになったことを、まだしんじなかった。ついにかれらは、えるようになったこのひと両親りょうしんんで、 19たずねてった、「これが、うまれつき盲人もうじんであったと、おまえたちのっているむすこか。それではどうして、いまえるのか」。 20両親りょうしんこたえてった、「これがわたしどものむすこであること、またうまれつき盲人もうじんであったことはぞんじています。 21しかし、どうしていまえるようになったのか、それはりません。また、だれがそのをあけてくださったのかもりません。あれにいてください。あれはもうおとなですから、自分じぶんのことは自分じぶんはなせるでしょう」。 22両親りょうしんはユダヤじんたちをおそれていたので、こうこたえたのである。それは、もしイエスをキリストと告白こくはくするものがあれば、会堂かいどうからすことに、ユダヤじんたちがすでめていたからである。 23かれ両親りょうしんが「おとなですから、あれにいてください」とったのは、そのためであった。

24そこでかれらは、盲人もうじんであったひとをもう一度いちどんでった、「かみ栄光えいこうするがよい。あのひと罪人つみびとであることは、わたしたちにはわかっている」。 25するとかれった、「あのかたが罪人つみびとであるかどうか、わたしはりません。ただ一つのことだけっています。わたしはめくらであったが、いまえるということです」。 26そこでかれらはった、「そのひとはおまえになにをしたのか。どんなにしておまえのをあけたのか」。 27かれこたえた、「そのことはもうはなしてあげたのに、いてくれませんでした。なぜまたこうとするのですか。あなたがたも、あのひと弟子でしになりたいのですか」。 28そこでかれらはかれをののしってった、「おまえはあれの弟子でしだが、わたしたちはモーセの弟子でしだ。 29モーセにかみかたられたということはっている。だが、あのひとがどこからきたものか、わたしたちはらぬ」。 30そこでかれこたえてった、「わたしのをあけてくださったのに、そのかたがどこからきたか、ごぞんじないとは、不思議ふしぎ千万せんばんです。 31わたしたちはこのことをっています。かみ罪人つみびとうことはおきいれになりませんが、かみうやまい、そのみこころをおこなひとうことは、きいれてくださいます。 32うまれつきめくらであったものをあけたひとがあるということは、世界せかいはじまって以来いらいいたことがありません。 33もしあのかたがかみからきたひとでなかったら、何一なにひとつできなかったはずです」。 34これをいてかれらはった、「おまえはまったつみなかうまれていながら、わたしたちをおしえようとするのか」。そしてかれそとした。

35イエスは、そのひとそとされたことをかれた。そしてかれってわれた、「あなたはひとしんじるか」。 36かれこたえてった、「しゅよ、それはどなたですか。そのかたをしんじたいのですが」。 37イエスはかれわれた、「あなたは、もうそのひとっている。いまあなたとはなしているのが、そのひとである」。 38するとかれは、「しゅよ、しんじます」とって、イエスをはいした。 39そこでイエスはわれた、「わたしがこのにきたのは、さばくためである。すなわち、えないひとたちがえるようになり、えるひとたちがえないようになるためである」。 40そこにイエスと一緒いっしょにいたあるパリサイびとたちが、それをいてイエスにった、「それでは、わたしたちもめくらなのでしょうか」。 41イエスはかれらにわれた、「もしあなたがたが盲人もうじんであったなら、つみはなかったであろう。しかし、いまあなたがたが『える』とるところに、あなたがたのつみがある。

第一〇章

1よくよくあなたがたにっておく。ひつじかこいにはいるのに、もんからでなく、ほかのところからのりこえてものは、盗人ぬすびとであり、強盗ごうとうである。 2もんからはいるものは、ひつじ羊飼ひつじかいである。 3門番もんばんかれのためにもんひらき、ひつじかれこえく。そしてかれ自分じぶんひつじをよんです。 4自分じぶんひつじをみなしてしまうと、かれひつじ先頭せんとうってく。ひつじはそのこえっているので、かれについてくのである。 5ほかのひとには、ついてかないでる。そのひとこえらないからである」。 6イエスはかれらにこの比喩ひゆはなされたが、かれらは自分じぶんたちにおはなしになっているのがなにのことだか、わからなかった。

7そこで、イエスはまたわれた、「よくよくあなたがたにっておく。わたしはひつじもんである。 8わたしよりもまえにきたひとは、みな盗人ぬすびとであり、強盗ごうとうである。ひつじかれらにしたがわなかった。 9わたしはもんである。わたしをとおってはいるものすくわれ、また出入でいりし、牧草ぼくそうにありつくであろう。 10盗人ぬすびとるのは、ぬすんだり、ころしたり、ほろぼしたりするためにほかならない。わたしがきたのは、ひつじいのちさせ、ゆたかにさせるためである。 11わたしはよい羊飼ひつじかいである。よい羊飼ひつじかいは、ひつじのためにいのちてる。 12羊飼ひつじかいではなく、ひつじ自分じぶんのものでもない雇人やといにんは、おおかみがるのをると、ひつじをすててる。そして、おおかみはひつじうばい、またらす。 13かれ雇人やといにんであって、ひつじのことをこころにかけていないからである。 14わたしはよい羊飼ひつじかいであって、わたしのひつじり、わたしのひつじはまた、わたしをっている。 15それはちょうど、ちちがわたしをっておられ、わたしがちちっているのとおなじである。そして、わたしはひつじのためにいのちてるのである。 16わたしにはまた、このかこいにいないひつじがある。わたしはかれらをもみちびかねばならない。かれらも、わたしのこえしたがうであろう。そして、ついに一つのれ、ひとりの羊飼ひつじかいとなるであろう。 17ちちは、わたしが自分じぶんいのちてるから、わたしをあいしてくださるのである。いのちてるのは、それをふたたるためである。 18だれかが、わたしからそれをるのではない。わたしが、自分じぶんからそれをてるのである。わたしには、それをてるちからがあり、またそれをけるちからもある。これはわたしのちちからさずかったさだめである」。

19これらの言葉ことばかたられたため、ユダヤじんあいだにまたも分争ぶんそうしょうじた。 20そのうちのおおくのものった、「かれ悪霊あくれいりつかれて、くるっている。どうして、あなたがたはそのうことをくのか」。 21人々ひとびとった、「それは悪霊あくれいりつかれたもの言葉ことばではない。悪霊あくれい盲人もうじんをあけることができようか」。

22そのころ、エルサレムでみやきよめのまつりおこなわれた。ときふゆであった。 23イエスは、みやなかにあるソロモンのろうあるいておられた。 24するとユダヤじんたちが、イエスをかこんでった、「いつまでわたしたちを不安ふあんのままにしておくのか。あなたがキリストであるなら、そうとはっきりっていただきたい」。 25イエスはかれらにこたえられた、「わたしははなしたのだが、あなたがたはしんじようとしない。わたしのちちによってしているすべてのわざが、わたしのことをあかししている。 26あなたがたがしんじないのは、わたしのひつじでないからである。 27わたしのひつじはわたしのこえしたがう。わたしはかれらをっており、かれらはわたしについてる。 28わたしは、かれらに永遠えいえんいのちあたえる。だから、かれらはいつまでもほろびることがなく、また、かれらをわたしのからうばものはない。 29わたしのちちがわたしにくださったものは、すべてにまさるものである。そしてだれもちちのみから、それをうばることはできない。 30わたしとちちとは一つである」。 31そこでユダヤじんたちは、イエスをころそうとして、またいしりあげた。 32するとイエスはかれらにこたえられた、「わたしは、ちちによるおおくのよいわざを、あなたがたにしめした。そのなかのどのわざのために、わたしをいしころそうとするのか」。 33ユダヤじんたちはこたえた、「あなたをいしころそうとするのは、よいわざをしたからではなく、かみけがしたからである。また、あなたは人間にんげんであるのに、自分じぶんかみとしているからである」。 34イエスはかれらにこたえられた、「あなたがたの律法りっぽうに、『わたしはう、あなたがたは神々かみがみである』といてあるではないか。 35かみことばたくされた人々ひとびとが、神々かみがみといわれておるとすれば、(そして聖書せいしょことばは、すたることがありない) 36ちちせいべつして、につかわされたものが、『わたしはかみである』とったからとて、どうして『あなたはかみけがものだ』とうのか。 37もしわたしがちちのわざをおこなわないとすれば、わたしをしんじなくてもよい。 38しかし、もしおこなっているなら、たといわたしをしんじなくても、わたしのわざをしんじるがよい。そうすれば、ちちがわたしにおり、また、わたしがちちにおることをってさとるであろう」。 39そこで、かれらはまたイエスをとらえようとしたが、イエスはかれらのをのがれて、ってかれた。

40さて、イエスはまたヨルダンのこうぎし、すなわち、ヨハネがはじめにバプテスマをさづけていたところき、そこに滞在たいざいしておられた。 41おおくの人々ひとびとがイエスのところにきて、たがいった、「ヨハネはなんのしるしもおこなわなかったが、ヨハネがこのかたについてったことは、みなほんとうであった」。 42そして、そこでおおくのものがイエスをしんじた。

第一一章

1さて、ひとりの病人びょうにんがいた。ラザロといい、マリヤとその姉妹しまいマルタのむらベタニヤのひとであった。 2このマリヤはしゅ香油こうゆをぬり、自分じぶんかみで、しゅあしをふいたおんなであって、病気びょうきであったのは、彼女かのじょ兄弟きょうだいラザロであった。 3姉妹しまいたちはひとをイエスのもとにつかわして、「しゅよ、ただいま、あなたがあいしておられるもの病気びょうきをしています」とわせた。 4イエスはそれをいてわれた、「この病気びょうきぬほどのものではない。それはかみ栄光えいこうのため、また、かみがそれによって栄光えいこうけるためのものである」。

5イエスは、マルタとその姉妹しまいとラザロとをあいしておられた。 6ラザロが病気びょうきであることをいてから、なおふつか、そのおられたところ滞在たいざいされた。 7それから弟子でしたちに、「もう一ユダヤにこう」とわれた。 8弟子でしたちはった、「先生せんせい、ユダヤじんらが、さきほどもあなたをいしころそうとしていましたのに、またそこにかれるのですか」。 9イエスはこたえられた、「一にちには十二時間じかんあるではないか。昼間ひるまあるけば、ひとはつまずくことはない。このひかりているからである。 10しかし、よるあるけば、つまずく。そのひとのうちに、ひかりがないからである」。 11そうわれたが、それからまた、かれらにわれた、「わたしたちのともラザロがねむっている。わたしはかれおこしにく」。 12すると弟子でしたちはった、「しゅよ、ねむっているのでしたら、たすかるでしょう」。 13イエスはラザロがんだことをわれたのであるが、弟子でしたちは、ねむってやすんでいることをさしてわれたのだとおもった。 14するとイエスは、あからさまにかれらにわれた、「ラザロはんだのだ。 15そして、わたしがそこにいあわせなかったことを、あなたがたのためによろこぶ。それは、あなたがたがしんじるようになるためである。では、かれのところにこう」。 16するとデドモとばれているトマスが、仲間なかま弟子でしたちにった、「わたしたちもって、先生せんせい一緒いっしょのうではないか」。

17さて、イエスがってごらんになると、ラザロはすでに四日間かかんはかなかかれていた。 18ベタニヤはエルサレムにちかく、二十五ちょうばかりはなれたところにあった。 19おおぜいのユダヤじんが、その兄弟きょうだいのことで、マルタとマリヤとをなぐさめようとしてきていた。 20マルタはイエスがこられたといて、出迎でむかえにったが、マリヤはいえですわっていた。 21マルタはイエスにった、「しゅよ、もしあなたがここにいてくださったなら、わたしの兄弟きょうだいななかったでしょう。 22しかし、あなたがどんなことをおねがいになっても、かみはかなえてくださることを、わたしはいまでもぞんじています」。 23イエスはマルタにわれた、「あなたの兄弟きょうだいはよみがえるであろう」。 24マルタはった、「おわりののよみがえりのときよみがえることは、ぞんじています」。 25イエスは彼女かのじょわれた、「わたしはよみがえりであり、いのちである。わたしをしんじるものは、たといんでもきる。 26また、きていて、わたしをしんじるものは、いつまでもなない。あなたはこれをしんじるか」。 27マルタはイエスにった、「しゅよ、しんじます。あなたがこのにきたるべきキリスト、かみ御子みこであるとしんじております」。 28マルタはこうってから、かえって姉妹しまいのマリヤをび、「先生せんせいがおいでになって、あなたをんでおられます」と小声こごえった。 29これをいたマリヤはすぐがって、イエスのもとにった。 30イエスはまだむらに、はいってこられず、マルタがおむかえしたその場所ばしょにおられた。 31マリヤと一緒いっしょいえにいて彼女かのじょなぐさめていたユダヤじんたちは、マリヤがいそいでがってくのをて、彼女かのじょはかきにくのであろうとおもい、そのあとからついてった。 32マリヤは、イエスのおられるところっておにかかり、そのあしもとにひれしてった、「しゅよ、もしあなたがここにいてくださったなら、わたしの兄弟きょうだいななかったでしょう」。 33イエスは、彼女かのじょき、また、彼女かのじょ一緒いっしょにきたユダヤじんたちもいているのをごらんになり、はげしく感動かんどうし、またこころさわがせ、そしてわれた、 34かれをどこにいたのか」。かれらはイエスにった、「しゅよ、きて、ごらんください」。 35イエスはなみだながされた。 36するとユダヤじんたちはった、「ああ、なんとかれあいしておられたことか」。 37しかし、かれらのあるひとたちはった、「あの盲人もうじんをあけたこのひとでも、ラザロをなせないようには、できなかったのか」。 38イエスはまたはげしく感動かんどうして、はかにはいられた。それは洞穴ほらあなであって、そこにいしがはめてあった。 39イエスはわれた、「いしりのけなさい」。んだラザロの姉妹しまいマルタがった、「しゅよ、もうくさくなっております。四もたっていますから」。 40イエスは彼女かのじょわれた、「もししんじるならかみ栄光えいこうるであろうと、あなたにったではないか」。 41人々ひとびといしりのけた。すると、イエスはてんにむけてわれた、「ちちよ、わたしのねがいをおくださったことを感謝かんしゃします。 42あなたがいつでもわたしのねがいをきいれてくださることを、よくっています。しかし、こうもうしますのは、そばにっている人々ひとびとに、あなたがわたしをつかわされたことを、しんじさせるためであります」。 43こういながら、大声おおごえで「ラザロよ、てきなさい」とばわれた。 44すると、死人しにん手足てあしぬのでまかれ、かおかおおおいでつつまれたまま、てきた。イエスは人々ひとびとわれた、「かれをほどいてやって、かえらせなさい」。

45マリヤのところにきて、イエスのなさったことをおおくのユダヤじんたちは、イエスをしんじた。 46しかし、そのうちの数人すうにんがパリサイびとたちのところにって、イエスのされたことをげた。 47そこで、祭司長さいしちょうたちとパリサイびとたちとは、議会ぎかい召集しょうしゅうしてった、「このひとおおくのしるしをおこなっているのに、おたがいなにをしているのだ。 48もしこのままにしておけば、みんながかれしんじるようになるだろう。そのうえ、ローマじんがやってきて、わたしたちの土地とち人民じんみんうばってしまうであろう」。 49かれらのうちのひとりで、そのとし大祭司だいさいしであったカヤパが、かれらにった、「あなたがたは、なにもわかっていないし、 50ひとりのひと人民じんみんかわってんで、全国民ぜんこくみんほろびないようになるのがわたしたちにとってだということを、かんがえてもいない」。 51このことはかれ自分じぶんからったのではない。かれはこのとし大祭司だいさいしであったので、預言よげんをして、イエスが国民こくみんのために、 52ただ国民こくみんのためだけではなく、また散在さんざいしているかみらを一つにあつめるために、ぬことになっていると、ったのである。 53かれらはこのからイエスをころそうと相談そうだんした。 54そのためイエスは、もはや公然こうぜんとユダヤじんあいだあるかないで、そこをて、荒野あらのちか地方ちほうのエフライムというまちかれ、そこに弟子でしたちと一緒いっしょ滞在たいざいしておられた。

55さて、ユダヤじん過越すぎこしまつりちかづいたので、おおくの人々ひとびとをきよめるために、まつりまえに、地方ちほうからエルサレムへのぼった。 56人々ひとびとはイエスをさがもとめ、みやにわってたがいった、「あなたがたはどうおもうか。イエスはこのまつりにこないのだろうか」。 57祭司長さいしちょうたちとパリサイびとたちとは、イエスをとらえようとして、そのいどころをっているものがあればもうよ、という指令しれいしていた。

第一二章

1過越すぎこしまつりの六まえに、イエスはベタニヤにかれた。そこは、イエスが死人しにんなかからよみがえらせたラザロのいたところである。 2イエスのためにそこで夕食ゆうしょく用意よういがされ、マルタは給仕きゅうじをしていた。イエスと一緒いっしょ食卓しょくたくについていたもののうちに、ラザロもくわわっていた。 3そのとき、マリヤは高価こうか純粋じゅんすいなナルドの香油こうゆきんってきて、イエスのあしにぬり、自分じぶんかみでそれをふいた。すると、香油こうゆのかおりがいえにいっぱいになった。 4弟子でしのひとりで、イエスを裏切うらぎろうとしていたイスカリオテのユダがった、 5「なぜこの香油こうゆを三百デナリにって、まずしいひとたちに、ほどこさなかったのか」。 6かれがこうったのは、まずしいひとたちにたいするおもいやりがあったからではなく、自分じぶん盗人ぬすびとであり、財布さいふあずかっていて、その中身なかみをごまかしていたからであった。 7イエスはわれた、「このおんなのするままにさせておきなさい。わたしのほうむりののために、それをとっておいたのだから。 8まずしいひとたちはいつもあなたがたとともにいるが、わたしはいつもともにいるわけではない」。 9おおぜいのユダヤじんたちが、そこにイエスのおられるのをって、しよせてきた。それはイエスにうためだけではなく、イエスが死人しにんのなかから、よみがえらせたラザロをるためでもあった。 10そこで祭司長さいしちょうたちは、ラザロもころそうと相談そうだんした。 11それは、ラザロのことで、おおくのユダヤじんかれらをはなって、イエスをしんじるにいたったからである。

12その翌日よくじつまつりにきていたおおぜいの群衆ぐんしゅうは、イエスがエルサレムにこられるといて、 13しゅろのえだにとり、むかえにった。そしてさけんだ、
「ホサナ、
しゅ御名みなによってきたるもの祝福しゅくふくあれ、
イスラエルのおうに」。
14イエスは、ろばのつけて、そのうえられた。それは
15「シオンのむすめよ、おそれるな。
よ、あなたのおう
ろばのっておいでになる」
いてあるとおりであった。 16弟子でしたちははじめにはこのことをさとらなかったが、イエスが栄光えいこうけられたときに、このことがイエスについてかれてあり、またそのとおりに、人々ひとびとがイエスにたいしてしたのだということを、おもおこした。 17また、イエスがラザロをはかからして、死人しにんなかからよみがえらせたとき、イエスと一緒いっしょにいた群衆ぐんしゅうが、そのあかしをした。 18群衆ぐんしゅうがイエスをむかえにたのは、イエスがこのようなしるしをおこなわれたことを、いていたからである。 19そこで、パリサイびとたちはたがいった、「なにをしてもむだだった。をあげてかれのあとをってったではないか」。

20まつり礼拝れいはいするためにのぼってきた人々ひとびとのうちに、数人すうにんのギリシヤじんがいた。 21かれらはガリラヤのベツサイダであるピリポのところにきて、「きみよ、イエスにおにかかりたいのですが」とってたのんだ。 22ピリポはアンデレのところにってそのことをはなし、アンデレとピリポは、イエスのもとにってつたえた。 23すると、イエスはこたえてわれた、「ひと栄光えいこうけるときがきた。 24よくよくあなたがたにっておく。一つぶむぎちてななければ、それはただ一つぶのままである。しかし、もしんだなら、ゆたかにむすぶようになる。 25自分じぶんいのちあいするものはそれをうしない、この自分じぶんいのちにくものは、それをたもって永遠えいえんいのちいたるであろう。 26もしわたしにつかえようとするひとがあれば、そのひとはわたしにしたがってるがよい。そうすれば、わたしのおるところに、わたしにつかえるものもまた、おるであろう。もしわたしにつかえようとするひとがあれば、そのひとちちおもんじてくださるであろう。 27いまわたしはこころさわいでいる。わたしはなんとおうか。ちちよ、このときからわたしをおすくください。しかし、わたしはこのために、このときいたったのです。 28ちちよ、みがあがめられますように」。するとてんからこえがあった、「わたしはすでに栄光えいこうをあらわした。そして、さらにそれをあらわすであろう」。 29すると、そこにっていた群衆ぐんしゅうがこれをいて、「かみなりがなったのだ」とい、ほかのひとたちは、「御使みつかいかれはなしかけたのだ」とった。 30イエスはこたえてわれた、「このこえがあったのは、わたしのためではなく、あなたがたのためである。 31いまはこのがさばかれるときである。いまこそこのきみされるであろう。 32そして、わたしがこのからげられるときには、すべてのひとをわたしのところにきよせるであろう」。 33イエスはこうって、自分じぶんがどんなほうのうとしていたかを、おしめしになったのである。 34すると群衆ぐんしゅうはイエスにむかってった、「わたしたちは律法りっぽうによって、キリストはいつまでもきておいでになるのだ、といていました。それだのに、どうしてひとげられねばならないと、われるのですか。そのひととは、だれのことですか」。 35そこでイエスはかれらにわれた、「もうしばらくのあいだひかりはあなたがたと一緒いっしょにここにある。ひかりがあるあいだあるいて、やみにいつかれないようにしなさい。やみのなかあるものは、自分じぶんがどこへくのかわかっていない。 36ひかりのあるあいだに、ひかりとなるために、ひかりしんじなさい」。

イエスはこれらのことをはなしてから、そこをって、かれらからをおかくしになった。 37このようにおおくのしるしをかれらのまえでなさったが、かれらはイエスをしんじなかった。 38それは、預言者よげんしゃイザヤのつぎ言葉ことば成就じょうじゅするためである、「しゅよ、わたしたちのくところを、だれがしんじたでしょうか。また、しゅのみうではだれにしめされたでしょうか」。 39こういうわけで、かれらはしんじることができなかった。イザヤはまた、こうもった、 40かみかれらのをくらまし、こころをかたくなになさった。それは、かれらがず、こころさとらず、あらためていやされることがないためである」。 41イザヤがこうったのは、イエスの栄光えいこうたからであって、イエスのことをかたったのである。 42しかし、役人やくにんたちのなかにも、イエスをしんじたものおおかったが、パリサイびとをはばかって、告白こくはくはしなかった。会堂かいどうからされるのをおそれていたのである。 43かれらはかみのほまれよりも、ひとのほまれをこのんだからである。

44イエスは大声おおごえわれた、「わたしをしんじるものは、わたしをしんじるのではなく、わたしをつかわされたかたをしんじるのであり、 45また、わたしをものは、わたしをつかわされたかたをるのである。 46わたしはひかりとしてこのにきた。それは、わたしをしんじるものが、やみのうちにとどまらないようになるためである。 47たとい、わたしのうことをいてそれをまもらないひとがあっても、わたしはそのひとをさばかない。わたしがきたのは、このをさばくためではなく、このすくうためである。 48わたしをてて、わたしの言葉ことばけいれないひとには、そのひとをさばくものがある。わたしのかたったその言葉ことばが、おわりのにそのひとをさばくであろう。 49わたしは自分じぶんからかたったのではなく、わたしをつかわされたちち自身じしんが、わたしのうべきこと、かたるべきことをおめいじになったのである。 50わたしは、この命令めいれい永遠えいえんいのちであることをっている。それゆえに、わたしがかたっていることは、わたしのちちがわたしにおおせになったことを、そのままかたっているのである」。

第一三章

1過越すぎこしまつりまえに、イエスは、このってちちのみもとにくべき自分じぶんときがきたことをり、にいる自分じぶんものたちをあいして、かれらを最後さいごまであいとおされた。 2夕食ゆうしょくのとき、悪魔あくまはすでにシモンのイスカリオテのユダのこころに、イエスを裏切うらぎろうとするおもいをれていたが、 3イエスは、ちちがすべてのものを自分じぶんにおあたえになったこと、また、自分じぶんかみからてきて、かみにかえろうとしていることをおもい、 4夕食ゆうしょくせきからがって、上着うわぎぎ、ぬぐいをとってこしき、 5それからみずをたらいにれて、弟子でしたちのあしあらい、こしいたぬぐいでふきはじめられた。 6こうして、シモン・ペテロのばんになった。するとかれはイエスに、「しゅよ、あなたがわたしのあしをおあらいになるのですか」とった。 7イエスはかれこたえてわれた、「わたしのしていることはいまあなたにはわからないが、あとでわかるようになるだろう」。 8ペテロはイエスにった、「わたしのあしけっしてあらわないでください」。イエスはかれこたえられた、「もしわたしがあなたのあしあらわないなら、あなたはわたしとなんのかかわりもなくなる」。 9シモン・ペテロはイエスにった、「しゅよ、では、あしだけではなく、どうぞ、あたまも」。 10イエスはかれわれた、「すでにからだをあらったものは、あしのほかはあら必要ひつようがない。全身ぜんしんがきれいなのだから。あなたがたはきれいなのだ。しかし、みんながそうなのではない」。 11イエスは自分じぶん裏切うらぎものっておられた。それで、「みんながきれいなのではない」とわれたのである。

12こうしてかれらのあしあらってから、上着うわぎをつけ、ふたたびせきにもどって、かれらにわれた、「わたしがあなたがたにしたことがわかるか。 13あなたがたはわたしを教師きょうし、またしゅんでいる。そううのはただしい。わたしはそのとおりである。 14しかし、しゅであり、また教師きょうしであるわたしが、あなたがたのあしあらったからには、あなたがたもまた、たがいあしあらうべきである。 15わたしがあなたがたにしたとおりに、あなたがたもするように、わたしは手本てほんしめしたのだ。 16よくよくあなたがたにっておく。しもべはその主人しゅじんにまさるものではなく、つかわされたものはつかわしたものにまさるものではない。 17もしこれらのことがわかっていて、それをおこなうなら、あなたがたはさいわいである。 18あなたがた全部ぜんぶものについて、こうっているのではない。わたしは自分じぶんえらんだひとたちをっている。しかし、『わたしのパンをべているものが、わたしにむかってそのかかとをあげた』とある聖書せいしょ成就じょうじゅされなければならない。 19そのことがまだおこらないいまのうちに、あなたがたにっておく。いよいよことおこったとき、わたしがそれであることを、あなたがたがしんじるためである。 20よくよくあなたがたにっておく。わたしがつかわすものけいれるものは、わたしをけいれるのである。わたしをけいれるものは、わたしをつかわされたかたを、けいれるのである」。

21イエスがこれらのことをわれたのち、そのこころさわぎ、おごそかにわれた、「よくよくあなたがたにっておく。あなたがたのうちのひとりが、わたしを裏切うらぎろうとしている」。 22弟子でしたちはだれのことをわれたのかさっしかねて、たがいかお見合みあわせた。 23弟子でしたちのひとりで、イエスのあいしておられたものが、みむねちかせきについていた。 24そこで、シモン・ペテロはかれ合図あいずをしてった、「だれのことをおっしゃったのか、らせてくれ」。 25その弟子でしはそのままイエスのむねによりかかって、「しゅよ、だれのことですか」とたずねると、 26イエスはこたえられた、「わたしが一きれの食物しょくもつをひたしてあたえるものが、それである」。そして、一きれの食物しょくもつをひたしてとりげ、シモンのイスカリオテのユダにおあたえになった。 27この一きれの食物しょくもつけるやいなや、サタンがユダにはいった。そこでイエスはかれわれた、「しようとしていることを、いますぐするがよい」。 28せきともにしていたもののうち、なぜユダにこうわれたのか、わかっていたものはひとりもなかった。 29ある人々ひとびとは、ユダが金入かねいれをあずかっていたので、イエスがかれに、「まつりのために必要ひつようなものをえ」とわれたか、あるいは、まずしいものなにほどこさせようとされたのだとおもっていた。 30ユダは一きれの食物しょくもつけると、すぐにった。ときよるであった。

31さて、かれくと、イエスはわれた、「いまひと栄光えいこうけた。かみもまたかれによって栄光えいこうをおけになった。 32かれによって栄光えいこうをおけになったのなら、かみ自身じしんかれ栄光えいこうをおさづけになるであろう。すぐにもおさづけになるであろう。 33たちよ、わたしはまだしばらく、あなたがたと一緒いっしょにいる。あなたがたはわたしをさがすだろうが、すでにユダヤじんたちにったとおり、いまあなたがたにもう、『あなたがたはわたしのところることはできない』。 34わたしは、あたらしいいましめをあなたがたにあたえる、たがいあいいなさい。わたしがあなたがたをあいしたように、あなたがたもたがいあいいなさい。 35たがいあいうならば、それによって、あなたがたがわたしの弟子でしであることを、すべてのものみとめるであろう」。

36シモン・ペテロがイエスにった、「しゅよ、どこへおいでになるのですか」。イエスはこたえられた、「あなたはわたしのくところに、いまはついてることはできない。しかし、あとになってから、ついてることになろう」。 37ペテロはイエスにった、「しゅよ、なぜ、いまあなたについてくことができないのですか。あなたのためには、いのちてます」。 38イエスはこたえられた、「わたしのためにいのちてるとうのか。よくよくあなたにっておく。にわとりまえに、あなたはわたしを三らないとうであろう」。

第一四章

1「あなたがたは、こころさわがせないがよい。かみしんじ、またわたしをしんじなさい。 2わたしのちちいえには、すまいがたくさんある。もしなかったならば、わたしはそうっておいたであろう。あなたがたのために、場所ばしょ用意よういしにくのだから。 3そして、って、場所ばしょ用意よういができたならば、またきて、あなたがたをわたしのところにむかえよう。わたしのおるところにあなたがたもおらせるためである。 4わたしがどこへくのか、そのみちはあなたがたにわかっている」。 5トマスはイエスにった、「しゅよ、どこへおいでになるのか、わたしたちにはわかりません。どうしてそのみちがわかるでしょう」。 6イエスはかれわれた、「わたしはみちであり、真理しんりであり、いのちである。だれでもわたしによらないでは、ちちのみもとにくことはできない。 7もしあなたがたがわたしをっていたならば、わたしのちちをもったであろう。しかし、いまちちっており、またすでにちちたのである」。 8ピリポはイエスにった、「しゅよ、わたしたちにちちしめしてください。そうしてくだされば、わたしたちは満足まんぞくします」。 9イエスはかれわれた、「ピリポよ、こんなにながくあなたがたと一緒いっしょにいるのに、わたしがわかっていないのか。わたしをものは、ちちたのである。どうして、わたしたちにちちしめしてほしいと、うのか。 10わたしがちちにおり、ちちがわたしにおられることをあなたはしんじないのか。わたしがあなたがたにはなしている言葉ことばは、自分じぶんからはなしているのではない。ちちがわたしのうちにおられて、みわざをなさっているのである。 11わたしがちちにおり、ちちがわたしにおられることをしんじなさい。もしそれがしんじられないならば、わざそのものによってしんじなさい。 12よくよくあなたがたにっておく。わたしをしんじるものは、またわたしのしているわざをするであろう。そればかりか、もっとおおきいわざをするであろう。わたしがちちのみもとにくからである。 13わたしのによってねがうことは、なんでもかなえてあげよう。ちちによって栄光えいこうをおけになるためである。 14何事なにごとでもわたしのによってねがうならば、わたしはそれをかなえてあげよう。 15もしあなたがたがわたしをあいするならば、わたしのいましめをまもるべきである。 16わたしはちちにおねがいしよう。そうすれば、ちちべつたすぬしおくって、いつまでもあなたがたとともにおらせてくださるであろう。 17それは真理しんり御霊みたまである。このはそれをようともせず、ろうともしないので、それをけることができない。あなたがたはそれをっている。なぜなら、それはあなたがたとともにおり、またあなたがたのうちにいるからである。

18わたしはあなたがたをてて孤児こじとはしない。あなたがたのところにかえってる。 19もうしばらくしたら、はもはやわたしをなくなるだろう。しかし、あなたがたはわたしをる。わたしがきるので、あなたがたもきるからである。 20そのには、わたしはわたしのちちにおり、あなたがたはわたしにおり、また、わたしがあなたがたにおることが、わかるであろう。 21わたしのいましめをこころにいだいてこれをまもものは、わたしをあいするものである。わたしをあいするものは、わたしのちちあいされるであろう。わたしもそのひとあいし、そのひとにわたし自身じしんをあらわすであろう」。 22イスカリオテでないほうのユダがイエスにった、「しゅよ、あなたご自身じしんをわたしたちにあらわそうとして、にはあらわそうとされないのはなぜですか」。 23イエスはかれこたえてわれた、「もしだれでもわたしをあいするならば、わたしの言葉ことばまもるであろう。そして、わたしのちちはそのひとあいし、また、わたしたちはそのひとのところにって、そのひと一緒いっしょむであろう。 24わたしをあいさないものはわたしの言葉ことばまもらない。あなたがたがいている言葉ことばは、わたしの言葉ことばではなく、わたしをつかわされたちち言葉ことばである。

25これらのことは、あなたがたと一緒いっしょにいたとき、すでにかたったことである。 26しかし、たすぬし、すなわち、ちちがわたしのによってつかわされる聖霊せいれいは、あなたがたにすべてのことをおしえ、またわたしがはなしておいたことを、ことごとくおもおこさせるであろう。 27わたしは平安へいあんをあなたがたにのこしてく。わたしの平安へいあんをあなたがたにあたえる。わたしがあたえるのは、あたえるようなものとはことなる。あなたがたはこころさわがせるな、またおじけるな。 28『わたしはってくが、またあなたがたのところにかえってる』と、わたしがったのを、あなたがたはいている。もしわたしをあいしているなら、わたしがちちのもとにくのをよろこんでくれるであろう。ちちがわたしよりおおきいかたであるからである。 29いまわたしは、そのことがおこらないさきにあなたがたにかたった。それは、ことおこったときにあなたがたがしんじるためである。 30わたしはもはや、あなたがたに、おおくをかたるまい。このきみるからである。だが、かれはわたしにたいして、なんのちからもない。 31しかし、わたしがちちあいしていることをるように、わたしはちちがおめいじになったとおりのことをおこなうのである。て。さあ、ここからかけてこう。

第一五章

1わたしはまことのぶどうの、わたしのちち農夫のうふである。 2わたしにつながっているえだむすばないものは、ちちがすべてこれをとりのぞき、むすぶものは、もっとゆたかにみのらせるために、手入ていれしてこれをきれいになさるのである。 3あなたがたは、わたしがかたった言葉ことばによってすでにきよくされている。 4わたしにつながっていなさい。そうすれば、わたしはあなたがたとつながっていよう。えだがぶどうのにつながっていなければ、自分じぶんだけではむすぶことができないように、あなたがたもわたしにつながっていなければむすぶことができない。 5わたしはぶどうの、あなたがたはそのえだである。もしひとがわたしにつながっており、またわたしがそのひととつながっておれば、そのひとゆたかにむすぶようになる。わたしからはなれては、あなたがたは何一なにひとつできないからである。 6ひとがわたしにつながっていないならば、えだのようにそとげすてられてれる。人々ひとびとはそれをかきあつめ、れて、いてしまうのである。 7あなたがたがわたしにつながっており、わたしの言葉ことばがあなたがたにとどまっているならば、なんでものぞむものをもとめるがよい。そうすれば、あたえられるであろう。 8あなたがたがゆたかにむすび、そしてわたしの弟子でしとなるならば、それによって、わたしのちち栄光えいこうをおけになるであろう。 9ちちがわたしをあいされたように、わたしもあなたがたをあいしたのである。わたしのあいのうちにいなさい。 10もしわたしのいましめをまもるならば、あなたがたはわたしのあいのうちにおるのである。それはわたしがわたしのちちのいましめをまもったので、そのあいのうちにおるのとおなじである。 11わたしがこれらのことをはなしたのは、わたしのよろこびがあなたがたのうちにも宿やどるため、また、あなたがたのよろこびがちあふれるためである。

12わたしのいましめは、これである。わたしがあなたがたをあいしたように、あなたがたもたがいあいいなさい。 13ひとがそのとものために自分じぶんいのちてること、これよりもおおきなあいはない。 14あなたがたにわたしがめいじることをおこなうならば、あなたがたはわたしのともである。 15わたしはもう、あなたがたをしもべとはばない。しもべ主人しゅじんのしていることをらないからである。わたしはあなたがたをともんだ。わたしのちちからいたことをみな、あなたがたにらせたからである。 16あなたがたがわたしをえらんだのではない。わたしがあなたがたをえらんだのである。そして、あなたがたをてた。それは、あなたがたがってをむすび、そのがいつまでものこるためであり、また、あなたがたがわたしのによってちちもとめるものはなんでも、ちちあたえてくださるためである。 17これらのことをめいじるのは、あなたがたがたがいあいうためである。

18もしこのがあなたがたをにくむならば、あなたがたよりもさきにわたしをにくんだことを、っておくがよい。 19もしあなたがたがこのからたものであったなら、このは、あなたがたを自分じぶんのものとしてあいしたであろう。しかし、あなたがたはこののものではない。かえって、わたしがあなたがたをこのからえらしたのである。だから、このはあなたがたをにくむのである。 20わたしがあなたがたに『しもべはその主人しゅじんにまさるものではない』とったことを、おぼえていなさい。もし人々ひとびとがわたしを迫害はくがいしたなら、あなたがたをも迫害はくがいするであろう。また、もしかれらがわたしの言葉ことばまもっていたなら、あなたがたの言葉ことばをもまもるであろう。 21かれらはわたしののゆえに、あなたがたにたいしてすべてそれらのことをするであろう。それは、わたしをつかわされたかたをかれらがらないからである。 22もしわたしがきてかれらにかたらなかったならば、かれらはつみおかさないですんだであろう。しかしいまとなっては、かれらには、そのつみについていのがれるみちがない。 23わたしをにくものは、わたしのちちをもにくむ。 24もし、ほかのだれもがしなかったようなわざを、わたしがかれらのあいだでしなかったならば、かれらはつみおかさないですんだであろう。しかし事実じじつかれらはわたしとわたしのちちとをて、にくんだのである。 25それは、『かれらは理由りゆうなしにわたしをにくんだ』といてあるかれらの律法りっぽう言葉ことば成就じょうじゅするためである。 26わたしがちちのみもとからあなたがたにつかわそうとしているたすぬし、すなわち、ちちのみもとから真理しんり御霊みたまくだとき、それはわたしについてあかしをするであろう。 27あなたがたも、はじめからわたしと一緒いっしょにいたのであるから、あかしをするのである。

第一六章

1わたしがこれらのことをかたったのは、あなたがたがつまずくことのないためである。 2人々ひとびとはあなたがたを会堂かいどうからすであろう。さらにあなたがたをころものがみな、それによって自分じぶんたちはかみつかえているのだとおもときるであろう。 3かれらがそのようなことをするのは、ちちをもわたしをもらないからである。 4わたしがあなたがたにこれらのことをったのは、かれらのときがきた場合ばあい、わたしがかれらについてったことを、おもおこさせるためである。これらのことをはじめからわなかったのは、わたしがあなたがたと一緒いっしょにいたからである。 5けれどもいまわたしは、わたしをつかわされたかたのところにこうとしている。しかし、あなたがたのうち、だれも『どこへくのか』とたずねるものはない。 6かえって、わたしがこれらのことをったために、あなたがたのこころうれいでたされている。 7しかし、わたしはほんとうのことをあなたがたにうが、わたしがってくことは、あなたがたのえきになるのだ。わたしがってかなければ、あなたがたのところにたすぬしはこないであろう。もしけば、それをあなたがたにつかわそう。 8それがきたら、つみとさばきとについて、ひとひらくであろう。 9つみについてとったのは、かれらがわたしをしんじないからである。 10についてとったのは、わたしがちちのみもとにき、あなたがたは、もはやわたしをなくなるからである。 11さばきについてとったのは、このきみがさばかれるからである。

12わたしには、あなたがたにうべきことがまだおおくあるが、あなたがたはいまはそれにえられない。 13けれども真理しんり御霊みたまときには、あなたがたをあらゆる真理しんりみちびいてくれるであろう。それは自分じぶんからかたるのではなく、そのくところをかたり、きたるべきことをあなたがたにらせるであろう。 14御霊みたまはわたしに栄光えいこうさせるであろう。わたしのものをけて、それをあなたがたにらせるからである。 15ちちがおちになっているものはみな、わたしのものである。御霊みたまはわたしのものをけて、それをあなたがたにらせるのだと、わたしがったのは、そのためである。

16しばらくすれば、あなたがたはもうわたしをなくなる。しかし、またしばらくすれば、わたしにえるであろう」。 17そこで、弟子でしたちのうちのあるものたがいった、「『しばらくすれば、わたしをなくなる。またしばらくすれば、わたしにえるであろう』とわれ、『わたしのちちのところにく』とわれたのは、いったい、どういうことなのであろう」。 18かれらはまたった、「『しばらくすれば』とわれるのは、どういうことか。わたしたちには、その言葉ことば意味いみがわからない」。 19イエスは、かれらがたずねたがっていることにがついて、かれらにわれた、「しばらくすればわたしをなくなる、またしばらくすればわたしにえるであろうと、わたしがったことで、たがいろんっているのか。 20よくよくあなたがたにっておく。あなたがたはかなしむが、このよろこぶであろう。あなたがたはうれえているが、そのうれいはよろこびにかわるであろう。 21おんな場合ばあいには、そのときがきたというので、不安ふあんかんじる。しかし、んでしまえば、もはやそのくるしみをおぼえてはいない。ひとりのひとがこのうまれた、というよろこびがあるためである。 22このように、あなたがたにもいま不安ふあんがある。しかし、わたしはふたたびあなたがたとうであろう。そして、あなたがたのこころよろこびにたされるであろう。そのよろこびをあなたがたからものはいない。 23そのには、あなたがたがわたしにうことは、なにもないであろう。よくよくあなたがたにっておく。あなたがたがちちもとめるものはなんでも、わたしのによってくださるであろう。 24いままでは、あなたがたはわたしのによってもとめたことはなかった。もとめなさい、そうすれば、あたえられるであろう。そして、あなたがたのよろこびがちあふれるであろう。

25わたしはこれらのことを比喩ひゆはなしたが、もはや比喩ひゆでははなさないで、あからさまに、ちちのことをあなたがたにはなしてきかせるときるであろう。 26そのには、あなたがたは、わたしのによってもとめるであろう。わたしは、あなたがたのためにちちねがってあげようとはうまい。 27ちち自身じしんがあなたがたをあいしておいでになるからである。それは、あなたがたがわたしをあいしたため、また、わたしがかみのみもとからきたことをしんじたためである。 28わたしはちちからてこのにきたが、またこのって、ちちのみもとにくのである」。

29弟子でしたちはった、「いまはあからさまにおはなしになって、すこしも比喩ひゆではおはなしになりません。 30あなたはすべてのことをごぞんじであり、だれもあなたにおたずねする必要ひつようのないことが、いまわかりました。このことによって、わたしたちはあなたがかみからこられたかたであるとしんじます」。 31イエスはこたえられた、「あなたがたはいましんじているのか。 32よ、あなたがたはらされて、それぞれ自分じぶんいえかえり、わたしをひとりだけのこときるであろう。いや、すでにきている。しかし、わたしはひとりでいるのではない。ちちがわたしと一緒いっしょにおられるのである。 33これらのことをあなたがたにはなしたのは、わたしにあって平安へいあんるためである。あなたがたは、このではなやみがある。しかし、勇気ゆうきしなさい。わたしはすでにっている」。

第一七章

1これらのことをかたえると、イエスはてんあげてわれた、「ちちよ、ときがきました。あなたのがあなたの栄光えいこうをあらわすように、栄光えいこうをあらわしてください。 2あなたは、たまわったすべてのものに、永遠えいえんいのちさづけさせるため、万民ばんみん支配しはいする権威けんいにおあたえになったのですから。 3永遠えいえんいのちとは、唯一ゆいいつの、まことのかみでいますあなたと、また、あなたがつかわされたイエス・キリストとをることであります。 4わたしは、わたしにさせるためにおさづけになったわざをなしげて、地上ちじょうであなたの栄光えいこうをあらわしました。 5ちちよ、つくられるまえに、わたしがみそばでっていた栄光えいこうで、いままえにわたしをかがやかせてください。

6わたしは、あなたがからえらんでわたしにたまわった人々ひとびとに、みをあらわしました。かれらはあなたのものでありましたが、わたしにくださいました。そして、かれらはあなたの言葉ことばまもりました。 7いまかれらは、わたしにたまわったものはすべて、あなたからたものであることをりました。 8なぜなら、わたしはあなたからいただいた言葉ことばかれらにあたえ、そしてかれらはそれをけ、わたしがあなたからたものであることをほんとうにり、また、あなたがわたしをつかわされたことをしんじるにいたったからです。 9わたしはかれらのためにおねがいします。わたしがおねがいするのは、こののためにではなく、あなたがわたしにたまわったものたちのためです。かれらはあなたのものなのです。 10わたしのものはみなあなたのもの、あなたのものはわたしのものです。そして、わたしはかれらによって栄光えいこうけました。 11わたしはもうこのにはいなくなりますが、かれらはこののこっており、わたしはみもとにまいります。せいなるちちよ、わたしにたまわった御名みなによってかれらをまもってください。それはわたしたちが一つであるように、かれらも一つになるためであります。 12わたしがかれらと一緒いっしょにいたあいだは、あなたからいただいた御名みなによってかれらをまもり、また保護ほごしてまいりました。かれらのうち、だれもほろびず、ただほろびのだけがほろびました。それは聖書せいしょ成就じょうじゅするためでした。 13いまわたしはみもとにまいります。そしてにいるあいだにこれらのことをかたるのは、わたしのよろこびがかれらのうちにちあふれるためであります。 14わたしはかれらに御言みことばあたえましたが、かれらをにくみました。わたしがのものでないように、かれらものものではないからです。 15わたしがおねがいするのは、かれらをからることではなく、かれらをしきものからまもってくださることであります。 16わたしがのものでないように、かれらものものではありません。 17真理しんりによってかれらをせいべつしてください。あなたの御言みことば真理しんりであります。 18あなたがわたしをにつかわされたように、わたしもかれらをにつかわしました。 19またかれらが真理しんりによってせいべつされるように、かれらのためわたし自身じしんせいべついたします。

20わたしはかれらのためばかりではなく、かれらの言葉ことばいてわたしをしんじている人々ひとびとのためにも、おねがいいたします。 21ちちよ、それは、あなたがわたしのうちにおられ、わたしがあなたのうちにいるように、みんなのものが一つとなるためであります。すなわち、かれらをもわたしたちのうちにおらせるためであり、それによって、あなたがわたしをおつかわしになったことを、しんじるようになるためであります。 22わたしは、あなたからいただいた栄光えいこうかれらにもあたえました。それは、わたしたちが一つであるように、かれらも一つになるためであります。 23わたしがかれらにおり、あなたがわたしにいますのは、かれらが完全かんぜんに一つとなるためであり、また、あなたがわたしをつかわし、わたしをあいされたように、かれらをおあいしになったことを、るためであります。 24ちちよ、あなたがわたしにたまわった人々ひとびとが、わたしのいるところ一緒いっしょにいるようにしてください。天地てんちつくられるまえからわたしをあいしてくださって、わたしにたまわった栄光えいこうを、かれらにさせてください。 25ただしいちちよ、このはあなたをっていません。しかし、わたしはあなたをり、またかれらも、あなたがわたしをおつかわしになったことをっています。 26そしてわたしはかれらに御名みならせました。またこれからもらせましょう。それは、あなたがわたしをあいしてくださったそのあいかれらのうちにあり、またわたしもかれらのうちにおるためであります」。

第一八章

1イエスはこれらのことをかたえて、弟子でしたちと一緒いっしょにケデロンのたにこうへかれた。そこにはそのがあって、イエスは弟子でしたちと一緒いっしょにそのなかにはいられた。 2イエスを裏切うらぎったユダは、そのところをよくっていた。イエスと弟子でしたちとがたびたびそこであつまったことがあるからである。 3さてユダは、一隊いったい兵卒へいそつ祭司長さいしちょうやパリサイびとたちのおくった下役したやくどもをれ、たいまつやあかりや武器ぶきって、そこへやってきた。 4しかしイエスは、自分じぶんおころうとすることをことごとく承知しょうちしておられ、すすかれらにわれた、「だれをさがしているのか」。 5かれらは「ナザレのイエスを」とこたえた。イエスはかれらにわれた、「わたしが、それである」。イエスを裏切うらぎったユダも、かれらと一緒いっしょっていた。 6イエスがかれらに「わたしが、それである」とわれたとき、かれらはうしろにきさがってたおれた。 7そこでまたかれらに、「だれをさがしているのか」とおたずねになると、かれらは「ナザレのイエスを」とった。 8イエスはこたえられた、「わたしがそれであると、ったではないか。わたしをさがしているのなら、このひとたちをらせてもらいたい」。 9それは、「あなたがあたえてくださったひとたちのなかのひとりも、わたしはうしなわなかった」とイエスのわれた言葉ことばが、成就じょうじゅするためである。 10シモン・ペテロはけんっていたが、それをいて、大祭司だいさいししもべりかかり、そのみぎみみおとした。そのしもべはマルコスであった。 11すると、イエスはペテロにわれた、「けんをさやにおさめなさい。ちちがわたしにくださったさかずきは、むべきではないか」。

12それから一隊いったい兵卒へいそつやその千卒長せんそつちょうやユダヤじん下役したやくどもが、イエスをとらえ、しばりあげて、 13まずアンナスのところにれてった。かれはそのとし大祭司だいさいしカヤパのしゅうとであった。 14カヤパはまえに、ひとりのひとたみのためにぬのはよいことだと、ユダヤじん助言じょげんしたものであった。

15シモン・ペテロともうひとりの弟子でしとが、イエスについてった。この弟子でし大祭司だいさいしいであったので、イエスと一緒いっしょ大祭司だいさいし中庭なかにわにはいった。 16しかし、ペテロはそと戸口とぐちっていた。すると大祭司だいさいしいであるその弟子でしが、そとって門番もんばんおんなはなし、ペテロをうちれてやった。 17すると、この門番もんばんおんながペテロにった、「あなたも、あのひと弟子でしのひとりではありませんか」。ペテロは「いや、そうではない」とこたえた。 18しもべ下役したやくどもは、さむときであったので、炭火すみびをおこし、そこにってあたっていた。ペテロもまたかれらにじり、ってあたっていた。

19大祭司だいさいしはイエスに、弟子でしたちのことやイエスのおしえのことをたずねた。 20イエスはこたえられた、「わたしはこのたいして公然こうぜんかたってきた。すべてのユダヤじんあつまる会堂かいどうみやで、いつもおしえていた。何事なにごとかくれてかたったことはない。 21なぜ、わたしにたずねるのか。わたしがかれらにかたったことは、それをいた人々ひとびとたずねるがよい。わたしのったことは、かれらがっているのだから」。 22イエスがこうわれると、そこにっていた下役したやくのひとりが、「大祭司だいさいしにむかって、そのようなこたえをするのか」とって、平手ひらてでイエスをった。 23イエスはこたえられた、「もしわたしがなにわるいことをったのなら、そのわる理由りゆういなさい。しかし、ただしいことをったのなら、なぜわたしをつのか」。 24それからアンナスは、イエスをしばったまま大祭司だいさいしカヤパのところへおくった。 25シモン・ペテロは、ってにあたっていた。すると人々ひとびとかれった、「あなたも、あのひと弟子でしのひとりではないか」。かれはそれをうちして、「いや、そうではない」とった。 26大祭司だいさいししもべのひとりで、ペテロにみみりおとされたひと親族しんぞくものった、「あなたがそのであのひと一緒いっしょにいるのを、わたしはたではないか」。 27ペテロはまたそれをした。するとすぐに、にわとりいた。

28それから人々ひとびとは、イエスをカヤパのところから官邸かんていにつれてった。とき夜明よあけであった。かれらは、けがれをけないで過越すぎこし食事しょくじができるように、官邸かんていにはいらなかった。 29そこで、ピラトはかれらのところにてきてった、「あなたがたは、このひとたいしてどんなうったえをおこすのか」。 30かれらはピラトにこたえてった、「もしこのひと悪事あくじをはたらかなかったなら、あなたにわたすようなことはしなかったでしょう」。 31そこでピラトはかれらにった、「あなたがたはかれって、自分じぶんたちの律法りっぽうでさばくがよい」。ユダヤじんらはかれった、「わたしたちには、ひと死刑しけいにする権限けんげんがありません」。 32これは、ご自身じしんがどんなにかたをしようとしているかをしめすためにわれたイエスの言葉ことばが、成就じょうじゅするためである。

33さて、ピラトはまた官邸かんていにはいり、イエスをしてった、「あなたは、ユダヤじんおうであるか」。 34イエスはこたえられた、「あなたがそううのは、自分じぶんかんがえからか。それともほかの人々ひとびとが、わたしのことをあなたにそうったのか」。 35ピラトはこたえた、「わたしはユダヤじんなのか。あなたの同族どうぞく祭司長さいしちょうたちが、あなたをわたしにわたしたのだ。あなたは、いったい、なにをしたのか」。 36イエスはこたえられた、「わたしのくにはこののものではない。もしわたしのくにがこののものであれば、わたしにしたがっているものたちは、わたしをユダヤじんわたさないようにたたかったであろう。しかし事実じじつ、わたしのくにはこののものではない」。 37そこでピラトはイエスにった、「それでは、あなたはおうなのだな」。イエスはこたえられた、「あなたのうとおり、わたしはおうである。わたしは真理しんりについてあかしをするためにうまれ、また、そのためにこのにきたのである。だれでも真理しんりにつくものは、わたしのこえみみかたむける」。 38ピラトはイエスにった、「真理しんりとはなにか」。こうって、かれはまたユダヤじんところき、かれらにった、「わたしには、このひとになんのつみいだせない。 39過越すぎこしときには、わたしがあなたがたのために、ひとりのひとゆるしてやるのが、あなたがたのしきたりになっている。ついては、あなたがたは、このユダヤじんおうゆるしてもらいたいのか」。 40するとかれらは、またさけんで「そのひとではなく、バラバを」とった。このバラバは強盗ごうとうであった。

第一九章

1そこでピラトは、イエスをとらえ、むちでたせた。 2兵卒へいそつたちは、いばらでかんむりをあんで、イエスのあたまにかぶらせ、むらさき上着うわぎせ、 3それから、そのまえすすて、「ユダヤじんおう、ばんざい」とった。そして平手ひらてでイエスをちつづけた。 4するとピラトは、またってユダヤじんたちにった、「よ、わたしはこのひとをあなたがたのまえすが、それはこのひとになんのつみいだせないことを、あなたがたにってもらうためである」。 5イエスはいばらのかんむりをかぶり、むらさき上着うわぎたままでそとられると、ピラトはかれらにった、「よ、このひとだ」。 6祭司長さいしちょうたちや下役したやくどもはイエスをると、さけんで「十字架じゅうじかにつけよ、十字架じゅうじかにつけよ」とった。ピラトはかれらにった、「あなたがたが、このひとって十字架じゅうじかにつけるがよい。わたしは、かれにはなんのつみいだせない」。 7ユダヤじんたちはかれこたえた、「わたしたちには律法りっぽうがあります。その律法りっぽうによれば、かれ自分じぶんかみとしたのだから、死罪しざいあたものです」。 8ピラトがこの言葉ことばいたとき、ますますおそれ、 9もう一官邸かんていにはいってイエスにった、「あなたは、もともと、どこからきたのか」。しかし、イエスはなんのこたえもなさらなかった。 10そこでピラトはった、「なにこたえないのか。わたしには、あなたをゆる権威けんいがあり、また十字架じゅうじかにつける権威けんいがあることを、らないのか」。 11イエスはこたえられた、「あなたは、うえからたまわるのでなければ、わたしにたいしてなんの権威けんいもない。だから、わたしをあなたにわたしたものつみは、もっとおおきい」。 12これをいて、ピラトはイエスをゆるそうとつとめた。しかしユダヤじんたちがさけんでった、「もしこのひとゆるしたなら、あなたはカイザルの味方みかたではありません。自分じぶんおうとするものはすべて、カイザルにそむくものです」。 13ピラトはこれらの言葉ことばいて、イエスをそとしてき、敷石しきいし(ヘブルではガバタ)という場所ばしょ裁判さいばんせきについた。 14その過越すぎこし準備じゅんびであって、ときひるの十二ころであった。ピラトはユダヤじんらにった、「よ、これがあなたがたのおうだ」。 15するとかれらはさけんだ、「ころせ、ころせ、かれ十字架じゅうじかにつけよ」。ピラトはかれらにった、「あなたがたのおうを、わたしが十字架じゅうじかにつけるのか」。祭司長さいしちょうたちはこたえた、「わたしたちには、カイザル以外いがいおうはありません」。 16そこでピラトは、十字架じゅうじかにつけさせるために、イエスをかれらにわたした。

かれらはイエスをった。 17イエスはみずから十字架じゅうじか背負せおって、されこうべ(ヘブルではゴルゴダ)という場所ばしょかれた。 18かれらはそこで、イエスを十字架じゅうじかにつけた。イエスをまんなかにして、ほかのふたりのもの両側りょうがわに、イエスと一緒いっしょ十字架じゅうじかにつけた。 19ピラトは罪状ざいじょうきをいて、十字架じゅうじかうえにかけさせた。それには「ユダヤじんおう、ナザレのイエス」といてあった。 20イエスが十字架じゅうじかにつけられた場所ばしょみやこちかかったので、おおくのユダヤじんがこの罪状ざいじょうきをんだ。それはヘブル、ローマ、ギリシヤの国語こくごいてあった。 21ユダヤじん祭司長さいしちょうたちがピラトにった、「『ユダヤじんおう』とかずに、『このひとはユダヤじんおうしょうしていた』といてほしい」。 22ピラトはこたえた、「わたしがいたことは、いたままにしておけ」。

23さて、兵卒へいそつたちはイエスを十字架じゅうじかにつけてから、その上着うわぎをとって四つにけ、おのおの、その一つをった。また下着したぎってみたが、それにはがなく、うえほうから全部ぜんぶ一つにったものであった。 24そこでかれらはたがいった、「それをかないで、だれのものになるか、くじをこう」。これは、「かれらはたがいにわたしの上着うわぎい、わたしのころもをくじ引にした」という聖書せいしょ成就じょうじゅするためで、兵卒へいそつたちはそのようにしたのである。 25さて、イエスの十字架じゅうじかのそばには、イエスのははと、はは姉妹しまいと、クロパのつまマリヤと、マグダラのマリヤとが、たたずんでいた。 26イエスは、そのはは愛弟子あいでしとがそばにっているのをごらんになって、ははにいわれた、「婦人ふじんよ、ごらんなさい。これはあなたのです」。 27それからこの弟子でしわれた、「ごらんなさい。これはあなたのははです」。そのとき以来いらい、この弟子でしはイエスのはは自分じぶんいえきとった。

28そののち、イエスはいま万事ばんじおわったことをって、「わたしは、かわく」とわれた。それは、聖書せいしょまっとうされるためであった。 29そこに、いぶどうしゅがいっぱいれてあるうつわがおいてあったので、人々ひとびとは、このぶどうしゅふくませた海綿かいめんをヒソプのくきむすびつけて、イエスのくちもとにさしした。 30すると、イエスはそのぶどうしゅけて、「すべてがおわった」とわれ、くびをたれていきをひきとられた。

31さてユダヤじんたちは、その準備じゅんびであったので、安息日あんそくにち死体したい十字架じゅうじかうえのこしておくまいと、(とくにその安息日あんそくにち大事だいじであったから)、ピラトにねがって、あしったうえで、死体したいりおろすことにした。 32そこで兵卒へいそつらがきて、イエスと一緒いっしょ十字架じゅうじかにつけられたはじめのものと、もうひとりのものとのあしった。 33しかし、かれらがイエスのところにきたとき、イエスはもうんでおられたのをて、そのあしることはしなかった。 34しかし、ひとりの兵卒へいそつがやりでそのわきをきさすと、すぐみずとがながた。 35それをものがあかしをした。そして、そのあかしは真実しんじつである。そのひとは、自分じぶん真実しんじつかたっていることをっている。それは、あなたがたもしんずるようになるためである。 36これらのことがおこったのは、「そのほねはくだかれないであろう」との聖書せいしょ言葉ことばが、成就じょうじゅするためである。 37また聖書せいしょのほかのところに、「かれらは自分じぶんとおしたものるであろう」とある。

38そののち、ユダヤじんをはばかって、ひそかにイエスの弟子でしとなったアリマタヤのヨセフというひとが、イエスの死体したいりおろしたいと、ピラトにねがた。ピラトはそれをゆるしたので、かれはイエスの死体したいりおろしにった。 39また、まえに、よる、イエスのみもとにったニコデモも、没薬もつやく沈香ぢんこうとをまぜたものを百きんほどってきた。 40かれらは、イエスの死体したいりおろし、ユダヤじん埋葬まいそう習慣しゅうかんにしたがって、香料こうりょうれて亜麻布あまぬのいた。 41イエスが十字架じゅうじかにかけられたところには、一つのそのがあり、そこにはまだだれもほうむられたことのないあたらしいはかがあった。 42そのはユダヤじん準備じゅんびであったので、そのはかちかくにあったため、イエスをそこにおさめた。

第二〇章

1さて、一しゅうはじめのに、あさはやくまだくらいうちに、マグダラのマリヤがはかくと、はかからいしがとりのけてあるのをた。 2そこではしって、シモン・ペテロとイエスがあいしておられた、もうひとりの弟子でしのところへって、かれらにった、「だれかが、しゅはかからりました。どこへいたのか、わかりません」。 3そこでペテロともうひとりの弟子でしかけて、はかへむかってった。 4ふたりは一緒いっしょはししたが、そのもうひとりの弟子でしほうが、ペテロよりもはやはしってさきはかき、 5そしてをかがめてみると、亜麻布あまぬのがそこにいてあるのをたが、なかへははいらなかった。 6シモン・ペテロもつづいてきて、はかなかにはいった。かれ亜麻布あまぬのがそこにいてあるのをたが、 7イエスのあたまいてあったぬの亜麻布あまぬののそばにはなくて、はなれたべつ場所ばしょにくるめてあった。 8すると、さきはかいたもうひとりの弟子でしもはいってきて、これをしんじた。 9しかし、かれらは死人しにんのうちからイエスがよみがえるべきことをしるしたせいを、まださとっていなかった。 10それから、ふたりの弟子でしたちは自分じぶんいえかえってった。

11しかし、マリヤははかそとっていていた。そしてきながら、をかがめてはかなかをのぞくと、 12しろころもたふたりの御使みつかいが、イエスの死体したいのおかれていた場所ばしょに、ひとりはあたまほうに、ひとりはあしほうに、すわっているのをた。 13すると、かれらはマリヤに、「おんなよ、なぜいているのか」とった。マリヤはかれらにった、「だれかが、わたしのしゅりました。そして、どこにいたのか、わからないのです」。 14そうって、うしろをふりくと、そこにイエスがっておられるのをた。しかし、それがイエスであることにがつかなかった。 15イエスはおんなわれた、「おんなよ、なぜいているのか。だれをさがしているのか」。マリヤは、そのひとその番人ばんにんだとおもってった、「もしあなたが、あのかたをうつしたのでしたら、どこへいたのか、どうぞ、おっしゃってください。わたしがそのかたをります」。 16イエスは彼女かのじょに「マリヤよ」とわれた。マリヤはふりかえって、イエスにむかってヘブルで「ラボニ」とった。それは、先生せんせいという意味いみである。 17イエスは彼女かのじょわれた、「わたしにさわってはいけない。わたしは、まだちちのみもとにのぼっていないのだから。ただ、わたしの兄弟きょうだいたちのところって、『わたしは、わたしのちちまたあなたがたのちちであって、わたしのかみまたあなたがたのかみであられるかたのみもとへのぼってく』と、かれらにつたえなさい」。 18マグダラのマリヤは弟子でしたちのところにって、自分じぶんしゅったこと、またイエスがこれこれのことを自分じぶんおおせになったことを、報告ほうこくした。

19その、すなわち、一しゅうはじめの夕方ゆうがた弟子でしたちはユダヤじんをおそれて、自分じぶんたちのおるところをみなしめていると、イエスがはいってきて、かれらのなかち、「やすかれ」とわれた。 20そうって、とわきとを、かれらにおせになった。弟子でしたちはしゅよろこんだ。 21イエスはまたかれらにわれた、「やすかれ。ちちがわたしをおつかわしになったように、わたしもまたあなたがたをつかわす」。 22そうって、かれらにいききかけておおせになった、「聖霊せいれいけよ。 23あなたがたがゆるすつみは、だれのつみでもゆるされ、あなたがたがゆるさずにおくつみは、そのままのこるであろう」。

24十二弟子でしのひとりで、デドモとばれているトマスは、イエスがこられたとき、かれらと一緒いっしょにいなかった。 25ほかの弟子でしたちが、かれに「わたしたちはしゅにおにかかった」とうと、トマスはかれらにった、「わたしは、そのくぎあとを、わたしのゆびをそのくぎあとにさしれ、また、わたしのをそのわきにさしれてみなければ、けっしてしんじない」。

26ののち、イエスの弟子でしたちはまたいえうちにおり、トマスも一緒いっしょにいた。はみなざされていたが、イエスがはいってこられ、なかって「やすかれ」とわれた。 27それからトマスにわれた、「あなたのゆびをここにつけて、わたしのなさい。をのばしてわたしのわきにさしれてみなさい。しんじないものにならないで、しんじるものになりなさい」。 28トマスはイエスにこたえてった、「わがしゅよ、わがかみよ」。 29イエスはかれわれた、「あなたはわたしをたのでしんじたのか。ないでしんずるものは、さいわいである」。

30イエスは、このしょかれていないしるしを、ほかにもおおく、弟子でしたちのまえおこなわれた。 31しかし、これらのことをいたのは、あなたがたがイエスはかみキリストであるとしんじるためであり、また、そうしんじて、イエスのによっていのちるためである。

第二一章

1そののち、イエスはテベリヤのうみべで、ご自身じしんをまた弟子でしたちにあらわされた。そのあらわされた次第しだいは、こうである。 2シモン・ペテロが、デドモとばれているトマス、ガリラヤのカナのナタナエル、ゼベダイのらや、ほかのふたりの弟子でしたちと一緒いっしょにいたときのことである。 3シモン・ペテロはかれらに「わたしはりょうくのだ」とうと、かれらは「わたしたちも一緒いっしょこう」とった。かれらはってふねった。しかし、そのはなんの獲物えものもなかった。 4けたころ、イエスがきしっておられた。しかし弟子でしたちはそれがイエスだとはらなかった。 5イエスはかれらにわれた、「たちよ、なにべるものがあるか」。かれらは「ありません」とこたえた。 6すると、イエスはかれらにわれた、「ふねみぎほうあみをおろしてなさい。そうすれば、なにかとれるだろう」。かれらはあみをおろすと、うおおおくとれたので、それをげることができなかった。 7イエスのあいしておられた弟子でしが、ペテロに「あれはしゅだ」とった。シモン・ペテロはしゅであるといて、はだかになっていたため、上着うわぎをまとってうみにとびこんだ。 8しかし、ほかの弟子でしたちはふねったまま、うおのはいっているあみきながらかえってった。りくからはあまりとおくない五十けんほどのところにいたからである。

9かれらがりくのぼってると、炭火すみびがおこしてあって、そのうえうおがのせてあり、またそこにパンがあった。 10イエスはかれらにわれた、「いまとったうおすこってきなさい」。 11シモン・ペテロがって、あみりくげると、百五十三びきのおおきなうおでいっぱいになっていた。そんなにおおかったが、あみはさけないでいた。 12イエスはかれらにわれた、「さあ、あさ食事しょくじをしなさい」。弟子でしたちは、しゅであることがわかっていたので、だれも「あなたはどなたですか」とすすんでたずねるものがなかった。 13イエスはそこにきて、パンをとりかれらにあたえ、またうおおなじようにされた。 14イエスが死人しにんなかからよみがえったのち、弟子でしたちにあらわれたのは、これですでに三度目どめである。

15かれらが食事しょくじをすませると、イエスはシモン・ペテロにわれた、「ヨハネのシモンよ、あなたはこのひとたちがあいする以上いじょうに、わたしをあいするか」。ペテロはった、「しゅよ、そうです。わたしがあなたをあいすることは、あなたがごぞんじです」。イエスはかれに「わたしの小羊こひつじやしないなさい」とわれた。 16またもう一度いちどかれわれた、「ヨハネのシモンよ、わたしをあいするか」。かれはイエスにった、「しゅよ、そうです。わたしがあなたをあいすることは、あなたがごぞんじです」。イエスはかれわれた、「わたしのひつじいなさい」。 17イエスは三度目どめわれた、「ヨハネのシモンよ、わたしをあいするか」。ペテロは「わたしをあいするか」とイエスが三われたので、こころをいためてイエスにった、「しゅよ、あなたはすべてをごぞんじです。わたしがあなたをあいしていることは、おわかりになっています」。イエスはかれわれた、「わたしのひつじやしないなさい。 18よくよくあなたにっておく。あなたがわかかったときには、自分じぶんおびをしめて、おもいのままにあるきまわっていた。しかしとしをとってからは、自分じぶんをのばすことになろう。そして、ほかのひとがあなたにおびむすびつけ、きたくないところれてくであろう」。 19これは、ペテロがどんなかたで、かみ栄光えいこうをあらわすかをしめすために、おはなしになったのである。こうはなしてから、「わたしにしたがってきなさい」とわれた。 20ペテロはふりかえると、イエスのあいしておられた弟子でしがついてるのをた。この弟子でしは、あの夕食ゆうしょくのときイエスのむねちかくにりかかって、「しゅよ、あなたを裏切うらぎものは、だれなのですか」とたずねたひとである。 21ペテロはこの弟子でして、イエスにった、「しゅよ、このひとはどうなのですか」。 22イエスはかれわれた、「たとい、わたしのときまでかれのこっていることを、わたしがのぞんだとしても、あなたにはなんのかかわりがあるか。あなたは、わたしにしたがってきなさい」。 23こういうわけで、この弟子でしぬことがないといううわさが、兄弟きょうだいたちのあいだにひろまった。しかし、イエスはかれぬことはないとわれたのではなく、ただ「たとい、わたしのときまでかれのこっていることを、わたしがのぞんだとしても、あなたにはなんのかかわりがあるか」とわれただけである。

24これらのことについてあかしをし、またこれらのこといたのは、この弟子でしである。そしてかれのあかしが真実しんじつであることを、わたしたちはっている。 25イエスのなさったことは、このほかにまだ数多かずおおくある。もしいちいちきつけるならば、世界せかいもそのかれた文書ぶんしょおさめきれないであろうとおもう。