ルカによる福音書

第一章

1わたしたちのあいだ成就じょうじゅされた出来事できごとを、最初さいしょからしたしく人々ひとびとであって、 2御言みことばつかえた人々ひとびとつたえたとおり物語ものがたりつらねようと、おおくのひとけましたが、 3テオピロ閣下かっかよ、わたしもすべてのことはじめからくわしく調しらべていますので、ここに、それを順序じゅんじょただしくきつづって、閣下かっかけんじることにしました。 4すでにおきになっていること確実かくじつであることを、これによって十分じゅうぶんっていただきたいためであります。

5ユダヤのおうヘロデのに、アビヤのくみ祭司さいしをザカリヤというものがいた。そのつまはアロンいえむすめのひとりで、をエリサベツといった。 6ふたりともかみのみまえにただしいひとであって、しゅいましめとさだめとを、みな落度おちどなくおこなっていた。 7ところが、エリサベツは不妊ふにんおんなであったため、かれらにはがなく、そしてふたりともすでに年老としおいていた。

8さてザカリヤは、そのくみ当番とうばんになりかみのみまえに祭司さいしつとめをしていたとき、 9祭司さいししょく慣例かんれいしたがってくじをいたところ、しゅ聖所せいじょにはいってこうをたくことになった。 10こうをたいているあいだおおくの民衆みんしゅうはみなそといのっていた。 11するとしゅ御使みつかいあらわれて、こうだんみぎった。 12ザカリヤはこれをて、おじまどい、恐怖きょうふねんおそわれた。 13そこで御使みつかいかれった、「おそれるな、ザカリヤよ、あなたのいのりきいれられたのだ。あなたのつまエリサベツはおとこむであろう。そのをヨハネとづけなさい。 14かれはあなたによろこびとたのしみとをもたらし、おおくの人々ひとびともその誕生たんじょうよろこぶであろう。 15かれしゅのみまえにおおいなるものとなり、ぶどうしゅつよさけをいっさいまず、はは胎内たいないにいるときからすでに聖霊せいれいたされており、 16そして、イスラエルのおおくのらを、しゅなるかれらのかみかえらせるであろう。 17かれはエリヤのれいちからとをもって、みまえに先立さきだってき、ちちこころけさせ、さからうもの義人ぎじんおもいをたせて、ととのえられたたみしゅそなえるであろう」。 18するとザカリヤは御使みつかいった、「どうしてそんなことが、わたしにわかるでしょうか。わたしは老人ろうじんですし、つまとしをとっています」。 19御使みつかいこたえてった、「わたしはかみのみまえにつガブリエルであって、このよろこばしいらせをあなたにかたつたえるために、つかわされたものである。 20ときれば成就じょうじゅするわたしの言葉ことばしんじなかったから、あなたはおしになり、このことおこまで、ものがえなくなる」。 21民衆みんしゅうはザカリヤをっていたので、かれ聖所せいじょうちひまどっているのを不思議ふしぎおもっていた。 22ついにかれてきたが、ものえなかったので、人々ひとびとかれ聖所せいじょうちでまぼろしをたのだとさとった。かれかれらに合図あいずをするだけで、きつづき、おしのままでいた。 23それからつとめ期日きじつおわったので、いえかえった。

24そののち、つまエリサベツはみごもり、五かげつのあいだきこもっていたが、 25しゅは、いまわたしをこころにかけてくださって、人々ひとびとあいだからわたしのはじのぞくために、こうしてくださいました」とった。

26六かげつに、御使みつかいガブリエルが、かみからつかわされて、ナザレというガリラヤのまちいち処女しょじょのもとにきた。 27この処女しょじょはダビデいえであるヨセフというひとのいいなづけになっていて、をマリヤといった。 28御使みつかいがマリヤのところにきてった、「めぐまれたおんなよ、おめでとう、しゅがあなたとともにおられます」。 29この言葉ことばにマリヤはひどく胸騒むなさわぎがして、このあいさつはなんのことであろうかと、おもいめぐらしていた。 30すると御使みつかいった、「おそれるな、マリヤよ、あなたはかみからめぐみをいただいているのです。 31よ、あなたはみごもっておとこむでしょう。そのをイエスとづけなさい。 32かれおおいなるものとなり、いとたかものと、となえられるでしょう。そして、しゅなるかみかれちちダビデの王座おうざをおあたえになり、 33かれはとこしえにヤコブのいえ支配しはいし、その支配しはいかぎりなくつづくでしょう」。 34そこでマリヤは御使みつかいった、「どうして、そんなことがありましょうか。わたしにはまだおっとがありませんのに」。 35御使みつかいこたえてった、「聖霊せいれいがあなたにのぞみ、いとたかものちからがあなたをおおうでしょう。それゆえに、うませいなるものであり、かみと、となえられるでしょう。 36あなたの親族しんぞくエリサベツも老年ろうねんながら宿やどしています。不妊ふにんおんなといわれていたのに、はや六かげつになっています。 37かみには、なんでもできないことはありません」。 38そこでマリヤがった、「わたしはしゅのはしためです。お言葉ことばどおりこのりますように」。そして御使みつかい彼女かのじょからはなれてった。

39そのころ、マリヤはって、大急おおいそぎで山里やまざとへむかいユダのまちき、 40ザカリヤのいえにはいってエリサベツにあいさつした。 41エリサベツがマリヤのあいさつをいたとき、その胎内たいないでおどった。エリサベツは聖霊せいれいたされ、 42こえたかさけんでった、「あなたはおんななか祝福しゅくふくされたかた、あなたのたい祝福しゅくふくされています。 43しゅ母上ははうえがわたしのところにきてくださるとは、なんという光栄こうえいでしょう。 44ごらんなさい。あなたのあいさつのこえがわたしのみみにはいったとき、子供こども胎内たいないよろこびおどりました。 45しゅのおかたりになったことがかなら成就じょうじゅするとしんじたおんなは、なんとさいわいなことでしょう」。 46するとマリヤはった、
「わたしのたましいしゅをあがめ、
47わたしのれい救主すくいぬしなるかみをたたえます。
48このいやしいおんなをさえ、こころにかけてくださいました。
いまからのち代々よよ人々ひとびとは、わたしをさいわいなおんなうでしょう、
49ちからあるかたが、わたしにおおきなことをしてくださったからです。
そのみはきよく、
50そのあわれみは、代々よよかぎりなく
しゅをかしこみおそれるものおよびます。
51しゅはみうでをもってちからをふるい、
こころおもいのおごりたかぶるものらし、
52権力けんりょくあるもの王座おうざからきおろし、
いやしいものげ、
53えているものいものでかせ、
んでいるもの空腹くうふくのままかえらせなさいます。
54しゅは、あわれみをおわすれにならず、
そのしもべイスラエルをたすけてくださいました、
55わたしたちの父祖ふそアブラハムとその子孫しそんとを
とこしえにあわれむと約束やくそくなさったとおりに」。
56マリヤは、エリサベツのところに三かげつほど滞在たいざいしてから、いえかえった。

57さてエリサベツはつきちて、おとこんだ。 58近所きんじょ人々ひとびと親族しんぞくは、しゅおおきなあわれみを彼女かのじょにおかけになったことをいて、ともどもによろこんだ。 59日目かめになったので、おさ割礼かつれいをするために人々ひとびとがきて、ちちにちなんでザカリヤというにしようとした。 60ところが、母親ははおやは、「いいえ、ヨハネというにしなくてはいけません」とった。 61人々ひとびとは、「あなたの親族しんぞくなかには、そういうのついたものは、ひとりもいません」と彼女かのじょった。 62そして父親ちちおやに、どんなにしたいのですかと、合図あいずたずねた。 63ザカリヤはかきいたってこさせて、それに「そのはヨハネ」といたので、みんなのもの不思議ふしぎおもった。 64すると、ちどころにザカリヤのくちひらけてしたがゆるみ、かたしてかみをほめたたえた。 65近所きんじょ人々ひとびとはみなおそれをいだき、またユダヤの山里やまざといたるところに、これらのことがことごとくかたつたえられたので、 66ものたちはみなそれをこころめて、「このは、いったい、どんなものになるだろう」とかたった。しゅのみかれともにあった。
67ちちザカリヤは聖霊せいれいたされ、預言よげんしてった、
68しゅなるイスラエルのかみは、ほむべきかな。
かみはそのたみかえりみてこれをあがない、
69わたしたちのためにすくいつの
しもべダビデのいえにおてになった。
70ふるくから、せいなる預言者よげんしゃたちのくちによっておかたりになったように、
71わたしたちをてきから、またすべてわたしたちをにくものから、すくすためである。
72こうして、かみはわたしたちの父祖ふそたちにあわれみをかけ、そのせいなる契約けいやく
73すなわち、父祖ふそアブラハムにおてになったちかいをおぼえて、
74わたしたちをてきからすくし、
75きているかぎり、きよくただしく、
みまえにおそれなくつかえさせてくださるのである。
76おさよ、あなたは、いとたかもの預言者よげんしゃばれるであろう。
しゅのみまえに先立さきだってき、そのみちそなえ、
77つみのゆるしによるすくい
そのたみらせるのであるから。
78これはわたしたちのかみのあわれみふかいみこころによる。
また、そのあわれみによって、ひかりうえからわたしたちにのぞみ、
79暗黒あんこくかげとにものてらし、
わたしたちのあし平和へいわみちみちびくであろう」。
80おさ成長せいちょうし、そのれいつよくなり、そしてイスラエルにあらわれるまで、荒野あらのにいた。

第二章

1そのころ、ぜん世界せかい人口じんこう調査ちょうさをせよとの勅令ちょくれいが、皇帝こうていアウグストからた。 2これは、クレニオがシリヤの総督そうとくであったときおこなわれた最初さいしょ人口じんこう調査ちょうさであった。 3人々ひとびとはみな登録とうろくをするために、それぞれ自分じぶんまちかえってった。 4ヨセフもダビデの家系かけいであり、またその血統けっとうであったので、ガリラヤのまちナザレをて、ユダヤのベツレヘムというダビデのまちのぼってった。 5それは、すでに身重みおもになっていたいいなづけのつまマリヤとともに、登録とうろくをするためであった。 6ところが、かれらがベツレヘムに滞在たいざいしているあいだに、マリヤはつきちて、 7初子ういごみ、ぬのにくるんで、飼葉かいばおけのなかかせた。客間きゃくまにはかれらのいる余地よちがなかったからである。

8さて、この地方ちほう羊飼ひつじかいたちがよる野宿のじゅくしながらひつじれのばんをしていた。 9するとしゅ御使みつかいあらわれ、しゅ栄光えいこうかれらをめぐりてらしたので、かれらは非常ひじょうおそれた。 10御使みつかいった、「おそれるな。よ、すべてのたみあたえられるおおきなよろこびを、あなたがたにつたえる。 11きょうダビデのまちに、あなたがたのために救主すくいぬしがおうまれになった。このかたこそしゅなるキリストである。 12あなたがたは、おさぬのにくるまって飼葉かいばおけのなかかしてあるのをるであろう。それが、あなたがたにあたえられるしるしである」。 13するとたちまち、おびただしいてん軍勢ぐんぜいあらわれ、御使みつかい一緒いっしょになってかみをさんびしてった、
14「いとたかきところでは、かみ栄光えいこうがあるように、
うえでは、みこころにかなう人々ひとびと平和へいわがあるように」。
15御使みつかいたちがかれらをはなれててんかえったとき、羊飼ひつじかいたちは「さあ、ベツレヘムへって、しゅがおらせくださったその出来事できごとてこようではないか」と、たがいかたった。 16そしていそいでって、マリヤとヨセフ、また飼葉かいばおけにかしてあるおささがしあてた。 17かれらにったうえで、このについて自分じぶんたちにらされたことを、人々ひとびとつたえた。 18人々ひとびとはみな、羊飼ひつじかいたちがはなしてくれたことをいて、不思議ふしぎおもった。 19しかし、マリヤはこれらのことをことごとくこころめて、おもいめぐらしていた。 20羊飼ひつじかいたちは、見聞みききしたことがなにもかも自分じぶんたちにかたられたとおりであったので、かみをあがめ、またさんびしながらかえってった。

21ぎ、割礼かつれいをほどこすときとなったので、受胎じゅたいのまえに御使みつかいげたとおり、おさをイエスとづけた。

22それから、モーセの律法りっぽうによるかれらのきよめの期間きかんぎたとき、両親りょうしんおされてエルサレムへのぼった。 23それはしゅ律法りっぽうに「ははたいはじめてひらおとこはみな、しゅせいべつされたものと、となえられねばならない」といてあるとおり、おさしゅにささげるためであり、 24またおなしゅ律法りっぽうに、「やまばと一つがい、または、いえばとのひな二」とさだめてあるのにしたがって、犠牲ぎせいをささげるためであった。 25そのとき、エルサレムにシメオンというひとがいた。このひとただしい信仰しんこうふかひとで、イスラエルのなぐさめられるのをのぞんでいた。また聖霊せいれいかれ宿やどっていた。 26そしてしゅのつかわす救主すくいぬしうまではぬことはないと、聖霊せいれいしめしをけていた。 27このひと御霊みたまかんじてみやにはいった。すると律法りっぽうさだめてあることをおこなうため、両親りょうしんもそのイエスをれてはいってきたので、 28シメオンはおさうでいだき、かみをほめたたえてった、
29しゅよ、いまこそ、あなたはみ言葉ことばのとおりに
このしもべやすらかにらせてくださいます、
30わたしのいまあなたのすくいたのですから。
31このすくいはあなたが万民ばんみんのまえにおそなえになったもので、
32異邦人いほうじんてら啓示けいじひかり
たみイスラエルの栄光えいこうであります」。
33ちちははとはおさについてこのようにかたられたことを、不思議ふしぎおもった。 34するとシメオンはかれらをしゅくし、そしてははマリヤにった、「ごらんなさい、このおさは、イスラエルのおおくのひとたおれさせたりちあがらせたりするために、また反対はんたいけるしるしとして、さだめられています。―― 35そして、あなた自身じしんもつるぎでむねつらぬかれるでしょう。――それはおおくのひとこころにあるおもいが、あらわれるようになるためです」。

36また、アセルぞくのパヌエルのむすめで、アンナというおんな預言者よげんしゃがいた。彼女かのじょ非常ひじょうとしをとっていた。むすめ時代じだいにとついで、七年間ねんかんだけおっとともみ、 37そののちやもめぐらしをし、八十四さいになっていた。そしてみやはなれずによるひる断食だんじきいのりとをもってかみつかえていた。 38この老女ろうじょも、ちょうどそのとき近寄ちかよってきて、かみ感謝かんしゃをささげ、そしてこのおさのことを、エルサレムのすくいのぞんでいるすべての人々ひとびとかたりきかせた。

39両親りょうしんしゅ律法りっぽうどおりすべてのことをすませたので、ガリラヤへむかい、自分じぶんまちナザレにかえった。

40おさは、ますます成長せいちょうしてつよくなり、知恵ちえち、そしてかみめぐみがそのうえにあった。

41さて、イエスの両親りょうしんは、過越すぎこしまつりには毎年まいとしエルサレムへのぼっていた。 42イエスが十二さいになったときも、慣例かんれいしたがってまつりのために上京じょうきょうした。 43ところが、まつりおわってかえるとき、少年しょうねんイエスはエルサレムに居残いのこっておられたが、両親りょうしんはそれにづかなかった。 44そして道連みちづれのなかにいることとおもいこんで、一にちってしまい、それから、親族しんぞく知人ちじんなかさがしはじめたが、 45つからないので、さがしまわりながらエルサレムへ引返ひきかえした。 46そして三のちに、イエスがみやなか教師きょうしたちのまんなかにすわって、かれらのはなしいたり質問しつもんしたりしておられるのをつけた。 47人々ひとびとはみな、イエスのかしこさやそのこたえ驚嘆きょうたんしていた。 48両親りょうしんはこれをおどろき、そしてははかれった、「どうしてこんなことをしてくれたのです。ごらんなさい、おとうさまもわたしも心配しんぱいして、あなたをさがしていたのです」。 49するとイエスはわれた、「どうしておさがしになったのですか。わたしが自分じぶんちちいえにいるはずのことを、ごぞんじなかったのですか」。 50しかし、両親りょうしんはそのかたられた言葉ことばさとることができなかった。 51それからイエスは両親りょうしん一緒いっしょにナザレにくだってき、かれらにおつかえになった。はははこれらのことをみなこころめていた。

52イエスはますます知恵ちえくわわり、たけもび、そしてかみひとからあいされた。

第三章

1皇帝こうていテベリオ在位ざいいだい十五ねん、ポンテオ・ピラトがユダヤの総督そうとく、ヘロデがガリラヤの領主りょうしゅ、その兄弟きょうだいピリポがイツリヤ・テラコニテ地方ちほう領主りょうしゅ、ルサニヤがアビレネの領主りょうしゅ 2アンナスとカヤパとが大祭司だいさいしであったとき、かみことば荒野あらのでザカリヤのヨハネにのぞんだ。 3かれはヨルダンのほとりのぜん地方ちほうって、つみのゆるしをさせる悔改くいあらためのバプテスマをつたえた。 4それは、預言者よげんしゃイザヤの言葉ことばしょいてあるとおりである。すなわち
荒野あらのばわるものこえがする、
しゅみちそなえよ、
そのみちすじをまっすぐにせよ』。
5すべてのたにめられ、
すべてのやまおかとは、たいらにされ、
まがったところはまっすぐに、
わるいみちはならされ、
6ひとはみなかみすくいるであろう」。
7さて、ヨハネは、かれからバプテスマをけようとしててきた群衆ぐんしゅうにむかってった、「まむしのらよ、せまってきているかみいかりから、のがれられると、おまえたちにだれがおしえたのか。 8だから、悔改くいあらためにふさわしいむすべ。自分じぶんたちのちちにはアブラハムがあるなどと、こころなかおもってもみるな。おまえたちにっておく。かみはこれらのいしころからでも、アブラハムのおこすことができるのだ。 9おのがすでにもとにかれている。だから、むすばないはことごとくられて、なかまれるのだ」。 10そこで群衆ぐんしゅうかれに、「それでは、わたしたちはなにをすればよいのですか」とたずねた。 11かれこたえてった、「下着したぎを二まいもっているものは、たないものけてやりなさい。食物しょくもつっているもの同様どうようにしなさい」。 12取税人しゅぜいにんもバプテスマをけにきて、かれった、「先生せんせい、わたしたちはなにをすればよいのですか」。 13かれらにった、「きまっているもの以上いじょうててはいけない」。 14兵卒へいそつたちもたずねてった、「では、わたしたちはなにをすればよいのですか」。かれった、「ひとをおどかしたり、だましったりしてはいけない。自分じぶん給与きゅうよ満足まんぞくしていなさい」。

15民衆みんしゅう救主すくいぬしのぞんでいたので、みなこころなかでヨハネのことを、もしかしたらこのひとがそれではなかろうかとかんがえていた。 16そこでヨハネはみんなのものにむかってった、「わたしはみずでおまえたちにバプテスマをさづけるが、わたしよりもちからのあるかたが、おいでになる。わたしには、そのくつのひもをうちもない。このかたは、聖霊せいれいとによっておまえたちにバプテスマをおさづけになるであろう。 17また、って、むぎをふるいけ、むぎくらおさめ、からはえないてるであろう」。

18こうしてヨハネはほかにもなお、さまざまのすすめをして、民衆みんしゅうおしえいた。 19ところが領主りょうしゅヘロデは、兄弟きょうだいつまヘロデヤのことで、また自分じぶんがしたあらゆる悪事あくじについて、ヨハネから非難ひなんされていたので、 20かれごくめて、いろいろな悪事あくじうえに、もう一つこの悪事あくじかさねた。

21さて、民衆みんしゅうがみなバプテスマをけたとき、イエスもバプテスマをけていのっておられると、てんひらけて、 22聖霊せいれいがはとのような姿すがたをとってイエスのうえくだり、そしててんからこえがした、「あなたはわたしのあいする、わたしのこころにかなうものである」。

23イエスが宣教せんきょうをはじめられたのは、としおよそ三十さいときであって、人々ひとびとかんがえによれば、ヨセフのであった。ヨセフはヘリの 24それから、さかのぼって、マタテ、レビ、メルキ、ヤンナイ、ヨセフ、 25マタテヤ、アモス、ナホム、エスリ、ナンガイ、 26マハテ、マタテヤ、シメイ、ヨセク、ヨダ、 27ヨハナン、レサ、ゾロバベル、サラテル、ネリ、 28メルキ、アデイ、コサム、エルマダム、エル、 29ヨシュア、エリエゼル、ヨリム、マタテ、レビ、 30シメオン、ユダ、ヨセフ、ヨナム、エリヤキム、 31メレヤ、メナ、マタタ、ナタン、ダビデ、 32エッサイ、オベデ、ボアズ、サラ、ナアソン、 33アミナダブ、アデミン、アルニ、エスロン、パレス、ユダ、 34ヤコブ、イサク、アブラハム、テラ、ナホル、 35セルグ、レウ、ペレグ、エベル、サラ、 36カイナン、アルパクサデ、セム、ノア、ラメク、 37メトセラ、エノク、ヤレデ、マハラレル、カイナン、 38エノス、セツ、アダム、そしてかみにいたる。

第四章

1さて、イエスは聖霊せいれいちてヨルダンがわからかえり、 2荒野あらのを四十にちのあいだ御霊みたまにひきまわされて、悪魔あくまこころみにあわれた。そのあいだなにべず、その日数ひかずがつきると、空腹くうふくになられた。 3そこで悪魔あくまった、「もしあなたがかみであるなら、このいしに、パンになれとめいじてごらんなさい」。 4イエスはこたえてわれた、「『ひとはパンだけできるものではない』といてある」。 5それから、悪魔あくまはイエスをたかところれてき、またたくまに世界せかいのすべての国々くにぐにせて 6った、「これらの国々くにぐに権威けんい栄華えいがとをみんな、あなたにあげましょう。それらはわたしにまかせられていて、だれでもきなひとにあげてよいのですから。 7それで、もしあなたがわたしのまえにひざまずくなら、これを全部ぜんぶあなたのものにしてあげましょう」。 8イエスはこたえてわれた、「『しゅなるあなたのかみはいし、ただかみにのみつかえよ』といてある」。 9それから悪魔あくまはイエスをエルサレムにれてき、みや頂上ちょうじょうたせてった、「もしあなたがかみであるなら、ここからしたびおりてごらんなさい。 10かみはあなたのために、御使みつかいたちにめいじてあなたをまもらせるであろう』とあり、 11また、『あなたのあしいしちつけられないように、かれらはあなたをでささえるであろう』ともいてあります」。 12イエスはこたえてわれた、「『しゅなるあなたのかみこころみてはならない』とわれている」。 13悪魔あくまはあらゆるこころみをしつくして、一時いちじイエスをはなれた。

14それからイエスは御霊みたまちからちあふれてガリラヤへかえられると、そのうわさがその地方ちほう全体ぜんたいにひろまった。 15イエスはしょ会堂かいどうおしえ、みんなのものから尊敬そんけいをおけになった。

16それからおそだちになったナザレにき、安息日あんそくにちにいつものように会堂かいどうにはいり、聖書せいしょ朗読ろうどくしようとしてたれた。 17すると預言者よげんしゃイザヤのしょ手渡てわたされたので、そのしょひらいて、こういてあるところされた、
18しゅ御霊みたまがわたしに宿やどっている。
まずしい人々ひとびと福音ふくいんつたえさせるために、
わたしをせいべつしてくださったからである。
しゅはわたしをつかわして、
囚人しゅうじん解放かいほうされ、盲人もうじんひらかれることをらせ、
ちひしがれているもの自由じゆうさせ、
19しゅのめぐみのとしらせるのである」。
20イエスは聖書せいしょいてかかりのものかえし、せきかれると、会堂かいどうにいるみんなのものがイエスにそそがれた。 21そこでイエスは、「このせいは、あなたがたがみみにしたこの成就じょうじゅした」ときはじめられた。 22すると、かれらはみなイエスをほめ、またそのくちからるめぐみの言葉ことば感嘆かんたんしてった、「このひとはヨセフのではないか」。 23そこでかれらにわれた、「あなたがたは、きっと『医者いしゃよ、自分じぶん自身じしんをいやせ』ということわざをいて、カペナウムでおこなわれたといていたことを、あなたの郷里きょうりのこのでもしてくれ、とうであろう」。 24それからわれた、「よくっておく。預言者よげんしゃは、自分じぶん郷里きょうりでは歓迎かんげいされないものである。 25よくいておきなさい。エリヤの時代じだいに、三ねん六かげつにわたっててんじ、イスラエル全土ぜんどだいききんがあったさい、そこにはおおくのやもめがいたのに、 26エリヤはそのうちのだれにもつかわされないで、ただシドンのサレプタにいるひとりのやもめにだけつかわされた。 27また預言者よげんしゃエリシャの時代じだいに、イスラエルにはおおくのらい病人びょうにんがいたのに、そのうちのひとりもきよめられないで、ただシリヤのナアマンだけがきよめられた」。 28会堂かいどうにいたものたちはこれをいて、みないきどおりにち、 29がってイエスをまちそとし、そのまちっているおかのがけまでひっぱってって、おとそうとした。 30しかし、イエスはかれらのまんなかとおけて、ってかれた。

31それから、イエスはガリラヤのまちカペナウムにくだってかれた。そして安息日あんそくにちになると、人々ひとびとをおおしえになったが、 32その言葉ことば権威けんいがあったので、かれらはそのおしえおどろいた。 33すると、けがれた悪霊あくれいにつかれたひと会堂かいどうにいて、大声おおごえさけした、 34「ああ、ナザレのイエスよ、あなたはわたしたちとなんのかかわりがあるのです。わたしたちをほろぼしにこられたのですか。あなたがどなたであるか、わかっています。かみ聖者せいじゃです」。 35イエスはこれをしかって、「だまれ、このひとからけ」とわれた。すると悪霊あくれいかれひとなかにたおし、きずわせずに、そのひとからった。 36みんなのものおどろいて、たがいかたってった、「これは、いったい、なんという言葉ことばだろう。権威けんいちからとをもってけがれたれいめいじられると、かれらはくのだ」。 37こうしてイエスの評判ひょうばんが、その地方ちほうのいたるところにひろまっていった。

38イエスは会堂かいどうてシモンのいえにおはいりになった。ところがシモンのしゅうとめがたかねつんでいたので、人々ひとびと彼女かのじょのためにイエスにおねがいした。 39そこで、イエスはそのまくらもとにって、ねつくようにめいじられると、ねつき、おんなはすぐにがって、かれらをもてなした。

40れると、いろいろな病気びょうきになやむものをかかえている人々ひとびとが、みなそれをイエスのところにれてきたので、そのひとりびとりにいて、おいやしになった。 41悪霊あくれいも「あなたこそかみです」とさけびながらおおくの人々ひとびとからていった。しかし、イエスはかれらをいましめて、ものうことをおゆるしにならなかった。かれらがイエスはキリストだとっていたからである。

42けると、イエスはさびしいところかれたが、群衆ぐんしゅうさがしまわって、みもとにあつまり、自分じぶんたちからはなれてかれないようにと、めた。 43しかしイエスは、「わたしは、ほかの町々まちまちにもかみくに福音ふくいんつたえねばならない。自分じぶんはそのためにつかわされたのである」とわれた。 44そして、ユダヤのしょ会堂かいどうおしえかれた。

第五章

1さて、群衆ぐんしゅうかみことばこうとしてせてきたとき、イエスはゲネサレ湖畔こはんっておられたが、 2そこに二そうの小舟こぶねせてあるのをごらんになった。漁師りょうしたちは、ふねからおりてあみあらっていた。 3その一そうはシモンのふねであったが、イエスはそれにみ、シモンにたのんできしからすこしこぎさせ、そしてすわって、ふねなかから群衆ぐんしゅうにおおしえになった。 4はなしがすむと、シモンに「おきへこぎし、あみをおろしてりょうをしてみなさい」とわれた。 5シモンはこたえてった、「先生せんせい、わたしたちは夜通よどおはたらきましたが、なにれませんでした。しかし、お言葉ことばですから、あみをおろしてみましょう」。 6そしてそのとおりにしたところ、おびただしいうおれがはいって、あみやぶれそうになった。 7そこで、もう一そうのふねにいた仲間なかまに、加勢かせいるよう合図あいずをしたので、かれらがきてうお両方りょうほうふねいっぱいにれた。そのために、ふねしずみそうになった。 8これをてシモン・ペテロは、イエスのひざもとにひれしてった、「しゅよ、わたしからはなれてください。わたしは罪深つみふかものです」。 9かれ一緒いっしょにいたものたちもみな、れたうおがおびただしいのにおどろいたからである。 10シモンの仲間なかまであったゼベダイのヤコブとヨハネも、同様どうようであった。すると、イエスがシモンにわれた、「おそれることはない。いまからあなたは人間にんげんをとる漁師りょうしになるのだ」。 11そこでかれらはふねりくげ、いっさいをててイエスにしたがった。

12イエスがあるまちにおられたとき全身ぜんしんらいびょうになっているひとがそこにいた。イエスをると、かおせてねがってった、「しゅよ、みこころでしたら、きよめていただけるのですが」。 13イエスはばしてかれにさわり、「そうしてあげよう、きよくなれ」とわれた。すると、らいびょうがただちにってしまった。 14イエスは、だれにもはなさないようにとかれかせ、「ただって自分じぶんのからだを祭司さいしせ、それからあなたのきよめのため、モーセがめいじたとおりのささげものをして、人々ひとびと証明しょうめいしなさい」とおめいじになった。 15しかし、イエスの評判ひょうばんはますますひろまってき、おびただしい群衆ぐんしゅうが、おしえいたり、病気びょうきをなおしてもらったりするために、あつまってきた。 16しかしイエスは、さびしいところ退しりぞいていのっておられた。

17あるのこと、イエスがおしえておられると、ガリラヤやユダヤの方々ほうぼうむらから、またエルサレムからきたパリサイびと律法りっぽう学者がくしゃたちが、そこにすわっていた。しゅちからはたらいて、イエスは人々ひとびとをいやされた。 18そのとき、ある人々ひとびとが、ひとりの中風ちゅうぶをわずらっているひととこにのせたままれてきて、いえなかはこれ、イエスのまえこうとした。 19ところが、群衆ぐんしゅうのためにどうしてもはこれる方法ほうほうがなかったので、屋根やねにのぼり、かわらをはいで、病人びょうにんとこごと群衆ぐんしゅうのまんなかにつりおろして、イエスのまえにおいた。 20イエスはかれらの信仰しんこうて、「ひとよ、あなたのつみはゆるされた」とわれた。 21すると律法りっぽう学者がくしゃとパリサイびとたちとは、「かみけがすことをうこのひとは、いったい、何者なにものだ。かみおひとりのほかに、だれがつみをゆるすことができるか」とってろんじはじめた。 22イエスはかれらの論議ろんぎぬいて、「あなたがたはこころなかなにろんじているのか。 23あなたのつみはゆるされたとうのと、きてあるけとうのと、どちらがたやすいか。 24しかし、ひと地上ちじょうつみをゆるす権威けんいっていることが、あなたがたにわかるために」とかれらにたいしてい、中風ちゅうぶものにむかって、「あなたにめいじる。きよ、とこげていえかえれ」とわれた。 25すると病人びょうにん即座そくざにみんなのまえきあがり、ていたとこりあげて、かみをあがめながらいえかえってった。 26みんなのもの驚嘆きょうたんしてしまった。そしてかみをあがめ、おそれにたされて、「きょうはおどろくべきことをた」とった。

27そののち、イエスがかれると、レビという取税人しゅぜいにん収税所しゅうぜいしょにすわっているのをて、「わたしにしたがってきなさい」とわれた。 28すると、かれはいっさいをててちあがり、イエスにしたがってきた。 29それから、レビは自分じぶんいえで、イエスのために盛大せいだい宴会えんかいもよおしたが、取税人しゅぜいにんやそのほかおおぜいの人々ひとびとが、とも食卓しょくたくいていた。 30ところが、パリサイびとやその律法りっぽう学者がくしゃたちが、イエスの弟子でしたちにたいしてつぶやいてった、「どうしてあなたがたは、取税人しゅぜいにん罪人つみびとなどと飲食いんしょくともにするのか」。 31イエスはこたえてわれた、「健康けんこうひとには医者いしゃはいらない。いるのは病人びょうにんである。 32わたしがきたのは、義人ぎじんまねくためではなく、罪人つみびとまねいてあらためさせるためである」。

33またかれらはイエスにった、「ヨハネの弟子でしたちは、しばしば断食だんじきをし、またいのりをしており、パリサイびと弟子でしたちもそうしているのに、あなたの弟子でしたちはべたりんだりしています」。 34するとイエスはわれた、「あなたがたは、花婿はなむこ一緒いっしょにいるのに、婚礼こんれいきゃく断食だんじきをさせることができるであろうか。 35しかし、花婿はなむこうばられるる。そのには断食だんじきをするであろう」。 36それからイエスはまた一つのたとえかたられた、「だれも、あたらしい着物きものからぬのぎれをって、ふる着物きものにつぎをてるものはない。もしそんなことをしたら、あたらしい着物きものくことになるし、あたらしいのからったぬのぎれもふるいのにわないであろう。 37まただれも、あたらしいぶどうしゅふるかわぶくろれはしない。もしそんなことをしたら、あたらしいぶどうしゅかわぶくろをはりき、そしてぶどうしゅるし、かわぶくろもむだになるであろう。 38あたらしいぶどうしゅあたらしいかわぶくろれるべきである。 39まただれも、ふるさけんでから、あたらしいのをほしがりはしない。『ふるいのがい』とかんがえているからである」。

第六章

1ある安息日あんそくにちにイエスが麦畑むぎばたけなかをとおってかれたとき、弟子でしたちがをつみ、でもみながらべていた。 2すると、あるパリサイびとたちがった、「あなたがたはなぜ、安息日あんそくにちにしてはならぬことをするのか」。 3そこでイエスがこたえてわれた、「あなたがたは、ダビデとそのともものたちとがえていたとき、ダビデのしたことについて、んだことがないのか。 4すなわち、かみいえにはいって、祭司さいしたちのほかだれもべてはならぬそなえのパンをってべ、またともものたちにもあたえたではないか」。 5またかれらにわれた、「ひと安息日あんそくにちしゅである」。

6また、ほかの安息日あんそくにち会堂かいどうにはいっておしえておられたところ、そこに右手みぎてのなえたひとがいた。 7律法りっぽう学者がくしゃやパリサイびとたちは、イエスをうったえる口実こうじつ見付みつけようとおもって、安息日あんそくにちにいやされるかどうかをうかがっていた。 8イエスはかれらのおもっていることをって、そののなえたひとに、「きて、まんなかちなさい」とわれると、がってった。 9そこでイエスはかれらにむかってわれた、「あなたがたにくが、安息日あんそくにちぜんおこなうのとあくおこなうのと、いのちすくうのところすのと、どちらがよいか」。 10そしてかれ一同いちどうまわして、そのひとに「ばしなさい」とわれた。そのとおりにすると、そのもとどおりになった。 11そこでかれらははげしくいかって、イエスをどうかしてやろうと、たがい話合はなしあいをはじめた。

12このころ、イエスはいのるためにやまき、てっしてかみいのられた。 13けると、弟子でしたちをせ、そのなかから十二にんえらし、これに使徒しとというをおあたえになった。 14すなわち、ペテロともばれたシモンとその兄弟きょうだいアンデレ、ヤコブとヨハネ、ピリポとバルトロマイ、 15マタイとトマス、アルパヨのヤコブと、熱心ねっしんとうばれたシモン、 16ヤコブのユダ、それからイスカリオテのユダ。このユダが裏切者うらぎりものとなったのである。 17そして、イエスはかれらと一緒いっしょやまくだって平地ひらちたれたが、おおぜいの弟子でしたちや、ユダヤ全土ぜんど、エルサレム、ツロとシドンの海岸かいがん地方ちほうなどからのだい群衆ぐんしゅうが、 18おしえこうとし、また病気びょうきをなおしてもらおうとして、そこにきていた。そしてけがれたれいなやまされているものたちも、いやされた。 19また群衆ぐんしゅうはイエスにさわろうとつとめた。それはちからがイエスのうちからて、みんなのもの次々つぎつぎにいやしたからである。 20そのとき、イエスはをあげ、弟子でしたちをわれた、
「あなたがたまずしいひとたちは、さいわいだ。
かみくにはあなたがたのものである。
21あなたがたいまえているひとたちは、さいわいだ。
りるようになるからである。
あなたがたいまいているひとたちは、さいわいだ。
わらうようになるからである。
22人々ひとびとがあなたがたをにくむとき、またひとのためにあなたがたを排斥はいせきし、ののしり、汚名おめいせるときは、あなたがたはさいわいだ。
23そのにはよろこびおどれ。よ、てんにおいてあなたがたのけるむくいはおおきいのだから。かれらの祖先そせんも、預言者よげんしゃたちにたいしておなじことをしたのである。
24しかしあなたがたんでいるひとたちは、わざわいだ。
なぐさめをけてしまっているからである。
25あなたがたいま満腹まんぷくしているひとたちは、わざわいだ。
えるようになるからである。
あなたがたいまわらっているひとたちは、わざわいだ。かなしみくようになるからである。
26ひとみなあなたがたをほめるときは、あなたがたはわざわいだ。かれらの祖先そせんも、にせ預言者よげんしゃたちにたいしておなじことをしたのである。
27しかし、いているあなたがたにう。てきあいし、にくもの親切しんせつにせよ。 28のろうもの祝福しゅくふくし、はずかしめるもののためにいのれ。 29あなたのほおものにはほかのほおをもけてやり、あなたの上着うわぎうばものには下着したぎをもこばむな。 30あなたにもとめるものにはあたえてやり、あなたのものうばものからはりもどそうとするな。 31人々ひとびとにしてほしいと、あなたがたののぞむことを、人々ひとびとにもそのとおりにせよ。 32自分じぶんあいしてくれるものあいしたからとて、どれほどの手柄てがらになろうか。罪人つみびとでさえ、自分じぶんあいしてくれるものあいしている。 33自分じぶんによくしてくれるものによくしたとて、どれほどの手柄てがらになろうか。罪人つみびとでさえ、それくらいのことはしている。 34またかえしてもらうつもりでしたとて、どれほどの手柄てがらになろうか。罪人つみびとでも、おなじだけのものをかえしてもらおうとして、仲間なかますのである。 35しかし、あなたがたは、てきあいし、ひとによくしてやり、またなにてにしないでしてやれ。そうすればけるむくいはおおきく、あなたがたはいとたかものとなるであろう。いとたかものは、おんらぬものにも悪人あくにんにも、なさけぶかいからである。 36あなたがたのちちなるかみ慈悲じひぶかいように、あなたがたも慈悲じひぶかものとなれ。 37ひとをさばくな。そうすれば、自分じぶんもさばかれることがないであろう。またひとつみさだめるな。そうすれば、自分じぶんつみさだめられることがないであろう。ゆるしてやれ。そうすれば、自分じぶんもゆるされるであろう。 38あたえよ。そうすれば、自分じぶんにもあたえられるであろう。人々ひとびとはおしれ、ゆすりれ、あふれるまでにりょうをよくして、あなたがたのふところにれてくれるであろう。あなたがたのはかるそのはかりで、自分じぶんにもはかりかえされるであろうから」。

39イエスはまた一つのたとえかたられた、「盲人もうじん盲人もうじん手引てびきができようか。ふたりともあなまないだろうか。 40弟子でしはその以上いじょうのものではないが、修業しゅうぎょうをつめば、みなそののようになろう。 41なぜ、兄弟きょうだいにあるちりをながら、自分じぶんにあるはりみとめないのか。 42自分じぶんにあるはりないでいて、どうして兄弟きょうだいにむかって、兄弟きょうだいよ、あなたのにあるちりをらせてください、とえようか。偽善者ぎぜんしゃよ、まず自分じぶんからはりりのけるがよい、そうすれば、はっきりえるようになって、兄弟きょうだいにあるちりをりのけることができるだろう。 43わるのなるはないし、またのなるわるもない。 44はそれぞれ、そのでわかる。いばらからいちじくをることはないし、ばらからぶどうをむこともない。 45善人ぜんにんこころくらからものし、悪人あくにんわるくらからわるものす。こころからあふれることを、くちかたるものである。

46わたしをしゅよ、しゅよ、とびながら、なぜわたしのうことをおこなわないのか。 47わたしのもとにきて、わたしの言葉ことばいておこなものが、なにているか、あなたがたにおしえよう。 48それは、ふかり、いわうえ土台どだいをすえていえてるひとている。洪水こうずい激流げきりゅうがそのいえせてきても、それをうごかすことはできない。よくててあるからである。 49しかしいてもおこなわないひとは、土台どだいなしで、つちうえいえてたひとている。激流げきりゅうがそのいえせてきたら、たちまちたおれてしまい、その被害ひがいおおきいのである」。

第七章

1イエスはこれらの言葉ことばをことごとく人々ひとびとかせてしまったのち、カペナウムにかえってこられた。 2ところが、ある百卒長ひゃくそつちょうたのみにしていたしもべが、病気びょうきになってにかかっていた。 3この百卒長ひゃくそつちょうはイエスのことをいて、ユダヤじん長老ちょうろうたちをイエスのところにつかわし、自分じぶんしもべたすけにきてくださるようにと、おねがいした。 4かれらはイエスのところにきて、熱心ねっしんねがってった、「あのひとはそうしていただくねうちがございます。 5わたしたちの国民こくみんあいし、わたしたちのために会堂かいどうててくれたのです」。 6そこで、イエスはかれらとれだっておかけになった。ところが、そのいえからほどとおくないあたりまでこられたとき、百卒長ひゃくそつちょうともだちをおくってイエスにわせた、「しゅよ、どうぞ、ご足労そくろうくださいませんように。わたしの屋根やねしたにあなたをおれする資格しかくは、わたしにはございません。 7それですから、自分じぶんでおむかえにあがるねうちさえないとおもっていたのです。ただ、お言葉ことばください。そして、わたしのしもべをなおしてください。 8わたしも権威けんいしたふくしているものですが、わたしのしたにも兵卒へいそつがいまして、ひとりのものに『け』とえばき、ほかのものに『こい』とえばきますし、また、しもべに『これをせよ』とえば、してくれるのです」。 9イエスはこれをいて非常ひじょう感心かんしんされ、ついてきた群衆ぐんしゅうほういてわれた、「あなたがたにっておくが、これほどの信仰しんこうは、イスラエルのなかでもたことがない」。 10使つかいにきたものたちがいえかえってみると、しもべ元気げんきになっていた。

11そののち、もなく、ナインというまちへおいでになったが、弟子でしたちやおおぜいの群衆ぐんしゅう一緒いっしょった。 12まちもんちかづかれると、ちょうど、あるやもめにとってひとりむすこであったものんだので、ほうむりにすところであった。おおぜいのまちひとたちが、そのははにつきそっていた。 13しゅはこの婦人ふじんふか同情どうじょうせられ、「かないでいなさい」とわれた。 14そして近寄ちかよってかんをかけられると、かついでいるものたちがまったので、「若者わかものよ、さあ、きなさい」とわれた。 15すると、死人しにんがってものした。イエスはかれをそのははにおわたしになった。 16人々ひとびとはみなおそれをいだき、「だい預言者よげんしゃがわたしたちのあいだあらわれた」、また、「かみはそのたみかえりみてくださった」とって、かみをほめたたえた。 17イエスについてのこのはなしは、ユダヤ全土ぜんどおよびその附近ふきんのいたるところにひろまった。

18ヨハネの弟子でしたちは、これらのことを全部ぜんぶかれ報告ほうこくした。するとヨハネは弟子でしなかからふたりのものんで、 19しゅのもとにおくり、「『きたるべきかた』はあなたなのですか。それとも、ほかにだれかをつべきでしょうか」とたずねさせた。 20そこで、このひとたちがイエスのもとにきてった、「わたしたちはバプテスマのヨハネからの使つかいですが、『きたるべきかた』はあなたなのですか、それとも、ほかにだれかをつべきでしょうか、とヨハネがたずねています」。 21そのとき、イエスはさまざまの病苦びょうく悪霊あくれいとになや人々ひとびとをいやし、またおおくの盲人もうじんえるようにしておられたが、 22こたえてわれた、「って、あなたがたが見聞みききしたことを、ヨハネに報告ほうこくしなさい。盲人もうじんえ、あしなえはあるき、らい病人びょうにんはきよまり、みみしいはきこえ、死人しにんきかえり、まずしい人々ひとびと福音ふくいんかされている。 23わたしにつまずかないものは、さいわいである」。

24ヨハネの使つかいってしまうと、イエスはヨハネのことを群衆ぐんしゅうかたりはじめられた、「あなたがたは、なに荒野あらのてきたのか。かぜらぐあしであるか。 25では、なにてきたのか。やわらかい着物きものをまとったひとか。きらびやかにかざって、ぜいたくにくらしている人々ひとびとなら、宮殿きゅうでんにいる。 26では、なにてきたのか。預言者よげんしゃか。そうだ、あなたがたにうが、預言者よげんしゃ以上いじょうものである。
27よ、わたしは使つかいをあなたのさきにつかわし、
あなたのまえに、みちととのえさせるであろう』
いてあるのは、このひとのことである。 28あなたがたにっておく。おんなんだものなかで、ヨハネよりおおきい人物じんぶつはいない。しかし、かみくにもっとちいさいものも、かれよりはおおきい。 29(これをいた民衆みんしゅうみな、また取税人しゅぜいにんたちも、ヨハネのバプテスマをけてかみただしいことをみとめた。 30しかし、パリサイびと律法りっぽう学者がくしゃたちとはかれからバプテスマをけないで、自分じぶんたちにたいするかみのみこころをにした。) 31だからいま時代じだい人々ひとびとなにくらべようか。かれらはなにているか。 32それは子供こどもたちが広場ひろばにすわって、たがいびかけ、
『わたしたちがふえいたのに、
あなたたちはおどってくれなかった。
とむらいのうたうたったのに、
いてくれなかった』
うのにている。 33なぜなら、バプテスマのヨハネがきて、パンをべることも、ぶどうしゅむこともしないと、あなたがたは、あれは悪霊あくれいにつかれているのだ、とい、 34またひとがきてべたりんだりしていると、よ、あれはしょくをむさぼるもの大酒おおざけもの、また取税人しゅぜいにん罪人つみびと仲間なかまだ、とう。 35しかし、知恵ちえただしいことは、そのすべての証明しょうめいする」。

36あるパリサイびとがイエスに、食事しょくじともにしたいともうたので、そのパリサイびといえにはいって食卓しょくたくかれた。 37するとそのとき、そのまちつみおんなであったものが、パリサイびといえ食卓しょくたくいておられることをいて、香油こうゆれてある石膏せっこうのつぼをってきて、 38きながら、イエスのうしろでそのあしもとにり、まずなみだでイエスのあしをぬらし、自分じぶんかみでぬぐい、そして、そのあし接吻せっぷんして、香油こうゆった。 39イエスをまねいたパリサイびとがそれをて、こころなかった、「もしこのひと預言者よげんしゃであるなら、自分じぶんにさわっているおんながだれだか、どんなおんなかわかるはずだ。それはつみおんななのだから」。 40そこでイエスはかれにむかってわれた、「シモン、あなたにうことがある」。かれは「先生せんせい、おっしゃってください」とった。 41イエスがわれた、「ある金貸かねかしにかねをかりたひとがふたりいたが、ひとりは五百デナリ、もうひとりは五十デナリをりていた。 42ところが、かえすことができなかったので、かれはふたりともゆるしてやった。このふたりのうちで、どちらがかれおおあいするだろうか」。 43シモンがこたえてった、「おおくゆるしてもらったほうだとおもいます」。イエスがわれた、「あなたの判断はんだんただしい」。 44それからおんなほういて、シモンにわれた、「このおんなないか。わたしがあなたのいえにはいってきたときに、あなたはあしあらみずをくれなかった。ところが、このおんななみだでわたしのあしをぬらし、かみでふいてくれた。 45あなたはわたしに接吻せっぷんをしてくれなかったが、彼女かのじょはわたしがいえにはいったときから、わたしのあし接吻せっぷんをしてやまなかった。 46あなたはわたしのあたまあぶらってくれなかったが、彼女かのじょはわたしのあし香油こうゆってくれた。 47それであなたにうが、このおんなおおあいしたから、そのおおくのつみはゆるされているのである。すこしだけゆるされたものは、すこしだけしかあいさない」。 48そしておんなに、「あなたのつみはゆるされた」とわれた。 49すると同席どうせきものたちがこころなかいはじめた、「つみをゆるすことさえするこのひとは、いったい、何者なにものだろう」。 50しかし、イエスはおんなにむかってわれた、「あなたの信仰しんこうがあなたをすくったのです。安心あんしんしてきなさい」。

第八章

1そののちイエスは、かみくに福音ふくいんきまたつたえながら、町々まちまち村々むらむら巡回じゅんかいつづけられたが、十二弟子でしもおともをした。 2また悪霊あくれいされ病気びょうきをいやされた数名すうめい婦人ふじんたち、すなわち、七つの悪霊あくれいしてもらったマグダラとばれるマリヤ、 3ヘロデの家令かれいクーザのつまヨハンナ、スザンナ、そのほかおおくの婦人ふじんたちも一緒いっしょにいて、自分じぶんたちのものをもって一行いっこう奉仕ほうしした。

4さて、おおぜいの群衆ぐんしゅうあつまり、そのうえ町々まちまちからのひとたちがイエスのところに、ぞくぞくとせてきたので、一つのたとえはなしをされた、 5たねまきがたねをまきにった。まいているうちに、あるたねみちばたにち、みつけられ、そしてそらとりべられてしまった。 6ほかのたねいわうえち、はえはしたが水気みずけがないのでれてしまった。 7ほかのたねは、いばらのあいだちたので、いばらも一緒いっしょしげってきて、それをふさいでしまった。 8ところが、ほかのたねちたので、はえそだって百ばいものむすんだ」。こうかたられたのち、こえをあげて「みみのあるものくがよい」とわれた。

9弟子でしたちは、このたとえはどういう意味いみでしょうか、とイエスに質問しつもんした。 10そこでわれた、「あなたがたには、かみくに奥義おくぎることがゆるされているが、ほかのひとたちには、てもえず、いてもさとられないために、たとえはなすのである。 11このたとえはこういう意味いみである。たねかみことばである。 12みちばたにちたのは、いたのち、しんじることもすくわれることもないように、悪魔あくまによってそのこころから御言みことばうばられるひとたちのことである。 13いわうえちたのは、御言みことばいたときにはよろこんでけいれるが、いので、しばらくはしんじていても、試錬しれんときると、信仰しんこうてるひとたちのことである。 14いばらのなかちたのは、いてからごすうちに、生活せいかつこころづかいやとみ快楽かいらくにふさがれて、じゅくするまでにならないひとたちのことである。 15ちたのは、御言みことばいたのち、これをただしいこころでしっかりとまもり、しのんでむすぶにいたひとたちのことである。

16だれもあかりをともして、それをなにかのうつわでおおいかぶせたり、寝台しんだいしたいたりはしない。燭台しょくだいうえいて、はいってひとたちにひかりえるようにするのである。 17かくされているもので、あらわにならないものはなく、秘密ひみつにされているもので、ついにはられ、あかるみにされないものはない。 18だから、どうくかに注意ちゅういするがよい。っているひとさらあたえられ、っていないひとは、っているとおもっているものまでも、げられるであろう」。

19さて、イエスのはは兄弟きょうだいたちとがイエスのところにきたが、群衆ぐんしゅうのためそばちかくにくことができなかった。 20それで、だれかが「あなたの母上ははうえ兄弟きょうだいがたが、おにかかろうとおもって、そとっておられます」と取次とりついだ。 21するとイエスは人々ひとびとにむかってわれた、「かみ御言みことばいておこなものこそ、わたしのはは、わたしの兄弟きょうだいなのである」。

22あるのこと、イエスは弟子でしたちとふねみ、「みずうみこうぎしわたろう」とわれたので、一同いちどう船出ふなでした。 23わたってあいだに、イエスはねむってしまわれた。すると突風とっぷうみずうみきおろしてきたので、かれらはみずをかぶって危険きけんになった。 24そこで、みそばにってきてイエスをおこし、「先生せんせい先生せんせい、わたしたちはにそうです」とった。イエスはがって、かぜ荒浪あらなみとをおしかりになると、んでなぎになった。 25イエスはかれらにわれた、「あなたがたの信仰しんこうは、どこにあるのか」。かれらはおそおどろいてたがいった、「いったい、このかたはだれだろう。おめいじになると、かぜみずしたがうとは」。

26それから、かれらはガリラヤの対岸たいがん、ゲラサびとわたった。 27りくにあがられると、そのまちひとで、悪霊あくれいにつかれてながいあいだ着物きものず、いえつかないで墓場はかばにばかりいたひとに、出会であわれた。 28このひとがイエスをさけし、みまえにひれして大声おおごえった、「いとたかかみイエスよ、あなたはわたしとなんのかかわりがあるのです。おねがいです、わたしをくるしめないでください」。 29それは、イエスがけがれたれいに、そのひとからけ、とおめいじになったからである。というのは、悪霊あくれいなんかれをひきとらえたので、かれくさりあしかせとでつながれてされていたが、それをっては悪霊あくれいによって荒野あらのいやられていたのである。 30イエスはかれに「なんという名前なまえか」とおたずねになると、「レギオンといます」とこたえた。かれなかにたくさんの悪霊あくれいがはいりんでいたからである。 31悪霊あくれいどもは、そこれぬところちてくことを自分じぶんたちにおめいじにならぬようにと、イエスにねがいつづけた。 32ところが、そこのやまべにおびただしいぶたれがってあったので、そのぶたなかへはいることをゆるしていただきたいと、悪霊あくれいどもがねがた。イエスはそれをおゆるしになった。 33そこで悪霊あくれいどもは、そのひとからぶたなかへはいりんだ。するとそのれは、がけからみずうみへなだれをってくだり、おぼれんでしまった。 34ものたちは、この出来事できごとして、まち村里むらざとにふれまわった。 35人々ひとびとはこの出来事できごとてきた。そして、イエスのところにきて、悪霊あくれいしてもらったひと着物きものて、正気しょうきになってイエスのあしもとにすわっているのをて、おそれた。 36それをひとたちは、この悪霊あくれいにつかれていたものすくわれた次第しだいを、かれらにかたかせた。 37それから、ゲラサの地方ちほう民衆みんしゅうはこぞって、自分じぶんたちのところからってくださるようにとイエスにたのんだ。かれらが非常ひじょう恐怖きょうふおそわれていたからである。そこで、イエスはふねってかえりかけられた。 38悪霊あくれいしてもらったひとは、おともをしたいと、しきりにねがったが、イエスはこうってかれをおかえしになった。 39いえかえって、かみがあなたにどんなにおおきなことをしてくださったか、かたかせなさい」。そこでかれって、自分じぶんにイエスがしてくださったことを、ことごとく町中まちじゅういひろめた。

40イエスがかえってこられると、群衆ぐんしゅうよろこむかえた。みんながイエスをちうけていたのである。 41するとそこに、ヤイロというひとがきた。このひと会堂司かいどうづかさであった。イエスのあしもとにひれして、自分じぶんいえにおいでくださるようにと、しきりにねがった。 42かれに十二さいばかりになるひとりむすめがあったが、にかけていた。ところが、イエスがかれる途中とちゅう群衆ぐんしゅうせまってきた。

43ここに、十二年間ねんかんながをわずらっていて、医者いしゃのために自分じぶん身代しんだいをみな使つかはたしてしまったが、だれにもなおしてもらえなかったおんながいた。 44このおんながうしろから近寄ちかよってみころものふさにさわったところ、そのなががたちまちまってしまった。 45イエスはわれた、「わたしにさわったのは、だれか」。人々ひとびとはみな自分じぶんではないとったので、ペテロが「先生せんせい群衆ぐんしゅうがあなたをかこんで、ひしめきっているのです」とこたえた。 46しかしイエスはわれた、「だれかがわたしにさわった。ちからがわたしからったのをかんじたのだ」。 47おんなかくしきれないのをって、ふるえながらすすて、みまえにひれし、イエスにさわったわけと、さわるとたちまちなおったこととを、みんなのまえはなした。 48そこでイエスがおんなわれた、「むすめよ、あなたの信仰しんこうがあなたをすくったのです。安心あんしんしてきなさい」。

49イエスがまだはなしておられるうちに、会堂司かいどうづかさいえからひとがきて、「おじょうさんはなくなられました。このうえ先生せんせいわずらわすにはおよびません」とった。 50しかしイエスはこれをいて会堂司かいどうづかさにむかってわれた、「おそれることはない。ただしんじなさい。むすめたすかるのだ」。 51それからいえにはいられるとき、ペテロ、ヨハネ、ヤコブおよびその父母ふぼのほかは、だれも一緒いっしょにはいってることをおゆるしにならなかった。 52人々ひとびとはみな、むすめのためにかなしんでいた。イエスはわれた、「くな、むすめんだのではない。ねむっているだけである」。 53人々ひとびとむすめんだことをっていたので、イエスをあざわらった。 54イエスはむすめって、びかけてわれた、「むすめよ、きなさい」。 55するとそのれいがもどってきて、むすめ即座そくざがった。イエスはなにものあたえるように、さしずをされた。 56両親りょうしんおどろいてしまった。イエスはこの出来事できごとをだれにもはなさないようにと、かれらにめいじられた。

第九章

1それからイエスは十二弟子でしあつめて、かれらにすべての悪霊あくれいせいし、病気びょうきをいやすちから権威けんいとをおさづけになった。 2またかみくにつたえ、かつ病気びょうきをなおすためにつかわして 3われた、「たびのためになにたずさえるな。つえもふくろもパンもぜにたず、また下着したぎも二まいつな。 4また、どこかのいえにはいったら、そこにとどまっておれ。そしてそこからかけることにしなさい。 5だれもあなたがたをむかえるものがいなかったら、そのまちくとき、かれらにたいする抗議こうぎのしるしに、あしからちりをはらおとしなさい」。 6弟子でしたちはって、村々むらむらめぐあるき、いたるところ福音ふくいんつたえ、また病気びょうきをいやした。

7さて、領主りょうしゅヘロデはいろいろな出来事できごとみみにして、あわてまどっていた。それは、あるひとたちは、ヨハネが死人しにんなかからよみがえったとい、 8またあるひとたちは、エリヤがあらわれたとい、またほかのひとたちは、むかし預言者よげんしゃのひとりが復活ふっかつしたのだとっていたからである。 9そこでヘロデがった、「ヨハネはわたしがすでにくびったのだが、こうしてうわさされているこのひとは、いったい、だれなのだろう」。そしてイエスにってみようとおもっていた。

10使徒しとたちはかえってきて、自分じぶんたちのしたことをすべてイエスにはなした。それからイエスはかれらをれて、ベツサイダというまちへひそかに退しりぞかれた。 11ところが群衆ぐんしゅうがそれとって、ついてきたので、これをむかえてかみくにのことをかたかせ、また治療ちりょうようするひとたちをいやされた。 12それからかたむきかけたので、十二弟子でしがイエスのもとにきてった、「群衆ぐんしゅう解散かいさんして、まわりの村々むらむら部落ぶらくって宿やどり、食物しょくもつにいれるようにさせてください。わたしたちはこんなさびしいところにきているのですから」。 13しかしイエスはわれた、「あなたがたの食物しょくもつをやりなさい」。かれらはった、「わたしたちにはパン五つとうお二ひきしかありません、このおおぜいのひとのために食物しょくもついにくかしなければ」。 14というのは、おとこが五千にんばかりもいたからである。しかしイエスは弟子でしたちにわれた、「人々ひとびとをおおよそ五十にんずつのくみにして、すわらせなさい」。 15かれらはそのとおりにして、みんなをすわらせた。 16イエスは五つのパンと二ひきのうおとをり、てんあおいでそれを祝福しゅくふくしてさき、弟子でしたちにわたして群衆ぐんしゅうくばらせた。 17みんなのものべて満腹まんぷくした。そして、そのあまりくずをあつめたら、十二かごあった。

18イエスがひとりでいのっておられたとき、弟子でしたちがちかくにいたので、かれらにたずねてわれた、「群衆ぐんしゅうはわたしをだれとっているか」。 19かれらはこたえてった、「バプテスマのヨハネだと、っています。しかしほかのひとたちは、エリヤだとい、またむかし預言者よげんしゃのひとりが復活ふっかつしたのだと、っているものもあります」。 20かれらにわれた、「それでは、あなたがたはわたしをだれとうか」。ペテロがこたえてった、「かみのキリストです」。 21イエスはかれらをいましめ、このことをだれにもうなとめいじ、そしてわれた、 22ひとかならおおくのくるしみをけ、長老ちょうろう祭司長さいしちょう律法りっぽう学者がくしゃたちにてられ、またころされ、そして三によみがえる」。 23それから、みんなのものわれた、「だれでもわたしについてきたいとおもうなら、自分じぶんて、日々ひび自分じぶん十字架じゅうじかうて、わたしにしたがってきなさい。 24自分じぶんいのちすくおうとおもものはそれをうしない、わたしのために自分じぶんいのちうしなものは、それをすくうであろう。 25ひとぜん世界せかいをもうけても、自分じぶん自身じしんうしないまたはそんしたら、なんのになろうか。 26わたしとわたしの言葉ことばとをじるものたいしては、ひともまた、自分じぶん栄光えいこうと、ちちせいなる御使みつかいとの栄光えいこうのうちにあらわれてるとき、そのものじるであろう。 27よくいておくがよい、かみくにるまでは、あじわわないものが、ここにっているものなかにいる」。

28これらのことをはなされたのち、八ほどたってから、イエスはペテロ、ヨハネ、ヤコブをれて、いのるためにやまのぼられた。 29いのっておられるあいだに、みかおさまかわり、みころもがまばゆいほどにしろかがやいた。 30するとよ、ふたりのひとがイエスとかたっていた。それはモーセとエリヤであったが、 31栄光えいこうなかあらわれて、イエスがエルサレムでげようとする最後さいごのことについてはなしていたのである。 32ペテロとその仲間なかまものたちとは熟睡じゅくすいしていたが、をさますと、イエスの栄光えいこう姿すがたと、ともっているふたりのひととをた。 33このふたりがイエスをはなろうとしたとき、ペテロは自分じぶんなにっているのかわからないで、イエスにった、「先生せんせい、わたしたちがここにいるのは、すばらしいことです。それで、わたしたちは小屋こやを三つてましょう。一つはあなたのために、一つはモーセのために、一つはエリヤのために」。 34かれがこうっているあいだに、くもがわきおこってかれらをおおいはじめた。そしてそのくもかこまれたとき、かれらはおそれた。 35するとくもなかからこえがあった、「これはわたしの、わたしのえらんだものである。これにけ」。 36そしてこえんだとき、イエスがひとりだけになっておられた。弟子でしたちは沈黙ちんもくまもって、自分じぶんたちがたことについては、そのころだれにもはなさなかった。

37翌日よくじつ一同いちどうやまりてると、おおぜいの群衆ぐんしゅうがイエスを出迎でむかえた。 38すると突然とつぜん、あるひと群衆ぐんしゅうなかから大声おおごえをあげてった、「先生せんせい、おねがいです。わたしのむすこをてやってください。このはわたしのひとりむすこですが、 39れいりつきますと、かれきゅうさけすのです。それから、れいかれをひきつけさせて、あわをかせ、かれよわてさせて、なかなかかないのです。 40それで、お弟子でしたちに、このれいしてくださるようにねがいましたが、できませんでした」。 41イエスはこたえてわれた、「ああ、なんという信仰しんこうな、まがった時代じだいであろう。いつまで、わたしはあなたがたと一緒いっしょにおられようか、またあなたがたに我慢がまんができようか。あなたのをここにれてきなさい」。 42ところが、そのがイエスのところにときにも、悪霊あくれいかれたおして、きつけさせた。イエスはこのけがれたれいをしかりつけ、その子供こどもをいやして、父親ちちおやにおわたしになった。 43人々ひとびとはみな、かみ偉大いだいちから非常ひじょうおどろいた。

みんなのものがイエスのしておられた数々かずかずこと不思議ふしぎおもっていると、弟子でしたちにわれた、 44「あなたがたはこの言葉ことばみみにおさめてきなさい。ひと人々ひとびとわたされようとしている」。 45しかし、かれらはなんのことかわからなかった。それがかれらにかくされていて、さとることができなかったのである。またかれらはそのことについてたずねるのをおそれていた。

46弟子でしたちのあいだに、かれらのうちでだれがいちばんえらいだろうかということで、議論ぎろんがはじまった。 47イエスはかれらのこころおもいを見抜みぬき、ひとりのおさりあげて自分じぶんのそばにたせ、かれらにわれた、 48「だれでもこのおさをわたしののゆえにけいれるものは、わたしをけいれるのである。そしてわたしをけいれるものは、わたしをおつかわしになったかたをけいれるのである。あなたがたみんなのなかでいちばんちいさいものこそ、おおきいのである」。

49するとヨハネがこたえてった、「先生せんせい、わたしたちはあるひとがあなたの使つかって悪霊あくれいしているのをましたが、そのひとはわたしたちの仲間なかまでないので、やめさせました」。 50イエスはかれわれた、「やめさせないがよい。あなたがたに反対はんたいしないものは、あなたがたの味方みかたなのである」。

51さて、イエスがてんげられるちかづいたので、エルサレムへこうと決意けついして、そのほうかおをむけられ、 52自分じぶん先立さきだって使者ししゃたちをおつかわしになった。そしてかれらがサマリヤびとむらへはいってき、イエスのために準備じゅんびをしようとしたところ、 53村人むらびとは、エルサレムへむかってすすんでかれるというので、イエスを歓迎かんげいしようとはしなかった。 54弟子でしのヤコブとヨハネとはそれをった、「しゅよ、いかがでしょう。かれらをはらってしまうように、てんからをよびもとめましょうか」。 55イエスはりかえって、かれらをおしかりになった。 56そして一同いちどうはほかのむらった。

57みちすすんでくと、あるひとがイエスにった、「あなたがおいでになるところならどこへでもしたがってまいります」。 58イエスはそのひとわれた、「きつねにはあながあり、そらとりにはがある。しかし、ひとにはまくらするところがない」。 59またほかのひとに、「わたしにしたがってきなさい」とわれた。するとそのひとった、「まず、ちちほうむりにかせてください」。 60かれわれた、「その死人しにんほうむることは、死人しにんまかせておくがよい。あなたは、ってかみくにげひろめなさい」。 61またほかのひとった、「しゅよ、したがってまいりますが、まずいえものわかれをいにかせてください」。 62イエスはわれた、「をすきにかけてから、うしろをものは、かみくににふさわしくないものである」。

第一〇章

1そののちしゅべつに七十二にんえらび、こうとしておられたすべてのまちむらへ、ふたりずつさきにおつかわしになった。 2そのとき、かれらにわれた、「収穫しゅうかくおおいが、はたらびとすくない。だから、収穫しゅうかくしゅねがって、その収穫しゅうかくのためにはたらびとおくすようにしてもらいなさい。 3さあ、きなさい。わたしがあなたがたをつかわすのは、小羊こひつじをおおかみのなかおくるようなものである。 4財布さいふふくろもくつもってくな。だれにもみちであいさつするな。 5どこかのいえにはいったら、まず『平安へいあんがこのいえにあるように』といなさい。 6もし平安へいあんがそこにおれば、あなたがたのいの平安へいあんはそのひとうえにとどまるであろう。もしそうでなかったら、それはあなたがたのうえかえってるであろう。 7それで、そのおないえとどまっていて、いえひとしてくれるものをいしなさい。はたらびとがそのむくいをるのは当然とうぜんである。いえからいえへとわたあるくな。 8どのまちへはいっても、人々ひとびとがあなたがたをむかえてくれるなら、まえされるものをべなさい。 9そして、そのまちにいる病人びょうにんをいやしてやり、『かみくにはあなたがたにちかづいた』といなさい。 10しかし、どのまちへはいっても、人々ひとびとがあなたがたをむかえない場合ばあいには、大通おおどおりにっていなさい、 11『わたしたちのあしについているこのまちのちりも、ぬぐいててく。しかし、かみくにちかづいたことは、承知しょうちしているがよい』。 12あなたがたにっておく。そのには、このまちよりもソドムのほうえやすいであろう。 13わざわいだ、コラジンよ。わざわいだ、ベツサイダよ。おまえたちのなかでなされたちからあるわざが、もしツロとシドンでなされたなら、かれらはとうのむかしに、荒布あらぬのをまといはいなかにすわって、あらためたであろう。 14しかし、さばきのには、ツロとシドンのほうがおまえたちよりも、えやすいであろう。 15ああ、カペナウムよ、おまえはてんにまでげられようとでもいうのか。黄泉よみにまでおとされるであろう。 16あなたがたにしたがものは、わたしにしたがうのであり、あなたがたをこばものは、わたしをこばむのである。そしてわたしをこばものは、わたしをおつかわしになったかたをこばむのである」。

17七十二にんよろこんでかえってきてった、「しゅよ、あなたのによっていたしますと、悪霊あくれいまでがわたしたちに服従ふくじゅうします」。 18かれらにわれた、「わたしはサタンが電光でんこうのようにてんからちるのをた。 19わたしはあなたがたに、へびやさそりをみつけ、てきのあらゆるちから権威けんいさづけた。だから、あなたがたにがいをおよぼすものはまったくいであろう。 20しかし、れいがあなたがたに服従ふくじゅうすることをよろこぶな。むしろ、あなたがたのてんにしるされていることをよろこびなさい」。

21そのとき、イエスは聖霊せいれいによってよろこびあふれてわれた、「天地てんちしゅなるちちよ。あなたをほめたたえます。これらのこと知恵ちえのあるものかしこものかくして、おさにあらわしてくださいました。ちちよ、これはまことに、みこころにかなったことでした。 22すべてのことちちからわたしにまかせられています。そして、がだれであるかは、ちちのほかっているものはありません。またちちがだれであるかは、と、ちちをあらわそうとしてえらんだものとのほか、だれもっているものはいません」。 23それから弟子でしたちのほうりむいて、ひそかにわれた、「あなたがたがていることをは、さいわいである。 24あなたがたにっておく。おおくの預言者よげんしゃおうたちも、あなたがたのていることをようとしたが、ることができず、あなたがたのいていることをこうとしたが、けなかったのである」。

25するとそこへ、ある律法りっぽう学者がくしゃあらわれ、イエスをこころみようとしてった、「先生せんせいなにをしたら永遠えいえん生命せいめいけられましょうか」。 26かれわれた、「律法りっぽうにはなんといてあるか。あなたはどうむか」。 27かれこたえてった、「『こころをつくし、精神せいしんをつくし、ちからをつくし、おもいをつくして、しゅなるあなたのかみあいせよ』。また、『自分じぶんあいするように、あなたのとなびとあいせよ』とあります」。 28かれわれた、「あなたのこたえただしい。そのとおりおこないなさい。そうすれば、いのちがられる」。 29するとかれ自分じぶん立場たちば弁護べんごしようとおもって、イエスにった、「では、わたしのとなびととはだれのことですか」。 30イエスがこたえてわれた、「あるひとがエルサレムからエリコにくだって途中とちゅう強盗ごうとうどもがかれおそい、その着物きものをはぎり、きずわせ、半殺はんごろしにしたまま、った。 31するとたまたま、ひとりの祭司さいしがそのみちくだってきたが、このひとると、こうがわとおってった。 32同様どうように、レビひともこの場所ばしょにさしかかってきたが、かれるとこうがわとおってった。 33ところが、あるサマリヤびとたびをしてこのひとのところをとおりかかり、かれどくおもい、 34近寄ちかよってきてそのきずにオリブとぶどうしゅとをそそいでほうたいをしてやり、自分じぶん家畜かちくせ、宿屋やどやれてって介抱かいほうした。 35翌日よくじつ、デナリ二つをして宿屋やどや主人しゅじん手渡てわたし、『このひとてやってください。費用ひようがよけいにかかったら、かえりがけに、わたしが支払しはらいます』とった。 36この三にんのうち、だれが強盗ごうとうおそわれたひととなびとになったとおもうか」。 37かれった、「そのひと慈悲じひぶかおこないをしたひとです」。そこでイエスはわれた、「あなたもっておなじようにしなさい」。

38一同いちどうたびつづけているうちに、イエスがあるむらへはいられた。するとマルタというおんながイエスをいえむかれた。 39このおんなにマリヤといういもうとがいたが、しゅあしもとにすわって、御言みことばっていた。 40ところが、マルタは接待せったいのことでいそがしくてこころをとりみだし、イエスのところにきてった、「しゅよ、いもうとがわたしだけに接待せったいをさせているのを、なんともおおもいになりませんか。わたしの手伝てつだいをするようにいもうとにおっしゃってください」。 41しゅこたえてわれた、「マルタよ、マルタよ、あなたはおおくのことにこころくばっておもいわずらっている。 42しかし、くてならぬものはおおくはない。いや、一つだけである。マリヤはそのほうえらんだのだ。そしてそれは、彼女かのじょからってはならないものである」。

第一一章

1また、イエスはあるところいのっておられたが、それがおわったとき、弟子でしのひとりがった、「しゅよ、ヨハネがその弟子でしたちにおしえたように、わたしたちにもいのることをおしえてください」。 2そこでかれらにわれた、「いのるときには、こういなさい、『ちちよ、御名みながあがめられますように。御国みくにがきますように。 3わたしたちのごとの食物しょくもつを、日々ひびあたえください。 4わたしたちに負債ふさいのあるものみなゆるしますから、わたしたちのつみをもおゆるしください。わたしたちをこころみにわせないでください』」。 5そしてかれらにわれた、「あなたがたのうちのだれかに、友人ゆうじんがあるとして、そのひとのところへ真夜中まよなかき、『ともよ、パンを三つしてください。 6ともだちが旅先たびさきからわたしのところにいたのですが、なにすものがありませんから』とった場合ばあい 7かれうちから、『面倒めんどうをかけないでくれ。もうめてしまったし、子供こどもたちもわたしと一緒いっしょとこにはいっているので、いまきてなにもあげるわけにはいかない』とうであろう。 8しかし、よくきなさい、友人ゆうじんだからというのではきてあたえないが、しきりにねがうので、がって必要ひつようなものをしてくれるであろう。 9そこでわたしはあなたがたにう。もとめよ、そうすれば、あたえられるであろう。さがせ、そうすればいだすであろう。もんをたたけ、そうすれば、あけてもらえるであろう。 10すべてもとめるものさがものいだし、もんをたたくものはあけてもらえるからである。 11あなたがたのうちで、ちちであるものは、そのうおもとめるのに、うおかわりにへびをあたえるだろうか。 12たまごもとめるのに、さそりをあたえるだろうか。 13このように、あなたがたはわるものであっても、自分じぶん子供こどもには、おくものをすることをっているとすれば、てんちちはなおさら、もとめてもの聖霊せいれいくださらないことがあろうか」。

14さて、イエスが悪霊あくれいしておられた。それは、おしのれいであった。悪霊あくれいくと、おしがものうようになったので、群衆ぐんしゅう不思議ふしぎおもった。 15そのなかのある人々ひとびとが、「かれ悪霊あくれいのかしらベルゼブルによって、悪霊あくれいどもをしているのだ」とい、 16またほかの人々ひとびとは、イエスをこころみようとして、てんからのしるしをもとめた。 17しかしイエスは、かれらのおもいを見抜みぬいてわれた、「おおよそくに内部ないぶ分裂ぶんれつすれば自滅じめつしてしまい、またいえわかあらそえばたおれてしまう。 18そこでサタンも内部ないぶ分裂ぶんれつすれば、そのくにはどうしてけよう。あなたがたはわたしがベルゼブルによって悪霊あくれいしているとうが、 19もしわたしがベルゼブルによって悪霊あくれいすとすれば、あなたがたの仲間なかまはだれによってすのであろうか。だから、かれらがあなたがたをさばくものとなるであろう。 20しかし、わたしがかみゆびによって悪霊あくれいしているのなら、かみくにはすでにあなたがたのところにきたのである。 21つよひと十分じゅうぶん武装ぶそうして自分じぶん邸宅ていたくまもっているかぎり、そのもの安全あんぜんである。 22しかし、もっとつよものおそってきてかれてば、そのたのみにしていた武具ぶぐうばって、その分捕ぶんどりひんけるのである。 23わたしの味方みかたでないものは、わたしに反対はんたいするものであり、わたしとともあつめないものは、らすものである。 24けがれたれいひとからると、やすもとめてみずところあるきまわるが、つからないので、てきたもといえかえろうとって、 25かえってると、そのいえはそうじがしてあるうえかざりつけがしてあった。 26そこでまたって、自分じぶん以上いじょうわるの七つのれいれてきてなかにはいり、そこにむ。そうすると、そのひとのち状態じょうたいはじめよりももっとわるくなるのである」。

27イエスがこうはなしておられるとき、群衆ぐんしゅうなかからひとりのおんなこえりあげてった、「あなたを宿やどしたたい、あなたがわれた乳房ちぶさは、なんとめぐまれていることでしょう」。 28しかしイエスはわれた、「いや、めぐまれているのは、むしろ、かみことばいてそれをまもひとたちである」。

29さて群衆ぐんしゅうむらがりあつまったので、イエスはかたされた、「この時代じだい邪悪じゃあく時代じだいである。それはしるしをもとめるが、ヨナのしるしのほかには、なんのしるしもあたえられないであろう。 30というのは、ニネベの人々ひとびとたいしてヨナがしるしとなったように、ひともこの時代じだいたいしてしるしとなるであろう。 31みなみ女王じょおうが、いま時代じだい人々ひとびとともにさばきのって、かれらをつみさだめるであろう。なぜなら、彼女かのじょはソロモンの知恵ちえくために、はてからはるばるきたからである。しかしよ、ソロモンにまさるものがここにいる。 32ニネベの人々ひとびとが、いま時代じだい人々ひとびとともにさばきのって、かれらをつみさだめるであろう。なぜなら、ニネベの人々ひとびとはヨナの宣教せんきょうによってあらためたからである。しかしよ、ヨナにまさるものがここにいる。

33だれもあかりをともして、それを穴倉あなぐらなかますしたくことはしない。むしろはいってひとたちに、そのあかりがえるように、燭台しょくだいうえにおく。 34あなたのは、からだのあかりである。あなたのんでおれば、全身ぜんしんあかるいが、がわるければ、からだもくらい。 35だから、あなたのうちなるひかりくらくならないように注意ちゅういしなさい。 36もし、あなたのからだ全体ぜんたいあかるくて、くら部分ぶぶんすこしもなければ、ちょうど、あかりがかがやいてあなたをてらときのように、全身ぜんしんあかるくなるであろう」。

37イエスがかたっておられたとき、あるパリサイびとが、自分じぶんいえ食事しょくじをしていただきたいともうたので、はいって食卓しょくたくにつかれた。 38ところが、食前しょくぜんにまずあらうことをなさらなかったのをて、そのパリサイびと不思議ふしぎおもった。 39そこでしゅかれわれた、「いったい、あなたがたパリサイびとは、さかずきぼん外側そとがわをきよめるが、あなたがたの内側うちがわ貪欲どんよく邪悪じゃあくとでちている。 40おろかなものたちよ、外側そとがわつくったかたは、また内側うちがわつくられたではないか。 41ただ、内側うちがわにあるものをきよめなさい。そうすれば、いっさいがあなたがたにとって、きよいものとなる。

42しかし、あなたほうパリサイびとは、わざわいである。はっか、うんこう、あらゆる野菜やさいなどの十ぶんの一をみやおさめておりながら、かみたいするあいとをなおざりにしている。それもなおざりにはできないが、これはおこなわねばならない。 43あなたがたパリサイびとは、わざわいである。会堂かいどう上席じょうせき広場ひろばでの敬礼けいれいこのんでいる。 44あなたがたは、わざわいである。人目ひとめにつかないはかのようなものである。そのうえあるいても人々ひとびとづかないでいる」。

45ひとりの律法りっぽう学者がくしゃがイエスにこたえてった、「先生せんせい、そんなことをわれるのは、わたしたちまでも侮辱ぶじょくすることです」。 46そこでわれた、「あなたがた律法りっぽう学者がくしゃも、わざわいである。れない重荷おもにひとわせながら、自分じぶんではそのゆびぽんでもれようとしない。 47あなたがたは、わざわいである。預言者よげんしゃたちのてるが、しかしかれらをころしたのは、あなたがたの先祖せんぞであったのだ。 48だから、あなたがたは、自分じぶん先祖せんぞのしわざに同意どういする証人しょうにんなのだ。先祖せんぞかれらをころし、あなたがたがそのてるのだから。 49それゆえに、『かみ知恵ちえ』もっている、『わたしは預言者よげんしゃ使徒しととをかれらにつかわすが、かれらはそのうちのあるものころしたり、迫害はくがいしたりするであろう』。 50それで、アベルのから祭壇さいだん神殿しんでんとのあいだころされたザカリヤのいたるまで、はじめからながされてきたすべての預言者よげんしゃについて、この時代じだいがその責任せきにんわれる。 51そうだ、あなたがたにっておく、この時代じだいがその責任せきにんわれるであろう。 52あなたがた律法りっぽう学者がくしゃは、わざわいである。知識ちしきのかぎをりあげて、自分じぶんがはいらないばかりか、はいろうとするひとたちをさまたげてきた」。

53イエスがそこをかれると、律法りっぽう学者がくしゃやパリサイびとは、はげしくり、いろいろなこといかけて、 54イエスのくちからなにいがかりをようと、ねらいはじめた。

第一二章

1そのあいだに、おびただしい群衆ぐんしゅうが、たがいうほどにむらがってきたが、イエスはまず弟子でしたちにかたりはじめられた、「パリサイびとのパンだね、すなわちかれらの偽善ぎぜんをつけなさい。 2おおいかぶされたもので、あらわれてこないものはなく、かくれているもので、られてこないものはない。 3だから、あなたがたがくらやみでったことは、なんでもみなあかるみでかれ、密室みっしつみみにささやいたことは、屋根やねうえいひろめられるであろう。 4そこでわたしのともであるあなたがたにうが、からだをころしても、そのあとでそれ以上いじょうなにもできないものどもをおそれるな。 5おそるべきものがだれであるか、おしえてあげよう。ころしたあとで、さら地獄じごく権威けんいのあるかたをおそれなさい。そうだ、あなたがたにっておくが、そのかたをおそれなさい。 6のすずめは二アサリオンでられているではないか。しかも、その一かみのみまえでわすれられてはいない。 7そのうえ、あなたがたのあたままでも、みなかぞえられている。おそれることはない。あなたがたはおおくのすずめよりも、まさったものである。 8そこで、あなたがたにう。だれでもひとまえでわたしをけいれるものを、ひとかみ使つかいたちのまえけいれるであろう。 9しかし、ひとまえでわたしをこばものは、かみ使つかいたちのまえこばまれるであろう。 10また、ひとさからうものはゆるされるであろうが、聖霊せいれいをけがすものは、ゆるされることはない。 11あなたがたが会堂かいどう役人やくにん高官こうかんまえへひっぱられてった場合ばあいには、なにをどう弁明べんめいしようか、なにおうかと心配しんぱいしないがよい。 12うべきことは、聖霊せいれいがそのときおしえてくださるからである」。

13群衆ぐんしゅうなかのひとりがイエスにった、「先生せんせい、わたしの兄弟きょうだいに、遺産いさんけてくれるようにおっしゃってください」。 14かれわれた、「ひとよ、だれがわたしをあなたがたの裁判人さいばんにんまたは分配ぶんぱいにんてたのか」。 15それから人々ひとびとにむかってわれた、「あらゆる貪欲どんよくたいしてよくよく警戒けいかいしなさい。たといたくさんのものっていても、ひとのいのちは、ものにはよらないのである」。 16そこで一つのたとえかたられた、「ある金持かねもちはたけ豊作ほうさくであった。 17そこでかれこころなかで、『どうしようか、わたしの作物さくもつをしまっておくところがないのだが』とおもいめぐらして 18った、『こうしよう。わたしのくらりこわし、もっとおおきいのをてて、そこに穀物こくもつ食糧しょくりょう全部ぜんぶしまいもう。 19そして自分じぶんたましいおう。たましいよ、おまえには長年ながねんぶん食糧しょくりょうがたくさんたくわえてある。さあ安心あんしんせよ、え、め、たのしめ』。 20するとかみかれわれた、『おろかなものよ、あなたのたましい今夜こんやのうちにもられるであろう。そしたら、あなたが用意よういしたものは、だれのものになるのか』。 21自分じぶんのためにたからんでかみたいしてまないものは、これとおなじである」。

22それから弟子でしたちにわれた、「それだから、あなたがたにっておく。なにべようかと、いのちのことでおもいわずらい、なにようかとからだのことでおもいわずらうな。 23いのち食物しょくもつにまさり、からだは着物きものにまさっている。 24からすのことをかんがえてよ。まくことも、ることもせず、また、納屋なやもなくくらもない。それだのに、かみかれらをやしなっていてくださる。あなたがたはとりよりも、はるかにすぐれているではないか。 25あなたがたのうち、だれがおもいわずらったからとて、自分じぶん寿命じゅみょうをわずかでもばすことができようか。 26そんなちいさなことさえできないのに、どうしてほかのことをおもいわずらうのか。 27はなのことをかんがえてるがよい。つむぎもせず、りもしない。しかし、あなたがたにうが、栄華えいがをきわめたときのソロモンでさえ、このはなの一つほどにも着飾きかざってはいなかった。 28きょうはにあって、あすはれられるくさでさえ、かみはこのようによそおってくださるのなら、あなたがたに、それ以上いじょうよくしてくださらないはずがあろうか。ああ、信仰しんこううすものたちよ。 29あなたがたも、なにべ、なにもうかと、あくせくするな、また使つかうな。 30これらのものはみな、この異邦人いほうじんせつもとめているものである。あなたがたのちちは、これらのものがあなたがたに必要ひつようであることを、ごぞんじである。 31ただ、御国みくにもとめなさい。そうすれば、これらのものはえてあたえられるであろう。 32おそれるな、ちいさいれよ。御国みくにくださることは、あなたがたのちちのみこころなのである。 33自分じぶんものって、ほどこしなさい。自分じぶんのためにふるびることのない財布さいふをつくり、盗人ぬすびと近寄ちかよらず、むしやぶらないてんに、きることのないたからをたくわえなさい。 34あなたがたのたからのあるところには、こころもあるからである。

35こしおびをしめ、あかりをともしていなさい。 36主人しゅじんこんえんからかえってきてをたたくとき、すぐあけてあげようとっているひとのようにしていなさい。 37主人しゅじんかえってきたとき、さましているのをられるしもべたちは、さいわいである。よくっておく。主人しゅじんおびをしめてしもべたちを食卓しょくたくにつかせ、すすって給仕きゅうじをしてくれるであろう。 38主人しゅじん夜中よなかごろ、あるいは夜明よあけごろにかえってきても、そうしているのをられるなら、そのひとたちはさいわいである。 39このことを、わきまえているがよい。いえ主人しゅじんは、盗賊とうぞくがいつごろるかわかっているなら、自分じぶんいえらせはしないであろう。 40あなたがたも用意よういしていなさい。おもいがけないときひとるからである」。

41するとペテロがった、「しゅよ、このたとえはなしておられるのはわたしたちのためなのですか。それとも、みんなのもののためなのですか」。 42そこでしゅわれた、「主人しゅじんが、召使めしつかいたちのうえてて、ときおうじてさだめの食事しょくじをそなえさせる忠実ちゅうじつ思慮しりょぶか家令かれいは、いったいだれであろう。 43主人しゅじんかえってきたとき、そのようにつとめているのをられるしもべは、さいわいである。 44よくっておくが、主人しゅじんはそのしもべてて自分じぶんぜん財産ざいさん管理かんりさせるであろう。 45しかし、もしそのしもべが、主人しゅじんかえりがおそいとこころなかおもい、男女だんじょ召使めしつかいたちをちたたき、そしてべたり、んだりしていはじめるならば、 46そのしもべ主人しゅじんおもいがけないがつかないときかえってるであろう。そして、かれ厳罰げんばつしょして、忠実ちゅうじつなものたちとおなにあわせるであろう。 47主人しゅじんのこころをっていながら、それにしたがって用意よういもせずつとめもしなかったしもべは、おおくむちたれるであろう。 48しかし、らずにたれるようなことをしたものは、たれほうすくないだろう。おおあたえられたものからはおおもとめられ、おおまかせられたものからはさらおお要求ようきゅうされるのである。

49わたしは、地上ちじょうとうじるためにきたのだ。がすでにえていたならと、わたしはどんなにねがっていることか。 50しかし、わたしにはけねばならないバプテスマがある。そして、それをけてしまうまでは、わたしはどんなにかくるしいおもいをすることであろう。 51あなたがたは、わたしが平和へいわをこの地上ちじょうにもたらすためにきたとおもっているのか。あなたがたにっておく。そうではない。むしろ分裂ぶんれつである。 52というのは、いまからのちは、一家いっかうちで五にんあいわかれて、三にんはふたりに、ふたりは三にん対立たいりつし、 53またちちに、ちちに、ははむすめに、むすめははに、しゅうとめはよめに、よめはしゅうとめに、対立たいりつするであろう」。

54イエスはまた群衆ぐんしゅうたいしてもわれた、「あなたがたは、くも西にしおこるのをるとすぐ、にわかあめがやってる、とう。はたしてそのとおりになる。 55それから南風みなみかぜくと、つくなるだろう、とう。はたしてそのとおりになる。 56偽善者ぎぜんしゃよ、あなたがたは天地てんち模様もよう見分みわけることをりながら、どうしていま時代じだい見分みわけることができないのか。 57また、あなたがたは、なぜただしいことを自分じぶん判断はんだんしないのか。 58たとえば、あなたをうったえるひと一緒いっしょ役人やくにんのところへくときには、途中とちゅうでそのひと和解わかいするようにつとめるがよい。そうしないと、そのひとはあなたを裁判官さいばんかんのところへひっぱってき、裁判官さいばんかんはあなたを獄吏ごくりわたし、獄吏ごくりはあなたをごくむであろう。 59わたしはってく、最後さいごの一レプタまでも支払しはらってしまうまでは、けっしてそこからることはできない」。

第一三章

1ちょうどそのとき、ある人々ひとびとがきて、ピラトがガリラヤびとたちのながし、それをかれらの犠牲ぎせいぜたことを、イエスにらせた。 2そこでイエスはこたえてわれた、「それらのガリラヤびとが、そのような災難さいなんにあったからといって、のすべてのガリラヤびと以上いじょうつみふかかったとおもうのか。 3あなたがたにうが、そうではない。あなたがたもあらためなければ、みなおなじようにほろびるであろう。 4また、シロアムのとうたおれたためにおしころされたあの十八にんは、エルサレムのぜん住民じゅうみん以上いじょうつみ負債ふさいがあったとおもうか。 5あなたがたにうが、そうではない。あなたがたもあらためなければ、みなおなじようにほろびるであろう」。

6それから、このたとえかたられた、「あるひと自分じぶんのぶどうえんにいちじくのえていたので、さがしにきたがつからなかった。 7そこで園丁えんていった、『わたしは三年間ねんかんもとめて、このいちじくののところにきたのだが、いまだにあたらない。そのたおしてしまえ。なんのために、土地とちをむだにふさがせてくのか』。 8すると園丁えんていこたえてった、『ご主人様しゅじんさま、ことしも、そのままにしていてください。そのまわりをって肥料ひりょうをやってますから。 9それで来年らいねんがなりましたら結構けっこうです。もしそれでもだめでしたら、たおしてください』」。

10安息日あんそくにちに、ある会堂かいどうおしえておられると、 11そこに十八年間ねんかん病気びょうきれいにつかれ、かがんだままで、からだをばすことのまったくできないおんながいた。 12イエスはこのおんなて、びよせ、「おんなよ、あなたの病気びょうきはなおった」とって、 13をそのうえかれた。するとちどころに、そのからだがまっすぐになり、そしてかみをたたえはじめた。 14ところが会堂司かいどうづかさは、イエスが安息日あんそくにち病気びょうきをいやされたことをいきどおり、群衆ぐんしゅうにむかってった、「はたらくべき六日むいかある。そのあいだに、なおしてもらいにきなさい。安息日あんそくにちにはいけない」。 15しゅはこれにこたえてわれた、「偽善者ぎぜんしゃたちよ、あなたがたはだれでも、安息日あんそくにちであっても、自分じぶんうしやろばを家畜かちく小屋こやからいて、みずませにしてやるではないか。 16それなら、十八年間ねんかんもサタンにしばられていた、アブラハムのむすめであるこのおんなを、安息日あんそくにちであっても、その束縛そくばくからいてやるべきではなかったか」。 17こうわれたので、イエスに反対はんたいしていたひとたちはみなった。そして群衆ぐんしゅうはこぞって、イエスがなされたすべてのすばらしいみわざをよろこんだ。

18そこでわれた、「かみくになにているか。またそれをなににたとえようか。 19つぶのからしだねのようなものである。あるひとがそれをってにわにまくと、そだってとなり、そらとりもそのえだ宿やどるようになる」。 20またわれた、「かみくになににたとえようか。 21パンだねのようなものである。おんながそれをって三こななかぜると、全体ぜんたいがふくらんでくる」。

22さてイエスはおしえながら町々まちまち村々むらむらとおぎ、エルサレムへとたびつづけられた。 23すると、あるひとがイエスに、「しゅよ、すくわれるひとすくないのですか」とたずねた。 24そこでイエスは人々ひとびとにむかってわれた、「せま戸口とぐちからはいるようにつとめなさい。事実じじつ、はいろうとしても、はいれないひとおおいのだから。 25いえ主人しゅじんってじてしまってから、あなたがたがそとをたたきはじめて、『ご主人様しゅじんさま、どうぞあけてください』とっても、主人しゅじんはそれにこたえて、『あなたがたがどこからきたひとなのか、わたしはらない』とうであろう。 26そのとき、『わたしたちはあなたとご一緒いっしょいしました。また、あなたはわたしたちの大通おおどおりでおしえてくださいました』としても、 27かれは、『あなたがたがどこからきたひとなのか、わたしはらない。悪事あくじはたらものどもよ、みんなってしまえ』とうであろう。 28あなたがたは、アブラハム、イサク、ヤコブやすべての預言者よげんしゃたちが、かみくににはいっているのに、自分じぶんたちはそとされることになれば、そこでさけんだり、がみをしたりするであろう。 29それから人々ひとびとが、ひがしから西にしから、またみなみからきたからきて、かみくに宴会えんかいせきにつくであろう。 30こうしてあとのものでさきになるものがあり、また、さきのものであとになるものもある」。

31ちょうどそのとき、あるパリサイびとたちが、イエスに近寄ちかよってきてった、「ここからきなさい。ヘロデがあなたをころそうとしています」。 32そこでかれらにわれた、「あのきつねのところへってこうえ、『よ、わたしはきょうもあすも悪霊あくれいし、また、病気びょうきをいやし、そして三にわざをえるであろう。 33しかし、きょうもあすも、またそのつぎも、わたしはすすんでかねばならない。預言者よげんしゃがエルサレム以外いがいぬことは、ありないからである』。 34ああ、エルサレム、エルサレム、預言者よげんしゃたちをころし、おまえにつかわされた人々ひとびといしころものよ。ちょうどめんどりがつばさしたにひなをあつめるように、わたしはおまえのらをいくたびあつめようとしたことであろう。それだのに、おまえたちはおうじようとしなかった。 35よ、おまえたちのいえ見捨みすてられてしまう。わたしはってく、
しゅによってきたるものに、祝福しゅくふくあれ』
とおまえたちがときるまでは、ふたたびわたしにうことはないであろう」。

第一四章

1ある安息日あんそくにちのこと、食事しょくじをするために、あるパリサイのかしらのいえにはいってかれたが、人々ひとびとはイエスの様子ようすをうかがっていた。 2するとそこに、水腫すいしゅをわずらっているひとが、みまえにいた。 3イエスは律法りっぽう学者がくしゃやパリサイびとたちにむかってわれた、「安息日あんそくにちひとをいやすのは、ただしいことかどうか」。 4かれらはだまっていた。そこでイエスはそのひといていやしてやり、そしておかえしになった。 5それからかれらにわれた、「あなたがたのうちで、自分じぶんのむすこかうし井戸いどんだなら、安息日あんそくにちだからといって、すぐにげてやらないものがいるだろうか」。 6かれらはこれにたいしてかえ言葉ことばがなかった。

7きゃくまねかれたものたちが上座じょうざえらんでいる様子ようすをごらんになって、かれらに一つのたとえかたられた。 8こんえんまねかれたときには、上座じょうざにつくな。あるいは、あなたよりも身分みぶんたかひとまねかれているかもれない。 9その場合ばあい、あなたとそのひととをまねいたものがきて、『このかたにゆずってください』とうであろう。そのとき、あなたはって末座まつざにつくことになるであろう。 10むしろ、まねかれた場合ばあいには、末座まつざってすわりなさい。そうすれば、まねいてくれたひとがきて、『ともよ、上座じょうざほうへおすすみください』とうであろう。そのとき、あなたはせきともにするみんなのまえで、面目めんぼくをほどこすことになるであろう。 11おおよそ、自分じぶんたかくするものひくくされ、自分じぶんひくくするものたかくされるであろう」。

12また、イエスは自分じぶんまねいたひとわれた、「午餐ごさんまたは晩餐ばんさんせきもうける場合ばあいには、友人ゆうじん兄弟きょうだい親族しんぞく金持かねもちとなびとなどはばぬがよい。おそらくかれらもあなたをまねきかえし、それであなたは返礼へんれいけることになるから。 13むしろ、宴会えんかいもよお場合ばあいには、貧乏人びんぼうにん不具者ふぐしゃあしなえ、盲人もうじんなどをまねくがよい。 14そうすれば、かれらは返礼へんれいができないから、あなたはさいわいになるであろう。ただしい人々ひとびと復活ふっかつさいには、あなたはむくいられるであろう」。

15列席者れっせきしゃのひとりがこれをいてイエスに「かみくに食事しょくじをするひとは、さいわいです」とった。 16そこでイエスがわれた、「あるひと盛大せいだい晩餐ばんさんかいもよおして、おおぜいのひとまねいた。 17晩餐ばんさん時刻じこくになったので、まねいておいたひとたちのもとにしもべおくって、『さあ、おいでください。もう準備じゅんびができましたから』とわせた。 18ところが、みんな一様いちようことわりはじめた。最初さいしょひとは、『わたしは土地とちいましたので、ってなければなりません。どうぞ、おゆるしください』とった。 19ほかのひとは、『わたしは五ついうしいましたので、それをしらべにくところです。どうぞ、おゆるしください』、 20もうひとりのひとは、『わたしはつまをめとりましたので、まいることができません』とった。 21しもべかえってきて、以上いじょうこと主人しゅじん報告ほうこくした。するといえ主人しゅじんはおこってしもべった、『いますぐに、まち大通おおどおりや小道こみちって、貧乏人びんぼうにん不具者ふぐしゃ盲人もうじんあしなえなどを、ここへれてきなさい』。 22しもべった、『ご主人様しゅじんさまおおせのとおりにいたしましたが、まだせきがございます』。 23主人しゅじんしもべった、『みちやかきねのあたりにって、このいえがいっぱいになるように、人々ひとびと無理むりやりにひっぱってきなさい。 24あなたがたにってくが、まねかれたひとで、わたしの晩餐ばんさんにあずかるものはひとりもないであろう』」。

25おおぜいの群衆ぐんしゅうがついてきたので、イエスはかれらのほういてわれた、 26「だれでも、ちちははつま兄弟きょうだい姉妹しまい、さらに自分じぶんいのちまでもてて、わたしのもとにるのでなければ、わたしの弟子でしとなることはできない。 27自分じぶん十字架じゅうじかうてわたしについてるものでなければ、わたしの弟子でしとなることはできない。 28あなたがたのうちで、だれかが邸宅ていたくてようとおもうなら、それを仕上しあげるのにりるだけのかねっているかどうかをるため、まず、すわってその費用ひよう計算けいさんしないだろうか。 29そうしないと、土台どだいをすえただけで完成かんせいすることができず、ているみんなのひとが、 30『あのひとてかけたが、仕上しあげができなかった』とってあざわらうようになろう。 31また、どんなおうでも、ほかのおうたたかいをまじえるために場合ばあいには、まずして、こちらの一万人まんにんをもって、二万人まんにんひきいてかっててき対抗たいこうできるかどうか、かんがえてないだろうか。 32もし自分じぶんちからにあまれば、てきがまだとおくにいるうちに、使者ししゃおくって、もとめるであろう。 33それとおなじように、あなたがたのうちで、自分じぶん財産ざいさんをことごとくるものでなくては、わたしの弟子でしとなることはできない。 34しおいものだ。しかし、しおもききめがなくなったら、なにによって塩味しおあじりもどされようか。 35つちにも肥料ひりょうにもやくたず、そとてられてしまう。みみのあるものはくがよい」。

第一五章

1さて、取税人しゅぜいにん罪人つみびとたちがみな、イエスのはなしこうとして近寄ちかよってきた。 2するとパリサイびと律法りっぽう学者がくしゃたちがつぶやいて、「このひと罪人つみびとたちをむかえて一緒いっしょ食事しょくじをしている」とった。 3そこでイエスはかれらに、このたとえをおはなしになった、 4「あなたがたのうちに、百ぴきひつじっているものがいたとする。その一ぴきがいなくなったら、九十九ひき野原のはらのこしておいて、いなくなった一ぴきつけるまではさがあるかないであろうか。 5そしてつけたら、よろこんでそれを自分じぶんかたせ、 6いえかえってきて友人ゆうじんとなびとあつめ、『わたしと一緒いっしょよろこんでください。いなくなったひつじつけましたから』とうであろう。 7よくきなさい。それとおなじように、罪人つみびとがひとりでもあらためるなら、悔改くいあらためを必要ひつようとしない九十九にんただしいひとのためにもまさるおおきいよろこびが、てんにあるであろう。

8また、あるおんな銀貨ぎんかまいっていて、もしその一まいをなくしたとすれば、彼女かのじょはあかりをつけて家中いえじゅうき、それをつけるまでは注意深ちゅういぶかさがさないであろうか。 9そして、つけたなら、おんなともだちや近所きんじょおんなたちをあつめて、『わたしと一緒いっしょよろこんでください。なくした銀貨ぎんかつかりましたから』とうであろう。 10よくきなさい。それとおなじように、罪人つみびとがひとりでもあらためるなら、かみ御使みつかいたちのまえでよろこびがあるであろう」。

11またわれた、「あるひとに、ふたりのむすこがあった。 12ところが、おとうと父親ちちおやった、『ちちよ、あなたの財産ざいさんのうちでわたしがいただくぶんをください』。そこで、ちちはその身代しんだいをふたりにけてやった。 13それから幾日いくにちもたたないうちに、おとうと自分じぶんのものを全部ぜんぶとりまとめてとおところき、そこで放蕩ほうとうちくずして財産ざいさん使つかはたした。 14なにもかも浪費ろうひしてしまったのち、その地方ちほうにひどいききんがあったので、かれべることにもきゅうしはじめた。 15そこで、その地方ちほうのある住民じゅうみんのところにってせたところが、そのひとかれはたけにやってぶたわせた。 16かれは、ぶたべるいなごまめはらたしたいとおもうほどであったが、なにもくれるひとはなかった。 17そこでかれ本心ほんしんちかえってった、『ちちのところには食物しょくもつのありあまっている雇人やといにんおおぜいいるのに、わたしはここでえてのうとしている。 18って、ちちのところへかえって、こうおう、ちちよ、わたしはてんたいしても、あなたにむかっても、つみおかしました。 19もう、あなたのむすことばれる資格しかくはありません。どうぞ、雇人やといにんのひとり同様どうようにしてください』。 20そこでって、ちちのところへかけた。まだとおはなれていたのに、ちちかれをみとめ、あわれにおもってはしり、そのくびをだいて接吻せっぷんした。 21むすこはちちった、『ちちよ、わたしはてんたいしても、あなたにむかっても、つみおかしました。もうあなたのむすことばれる資格しかくはありません』。 22しかしちちしもべたちにいつけた、『さあ、はやく、最上さいじょう着物きものしてきてこのせ、指輪ゆびわにはめ、はきものをあしにはかせなさい。 23また、えたうしいてきてほふりなさい。べてたのしもうではないか。 24このむすこがんでいたのにかえり、いなくなっていたのにつかったのだから』。それから祝宴しゅくえんがはじまった。 25ところが、あにはたけにいたが、かえってきていえちかづくと、音楽おんがくおどりのおときこえたので、 26ひとりのしもべんで、『いったい、これは何事なにごとなのか』とたずねた。 27しもべこたえた、『あなたのご兄弟きょうだいがおかえりになりました。無事ぶじむかえたというので、父上ちちうええたうしをほふらせなさったのです』。 28あにはおこっていえにはいろうとしなかったので、ちちてきてなだめると、 29あにちちにむかってった、『わたしはなんねんもあなたにつかえて、一でもあなたのいつけにそむいたことはなかったのに、ともだちとたのしむためにやぎ一ぴきくださったことはありません。 30それだのに、遊女ゆうじょどもと一緒いっしょになって、あなたの身代しんだいいつぶしたこのあなたのかえってくると、そのためにえたうしをほふりなさいました』。 31するとちちった、『よ、あなたはいつもわたしと一緒いっしょにいるし、またわたしのものは全部ぜんぶあなたのものだ。 32しかし、このあなたのおとうとは、んでいたのにかえり、いなくなっていたのにつかったのだから、よろこいわうのはあたりまえである』」。

第一六章

1イエスはまた、弟子でしたちにわれた、「ある金持かねもちのところにひとりの家令かれいがいたが、かれ主人しゅじん財産ざいさん浪費ろうひしていると、ぐちをするものがあった。 2そこで主人しゅじんかれんでった、『あなたについていていることがあるが、あれはどうなのか。あなたの会計かいけい報告ほうこくしなさい。もう家令かれいをさせてくわけにはいかないから』。 3この家令かれいこころなかおもった、『どうしようか。主人しゅじんがわたしのしょくげようとしている。つちるにはちからがないし、ものごいするのはずかしい。 4そうだ、わかった。こうしておけば、しょくをやめさせられる場合ばあい人々ひとびとがわたしをそのいえむかえてくれるだろう』。 5それからかれは、主人しゅじん負債ふさいしゃをひとりびとりして、はじめのひとに、『あなたは、わたしの主人しゅじんにどれだけ負債ふさいがありますか』とたずねた。 6あぶらたるです』とこたえた。そこで家令かれいった、『ここにあなたの証書しょうしょがある。すぐそこにすわって、五十たるえなさい』。 7つぎに、もうひとりに、『あなたの負債ふさいはどれだけですか』とたずねると、『むぎこくです』とこたえた。これにたいして、『ここに、あなたの証書しょうしょがあるが、八十こくえなさい』とった。 8ところが主人しゅじんは、この不正ふせい家令かれい利口りこうなやりほうをほめた。このらはその時代じだいたいしては、ひかりらよりも利口りこうである。 9またあなたがたにうが、不正ふせいとみもちいてでも、自分じぶんのためにともだちをつくるがよい。そうすれば、とみくなった場合ばあい、あなたがたを永遠えいえんのすまいにむかえてくれるであろう。 10小事しょうじ忠実ちゅうじつひとは、大事だいじにも忠実ちゅうじつである。そして、小事しょうじ忠実ちゅうじつひと大事だいじにも忠実ちゅうじつである。 11だから、もしあなたがたが不正ふせいとみについて忠実ちゅうじつでなかったら、だれがしんとみまかせるだろうか。 12また、もしほかのひとのものについて忠実ちゅうじつでなかったら、だれがあなたがたのものをあたえてくれようか。 13どのしもべでも、ふたりの主人しゅじんつかえることはできない。一方いっぽうにくんで他方たほうあいし、あるいは、一方いっぽうしたしんで他方たほうをうとんじるからである。あなたがたは、かみとみとにつかえることはできない」。

14よくふかいパリサイびとたちが、すべてこれらの言葉ことばいて、イエスをあざわらった。 15そこでかれらにむかってわれた、「あなたがたは、人々ひとびとまえ自分じぶんただしいとするひとたちである。しかし、かみはあなたがたのこころをごぞんじである。人々ひとびとあいだたっとばれるものは、かみのみまえではみきらわれる。 16律法りっぽう預言者よげんしゃとはヨハネのときまでのものである。それ以来いらいかみくにつたえられ、人々ひとびとみなこれに突入とつにゅうしている。 17しかし、律法りっぽう一画いっかくちるよりは、天地てんちほろびるほうが、もっとたやすい。 18すべて自分じぶんつましておんなをめとるものは、姦淫かんいんおこなうものであり、また、おっとからされたおんなをめとるものも、姦淫かんいんおこなうものである。

19ある金持かねもちがいた。かれむらさきころもほそぬのて、毎日まいにちぜいたくにあそくらしていた。 20ところが、ラザロという貧乏人びんぼうにん全身ぜんしんできものでおおわれて、この金持かねもち玄関げんかんまえにすわり、 21その食卓しょくたくからちるものでえをしのごうとのぞんでいた。そのうえいぬがきてかれのできものをなめていた。 22この貧乏人びんぼうにんがついにに、御使みつかいたちにれられてアブラハムのふところにおくられた。金持かねもちんでほうむられた。 23そして黄泉よみにいてくるしみながら、をあげると、アブラハムとそのふところにいるラザロとが、はるかにえた。 24そこでこえをあげてった、『ちち、アブラハムよ、わたしをあわれんでください。ラザロをおつかわしになって、その指先ゆびさきみずでぬらし、わたしのしたやさせてください。わたしはこの火炎かえんなかくるしみもだえています』。 25アブラハムがった、『よ、おもすがよい。あなたは生前せいぜんよいものをけ、ラザロのほうわるいものをけた。しかしいまここでは、かれなぐさめられ、あなたはくるしみもだえている。 26そればかりか、わたしたちとあなたがたとのあいだにはおおきなふちがおいてあって、こちらからあなたがたのほうわたろうとおもってもできないし、そちらからわたしたちのほうえてることもできない』。 27そこで金持かねもちった、『ちちよ、ではおねがいします。わたしのちちいえへラザロをつかわしてください。 28わたしに五にん兄弟きょうだいがいますので、こんなくるしいところることがないように、かれらに警告けいこくしていただきたいのです』。 29アブラハムはった、『かれらにはモーセと預言者よげんしゃとがある。それにくがよかろう』。 30金持かねもちった、『いえいえ、ちちアブラハムよ、もし死人しにんなかからだれかが兄弟きょうだいたちのところへってくれましたら、かれらはあらためるでしょう』。 31アブラハムはった、『もしかれらがモーセと預言者よげんしゃとにみみかたむけないなら、死人しにんなかからよみがえってくるものがあっても、かれらはそのすすめをれはしないであろう』」。

第一七章

1イエスは弟子でしたちにわれた、「つみ誘惑ゆうわくることはけられない。しかし、それをきたらせるものは、わざわいである。 2これらのちいさいもののひとりをつみ誘惑ゆうわくするよりは、むしろ、ひきうすをくびにかけられてうみれられたほうが、ましである。 3あなたがたは、自分じぶん注意ちゅういしていなさい。もしあなたの兄弟きょうだいつみおかすなら、かれをいさめなさい。そしてあらためたら、ゆるしてやりなさい。 4もしあなたにたいして一にちに七つみおかし、そして七あらためます』とってあなたのところへかえってくれば、ゆるしてやるがよい」。

5使徒しとたちはしゅに「わたしたちの信仰しんこうしてください」とった。 6そこでしゅわれた、「もし、からしだねつぶほどの信仰しんこうがあるなら、このくわに、『してうみわれ』とったとしても、その言葉ことばどおりになるであろう。 7あなたがたのうちのだれかに、耕作こうさく牧畜ぼくちくかをするしもべがあるとする。そのしもべはたけからかえってたとき、かれに『すぐきて、食卓しょくたくにつきなさい』とうだろうか。 8かえって、『夕食ゆうしょく用意よういをしてくれ。そしてわたしがいをするあいだ、おびをしめて給仕きゅうじをしなさい。そのあとで、いをするがよい』と、うではないか。 9しもべめいじられたことをしたからといって、主人しゅじんかれ感謝かんしゃするだろうか。 10同様どうようにあなたがたも、めいじられたことをみなしてしまったとき、『わたしたちはふつつかなしもべです。すべきことをしたにぎません』といなさい」。

11イエスはエルサレムへかれるとき、サマリヤとガリラヤとのあいだとおられた。 12そして、あるむらにはいられると、十にんのらい病人びょうにん出会であわれたが、かれらはとおくのほうちとどまり、 13こえりあげて、「イエスさま、わたしたちをあわれんでください」とった。 14イエスはかれらをごらんになって、「祭司さいしたちのところにって、からだをせなさい」とわれた。そして、途中とちゅうかれらはきよめられた。 15そのうちのひとりは、自分じぶんがいやされたことをり、大声おおごえかみをほめたたえながらかえってきて、 16イエスのあしもとにひれして感謝かんしゃした。これはサマリヤびとであった。 17イエスはかれにむかってわれた、「きよめられたのは、十にんではなかったか。ほかの九にんは、どこにいるのか。 18かみをほめたたえるためにかえってきたものは、この他国たこくじんのほかにはいないのか」。 19それから、そのひとわれた、「ってきなさい。あなたの信仰しんこうがあなたをすくったのだ」。

20かみくにはいつるのかと、パリサイびとたずねたので、イエスはこたえてわれた、「かみくには、られるかたちでるものではない。 21また『よ、ここにある』『あそこにある』などともえない。かみくには、じつにあなたがたのただなかにあるのだ」。

22それから弟子でしたちにわれた、「あなたがたは、ひとを一にちでもたいとねがってもることができないときるであろう。 23人々ひとびとはあなたがたに、『よ、あそこに』『よ、ここに』とうだろう。しかし、そちらへくな、かれらのあとをうな。 24いなずまがてんはしからひかりてんはしへとひらめきわたるように、ひともそのにはおなじようであるだろう。 25しかし、かれはまずおおくのくるしみをけ、またこの時代じだい人々ひとびとてられねばならない。 26そして、ノアのときにあったように、ひとときにも同様どうようなことがおこるであろう。 27ノアが箱舟はこぶねにはいるまで、人々ひとびとい、み、めとり、とつぎなどしていたが、そこへ洪水こうずいおそってきて、かれらをことごとくほろぼした。 28ロトのときにもおなじようなことがおこった。人々ひとびとい、み、い、り、え、てなどしていたが、 29ロトがソドムからったに、てんから硫黄いおうとがってきて、かれらをことごとくほろぼした。 30ひとあらわれるも、ちょうどそれと同様どうようであろう。 31そのには、屋上おくじょうにいるものは、自分じぶんものいえなかにあっても、りにおりるな。はたけにいるものおなじように、あとへもどるな。 32ロトのつまのことをおもしなさい。 33自分じぶんいのちすくおうとするものは、それをうしない、それをうしなうものは、たもつのである。 34あなたがたにっておく。その、ふたりのおとこが一つ寝床ねどこにいるならば、ひとりはられ、のひとりはのこされるであろう。 35ふたりのおんな一緒いっしょにうすをひいているならば、ひとりはられ、のひとりはのこされるであろう。〔 36ふたりのおとこはたけにおれば、ひとりはられ、のひとりはのこされるであろう〕」。 37弟子でしたちは「しゅよ、それはどこであるのですか」とたずねた。するとイエスはわれた、「死体したいのあるところには、またはげたかがあつまるものである」。

第一八章

1また、イエスは失望しつぼうせずにつねいのるべきことを、人々ひとびとたとえおしえられた。 2「あるまちに、かみおそれず、ひとひとともおもわぬ裁判官さいばんかんがいた。 3ところが、そのおなまちにひとりのやもめがいて、かれのもとにたびたびきて、『どうぞ、わたしをうったえるものをさばいて、わたしをまもってください』とねがいつづけた。 4かれはしばらくのあいだききれないでいたが、そののち、こころのうちでかんがえた、『わたしはかみをもおそれず、ひとひとともおもわないが、 5このやもめがわたしに面倒めんどうをかけるから、彼女かのじょのためになる裁判さいばんをしてやろう。そうしたら、えずやってきてわたしをなやますことがなくなるだろう』」。 6そこでしゅわれた、「この不義ふぎ裁判官さいばんかんっていることをいたか。 7ましてかみは、日夜にちやさけもとめる選民せんみんのために、ただしいさばきをしてくださらずにながあいだそのままにしておかれることがあろうか。 8あなたがたにっておくが、かみはすみやかにさばいてくださるであろう。しかし、ひとるとき、地上ちじょう信仰しんこうられるであろうか」。

9自分じぶん義人ぎじんだと自任じにんして他人たにん見下みさげているひとたちにたいして、イエスはまたこのたとえをおはなしになった。 10「ふたりのひといのるためにみやのぼった。そのひとりはパリサイびとであり、もうひとりは取税人しゅぜいにんであった。 11パリサイびとって、ひとりでこういのった、『かみよ、わたしはほかのひとたちのような貪欲どんよくもの不正ふせいもの姦淫かんいんをするものではなく、また、この取税人しゅぜいにんのような人間にんげんでもないことを感謝かんしゃします。 12わたしは一しゅうに二断食だんじきしており、ぜん収入しゅうにゅうの十ぶんの一をささげています』。 13ところが、取税人しゅぜいにんとおはなれてち、てんにむけようともしないで、むねちながらった、『神様かみさま罪人つみびとのわたしをおゆるしください』と。 14あなたがたにっておく。かみとされて自分じぶんいえかえったのは、この取税人しゅぜいにんであって、あのパリサイびとではなかった。おおよそ、自分じぶんたかくするものひくくされ、自分じぶんひくくするものたかくされるであろう」。

15イエスにさわっていただくために、人々ひとびとおさらをみもとにれてきた。ところが、弟子でしたちはそれをて、かれらをたしなめた。 16するとイエスはおさらをせてわれた、「おさらをわたしのところにるままにしておきなさい、めてはならない。かみくにはこのようなものくにである。 17よくいておくがよい。だれでもおさのようにかみくにけいれるものでなければ、そこにはいることはけっしてできない」。

18また、ある役人やくにんがイエスにたずねた、「よきよ、なにをしたら永遠えいえん生命せいめいけられましょうか」。 19イエスはわれた、「なぜわたしをよきものうのか。かみひとりのほかによいものはいない。 20いましめはあなたのっているとおりである、『姦淫かんいんするな、ころすな、ぬすむな、偽証ぎしょうてるな、ちちははとをうやまえ』」。 21するとかれった、「それらのことはみな、ちいさいときからまもっております」。 22イエスはこれをいてわれた、「あなたのすることがまだ一つのこっている。っているものをみなはらって、まずしい人々ひとびとけてやりなさい。そうすれば、てんたからつようになろう。そして、わたしにしたがってきなさい」。 23かれはこの言葉ことばいて非常ひじょうかなしんだ。大金持おおがねもちであったからである。 24イエスはかれ様子ようすわれた、「財産ざいさんのあるものかみくににはいるのはなんとむずかしいことであろう。 25んでいるものかみくににはいるよりは、らくだがはりあなとおほうが、もっとやさしい」。 26これをいた人々ひとびとが、「それでは、だれがすくわれることができるのですか」とたずねると、 27イエスはわれた、「ひとにはできないことも、かみにはできる」。 28ペテロがった、「ごらんなさい、わたしたちは自分じぶんのものをてて、あなたにしたがいました」。 29イエスはわれた、「よくいておくがよい。だれでもかみくにのために、いえつま兄弟きょうだい両親りょうしんてたものは、 30かならずこの時代じだいではそのいくばいもをけ、また、きたるべきでは永遠えいえん生命せいめいけるのである」。

31イエスは十二弟子でしせてわれた、「よ、わたしたちはエルサレムへのぼってくが、ひとについて預言者よげんしゃたちがしるしたことは、すべて成就じょうじゅするであろう。 32ひと異邦人いほうじんきわたされ、あざけられ、はずかしめをけ、つばきをかけられ、 33また、むちたれてから、ついにころされ、そして三によみがえるであろう」。 34弟子でしたちには、これらのことが何一なにひとつわからなかった。この言葉ことばかれらにかくされていたので、イエスのわれたこと理解りかいできなかった。

35イエスがエリコにちかづかれたとき、ある盲人もうじんみちばたにすわって、ものごいをしていた。 36群衆ぐんしゅうとおぎるおとみみにして、かれ何事なにごとがあるのかとたずねた。 37ところが、ナザレのイエスがおとおりなのだとかされたので、 38こえをあげて、「ダビデのイエスよ、わたしをあわれんでください」とった。 39先頭せんとう人々ひとびとかれをしかってだまらせようとしたが、かれはますますはげしくさけびつづけた、「ダビデのよ、わたしをあわれんでください」。 40そこでイエスはちどまって、そのものれてるように、とおめいじになった。かれちかづいたとき、 41「わたしになにをしてほしいのか」とおたずねになると、「しゅよ、えるようになることです」とこたえた。 42そこでイエスはわれた、「えるようになれ。あなたの信仰しんこうがあなたをすくった」。 43するとかれは、たちまちえるようになった。そしてかみをあがめながらイエスにしたがってった。これをて、人々ひとびとはみなかみをさんびした。

第一九章

1さて、イエスはエリコにはいって、そのまちをおとおりになった。 2ところが、そこにザアカイというひとがいた。このひと取税人しゅぜいにんのかしらで、金持かねもちであった。 3かれは、イエスがどんなひとたいとおもっていたが、ひくかったので、群衆ぐんしゅうにさえぎられてることができなかった。 4それでイエスをるために、まえほうはしってって、いちじくくわのぼった。そこをとおられるところだったからである。 5イエスは、その場所ばしょにこられたとき、うえあげてわれた、「ザアカイよ、いそいでくだりてきなさい。きょう、あなたのいえまることにしているから」。 6そこでザアカイはいそいでおりてきて、よろこんでイエスをむかれた。 7人々ひとびとはみな、これをてつぶやき、「かれ罪人つみびといえにはいってきゃくとなった」とった。 8ザアカイはってしゅった、「しゅよ、わたしはちかって自分じぶん財産ざいさん半分はんぶん貧民ひんみんほどこします。また、もしだれかから不正ふせい取立とりたてをしていましたら、それを四ばいにしてかえします」。 9イエスはかれわれた、「きょう、すくいがこのいえにきた。このひともアブラハムのなのだから。 10ひとがきたのは、うしなわれたものをたずしてすくうためである」。

11人々ひとびとがこれらの言葉ことばいているときに、イエスはなお一つのたとえをおはなしになった。それはエルサレムにちかづいてこられたし、また人々ひとびとかみくにはたちまちあらわれるとおもっていたためである。 12それでわれた、「ある身分みぶんたかひとが、王位おういけてかえってくるためにとおところ旅立たびだつことになった。 13そこで十にんしもべび十ミナをわたしてった、『わたしがかえってるまで、これで商売しょうばいをしなさい』。 14ところが、本国ほんごく住民じゅうみんかれにくんでいたので、あとから使者ししゃをおくって、『このひとおうになるのをわれわれはのぞんでいない』とわせた。 15さて、かれ王位おういけてかえってきたとき、だれがどんなもうけをしたかをろうとして、かねわたしておいたしもべたちをんでこさせた。 16最初さいしょものすすった、『ご主人様しゅじんさま、あなたの一ミナで十ミナをもうけました』。 17主人しゅじんった、『よいしもべよ、うまくやった。あなたはちいさいこと忠実ちゅうじつであったから、十のまち支配しはいさせる』。 18つぎものがきてった、『ご主人様しゅじんさま、あなたの一ミナで五ミナをつくりました』。 19そこでこのものにも、『では、あなたは五つのまちのかしらになれ』とった。 20それから、もうひとりのものがきてった、『ご主人様しゅじんさま、さあ、ここにあなたの一ミナがあります。わたしはそれをふくさにつつんで、しまっておきました。 21あなたはきびしいほうで、おあずけにならなかったものをりたて、おまきにならなかったものをひとなので、おそろしかったのです』。 22かれった、『わるしもべよ、わたしはあなたのったその言葉ことばであなたをさばこう。わたしがきびしくて、あずけなかったものをりたて、まかなかったものを人間にんげんだと、っているのか。 23では、なぜわたしのかね銀行ぎんこうれなかったのか。そうすれば、わたしがかえってきたとき、そのかね利子りし一緒いっしょしたであろうに』。 24そして、そばにっていた人々ひとびとに、『その一ミナをかれからげて、十ミナをっているものあたえなさい』とった。 25かれらはった、『ご主人様しゅじんさま、あのひとすでに十ミナをっています』。 26『あなたがたにうが、おおよそっているひとには、なおあたえられ、っていないひとからは、っているものまでもげられるであろう。 27しかしわたしがおうになることをこのまなかったあのてきどもを、ここにひっぱってきて、わたしのまえころせ』」。

28イエスはこれらのことをったのち、先頭せんとうち、エルサレムへのぼってかれた。 29そしてオリブというやま沿ったベテパゲとベタニヤにちかづかれたとき、ふたりの弟子でしをつかわしてわれた、 30こうのむらきなさい。そこにはいったら、まだだれもったことのないろばのがつないであるのをるであろう。それをいて、いてきなさい。 31もしだれかが『なぜくのか』とうたら、『しゅがおようなのです』と、そういなさい」。 32そこで、つかわされたものたちがってると、はたして、われたとおりであった。 33かれらが、そのろばのいていると、そのぬしたちが、「なぜろばのくのか」とったので、 34しゅがおようなのです」とこたえた。 35そしてそれをイエスのところにいてきて、そのろばのうえ自分じぶんたちの上着うわぎをかけてイエスをおせした。 36そしてすすんでかれると、人々ひとびと自分じぶんたちの上着うわぎみちいた。 37いよいよオリブやまくだみちあたりにちかづかれると、おおぜいの弟子でしたちはみなよろこんで、かれらがたすべてのちからあるみわざについて、こえたからかにかみをさんびしていはじめた、
38しゅ御名みなによってきたるおうに、
祝福しゅくふくあれ。
てんには平和へいわ
いとたかきところには栄光えいこうあれ」。
39ところが、群衆ぐんしゅうなかにいたあるパリサイびとたちがイエスにった、「先生せんせい、あなたの弟子でしたちをおしかりください」。 40こたえてわれた、「あなたがたにうが、もしこのひとたちがだまれば、いしさけぶであろう」。

41いよいよみやこちかくにきて、それがえたとき、そのためにいてわれた、 42「もしおまえも、このに、平和へいわをもたらすみちってさえいたら……しかし、それはいまおまえのかくされている。 43いつかは、てき周囲しゅういるいきずき、おまえをりかこんで、四方しほうからせまり、 44おまえとそのうちにいるらとをたおし、城内じょうないの一つのいしいしうえのこしてかないるであろう。それは、おまえがかみのおとずれのときらないでいたからである」。 45それからみやにはいり、商売人しょうばいにんたちをしはじめて、 46かれらにわれた、「『わがいのりいえであるべきだ』といてあるのに、あなたがたはそれを盗賊とうぞくにしてしまった」。

47イエスは毎日まいにちみやおしえておられた。祭司長さいしちょう律法りっぽう学者がくしゃまた民衆みんしゅう重立おもだったものたちはイエスをころそうとおもっていたが、 48民衆みんしゅうがみな熱心ねっしんにイエスにみみかたむけていたので、のくだしようがなかった。

第二〇章

1ある、イエスがみや人々ひとびとおしえ、福音ふくいんべておられると、祭司長さいしちょう律法りっぽう学者がくしゃたちが、長老ちょうろうたちととも近寄ちかよってきて、 2イエスにった、「なに権威けんいによってこれらのことをするのですか。そうする権威けんいをあなたにあたえたのはだれですか、わたしたちにってください」。 3そこで、イエスはこたえてわれた、「わたしも、ひとことたずねよう。それにこたえてほしい。 4ヨハネのバプテスマは、てんからであったか、ひとからであったか」。 5かれらはたがいろんじてった、「もしてんからだとえば、では、なぜかれしんじなかったのか、とイエスはうだろう。 6しかし、もしひとからだとえば、民衆みんしゅうはみな、ヨハネを預言者よげんしゃだとしんじているから、わたしたちをいしつだろう」。 7それでかれらは「どこからか、りません」とこたえた。 8イエスはこれにたいしてわれた、「わたしもなに権威けんいによってこれらのことをするのか、あなたがたにうまい」。

9そこでイエスはつぎたとえ民衆みんしゅうかたされた、「あるひとがぶどうえんつくって農夫のうふたちにし、ながたびた。 10季節きせつになったので、農夫のうふたちのところへ、ひとりのしもべおくって、ぶどうえん収穫しゅうかくまえさせようとした。ところが、農夫のうふたちは、そのしもべふくろだたきにし、からかえらせた。 11そこでかれはもうひとりのしもべおくった。かれらはそのしもべふくろだたきにし、侮辱ぶじょくくわえて、からかえらせた。 12そこでさらに三にんものおくったが、かれらはこのものも、きずわせてした。 13ぶどうえん主人しゅじんった、『どうしようか。そうだ、わたしの愛子あいしをつかわそう。これなら、たぶんうやまってくれるだろう』。 14ところが、農夫のうふたちはかれると、『あれはあとりだ。あれをころしてしまおう。そうしたら、その財産ざいさんはわれわれのものになるのだ』とたがいはない、 15かれをぶどうえんそとしてころした。そのさい、ぶどうえん主人しゅじんは、かれらをどうするだろうか。 16かれてきて、この農夫のうふたちをころし、ぶどうえん人々ひとびとあたえるであろう」。人々ひとびとはこれをいて、「そんなことがあってはなりません」とった。 17そこで、イエスはかれらをつめてわれた、「それでは、
いえつくりらのてたいし
すみのかしらいしになった』
いてあるのは、どういうことか。 18すべてそのいしうえちるものくだかれ、それがだれかのうえちかかるなら、そのひとはこなみじんにされるであろう」。

19このとき、律法りっぽう学者がくしゃたちや祭司長さいしちょうたちはイエスにをかけようとおもったが、民衆みんしゅうおそれた。いまのたとえ自分じぶんたちにててかたられたのだと、さとったからである。 20そこで、かれらは機会きかいをうかがい、義人ぎじんよそおうまわしものどもをおくって、イエスを総督そうとく支配しはい権威けんいとにわたすため、その言葉ことばじりをとらえさせようとした。 21かれらはたずねてった、「先生せんせい、わたしたちは、あなたのかたおしえられることがただしく、また、あなたはへだてをなさらず、真理しんりもとづいてかみみちおしえておられることを、承知しょうちしています。 22ところで、カイザルにみつぎおさめてよいでしょうか、いけないでしょうか」。 23イエスはかれらの悪巧わるだくみを見破みやぶってわれた、 24「デナリをせなさい。それにあるのは、だれの肖像しょうぞう、だれの記号きごうなのか」。「カイザルのです」と、かれらがこたえた。 25するとイエスはかれらにわれた、「それなら、カイザルのものはカイザルに、かみのものはかみかえしなさい」。 26そこでかれらは、民衆みんしゅうまえでイエスの言葉ことばじりをとらえることができず、そのこたえ驚嘆きょうたんして、だまってしまった。

27復活ふっかつということはないとっていたサドカイびとのあるものたちが、イエスに近寄ちかよってきて質問しつもんした、 28先生せんせい、モーセは、わたしたちのためにこういています、『もしあるひとあにつまをめとり、がなくてんだなら、おとうとはこのおんなをめとって、あにのためにをもうけねばならない』。 29ところで、ここに七にん兄弟きょうだいがいました。長男ちょうなんつまをめとりましたが、がなくてに、 30そして次男じなん三男さんなんと、次々つぎつぎに、そのおんなをめとり、 31にんとも同様どうように、をもうけずににました。 32のちに、そのおんなにました。 33さて、復活ふっかつときには、このおんなは七にんのうち、だれのつまになるのですか。七にんとも彼女かのじょつまにしたのですが」。 34イエスはかれらにわれた、「このらは、めとったり、とついだりするが、 35かのにはいって死人しにんからの復活ふっかつにあずかるにふさわしいものたちは、めとったり、とついだりすることはない。 36かれらは天使てんしひとしいものであり、また復活ふっかつにあずかるゆえに、かみでもあるので、もうぬことはありないからである。 37死人しにんがよみがえることは、モーセもしばへんで、しゅを『アブラハムのかみ、イサクのかみ、ヤコブのかみ』とんで、これをしめした。 38かみんだものかみではなく、きているものかみである。ひとはみなかみきるものだからである」。 39律法りっぽう学者がくしゃのうちのある人々ひとびとこたえてった、「先生せんせいおおせのとおりです」。 40かれらはそれ以上いじょうなにもあえていかけようとしなかった。

41イエスはかれらにわれた、「どうして人々ひとびとはキリストをダビデのだとうのか。 42ダビデ自身じしん詩篇しへんなかっている、
しゅはわがしゅおおせになった、
43あなたのてきをあなたのあしだいとするときまでは、
わたしのみぎしていなさい』。
44このように、ダビデはキリストをしゅんでいる。それなら、どうしてキリストはダビデのであろうか」。

45民衆みんしゅうがみないているとき、イエスは弟子でしたちにわれた、 46律法りっぽう学者がくしゃをつけなさい。かれらはながころもあるくのをこのみ、広場ひろばでの敬礼けいれい会堂かいどう上席じょうせき宴会えんかい上座じょうざをよろこび、 47やもめたちのいえたおし、えのためにながいのりをする。かれらはもっときびしいさばきをけるであろう」。

第二一章

1イエスはをあげて、金持かねもちたちがさいせんはこ献金けんきんれるのをられ、 2また、あるまずしいやもめが、レプタ二つをれるのを 3われた、「よくきなさい。あのまずしいやもめはだれよりもたくさんれたのだ。 4これらのひとたちはみな、ありあまるなかから献金けんきんれたが、あの婦人ふじんは、そのとぼしいなかから、っている生活せいかつ全部ぜんぶれたからである」。

5ある人々ひとびとが、見事みごといし奉納物ほうのうぶつとでみやかざられていることをはなしていたので、イエスはわれた、 6「あなたがたはこれらのものをながめているが、そのいし一つでもくずされずに、いしうえのこることもなくなるが、るであろう」。 7そこでかれらはたずねた、「先生せんせい、では、いつそんなことがおこるのでしょうか。またそんなことがおこるような場合ばあいには、どんな前兆ぜんちょうがありますか」。 8イエスがわれた、「あなたがたは、まどわされないようにをつけなさい。おおくのものがわたしののってあらわれ、自分じぶんがそれだとか、ときちかづいたとか、うであろう。かれらについてくな。 9戦争せんそう騒乱そうらんとのうわさをくときにも、おじおそれるな。こうしたことはまずおこらねばならないが、おわりはすぐにはこない」。

10それからかれらにわれた、「たみたみに、くにくに敵対てきたいしてがるであろう。 11まただい地震じしんがあり、あちこちに疫病えきびょうやききんがおこり、いろいろおそろしいことやてんからのものすごい前兆ぜんちょうがあるであろう。 12しかし、これらのあらゆる出来事できごとのあるまえに、人々ひとびとはあなたがたにをかけて迫害はくがいをし、会堂かいどうごくわたし、わたしののゆえにおう総督そうとくまえにひっぱってくであろう。 13それは、あなたがたがあかしをする機会きかいとなるであろう。 14だから、どう答弁とうべんしようかと、まえもってかんがえておかないことにこころめなさい。 15あなたの反対者はんたいしゃのだれもが抗弁こうべん否定ひていもできないような言葉ことば知恵ちえとを、わたしがさづけるから。 16しかし、あなたがたは両親りょうしん兄弟きょうだい親族しんぞく友人ゆうじんにさえ裏切うらぎられるであろう。また、あなたがたのなかころされるものもあろう。 17また、わたしののゆえにすべてのひとにくまれるであろう。 18しかし、あなたがたのかみ一すじでもうしなわれることはない。 19あなたがたはしのぶことによって、自分じぶんたましいをかちるであろう。

20エルサレムが軍隊ぐんたい包囲ほういされるのをたならば、そのときは、その滅亡めつぼうちかづいたとさとりなさい。 21そのとき、ユダヤにいる人々ひとびとやまげよ。市中しちゅうにいるものは、そこからくがよい。また、いなかにいるもの市内しないにはいってはいけない。 22それは、聖書せいしょにしるされたすべてのこと実現じつげんする刑罰けいばつであるからだ。 23そのには、身重みおもおんな乳飲ちのをもつおんなとは、不幸ふこうである。地上ちじょうにはおおきな苦難くなんがあり、このたみにはみいかりがのぞみ、 24かれらはつるぎのたおれ、またとらえられて諸国しょこくきゆかれるであろう。そしてエルサレムは、異邦人いほうじん時期じきちるまで、かれらにみにじられているであろう。 25またつきほしとに、しるしがあらわれるであろう。そして、地上ちじょうでは、しょ国民こくみんなやみ、うみ大波おおなみとのとどろきにおじまどい、 26人々ひとびと世界せかいおころうとすることおもい、恐怖きょうふ不安ふあん気絶きぜつするであろう。もろもろの天体てんたいうごかされるからである。 27そのとき、おおいなるちから栄光えいこうとをもって、ひとくもってるのを、人々ひとびとるであろう。 28これらのことおこりはじめたら、おこあたまをもたげなさい。あなたがたのすくいちかづいているのだから」。

29それから一つのたとえはなされた、「いちじくのを、またすべてのなさい。 30はやせば、あなたがたはそれをて、なつがすでにちかいと、自分じぶんづくのである。 31このようにあなたがたも、これらのことおこるのをたなら、かみくにちかいのだとさとりなさい。 32よくいておきなさい。これらのことが、ことごとくおこるまでは、この時代じだいほろびることがない。 33天地てんちほろびるであろう。しかしわたしの言葉ことばけっしてほろびることがない。

34あなたがたが放縦ほうじゅうや、泥酔でいすいや、わずらいのためにこころにぶっているうちに、おもいがけないとき、そのがわなのようにあなたがたをとらえることがないように、よく注意ちゅういしていなさい。 35その全面ぜんめんむすべてのひとのぞむのであるから。 36これらのおころうとしているすべてのことからのがれて、ひとまえつことができるように、えずをさましていのっていなさい」。

37イエスはひるのあいだはみやおしえ、よるにはってオリブというやまをすごしておられた。 38民衆みんしゅうはみな、みおしえこうとして、いつもあさはやみやき、イエスのもとにあつまった。

第二二章

1さて、過越すぎこしといわれている除酵祭じょこうさいちかづいた。 2祭司長さいしちょうたちや律法りっぽう学者がくしゃたちは、どうかしてイエスをころそうとはかっていた。民衆みんしゅうおそれていたからである。

3そのとき、十二弟子でしのひとりで、イスカリオテとばれていたユダに、サタンがはいった。 4すなわち、かれ祭司長さいしちょうたちや宮守みやもりがしらたちのところへって、どうしてイエスをかれらにわたそうかと、その方法ほうほうについて協議きょうぎした。 5かれらはよろこんで、ユダにかねあたえる取決とりきめをした。 6ユダはそれを承諾しょうだくした。そして、群衆ぐんしゅうのいないときにイエスをわたそうと、機会きかいをねらっていた。

7さて、過越すぎこし小羊こひつじをほふるべき除酵祭じょこうさいがきたので、 8イエスはペテロとヨハネとを使つかいにしてわれた、「って、過越すぎこし食事しょくじができるように準備じゅんびをしなさい」。 9かれらはった、「どこに準備じゅんびをしたらよいのですか」。 10イエスはわれた、「市内しないにはいったら、みずがめをっているおとこ出会であうであろう。そのひとがはいるいえまでついてって、 11そのいえ主人しゅじんいなさい、『弟子でしたちと一緒いっしょ過越すぎこし食事しょくじをする座敷ざしきはどこか、と先生せんせいっておられます』。 12すると、その主人しゅじんせきととのえられた二かい広間ひろませてくれるから、そこに用意よういをしなさい」。 13弟子でしたちはってみると、イエスがわれたとおりであったので、過越すぎこし食事しょくじ用意よういをした。

14時間じかんになったので、イエスは食卓しょくたくにつかれ、使徒しとたちもともせきについた。 15イエスはかれらにわれた、「わたしはくるしみをけるまえに、あなたがたとこの過越すぎこし食事しょくじをしようと、せつのぞんでいた。 16あなたがたにってくが、かみくに過越すぎこし成就じょうじゅするときまでは、わたしは二と、この過越すぎこし食事しょくじをすることはない」。 17そしてさかずきり、感謝かんしゃしてわれた、「これをって、たがいけてめ。 18あなたがたにっておくが、いまからのちかみくにるまでは、わたしはぶどうのからつくったものを、いっさいまない」。 19またパンをり、感謝かんしゃしてこれをさき、弟子でしたちにあたえてわれた、「これは、あなたがたのためにあたえるわたしのからだである。わたしを記念きねんするため、このようにおこないなさい」。 20食事しょくじののち、さかずきおなようにしてわれた、「このさかずきは、あなたがたのためにながすわたしのてられるあたらしい契約けいやくである。 21しかし、そこに、わたしを裏切うらぎものが、わたしと一緒いっしょ食卓しょくたくいている。 22ひとさだめられたとおりに、ってく。しかしひと裏切うらぎるそのひとは、わざわいである」。 23弟子でしたちは、自分じぶんたちのうちのだれが、そんなことをしようとしているのだろうと、たがいろんじはじめた。

24それから、自分じぶんたちのなかでだれがいちばんえらいだろうかとって、争論そうろんかれらのあいだに、おこった。 25そこでイエスがわれた、「異邦いほうおうたちはそのたみうえ君臨くんりんし、また、権力けんりょくをふるっているものたちは恩人おんじんばれる。 26しかし、あなたがたは、そうであってはならない。かえって、あなたがたのなかでいちばんえらひとはいちばんわかもののように、指導しどうするひとつかえるもののようになるべきである。 27食卓しょくたくにつくひと給仕きゅうじするものと、どちらがえらいのか。食卓しょくたくにつくひとほうではないか。しかし、わたしはあなたがたのなかで、給仕きゅうじをするもののようにしている。 28あなたがたは、わたしの試錬しれんのあいだ、わたしと一緒いっしょ最後さいごまでしのんでくれたひとたちである。 29それで、わたしのちちくに支配しはいをわたしにゆだねてくださったように、わたしもそれをあなたがたにゆだね、 30わたしのくに食卓しょくたくについていをさせ、またくらいしてイスラエルの十二の部族ぶぞくをさばかせるであろう。 31シモン、シモン、よ、サタンはあなたがたをむぎのようにふるいにかけることをねがってゆるされた。 32しかし、わたしはあなたの信仰しんこうがなくならないように、あなたのためにいのった。それで、あなたがなおったときには、兄弟きょうだいたちをちからづけてやりなさい」。 33シモンがった、「しゅよ、わたしはごくにでも、またいたるまでも、あなたとご一緒いっしょ覚悟かくごです」。 34するとイエスがわれた、「ペテロよ、あなたにっておく。きょう、にわとりくまでに、あなたは三わたしをらないとうだろう」。

35そしてかれらにわれた、「わたしが財布さいふふくろもくつもたせずにあなたがたをつかわしたとき、なにかこまったことがあったか」。かれらは、「いいえ、なにもありませんでした」とこたえた。 36そこでわれた、「しかしいまは、財布さいふのあるものは、それをってけ。ふくろ同様どうようってけ。また、つるぎのないものは、自分じぶん上着うわぎって、それをうがよい。 37あなたがたにうが、『かれ罪人つみびとのひとりにかぞえられた』としるしてあることは、わたしのしとげられねばならない。そうだ、わたしにかかわることは成就じょうじゅしている」。 38弟子でしたちがった、「しゅよ、ごらんなさい、ここにつるぎが二りございます」。イエスはわれた、「それでよい」。

39イエスはて、いつものようにオリブやまかれると、弟子でしたちもしたがってった。 40いつもの場所ばしょいてから、かれらにわれた、「誘惑ゆうわくおちいらないようにいのりなさい」。 41そしてご自分じぶんは、いしげてとどくほどはなれたところへ退しりぞき、ひざまずいて、いのってわれた、 42ちちよ、みこころならば、どうぞ、このさかずきをわたしからりのけてください。しかし、わたしのおもいではなく、みこころがるようにしてください」。 43そのとき、御使みつかいてんからあらわれてイエスをちからづけた。 44イエスはくるしみもだえて、ますますせついのられた。そして、そのあせのしたたりのようにちた。 45いのりえてちあがり、弟子でしたちのところへかれると、かれらがかなしみのはて寝入ねいっているのをごらんになって 46われた、「なぜねむっているのか。誘惑ゆうわくおちいらないように、きていのっていなさい」。

47イエスがまだそうっておられるうちに、そこに群衆ぐんしゅうあらわれ、十二弟子でしのひとりでユダというもの先頭せんとうって、イエスに接吻せっぷんしようとしてちかづいてきた。 48そこでイエスはわれた、「ユダ、あなたは接吻せっぷんをもってひと裏切うらぎるのか」。 49イエスのそばにいたひとたちは、ことのなりゆきをて、「しゅよ、つるぎでりつけてやりましょうか」とって、 50そのうちのひとりが、祭司長さいしちょうしもべりつけ、そのみぎみみおとした。 51イエスはこれにたいしてわれた、「それだけでやめなさい」。そして、そのしもべみみふれて、おいやしになった。 52それから、自分じぶんにむかって祭司長さいしちょう宮守みやもりがしら、長老ちょうろうたちにたいしてわれた、「あなたがたは、強盗ごうとうにむかうようにけんぼうっててきたのか。 53毎日まいにちあなたがたと一緒いっしょみやにいたときには、わたしにをかけなかった。だが、いまはあなたがたのとき、また、やみの支配しはいときである」。

54それから人々ひとびとはイエスをとらえ、ひっぱって大祭司だいさいし邸宅ていたくへつれてった。ペテロはとおくからついてった。 55人々ひとびと中庭なかにわのまんなかをたいて、一緒いっしょにすわっていたので、ペテロもそのなかにすわった。 56すると、ある女中じょちゅうが、かれのそばにすわっているのをかれつめて、「このひともイエスと一緒いっしょにいました」とった。 57ペテロはそれをして、「わたしはそのひとらない」とった。 58しばらくして、ほかのひとがペテロをった、「あなたもあの仲間なかまのひとりだ」。するとペテロはった、「いや、それはちがう」。 59やく時間じかんたってから、またほかのものった、「たしかにこのひともイエスと一緒いっしょだった。このひともガリラヤびとなのだから」。 60ペテロはった、「あなたのっていることは、わたしにわからない」。すると、かれがまだおわらぬうちに、たちまち、にわとりいた。 61しゅりむいてペテロをつめられた。そのときペテロは、「きょう、にわとりまえに、三わたしをらないとうであろう」とわれたしゅのお言葉ことばおもした。 62そしてそとて、はげしくいた。

63イエスを監視かんししていたひとたちは、イエスを嘲弄ちょうろうし、ちたたき、 64かくしをして、「いあててみよ。ったのは、だれか」ときいたりした。 65そのほか、いろいろなことって、イエスを愚弄ぐろうした。

66けたとき、人民じんみん長老ちょうろう祭司長さいしちょうたち、律法りっぽう学者がくしゃたちがあつまり、イエスを議会ぎかいしてった、 67「あなたがキリストなら、そうってもらいたい」。イエスはわれた、「わたしがっても、あなたがたはしんじないだろう。 68また、わたしがたずねても、こたえないだろう。 69しかし、ひといまからのち、全能ぜんのうかみみぎするであろう」。 70かれらはった、「では、あなたはかみなのか」。イエスはわれた、「あなたがたのうとおりである」。 71するとかれらはった、「これ以上いじょう、なんの証拠しょうこがいるか。われわれは直接ちょくせつかれくちからいたのだから」。

第二三章

1群衆ぐんしゅうはみなちあがって、イエスをピラトのところへれてった。 2そしてうったった、「わたしたちは、このひと国民こくみんまどわし、みつぎをカイザルにおさめることをきんじ、また自分じぶんこそおうなるキリストだと、となえているところを目撃もくげきしました」。 3ピラトはイエスにたずねた、「あなたがユダヤじんおうであるか」。イエスは「そのとおりである」とおこたえになった。 4そこでピラトは祭司長さいしちょうたちと群衆ぐんしゅうとにむかってった、「わたしはこのひとになんのつみもみとめない」。 5ところがかれらは、ますますいつのってやまなかった、「かれは、ガリラヤからはじめてこのところまで、ユダヤ全国ぜんこくにわたっておしえ、民衆みんしゅう煽動せんどうしているのです」。 6ピラトはこれをいて、このひとはガリラヤびとかとたずね、 7そしてヘロデの支配下しはいかのものであることをたしかめたので、ちょうどこのころ、ヘロデがエルサレムにいたのをさいわい、そちらへイエスをおくりとどけた。 8ヘロデはイエスを非常ひじょうよろこんだ。それは、かねてイエスのことをいていたので、ってたいとながいあいだおもっていたし、またイエスがなに奇跡きせきおこなうのをたいとのぞんでいたからである。 9それで、いろいろと質問しつもんこころみたが、イエスはなにもおこたえにならなかった。 10祭司長さいしちょうたちと律法りっぽう学者がくしゃたちとはって、はげしい語調ごちょうでイエスをうったえた。 11またヘロデはその兵卒へいそつどもと一緒いっしょになって、イエスを侮辱ぶじょくしたり嘲弄ちょうろうしたりしたあげく、はなやかな着物きものせてピラトへおくりかえした。 12ヘロデとピラトとは以前いぜんたがい敵視てきししていたが、このしたしいなかになった。

13ピラトは、祭司長さいしちょうたちと役人やくにんたちと民衆みんしゅうとを、あつめてった、 14「おまえたちは、このひと民衆みんしゅうまどわすものとしてわたしのところにれてきたので、おまえたちの面前めんぜんでしらべたが、うったているようなつみは、このひとすこしもみとめられなかった。 15ヘロデもまたみとめなかった。げんかれはイエスをわれわれにおくりかえしてきた。このひとはなんらあたるようなことはしていないのである。 16だから、かれをむちってから、ゆるしてやることにしよう」。〔 17まつりごとにピラトがひとりの囚人しゅうじんをゆるしてやることになっていた。〕 18ところが、かれらはいっせいにさけんでった、「そのひところせ。バラバをゆるしてくれ」。 19このバラバは、みやこおこった暴動ぼうどう殺人さつじんとのかどで、ごくとうぜられていたものである。 20ピラトはイエスをゆるしてやりたいとおもって、もう一かれらにびかけた。 21しかしかれらは、わめきたてて「十字架じゅうじかにつけよ、かれ十字架じゅうじかにつけよ」といつづけた。 22ピラトは三度目どめかれらにむかってった、「では、このひとは、いったい、どんな悪事あくじをしたのか。かれにはあたつみまったくみとめられなかった。だから、むちってからかれをゆるしてやることにしよう」。 23ところが、かれらは大声おおごえをあげてり、イエスを十字架じゅうじかにつけるように要求ようきゅうした。そして、そのこえった。 24ピラトはついにかれらのねがいどおりにすることに決定けっていした。 25そして、暴動ぼうどう殺人さつじんとのかどでごくとうぜられたものほうを、かれらの要求ようきゅうおうじてゆるしてやり、イエスのほうかれらにわたして、そののままにまかせた。

26かれらがイエスをひいてゆく途中とちゅう、シモンというクレネびと郊外こうがいからてきたのをとらえて十字架じゅうじかわせ、それをになってイエスのあとからかせた。

27おおぜいの民衆みんしゅうと、かなしみなげいてやまないおんなたちのれとが、イエスにしたがってった。 28イエスはおんなたちのほうりむいてわれた、「エルサレムのむすめたちよ、わたしのためにくな。むしろ、あなたがた自身じしんのため、また自分じぶん子供こどもたちのためにくがよい。 29不妊ふにんおんなまなかったたいと、ふくませなかった乳房ちぶさとは、さいわいだ』とが、いまにる。 30そのとき、人々ひとびとやまにむかって、われわれのうえたおれかかれとい、またおかにむかって、われわれにおおいかぶされとすであろう。 31もし、生木なまきでさえもそうされるなら、枯木かれきはどうされることであろう」。

32さて、イエスとともけいけるために、ほかにふたりの犯罪はんざいにんかれていった。 33されこうべとばれているところくと、人々ひとびとはそこでイエスを十字架じゅうじかにつけ、犯罪はんざいにんたちも、ひとりはみぎに、ひとりはひだりに、十字架じゅうじかにつけた。 34そのとき、イエスはわれた、「ちちよ、かれらをおゆるしください。かれらはなにをしているのか、わからずにいるのです」。人々ひとびとはイエスの着物きものをくじきでった。 35民衆みんしゅうってていた。役人やくにんたちもあざわらってった、「かれ他人たにんすくった。もしかれかみのキリスト、えらばれたものであるなら、自分じぶん自身じしんすくうがよい」。 36兵卒へいそつどももイエスをののしり、近寄ちかよってきていぶどうしゅをさししてった、 37「あなたがユダヤじんおうなら、自分じぶんすくいなさい」。 38イエスのうえには、「これはユダヤじんおう」といたふだがかけてあった。

39十字架じゅうじかにかけられた犯罪はんざいにんのひとりが、「あなたはキリストではないか。それなら、自分じぶんすくい、またわれわれもすくってみよ」と、イエスに悪口わるくちいつづけた。 40もうひとりは、それをたしなめてった、「おまえはおなけいけていながら、かみおそれないのか。 41たがい自分じぶんのやったことのむくいをけているのだから、こうなったのは当然とうぜんだ。しかし、このかたはなにわるいことをしたのではない」。 42そしてった、「イエスよ、あなたが御国みくに権威けんいをもっておいでになるときには、わたしをおもしてください」。 43イエスはわれた、「よくっておくが、あなたはきょう、わたしと一緒いっしょにパラダイスにいるであろう」。

44ときはもうひるの十二ごろであったが、太陽たいようひかりうしない、ぜんくらくなって、三およんだ。 45そして聖所せいじょまくがまんなかからけた。 46そのとき、イエスはこえたかさけんでわれた、「ちちよ、わたしのれいをみにゆだねます」。こうってついにいききとられた。 47百卒長ひゃくそつちょうはこの有様ありさまて、かみをあがめ、「ほんとうに、このひとただしいひとであった」とった。 48この光景こうけいあつまってきた群衆ぐんしゅうも、これらの出来事できごとて、みなむねちながらかえってった。 49すべてイエスをっていたものや、ガリラヤからしたがってきたおんなたちも、とおところって、これらのことをていた。

50ここに、ヨセフという議員ぎいんがいたが、善良ぜんりょうただしいひとであった。 51このひとはユダヤのまちアリマタヤの出身しゅっしんで、かみくにのぞんでいた。かれ議会ぎかい議決ぎけつ行動こうどうには賛成さんせいしていなかった。 52このひとがピラトのところへって、イエスのからだの引取ひきとかたねがて、 53それをりおろして亜麻布あまぬのつつみ、まだだれもほうむったことのない、いわってつくったはかおさめた。 54この準備じゅんびであって、安息日あんそくにちはじまりかけていた。 55イエスと一緒いっしょにガリラヤからきたおんなたちは、あとについてきて、そのはか、またイエスのからだがおさめられる様子ようすとどけた。 56そしてかえって、香料こうりょう香油こうゆとを用意よういした。

それからおきてにしたがって安息日あんそくにちやすんだ。

第二四章

1しゅうはじめの夜明よあまえに、おんなたちは用意よういしておいた香料こうりょうたずさえて、はかった。 2ところが、いしはかからころがしてあるので、 3なかにはいってみると、しゅイエスのからだが見当みあたらなかった。 4そのため途方とほうにくれていると、よ、かがやいたころもたふたりのものが、かれらにあらわれた。 5おんなたちはおどろおそれて、かおせていると、このふたりのものった、「あなたがたは、なぜきたほう死人しにんなかにたずねているのか。 6そのかたは、ここにはおられない。よみがえられたのだ。まだガリラヤにおられたとき、あなたがたにおはなしになったことをおもしなさい。 7すなわち、ひとかなら罪人つみびとらのわたされ、十字架じゅうじかにつけられ、そして三によみがえる、とおおせられたではないか」。 8そこでおんなたちはその言葉ことばおもし、 9はかからかえって、これらいっさいのことを、十一弟子でしや、そのみんなのひと報告ほうこくした。 10このおんなたちというのは、マグダラのマリヤ、ヨハンナ、およびヤコブのははマリヤであった。彼女かのじょたちと一緒いっしょにいたほかのおんなたちも、このことを使徒しとたちにはなした。 11ところが、使徒しとたちには、それがおろかなはなしのようにおもわれて、それをしんじなかった。〔 12ペテロはってはかはしってき、かがんでなかると、亜麻布あまぬのだけがそこにあったので、こと次第しだい不思議ふしぎおもいながらかえってった。〕

13この、ふたりの弟子でしが、エルサレムから七マイルばかりはなれたエマオというむらきながら、 14このいっさいの出来事できごとについてたがいかたっていた。 15かたろんっていると、イエスご自身じしんちかづいてきて、かれらと一緒いっしょあるいてかれた。 16しかし、かれらのがさえぎられて、イエスをみとめることができなかった。 17イエスはかれらにわれた、「あるきながらたがいかたっているそのはなしは、なんのことなのか」。かれらはかなしそうなかおをしてちどまった。 18そのひとりのクレオパというものが、こたえてった、「あなたはエルサレムにまっていながら、あなただけが、このみやこでこのごろおこったことをごぞんじないのですか」。 19「それは、どんなことか」とわれると、かれらはった、「ナザレのイエスのことです。あのかたは、かみとすべての民衆みんしゅうとのまえで、わざにも言葉ことばにもちからある預言者よげんしゃでしたが、 20祭司長さいしちょうたちや役人やくにんたちが、死刑しけいしょするためにわたし、十字架じゅうじかにつけたのです。 21わたしたちは、イスラエルをすくうのはこのひとであろうと、のぞみをかけていました。しかもそのうえに、このことおこってから、きょうが三なのです。 22ところが、わたしたちの仲間なかまである数人すうにんおんなが、わたしたちをおどろかせました。というのは、かれらがあさはやはかきますと、 23イエスのからだが見当みあたらないので、かえってきましたが、そのとき御使みつかいあらわれて、『イエスはきておられる』とげたともうすのです。 24それで、わたしたちの仲間なかま数人すうにんはかってますと、はたしておんなたちがったとおりで、イエスは見当みあたりませんでした」。 25そこでイエスがわれた、「ああ、おろかでこころのにぶいため、預言者よげんしゃたちがいたすべてのことしんじられないものたちよ。 26キリストはかならず、これらの苦難くなんけて、その栄光えいこうはいるはずではなかったのか」。 27こうって、モーセやすべての預言者よげんしゃからはじめて、聖書せいしょ全体ぜんたいにわたり、ご自身じしんについてしるしてあることどもを、きあかされた。 28それから、かれらはこうとしていたむらちかづいたが、イエスがなおさきすすかれる様子ようすであった。 29そこで、しいてめてった、「わたしたちと一緒いっしょにおまりください。もう夕暮ゆうぐれになっており、もはやかたむいています」。イエスは、かれらとともまるために、いえにはいられた。 30一緒いっしょ食卓しょくたくにつかれたとき、パンをり、祝福しゅくふくしてさき、かれらにわたしておられるうちに、 31かれらのひらけて、それがイエスであることがわかった。すると、み姿すがたえなくなった。 32かれらはたがいった、「道々みちみちはなしになったとき、また聖書せいしょめいしてくださったとき、おたがいこころうちえたではないか」。 33そして、すぐにってエルサレムにかえってると、十一弟子でしとその仲間なかまあつまっていて、 34しゅは、ほんとうによみがえって、シモンにあらわれなさった」とっていた。 35そこでふたりのものは、途中とちゅうであったことや、パンをおさきになる様子ようすでイエスだとわかったことなどをはなした。 36こうはなしていると、イエスがかれらのなかにおちになった。〔そして「やすかれ」とわれた。〕 37かれらはおそおどろいて、れいているのだとおもった。 38そこでイエスがわれた、「なぜおじまどっているのか。どうしてこころうたがいをおこすのか。 39わたしのあしなさい。まさしくわたしなのだ。さわってなさい。れいにはにくほねはないが、あなたがたがるとおり、わたしにはあるのだ」。〔 40こうって、あしとをおせになった。〕 41かれらはよろこびのあまり、まだしんじられないで不思議ふしぎおもっていると、イエスが「ここになに食物しょくもつがあるか」とわれた。 42かれらがいたうおの一きれをさしあげると、 43イエスはそれをって、みんなのまえべられた。

44それからかれらにたいしてわれた、「わたしが以前いぜんあなたがたと一緒いっしょにいた時分じぶんはなしてかせた言葉ことばは、こうであった。すなわち、モーセの律法りっぽう預言よげんしょ詩篇しへんとに、わたしについていてあることは、かならずことごとく成就じょうじゅする」。 45そこでイエスは、聖書せいしょさとらせるためにかれらのこころひらいて 46われた、「こう、しるしてある。キリストはくるしみをけて、三死人しにんなかからよみがえる。 47そして、そのによってつみのゆるしをさせる悔改くいあらためが、エルサレムからはじまって、もろもろの国民こくみんつたえられる。 48あなたがたは、これらのこと証人しょうにんである。 49よ、わたしのちち約束やくそくされたものを、あなたがたにおくる。だから、うえからちからさづけられるまでは、あなたがたはみやこにとどまっていなさい」。

50それから、イエスはかれらをベタニヤのちかくまでれてき、をあげてかれらを祝福しゅくふくされた。 51祝福しゅくふくしておられるうちに、かれらをはなれて、〔てんにあげられた。〕 52かれらは〔イエスをはいし、〕非常ひじょうよろこびをもってエルサレムにかえり、 53えずみやにいて、かみをほめたたえていた。