マタイによる福音書

第一章

1アブラハムの子(こ)であるダビデの子(こ)、イエス・キリストの系図(けいず)。

2アブラハムはイサクの父(ちち)であり、イサクはヤコブの父(ちち)、ヤコブはユダとその兄弟(きょうだい)たちとの父(ちち)、 3ユダはタマルによるパレスとザラとの父(ちち)、パレスはエスロンの父(ちち)、エスロンはアラムの父(ちち)、 4アラムはアミナダブの父(ちち)、アミナダブはナアソンの父(ちち)、ナアソンはサルモンの父(ちち)、 5サルモンはラハブによるボアズの父(ちち)、ボアズはルツによるオベデの父(ちち)、オベデはエッサイの父(ちち)、 6エッサイはダビデ王(おう)の父(ちち)であった。

ダビデはウリヤの妻(つま)によるソロモンの父(ちち)であり、 7ソロモンはレハベアムの父(ちち)、レハベアムはアビヤの父(ちち)、アビヤはアサの父(ちち)、 8アサはヨサパテの父(ちち)、ヨサパテはヨラムの父(ちち)、ヨラムはウジヤの父(ちち)、 9ウジヤはヨタムの父(ちち)、ヨタムはアハズの父(ちち)、アハズはヒゼキヤの父(ちち)、 10ヒゼキヤはマナセの父(ちち)、マナセはアモンの父(ちち)、アモンはヨシヤの父(ちち)、 11ヨシヤはバビロンへ移(うつ)されたころ、エコニヤとその兄弟(きょうだい)たちとの父(ちち)となった。

12バビロンへ移(うつ)されたのち、エコニヤはサラテルの父(ちち)となった。サラテルはゾロバベルの父(ちち)、 13ゾロバベルはアビウデの父(ちち)、アビウデはエリヤキムの父(ちち)、エリヤキムはアゾルの父(ちち)、 14アゾルはサドクの父(ちち)、サドクはアキムの父(ちち)、アキムはエリウデの父(ちち)、 15エリウデはエレアザルの父(ちち)、エレアザルはマタンの父(ちち)、マタンはヤコブの父(ちち)、 16ヤコブはマリヤの夫(おっと)ヨセフの父(ちち)であった。このマリヤからキリストといわれるイエスがお生(うま)れになった。

17だから、アブラハムからダビデまでの代(だい)は合(あ)わせて十四代(だい)、ダビデからバビロンへ移(うつ)されるまでは十四代(だい)、そして、バビロンへ移(うつ)されてからキリストまでは十四代(だい)である。

18イエス・キリストの誕生(たんじょう)の次第(しだい)はこうであった。母(はは)マリヤはヨセフと婚約(こんやく)していたが、まだ一緒(いっしょ)にならない前(まえ)に、聖霊(せいれい)によって身重(みおも)になった。 19夫(おっと)ヨセフは正(ただ)しい人(ひと)であったので、彼女(かのじょ)のことが公(おおや)けになることを好(この)まず、ひそかに離縁(りえん)しようと決心(けっしん)した。 20彼(かれ)がこのことを思(おも)いめぐらしていたとき、主(しゅ)の使(つかい)が夢(ゆめ)に現(あらわ)れて言(い)った、「ダビデの子(こ)ヨセフよ、心配(しんぱい)しないでマリヤを妻(つま)として迎(むか)えるがよい。その胎内(たいない)に宿(やど)っているものは聖霊(せいれい)によるのである。 21彼女(かのじょ)は男(おとこ)の子(こ)を産(う)むであろう。その名(な)をイエスと名(な)づけなさい。彼(かれ)は、おのれの民(たみ)をそのもろもろの罪(つみ)から救(すく)う者(もの)となるからである」。 22すべてこれらのことが起(おこ)ったのは、主(しゅ)が預言者(よげんしゃ)によって言(い)われたことの成就(じょうじゅ)するためである。すなわち、
23「見(み)よ、おとめがみごもって男(おとこ)の子(こ)を産(う)むであろう。
その名(な)はインマヌエルと呼(よ)ばれるであろう」。
これは、「神(かみ)われらと共(とも)にいます」という意味(いみ)である。 24ヨセフは眠(ねむ)りからさめた後(のち)に、主(しゅ)の使(つかい)が命(めい)じたとおりに、マリヤを妻(つま)に迎(むか)えた。 25しかし、子(こ)が生(うま)れるまでは、彼女(かのじょ)を知(し)ることはなかった。そして、その子(こ)をイエスと名(な)づけた。

第二章

1イエスがヘロデ王(おう)の代(だい)に、ユダヤのベツレヘムでお生(うま)れになったとき、見(み)よ、東(ひがし)からきた博士(はかせ)たちがエルサレムに着(つ)いて言(い)った、 2「ユダヤ人(じん)の王(おう)としてお生(うま)れになったかたは、どこにおられますか。わたしたちは東(ひがし)の方(ほう)でその星(ほし)を見(み)たので、そのかたを拝(おが)みにきました」。 3ヘロデ王(おう)はこのことを聞(き)いて不安(ふあん)を感(かん)じた。エルサレムの人々(ひとびと)もみな、同様(どうよう)であった。 4そこで王(おう)は祭司長(さいしちょう)たちと民(たみ)の律法(りっぽう)学者(がくしゃ)たちとを全部(ぜんぶ)集(あつ)めて、キリストはどこに生(うま)れるのかと、彼(かれ)らに問(と)いただした。 5彼(かれ)らは王(おう)に言(い)った、「それはユダヤのベツレヘムです。預言者(よげんしゃ)がこうしるしています、
6『ユダの地(ち)、ベツレヘムよ、
おまえはユダの君(きみ)たちの中(なか)で、
決(けっ)して最(もっと)も小(ちい)さいものではない。
おまえの中(なか)からひとりの君(きみ)が出(で)て、
わが民(たみ)イスラエルの牧者(ぼくしゃ)となるであろう』」。

7そこで、ヘロデはひそかに博士(はかせ)たちを呼(よ)んで、星(ほし)の現(あらわ)れた時(とき)について詳(くわ)しく聞(き)き、 8彼(かれ)らをベツレヘムにつかわして言(い)った、「行(い)って、その幼(おさ)な子(ご)のことを詳(くわ)しく調(しら)べ、見(み)つかったらわたしに知(し)らせてくれ。わたしも拝(おが)みに行(い)くから」。 9彼(かれ)らは王(おう)の言(い)うことを聞(き)いて出(で)かけると、見(み)よ、彼(かれ)らが東方(とうほう)で見(み)た星(ほし)が、彼(かれ)らより先(さき)に進(すす)んで、幼(おさ)な子(ご)のいる所(ところ)まで行(い)き、その上(うえ)にとどまった。 10彼(かれ)らはその星(ほし)を見(み)て、非常(ひじょう)な喜(よろこ)びにあふれた。 11そして、家(いえ)にはいって、母(はは)マリヤのそばにいる幼(おさ)な子(ご)に会(あ)い、ひれ伏(ふ)して拝(おが)み、また、宝(たから)の箱(はこ)をあけて、黄金(おうごん)・乳香(にゅうこう)・没薬(もつやく)などの贈(おく)り物(もの)をささげた。 12そして、夢(ゆめ)でヘロデのところに帰(かえ)るなとのみ告(つ)げを受(う)けたので、他(た)の道(みち)をとおって自分(じぶん)の国(くに)へ帰(かえ)って行(い)った。

13彼(かれ)らが帰(かえ)って行(い)ったのち、見(み)よ、主(しゅ)の使(つかい)が夢(ゆめ)でヨセフに現(あらわ)れて言(い)った、「立(た)って、幼(おさ)な子(ご)とその母(はは)を連(つ)れて、エジプトに逃(に)げなさい。そして、あなたに知(し)らせるまで、そこにとどまっていなさい。ヘロデが幼(おさ)な子(ご)を捜(さが)し出(だ)して、殺(ころ)そうとしている」。 14そこで、ヨセフは立(た)って、夜(よる)の間(あいだ)に幼(おさ)な子(ご)とその母(はは)とを連(つ)れてエジプトへ行(い)き、 15ヘロデが死(し)ぬまでそこにとどまっていた。それは、主(しゅ)が預言者(よげんしゃ)によって「エジプトからわが子(こ)を呼(よ)び出(だ)した」と言(い)われたことが、成就(じょうじゅ)するためである。

16さて、ヘロデは博士(はかせ)たちにだまされたと知(し)って、非常(ひじょう)に立腹(りっぷく)した。そして人々(ひとびと)をつかわし、博士(はかせ)たちから確(たし)かめた時(とき)に基(もとづ)いて、ベツレヘムとその附近(ふきん)の地方(ちほう)とにいる二歳(さい)以下(いか)の男(おとこ)の子(こ)を、ことごとく殺(ころ)した。 17こうして、預言者(よげんしゃ)エレミヤによって言(い)われたことが、成就(じょうじゅ)したのである。
18「叫(さけ)び泣(な)く大(おお)いなる悲(かな)しみの声(こえ)が
ラマで聞(きこ)えた。
ラケルはその子(こ)らのためになげいた。
子(こ)らがもはやいないので、
慰(なぐさ)められることさえ願(ねが)わなかった」。

19さて、ヘロデが死(し)んだのち、見(み)よ、主(しゅ)の使(つかい)がエジプトにいるヨセフに夢(ゆめ)で現(あらわ)れて言(い)った、 20「立(た)って、幼(おさ)な子(ご)とその母(はは)を連(つ)れて、イスラエルの地(ち)に行(い)け。幼(おさ)な子(ご)の命(いのち)をねらっていた人々(ひとびと)は、死(し)んでしまった」。 21そこでヨセフは立(た)って、幼(おさ)な子(ご)とその母(はは)とを連(つ)れて、イスラエルの地(ち)に帰(かえ)った。 22しかし、アケラオがその父(ちち)ヘロデに代(かわ)ってユダヤを治め(おさめ)ていると聞(き)いたので、そこへ行(い)くことを恐(おそ)れた。そして夢(ゆめ)でみ告(つ)げを受(う)けたので、ガリラヤの地方(ちほう)に退(しりぞ)き、 23ナザレという町(まち)に行(い)って住(す)んだ。これは預言者(よげんしゃ)たちによって、「彼(かれ)はナザレ人(びと)と呼(よ)ばれるであろう」と言(い)われたことが、成就(じょうじゅ)するためである。

第三章

1そのころ、バプテスマのヨハネが現(あらわ)れ、ユダヤの荒野(あらの)で教(おしえ)を宣(の)べて言(い)った、 2「悔(く)い改(あらた)めよ、天国(てんごく)は近(ちか)づいた」。 3預言者(よげんしゃ)イザヤによって、
「荒野(あらの)で呼(よ)ばわる者(もの)の声(こえ)がする、
『主(しゅ)の道(みち)を備(そな)えよ、
その道(みち)筋(すじ)をまっすぐにせよ』」
と言(い)われたのは、この人(ひと)のことである。

4このヨハネは、らくだの毛(け)ごろもを着物(きもの)にし、腰(こし)に皮(かわ)の帯(おび)をしめ、いなごと野(の)蜜(みつ)とを食物(しょくもつ)としていた。 5すると、エルサレムとユダヤ全土(ぜんど)とヨルダン附近(ふきん)一帯(いったい)の人々(ひとびと)が、ぞくぞくとヨハネのところに出(で)てきて、 6自分(じぶん)の罪(つみ)を告白(こくはく)し、ヨルダン川(がわ)でヨハネからバプテスマを受(う)けた。 7ヨハネは、パリサイ人(びと)やサドカイ人(びと)が大(おお)ぜいバプテスマを受(う)けようとしてきたのを見(み)て、彼(かれ)らに言(い)った、「まむしの子(こ)らよ、迫(せま)ってきている神(かみ)の怒(いか)りから、おまえたちはのがれられると、だれが教(おし)えたのか。 8だから、悔改(くいあらた)めにふさわしい実(み)を結(むす)べ。 9自分(じぶん)たちの父(ちち)にはアブラハムがあるなどと、心(こころ)の中(なか)で思(おも)ってもみるな。おまえたちに言(い)っておく、神(かみ)はこれらの石(いし)ころからでも、アブラハムの子(こ)を起(おこ)すことができるのだ。 10斧(おの)がすでに木(き)の根(ね)もとに置(お)かれている。だから、良(よ)い実(み)を結(むす)ばない木(き)はことごとく切(き)られて、火(ひ)の中(なか)に投(な)げ込(こ)まれるのだ。 11わたしは悔改(くいあらた)めのために、水(みず)でおまえたちにバプテスマを授(さづ)けている。しかし、わたしのあとから来(く)る人(ひと)はわたしよりも力(ちから)のあるかたで、わたしはそのくつをぬがせてあげる値(ね)うちもない。このかたは、聖霊(せいれい)と火(ひ)とによっておまえたちにバプテスマをお授(さづ)けになるであろう。 12また、箕(み)を手(て)に持(も)って、打(う)ち場(ば)の麦(むぎ)をふるい分(わ)け、麦(むぎ)は倉(くら)に納(おさ)め、からは消(き)えない火(ひ)で焼(や)き捨(す)てるであろう」。

13そのときイエスは、ガリラヤを出(で)てヨルダン川(がわ)に現(あらわ)れ、ヨハネのところにきて、バプテスマを受(う)けようとされた。 14ところがヨハネは、それを思(おも)いとどまらせようとして言(い)った、「わたしこそあなたからバプテスマを受(う)けるはずですのに、あなたがわたしのところにおいでになるのですか」。 15しかし、イエスは答(こた)えて言(い)われた、「今(いま)は受(う)けさせてもらいたい。このように、すべての正(ただ)しいことを成就(じょうじゅ)するのは、われわれにふさわしいことである」。そこでヨハネはイエスの言(い)われるとおりにした。 16イエスはバプテスマを受(う)けるとすぐ、水(みず)から上(あ)がられた。すると、見(み)よ、天(てん)が開(ひら)け、神(かみ)の御霊(みたま)がはとのように自分(じぶん)の上(うえ)に下(くだ)ってくるのを、ごらんになった。 17また天(てん)から声(こえ)があって言(い)った、「これはわたしの愛(あい)する子(こ)、わたしの心(こころ)にかなう者(もの)である」。

第四章

1さて、イエスは御霊(みたま)によって荒野(あらの)に導(みちび)かれた。悪魔(あくま)に試(こころ)みられるためである。 2そして、四十日(にち)四十夜(や)、断食(だんじき)をし、そののち空腹(くうふく)になられた。 3すると試(こころ)みる者(もの)がきて言(い)った、「もしあなたが神(かみ)の子(こ)であるなら、これらの石(いし)がパンになるように命(めい)じてごらんなさい」。 4イエスは答(こた)えて言(い)われた、「『人(ひと)はパンだけで生(い)きるものではなく、神(かみ)の口(くち)から出(で)る一つ一つの言(ことば)で生(い)きるものである』と書(か)いてある」。 5それから悪魔(あくま)は、イエスを聖(せい)なる都(みやこ)に連(つ)れて行(い)き、宮(みや)の頂上(ちょうじょう)に立(た)たせて 6言(い)った、「もしあなたが神(かみ)の子(こ)であるなら、下(した)へ飛(と)びおりてごらんなさい。
『神(かみ)はあなたのために御使(みつかい)たちにお命(めい)じになると、
あなたの足(あし)が石(いし)に打(う)ちつけられないように、
彼(かれ)らはあなたを手(て)でささえるであろう』
と書(か)いてありますから」。 7イエスは彼(かれ)に言(い)われた、「『主(しゅ)なるあなたの神(かみ)を試(こころ)みてはならない』とまた書(か)いてある」。 8次(つぎ)に悪魔(あくま)は、イエスを非常(ひじょう)に高(たか)い山(やま)に連(つ)れて行(い)き、この世(よ)のすべての国々(くにぐに)とその栄華(えいが)とを見(み)せて 9言(い)った、「もしあなたが、ひれ伏(ふ)してわたしを拝(おが)むなら、これらのものを皆(みな)あなたにあげましょう」。 10するとイエスは彼(かれ)に言(い)われた、「サタンよ、退(しりぞ)け。『主(しゅ)なるあなたの神(かみ)を拝(はい)し、ただ神(かみ)にのみ仕(つか)えよ』と書(か)いてある」。 11そこで、悪魔(あくま)はイエスを離(はな)れ去(さ)り、そして、御使(みつかい)たちがみもとにきて仕(つか)えた。

12さて、イエスはヨハネが捕(とら)えられたと聞(き)いて、ガリラヤへ退(しりぞ)かれた。 13そしてナザレを去(さ)り、ゼブルンとナフタリとの地方(ちほう)にある海(うみ)べの町(まち)カペナウムに行(い)って住(す)まわれた。 14これは預言者(よげんしゃ)イザヤによって言(い)われた言(ことば)が、成就(じょうじゅ)するためである。
15「ゼブルンの地(ち)、ナフタリの地(ち)、
海(うみ)に沿(そ)う地方(ちほう)、ヨルダンの向(む)こうの地(ち)、
異邦人(いほうじん)のガリラヤ、
16暗黒(あんこく)の中(なか)に住(す)んでいる民(たみ)は大(おお)いなる光(ひかり)を見(み)、
死(し)の地(ち)、死(し)の陰(かげ)に住(す)んでいる人々(ひとびと)に、光(ひかり)がのぼった」。
17この時(とき)からイエスは教(おしえ)を宣(の)べはじめて言(い)われた、「悔(く)い改(あらた)めよ、天国(てんごく)は近(ちか)づいた」。

18さて、イエスがガリラヤの海(うみ)べを歩(ある)いておられると、ふたりの兄弟(きょうだい)、すなわち、ペテロと呼(よ)ばれたシモンとその兄弟(きょうだい)アンデレとが、海(うみ)に網(あみ)を打(う)っているのをごらんになった。彼(かれ)らは漁師(りょうし)であった。 19イエスは彼(かれ)らに言(い)われた、「わたしについてきなさい。あなたがたを、人間(にんげん)をとる漁師(りょうし)にしてあげよう」。 20すると、彼(かれ)らはすぐに網(あみ)を捨(す)てて、イエスに従(したが)った。 21そこから進(すす)んで行(い)かれると、ほかのふたりの兄弟(きょうだい)、すなわち、ゼベダイの子(こ)ヤコブとその兄弟(きょうだい)ヨハネとが、父(ちち)ゼベダイと一緒(いっしょ)に、舟(ふね)の中(なか)で網(あみ)を繕(つくろ)っているのをごらんになった。そこで彼(かれ)らをお招(まね)きになると、 22すぐ舟(ふね)と父(ちち)とをおいて、イエスに従(したが)って行(い)った。

23イエスはガリラヤの全(ぜん)地(ち)を巡(めぐ)り歩(ある)いて、諸(しょ)会堂(かいどう)で教(おし)え、御国(みくに)の福音(ふくいん)を宣(の)べ伝(つた)え、民(たみ)の中(なか)のあらゆる病気(びょうき)、あらゆるわずらいをおいやしになった。 24そこで、その評判(ひょうばん)はシリヤ全(ぜん)地(ち)にひろまり、人々(ひとびと)があらゆる病(やまい)にかかっている者(もの)、すなわち、いろいろの病気(びょうき)と苦(くる)しみとに悩(なや)んでいる者(もの)、悪霊(あくれい)につかれている者(もの)、てんかん、中風(ちゅうぶ)の者(もの)などをイエスのところに連(つ)れてきたので、これらの人々(ひとびと)をおいやしになった。 25こうして、ガリラヤ、デカポリス、エルサレム、ユダヤ及(およ)びヨルダンの向(む)こうから、おびただしい群衆(ぐんしゅう)がきてイエスに従(したが)った。

第五章

1イエスはこの群衆(ぐんしゅう)を見(み)て、山(やま)に登(のぼ)り、座(ざ)につかれると、弟子(でし)たちがみもとに近寄(ちかよ)ってきた。 2そこで、イエスは口(くち)を開(ひら)き、彼(かれ)らに教(おし)えて言(い)われた。
3「こころの貧(まず)しい人(ひと)たちは、さいわいである、
天国(てんごく)は彼(かれ)らのものである。
4悲(かな)しんでいる人(ひと)たちは、さいわいである、
彼(かれ)らは慰(なぐさ)められるであろう。
5柔和(にゅうわ)な人(ひと)たちは、さいわいである、
彼(かれ)らは地(ち)を受(う)けつぐであろう。
6義(ぎ)に飢(う)えかわいている人(ひと)たちは、さいわいである、
彼(かれ)らは飽(あ)き足(た)りるようになるであろう。
7あわれみ深(ぶか)い人(ひと)たちは、さいわいである、
彼(かれ)らはあわれみを受(う)けるであろう。
8心(こころ)の清(きよ)い人(ひと)たちは、さいわいである、
彼(かれ)らは神(かみ)を見(み)るであろう。
9平和(へいわ)をつくり出(だ)す人(ひと)たちは、さいわいである、
彼(かれ)らは神(かみ)の子(こ)と呼(よ)ばれるであろう。
10義(ぎ)のために迫害(はくがい)されてきた人(ひと)たちは、
さいわいである、
天国(てんごく)は彼(かれ)らのものである。
11わたしのために人々(ひとびと)があなたがたをののしり、また迫害(はくがい)し、あなたがたに対(たい)し偽(いつわ)って様々(さまざま)の悪口(あっこう)を言(い)う時(とき)には、あなたがたは、さいわいである。 12喜(よろこ)び、よろこべ、天(てん)においてあなたがたの受(う)ける報(むく)いは大(おお)きい。あなたがたより前(まえ)の預言者(よげんしゃ)たちも、同(おな)じように迫害(はくがい)されたのである。

13あなたがたは、地(ち)の塩(しお)である。もし塩(しお)のききめがなくなったら、何(なに)によってその味(あじ)が取(と)りもどされようか。もはや、なんの役(やく)にも立(た)たず、ただ外(そと)に捨(す)てられて、人々(ひとびと)にふみつけられるだけである。 14あなたがたは、世(よ)の光(ひかり)である。山(やま)の上(うえ)にある町(まち)は隠(かく)れることができない。 15また、あかりをつけて、それを枡(ます)の下(した)におく者(もの)はいない。むしろ燭台(しょくだい)の上(うえ)において、家(いえ)の中(なか)のすべてのものを照(てら)させるのである。 16そのように、あなたがたの光(ひかり)を人々(ひとびと)の前(まえ)に輝(かがや)かし、そして、人々(ひとびと)があなたがたのよいおこないを見(み)て、天(てん)にいますあなたがたの父(ちち)をあがめるようにしなさい。

17わたしが律法(りっぽう)や預言者(よげんしゃ)を廃(はい)するためにきた、と思(おも)ってはならない。廃(はい)するためではなく、成就(じょうじゅ)するためにきたのである。 18よく言(い)っておく。天地(てんち)が滅(ほろ)び行(ゆ)くまでは、律法(りっぽう)の一点(てん)、一画(いっかく)もすたることはなく、ことごとく全(まっと)うされるのである。 19それだから、これらの最(もっと)も小(ちい)さいいましめの一つでも破(やぶ)り、またそうするように人(ひと)に教(おし)えたりする者(もの)は、天国(てんごく)で最(もっと)も小(ちい)さい者(もの)と呼(よ)ばれるであろう。しかし、これをおこないまたそう教(おし)える者(もの)は、天国(てんごく)で大(おお)いなる者(もの)と呼(よ)ばれるであろう。 20わたしは言(い)っておく。あなたがたの義(ぎ)が律法(りっぽう)学者(がくしゃ)やパリサイ人(びと)の義(ぎ)にまさっていなければ、決(けっ)して天国(てんごく)に、はいることはできない。

21昔(むかし)の人々(ひとびと)に『殺(ころ)すな。殺(ころ)す者(もの)は裁判(さいばん)を受(う)けねばならない』と言(い)われていたことは、あなたがたの聞(き)いているところである。 22しかし、わたしはあなたがたに言(い)う。兄弟(きょうだい)に対(たい)して怒(いか)る者(もの)は、だれでも裁判(さいばん)を受(う)けねばならない。兄弟(きょうだい)にむかって愚(おろ)か者(もの)と言(い)う者(もの)は、議会(ぎかい)に引(ひ)きわたされるであろう。また、ばか者(もの)と言(い)う者(もの)は、地獄(じごく)の火(ひ)に投(な)げ込(こ)まれるであろう。 23だから、祭壇(さいだん)に供(そな)え物(もの)をささげようとする場合(ばあい)、兄弟(きょうだい)が自分(じぶん)に対(たい)して何(なに)かうらみをいだいていることを、そこで思(おも)い出(だ)したなら、 24その供(そな)え物(もの)を祭壇(さいだん)の前(まえ)に残(のこ)しておき、まず行(い)ってその兄弟(きょうだい)と和解(わかい)し、それから帰(かえ)ってきて、供(そな)え物(もの)をささげることにしなさい。 25あなたを訴(うった)える者(もの)と一緒(いっしょ)に道(みち)を行(い)く時(とき)には、その途中(とちゅう)で早(はや)く仲直(なかなお)りをしなさい。そうしないと、その訴(うった)える者(もの)はあなたを裁判官(さいばんかん)にわたし、裁判官(さいばんかん)は下役(したやく)にわたし、そして、あなたは獄(ごく)に入(い)れられるであろう。 26よくあなたに言(い)っておく。最後(さいご)の一コドラントを支払(しはら)ってしまうまでは、決(けっ)してそこから出(で)てくることはできない。

27『姦淫(かんいん)するな』と言(い)われていたことは、あなたがたの聞(き)いているところである。 28しかし、わたしはあなたがたに言(い)う。だれでも、情欲(じょうよく)をいだいて女(おんな)を見(み)る者(もの)は、心(こころ)の中(なか)ですでに姦淫(かんいん)をしたのである。 29もしあなたの右(みぎ)の目(め)が罪(つみ)を犯(おか)させるなら、それを抜(ぬ)き出(だ)して捨(す)てなさい。五体(ごたい)の一部(いちぶ)を失(うしな)っても、全身(ぜんしん)が地獄(じごく)に投(な)げ入(い)れられない方(ほう)が、あなたにとって益(えき)である。 30もしあなたの右(みぎ)の手(て)が罪(つみ)を犯(おか)させるなら、それを切(き)って捨(す)てなさい。五体(ごたい)の一部(いちぶ)を失(うしな)っても、全身(ぜんしん)が地獄(じごく)に落(お)ち込(こ)まない方(ほう)が、あなたにとって益(えき)である。 31また『妻(つま)を出(だ)す者(もの)は離縁(りえん)状(じょう)を渡(わた)せ』と言(い)われている。 32しかし、わたしはあなたがたに言(い)う。だれでも、不品行(ふひんこう)以外(いがい)の理由(りゆう)で自分(じぶん)の妻(つま)を出(だ)す者(もの)は、姦淫(かんいん)を行(おこな)わせるのである。また出(だ)された女(おんな)をめとる者(もの)も、姦淫(かんいん)を行(おこな)うのである。

33また昔(むかし)の人々(ひとびと)に『いつわり誓(ちか)うな、誓(ちか)ったことは、すべて主(しゅ)に対(たい)して果(はた)せ』と言(い)われていたことは、あなたがたの聞(き)いているところである。 34しかし、わたしはあなたがたに言(い)う。いっさい誓(ちか)ってはならない。天(てん)をさして誓(ちか)うな。そこは神(かみ)の御座(みざ)であるから。 35また地(ち)をさして誓(ちか)うな。そこは神(かみ)の足(あし)台(だい)であるから。またエルサレムをさして誓(ちか)うな。それは『大王(だいおう)の都(みやこ)』であるから。 36また、自分(じぶん)の頭(あたま)をさして誓(ちか)うな。あなたは髪(かみ)の毛(け)一(ひと)すじさえ、白(しろ)くも黒(くろ)くもすることができない。 37あなたがたの言葉(ことば)は、ただ、しかり、しかり、否(いな)、否(いな)、であるべきだ。それ以上(いじょう)に出(で)ることは、悪(あく)から来(く)るのである。

38『目(め)には目(め)を、歯(は)には歯(は)を』と言(い)われていたことは、あなたがたの聞(き)いているところである。 39しかし、わたしはあなたがたに言(い)う。悪人(あくにん)に手向(てむ)かうな。もし、だれかがあなたの右(みぎ)の頬(ほお)を打(う)つなら、ほかの頬(ほお)をも向(む)けてやりなさい。 40あなたを訴(うった)えて、下着(したぎ)を取(と)ろうとする者(もの)には、上着(うわぎ)をも与(あた)えなさい。 41もし、だれかが、あなたをしいて一マイル行(い)かせようとするなら、その人(ひと)と共(とも)に二マイル行(い)きなさい。 42求(もと)める者(もの)には与(あた)え、借(か)りようとする者(もの)を断(ことわ)るな。

43『隣(とな)り人(びと)を愛(あい)し、敵(てき)を憎(にく)め』と言(い)われていたことは、あなたがたの聞(き)いているところである。 44しかし、わたしはあなたがたに言(い)う。敵(てき)を愛(あい)し、迫害(はくがい)する者(もの)のために祈(いの)れ。 45こうして、天(てん)にいますあなたがたの父(ちち)の子(こ)となるためである。天(てん)の父(ちち)は、悪(わる)い者(もの)の上(うえ)にも良(よ)い者(もの)の上(うえ)にも、太陽(たいよう)をのぼらせ、正(ただ)しい者(もの)にも正(ただ)しくない者(もの)にも、雨(あめ)を降(ふ)らして下(くだ)さるからである。 46あなたがたが自分(じぶん)を愛(あい)する者(もの)を愛(あい)したからとて、なんの報(むく)いがあろうか。そのようなことは取税人(しゅぜいにん)でもするではないか。 47兄弟(きょうだい)だけにあいさつをしたからとて、なんのすぐれた事(こと)をしているだろうか。そのようなことは異邦人(いほうじん)でもしているではないか。 48それだから、あなたがたの天(てん)の父(ちち)が完全(かんぜん)であられるように、あなたがたも完全(かんぜん)な者(もの)となりなさい。

第六章

1自分(じぶん)の義(ぎ)を、見(み)られるために人(ひと)の前(まえ)で行(おこな)わないように、注意(ちゅうい)しなさい。もし、そうしないと、天(てん)にいますあなたがたの父(ちち)から報(むく)いを受(う)けることがないであろう。

2だから、施(ほどこ)しをする時(とき)には、偽善者(ぎぜんしゃ)たちが人(ひと)にほめられるため会堂(かいどう)や町(まち)の中(なか)でするように、自分(じぶん)の前(まえ)でラッパを吹(ふ)きならすな。よく言(い)っておくが、彼(かれ)らはその報(むく)いを受(う)けてしまっている。 3あなたは施(ほどこ)しをする場合(ばあい)、右(みぎ)の手(て)のしていることを左(ひだり)の手(て)に知(し)らせるな。 4それは、あなたのする施(ほどこ)しが隠(かく)れているためである。すると、隠(かく)れた事(こと)を見(み)ておられるあなたの父(ちち)は、報(むく)いてくださるであろう。

5また祈(いの)る時(とき)には、偽善者(ぎぜんしゃ)たちのようにするな。彼(かれ)らは人(ひと)に見(み)せようとして、会堂(かいどう)や大通(おおどお)りのつじに立(た)って祈(いの)ることを好(この)む。よく言(い)っておくが、彼(かれ)らはその報(むく)いを受(う)けてしまっている。 6あなたは祈(いの)る時(とき)、自分(じぶん)のへやにはいり、戸(と)を閉(と)じて、隠(かく)れた所(ところ)においでになるあなたの父(ちち)に祈(いの)りなさい。すると、隠(かく)れた事(こと)を見(み)ておられるあなたの父(ちち)は、報(むく)いてくださるであろう。 7また、祈(いの)る場合(ばあい)、異邦人(いほうじん)のように、くどくどと祈(いの)るな。彼(かれ)らは言葉(ことば)かずが多(おお)ければ、聞(き)きいれられるものと思(おも)っている。 8だから、彼(かれ)らのまねをするな。あなたがたの父(ちち)なる神(かみ)は、求(もと)めない先(さき)から、あなたがたに必要(ひつよう)なものはご存(ぞん)じなのである。 9だから、あなたがたはこう祈(いの)りなさい、
天(てん)にいますわれらの父(ちち)よ、
御名(みな)があがめられますように。
10御国(みくに)がきますように。
みこころが天(てん)に行(おこな)われるとおり、
地(ち)にも行(おこな)われますように。
11わたしたちの日(ひ)ごとの食物(しょくもつ)を、
きょうもお与(あた)えください。
12わたしたちに負債(ふさい)のある者(もの)をゆるしましたように、
わたしたちの負債(ふさい)をもおゆるしください。
13わたしたちを試(こころ)みに会(あ)わせないで、
悪(あ)しき者(もの)からお救(すく)いください。
14もしも、あなたがたが、人々(ひとびと)のあやまちをゆるすならば、あなたがたの天(てん)の父(ちち)も、あなたがたをゆるして下(くだ)さるであろう。 15もし人(ひと)をゆるさないならば、あなたがたの父(ちち)も、あなたがたのあやまちをゆるして下(くだ)さらないであろう。

16また断食(だんじき)をする時(とき)には、偽善者(ぎぜんしゃ)がするように、陰気(いんき)な顔(かお)つきをするな。彼(かれ)らは断食(だんじき)をしていることを人(ひと)に見(み)せようとして、自分(じぶん)の顔(かお)を見苦(みぐる)しくするのである。よく言(い)っておくが、彼(かれ)らはその報(むく)いを受(う)けてしまっている。 17あなたがたは断食(だんじき)をする時(とき)には、自分(じぶん)の頭(あたま)に油(あぶら)を塗(ぬ)り、顔(かお)を洗(あら)いなさい。 18それは断食(だんじき)をしていることが人(ひと)に知(し)れないで、隠(かく)れた所(ところ)においでになるあなたの父(ちち)に知(し)られるためである。すると、隠(かく)れた事(こと)を見(み)ておられるあなたの父(ちち)は、報(むく)いて下(くだ)さるであろう。

19あなたがたは自分(じぶん)のために、虫(むし)が食(く)い、さびがつき、また、盗人(ぬすびと)らが押(お)し入(い)って盗(ぬす)み出(だ)すような地上(ちじょう)に、宝(たから)をたくわえてはならない。 20むしろ自分(じぶん)のため、虫(むし)も食(く)わず、さびもつかず、また、盗人(ぬすびと)らが押(お)し入(い)って盗(ぬす)み出(だ)すこともない天(てん)に、宝(たから)をたくわえなさい。 21あなたの宝(たから)のある所(ところ)には、心(こころ)もあるからである。 22目(め)はからだのあかりである。だから、あなたの目(め)が澄(す)んでおれば、全身(ぜんしん)も明(あか)るいだろう。 23しかし、あなたの目(め)が悪(わる)ければ、全身(ぜんしん)も暗(くら)いだろう。だから、もしあなたの内(うち)なる光(ひかり)が暗(くら)ければ、その暗(くら)さは、どんなであろう。 24だれも、ふたりの主人(しゅじん)に兼(か)ね仕(つか)えることはできない。一方(いっぽう)を憎(にく)んで他方(たほう)を愛(あい)し、あるいは、一方(いっぽう)に親(した)しんで他方(たほう)をうとんじるからである。あなたがたは、神(かみ)と富(とみ)とに兼(か)ね仕(つか)えることはできない。

25それだから、あなたがたに言(い)っておく。何(なに)を食(た)べようか、何(なに)を飲(の)もうかと、自分(じぶん)の命(いのち)のことで思(おも)いわずらい、何(なに)を着(き)ようかと自分(じぶん)のからだのことで思(おも)いわずらうな。命(いのち)は食物(しょくもつ)にまさり、からだは着物(きもの)にまさるではないか。 26空(そら)の鳥(とり)を見(み)るがよい。まくことも、刈(か)ることもせず、倉(くら)に取(と)りいれることもしない。それだのに、あなたがたの天(てん)の父(ちち)は彼(かれ)らを養(やしな)っていて下(くだ)さる。あなたがたは彼(かれ)らよりも、はるかにすぐれた者(もの)ではないか。 27あなたがたのうち、だれが思(おも)いわずらったからとて、自分(じぶん)の寿命(じゅみょう)をわずかでも延(の)ばすことができようか。 28また、なぜ、着物(きもの)のことで思(おも)いわずらうのか。野(の)の花(はな)がどうして育(そだ)っているか、考(かんが)えて見(み)るがよい。働(はたら)きもせず、紡(つむ)ぎもしない。 29しかし、あなたがたに言(い)うが、栄華(えいが)をきわめた時(とき)のソロモンでさえ、この花(はな)の一つほどにも着飾(きかざ)ってはいなかった。 30きょうは生(は)えていて、あすは炉(ろ)に投(な)げ入(い)れられる野(の)の草(くさ)でさえ、神(かみ)はこのように装(よそお)って下(くだ)さるのなら、あなたがたに、それ以上(いじょう)よくしてくださらないはずがあろうか。ああ、信仰(しんこう)の薄(うす)い者(もの)たちよ。 31だから、何(なに)を食(た)べようか、何(なに)を飲(の)もうか、あるいは何(なに)を着(き)ようかと言(い)って思(おも)いわずらうな。 32これらのものはみな、異邦人(いほうじん)が切(せつ)に求(もと)めているものである。あなたがたの天(てん)の父(ちち)は、これらのものが、ことごとくあなたがたに必要(ひつよう)であることをご存(ぞん)じである。 33まず神(かみ)の国(くに)と神(かみ)の義(ぎ)とを求(もと)めなさい。そうすれば、これらのものは、すべて添(そ)えて与(あた)えられるであろう。 34だから、あすのことを思(おも)いわずらうな。あすのことは、あす自身(じしん)が思(おも)いわずらうであろう。一日(にち)の苦労(くろう)は、その日(ひ)一日(にち)だけで十分(じゅうぶん)である。

第七章

1人(ひと)をさばくな。自分(じぶん)がさばかれないためである。 2あなたがたがさばくそのさばきで、自分(じぶん)もさばかれ、あなたがたの量(はか)るそのはかりで、自分(じぶん)にも量(はか)り与(あた)えられるであろう。 3なぜ、兄弟(きょうだい)の目(め)にあるちりを見(み)ながら、自分(じぶん)の目(め)にある梁(はり)を認(みと)めないのか。 4自分(じぶん)の目(め)には梁(はり)があるのに、どうして兄弟(きょうだい)にむかって、あなたの目(め)からちりを取(と)らせてください、と言(い)えようか。 5偽善者(ぎぜんしゃ)よ、まず自分(じぶん)の目(め)から梁(はり)を取(と)りのけるがよい。そうすれば、はっきり見(み)えるようになって、兄弟(きょうだい)の目(め)からちりを取(と)りのけることができるだろう。

6聖(せい)なるものを犬(いぬ)にやるな。また真珠(しんじゅ)を豚(ぶた)に投(な)げてやるな。恐(おそ)らく彼(かれ)らはそれらを足(あし)で踏(ふ)みつけ、向(む)きなおってあなたがたにかみついてくるであろう。

7求(もと)めよ、そうすれば、与(あた)えられるであろう。捜(さが)せ、そうすれば、見(み)いだすであろう。門(もん)をたたけ、そうすれば、あけてもらえるであろう。 8すべて求(もと)める者(もの)は得(え)、捜(さが)す者(もの)は見(み)いだし、門(もん)をたたく者(もの)はあけてもらえるからである。 9あなたがたのうちで、自分(じぶん)の子(こ)がパンを求(もと)めるのに、石(いし)を与(あた)える者(もの)があろうか。 10魚(うお)を求(もと)めるのに、へびを与(あた)える者(もの)があろうか。 11このように、あなたがたは悪(わる)い者(もの)であっても、自分(じぶん)の子供(こども)には、良(よ)い贈(おく)り物(もの)をすることを知(し)っているとすれば、天(てん)にいますあなたがたの父(ちち)はなおさら、求(もと)めてくる者(もの)に良(よ)いものを下(くだ)さらないことがあろうか。 12だから、何事(なにごと)でも人々(ひとびと)からしてほしいと望(のぞ)むことは、人々(ひとびと)にもそのとおりにせよ。これが律法(りっぽう)であり預言者(よげんしゃ)である。

13狭(せま)い門(もん)からはいれ。滅(ほろ)びにいたる門(もん)は大(おお)きく、その道(みち)は広(ひろ)い。そして、そこからはいって行(い)く者(もの)が多(おお)い。 14命(いのち)にいたる門(もん)は狭(せま)く、その道(みち)は細(ほそ)い。そして、それを見(み)いだす者(もの)が少(すく)ない。

15にせ預言者(よげんしゃ)を警戒(けいかい)せよ。彼(かれ)らは、羊(ひつじ)の衣(ころも)を着(き)てあなたがたのところに来(く)るが、その内側(うちがわ)は強欲(ごうよく)なおおかみである。 16あなたがたは、その実(み)によって彼(かれ)らを見(み)わけるであろう。茨(いばら)からぶどうを、あざみからいちじくを集(あつ)める者(もの)があろうか。 17そのように、すべて良(よ)い木(き)は良(よ)い実(み)を結(むす)び、悪(わる)い木(き)は悪(わる)い実(み)を結(むす)ぶ。 18良(よ)い木(き)が悪(わる)い実(み)をならせることはないし、悪(わる)い木(き)が良(よ)い実(み)をならせることはできない。 19良(よ)い実(み)を結(むす)ばない木(き)はことごとく切(き)られて、火(ひ)の中(なか)に投(な)げ込(こ)まれる。 20このように、あなたがたはその実(み)によって彼(かれ)らを見(み)わけるのである。 21わたしにむかって『主(しゅ)よ、主(しゅ)よ』と言(い)う者(もの)が、みな天国(てんごく)にはいるのではなく、ただ、天(てん)にいますわが父(ちち)の御旨(みむね)を行(おこな)う者(もの)だけが、はいるのである。 22その日(ひ)には、多(おお)くの者(もの)が、わたしにむかって『主(しゅ)よ、主(しゅ)よ、わたしたちはあなたの名(な)によって預言(よげん)したではありませんか。また、あなたの名(な)によって悪霊(あくれい)を追(お)い出(だ)し、あなたの名(な)によって多(おお)くの力(ちから)あるわざを行(おこな)ったではありませんか』と言(い)うであろう。 23そのとき、わたしは彼(かれ)らにはっきり、こう言(い)おう、『あなたがたを全(まった)く知(し)らない。不法(ふほう)を働(はたら)く者(もの)どもよ、行(い)ってしまえ』。

24それで、わたしのこれらの言葉(ことば)を聞(き)いて行(おこな)うものを、岩(いわ)の上(うえ)に自分(じぶん)の家(いえ)を建(た)てた賢(かしこ)い人(ひと)に比(くら)べることができよう。 25雨(あめ)が降(ふ)り、洪水(こうずい)が押(お)し寄(よ)せ、風(かぜ)が吹(ふ)いてその家(いえ)に打(う)ちつけても、倒(たお)れることはない。岩(いわ)を土台(どだい)としているからである。 26また、わたしのこれらの言葉(ことば)を聞(き)いても行(おこな)わない者(もの)を、砂(すな)の上(うえ)に自分(じぶん)の家(いえ)を建(た)てた愚(おろ)かな人(ひと)に比(くら)べることができよう。 27雨(あめ)が降(ふ)り、洪水(こうずい)が押(お)し寄(よ)せ、風(かぜ)が吹(ふ)いてその家(いえ)に打(う)ちつけると、倒(たお)れてしまう。そしてその倒(たお)れ方(かた)はひどいのである」。

28イエスがこれらの言(ことば)を語(かた)り終(お)えられると、群衆(ぐんしゅう)はその教(おしえ)にひどく驚(おどろ)いた。 29それは律法(りっぽう)学者(がくしゃ)たちのようにではなく、権威(けんい)ある者(もの)のように、教(おし)えられたからである。

第八章

1イエスが山(やま)をお降(お)りになると、おびただしい群衆(ぐんしゅう)がついてきた。 2すると、そのとき、ひとりのらい病人(びょうにん)がイエスのところにきて、ひれ伏(ふ)して言(い)った、「主(しゅ)よ、みこころでしたら、きよめていただけるのですが」。 3イエスは手(て)を伸(の)ばして、彼(かれ)にさわり、「そうしてあげよう、きよくなれ」と言(い)われた。すると、らい病(びょう)は直(ただ)ちにきよめられた。 4イエスは彼(かれ)に言(い)われた、「だれにも話(はな)さないように、注意(ちゅうい)しなさい。ただ行(い)って、自分(じぶん)のからだを祭司(さいし)に見(み)せ、それから、モーセが命(めい)じた供(そな)え物(もの)をささげて、人々(ひとびと)に証明(しょうめい)しなさい」。

5さて、イエスがカペナウムに帰(かえ)ってこられたとき、ある百卒長(ひゃくそつちょう)がみもとにきて訴(うった)えて言(い)った、 6「主(しゅ)よ、わたしの僕(しもべ)が中風(ちゅうぶ)でひどく苦(くる)しんで、家(いえ)に寝(ね)ています」。 7イエスは彼(かれ)に、「わたしが行(い)ってなおしてあげよう」と言(い)われた。 8そこで百卒長(ひゃくそつちょう)は答(こた)えて言(い)った、「主(しゅ)よ、わたしの屋根(やね)の下(した)にあなたをお入(い)れする資格(しかく)は、わたしにはございません。ただ、お言葉(ことば)を下(くだ)さい。そうすれば僕(しもべ)はなおります。 9わたしも権威(けんい)の下(した)にある者(もの)ですが、わたしの下(した)にも兵卒(へいそつ)がいまして、ひとりの者(もの)に『行(い)け』と言(い)えば行(い)き、ほかの者(もの)に『こい』と言(い)えばきますし、また、僕(しもべ)に『これをせよ』と言(い)えば、してくれるのです」。 10イエスはこれを聞(き)いて非常(ひじょう)に感心(かんしん)され、ついてきた人々(ひとびと)に言(い)われた、「よく聞(き)きなさい。イスラエル人(ひと)の中(なか)にも、これほどの信仰(しんこう)を見(み)たことがない。 11なお、あなたがたに言(い)うが、多(おお)くの人(ひと)が東(ひがし)から西(にし)からきて、天国(てんごく)で、アブラハム、イサク、ヤコブと共(とも)に宴会(えんかい)の席(せき)につくが、 12この国(くに)の子(こ)らは外(そと)のやみに追(お)い出(だ)され、そこで泣(な)き叫(さけ)んだり、歯(は)がみをしたりするであろう」。 13それからイエスは百卒長(ひゃくそつちょう)に「行(い)け、あなたの信(しん)じたとおりになるように」と言(い)われた。すると、ちょうどその時(とき)に、僕(しもべ)はいやされた。

14それから、イエスはペテロの家(いえ)にはいって行(い)かれ、そのしゅうとめが熱病(ねつびょう)で、床(とこ)についているのをごらんになった。 15そこで、その手(て)にさわられると、熱(ねつ)が引(ひ)いた。そして女(おんな)は起(お)きあがってイエスをもてなした。 16夕暮(ゆうぐれ)になると、人々(ひとびと)は悪霊(あくれい)につかれた者(もの)を大(おお)ぜい、みもとに連(つ)れてきたので、イエスはみ言葉(ことば)をもって霊(れい)どもを追(お)い出(だ)し、病人(びょうにん)をことごとくおいやしになった。 17これは、預言者(よげんしゃ)イザヤによって「彼(かれ)は、わたしたちのわずらいを身(み)に受(う)け、わたしたちの病(やまい)を負(お)うた」と言(い)われた言葉(ことば)が成就(じょうじゅ)するためである。

18イエスは、群衆(ぐんしゅう)が自分(じぶん)のまわりに群(むら)がっているのを見(み)て、向(む)こう岸(ぎし)に行(い)くようにと弟子(でし)たちにお命(めい)じになった。 19するとひとりの律法(りっぽう)学者(がくしゃ)が近(ちか)づいてきて言(い)った、「先生(せんせい)、あなたがおいでになる所(ところ)なら、どこへでも従(したが)ってまいります」。 20イエスはその人(ひと)に言(い)われた、「きつねには穴(あな)があり、空(そら)の鳥(とり)には巣(す)がある。しかし、人(ひと)の子(こ)にはまくらする所(ところ)がない」。 21また弟子(でし)のひとりが言(い)った、「主(しゅ)よ、まず、父(ちち)を葬(ほうむ)りに行(い)かせて下(くだ)さい」。 22イエスは彼(かれ)に言(い)われた、「わたしに従(したが)ってきなさい。そして、その死人(しにん)を葬(ほうむ)ることは、死人(しにん)に任(まか)せておくがよい」。

23それから、イエスが舟(ふね)に乗(の)り込(こ)まれると、弟子(でし)たちも従(したが)った。 24すると突然(とつぜん)、海上(かいじょう)に激(はげ)しい暴風(ぼうふう)が起(おこ)って、舟(ふね)は波(なみ)にのまれそうになった。ところが、イエスは眠(ねむ)っておられた。 25そこで弟子(でし)たちはみそばに寄(よ)ってきてイエスを起(おこ)し、「主(しゅ)よ、お助(たす)けください、わたしたちは死(し)にそうです」と言(い)った。 26するとイエスは彼(かれ)らに言(い)われた、「なぜこわがるのか、信仰(しんこう)の薄(うす)い者(もの)たちよ」。それから起(お)きあがって、風(かぜ)と海(うみ)とをおしかりになると、大(おお)なぎになった。 27彼(かれ)らは驚(おどろ)いて言(い)った、「このかたはどういう人(ひと)なのだろう。風(かぜ)も海(うみ)も従(したが)わせるとは」。

28それから、向(む)こう岸(ぎし)、ガダラ人(びと)の地(ち)に着(つ)かれると、悪霊(あくれい)につかれたふたりの者(もの)が、墓場(はかば)から出(で)てきてイエスに出会(であ)った。彼(かれ)らは手(て)に負(お)えない乱暴(らんぼう)者(もの)で、だれもその辺(へん)の道(みち)を通(とお)ることができないほどであった。 29すると突然(とつぜん)、彼(かれ)らは叫(さけ)んで言(い)った、「神(かみ)の子(こ)よ、あなたはわたしどもとなんの係(かか)わりがあるのです。まだその時(とき)ではないのに、ここにきて、わたしどもを苦(くる)しめるのですか」。 30さて、そこからはるか離(はな)れた所(ところ)に、おびただしい豚(ぶた)の群(む)れが飼(か)ってあった。 31悪霊(あくれい)どもはイエスに願(ねが)って言(い)った、「もしわたしどもを追(お)い出(だ)されるのなら、あの豚(ぶた)の群(む)れの中(なか)につかわして下(くだ)さい」。 32そこで、イエスが「行(い)け」と言(い)われると、彼(かれ)らは出(で)て行(い)って、豚(ぶた)の中(なか)へはいり込(こ)んだ。すると、その群(む)れ全体(ぜんたい)が、がけから海(うみ)へなだれを打(う)って駆(か)け下(くだ)り、水(みず)の中(なか)で死(し)んでしまった。 33飼(か)う者(もの)たちは逃(に)げて町(まち)に行(い)き、悪霊(あくれい)につかれた者(もの)たちのことなど、いっさいを知(し)らせた。 34すると、町中(まちじゅう)の者(もの)がイエスに会(あ)いに出(で)てきた。そして、イエスに会(あ)うと、この地方(ちほう)から去(さ)ってくださるようにと頼(たの)んだ。

第九章

1さて、イエスは舟(ふね)に乗(の)って海(うみ)を渡(わた)り、自分(じぶん)の町(まち)に帰(かえ)られた。 2すると、人々(ひとびと)が中風(ちゅうぶ)の者(もの)を床(とこ)の上(うえ)に寝(ね)かせたままでみもとに運(はこ)んできた。イエスは彼(かれ)らの信仰(しんこう)を見(み)て、中風(ちゅうぶ)の者(もの)に、「子(こ)よ、しっかりしなさい。あなたの罪(つみ)はゆるされたのだ」と言(い)われた。 3すると、ある律法(りっぽう)学者(がくしゃ)たちが心(こころ)の中(なか)で言(い)った、「この人(ひと)は神(かみ)を汚(けが)している」。 4イエスは彼(かれ)らの考(かんが)えを見抜(みぬ)いて、「なぜ、あなたがたは心(こころ)の中(なか)で悪(わる)いことを考(かんが)えているのか。 5あなたの罪(つみ)はゆるされた、と言(い)うのと、起(お)きて歩(ある)け、と言(い)うのと、どちらがたやすいか。 6しかし、人(ひと)の子(こ)は地上(ちじょう)で罪(つみ)をゆるす権威(けんい)をもっていることが、あなたがたにわかるために」と言(い)い、中風(ちゅうぶ)の者(もの)にむかって、「起(お)きよ、床(とこ)を取(と)りあげて家(いえ)に帰(かえ)れ」と言(い)われた。 7すると彼(かれ)は起(お)きあがり、家(いえ)に帰(かえ)って行(い)った。 8群衆(ぐんしゅう)はそれを見(み)て恐(おそ)れ、こんな大(おお)きな権威(けんい)を人(ひと)にお与(あた)えになった神(かみ)をあがめた。

9さてイエスはそこから進(すす)んで行(い)かれ、マタイという人(ひと)が収税所(しゅうぜいしょ)にすわっているのを見(み)て、「わたしに従(したが)ってきなさい」と言(い)われた。すると彼(かれ)は立(た)ちあがって、イエスに従(したが)った。 10それから、イエスが家(いえ)で食事(しょくじ)の席(せき)についておられた時(とき)のことである。多(おお)くの取税人(しゅぜいにん)や罪人(つみびと)たちがきて、イエスや弟子(でし)たちと共(とも)にその席(せき)に着(つ)いていた。 11パリサイ人(びと)たちはこれを見(み)て、弟子(でし)たちに言(い)った、「なぜ、あなたがたの先生(せんせい)は、取税人(しゅぜいにん)や罪人(つみびと)などと食事(しょくじ)を共(とも)にするのか」。 12イエスはこれを聞(き)いて言(い)われた、「丈夫(じょうぶ)な人(ひと)には医者(いしゃ)はいらない。いるのは病人(びょうにん)である。 13『わたしが好(この)むのは、あわれみであって、いけにえではない』とはどういう意味(いみ)か、学(まな)んできなさい。わたしがきたのは、義人(ぎじん)を招(まね)くためではなく、罪人(つみびと)を招(まね)くためである」。

14そのとき、ヨハネの弟子(でし)たちがイエスのところにきて言(い)った、「わたしたちとパリサイ人(びと)たちとが断食(だんじき)をしているのに、あなたの弟子(でし)たちは、なぜ断食(だんじき)をしないのですか」。 15するとイエスは言(い)われた、「婚礼(こんれい)の客(きゃく)は、花婿(はなむこ)が一緒(いっしょ)にいる間(あいだ)は、悲(かな)しんでおられようか。しかし、花婿(はなむこ)が奪(うば)い去(さ)られる日(ひ)が来(く)る。その時(とき)には断食(だんじき)をするであろう。 16だれも、真新(まあたら)しい布(ぬの)ぎれで、古(ふる)い着物(きもの)につぎを当(あ)てはしない。そのつぎきれは着物(きもの)を引(ひ)き破(やぶ)り、そして、破(やぶ)れがもっとひどくなるから。 17だれも、新(あたら)しいぶどう酒(しゅ)を古(ふる)い皮(かわ)袋(ぶくろ)に入(い)れはしない。もしそんなことをしたら、その皮(かわ)袋(ぶくろ)は張(は)り裂(さ)け、酒(さけ)は流(なが)れ出(で)るし、皮(かわ)袋(ぶくろ)もむだになる。だから、新(あたら)しいぶどう酒(しゅ)は新(あたら)しい皮(かわ)袋(ぶくろ)に入(い)れるべきである。そうすれば両方(りょうほう)とも長(なが)もちがするであろう」。

18これらのことを彼(かれ)らに話(はな)しておられると、そこにひとりの会堂司(かいどうづかさ)がきて、イエスを拝(はい)して言(い)った、「わたしの娘(むすめ)がただ今(いま)死(し)にました。しかしおいでになって手(て)をその上(うえ)においてやって下(くだ)さい。そうしたら、娘(むすめ)は生(い)き返(かえ)るでしょう」。 19そこで、イエスが立(た)って彼(かれ)について行(い)かれると、弟子(でし)たちも一緒(いっしょ)に行(い)った。 20するとそのとき、十二年間(ねんかん)も長(なが)血(ち)をわずらっている女(おんな)が近寄(ちかよ)ってきて、イエスのうしろからみ衣(ころも)のふさにさわった。 21み衣(ころも)にさわりさえすれば、なおしていただけるだろう、と心(こころ)の中(なか)で思(おも)っていたからである。 22イエスは振(ふ)り向(む)いて、この女(おんな)を見(み)て言(い)われた、「娘(むすめ)よ、しっかりしなさい。あなたの信仰(しんこう)があなたを救(すく)ったのです」。するとこの女(おんな)はその時(とき)に、いやされた。 23それからイエスは司(つかさ)の家(いえ)に着(つ)き、笛(ふえ)吹(ふ)きどもや騒(さわ)いでいる群衆(ぐんしゅう)を見(み)て言(い)われた。 24「あちらへ行(い)っていなさい。少女(しょうじょ)は死(し)んだのではない。眠(ねむ)っているだけである」。すると人々(ひとびと)はイエスをあざ笑(わら)った。 25しかし、群衆(ぐんしゅう)を外(そと)へ出(だ)したのち、イエスは内(うち)へはいって、少女(しょうじょ)の手(て)をお取(と)りになると、少女(しょうじょ)は起(お)きあがった。 26そして、そのうわさがこの地方(ちほう)全体(ぜんたい)にひろまった。

27そこから進(すす)んで行(い)かれると、ふたりの盲人(もうじん)が、「ダビデの子(こ)よ、わたしたちをあわれんで下(くだ)さい」と叫(さけ)びながら、イエスについてきた。 28そしてイエスが家(いえ)にはいられると、盲人(もうじん)たちがみもとにきたので、彼(かれ)らに「わたしにそれができると信(しん)じるか」と言(い)われた。彼(かれ)らは言(い)った、「主(しゅ)よ、信(しん)じます」。 29そこで、イエスは彼(かれ)らの目(め)にさわって言(い)われた、「あなたがたの信仰(しんこう)どおり、あなたがたの身(み)になるように」。 30すると彼(かれ)らの目(め)が開(ひら)かれた。イエスは彼(かれ)らをきびしく戒(いまし)めて言(い)われた、「だれにも知(し)れないように気(き)をつけなさい」。 31しかし、彼(かれ)らは出(で)て行(い)って、その地方(ちほう)全体(ぜんたい)にイエスのことを言(い)いひろめた。

32彼(かれ)らが出(で)て行(い)くと、人々(ひとびと)は悪霊(あくれい)につかれたおしをイエスのところに連(つ)れてきた。 33すると、悪霊(あくれい)は追(お)い出(だ)されて、おしが物(もの)を言(い)うようになった。群衆(ぐんしゅう)は驚(おどろ)いて、「このようなことがイスラエルの中(なか)で見(み)られたことは、これまで一度(いちど)もなかった」と言(い)った。 34しかし、パリサイ人(びと)たちは言(い)った、「彼(かれ)は、悪霊(あくれい)どものかしらによって悪霊(あくれい)どもを追(お)い出(だ)しているのだ」。

35イエスは、すべての町々(まちまち)村々(むらむら)を巡(めぐ)り歩(ある)いて、諸(しょ)会堂(かいどう)で教(おし)え、御国(みくに)の福音(ふくいん)を宣(の)べ伝(つた)え、あらゆる病気(びょうき)、あらゆるわずらいをおいやしになった。 36また群衆(ぐんしゅう)が飼(か)う者(もの)のない羊(ひつじ)のように弱(よわ)り果(は)てて、倒(たお)れているのをごらんになって、彼(かれ)らを深(ふか)くあわれまれた。 37そして弟子(でし)たちに言(い)われた、「収穫(しゅうかく)は多(おお)いが、働(はたら)き人(びと)が少(すく)ない。 38だから、収穫(しゅうかく)の主(しゅ)に願(ねが)って、その収穫(しゅうかく)のために働(はたら)き人(びと)を送(おく)り出(だ)すようにしてもらいなさい」。

第一〇章

1そこで、イエスは十二弟子(でし)を呼(よ)び寄(よ)せて、汚(けが)れた霊(れい)を追(お)い出(だ)し、あらゆる病気(びょうき)、あらゆるわずらいをいやす権威(けんい)をお授(さづ)けになった。

2十二使徒(しと)の名(な)は、次(つぎ)のとおりである。まずペテロと呼(よ)ばれたシモンとその兄弟(きょうだい)アンデレ、それからゼベダイの子(こ)ヤコブとその兄弟(きょうだい)ヨハネ、 3ピリポとバルトロマイ、トマスと取税人(しゅぜいにん)マタイ、アルパヨの子(こ)ヤコブとタダイ、 4熱心(ねっしん)党(とう)のシモンとイスカリオテのユダ。このユダはイエスを裏切(うらぎ)った者(もの)である。

5イエスはこの十二人(にん)をつかわすに当(あた)り、彼(かれ)らに命(めい)じて言(い)われた、「異邦人(いほうじん)の道(みち)に行(い)くな。またサマリヤ人(びと)の町(まち)にはいるな。 6むしろ、イスラエルの家(いえ)の失(うしな)われた羊(ひつじ)のところに行(い)け。 7行(い)って、『天国(てんごく)が近(ちか)づいた』と宣(の)べ伝(つた)えよ。 8病人(びょうにん)をいやし、死人(しにん)をよみがえらせ、らい病人(びょうにん)をきよめ、悪霊(あくれい)を追(お)い出(だ)せ。ただで受(う)けたのだから、ただで与(あた)えるがよい。 9財布(さいふ)の中(なか)に金(きん)、銀(ぎん)または銭(ぜに)を入(い)れて行(い)くな。 10旅行(りょこう)のための袋(ふくろ)も、二枚(まい)の下着(したぎ)も、くつも、つえも持(も)って行(い)くな。働(はたら)き人(びと)がその食物(しょくもつ)を得(え)るのは当然(とうぜん)である。 11どの町(まち)、どの村(むら)にはいっても、その中(なか)でだれがふさわしい人(ひと)か、たずね出(だ)して、立(た)ち去(さ)るまではその人(ひと)のところにとどまっておれ。 12その家(いえ)にはいったなら、平安(へいあん)を祈(いの)ってあげなさい。 13もし平安(へいあん)を受(う)けるにふさわしい家(いえ)であれば、あなたがたの祈(いの)る平安(へいあん)はその家(いえ)に来(く)るであろう。もしふさわしくなければ、その平安(へいあん)はあなたがたに帰(かえ)って来(く)るであろう。 14もしあなたがたを迎(むか)えもせず、またあなたがたの言葉(ことば)を聞(き)きもしない人(ひと)があれば、その家(いえ)や町(まち)を立(た)ち去(さ)る時(とき)に、足(あし)のちりを払(はら)い落(おと)しなさい。 15あなたがたによく言(い)っておく。さばきの日(ひ)には、ソドム、ゴモラの地(ち)の方(ほう)が、その町(まち)よりは耐(た)えやすいであろう。

16わたしがあなたがたをつかわすのは、羊(ひつじ)をおおかみの中(なか)に送(おく)るようなものである。だから、へびのように賢(かしこ)く、はとのように素直(すなお)であれ。 17人々(ひとびと)に注意(ちゅうい)しなさい。彼(かれ)らはあなたがたを衆議所(しゅうぎしょ)に引(ひ)き渡(わた)し、会堂(かいどう)でむち打(う)つであろう。 18またあなたがたは、わたしのために長官(ちょうかん)たちや王(おう)たちの前(まえ)に引(ひ)き出(だ)されるであろう。それは、彼(かれ)らと異邦人(いほうじん)とに対(たい)してあかしをするためである。 19彼(かれ)らがあなたがたを引(ひ)き渡(わた)したとき、何(なに)をどう言(い)おうかと心配(しんぱい)しないがよい。言(い)うべきことは、その時(とき)に授(さづ)けられるからである。 20語(かた)る者(もの)は、あなたがたではなく、あなたがたの中(なか)にあって語(かた)る父(ちち)の霊(れい)である。 21兄弟(きょうだい)は兄弟(きょうだい)を、父(ちち)は子(こ)を殺(ころ)すために渡(わた)し、また子(こ)は親(おや)に逆(さか)らって立(た)ち、彼(かれ)らを殺(ころ)させるであろう。 22またあなたがたは、わたしの名(な)のゆえにすべての人(ひと)に憎(にく)まれるであろう。しかし、最後(さいご)まで耐(た)え忍(しの)ぶ者(もの)は救(すく)われる。 23一つの町(まち)で迫害(はくがい)されたなら、他(た)の町(まち)へ逃(に)げなさい。よく言(い)っておく。あなたがたがイスラエルの町々(まちまち)を回(まわ)り終(おわ)らないうちに、人(ひと)の子(こ)は来(く)るであろう。

24弟子(でし)はその師(し)以上(いじょう)のものではなく、僕(しもべ)はその主人(しゅじん)以上(いじょう)の者(もの)ではない。 25弟子(でし)がその師(し)のようであり、僕(しもべ)がその主人(しゅじん)のようであれば、それで十分(じゅうぶん)である。もし家(いえ)の主人(しゅじん)がベルゼブルと言(い)われるならば、その家(いえ)の者(もの)どもはなおさら、どんなにか悪(わる)く言(い)われることであろう。 26だから彼(かれ)らを恐(おそ)れるな。おおわれたもので、現(あらわ)れてこないものはなく、隠(かく)れているもので、知(し)られてこないものはない。 27わたしが暗(くら)やみであなたがたに話(はな)すことを、明(あか)るみで言(い)え。耳(みみ)にささやかれたことを、屋根(やね)の上(うえ)で言(い)いひろめよ。 28また、からだを殺(ころ)しても、魂(たましい)を殺(ころ)すことのできない者(もの)どもを恐(おそ)れるな。むしろ、からだも魂(たましい)も地獄(じごく)で滅(ほろ)ぼす力(ちから)のあるかたを恐(おそ)れなさい。 29二羽(わ)のすずめは一アサリオンで売(う)られているではないか。しかもあなたがたの父(ちち)の許(ゆる)しがなければ、その一羽(わ)も地(ち)に落(お)ちることはない。 30またあなたがたの頭(あたま)の毛(け)までも、みな数(かぞ)えられている。 31それだから、恐(おそ)れることはない。あなたがたは多(おお)くのすずめよりも、まさった者(もの)である。 32だから人(ひと)の前(まえ)でわたしを受(う)けいれる者(もの)を、わたしもまた、天(てん)にいますわたしの父(ちち)の前(まえ)で受(う)けいれるであろう。 33しかし、人(ひと)の前(まえ)でわたしを拒(こば)む者(もの)を、わたしも天(てん)にいますわたしの父(ちち)の前(まえ)で拒(こば)むであろう。

34地上(ちじょう)に平和(へいわ)をもたらすために、わたしがきたと思(おも)うな。平和(へいわ)ではなく、つるぎを投(な)げ込(こ)むためにきたのである。 35わたしがきたのは、人(ひと)をその父(ちち)と、娘(むすめ)をその母(はは)と、嫁(よめ)をそのしゅうとめと仲(なか)たがいさせるためである。 36そして家(いえ)の者(もの)が、その人(ひと)の敵(てき)となるであろう。 37わたしよりも父(ちち)または母(はは)を愛(あい)する者(もの)は、わたしにふさわしくない。わたしよりもむすこや娘(むすめ)を愛(あい)する者(もの)は、わたしにふさわしくない。 38また自分(じぶん)の十字架(じゅうじか)をとってわたしに従(したが)ってこない者(もの)はわたしにふさわしくない。 39自分(じぶん)の命(いのち)を得(え)ている者(もの)はそれを失(うしな)い、わたしのために自分(じぶん)の命(いのち)を失(うしな)っている者(もの)は、それを得(え)るであろう。

40あなたがたを受(う)けいれる者(もの)は、わたしを受(う)けいれるのである。わたしを受(う)けいれる者(もの)は、わたしをおつかわしになったかたを受(う)けいれるのである。 41預言者(よげんしゃ)の名(な)のゆえに預言者(よげんしゃ)を受(う)けいれる者(もの)は、預言者(よげんしゃ)の報(むく)いを受(う)け、義人(ぎじん)の名(な)のゆえに義人(ぎじん)を受(う)けいれる者(もの)は、義人(ぎじん)の報(むく)いを受(う)けるであろう。 42わたしの弟子(でし)であるという名(な)のゆえに、この小(ちい)さい者(もの)のひとりに冷(つめ)たい水(みず)一杯(ぱい)でも飲(の)ませてくれる者(もの)は、よく言(い)っておくが、決(けっ)してその報(むく)いからもれることはない」。

第一一章

1イエスは十二弟子(でし)にこのように命(めい)じ終(お)えてから、町々(まちまち)で教(おし)えまた宣(の)べ伝(つた)えるために、そこを立(た)ち去(さ)られた。

2さて、ヨハネは獄中(ごくちゅう)でキリストのみわざについて伝(つた)え聞(き)き、自分(じぶん)の弟子(でし)たちをつかわして、 3イエスに言(い)わせた、「『きたるべきかた』はあなたなのですか。それとも、ほかにだれかを待(ま)つべきでしょうか」。 4イエスは答(こた)えて言(い)われた、「行(い)って、あなたがたが見聞(みき)きしていることをヨハネに報告(ほうこく)しなさい。 5盲人(もうじん)は見(み)え、足(あし)なえは歩(ある)き、らい病人(びょうにん)はきよまり、耳(みみ)しいは聞(きこ)え、死人(しにん)は生(い)きかえり、貧(まず)しい人々(ひとびと)は福音(ふくいん)を聞(き)かされている。 6わたしにつまずかない者(もの)は、さいわいである」。 7彼(かれ)らが帰(かえ)ってしまうと、イエスはヨハネのことを群衆(ぐんしゅう)に語(かた)りはじめられた、「あなたがたは、何(なに)を見(み)に荒野(あらの)に出(で)てきたのか。風(かぜ)に揺(ゆ)らぐ葦(あし)であるか。 8では、何(なに)を見(み)に出(で)てきたのか。柔(やわ)らかい着物(きもの)をまとった人(ひと)か。柔(やわ)らかい着物(きもの)をまとった人々(ひとびと)なら、王(おう)の家(いえ)にいる。 9では、なんのために出(で)てきたのか。預言者(よげんしゃ)を見(み)るためか。そうだ、あなたがたに言(い)うが、預言者(よげんしゃ)以上(いじょう)の者(もの)である。
10『見(み)よ、わたしは使(つかい)をあなたの先(さき)につかわし、
あなたの前(まえ)に、道(みち)を整(ととの)えさせるであろう』
と書(か)いてあるのは、この人(ひと)のことである。 11あなたがたによく言(い)っておく。女(おんな)の産(う)んだ者(もの)の中(なか)で、バプテスマのヨハネより大(おお)きい人物(じんぶつ)は起(おこ)らなかった。しかし、天国(てんごく)で最(もっと)も小(ちい)さい者(もの)も、彼(かれ)よりは大(おお)きい。 12バプテスマのヨハネの時(とき)から今(いま)に至(いた)るまで、天国(てんごく)は激(はげ)しく襲(おそ)われている。そして激(はげ)しく襲(おそ)う者(もの)たちがそれを奪(うば)い取(と)っている。 13すべての預言者(よげんしゃ)と律法(りっぽう)とが預言(よげん)したのは、ヨハネの時(とき)までである。 14そして、もしあなたがたが受(う)けいれることを望(のぞ)めば、この人(ひと)こそは、きたるべきエリヤなのである。 15耳(みみ)のある者(もの)は聞(き)くがよい。

16今(いま)の時代(じだい)を何(なに)に比(くら)べようか。それは子供(こども)たちが広場(ひろば)にすわって、ほかの子供(こども)たちに呼(よ)びかけ、
17『わたしたちが笛(ふえ)を吹(ふ)いたのに、
あなたたちは踊(おど)ってくれなかった。
弔(とむら)いの歌(うた)を歌(うた)ったのに、
胸(むね)を打(う)ってくれなかった』
と言(い)うのに似(に)ている。 18なぜなら、ヨハネがきて、食(た)べることも、飲(の)むこともしないと、あれは悪霊(あくれい)につかれているのだ、と言(い)い、 19また人(ひと)の子(こ)がきて、食(た)べたり飲(の)んだりしていると、見(み)よ、あれは食(しょく)をむさぼる者(もの)、大酒(おおざけ)を飲(の)む者(もの)、また取税人(しゅぜいにん)、罪人(つみびと)の仲間(なかま)だ、と言(い)う。しかし、知恵(ちえ)の正(ただ)しいことは、その働(はたら)きが証明(しょうめい)する」。

20それからイエスは、数々(かずかず)の力(ちから)あるわざがなされたのに、悔(く)い改(あらた)めることをしなかった町々(まちまち)を、責(せ)めはじめられた。 21「わざわいだ、コラジンよ。わざわいだ、ベツサイダよ。おまえたちのうちでなされた力(ちから)あるわざが、もしツロとシドンでなされたなら、彼(かれ)らはとうの昔(むかし)に、荒布(あらぬの)をまとい灰(はい)をかぶって、悔(く)い改(あらた)めたであろう。 22しかし、おまえたちに言(い)っておく。さばきの日(ひ)には、ツロとシドンの方(ほう)がおまえたちよりも、耐(た)えやすいであろう。 23ああ、カペナウムよ、おまえは天(てん)にまで上(あ)げられようとでもいうのか。黄泉(よみ)にまで落(おと)されるであろう。おまえの中(なか)でなされた力(ちから)あるわざが、もしソドムでなされたなら、その町(まち)は今日(きょう)までも残(のこ)っていたであろう。 24しかし、あなたがたに言(い)う。さばきの日(ひ)には、ソドムの地(ち)の方(ほう)がおまえよりは耐(た)えやすいであろう」。

25そのときイエスは声(こえ)をあげて言(い)われた、「天地(てんち)の主(しゅ)なる父(ちち)よ。あなたをほめたたえます。これらの事(こと)を知恵(ちえ)のある者(もの)や賢(かしこ)い者(もの)に隠(かく)して、幼(おさ)な子(ご)にあらわしてくださいました。 26父(ちち)よ、これはまことにみこころにかなった事(こと)でした。 27すべての事(こと)は父(ちち)からわたしに任(まか)せられています。そして、子(こ)を知(し)る者(もの)は父(ちち)のほかにはなく、父(ちち)を知(し)る者(もの)は、子(こ)と、父(ちち)をあらわそうとして子(こ)が選(えら)んだ者(もの)とのほかに、だれもありません。

28すべて重荷(おもに)を負(お)うて苦労(くろう)している者(もの)は、わたしのもとにきなさい。あなたがたを休(やす)ませてあげよう。 29わたしは柔和(にゅうわ)で心(こころ)のへりくだった者(もの)であるから、わたしのくびきを負(お)うて、わたしに学(まな)びなさい。そうすれば、あなたがたの魂(たましい)に休(やす)みが与(あた)えられるであろう。 30わたしのくびきは負(お)いやすく、わたしの荷(に)は軽(かる)いからである」。

第一二章

1そのころ、ある安息日(あんそくにち)に、イエスは麦畑(むぎばたけ)の中(なか)を通(とお)られた。すると弟子(でし)たちは、空腹(くうふく)であったので、穂(ほ)を摘(つ)んで食(た)べはじめた。 2パリサイ人(びと)たちがこれを見(み)て、イエスに言(い)った、「ごらんなさい、あなたの弟子(でし)たちが、安息日(あんそくにち)にしてはならないことをしています」。 3そこでイエスは彼(かれ)らに言(い)われた、「あなたがたは、ダビデとその供(とも)の者(もの)たちとが飢(う)えたとき、ダビデが何(なに)をしたか読(よ)んだことがないのか。 4すなわち、神(かみ)の家(いえ)にはいって、祭司(さいし)たちのほか、自分(じぶん)も供(とも)の者(もの)たちも食(た)べてはならぬ供(そな)えのパンを食(た)べたのである。 5また、安息日(あんそくにち)に宮仕(みやづか)えをしている祭司(さいし)たちは安息日(あんそくにち)を破(やぶ)っても罪(つみ)にはならないことを、律法(りっぽう)で読(よ)んだことがないのか。 6あなたがたに言(い)っておく。宮(みや)よりも大(おお)いなる者(もの)がここにいる。 7『わたしが好(この)むのは、あわれみであって、いけにえではない』とはどういう意味(いみ)か知(し)っていたなら、あなたがたは罪(つみ)のない者(もの)をとがめなかったであろう。 8人(ひと)の子(こ)は安息日(あんそくにち)の主(しゅ)である」。

9イエスはそこを去(さ)って、彼(かれ)らの会堂(かいどう)にはいられた。 10すると、そのとき、片手(かたて)のなえた人(ひと)がいた。人々(ひとびと)はイエスを訴(うった)えようと思(おも)って、「安息日(あんそくにち)に人(ひと)をいやしても、さしつかえないか」と尋(たず)ねた。 11イエスは彼(かれ)らに言(い)われた、「あなたがたのうちに、一匹(ぴき)の羊(ひつじ)を持(も)っている人(ひと)があるとして、もしそれが安息日(あんそくにち)に穴(あな)に落(お)ちこんだなら、手(て)をかけて引(ひ)き上(あ)げてやらないだろうか。 12人(ひと)は羊(ひつじ)よりも、はるかにすぐれているではないか。だから、安息日(あんそくにち)に良(よ)いことをするのは、正(ただ)しいことである」。 13そしてイエスはその人(ひと)に、「手(て)を伸(の)ばしなさい」と言(い)われた。そこで手(て)を伸(の)ばすと、ほかの手(て)のように良(よ)くなった。 14パリサイ人(びと)たちは出(で)て行(い)って、なんとかしてイエスを殺(ころ)そうと相談(そうだん)した。 15イエスはこれを知(し)って、そこを去(さ)って行(い)かれた。ところが多(おお)くの人々(ひとびと)がついてきたので、彼(かれ)らを皆(みな)いやし、 16そして自分(じぶん)のことを人々(ひとびと)にあらわさないようにと、彼(かれ)らを戒(いまし)められた。 17これは預言者(よげんしゃ)イザヤの言(い)った言葉(ことば)が、成就(じょうじゅ)するためである、
18「見(み)よ、わたしが選(えら)んだ僕(しもべ)、
わたしの心(こころ)にかなう、愛(あい)する者(もの)。
わたしは彼(かれ)にわたしの霊(れい)を授(さづ)け、
そして彼(かれ)は正義(せいぎ)を異邦人(いほうじん)に宣(の)べ伝(つた)えるであろう。
19彼(かれ)は争(あらそ)わず、叫(さけ)ばず、
またその声(こえ)を大路(おおじ)で聞(き)く者(もの)はない。
20彼(かれ)が正義(せいぎ)に勝(か)ちを得(え)させる時(とき)まで、
いためられた葦(あし)を折(お)ることがなく、
煙(けむ)っている燈心(とうしん)を消(け)すこともない。
21異邦人(いほうじん)は彼(かれ)の名(な)に望(のぞ)みを置(お)くであろう」。

22そのとき、人々(ひとびと)が悪霊(あくれい)につかれた盲人(もうじん)のおしを連(つ)れてきたので、イエスは彼(かれ)をいやして、物(もの)を言(い)い、また目(め)が見(み)えるようにされた。 23すると群衆(ぐんしゅう)はみな驚(おどろ)いて言(い)った、「この人(ひと)が、あるいはダビデの子(こ)ではあるまいか」。 24しかし、パリサイ人(びと)たちは、これを聞(き)いて言(い)った、「この人(ひと)が悪霊(あくれい)を追(お)い出(だ)しているのは、まったく悪霊(あくれい)のかしらベルゼブルによるのだ」。 25イエスは彼(かれ)らの思(おも)いを見抜(みぬ)いて言(い)われた、「おおよそ、内部(ないぶ)で分(わか)れ争(あらそ)う国(くに)は自滅(じめつ)し、内(うち)わで分(わか)れ争(あらそ)う町(まち)や家(いえ)は立(た)ち行(い)かない。 26もしサタンがサタンを追(お)い出(だ)すならば、それは内(うち)わで分(わか)れ争(あらそ)うことになる。それでは、その国(くに)はどうして立(た)ち行(い)けよう。 27もしわたしがベルゼブルによって悪霊(あくれい)を追(お)い出(だ)すとすれば、あなたがたの仲間(なかま)はだれによって追(お)い出(だ)すのであろうか。だから、彼(かれ)らがあなたがたをさばく者(もの)となるであろう。 28しかし、わたしが神(かみ)の霊(れい)によって悪霊(あくれい)を追(お)い出(だ)しているのなら、神(かみ)の国(くに)はすでにあなたがたのところにきたのである。 29まただれでも、まず強(つよ)い人(ひと)を縛(しば)りあげなければ、どうして、その人(ひと)の家(いえ)に押(お)し入(い)って家財(かざい)を奪(うば)い取(と)ることができようか。縛(しば)ってから、はじめてその家(いえ)を掠奪(りゃくだつ)することができる。 30わたしの味方(みかた)でない者(もの)は、わたしに反対(はんたい)するものであり、わたしと共(とも)に集(あつ)めない者(もの)は、散(ち)らすものである。 31だから、あなたがたに言(い)っておく。人(ひと)には、その犯(おか)すすべての罪(つみ)も神(かみ)を汚(けが)す言葉(ことば)も、ゆるされる。しかし、聖霊(せいれい)を汚(けが)す言葉(ことば)は、ゆるされることはない。 32また人(ひと)の子(こ)に対(たい)して言(い)い逆(さか)らう者(もの)は、ゆるされるであろう。しかし、聖霊(せいれい)に対(たい)して言(い)い逆(さか)らう者(もの)は、この世(よ)でも、きたるべき世(よ)でも、ゆるされることはない。 33木(き)が良(よ)ければ、その実(み)も良(よ)いとし、木(き)が悪(わる)ければ、その実(み)も悪(わる)いとせよ。木(き)はその実(み)でわかるからである。 34まむしの子(こ)らよ。あなたがたは悪(わる)い者(もの)であるのに、どうして良(よ)いことを語(かた)ることができようか。おおよそ、心(こころ)からあふれることを、口(くち)が語(かた)るものである。 35善人(ぜんにん)はよい倉(くら)から良(よ)い物(もの)を取(と)り出(だ)し、悪人(あくにん)は悪(わる)い倉(くら)から悪(わる)い物(もの)を取(と)り出(だ)す。 36あなたがたに言(い)うが、審判(しんぱん)の日(ひ)には、人(ひと)はその語(かた)る無益(むえき)な言葉(ことば)に対(たい)して、言(い)い開(ひら)きをしなければならないであろう。 37あなたは、自分(じぶん)の言葉(ことば)によって正(ただ)しいとされ、また自分(じぶん)の言葉(ことば)によって罪(つみ)ありとされるからである」。

38そのとき、律法(りっぽう)学者(がくしゃ)、パリサイ人(びと)のうちのある人々(ひとびと)がイエスにむかって言(い)った、「先生(せんせい)、わたしたちはあなたから、しるしを見(み)せていただきとうございます」。 39すると、彼(かれ)らに答(こた)えて言(い)われた、「邪悪(じゃあく)で不義(ふぎ)な時代(じだい)は、しるしを求(もと)める。しかし、預言者(よげんしゃ)ヨナのしるしのほかには、なんのしるしも与(あた)えられないであろう。 40すなわち、ヨナが三日(か)三晩(ばん)、大魚(たいぎょ)の腹(はら)の中(うち)にいたように、人(ひと)の子(こ)も三日(か)三晩(ばん)、地(ち)の中(なか)にいるであろう。 41ニネベの人々(ひとびと)が、今(いま)の時代(じだい)の人々(ひとびと)と共(とも)にさばきの場(ば)に立(た)って、彼(かれ)らを罪(つみ)に定(さだ)めるであろう。なぜなら、ニネベの人々(ひとびと)はヨナの宣教(せんきょう)によって悔(く)い改(あらた)めたからである。しかし見(み)よ、ヨナにまさる者(もの)がここにいる。 42南(みなみ)の女王(じょおう)が、今(いま)の時代(じだい)の人々(ひとびと)と共(とも)にさばきの場(ば)に立(た)って、彼(かれ)らを罪(つみ)に定(さだ)めるであろう。なぜなら、彼女(かのじょ)はソロモンの知恵(ちえ)を聞(き)くために地(ち)の果(はて)から、はるばるきたからである。しかし見(み)よ、ソロモンにまさる者(もの)がここにいる。 43汚(けが)れた霊(れい)が人(ひと)から出(で)ると、休(やす)み場(ば)を求(もと)めて水(みず)の無(な)い所(ところ)を歩(ある)きまわるが、見(み)つからない。 44そこで、出(で)てきた元(もと)の家(いえ)に帰(かえ)ろうと言(い)って帰(かえ)って見(み)ると、その家(いえ)はあいていて、そうじがしてある上(うえ)、飾(かざ)りつけがしてあった。 45そこでまた出(で)て行(い)って、自分(じぶん)以上(いじょう)に悪(わる)い他(た)の七つの霊(れい)を一緒(いっしょ)に引(ひ)き連(つ)れてきて中(なか)にはいり、そこに住(す)み込(こ)む。そうすると、その人(ひと)ののちの状態(じょうたい)は初(はじ)めよりももっと悪(わる)くなるのである。よこしまな今(いま)の時代(じだい)も、このようになるであろう」。

46イエスがまだ群衆(ぐんしゅう)に話(はな)しておられるとき、その母(はは)と兄弟(きょうだい)たちとが、イエスに話(はな)そうと思(おも)って外(そと)に立(た)っていた。 47それで、ある人(ひと)がイエスに言(い)った、「ごらんなさい。あなたの母上(ははうえ)と兄弟(きょうだい)がたが、あなたに話(はな)そうと思(おも)って、外(そと)に立(た)っておられます」。 48イエスは知(し)らせてくれた者(もの)に答(こた)えて言(い)われた、「わたしの母(はは)とは、だれのことか。わたしの兄弟(きょうだい)とは、だれのことか」。 49そして、弟子(でし)たちの方(ほう)に手(て)をさし伸(の)べて言(い)われた、「ごらんなさい。ここにわたしの母(はは)、わたしの兄弟(きょうだい)がいる。 50天(てん)にいますわたしの父(ちち)のみこころを行(おこな)う者(もの)はだれでも、わたしの兄弟(きょうだい)、また姉妹(しまい)、また母(はは)なのである」。

第一三章

1その日(ひ)、イエスは家(いえ)を出(で)て、海(うみ)べにすわっておられた。 2ところが、大(おお)ぜいの群衆(ぐんしゅう)がみもとに集(あつ)まったので、イエスは舟(ふね)に乗(の)ってすわられ、群衆(ぐんしゅう)はみな岸(きし)に立(た)っていた。 3イエスは譬(たとえ)で多(おお)くの事(こと)を語(かた)り、こう言(い)われた、「見(み)よ、種(たね)まきが種(たね)をまきに出(で)て行(い)った。 4まいているうちに、道(みち)ばたに落(お)ちた種(たね)があった。すると、鳥(とり)がきて食(た)べてしまった。 5ほかの種(たね)は土(つち)の薄(うす)い石地(いしじ)に落(お)ちた。そこは土(つち)が深(ふか)くないので、すぐ芽(め)を出(だ)したが、 6日(ひ)が上(のぼ)ると焼(や)けて、根(ね)がないために枯(か)れてしまった。 7ほかの種(たね)はいばらの地(ち)に落(お)ちた。すると、いばらが伸(の)びて、ふさいでしまった。 8ほかの種(たね)は良(よ)い地(ち)に落(お)ちて実(み)を結(むす)び、あるものは百倍(ばい)、あるものは六十倍(ばい)、あるものは三十倍(ばい)にもなった。 9耳(みみ)のある者(もの)は聞(き)くがよい」。

10それから、弟子(でし)たちがイエスに近寄(ちかよ)ってきて言(い)った、「なぜ、彼(かれ)らに譬(たとえ)でお話(はな)しになるのですか」。 11そこでイエスは答(こた)えて言(い)われた、「あなたがたには、天国(てんごく)の奥義(おくぎ)を知(し)ることが許(ゆる)されているが、彼(かれ)らには許(ゆる)されていない。 12おおよそ、持(も)っている人(ひと)は与(あた)えられて、いよいよ豊(ゆた)かになるが、持(も)っていない人(ひと)は、持(も)っているものまでも取(と)り上(あ)げられるであろう。 13だから、彼(かれ)らには譬(たとえ)で語(かた)るのである。それは彼(かれ)らが、見(み)ても見(み)ず、聞(き)いても聞(き)かず、また悟(さと)らないからである。 14こうしてイザヤの言(い)った預言(よげん)が、彼(かれ)らの上(うえ)に成就(じょうじゅ)したのである。
『あなたがたは聞(き)くには聞(き)くが、決(けっ)して悟(さと)らない。
見(み)るには見(み)るが、決(けっ)して認(みと)めない。
15この民(たみ)の心(こころ)は鈍(にぶ)くなり、
その耳(みみ)は聞(きこ)えにくく、
その目(め)は閉(と)じている。
それは、彼(かれ)らが目(め)で見(み)ず、耳(みみ)で聞(き)かず、心(こころ)で悟(さと)らず、
悔(く)い改(あらた)めていやされることがないためである』。

16しかし、あなたがたの目(め)は見(み)ており、耳(みみ)は聞(き)いているから、さいわいである。 17あなたがたによく言(い)っておく。多(おお)くの預言者(よげんしゃ)や義人(ぎじん)は、あなたがたの見(み)ていることを見(み)ようと熱心(ねっしん)に願(ねが)ったが、見(み)ることができず、またあなたがたの聞(き)いていることを聞(き)こうとしたが、聞(き)けなかったのである。 18そこで、種(たね)まきの譬(たとえ)を聞(き)きなさい。 19だれでも御国(みくに)の言(ことば)を聞(き)いて悟(さと)らないならば、悪(わる)い者(もの)がきて、その人(ひと)の心(こころ)にまかれたものを奪(うば)いとって行(い)く。道(みち)ばたにまかれたものというのは、そういう人(ひと)のことである。 20石地(いしじ)にまかれたものというのは、御言(みことば)を聞(き)くと、すぐに喜(よろこ)んで受(う)ける人(ひと)のことである。 21その中(なか)に根(ね)がないので、しばらく続(つづ)くだけであって、御言(みことば)のために困難(こんなん)や迫害(はくがい)が起(おこ)ってくると、すぐつまずいてしまう。 22また、いばらの中(なか)にまかれたものとは、御言(みことば)を聞(き)くが、世(よ)の心(こころ)づかいと富(とみ)の惑(まど)わしとが御言(みことば)をふさぐので、実(み)を結(むす)ばなくなる人(ひと)のことである。 23また、良(よ)い地(ち)にまかれたものとは、御言(みことば)を聞(き)いて悟(さと)る人(ひと)のことであって、そういう人(ひと)が実(み)を結(むす)び、百倍(ばい)、あるいは六十倍(ばい)、あるいは三十倍(ばい)にもなるのである」。

24また、ほかの譬(たとえ)を彼(かれ)らに示(しめ)して言(い)われた、「天国(てんごく)は、良(よ)い種(たね)を自分(じぶん)の畑(はたけ)にまいておいた人(ひと)のようなものである。 25人々(ひとびと)が眠(ねむ)っている間(あいだ)に敵(てき)がきて、麦(むぎ)の中(なか)に毒(どく)麦(むぎ)をまいて立(た)ち去(さ)った。 26芽(め)がはえ出(で)て実(み)を結(むす)ぶと、同時(どうじ)に毒(どく)麦(むぎ)もあらわれてきた。 27僕(しもべ)たちがきて、家(いえ)の主人(しゅじん)に言(い)った、『ご主人様(しゅじんさま)、畑(はたけ)におまきになったのは、良(よ)い種(たね)ではありませんでしたか。どうして毒(どく)麦(むぎ)がはえてきたのですか』。 28主人(しゅじん)は言(い)った、『それは敵(てき)のしわざだ』。すると僕(しもべ)たちが言(い)った『では行(い)って、それを抜(ぬ)き集(あつ)めましょうか』。 29彼(かれ)は言(い)った、『いや、毒(どく)麦(むぎ)を集(あつ)めようとして、麦(むぎ)も一緒(いっしょ)に抜(ぬ)くかも知(し)れない。 30収穫(しゅうかく)まで、両方(りょうほう)とも育(そだ)つままにしておけ。収穫(しゅうかく)の時(とき)になったら、刈(か)る者(もの)に、まず毒(どく)麦(むぎ)を集(あつ)めて束(たば)にして焼(や)き、麦(むぎ)の方(ほう)は集(あつ)めて倉(くら)に入(い)れてくれ、と言(い)いつけよう』」。

31また、ほかの譬(たとえ)を彼(かれ)らに示(しめ)して言(い)われた、「天国(てんごく)は、一粒(つぶ)のからし種(だね)のようなものである。ある人(ひと)がそれをとって畑(はたけ)にまくと、 32それはどんな種(たね)よりも小(ちい)さいが、成長(せいちょう)すると、野菜(やさい)の中(なか)でいちばん大(おお)きくなり、空(そら)の鳥(とり)がきて、その枝(えだ)に宿(やど)るほどの木(き)になる」。

33またほかの譬(たとえ)を彼(かれ)らに語(かた)られた、「天国(てんごく)は、パン種(たね)のようなものである。女(おんな)がそれを取(と)って三斗(と)の粉(こな)の中(なか)に混(ま)ぜると、全体(ぜんたい)がふくらんでくる」。

34イエスはこれらのことをすべて、譬(たとえ)で群衆(ぐんしゅう)に語(かた)られた。譬(たとえ)によらないでは何事(なにごと)も彼(かれ)らに語(かた)られなかった。 35これは預言者(よげんしゃ)によって言(い)われたことが、成就(じょうじゅ)するためである、
「わたしは口(くち)を開(ひら)いて譬(たとえ)を語(かた)り、
世(よ)の初(はじ)めから隠(かく)されていることを語(かた)り出(だ)そう」。

36それからイエスは、群衆(ぐんしゅう)をあとに残(のこ)して家(いえ)にはいられた。すると弟子(でし)たちは、みもとにきて言(い)った、「畑(はたけ)の毒(どく)麦(むぎ)の譬(たとえ)を説明(せつめい)してください」。 37イエスは答(こた)えて言(い)われた、「良(よ)い種(たね)をまく者(もの)は、人(ひと)の子(こ)である。 38畑(はたけ)は世界(せかい)である。良(よ)い種(たね)と言(い)うのは御国(みくに)の子(こ)たちで、毒(どく)麦(むぎ)は悪(わる)い者(もの)の子(こ)たちである。 39それをまいた敵(てき)は悪魔(あくま)である。収穫(しゅうかく)とは世(よ)の終(おわ)りのことで、刈(か)る者(もの)は御使(みつかい)たちである。 40だから、毒(どく)麦(むぎ)が集(あつ)められて火(ひ)で焼(や)かれるように、世(よ)の終(おわ)りにもそのとおりになるであろう。 41人(ひと)の子(こ)はその使(つかい)たちをつかわし、つまずきとなるものと不法(ふほう)を行(おこな)う者(もの)とを、ことごとく御国(みくに)からとり集(あつ)めて、 42炉(ろ)の火(ひ)に投(な)げ入(い)れさせるであろう。そこでは泣(な)き叫(さけ)んだり、歯(は)がみをしたりするであろう。 43そのとき、義人(ぎじん)たちは彼(かれ)らの父(ちち)の御国(みくに)で、太陽(たいよう)のように輝(かがや)きわたるであろう。耳(みみ)のある者(もの)は聞(き)くがよい。

44天国(てんごく)は、畑(はたけ)に隠(かく)してある宝(たから)のようなものである。人(ひと)がそれを見(み)つけると隠(かく)しておき、喜(よろこ)びのあまり、行(い)って持(も)ち物(もの)をみな売(う)りはらい、そしてその畑(はたけ)を買(か)うのである。

45また天国(てんごく)は、良(よ)い真珠(しんじゅ)を捜(さが)している商人(しょうにん)のようなものである。 46高価(こうか)な真珠(しんじゅ)一個(こ)を見(み)いだすと、行(い)って持(も)ち物(もの)をみな売(う)りはらい、そしてこれを買(か)うのである。

47また天国(てんごく)は、海(うみ)におろして、あらゆる種類(しゅるい)の魚(うお)を囲(かこ)みいれる網(あみ)のようなものである。 48それがいっぱいになると岸(きし)に引(ひ)き上(あ)げ、そしてすわって、良(よ)いのを器(うつわ)に入(い)れ、悪(わる)いのを外(そと)へ捨(す)てるのである。 49世(よ)の終(おわ)りにも、そのとおりになるであろう。すなわち、御使(みつかい)たちがきて、義人(ぎじん)のうちから悪人(あくにん)をえり分(わ)け、 50そして炉(ろ)の火(ひ)に投(な)げこむであろう。そこでは泣(な)き叫(さけ)んだり、歯(は)がみをしたりするであろう。

51あなたがたは、これらのことが皆(みな)わかったか」。彼(かれ)らは「わかりました」と答(こた)えた。 52そこで、イエスは彼(かれ)らに言(い)われた、「それだから、天国(てんごく)のことを学(まな)んだ学者(がくしゃ)は、新(あたら)しいものと古(ふる)いものとを、その倉(くら)から取(と)り出(だ)す一家(いっか)の主人(しゅじん)のようなものである」。

53イエスはこれらの譬(たとえ)を語(かた)り終(お)えてから、そこを立(た)ち去(さ)られた。 54そして郷里(きょうり)に行(い)き、会堂(かいどう)で人々(ひとびと)を教(おし)えられたところ、彼(かれ)らは驚(おどろ)いて言(い)った、「この人(ひと)は、この知恵(ちえ)とこれらの力(ちから)あるわざとを、どこで習(なら)ってきたのか。 55この人(ひと)は大工(だいく)の子(こ)ではないか。母(はは)はマリヤといい、兄弟(きょうだい)たちは、ヤコブ、ヨセフ、シモン、ユダではないか。 56またその姉妹(しまい)たちもみな、わたしたちと一緒(いっしょ)にいるではないか。こんな数々(かずかず)のことを、いったい、どこで習(なら)ってきたのか」。 57こうして人々(ひとびと)はイエスにつまずいた。しかし、イエスは言(い)われた、「預言者(よげんしゃ)は、自分(じぶん)の郷里(きょうり)や自分(じぶん)の家(いえ)以外(いがい)では、どこででも敬(うやま)われないことはない」。 58そして彼(かれ)らの不(ふ)信仰(しんこう)のゆえに、そこでは力(ちから)あるわざを、あまりなさらなかった。

第一四章

1そのころ、領主(りょうしゅ)ヘロデはイエスのうわさを聞(き)いて、 2家来(けらい)に言(い)った、「あれはバプテスマのヨハネだ。死人(しにん)の中(なか)からよみがえったのだ。それで、あのような力(ちから)が彼(かれ)のうちに働(はたら)いているのだ」。 3というのは、ヘロデは先(さき)に、自分(じぶん)の兄弟(きょうだい)ピリポの妻(つま)ヘロデヤのことで、ヨハネを捕(とら)えて縛(しば)り、獄(ごく)に入(い)れていた。 4すなわち、ヨハネはヘロデに、「その女(おんな)をめとるのは、よろしくない」と言(い)ったからである。 5そこでヘロデはヨハネを殺(ころ)そうと思(おも)ったが、群衆(ぐんしゅう)を恐(おそ)れた。彼(かれ)らがヨハネを預言者(よげんしゃ)と認(みと)めていたからである。 6さてヘロデの誕生(たんじょう)日(び)の祝(いわい)に、ヘロデヤの娘(むすめ)がその席上(せきじょう)で舞(まい)をまい、ヘロデを喜(よろこ)ばせたので、 7彼女(かのじょ)の願(ねが)うものは、なんでも与(あた)えようと、彼(かれ)は誓(ちか)って約束(やくそく)までした。 8すると彼女(かのじょ)は母(はは)にそそのかされて、「バプテスマのヨハネの首(くび)を盆(ぼん)に載(の)せて、ここに持(も)ってきていただきとうございます」と言(い)った。 9王(おう)は困(こま)ったが、いったん誓(ちか)ったのと、また列座(れつざ)の人(ひと)たちの手前(てまえ)、それを与(あた)えるように命(めい)じ、 10人(ひと)をつかわして、獄中(ごくちゅう)でヨハネの首(くび)を切(き)らせた。 11その首(くび)は盆(ぼん)に載(の)せて運(はこ)ばれ、少女(しょうじょ)にわたされ、少女(しょうじょ)はそれを母(はは)のところに持(も)って行(い)った。 12それから、ヨハネの弟子(でし)たちがきて、死体(したい)を引(ひ)き取(と)って葬(ほうむ)った。そして、イエスのところに行(い)って報告(ほうこく)した。

13イエスはこのことを聞(き)くと、舟(ふね)に乗(の)ってそこを去(さ)り、自分(じぶん)ひとりで寂(さび)しい所(ところ)へ行(い)かれた。しかし、群衆(ぐんしゅう)はそれと聞(き)いて、町々(まちまち)から徒歩(とほ)であとを追(お)ってきた。 14イエスは舟(ふね)から上(あ)がって、大(おお)ぜいの群衆(ぐんしゅう)をごらんになり、彼(かれ)らを深(ふか)くあわれんで、そのうちの病人(びょうにん)たちをおいやしになった。 15夕方(ゆうがた)になったので、弟子(でし)たちがイエスのもとにきて言(い)った、「ここは寂(さび)しい所(ところ)でもあり、もう時(とき)もおそくなりました。群衆(ぐんしゅう)を解散(かいさん)させ、めいめいで食物(しょくもつ)を買(か)いに、村々(むらむら)へ行(い)かせてください」。 16するとイエスは言(い)われた、「彼(かれ)らが出(で)かけて行(い)くには及(およ)ばない。あなたがたの手(て)で食物(しょくもつ)をやりなさい」。 17弟子(でし)たちは言(い)った、「わたしたちはここに、パン五つと魚(うお)二ひきしか持(も)っていません」。 18イエスは言(い)われた、「それをここに持(も)ってきなさい」。 19そして群衆(ぐんしゅう)に命(めい)じて、草(くさ)の上(うえ)にすわらせ、五つのパンと二ひきの魚(うお)とを手(て)に取(と)り、天(てん)を仰(あお)いでそれを祝福(しゅくふく)し、パンをさいて弟子(でし)たちに渡(わた)された。弟子(でし)たちはそれを群衆(ぐんしゅう)に与(あた)えた。 20みんなの者(もの)は食(た)べて満腹(まんぷく)した。パンくずの残(のこ)りを集(あつ)めると、十二のかごにいっぱいになった。 21食(た)べた者(もの)は、女(おんな)と子供(こども)とを除(のぞ)いて、おおよそ五千人(にん)であった。

22それからすぐ、イエスは群衆(ぐんしゅう)を解散(かいさん)させておられる間(あいだ)に、しいて弟子(でし)たちを舟(ふね)に乗(の)り込(こ)ませ、向(む)こう岸(ぎし)へ先(さき)におやりになった。 23そして群衆(ぐんしゅう)を解散(かいさん)させてから、祈(いの)るためひそかに山(やま)へ登(のぼ)られた。夕方(ゆうがた)になっても、ただひとりそこにおられた。 24ところが舟(ふね)は、もうすでに陸(りく)から数丁(すうちょう)も離(はな)れており、逆風(ぎゃくふう)が吹(ふ)いていたために、波(なみ)に悩(なや)まされていた。 25イエスは夜明(よあ)けの四時(じ)ごろ、海(うみ)の上(うえ)を歩(ある)いて彼(かれ)らの方(ほう)へ行(い)かれた。 26弟子(でし)たちは、イエスが海(うみ)の上(うえ)を歩(ある)いておられるのを見(み)て、幽霊(ゆうれい)だと言(い)っておじ惑(まど)い、恐怖(きょうふ)のあまり叫(さけ)び声(ごえ)をあげた。 27しかし、イエスはすぐに彼(かれ)らに声(こえ)をかけて、「しっかりするのだ、わたしである。恐(おそ)れることはない」と言(い)われた。 28するとペテロが答(こた)えて言(い)った、「主(しゅ)よ、あなたでしたか。では、わたしに命(めい)じて、水(みず)の上(うえ)を渡(わた)ってみもとに行(い)かせてください」。 29イエスは、「おいでなさい」と言(い)われたので、ペテロは舟(ふね)からおり、水(みず)の上(うえ)を歩(ある)いてイエスのところへ行(い)った。 30しかし、風(かぜ)を見(み)て恐(おそ)ろしくなり、そしておぼれかけたので、彼(かれ)は叫(さけ)んで、「主(しゅ)よ、お助(たす)けください」と言(い)った。 31イエスはすぐに手(て)を伸(の)ばし、彼(かれ)をつかまえて言(い)われた、「信仰(しんこう)の薄(うす)い者(もの)よ、なぜ疑(うたが)ったのか」。 32ふたりが舟(ふね)に乗(の)り込(こ)むと、風(かぜ)はやんでしまった。 33舟(ふね)の中(なか)にいた者(もの)たちはイエスを拝(はい)して、「ほんとうに、あなたは神(かみ)の子(こ)です」と言(い)った。

34それから、彼(かれ)らは海(うみ)を渡(わた)ってゲネサレの地(ち)に着(つ)いた。 35するとその土地(とち)の人々(ひとびと)はイエスと知(し)って、その附近(ふきん)全体(ぜんたい)に人(ひと)をつかわし、イエスのところに病人(びょうにん)をみな連(つ)れてこさせた。 36そして彼(かれ)らにイエスの上着(うわぎ)のふさにでも、さわらせてやっていただきたいとお願(ねが)いした。そしてさわった者(もの)は皆(みな)いやされた。

第一五章

1ときに、パリサイ人(びと)と律法(りっぽう)学者(がくしゃ)たちとが、エルサレムからイエスのもとにきて言(い)った、 2「あなたの弟子(でし)たちは、なぜ昔(むかし)の人々(ひとびと)の言伝(いいつた)えを破(やぶ)るのですか。彼(かれ)らは食事(しょくじ)の時(とき)に手(て)を洗(あら)っていません」。 3イエスは答(こた)えて言(い)われた、「なぜ、あなたがたも自分(じぶん)たちの言伝(いいつた)えによって、神(かみ)のいましめを破(やぶ)っているのか。 4神(かみ)は言(い)われた、『父(ちち)と母(はは)とを敬(うやま)え』、また『父(ちち)または母(はは)をののしる者(もの)は、必(かなら)ず死(し)に定(さだ)められる』と。 5それだのに、あなたがたは『だれでも父(ちち)または母(はは)にむかって、あなたにさしあげるはずのこのものは供(そな)え物(もの)です、と言(い)えば、 6父(ちち)または母(はは)を敬(うやま)わなくてもよろしい』と言(い)っている。こうしてあなたがたは自分(じぶん)たちの言伝(いいつた)えによって、神(かみ)の言(ことば)を無(む)にしている。 7偽善者(ぎぜんしゃ)たちよ、イザヤがあなたがたについて、こういう適切(てきせつ)な預言(よげん)をしている、
8『この民(たみ)は、口(くち)さきではわたしを敬(うやま)うが、
その心(こころ)はわたしから遠(とお)く離(はな)れている。
9人間(にんげん)のいましめを教(おしえ)として教(おし)え、
無意味(むいみ)にわたしを拝(おが)んでいる』」。

10それからイエスは群衆(ぐんしゅう)を呼(よ)び寄(よ)せて言(い)われた、「聞(き)いて悟(さと)るがよい。 11口(くち)にはいるものは人(ひと)を汚(けが)すことはない。かえって、口(くち)から出(で)るものが人(ひと)を汚(けが)すのである」。 12そのとき、弟子(でし)たちが近寄(ちかよ)ってきてイエスに言(い)った、「パリサイ人(びと)たちが御言(みことば)を聞(き)いてつまずいたことを、ご存(ぞん)じですか」。 13イエスは答(こた)えて言(い)われた、「わたしの天(てん)の父(ちち)がお植(う)えにならなかったものは、みな抜(ぬ)き取(と)られるであろう。 14彼(かれ)らをそのままにしておけ。彼(かれ)らは盲人(もうじん)を手引(てび)きする盲人(もうじん)である。もし盲人(もうじん)が盲人(もうじん)を手引(てび)きするなら、ふたりとも穴(あな)に落(お)ち込(こ)むであろう」。 15ペテロが答(こた)えて言(い)った、「その譬(たとえ)を説明(せつめい)してください」。 16イエスは言(い)われた、「あなたがたも、まだわからないのか。 17口(くち)にはいってくるものは、みな腹(はら)の中(なか)にはいり、そして、外(そと)に出(で)て行(い)くことを知(し)らないのか。 18しかし、口(くち)から出(で)て行(い)くものは、心(こころ)の中(なか)から出(で)てくるのであって、それが人(ひと)を汚(けが)すのである。 19というのは、悪(わる)い思(おも)い、すなわち、殺人(さつじん)、姦淫(かんいん)、不品行(ふひんこう)、盗(ぬす)み、偽証(ぎしょう)、誹(そし)りは、心(こころ)の中(なか)から出(で)てくるのであって、 20これらのものが人(ひと)を汚(けが)すのである。しかし、洗(あら)わない手(て)で食事(しょくじ)することは、人(ひと)を汚(けが)すのではない」。

21さて、イエスはそこを出(で)て、ツロとシドンとの地方(ちほう)へ行(い)かれた。 22すると、そこへ、その地方(ちほう)出(で)のカナンの女(おんな)が出(で)てきて、「主(しゅ)よ、ダビデの子(こ)よ、わたしをあわれんでください。娘(むすめ)が悪霊(あくれい)にとりつかれて苦(くる)しんでいます」と言(い)って叫(さけ)びつづけた。 23しかし、イエスはひと言(こと)もお答(こた)えにならなかった。そこで弟子(でし)たちがみもとにきて願(ねが)って言(い)った、「この女(おんな)を追(お)い払(はら)ってください。叫(さけ)びながらついてきていますから」。 24するとイエスは答(こた)えて言(い)われた、「わたしは、イスラエルの家(いえ)の失(うしな)われた羊(ひつじ)以外(いがい)の者(もの)には、つかわされていない」。 25しかし、女(おんな)は近寄(ちかよ)りイエスを拝(はい)して言(い)った、「主(しゅ)よ、わたしをお助(たす)けください」。 26イエスは答(こた)えて言(い)われた、「子供(こども)たちのパンを取(と)って小犬(こいぬ)に投(な)げてやるのは、よろしくない」。 27すると女(おんな)は言(い)った、「主(しゅ)よ、お言葉(ことば)どおりです。でも、小犬(こいぬ)もその主人(しゅじん)の食卓(しょくたく)から落(お)ちるパンくずは、いただきます」。 28そこでイエスは答(こた)えて言(い)われた、「女(おんな)よ、あなたの信仰(しんこう)は見(み)あげたものである。あなたの願(ねが)いどおりになるように」。その時(とき)に、娘(むすめ)はいやされた。

29イエスはそこを去(さ)って、ガリラヤの海(うみ)べに行(い)き、それから山(やま)に登(のぼ)ってそこにすわられた。 30すると大(おお)ぜいの群衆(ぐんしゅう)が、足(あし)なえ、不具者(ふぐしゃ)、盲人(もうじん)、おし、そのほか多(おお)くの人々(ひとびと)を連(つ)れてきて、イエスの足(あし)もとに置(お)いたので、彼(かれ)らをおいやしになった。 31群衆(ぐんしゅう)は、おしが物(もの)を言(い)い、不具者(ふぐしゃ)が直(なお)り、足(あし)なえが歩(ある)き、盲人(もうじん)が見(み)えるようになったのを見(み)て驚(おどろ)き、そしてイスラエルの神(かみ)をほめたたえた。

32イエスは弟子(でし)たちを呼(よ)び寄(よ)せて言(い)われた、「この群衆(ぐんしゅう)がかわいそうである。もう三日間(かかん)もわたしと一緒(いっしょ)にいるのに、何(なに)も食(た)べるものがない。しかし、彼(かれ)らを空腹(くうふく)のままで帰(かえ)らせたくはない。恐(おそ)らく途中(とちゅう)で弱(よわ)り切(き)ってしまうであろう」。 33弟子(でし)たちは言(い)った、「荒野(あらの)の中(なか)で、こんなに大(おお)ぜいの群衆(ぐんしゅう)にじゅうぶん食(た)べさせるほどたくさんのパンを、どこで手(て)に入(い)れましょうか」。 34イエスは弟子(でし)たちに「パンはいくつあるか」と尋(たず)ねられると、「七つあります。また小(ちい)さい魚(うお)が少(すこ)しあります」と答(こた)えた。 35そこでイエスは群衆(ぐんしゅう)に、地(ち)にすわるようにと命(めい)じ、 36七つのパンと魚(うお)とを取(と)り、感謝(かんしゃ)してこれをさき、弟子(でし)たちにわたされ、弟子(でし)たちはこれを群衆(ぐんしゅう)にわけた。 37一同(いちどう)の者(もの)は食(た)べて満腹(まんぷく)した。そして残(のこ)ったパンくずを集(あつ)めると、七つのかごにいっぱいになった。 38食(た)べた者(もの)は、女(おんな)と子供(こども)とを除(のぞ)いて四千人(にん)であった。 39そこでイエスは群衆(ぐんしゅう)を解散(かいさん)させ、舟(ふね)に乗(の)ってマガダンの地方(ちほう)へ行(い)かれた。

第一六章

1パリサイ人(びと)とサドカイ人(びと)とが近寄(ちかよ)ってきて、イエスを試(こころ)み、天(てん)からのしるしを見(み)せてもらいたいと言(い)った。 2イエスは彼(かれ)らに言(い)われた、「あなたがたは夕方(ゆうがた)になると、『空(そら)がまっかだから、晴(はれ)だ』と言(い)い、 3また明(あ)け方(がた)には『空(そら)が曇(くも)ってまっかだから、きょうは荒(あ)れだ』と言(い)う。あなたがたは空(そら)の模様(もよう)を見分(みわ)けることを知(し)りながら、時(とき)のしるしを見分(みわ)けることができないのか。 4邪悪(じゃあく)で不義(ふぎ)な時代(じだい)は、しるしを求(もと)める。しかし、ヨナのしるしのほかには、なんのしるしも与(あた)えられないであろう」。そして、イエスは彼(かれ)らをあとに残(のこ)して立(た)ち去(さ)られた。

5弟子(でし)たちは向(む)こう岸(ぎし)に行(い)ったが、パンを持(も)って来(く)るのを忘(わす)れていた。 6そこでイエスは言(い)われた、「パリサイ人(びと)とサドカイ人(びと)とのパン種(だね)を、よくよく警戒(けいかい)せよ」。 7弟子(でし)たちは、これは自分(じぶん)たちがパンを持(も)ってこなかったためであろうと言(い)って、互(たがい)に論(ろん)じ合(あ)った。 8イエスはそれと知(し)って言(い)われた、「信仰(しんこう)の薄(うす)い者(もの)たちよ、なぜパンがないからだと互(たがい)に論(ろん)じ合(あ)っているのか。 9まだわからないのか。覚(おぼ)えていないのか。五つのパンを五千人(にん)に分(わ)けたとき、幾(いく)かご拾(ひろ)ったか。 10また、七つのパンを四千人(にん)に分(わ)けたとき、幾(いく)かご拾(ひろ)ったか。 11わたしが言(い)ったのは、パンについてではないことを、どうして悟(さと)らないのか。ただ、パリサイ人(びと)とサドカイ人(びと)とのパン種(だね)を警戒(けいかい)しなさい」。 12そのとき彼(かれ)らは、イエスが警戒(けいかい)せよと言(い)われたのは、パン種(だね)のことではなく、パリサイ人(びと)とサドカイ人(びと)との教(おしえ)のことであると悟(さと)った。

13イエスがピリポ・カイザリヤの地方(ちほう)に行(い)かれたとき、弟子(でし)たちに尋(たず)ねて言(い)われた、「人々(ひとびと)は人(ひと)の子(こ)をだれと言(い)っているか」。 14彼(かれ)らは言(い)った、「ある人々(ひとびと)はバプテスマのヨハネだと言(い)っています。しかし、ほかの人(ひと)たちは、エリヤだと言(い)い、また、エレミヤあるいは預言者(よげんしゃ)のひとりだ、と言(い)っている者(もの)もあります」。 15そこでイエスは彼(かれ)らに言(い)われた、「それでは、あなたがたはわたしをだれと言(い)うか」。 16シモン・ペテロが答(こた)えて言(い)った、「あなたこそ、生(い)ける神(かみ)の子(こ)キリストです」。 17すると、イエスは彼(かれ)にむかって言(い)われた、「バルヨナ・シモン、あなたはさいわいである。あなたにこの事(こと)をあらわしたのは、血肉(けつにく)ではなく、天(てん)にいますわたしの父(ちち)である。 18そこで、わたしもあなたに言(い)う。あなたはペテロである。そして、わたしはこの岩(いわ)の上(うえ)にわたしの教会(きょうかい)を建(た)てよう。黄泉(よみ)の力(ちから)もそれに打(う)ち勝(か)つことはない。 19わたしは、あなたに天国(てんごく)のかぎを授(さづ)けよう。そして、あなたが地上(ちじょう)でつなぐことは、天(てん)でもつながれ、あなたが地上(ちじょう)で解(と)くことは天(てん)でも解(と)かれるであろう」。 20そのとき、イエスは、自分(じぶん)がキリストであることをだれにも言(い)ってはいけないと、弟子(でし)たちを戒(いまし)められた。

21この時(とき)から、イエス・キリストは、自分(じぶん)が必(かなら)ずエルサレムに行(い)き、長老(ちょうろう)、祭司長(さいしちょう)、律法(りっぽう)学者(がくしゃ)たちから多(おお)くの苦(くる)しみを受(う)け、殺(ころ)され、そして三日(か)目(め)によみがえるべきことを、弟子(でし)たちに示(しめ)しはじめられた。 22すると、ペテロはイエスをわきへ引(ひ)き寄(よ)せて、いさめはじめ、「主(しゅ)よ、とんでもないことです。そんなことがあるはずはございません」と言(い)った。 23イエスは振(ふ)り向(む)いて、ペテロに言(い)われた、「サタンよ、引(ひ)きさがれ。わたしの邪魔(じゃま)をする者(もの)だ。あなたは神(かみ)のことを思(おも)わないで、人(ひと)のことを思(おも)っている」。 24それからイエスは弟子(でし)たちに言(い)われた、「だれでもわたしについてきたいと思(おも)うなら、自分(じぶん)を捨(す)て、自分(じぶん)の十字架(じゅうじか)を負(お)うて、わたしに従(したが)ってきなさい。 25自分(じぶん)の命(いのち)を救(すく)おうと思(おも)う者(もの)はそれを失(うしな)い、わたしのために自分(じぶん)の命(いのち)を失(うしな)う者(もの)は、それを見(み)いだすであろう。 26たとい人(ひと)が全(ぜん)世界(せかい)をもうけても、自分(じぶん)の命(いのち)を損(そん)したら、なんの得(とく)になろうか。また、人(ひと)はどんな代価(だいか)を払(はら)って、その命(いのち)を買(か)いもどすことができようか。 27人(ひと)の子(こ)は父(ちち)の栄光(えいこう)のうちに、御使(みつかい)たちを従(したが)えて来(く)るが、その時(とき)には、実際(じっさい)のおこないに応(おう)じて、それぞれに報(むく)いるであろう。 28よく聞(き)いておくがよい、人(ひと)の子(こ)が御国(みくに)の力(ちから)をもって来(く)るのを見(み)るまでは、死(し)を味(あじ)わわない者(もの)が、ここに立(た)っている者(もの)の中(なか)にいる」。

第一七章

1六日(むいか)ののち、イエスはペテロ、ヤコブ、ヤコブの兄弟(きょうだい)ヨハネだけを連(つ)れて、高(たか)い山(やま)に登(のぼ)られた。 2ところが、彼(かれ)らの目(め)の前(まえ)でイエスの姿(すがた)が変(かわ)り、その顔(かお)は日(ひ)のように輝(かがや)き、その衣(ころも)は光(ひかり)のように白(しろ)くなった。 3すると、見(み)よ、モーセとエリヤが彼(かれ)らに現(あらわ)れて、イエスと語(かた)り合(あ)っていた。 4ペテロはイエスにむかって言(い)った、「主(しゅ)よ、わたしたちがここにいるのは、すばらしいことです。もし、おさしつかえなければ、わたしはここに小屋(こや)を三つ建(た)てましょう。一つはあなたのために、一つはモーセのために、一つはエリヤのために」。 5彼(かれ)がまだ話(はな)し終(お)えないうちに、たちまち、輝(かがや)く雲(くも)が彼(かれ)らをおおい、そして雲(くも)の中(なか)から声(こえ)がした、「これはわたしの愛(あい)する子(こ)、わたしの心(こころ)にかなう者(もの)である。これに聞(き)け」。 6弟子(でし)たちはこれを聞(き)いて非常(ひじょう)に恐(おそ)れ、顔(かお)を地(ち)に伏(ふ)せた。 7イエスは近(ちか)づいてきて、手(て)を彼(かれ)らにおいて言(い)われた、「起(お)きなさい、恐(おそ)れることはない」。 8彼(かれ)らが目(め)をあげると、イエスのほかには、だれも見(み)えなかった。

9一同(いちどう)が山(やま)を下(くだ)って来(く)るとき、イエスは「人(ひと)の子(こ)が死人(しにん)の中(なか)からよみがえるまでは、いま見(み)たことをだれにも話(はな)してはならない」と、彼(かれ)らに命(めい)じられた。 10弟子(でし)たちはイエスにお尋(たず)ねして言(い)った、「いったい、律法(りっぽう)学者(がくしゃ)たちは、なぜ、エリヤが先(さき)に来(く)るはずだと言(い)っているのですか」。 11答(こた)えて言(い)われた、「確(たし)かに、エリヤがきて、万事(ばんじ)を元(もと)どおりに改(あらた)めるであろう。 12しかし、あなたがたに言(い)っておく。エリヤはすでにきたのだ。しかし人々(ひとびと)は彼(かれ)を認(みと)めず、自分(じぶん)かってに彼(かれ)をあしらった。人(ひと)の子(こ)もまた、そのように彼(かれ)らから苦(くる)しみを受(う)けることになろう」。 13そのとき、弟子(でし)たちは、イエスがバプテスマのヨハネのことを言(い)われたのだと悟(さと)った。

14さて彼(かれ)らが群衆(ぐんしゅう)のところに帰(かえ)ると、ひとりの人(ひと)がイエスに近寄(ちかよ)ってきて、ひざまずいて、言(い)った、 15「主(しゅ)よ、わたしの子(こ)をあわれんでください。てんかんで苦(くる)しんでおります。何(なん)度(ど)も何(なん)度(ど)も火(ひ)の中(なか)や水(みず)の中(なか)に倒(たお)れるのです。 16それで、その子(こ)をお弟子(でし)たちのところに連(つ)れてきましたが、なおしていただけませんでした」。 17イエスは答(こた)えて言(い)われた、「ああ、なんという不(ふ)信仰(しんこう)な、曲(まが)った時代(じだい)であろう。いつまで、わたしはあなたがたと一緒(いっしょ)におられようか。いつまであなたがたに我慢(がまん)ができようか。その子(こ)をここに、わたしのところに連(つ)れてきなさい」。 18イエスがおしかりになると、悪霊(あくれい)はその子(こ)から出(で)て行(い)った。そして子(こ)はその時(とき)いやされた。 19それから、弟子(でし)たちがひそかにイエスのもとにきて言(い)った、「わたしたちは、どうして霊(れい)を追(お)い出(だ)せなかったのですか」。 20するとイエスは言(い)われた、「あなたがたの信仰(しんこう)が足(た)りないからである。よく言(い)い聞(き)かせておくが、もし、からし種(だね)一粒(つぶ)ほどの信仰(しんこう)があるなら、この山(やま)にむかって『ここからあそこに移(うつ)れ』と言(い)えば、移(うつ)るであろう。このように、あなたがたにできない事(こと)は、何(なに)もないであろう。〔 21しかし、このたぐいは、祈(いのり)と断食(だんじき)とによらなければ、追(お)い出(だ)すことはできない〕」。

22彼(かれ)らがガリラヤで集(あつ)まっていた時(とき)、イエスは言(い)われた、「人(ひと)の子(こ)は人々(ひとびと)の手(て)にわたされ、 23彼(かれ)らに殺(ころ)され、そして三日(か)目(め)によみがえるであろう」。弟子(でし)たちは非常(ひじょう)に心(こころ)をいためた。

24彼(かれ)らがカペナウムにきたとき、宮(みや)の納入(のうにゅう)金(きん)を集(あつ)める人(ひと)たちがペテロのところにきて言(い)った、「あなたがたの先生(せんせい)は宮(みや)の納入(のうにゅう)金(きん)を納(おさ)めないのか」。 25ペテロは「納(おさ)めておられます」と言(い)った。そして彼(かれ)が家(いえ)にはいると、イエスから先(さき)に話(はな)しかけて言(い)われた、「シモン、あなたはどう思(おも)うか。この世(よ)の王(おう)たちは税(ぜい)や貢(みつぎ)をだれから取(と)るのか。自分(じぶん)の子(こ)からか、それとも、ほかの人(ひと)たちからか」。 26ペテロが「ほかの人(ひと)たちからです」と答(こた)えると、イエスは言(い)われた、「それでは、子(こ)は納(おさ)めなくてもよいわけである。 27しかし、彼(かれ)らをつまずかせないために、海(うみ)に行(い)って、つり針(はり)をたれなさい。そして最初(さいしょ)につれた魚(うお)をとって、その口(くち)をあけると、銀貨(ぎんか)一枚(まい)が見(み)つかるであろう。それをとり出(だ)して、わたしとあなたのために納(おさ)めなさい」。

第一八章

1そのとき、弟子(でし)たちがイエスのもとにきて言(い)った、「いったい、天国(てんごく)ではだれがいちばん偉(えら)いのですか」。 2すると、イエスは幼(おさ)な子(ご)を呼(よ)び寄(よ)せ、彼(かれ)らのまん中(なか)に立(た)たせて言(い)われた、 3「よく聞(き)きなさい。心(こころ)をいれかえて幼(おさ)な子(ご)のようにならなければ、天国(てんごく)にはいることはできないであろう。 4この幼(おさ)な子(ご)のように自分(じぶん)を低(ひく)くする者(もの)が、天国(てんごく)でいちばん偉(えら)いのである。 5また、だれでも、このようなひとりの幼(おさ)な子(ご)を、わたしの名(な)のゆえに受(う)けいれる者(もの)は、わたしを受(う)けいれるのである。 6しかし、わたしを信(しん)ずるこれらの小(ちい)さい者(もの)のひとりをつまずかせる者(もの)は、大(おお)きなひきうすを首(くび)にかけられて海(うみ)の深(ふか)みに沈(しず)められる方(ほう)が、その人(ひと)の益(えき)になる。 7この世(よ)は、罪(つみ)の誘惑(ゆうわく)があるから、わざわいである。罪(つみ)の誘惑(ゆうわく)は必(かなら)ず来(く)る。しかし、それをきたらせる人(ひと)は、わざわいである。 8もしあなたの片手(かたて)または片足(かたあし)が、罪(つみ)を犯(おか)させるなら、それを切(き)って捨(す)てなさい。両手(りょうて)、両足(りょうあし)がそろったままで、永遠(えいえん)の火(ひ)に投(な)げ込(こ)まれるよりは、片手(かたて)、片足(かたあし)になって命(いのち)に入(はい)る方(ほう)がよい。 9もしあなたの片目(かため)が罪(つみ)を犯(おか)させるなら、それを抜(ぬ)き出(だ)して捨(す)てなさい。両(りょう)眼(がん)がそろったままで地獄(じごく)の火(ひ)に投(な)げ入(い)れられるよりは、片目(かため)になって命(いのち)に入(はい)る方(ほう)がよい。 10あなたがたは、これらの小(ちい)さい者(もの)のひとりをも軽(かろ)んじないように、気(き)をつけなさい。あなたがたに言(い)うが、彼(かれ)らの御使(みつかい)たちは天(てん)にあって、天(てん)にいますわたしの父(ちち)のみ顔(かお)をいつも仰(あお)いでいるのである。〔 11人(ひと)の子(こ)は、滅(ほろ)びる者(もの)を救(すく)うためにきたのである。〕 12あなたがたはどう思(おも)うか。ある人(ひと)に百匹(ぴき)の羊(ひつじ)があり、その中(なか)の一匹(ぴき)が迷(まよ)い出(で)たとすれば、九十九匹(ひき)を山(やま)に残(のこ)しておいて、その迷(まよ)い出(で)ている羊(ひつじ)を捜(さが)しに出(で)かけないであろうか。 13もしそれを見(み)つけたなら、よく聞(き)きなさい、迷(まよ)わないでいる九十九匹(ひき)のためよりも、むしろその一匹(ぴき)のために喜(よろこ)ぶであろう。 14そのように、これらの小(ちい)さい者(もの)のひとりが滅(ほろ)びることは、天(てん)にいますあなたがたの父(ちち)のみこころではない。

15もしあなたの兄弟(きょうだい)が罪(つみ)を犯(おか)すなら、行(い)って、彼(かれ)とふたりだけの所(ところ)で忠告(ちゅうこく)しなさい。もし聞(き)いてくれたら、あなたの兄弟(きょうだい)を得(え)たことになる。 16もし聞(き)いてくれないなら、ほかにひとりふたりを、一緒(いっしょ)に連(つ)れて行(い)きなさい。それは、ふたりまたは三人(にん)の証人(しょうにん)の口(くち)によって、すべてのことがらが確(たし)かめられるためである。 17もし彼(かれ)らの言(い)うことを聞(き)かないなら、教会(きょうかい)に申(もう)し出(で)なさい。もし教会(きょうかい)の言(い)うことも聞(き)かないなら、その人(ひと)を異邦人(いほうじん)または取税人(しゅぜいにん)同様(どうよう)に扱(あつか)いなさい。 18よく言(い)っておく。あなたがたが地上(ちじょう)でつなぐことは、天(てん)でも皆(みな)つながれ、あなたがたが地上(ちじょう)で解(と)くことは、天(てん)でもみな解(と)かれるであろう。 19また、よく言(い)っておく。もしあなたがたのうちのふたりが、どんな願(ねが)い事(ごと)についても地上(ちじょう)で心(こころ)を合(あ)わせるなら、天(てん)にいますわたしの父(ちち)はそれをかなえて下(くだ)さるであろう。 20ふたりまたは三人(にん)が、わたしの名(な)によって集(あつ)まっている所(ところ)には、わたしもその中(なか)にいるのである」。

21そのとき、ペテロがイエスのもとにきて言(い)った、「主(しゅ)よ、兄弟(きょうだい)がわたしに対(たい)して罪(つみ)を犯(おか)した場合(ばあい)、幾(いく)たびゆるさねばなりませんか。七たびまでですか」。 22イエスは彼(かれ)に言(い)われた、「わたしは七たびまでとは言(い)わない。七たびを七十倍(ばい)するまでにしなさい。 23それだから、天国(てんごく)は王(おう)が僕(しもべ)たちと決算(けっさん)をするようなものだ。 24決算(けっさん)が始(はじ)まると、一万タラントの負債(ふさい)のある者(もの)が、王(おう)のところに連(つ)れられてきた。 25しかし、返(かえ)せなかったので、主人(しゅじん)は、その人(ひと)自身(じしん)とその妻子(さいし)と持(も)ち物(もの)全部(ぜんぶ)とを売(う)って返(かえ)すように命(めい)じた。 26そこで、この僕(しもべ)はひれ伏(ふ)して哀願(あいがん)した、『どうぞお待(ま)ちください。全部(ぜんぶ)お返(かえ)しいたしますから』。 27僕(しもべ)の主人(しゅじん)はあわれに思(おも)って、彼(かれ)をゆるし、その負債(ふさい)を免(めん)じてやった。 28その僕(しもべ)が出(で)て行(い)くと、百デナリを貸(か)しているひとりの仲間(なかま)に出会(であ)い、彼(かれ)をつかまえ、首(くび)をしめて『借金(しゃっきん)を返(かえ)せ』と言(い)った。 29そこでこの仲間(なかま)はひれ伏(ふ)し、『どうか待(ま)ってくれ。返(かえ)すから』と言(い)って頼(たの)んだ。 30しかし承知(しょうち)せずに、その人(ひと)をひっぱって行(い)って、借金(しゃっきん)を返(かえ)すまで獄(ごく)に入(い)れた。 31その人(ひと)の仲間(なかま)たちは、この様子(ようす)を見(み)て、非常(ひじょう)に心(こころ)をいため、行(い)ってそのことをのこらず主人(しゅじん)に話(はな)した。 32そこでこの主人(しゅじん)は彼(かれ)を呼(よ)びつけて言(い)った、『悪(わる)い僕(しもべ)、わたしに願(ねが)ったからこそ、あの負債(ふさい)を全部(ぜんぶ)ゆるしてやったのだ。 33わたしがあわれんでやったように、あの仲間(なかま)をあわれんでやるべきではなかったか』。 34そして主人(しゅじん)は立腹(りっぷく)して、負債(ふさい)全部(ぜんぶ)を返(かえ)してしまうまで、彼(かれ)を獄吏(ごくり)に引(ひ)きわたした。 35あなたがためいめいも、もし心(こころ)から兄弟(きょうだい)をゆるさないならば、わたしの天(てん)の父(ちち)もまたあなたがたに対(たい)して、そのようになさるであろう」。

第一九章

1イエスはこれらのことを語(かた)り終(お)えられてから、ガリラヤを去(さ)ってヨルダンの向(む)こうのユダヤの地方(ちほう)へ行(い)かれた。 2すると大(おお)ぜいの群衆(ぐんしゅう)がついてきたので、彼(かれ)らをそこでおいやしになった。

3さてパリサイ人(びと)たちが近(ちか)づいてきて、イエスを試(こころ)みようとして言(い)った、「何(なに)かの理由(りゆう)で、夫(おっと)がその妻(つま)を出(だ)すのは、さしつかえないでしょうか」。 4イエスは答(こた)えて言(い)われた、「あなたがたはまだ読(よ)んだことがないのか。『創造者(そうぞうしゃ)は初(はじ)めから人(ひと)を男(おとこ)と女(おんな)とに造(つく)られ、 5そして言(い)われた、それゆえに、人(ひと)は父母(ふぼ)を離(はな)れ、その妻(つま)と結(むす)ばれ、ふたりの者(もの)は一体(いったい)となるべきである』。 6彼(かれ)らはもはや、ふたりではなく一体(いったい)である。だから、神(かみ)が合(あ)わせられたものを、人(ひと)は離(はな)してはならない」。 7彼(かれ)らはイエスに言(い)った、「それでは、なぜモーセは、妻(つま)を出(だ)す場合(ばあい)には離縁(りえん)状(じょう)を渡(わた)せ、と定(さだ)めたのですか」。 8イエスが言(い)われた、「モーセはあなたがたの心(こころ)が、かたくななので、妻(つま)を出(だ)すことを許(ゆる)したのだが、初(はじ)めからそうではなかった。 9そこでわたしはあなたがたに言(い)う。不品行(ふひんこう)のゆえでなくて、自分(じぶん)の妻(つま)を出(だ)して他(た)の女(おんな)をめとる者(もの)は、姦淫(かんいん)を行(おこな)うのである」。 10弟子(でし)たちは言(い)った、「もし妻(つま)に対(たい)する夫(おっと)の立場(たちば)がそうだとすれば、結婚(けっこん)しない方(ほう)がましです」。 11するとイエスは彼(かれ)らに言(い)われた、「その言葉(ことば)を受(う)けいれることができるのはすべての人(ひと)ではなく、ただそれを授(さづ)けられている人々(ひとびと)だけである。 12というのは、母(はは)の胎内(たいない)から独身者(どくしんしゃ)に生(うま)れついているものがあり、また他(ほか)から独身者(どくしんしゃ)にされたものもあり、また天国(てんごく)のために、みずから進(すす)んで独身者(どくしんしゃ)となったものもある。この言葉(ことば)を受(う)けられる者(もの)は、受(う)けいれるがよい」。

13そのとき、イエスに手(て)をおいて祈(いの)っていただくために、人々(ひとびと)が幼(おさ)な子(ご)らをみもとに連(つ)れてきた。ところが、弟子(でし)たちは彼(かれ)らをたしなめた。 14するとイエスは言(い)われた、「幼(おさ)な子(ご)らをそのままにしておきなさい。わたしのところに来(く)るのをとめてはならない。天国(てんごく)はこのような者(もの)の国(くに)である」。 15そして手(て)を彼(かれ)らの上(うえ)においてから、そこを去(さ)って行(い)かれた。

16すると、ひとりの人(ひと)がイエスに近寄(ちかよ)ってきて言(い)った、「先生(せんせい)、永遠(えいえん)の生命(せいめい)を得(え)るためには、どんなよいことをしたらいいでしょうか」。 17イエスは言(い)われた、「なぜよい事(こと)についてわたしに尋(たず)ねるのか。よいかたはただひとりだけである。もし命(いのち)に入(はい)りたいと思(おも)うなら、いましめを守(まも)りなさい」。 18彼(かれ)は言(い)った、「どのいましめですか」。イエスは言(い)われた、「『殺(ころ)すな、姦淫(かんいん)するな、盗(ぬす)むな、偽証(ぎしょう)を立(た)てるな。 19父(ちち)と母(はは)とを敬(うやま)え』。また『自分(じぶん)を愛(あい)するように、あなたの隣(とな)り人(ひと)を愛(あい)せよ』」。 20この青年(せいねん)はイエスに言(い)った、「それはみな守(まも)ってきました。ほかに何(なに)が足(た)りないのでしょう」。 21イエスは彼(かれ)に言(い)われた、「もしあなたが完全(かんぜん)になりたいと思(おも)うなら、帰(かえ)ってあなたの持(も)ち物(もの)を売(う)り払(はら)い、貧(まず)しい人々(ひとびと)に施(ほどこ)しなさい。そうすれば、天(てん)に宝(たから)を持(も)つようになろう。そして、わたしに従(したが)ってきなさい」。 22この言葉(ことば)を聞(き)いて、青年(せいねん)は悲(かな)しみながら立(た)ち去(さ)った。たくさんの資産(しさん)を持(も)っていたからである。

23それからイエスは弟子(でし)たちに言(い)われた、「よく聞(き)きなさい。富(と)んでいる者(もの)が天国(てんごく)にはいるのは、むずかしいものである。 24また、あなたがたに言(い)うが、富(と)んでいる者(もの)が神(かみ)の国(くに)にはいるよりは、らくだが針(はり)の穴(あな)を通(とお)る方(ほう)が、もっとやさしい」。 25弟子(でし)たちはこれを聞(き)いて非常(ひじょう)に驚(おどろ)いて言(い)った、「では、だれが救(すく)われることができるのだろう」。 26イエスは彼(かれ)らを見(み)つめて言(い)われた、「人(ひと)にはそれはできないが、神(かみ)にはなんでもできない事(こと)はない」。 27そのとき、ペテロがイエスに答(こた)えて言(い)った、「ごらんなさい、わたしたちはいっさいを捨(す)てて、あなたに従(したが)いました。ついては、何(なに)がいただけるでしょうか」。 28イエスは彼(かれ)らに言(い)われた、「よく聞(き)いておくがよい。世(よ)が改(あらた)まって、人(ひと)の子(こ)がその栄光(えいこう)の座(ざ)につく時(とき)には、わたしに従(したが)ってきたあなたがたもまた、十二の位(くらい)に座(ざ)してイスラエルの十二の部族(ぶぞく)をさばくであろう。 29おおよそ、わたしの名(な)のために、家(いえ)、兄弟(きょうだい)、姉妹(しまい)、父(ちち)、母(はは)、子(こ)、もしくは畑(はたけ)を捨(す)てた者(もの)は、その幾(いく)倍(ばい)もを受(う)け、また永遠(えいえん)の生命(せいめい)を受(う)けつぐであろう。 30しかし、多(おお)くの先(さき)の者(もの)はあとになり、あとの者(もの)は先(さき)になるであろう。

第二〇章

1天国(てんごく)は、ある家(いえ)の主人(しゅじん)が、自分(じぶん)のぶどう園(えん)に労働者(ろうどうしゃ)を雇(やと)うために、夜(よ)が明(あ)けると同時(どうじ)に、出(で)かけて行(い)くようなものである。 2彼(かれ)は労働者(ろうどうしゃ)たちと、一日(にち)一デナリの約束(やくそく)をして、彼(かれ)らをぶどう園(えん)に送(おく)った。 3それから九時(じ)ごろに出(で)て行(い)って、他(た)の人々(ひとびと)が市場(いちば)で何(なに)もせずに立(た)っているのを見(み)た。 4そして、その人(ひと)たちに言(い)った、『あなたがたも、ぶどう園(えん)に行(い)きなさい。相当(そうとう)な賃銀(ちんぎん)を払(はら)うから』。 5そこで、彼(かれ)らは出(で)かけて行(い)った。主人(しゅじん)はまた、十二時(じ)ごろと三時(じ)ごろとに出(で)て行(い)って、同(おな)じようにした。 6五時(とき)ごろまた出(で)て行(い)くと、まだ立(た)っている人々(ひとびと)を見(み)たので、彼(かれ)らに言(い)った、『なぜ、何(なに)もしないで、一日(にち)中(ぢゅう)ここに立(た)っていたのか』。 7彼(かれ)らが『だれもわたしたちを雇(やと)ってくれませんから』と答(こた)えたので、その人々(ひとびと)に言(い)った、『あなたがたも、ぶどう園(えん)に行(い)きなさい』。 8さて、夕方(ゆうがた)になって、ぶどう園(えん)の主人(しゅじん)は管理人(かんりにん)に言(い)った、『労働者(ろうどうしゃ)たちを呼(よ)びなさい。そして、最後(さいご)にきた人々(ひとびと)からはじめて順々(じゅんじゅん)に最初(さいしょ)にきた人々(ひとびと)にわたるように、賃銀(ちんぎん)を払(はら)ってやりなさい』。 9そこで、五時(とき)ごろに雇(やと)われた人々(ひとびと)がきて、それぞれ一デナリずつもらった。 10ところが、最初(さいしょ)の人々(ひとびと)がきて、もっと多(おお)くもらえるだろうと思(おも)っていたのに、彼(かれ)らも一デナリずつもらっただけであった。 11もらったとき、家(いえ)の主人(しゅじん)にむかって不平(ふへい)をもらして 12言(い)った、『この最後(さいご)の者(もの)たちは一時間(じかん)しか働(はたら)かなかったのに、あなたは一日(にち)じゅう、労苦(ろうく)と暑(あつ)さを辛抱(しんぼう)したわたしたちと同(おな)じ扱(あつか)いをなさいました』。 13そこで彼(かれ)はそのひとりに答(こた)えて言(い)った、『友(とも)よ、わたしはあなたに対(たい)して不正(ふせい)をしてはいない。あなたはわたしと一デナリの約束(やくそく)をしたではないか。 14自分(じぶん)の賃銀(ちんぎん)をもらって行(い)きなさい。わたしは、この最後(さいご)の者(もの)にもあなたと同様(どうよう)に払(はら)ってやりたいのだ。 15自分(じぶん)の物(もの)を自分(じぶん)がしたいようにするのは、当(あた)りまえではないか。それともわたしが気前(きまえ)よくしているので、ねたましく思(おも)うのか』。 16このように、あとの者(もの)は先(さき)になり、先(さき)の者(もの)はあとになるであろう」。

17さて、イエスはエルサレムへ上(のぼ)るとき、十二弟子(でし)をひそかに呼(よ)びよせ、その途中(とちゅう)で彼(かれ)らに言(い)われた、 18「見(み)よ、わたしたちはエルサレムへ上(のぼ)って行(い)くが、人(ひと)の子(こ)は祭司長(さいしちょう)、律法(りっぽう)学者(がくしゃ)たちの手(て)に渡(わた)されるであろう。彼(かれ)らは彼(かれ)に死刑(しけい)を宣告(せんこく)し、 19そして彼(かれ)をあざけり、むち打(う)ち、十字架(じゅうじか)につけさせるために、異邦人(いほうじん)に引(ひ)きわたすであろう。そして彼(かれ)は三日(か)目(め)によみがえるであろう」。

20そのとき、ゼベダイの子(こ)らの母(はは)が、その子(こ)らと一緒(いっしょ)にイエスのもとにきてひざまずき、何事(なにごと)かをお願(ねが)いした。 21そこでイエスは彼女(かのじょ)に言(い)われた、「何(なに)をしてほしいのか」。彼女(かのじょ)は言(い)った、「わたしのこのふたりのむすこが、あなたの御国(みくに)で、ひとりはあなたの右(みぎ)に、ひとりは左(ひだり)にすわれるように、お言葉(ことば)をください」。 22イエスは答(こた)えて言(い)われた、「あなたがたは、自分(じぶん)が何(なに)を求(もと)めているのか、わかっていない。わたしの飲(の)もうとしている杯(さかずき)を飲(の)むことができるか」。彼(かれ)らは「できます」と答(こた)えた。 23イエスは彼(かれ)らに言(い)われた、「確(たし)かに、あなたがたはわたしの杯(さかずき)を飲(の)むことになろう。しかし、わたしの右(みぎ)、左(ひだり)にすわらせることは、わたしのすることではなく、わたしの父(ちち)によって備(そな)えられている人々(ひとびと)だけに許(ゆる)されることである」。 24十人(にん)の者(もの)はこれを聞(き)いて、このふたりの兄弟(きょうだい)たちのことで憤慨(ふんがい)した。 25そこで、イエスは彼(かれ)らを呼(よ)び寄(よ)せて言(い)われた、「あなたがたの知(し)っているとおり、異邦人(いほうじん)の支配者(しはいしゃ)たちはその民(たみ)を治め(おさめ)、また偉(えら)い人(ひと)たちは、その民(たみ)の上(うえ)に権力(けんりょく)をふるっている。 26あなたがたの間(あいだ)ではそうであってはならない。かえって、あなたがたの間(あいだ)で偉(えら)くなりたいと思(おも)う者(もの)は、仕(つか)える人(ひと)となり、 27あなたがたの間(あいだ)でかしらになりたいと思(おも)う者(もの)は、僕(しもべ)とならねばならない。 28それは、人(ひと)の子(こ)がきたのも、仕(つか)えられるためではなく、仕(つか)えるためであり、また多(おお)くの人(ひと)のあがないとして、自分(じぶん)の命(いのち)を与(あた)えるためであるのと、ちょうど同(おな)じである」。

29それから、彼(かれ)らがエリコを出(で)て行(い)ったとき、大(おお)ぜいの群衆(ぐんしゅう)がイエスに従(したが)ってきた。 30すると、ふたりの盲人(もうじん)が道(みち)ばたにすわっていたが、イエスがとおって行(い)かれると聞(き)いて、叫(さけ)んで言(い)った、「主(しゅ)よ、ダビデの子(こ)よ、わたしたちをあわれんで下(くだ)さい」。 31群衆(ぐんしゅう)は彼(かれ)らをしかって黙(だま)らせようとしたが、彼(かれ)らはますます叫(さけ)びつづけて言(い)った、「主(しゅ)よ、ダビデの子(こ)よ、わたしたちをあわれんで下(くだ)さい」。 32イエスは立(た)ちどまり、彼(かれ)らを呼(よ)んで言(い)われた、「わたしに何(なに)をしてほしいのか」。 33彼(かれ)らは言(い)った、「主(しゅ)よ、目(め)をあけていただくことです」。 34イエスは深(ふか)くあわれんで、彼(かれ)らの目(め)にさわられた。すると彼(かれ)らは、たちまち見(み)えるようになり、イエスに従(したが)って行(い)った。

第二一章

1さて、彼(かれ)らがエルサレムに近(ちか)づき、オリブ山(やま)沿(ぞ)いのベテパゲに着(つ)いたとき、イエスはふたりの弟子(でし)をつかわして言(い)われた、 2「向(む)こうの村(むら)へ行(い)きなさい。するとすぐ、ろばがつながれていて、子(こ)ろばがそばにいるのを見(み)るであろう。それを解(と)いてわたしのところに引(ひ)いてきなさい。 3もしだれかが、あなたがたに何(なに)か言(い)ったなら、主(しゅ)がお入(い)り用(よう)なのです、と言(い)いなさい。そう言(い)えば、すぐ渡(わた)してくれるであろう」。 4こうしたのは、預言者(よげんしゃ)によって言(い)われたことが、成就(じょうじゅ)するためである。 5すなわち、
「シオンの娘(むすめ)に告(つ)げよ、
見(み)よ、あなたの王(おう)がおいでになる、
柔和(にゅうわ)なおかたで、ろばに乗(の)って、
くびきを負(お)うろばの子(こ)に乗(の)って」。
6弟子(でし)たちは出(で)て行(い)って、イエスがお命(めい)じになったとおりにし、 7ろばと子(こ)ろばとを引(ひ)いてきた。そしてその上(うえ)に自分(じぶん)たちの上着(うわぎ)をかけると、イエスはそれにお乗(の)りになった。 8群衆(ぐんしゅう)のうち多(おお)くの者(もの)は自分(じぶん)たちの上着(うわぎ)を道(みち)に敷(し)き、また、ほかの者(もの)たちは木(き)の枝(えだ)を切(き)ってきて道(みち)に敷(し)いた。 9そして群衆(ぐんしゅう)は、前(まえ)に行(ゆ)く者(もの)も、あとに従(したが)う者(もの)も、共(とも)に叫(さけ)びつづけた、
「ダビデの子(こ)に、ホサナ。
主(しゅ)の御名(みな)によってきたる者(もの)に、祝福(しゅくふく)あれ。
いと高(たか)き所(ところ)に、ホサナ」。
10イエスがエルサレムにはいって行(い)かれたとき、町中(まちじゅう)がこぞって騒(さわ)ぎ立(た)ち、「これは、いったい、どなただろう」と言(い)った。 11そこで群衆(ぐんしゅう)は、「この人(ひと)はガリラヤのナザレから出(で)た預言者(よげんしゃ)イエスである」と言(い)った。

12それから、イエスは宮(みや)にはいられた。そして、宮(みや)の庭(にわ)で売(う)り買(か)いしていた人々(ひとびと)をみな追(お)い出(だ)し、また両替人(りょうがえにん)の台(だい)や、はとを売(う)る者(もの)の腰掛(こしかけ)をくつがえされた。 13そして彼(かれ)らに言(い)われた、「『わたしの家(いえ)は、祈(いのり)の家(いえ)ととなえらるべきである』と書(か)いてある。それだのに、あなたがたはそれを強盗(ごうとう)の巣(す)にしている」。 14そのとき宮(みや)の庭(にわ)で、盲人(もうじん)や足(あし)なえがみもとにきたので、彼(かれ)らをおいやしになった。 15しかし、祭司長(さいしちょう)、律法(りっぽう)学者(がくしゃ)たちは、イエスがなされた不思議(ふしぎ)なわざを見(み)、また宮(みや)の庭(にわ)で「ダビデの子(こ)に、ホサナ」と叫(さけ)んでいる子供(こども)たちを見(み)て立腹(りっぷく)し、 16イエスに言(い)った、「あの子(こ)たちが何(なに)を言(い)っているのか、お聞(き)きですか」。イエスは彼(かれ)らに言(い)われた、「そうだ、聞(き)いている。あなたがたは『幼(おさ)な子(ご)、乳(ち)のみ子(ご)たちの口(くち)にさんびを備(そな)えられた』とあるのを読(よ)んだことがないのか」。 17それから、イエスは彼(かれ)らをあとに残(のこ)し、都(みやこ)を出(で)てベタニヤに行(い)き、そこで夜(よ)を過(す)ごされた。

18朝(あさ)はやく都(みやこ)に帰(かえ)るとき、イエスは空腹(くうふく)をおぼえられた。 19そして、道(みち)のかたわらに一本(ぽん)のいちじくの木(き)があるのを見(み)て、そこに行(い)かれたが、ただ葉(は)のほかは何(なに)も見当(みあた)らなかった。そこでその木(き)にむかって、「今(いま)から後(のち)いつまでも、おまえには実(み)がならないように」と言(い)われた。すると、いちじくの木(き)はたちまち枯(か)れた。 20弟子(でし)たちはこれを見(み)て、驚(おどろ)いて言(い)った、「いちじくがどうして、こうすぐに枯(か)れたのでしょう」。 21イエスは答(こた)えて言(い)われた、「よく聞(き)いておくがよい。もしあなたがたが信(しん)じて疑(うたが)わないならば、このいちじくにあったようなことが、できるばかりでなく、この山(やま)にむかって、動(うご)き出(だ)して海(うみ)の中(なか)にはいれと言(い)っても、そのとおりになるであろう。 22また、祈(いのり)のとき、信(しん)じて求(もと)めるものは、みな与(あた)えられるであろう」。

23イエスが宮(みや)にはいられたとき、祭司長(さいしちょう)たちや民(たみ)の長老(ちょうろう)たちが、その教(おし)えておられる所(ところ)にきて言(い)った、「何(なに)の権威(けんい)によって、これらの事(こと)をするのですか。だれが、そうする権威(けんい)を授(さづ)けたのですか」。 24そこでイエスは彼(かれ)らに言(い)われた、「わたしも一つだけ尋(たず)ねよう。あなたがたがそれに答(こた)えてくれたなら、わたしも、何(なに)の権威(けんい)によってこれらの事(こと)をするのか、あなたがたに言(い)おう。 25ヨハネのバプテスマはどこからきたのであったか。天(てん)からであったか、人(ひと)からであったか」。すると、彼(かれ)らは互(たがい)に論(ろん)じて言(い)った、「もし天(てん)からだと言(い)えば、では、なぜ彼(かれ)を信(しん)じなかったのか、とイエスは言(い)うだろう。 26しかし、もし人(ひと)からだと言(い)えば、群衆(ぐんしゅう)が恐(おそ)ろしい。人々(ひとびと)がみなヨハネを預言者(よげんしゃ)と思(おも)っているのだから」。 27そこで彼(かれ)らは、「わたしたちにはわかりません」と答(こた)えた。すると、イエスが言(い)われた、「わたしも何(なに)の権威(けんい)によってこれらの事(こと)をするのか、あなたがたに言(い)うまい。

28あなたがたはどう思(おも)うか。ある人(ひと)にふたりの子(こ)があったが、兄(あに)のところに行(い)って言(い)った、『子(こ)よ、きょう、ぶどう園(えん)へ行(い)って働(はたら)いてくれ』。 29すると彼(かれ)は『おとうさん、参(まい)ります』と答(こた)えたが、行(い)かなかった。 30また弟(おとうと)のところにきて同(おな)じように言(い)った。彼(かれ)は『いやです』と答(こた)えたが、あとから心(こころ)を変(か)えて、出(で)かけた。 31このふたりのうち、どちらが父(ちち)の望(のぞ)みどおりにしたのか」。彼(かれ)らは言(い)った、「あとの者(もの)です」。イエスは言(い)われた、「よく聞(き)きなさい。取税人(しゅぜいにん)や遊女(ゆうじょ)は、あなたがたより先(さき)に神(かみ)の国(くに)にはいる。 32というのは、ヨハネがあなたがたのところにきて、義(ぎ)の道(みち)を説(と)いたのに、あなたがたは彼(かれ)を信(しん)じなかった。ところが、取税人(しゅぜいにん)や遊女(ゆうじょ)は彼(かれ)を信(しん)じた。あなたがたはそれを見(み)たのに、あとになっても、心(こころ)をいれ変(か)えて彼(かれ)を信(しん)じようとしなかった。

33もう一つの譬(たとえ)を聞(き)きなさい。ある所(ところ)に、ひとりの家(いえ)の主人(しゅじん)がいたが、ぶどう園(えん)を造(つく)り、かきをめぐらし、その中(なか)に酒(さか)ぶねの穴(あな)を掘(ほ)り、やぐらを立(た)て、それを農夫(のうふ)たちに貸(か)して、旅(たび)に出(で)かけた。 34収穫(しゅうかく)の季節(きせつ)がきたので、その分(わ)け前(まえ)を受(う)け取(と)ろうとして、僕(しもべ)たちを農夫(のうふ)のところへ送(おく)った。 35すると、農夫(のうふ)たちは、その僕(しもべ)たちをつかまえて、ひとりを袋(ふくろ)だたきにし、ひとりを殺(ころ)し、もうひとりを石(いし)で打(う)ち殺(ころ)した。 36また別(べつ)に、前(まえ)よりも多(おお)くの僕(しもべ)たちを送(おく)ったが、彼(かれ)らをも同(おな)じようにあしらった。 37しかし、最後(さいご)に、わたしの子(こ)は敬(うやま)ってくれるだろうと思(おも)って、主人(しゅじん)はその子(こ)を彼(かれ)らの所(ところ)につかわした。 38すると農夫(のうふ)たちは、その子(こ)を見(み)て互(たがい)に言(い)った、『あれはあと取(と)りだ。さあ、これを殺(ころ)して、その財産(ざいさん)を手(て)に入(い)れよう』。 39そして彼(かれ)をつかまえて、ぶどう園(えん)の外(そと)に引(ひ)き出(だ)して殺(ころ)した。 40このぶどう園(えん)の主人(しゅじん)が帰(かえ)ってきたら、この農夫(のうふ)たちをどうするだろうか」。 41彼(かれ)らはイエスに言(い)った、「悪人(あくにん)どもを、皆殺(みなごろ)しにして、季節(きせつ)ごとに収穫(しゅうかく)を納(おさ)めるほかの農夫(のうふ)たちに、そのぶどう園(えん)を貸(か)し与(あた)えるでしょう」。 42イエスは彼(かれ)らに言(い)われた、「あなたがたは、聖書(せいしょ)でまだ読(よ)んだことがないのか、
『家(いえ)造(つく)りらの捨(す)てた石(いし)が
隅(すみ)のかしら石(いし)になった。
これは主(しゅ)がなされたことで、
わたしたちの目(め)には不思議(ふしぎ)に見(み)える』。
43それだから、あなたがたに言(い)うが、神(かみ)の国(くに)はあなたがたから取(と)り上(あ)げられて、御国(みくに)にふさわしい実(み)を結(むす)ぶような異邦人(いほうじん)に与(あた)えられるであろう。 44またその石(いし)の上(うえ)に落(お)ちる者(もの)は打(う)ち砕(くだ)かれ、それがだれかの上(うえ)に落(お)ちかかるなら、その人(ひと)はこなみじんにされるであろう」。 45祭司長(さいしちょう)たちやパリサイ人(びと)たちがこの譬(たとえ)を聞(き)いたとき、自分(じぶん)たちのことをさして言(い)っておられることを悟(さと)ったので、 46イエスを捕(とら)えようとしたが、群衆(ぐんしゅう)を恐(おそ)れた。群衆(ぐんしゅう)はイエスを預言者(よげんしゃ)だと思(おも)っていたからである。

第二二章

1イエスはまた、譬(たとえ)で彼(かれ)らに語(かた)って言(い)われた、 2「天国(てんごく)は、ひとりの王(おう)がその王子(おうじ)のために、婚(こん)宴(えん)を催(もよお)すようなものである。 3王(おう)はその僕(しもべ)たちをつかわして、この婚(こん)宴(えん)に招(まね)かれていた人(ひと)たちを呼(よ)ばせたが、その人(ひと)たちはこようとはしなかった。 4そこでまた、ほかの僕(しもべ)たちをつかわして言(い)った、『招(まね)かれた人(ひと)たちに言(い)いなさい。食事(しょくじ)の用意(ようい)ができました。牛(うし)も肥(こ)えた獣(けもの)もほふられて、すべての用意(ようい)ができました。さあ、婚(こん)宴(えん)においでください』。 5しかし、彼(かれ)らは知(し)らぬ顔(かお)をして、ひとりは自分(じぶん)の畑(はたけ)に、ひとりは自分(じぶん)の商売(しょうばい)に出(で)て行(い)き、 6またほかの人々(ひとびと)は、この僕(しもべ)たちをつかまえて侮辱(ぶじょく)を加(くわ)えた上(うえ)、殺(ころ)してしまった。 7そこで王(おう)は立腹(りっぷく)し、軍隊(ぐんたい)を送(おく)ってそれらの人殺(ひとごろ)しどもを滅(ほろ)ぼし、その町(まち)を焼(や)き払(はら)った。 8それから僕(しもべ)たちに言(い)った、『婚(こん)宴(えん)の用意(ようい)はできているが、招(まね)かれていたのは、ふさわしくない人々(ひとびと)であった。 9だから、町(まち)の大通(おおどお)りに出(で)て行(い)って、出会(であ)った人(ひと)はだれでも婚(こん)宴(えん)に連(つ)れてきなさい』。 10そこで、僕(しもべ)たちは道(みち)に出(で)て行(い)って、出会(であ)う人(ひと)は、悪人(あくにん)でも善人(ぜんにん)でもみな集(あつ)めてきたので、婚(こん)宴(えん)の席(せき)は客(きゃく)でいっぱいになった。 11王(おう)は客(きゃく)を迎(むか)えようとしてはいってきたが、そこに礼服(れいふく)をつけていないひとりの人(ひと)を見(み)て、 12彼(かれ)に言(い)った、『友(とも)よ、どうしてあなたは礼服(れいふく)をつけないで、ここにはいってきたのですか』。しかし、彼(かれ)は黙(だま)っていた。 13そこで、王(おう)はそばの者(もの)たちに言(い)った、『この者(もの)の手足(てあし)をしばって、外(そと)の暗(くら)やみにほうり出(だ)せ。そこで泣(な)き叫(さけ)んだり、歯(は)がみをしたりするであろう』。 14招(まね)かれる者(もの)は多(おお)いが、選(えら)ばれる者(もの)は少(すく)ない」。

15そのときパリサイ人(びと)たちがきて、どうかしてイエスを言葉(ことば)のわなにかけようと、相談(そうだん)をした。 16そして、彼(かれ)らの弟子(でし)を、ヘロデ党(とう)の者(もの)たちと共(とも)に、イエスのもとにつかわして言(い)わせた、「先生(せんせい)、わたしたちはあなたが真実(しんじつ)なかたであって、真理(しんり)に基(もとづ)いて神(かみ)の道(みち)を教(おし)え、また、人(ひと)に分(わ)け隔(へだ)てをしないで、だれをもはばかられないことを知(し)っています。 17それで、あなたはどう思(おも)われますか、答(こた)えてください。カイザルに税金(ぜいきん)を納(おさ)めてよいでしょうか、いけないでしょうか」。 18イエスは彼(かれ)らの悪意(あくい)を知(し)って言(い)われた、「偽善者(ぎぜんしゃ)たちよ、なぜわたしをためそうとするのか。 19税(ぜい)に納(おさ)める貨幣(かへい)を見(み)せなさい」。彼(かれ)らはデナリ一つを持(も)ってきた。 20そこでイエスは言(い)われた、「これは、だれの肖像(しょうぞう)、だれの記号(きごう)か」。 21彼(かれ)らは「カイザルのです」と答(こた)えた。するとイエスは言(い)われた、「それでは、カイザルのものはカイザルに、神(かみ)のものは神(かみ)に返(かえ)しなさい」。 22彼(かれ)らはこれを聞(き)いて驚嘆(きょうたん)し、イエスを残(のこ)して立(た)ち去(さ)った。

23復活(ふっかつ)ということはないと主張(しゅちょう)していたサドカイ人(びと)たちが、その日(ひ)、イエスのもとにきて質問(しつもん)した、 24「先生(せんせい)、モーセはこう言(い)っています、『もし、ある人(ひと)が子(こ)がなくて死(し)んだなら、その弟(おとうと)は兄(あに)の妻(つま)をめとって、兄(あに)のために子(こ)をもうけねばならない』。 25さて、わたしたちのところに七人(にん)の兄弟(きょうだい)がありました。長男(ちょうなん)は妻(つま)をめとったが死(し)んでしまい、そして子(こ)がなかったので、その妻(つま)を弟(おとうと)に残(のこ)しました。 26次男(じなん)も三男(さんなん)も、ついに七人(にん)とも同(おな)じことになりました。 27最後(さいご)に、その女(おんな)も死(し)にました。 28すると復活(ふっかつ)の時(とき)には、この女(おんな)は、七人(にん)のうちだれの妻(つま)なのでしょうか。みんながこの女(おんな)を妻(つま)にしたのですが」。 29イエスは答(こた)えて言(い)われた、「あなたがたは聖書(せいしょ)も神(かみ)の力(ちから)も知(し)らないから、思(おも)い違(ちが)いをしている。 30復活(ふっかつ)の時(とき)には、彼(かれ)らはめとったり、とついだりすることはない。彼(かれ)らは天(てん)にいる御使(みつかい)のようなものである。 31また、死人(しにん)の復活(ふっかつ)については、神(かみ)があなたがたに言(い)われた言葉(ことば)を読(よ)んだことがないのか。 32『わたしはアブラハムの神(かみ)、イサクの神(かみ)、ヤコブの神(かみ)である』と書(か)いてある。神(かみ)は死(し)んだ者(もの)の神(かみ)ではなく、生(い)きている者(もの)の神(かみ)である」。 33群衆(ぐんしゅう)はこれを聞(き)いて、イエスの教(おしえ)に驚(おどろ)いた。

34さて、パリサイ人(びと)たちは、イエスがサドカイ人(びと)たちを言(い)いこめられたと聞(き)いて、一緒(いっしょ)に集(あつ)まった。 35そして彼(かれ)らの中(なか)のひとりの律法(りっぽう)学者(がくしゃ)が、イエスをためそうとして質問(しつもん)した、 36「先生(せんせい)、律法(りっぽう)の中(なか)で、どのいましめがいちばん大切(たいせつ)なのですか」。 37イエスは言(い)われた、「『心(こころ)をつくし、精神(せいしん)をつくし、思(おも)いをつくして、主(しゅ)なるあなたの神(かみ)を愛(あい)せよ』。 38これがいちばん大切(たいせつ)な、第(だい)一のいましめである。 39第(だい)二もこれと同様(どうよう)である、『自分(じぶん)を愛(あい)するようにあなたの隣(とな)り人(びと)を愛(あい)せよ』。 40これらの二つのいましめに、律法(りっぽう)全体(ぜんたい)と預言者(よげんしゃ)とが、かかっている」。

41パリサイ人(びと)たちが集(あつ)まっていたとき、イエスは彼(かれ)らにお尋(たず)ねになった、 42「あなたがたはキリストをどう思(おも)うか。だれの子(こ)なのか」。彼(かれ)らは「ダビデの子(こ)です」と答(こた)えた。 43イエスは言(い)われた、「それではどうして、ダビデが御霊(みたま)に感(かん)じてキリストを主(しゅ)と呼(よ)んでいるのか。 44すなわち
『主(しゅ)はわが主(しゅ)に仰(おお)せになった、
あなたの敵(てき)をあなたの足(あし)もとに置(お)くときまでは、
わたしの右(みぎ)に座(ざ)していなさい』。
45このように、ダビデ自身(じしん)がキリストを主(しゅ)と呼(よ)んでいるなら、キリストはどうしてダビデの子(こ)であろうか」。 46イエスにひと言(こと)でも答(こた)えうる者(もの)は、なかったし、その日(ひ)からもはや、進(すす)んでイエスに質問(しつもん)する者(もの)も、いなくなった。

第二三章

1そのときイエスは、群衆(ぐんしゅう)と弟子(でし)たちとに語(かた)って言(い)われた、 2「律法(りっぽう)学者(がくしゃ)とパリサイ人(びと)とは、モーセの座(ざ)にすわっている。 3だから、彼(かれ)らがあなたがたに言(い)うことは、みな守(まも)って実行(じっこう)しなさい。しかし、彼(かれ)らのすることには、ならうな。彼(かれ)らは言(い)うだけで、実行(じっこう)しないから。 4また、重(おも)い荷物(にもつ)をくくって人々(ひとびと)の肩(かた)にのせるが、それを動(うご)かすために、自分(じぶん)では指(ゆび)一本(ぽん)も貸(か)そうとはしない。 5そのすることは、すべて人(ひと)に見(み)せるためである。すなわち、彼(かれ)らは経札(きょうふだ)を幅広(はばひろ)くつくり、その衣(ころも)のふさを大(おお)きくし、 6また、宴会(えんかい)の上座(じょうざ)、会堂(かいどう)の上席(じょうせき)を好(この)み、 7広場(ひろば)であいさつされることや、人々(ひとびと)から先生(せんせい)と呼(よ)ばれることを好(この)んでいる。 8しかし、あなたがたは先生(せんせい)と呼(よ)ばれてはならない。あなたがたの先生(せんせい)は、ただひとりであって、あなたがたはみな兄弟(きょうだい)なのだから。 9また、地上(ちじょう)のだれをも、父(ちち)と呼(よ)んではならない。あなたがたの父(ちち)はただひとり、すなわち、天(てん)にいます父(ちち)である。 10また、あなたがたは教師(きょうし)と呼(よ)ばれてはならない。あなたがたの教師(きょうし)はただひとり、すなわち、キリストである。 11そこで、あなたがたのうちでいちばん偉(えら)い者(もの)は、仕(つか)える人(ひと)でなければならない。 12だれでも自分(じぶん)を高(たか)くする者(もの)は低(ひく)くされ、自分(じぶん)を低(ひく)くする者(もの)は高(たか)くされるであろう。

13偽善(ぎぜん)な律法(りっぽう)学者(がくしゃ)、パリサイ人(びと)たちよ。あなたがたは、わざわいである。あなたがたは、天国(てんごく)を閉(と)ざして人々(ひとびと)をはいらせない。自分(じぶん)もはいらないし、はいろうとする人(ひと)をはいらせもしない。〔 14偽善(ぎぜん)な律法(りっぽう)学者(がくしゃ)、パリサイ人(びと)たちよ。あなたがたは、わざわいである。あなたがたは、やもめたちの家(いえ)を食(く)い倒(たお)し、見(み)えのために長(なが)い祈(いのり)をする。だから、もっときびしいさばきを受(う)けるに違(ちが)いない。〕 15偽善(ぎぜん)な律法(りっぽう)学者(がくしゃ)、パリサイ人(びと)たちよ。あなたがたは、わざわいである。あなたがたはひとりの改宗者(かいしゅうしゃ)をつくるために、海(うみ)と陸(りく)とを巡(めぐ)り歩(ある)く。そして、つくったなら、彼(かれ)を自分(じぶん)より倍(ばい)もひどい地獄(じごく)の子(こ)にする。

16盲目(もうもく)な案内(あんない)者(しゃ)たちよ。あなたがたは、わざわいである。あなたがたは言(い)う、『神殿(しんでん)をさして誓(ちか)うなら、そのままでよいが、神殿(しんでん)の黄金(こがね)をさして誓(ちか)うなら、果(はた)す責任(せきにん)がある』と。 17愚(おろ)かな盲目(もうもく)な人(ひと)たちよ。黄金(こがね)と、黄金(こがね)を神聖(しんせい)にする神殿(しんでん)と、どちらが大事(だいじ)なのか。 18また、あなたがたは言(い)う、『祭壇(さいだん)をさして誓(ちか)うなら、そのままでよいが、その上(うえ)の供(そな)え物(もの)をさして誓(ちか)うなら、果(はた)す責任(せきにん)がある』と。 19盲目(もうもく)な人(ひと)たちよ。供(そな)え物(もの)と供(そな)え物(もの)を神聖(しんせい)にする祭壇(さいだん)とどちらが大事(だいじ)なのか。 20祭壇(さいだん)をさして誓(ちか)う者(もの)は、祭壇(さいだん)と、その上(うえ)にあるすべての物(もの)とをさして誓(ちか)うのである。 21神殿(しんでん)をさして誓(ちか)う者(もの)は、神殿(しんでん)とその中(なか)に住(す)んでおられるかたとをさして誓(ちか)うのである。 22また、天(てん)をさして誓(ちか)う者(もの)は、神(かみ)の御座(みざ)とその上(うえ)にすわっておられるかたとをさして誓(ちか)うのである。

23偽善(ぎぜん)な律法(りっぽう)学者(がくしゃ)、パリサイ人(びと)たちよ。あなたがたは、わざわいである。はっか、いのんど、クミンなどの薬味(やくみ)の十分(ぶん)の一を宮(みや)に納(おさ)めておりながら、律法(りっぽう)の中(なか)でもっと重要(じゅうよう)な、公平(こうへい)とあわれみと忠実(ちゅうじつ)とを見(み)のがしている。それもしなければならないが、これも見(み)のがしてはならない。 24盲目(もうもく)な案内(あんない)者(しゃ)たちよ。あなたがたは、ぶよはこしているが、らくだはのみこんでいる。

25偽善(ぎぜん)な律法(りっぽう)学者(がくしゃ)、パリサイ人(びと)たちよ。あなたがたは、わざわいである。杯(さかずき)と皿(さら)との外側(そとがわ)はきよめるが、内側(うちがわ)は貪欲(どんよく)と放縦(ほうじゅう)とで満(み)ちている。 26盲目(もうもく)なパリサイ人(びと)よ。まず、杯(さかずき)の内側(うちがわ)をきよめるがよい。そうすれば、外側(そとがわ)も清(きよ)くなるであろう。

27偽善(ぎぜん)な律法(りっぽう)学者(がくしゃ)、パリサイ人(びと)たちよ。あなたがたは、わざわいである。あなたがたは白(しろ)く塗(ぬ)った墓(はか)に似(に)ている。外側(そとがわ)は美(うつく)しく見(み)えるが、内側(うちがわ)は死人(しにん)の骨(ほね)や、あらゆる不潔(ふけつ)なものでいっぱいである。 28このようにあなたがたも、外側(そとがわ)は人(ひと)に正(ただ)しく見(み)えるが、内側(うちがわ)は偽善(ぎぜん)と不法(ふほう)とでいっぱいである。

29偽善(ぎぜん)な律法(りっぽう)学者(がくしゃ)、パリサイ人(びと)たちよ。あなたがたは、わざわいである。あなたがたは預言者(よげんしゃ)の墓(はか)を建(た)て、義人(ぎじん)の碑(ひ)を飾(かざ)り立(た)てて、こう言(い)っている、 30『もしわたしたちが先祖(せんぞ)の時代(じだい)に生(い)きていたなら、預言者(よげんしゃ)の血(ち)を流(なが)すことに加(くわ)わってはいなかっただろう』と。 31このようにして、あなたがたは預言者(よげんしゃ)を殺(ころ)した者(もの)の子孫(しそん)であることを、自分(じぶん)で証明(しょうめい)している。 32あなたがたもまた先祖(せんぞ)たちがした悪(あく)の枡目(ますめ)を満(み)たすがよい。 33へびよ、まむしの子(こ)らよ、どうして地獄(じごく)の刑罰(けいばつ)をのがれることができようか。 34それだから、わたしは、預言者(よげんしゃ)、知者(ちしゃ)、律法(りっぽう)学者(がくしゃ)たちをあなたがたにつかわすが、そのうちのある者(もの)を殺(ころ)し、また十字架(じゅうじか)につけ、そのある者(もの)を会堂(かいどう)でむち打(う)ち、また町(まち)から町(まち)へと迫害(はくがい)して行(い)くであろう。 35こうして義人(ぎじん)アベルの血(ち)から、聖所(せいじょ)と祭壇(さいだん)との間(あいだ)であなたがたが殺(ころ)したバラキヤの子(こ)ザカリヤの血(ち)に至(いた)るまで、地上(ちじょう)に流(なが)された義人(ぎじん)の血(ち)の報(むく)いが、ことごとくあなたがたに及(およ)ぶであろう。 36よく言(い)っておく。これらのことの報(むく)いは、みな今(いま)の時代(じだい)に及(およ)ぶであろう。

37ああ、エルサレム、エルサレム、預言者(よげんしゃ)たちを殺(ころ)し、おまえにつかわされた人(ひと)たちを石(いし)で打(う)ち殺(ころ)す者(もの)よ。ちょうど、めんどりが翼(つばさ)の下(した)にそのひなを集(あつ)めるように、わたしはおまえの子(こ)らを幾(いく)たび集(あつ)めようとしたことであろう。それだのに、おまえたちは応(おう)じようとしなかった。 38見(み)よ、おまえたちの家(いえ)は見捨(みす)てられてしまう。 39わたしは言(い)っておく、
『主(しゅ)の御名(みな)によってきたる者(もの)に、祝福(しゅくふく)あれ』
とおまえたちが言(い)う時(とき)までは、今後(こんご)ふたたび、わたしに会(あ)うことはないであろう」。

第二四章

1イエスが宮(みや)から出(で)て行(い)こうとしておられると、弟子(でし)たちは近寄(ちかよ)ってきて、宮(みや)の建物(たてもの)にイエスの注意(ちゅうい)を促(うなが)した。 2そこでイエスは彼(かれ)らにむかって言(い)われた、「あなたがたは、これらすべてのものを見(み)ないか。よく言(い)っておく。その石(いし)一つでもくずされずに、そこに他(た)の石(いし)の上(うえ)に残(のこ)ることもなくなるであろう」。

3またオリブ山(やま)ですわっておられると、弟子(でし)たちが、ひそかにみもとにきて言(い)った、「どうぞお話(はな)しください。いつ、そんなことが起(おこ)るのでしょうか。あなたがまたおいでになる時(とき)や、世(よ)の終(おわ)りには、どんな前兆(ぜんちょう)がありますか」。 4そこでイエスは答(こた)えて言(い)われた、「人(ひと)に惑(まど)わされないように気(き)をつけなさい。 5多(おお)くの者(もの)がわたしの名(な)を名(な)のって現(あらわ)れ、自分(じぶん)がキリストだと言(い)って、多(おお)くの人(ひと)を惑(まど)わすであろう。 6また、戦争(せんそう)と戦争(せんそう)のうわさとを聞(き)くであろう。注意(ちゅうい)していなさい、あわててはいけない。それは起(おこ)らねばならないが、まだ終(おわ)りではない。 7民(たみ)は民(たみ)に、国(くに)は国(くに)に敵対(てきたい)して立(た)ち上(あ)がるであろう。またあちこちに、ききんが起(おこ)り、また地震(じしん)があるであろう。 8しかし、すべてこれらは産(う)みの苦(くる)しみの初(はじ)めである。 9そのとき人々(ひとびと)は、あなたがたを苦(くる)しみにあわせ、また殺(ころ)すであろう。またあなたがたは、わたしの名(な)のゆえにすべての民(たみ)に憎(にく)まれるであろう。 10そのとき、多(おお)くの人(ひと)がつまずき、また互(たがい)に裏切(うらぎ)り、憎(にく)み合(あ)うであろう。 11また多(おお)くのにせ預言者(よげんしゃ)が起(おこ)って、多(おお)くの人(ひと)を惑(まど)わすであろう。 12また不法(ふほう)がはびこるので、多(おお)くの人(ひと)の愛(あい)が冷(ひ)えるであろう。 13しかし、最後(さいご)まで耐(た)え忍(しの)ぶ者(もの)は救(すく)われる。 14そしてこの御国(みくに)の福音(ふくいん)は、すべての民(たみ)に対(たい)してあかしをするために、全(ぜん)世界(せかい)に宣(の)べ伝(つた)えられるであろう。そしてそれから最後(さいご)が来(く)るのである。

15預言者(よげんしゃ)ダニエルによって言(い)われた荒(あ)らす憎(にく)むべき者(もの)が、聖(せい)なる場所(ばしょ)に立(た)つのを見(み)たならば(読者(どくしゃ)よ、悟(さと)れ)、 16そのとき、ユダヤにいる人々(ひとびと)は山(やま)へ逃(に)げよ。 17屋上(おくじょう)にいる者(もの)は、家(いえ)からものを取(と)り出(だ)そうとして下(した)におりるな。 18畑(はたけ)にいる者(もの)は、上着(うわぎ)を取(と)りにあとへもどるな。 19その日(ひ)には、身重(みおも)の女(おんな)と乳飲(ちの)み子(ご)をもつ女(おんな)とは、不幸(ふこう)である。 20あなたがたの逃(に)げるのが、冬(ふゆ)または安息日(あんそくにち)にならないように祈(いの)れ。 21その時(とき)には、世(よ)の初(はじ)めから現在(げんざい)に至(いた)るまで、かつてなく今後(こんご)もないような大(おお)きな患難(かんなん)が起(おこ)るからである。 22もしその期間(きかん)が縮(ちぢ)められないなら、救(すく)われる者(もの)はひとりもないであろう。しかし、選民(せんみん)のためには、その期間(きかん)が縮(ちぢ)められるであろう。

23そのとき、だれかがあなたがたに『見(み)よ、ここにキリストがいる』、また、『あそこにいる』と言(い)っても、それを信(しん)じるな。 24にせキリストたちや、にせ預言者(よげんしゃ)たちが起(おこ)って、大(おお)いなるしるしと奇跡(きせき)とを行(おこな)い、できれば、選民(せんみん)をも惑(まど)わそうとするであろう。 25見(み)よ、あなたがたに前(まえ)もって言(い)っておく。 26だから、人々(ひとびと)が『見(み)よ、彼(かれ)は荒野(あらの)にいる』と言(い)っても、出(で)て行(い)くな。また『見(み)よ、へやの中(なか)にいる』と言(い)っても、信(しん)じるな。 27ちょうど、いなずまが東(ひがし)から西(にし)にひらめき渡(わた)るように、人(ひと)の子(こ)も現(あらわ)れるであろう。 28死体(したい)のあるところには、はげたかが集(あつ)まるものである。

29しかし、その時(とき)に起(おこ)る患難(かんなん)の後(のち)、たちまち日(ひ)は暗(くら)くなり、月(つき)はその光(ひかり)を放(はな)つことをやめ、星(ほし)は空(そら)から落(お)ち、天体(てんたい)は揺(ゆ)り動(うご)かされるであろう。 30そのとき、人(ひと)の子(こ)のしるしが天(てん)に現(あらわ)れるであろう。またそのとき、地(ち)のすべての民族(みんぞく)は嘆(なげ)き、そして力(ちから)と大(おお)いなる栄光(えいこう)とをもって、人(ひと)の子(こ)が天(てん)の雲(くも)に乗(の)って来(く)るのを、人々(ひとびと)は見(み)るであろう。 31また、彼(かれ)は大(おお)いなるラッパの音(おと)と共(とも)に御使(みつかい)たちをつかわして、天(てん)のはてからはてに至(いた)るまで、四方(しほう)からその選民(せんみん)を呼(よ)び集(あつ)めるであろう。

32いちじくの木(き)からこの譬(たとえ)を学(まな)びなさい。その枝(えだ)が柔(やわ)らかになり、葉(は)が出(で)るようになると、夏(なつ)の近(ちか)いことがわかる。 33そのように、すべてこれらのことを見(み)たならば、人(ひと)の子(こ)が戸口(とぐち)まで近(ちか)づいていると知(し)りなさい。 34よく聞(き)いておきなさい。これらの事(こと)が、ことごとく起(おこ)るまでは、この時代(じだい)は滅(ほろ)びることがない。 35天地(てんち)は滅(ほろ)びるであろう。しかしわたしの言葉(ことば)は滅(ほろ)びることがない。 36その日(ひ)、その時(とき)は、だれも知(し)らない。天(てん)の御使(みつかい)たちも、また子(こ)も知(し)らない、ただ父(ちち)だけが知(し)っておられる。 37人(ひと)の子(こ)の現(あらわ)れるのも、ちょうどノアの時(とき)のようであろう。 38すなわち、洪水(こうずい)の出(で)る前(まえ)、ノアが箱舟(はこぶね)にはいる日(ひ)まで、人々(ひとびと)は食(く)い、飲(の)み、めとり、とつぎなどしていた。 39そして洪水(こうずい)が襲(おそ)ってきて、いっさいのものをさらって行(い)くまで、彼(かれ)らは気(き)がつかなかった。人(ひと)の子(こ)の現(あらわ)れるのも、そのようであろう。 40そのとき、ふたりの者(もの)が畑(はたけ)にいると、ひとりは取(と)り去(さ)られ、ひとりは取(と)り残(のこ)されるであろう。 41ふたりの女(おんな)がうすをひいていると、ひとりは取(と)り去(さ)られ、ひとりは残(のこ)されるであろう。 42だから、目(め)をさましていなさい。いつの日(ひ)にあなたがたの主(しゅ)がこられるのか、あなたがたには、わからないからである。 43このことをわきまえているがよい。家(いえ)の主人(しゅじん)は、盗賊(とうぞく)がいつごろ来(く)るかわかっているなら、目(め)をさましていて、自分(じぶん)の家(いえ)に押(お)し入(い)ることを許(ゆる)さないであろう。 44だから、あなたがたも用意(ようい)をしていなさい。思(おも)いがけない時(とき)に人(ひと)の子(こ)が来(く)るからである。 45主人(しゅじん)がその家(いえ)の僕(しもべ)たちの上(うえ)に立(た)てて、時(とき)に応(おう)じて食物(しょくもつ)をそなえさせる忠実(ちゅうじつ)な思慮(しりょ)深(ぶか)い僕(しもべ)は、いったい、だれであろう。 46主人(しゅじん)が帰(かえ)ってきたとき、そのようにつとめているのを見(み)られる僕(しもべ)は、さいわいである。 47よく言(い)っておくが、主人(しゅじん)は彼(かれ)を立(た)てて自分(じぶん)の全(ぜん)財産(ざいさん)を管理(かんり)させるであろう。 48もしそれが悪(わる)い僕(しもべ)であって、自分(じぶん)の主人(しゅじん)は帰(かえ)りがおそいと心(こころ)の中(なか)で思(おも)い、 49その僕(しもべ)仲間(なかま)をたたきはじめ、また酒飲(さけの)み仲間(なかま)と一緒(いっしょ)に食(た)べたり飲(の)んだりしているなら、 50その僕(しもべ)の主人(しゅじん)は思(おも)いがけない日(ひ)、気(き)がつかない時(とき)に帰(かえ)ってきて、 51彼(かれ)を厳罰(げんばつ)に処(しょ)し、偽善者(ぎぜんしゃ)たちと同(おな)じ目(め)にあわせるであろう。彼(かれ)はそこで泣(な)き叫(さけ)んだり、歯(は)がみをしたりするであろう。

第二五章

1そこで天国(てんごく)は、十人(にん)のおとめがそれぞれあかりを手(て)にして、花婿(はなむこ)を迎(むか)えに出(で)て行(い)くのに似(に)ている。 2その中(なか)の五人(にん)は思慮(しりょ)が浅(あさ)く、五人(にん)は思慮(しりょ)深(ぶか)い者(もの)であった。 3思慮(しりょ)の浅(あさ)い者(もの)たちは、あかりは持(も)っていたが、油(あぶら)を用意(ようい)していなかった。 4しかし、思慮(しりょ)深(ぶか)い者(もの)たちは、自分(じぶん)たちのあかりと一緒(いっしょ)に、入(い)れものの中(なか)に油(あぶら)を用意(ようい)していた。 5花婿(はなむこ)の来(く)るのがおくれたので、彼(かれ)らはみな居眠(いねむ)りをして、寝(ね)てしまった。 6夜中(よなか)に、『さあ、花婿(はなむこ)だ、迎(むか)えに出(で)なさい』と呼(よ)ぶ声(こえ)がした。 7そのとき、おとめたちはみな起(お)きて、それぞれあかりを整(ととの)えた。 8ところが、思慮(しりょ)の浅(あさ)い女(おんな)たちが、思慮(しりょ)深(ぶか)い女(おんな)たちに言(い)った、『あなたがたの油(あぶら)をわたしたちにわけてください。わたしたちのあかりが消(き)えかかっていますから』。 9すると、思慮(しりょ)深(ぶか)い女(おんな)たちは答(こた)えて言(い)った、『わたしたちとあなたがたとに足(た)りるだけは、多分(たぶん)ないでしょう。店(みせ)に行(い)って、あなたがたの分(ふん)をお買(か)いになる方(ほう)がよいでしょう』。 10彼(かれ)らが買(か)いに出(で)ているうちに、花婿(はなむこ)が着(つ)いた。そこで、用意(ようい)のできていた女(おんな)たちは、花婿(はなむこ)と一緒(いっしょ)に婚(こん)宴(えん)のへやにはいり、そして戸(と)がしめられた。 11そのあとで、ほかのおとめたちもきて、『ご主人様(しゅじんさま)、ご主人様(しゅじんさま)、どうぞ、あけてください』と言(い)った。 12しかし彼(かれ)は答(こた)えて、『はっきり言(い)うが、わたしはあなたがたを知(し)らない』と言(い)った。 13だから、目(め)をさましていなさい。その日(ひ)その時(とき)が、あなたがたにはわからないからである。

14また天国(てんごく)は、ある人(ひと)が旅(たび)に出(で)るとき、その僕(しもべ)どもを呼(よ)んで、自分(じぶん)の財産(ざいさん)を預(あづ)けるようなものである。 15すなわち、それぞれの能力(のうりょく)に応(おう)じて、ある者(もの)には五タラント、ある者(もの)には二タラント、ある者(もの)には一タラントを与(あた)えて、旅(たび)に出(で)た。 16五タラントを渡(わた)された者(もの)は、すぐに行(い)って、それで商売(しょうばい)をして、ほかに五タラントをもうけた。 17二タラントの者(もの)も同様(どうよう)にして、ほかに二タラントをもうけた。 18しかし、一タラントを渡(わた)された者(もの)は、行(い)って地(ち)を掘(ほ)り、主人(しゅじん)の金(かね)を隠(かく)しておいた。 19だいぶ時(とき)がたってから、これらの僕(しもべ)の主人(しゅじん)が帰(かえ)ってきて、彼(かれ)らと計算(けいさん)をしはじめた。 20すると五タラントを渡(わた)された者(もの)が進(すす)み出(で)て、ほかの五タラントをさし出(だ)して言(い)った、『ご主人様(しゅじんさま)、あなたはわたしに五タラントをお預(あづ)けになりましたが、ごらんのとおり、ほかに五タラントをもうけました』。 21主人(しゅじん)は彼(かれ)に言(い)った、『良(よ)い忠実(ちゅうじつ)な僕(しもべ)よ、よくやった。あなたはわずかなものに忠実(ちゅうじつ)であったから、多(おお)くのものを管理(かんり)させよう。主人(しゅじん)と一緒(いっしょ)に喜(よろこ)んでくれ』。 22二タラントの者(もの)も進(すす)み出(で)て言(い)った、『ご主人様(しゅじんさま)、あなたはわたしに二タラントをお預(あづ)けになりましたが、ごらんのとおり、ほかに二タラントをもうけました』。 23主人(しゅじん)は彼(かれ)に言(い)った、『良(よ)い忠実(ちゅうじつ)な僕(しもべ)よ、よくやった。あなたはわずかなものに忠実(ちゅうじつ)であったから、多(おお)くのものを管理(かんり)させよう。主人(しゅじん)と一緒(いっしょ)に喜(よろこ)んでくれ』。 24一タラントを渡(わた)された者(もの)も進(すす)み出(で)て言(い)った、『ご主人様(しゅじんさま)、わたしはあなたが、まかない所(ところ)から刈(か)り、散(ち)らさない所(ところ)から集(あつ)める酷(こく)な人(ひと)であることを承知(しょうち)していました。 25そこで恐(おそ)ろしさのあまり、行(い)って、あなたのタラントを地(ち)の中(なか)に隠(かく)しておきました。ごらんください。ここにあなたのお金(かね)がございます』。 26すると、主人(しゅじん)は彼(かれ)に答(こた)えて言(い)った、『悪(わる)い怠惰(たいだ)な僕(しもべ)よ、あなたはわたしが、まかない所(ところ)から刈(か)り、散(ち)らさない所(ところ)から集(あつ)めることを知(し)っているのか。 27それなら、わたしの金(かね)を銀行(ぎんこう)に預(あづ)けておくべきであった。そうしたら、わたしは帰(かえ)ってきて、利子(りし)と一緒(いっしょ)にわたしの金(かね)を返(かえ)してもらえたであろうに。 28さあ、そのタラントをこの者(もの)から取(と)りあげて、十タラントを持(も)っている者(もの)にやりなさい。 29おおよそ、持(も)っている人(ひと)は与(あた)えられて、いよいよ豊(ゆた)かになるが、持(も)っていない人(ひと)は、持(も)っているものまでも取(と)り上(あ)げられるであろう。 30この役(やく)に立(た)たない僕(しもべ)を外(そと)の暗(くら)い所(ところ)に追(お)い出(だ)すがよい。彼(かれ)は、そこで泣(な)き叫(さけ)んだり、歯(は)がみをしたりするであろう』。

31人(ひと)の子(こ)が栄光(えいこう)の中(なか)にすべての御使(みつかい)たちを従(したが)えて来(く)るとき、彼(かれ)はその栄光(えいこう)の座(ざ)につくであろう。 32そして、すべての国民(こくみん)をその前(まえ)に集(あつ)めて、羊飼(ひつじかい)が羊(ひつじ)とやぎとを分(わ)けるように、彼(かれ)らをより分(わ)け、 33羊(ひつじ)を右(みぎ)に、やぎを左(ひだり)におくであろう。 34そのとき、王(おう)は右(みぎ)にいる人々(ひとびと)に言(い)うであろう、『わたしの父(ちち)に祝福(しゅくふく)された人(ひと)たちよ、さあ、世(よ)の初(はじ)めからあなたがたのために用意(ようい)されている御国(みくに)を受(う)けつぎなさい。 35あなたがたは、わたしが空腹(くうふく)のときに食(た)べさせ、かわいていたときに飲(の)ませ、旅人(たびびと)であったときに宿(やど)を貸(か)し、 36裸(はだか)であったときに着(き)せ、病気(びょうき)のときに見舞(みま)い、獄(ごく)にいたときに尋(たず)ねてくれたからである』。 37そのとき、正(ただ)しい者(もの)たちは答(こた)えて言(い)うであろう、『主(しゅ)よ、いつ、わたしたちは、あなたが空腹(くうふく)であるのを見(み)て食物(しょくもつ)をめぐみ、かわいているのを見(み)て飲(の)ませましたか。 38いつあなたが旅人(たびびと)であるのを見(み)て宿(やど)を貸(か)し、裸(はだか)なのを見(み)て着(き)せましたか。 39また、いつあなたが病気(びょうき)をし、獄(ごく)にいるのを見(み)て、あなたの所(ところ)に参(まい)りましたか』。 40すると、王(おう)は答(こた)えて言(い)うであろう、『あなたがたによく言(い)っておく。わたしの兄弟(きょうだい)であるこれらの最(もっと)も小(ちい)さい者(もの)のひとりにしたのは、すなわち、わたしにしたのである』。 41それから、左(ひだり)にいる人々(ひとびと)にも言(い)うであろう、『のろわれた者(もの)どもよ、わたしを離(はな)れて、悪魔(あくま)とその使(つかい)たちとのために用意(ようい)されている永遠(えいえん)の火(ひ)にはいってしまえ。 42あなたがたは、わたしが空腹(くうふく)のときに食(た)べさせず、かわいていたときに飲(の)ませず、 43旅人(たびびと)であったときに宿(やど)を貸(か)さず、裸(はだか)であったときに着(き)せず、また病気(びょうき)のときや、獄(ごく)にいたときに、わたしを尋(たず)ねてくれなかったからである』。 44そのとき、彼(かれ)らもまた答(こた)えて言(い)うであろう、『主(しゅ)よ、いつ、あなたが空腹(くうふく)であり、かわいておられ、旅人(たびびと)であり、裸(はだか)であり、病気(びょうき)であり、獄(ごく)におられたのを見(み)て、わたしたちはお世話(せわ)をしませんでしたか』。 45そのとき、彼(かれ)は答(こた)えて言(い)うであろう、『あなたがたによく言(い)っておく。これらの最(もっと)も小(ちい)さい者(もの)のひとりにしなかったのは、すなわち、わたしにしなかったのである』。 46そして彼(かれ)らは永遠(えいえん)の刑罰(けいばつ)を受(う)け、正(ただ)しい者(もの)は永遠(えいえん)の生命(せいめい)に入(い)るであろう」。

第二六章

1イエスはこれらの言葉(ことば)をすべて語(かた)り終(お)えてから、弟子(でし)たちに言(い)われた。 2「あなたがたが知(し)っているとおり、ふつかの後(のち)には過越(すぎこし)の祭(まつり)になるが、人(ひと)の子(こ)は十字架(じゅうじか)につけられるために引(ひ)き渡(わた)される」。 3そのとき、祭司長(さいしちょう)たちや民(たみ)の長老(ちょうろう)たちが、カヤパという大祭司(だいさいし)の中庭(なかにわ)に集(あつ)まり、 4策略(さくりゃく)をもってイエスを捕(とら)えて殺(ころ)そうと相談(そうだん)した。 5しかし彼(かれ)らは言(い)った、「祭(まつり)の間(あいだ)はいけない。民衆(みんしゅう)の中(なか)に騒(さわ)ぎが起(おこ)るかも知(し)れない」。

6さて、イエスがベタニヤで、らい病人(びょうにん)シモンの家(いえ)におられたとき、 7ひとりの女(おんな)が、高価(こうか)な香油(こうゆ)が入(い)れてある石膏(せっこう)のつぼを持(も)ってきて、イエスに近寄(ちかよ)り、食事(しょくじ)の席(せき)についておられたイエスの頭(あたま)に香油(こうゆ)を注(そそ)ぎかけた。 8すると、弟子(でし)たちはこれを見(み)て憤(いきどお)って言(い)った、「なんのためにこんなむだ使(づかい)をするのか。 9それを高(たか)く売(う)って、貧(まず)しい人(ひと)たちに施(ほどこ)すことができたのに」。 10イエスはそれを聞(き)いて彼(かれ)らに言(い)われた、「なぜ、女(おんな)を困(こま)らせるのか。わたしによい事(こと)をしてくれたのだ。 11貧(まず)しい人(ひと)たちはいつもあなたがたと一緒(いっしょ)にいるが、わたしはいつも一緒(いっしょ)にいるわけではない。 12この女(おんな)がわたしのからだにこの香油(こうゆ)を注(そそ)いだのは、わたしの葬(ほうむ)りの用意(ようい)をするためである。 13よく聞(き)きなさい。全(ぜん)世界(せかい)のどこででも、この福音(ふくいん)が宣(の)べ伝(つた)えられる所(ところ)では、この女(おんな)のした事(こと)も記念(きねん)として語(かた)られるであろう」。

14時(とき)に、十二弟子(でし)のひとりイスカリオテのユダという者(もの)が、祭司長(さいしちょう)たちのところに行(い)って 15言(い)った、「彼(かれ)をあなたがたに引(ひ)き渡(わた)せば、いくらくださいますか」。すると、彼(かれ)らは銀貨(ぎんか)三十枚(まい)を彼(かれ)に支払(しはら)った。 16その時(とき)から、ユダはイエスを引(ひ)きわたそうと、機会(きかい)をねらっていた。

17さて、除酵祭(じょこうさい)の第(だい)一日(にち)に、弟子(でし)たちはイエスのもとにきて言(い)った、「過越(すぎこし)の食事(しょくじ)をなさるために、わたしたちはどこに用意(ようい)をしたらよいでしょうか」。 18イエスは言(い)われた、「市内(しない)にはいり、かねて話(はな)してある人(ひと)の所(ところ)に行(い)って言(い)いなさい、『先生(せんせい)が、わたしの時(とき)が近(ちか)づいた、あなたの家(いえ)で弟子(でし)たちと一緒(いっしょ)に過越(すぎこし)を守(まも)ろうと、言(い)っておられます』」。 19弟子(でし)たちはイエスが命(めい)じられたとおりにして、過越(すぎこし)の用意(ようい)をした。

20夕方(ゆうがた)になって、イエスは十二弟子(でし)と一緒(いっしょ)に食事(しょくじ)の席(せき)につかれた。 21そして、一同(いちどう)が食事(しょくじ)をしているとき言(い)われた、「特(とく)にあなたがたに言(い)っておくが、あなたがたのうちのひとりが、わたしを裏切(うらぎ)ろうとしている」。 22弟子(でし)たちは非常(ひじょう)に心配(しんぱい)して、つぎつぎに「主(しゅ)よ、まさか、わたしではないでしょう」と言(い)い出(だ)した。 23イエスは答(こた)えて言(い)われた、「わたしと一緒(いっしょ)に同(おな)じ鉢(はち)に手(て)を入(い)れている者(もの)が、わたしを裏切(うらぎ)ろうとしている。 24たしかに人(ひと)の子(こ)は、自分(じぶん)について書(か)いてあるとおりに去(さ)って行(い)く。しかし、人(ひと)の子(こ)を裏切(うらぎ)るその人(ひと)は、わざわいである。その人(ひと)は生(うま)れなかった方(ほう)が、彼(かれ)のためによかったであろう」。 25イエスを裏切(うらぎ)ったユダが答(こた)えて言(い)った、「先生(せんせい)、まさか、わたしではないでしょう」。イエスは言(い)われた、「いや、あなただ」。

26一同(いちどう)が食事(しょくじ)をしているとき、イエスはパンを取(と)り、祝福(しゅくふく)してこれをさき、弟子(でし)たちに与(あた)えて言(い)われた、「取(と)って食(た)べよ、これはわたしのからだである」。 27また杯(さかずき)を取(と)り、感謝(かんしゃ)して彼(かれ)らに与(あた)えて言(い)われた、「みな、この杯(さかずき)から飲(の)め。 28これは、罪(つみ)のゆるしを得(え)させるようにと、多(おお)くの人(ひと)のために流(なが)すわたしの契約(けいやく)の血(ち)である。 29あなたがたに言(い)っておく。わたしの父(ちち)の国(くに)であなたがたと共(とも)に、新(あたら)しく飲(の)むその日(ひ)までは、わたしは今後(こんご)決(けっ)して、ぶどうの実(み)から造(つく)ったものを飲(の)むことをしない」。

30彼(かれ)らは、さんびを歌(うた)った後(のち)、オリブ山(やま)へ出(で)かけて行(い)った。

31そのとき、イエスは弟子(でし)たちに言(い)われた、「今夜(こんや)、あなたがたは皆(みな)わたしにつまずくであろう。『わたしは羊飼(ひつじかい)を打(う)つ。そして、羊(ひつじ)の群(む)れは散(ち)らされるであろう』と、書(か)いてあるからである。 32しかしわたしは、よみがえってから、あなたがたより先(さき)にガリラヤへ行(い)くであろう」。 33するとペテロはイエスに答(こた)えて言(い)った、「たとい、みんなの者(もの)があなたにつまずいても、わたしは決(けっ)してつまずきません」。 34イエスは言(い)われた、「よくあなたに言(い)っておく。今夜(こんや)、鶏(にわとり)が鳴(な)く前(まえ)に、あなたは三度(ど)わたしを知(し)らないと言(い)うだろう」。 35ペテロは言(い)った、「たといあなたと一緒(いっしょ)に死(し)なねばならなくなっても、あなたを知(し)らないなどとは、決(けっ)して申(もう)しません」。弟子(でし)たちもみな同(おな)じように言(い)った。

36それから、イエスは彼(かれ)らと一緒(いっしょ)に、ゲツセマネという所(ところ)へ行(い)かれた。そして弟子(でし)たちに言(い)われた、「わたしが向(む)こうへ行(い)って祈(いの)っている間(あいだ)、ここにすわっていなさい」。 37そしてペテロとゼベダイの子(こ)ふたりとを連(つ)れて行(い)かれたが、悲(かな)しみを催(もよお)しまた悩(なや)みはじめられた。 38そのとき、彼(かれ)らに言(い)われた、「わたしは悲(かな)しみのあまり死(し)ぬほどである。ここに待(ま)っていて、わたしと一緒(いっしょ)に目(め)をさましていなさい」。 39そして少(すこ)し進(すす)んで行(い)き、うつぶしになり、祈(いの)って言(い)われた、「わが父(ちち)よ、もしできることでしたらどうか、この杯(さかずき)をわたしから過(す)ぎ去(さ)らせてください。しかし、わたしの思(おも)いのままにではなく、みこころのままになさって下(くだ)さい」。 40それから、弟子(でし)たちの所(ところ)にきてごらんになると、彼(かれ)らが眠(ねむ)っていたので、ペテロに言(い)われた、「あなたがたはそんなに、ひと時(とき)もわたしと一緒(いっしょ)に目(め)をさましていることが、できなかったのか。 41誘惑(ゆうわく)に陥(おちい)らないように、目(め)をさまして祈(いの)っていなさい。心(こころ)は熱(ねっ)しているが、肉体(にくたい)が弱(よわ)いのである」。 42また二度目(どめ)に行(い)って、祈(いの)って言(い)われた、「わが父(ちち)よ、この杯(さかずき)を飲(の)むほかに道(みち)がないのでしたら、どうか、みこころが行(おこな)われますように」。 43またきてごらんになると、彼(かれ)らはまた眠(ねむ)っていた。その目(め)が重(おも)くなっていたのである。 44それで彼(かれ)らをそのままにして、また行(い)って、三度目(どめ)に同(おな)じ言葉(ことば)で祈(いの)られた。 45それから弟子(でし)たちの所(ところ)に帰(かえ)ってきて、言(い)われた、「まだ眠(ねむ)っているのか、休(やす)んでいるのか。見(み)よ、時(とき)が迫(せま)った。人(ひと)の子(こ)は罪人(つみびと)らの手(て)に渡(わた)されるのだ。 46立(た)て、さあ行(い)こう。見(み)よ、わたしを裏切(うらぎ)る者(もの)が近(ちか)づいてきた」。

47そして、イエスがまだ話(はな)しておられるうちに、そこに、十二弟子(でし)のひとりのユダがきた。また祭司長(さいしちょう)、民(たみ)の長老(ちょうろう)たちから送(おく)られた大(おお)ぜいの群衆(ぐんしゅう)も、剣(けん)と棒(ぼう)とを持(も)って彼(かれ)についてきた。 48イエスを裏切(うらぎ)った者(もの)が、あらかじめ彼(かれ)らに、「わたしの接吻(せっぷん)する者(もの)が、その人(ひと)だ。その人(ひと)をつかまえろ」と合図(あいず)をしておいた。 49彼(かれ)はすぐイエスに近寄(ちかよ)り、「先生(せんせい)、いかがですか」と言(い)って、イエスに接吻(せっぷん)した。 50しかし、イエスは彼(かれ)に言(い)われた、「友(とも)よ、なんのためにきたのか」。このとき、人々(ひとびと)が進(すす)み寄(よ)って、イエスに手(て)をかけてつかまえた。 51すると、イエスと一緒(いっしょ)にいた者(もの)のひとりが、手(て)を伸(の)ばして剣(けん)を抜(ぬ)き、そして大祭司(だいさいし)の僕(しもべ)に切(き)りかかって、その片耳(かたみみ)を切(き)り落(おと)した。 52そこで、イエスは彼(かれ)に言(い)われた、「あなたの剣(けん)をもとの所(ところ)におさめなさい。剣(けん)をとる者(もの)はみな、剣(けん)で滅(ほろ)びる。 53それとも、わたしが父(ちち)に願(ねが)って、天(てん)の使(つかい)たちを十二軍団(ぐんだん)以上(いじょう)も、今(いま)つかわしていただくことができないと、あなたは思(おも)うのか。 54しかし、それでは、こうならねばならないと書(か)いてある聖書(せいしょ)の言葉(ことば)は、どうして成就(じょうじゅ)されようか」。 55そのとき、イエスは群衆(ぐんしゅう)に言(い)われた、「あなたがたは強盗(ごうとう)にむかうように、剣(けん)や棒(ぼう)を持(も)ってわたしを捕(とら)えにきたのか。わたしは毎日(まいにち)、宮(みや)ですわって教(おし)えていたのに、わたしをつかまえはしなかった。 56しかし、すべてこうなったのは、預言者(よげんしゃ)たちの書(か)いたことが、成就(じょうじゅ)するためである」。そのとき、弟子(でし)たちは皆(みな)イエスを見捨(みす)てて逃(に)げ去(さ)った。

57さて、イエスをつかまえた人(ひと)たちは、大祭司(だいさいし)カヤパのところにイエスを連(つ)れて行(い)った。そこには律法(りっぽう)学者(がくしゃ)、長老(ちょうろう)たちが集(あつ)まっていた。 58ペテロは遠(とお)くからイエスについて、大祭司(だいさいし)の中庭(なかにわ)まで行(い)き、そのなりゆきを見(み)とどけるために、中(なか)にはいって下役(したやく)どもと一緒(いっしょ)にすわっていた。 59さて、祭司長(さいしちょう)たちと全(ぜん)議会(ぎかい)とは、イエスを死刑(しけい)にするため、イエスに不利(ふり)な偽証(ぎしょう)を求(もと)めようとしていた。 60そこで多(おお)くの偽証者(ぎしょうしゃ)が出(で)てきたが、証拠(しょうこ)があがらなかった。しかし、最後(さいご)にふたりの者(もの)が出(で)てきて 61言(い)った、「この人(ひと)は、わたしは神(かみ)の宮(みや)を打(う)ちこわし、三日(か)の後(のち)に建(た)てることができる、と言(い)いました」。 62すると、大祭司(だいさいし)が立(た)ち上(あ)がってイエスに言(い)った、「何(なに)も答(こた)えないのか。これらの人々(ひとびと)があなたに対(たい)して不利(ふり)な証言(しょうげん)を申(もう)し立(た)てているが、どうなのか」。 63しかし、イエスは黙(だま)っておられた。そこで大祭司(だいさいし)は言(い)った、「あなたは神(かみ)の子(こ)キリストなのかどうか、生(い)ける神(かみ)に誓(ちか)ってわれわれに答(こた)えよ」。 64イエスは彼(かれ)に言(い)われた、「あなたの言(い)うとおりである。しかし、わたしは言(い)っておく。あなたがたは、間(ま)もなく、人(ひと)の子(こ)が力(ちから)ある者(もの)の右(みぎ)に座(ざ)し、天(てん)の雲(くも)に乗(の)って来(く)るのを見(み)るであろう」。 65すると、大祭司(だいさいし)はその衣(ころも)を引(ひ)き裂(さ)いて言(い)った、「彼(かれ)は神(かみ)を汚(けが)した。どうしてこれ以上(いじょう)、証人(しょうにん)の必要(ひつよう)があろう。あなたがたは今(いま)このけがし言(ごと)を聞(き)いた。 66あなたがたの意見(いけん)はどうか」。すると、彼(かれ)らは答(こた)えて言(い)った、「彼(かれ)は死(し)に当(あた)るものだ」。 67それから、彼(かれ)らはイエスの顔(かお)につばきをかけて、こぶしで打(う)ち、またある人(ひと)は手(て)のひらでたたいて言(い)った、 68「キリストよ、言(い)いあててみよ、打(う)ったのはだれか」。

69ペテロは外(そと)で中庭(なかにわ)にすわっていた。するとひとりの女中(じょちゅう)が彼(かれ)のところにきて、「あなたもあのガリラヤ人(びと)イエスと一緒(いっしょ)だった」と言(い)った。 70するとペテロは、みんなの前(まえ)でそれを打(う)ち消(け)して言(い)った、「あなたが何(なに)を言(い)っているのか、わからない」。 71そう言(い)って入口(いりぐち)の方(ほう)に出(で)て行(い)くと、ほかの女中(じょちゅう)が彼(かれ)を見(み)て、そこにいる人々(ひとびと)にむかって、「この人(ひと)はナザレ人(びと)イエスと一緒(いっしょ)だった」と言(い)った。 72そこで彼(かれ)は再(ふたた)びそれを打(う)ち消(け)して、「そんな人(ひと)は知(し)らない」と誓(ちか)って言(い)った。 73しばらくして、そこに立(た)っていた人々(ひとびと)が近寄(ちかよ)ってきて、ペテロに言(い)った、「確(たし)かにあなたも彼(かれ)らの仲間(なかま)だ。言葉(ことば)づかいであなたのことがわかる」。 74彼(かれ)は「その人(ひと)のことは何(なに)も知(し)らない」と言(い)って、激(はげ)しく誓(ちか)いはじめた。するとすぐ鶏(にわとり)が鳴(な)いた。 75ペテロは「鶏(にわとり)が鳴(な)く前(まえ)に、三度(ど)わたしを知(し)らないと言(い)うであろう」と言(い)われたイエスの言葉(ことば)を思(おも)い出(だ)し、外(そと)に出(で)て激(はげ)しく泣(な)いた。

第二七章

1夜(よ)が明(あ)けると、祭司長(さいしちょう)たち、民(たみ)の長老(ちょうろう)たち一同(いちどう)は、イエスを殺(ころ)そうとして協議(きょうぎ)をこらした上(うえ)、 2イエスを縛(しば)って引(ひ)き出(だ)し、総督(そうとく)ピラトに渡(わた)した。

3そのとき、イエスを裏切(うらぎ)ったユダは、イエスが罪(つみ)に定(さだ)められたのを見(み)て後悔(こうかい)し、銀貨(ぎんか)三十枚(まい)を祭司長(さいしちょう)、長老(ちょうろう)たちに返(かえ)して 4言(い)った、「わたしは罪(つみ)のない人(ひと)の血(ち)を売(う)るようなことをして、罪(つみ)を犯(おか)しました」。しかし彼(かれ)らは言(い)った、「それは、われわれの知(し)ったことか。自分(じぶん)で始末(しまつ)するがよい」。 5そこで、彼(かれ)は銀貨(ぎんか)を聖所(せいじょ)に投(な)げ込(こ)んで出(で)て行(い)き、首(くび)をつって死(し)んだ。 6祭司長(さいしちょう)たちは、その銀貨(ぎんか)を拾(ひろ)いあげて言(い)った、「これは血(ち)の代価(だいか)だから、宮(みや)の金庫(きんこ)に入(い)れるのはよくない」。 7そこで彼(かれ)らは協議(きょうぎ)の上(うえ)、外国(がいこく)人(ひと)の墓地(ぼち)にするために、その金(かね)で陶器(とうき)師(し)の畑(はたけ)を買(か)った。 8そのために、この畑(はたけ)は今日(きょう)まで血(ち)の畑(はたけ)と呼(よ)ばれている。 9こうして預言者(よげんしゃ)エレミヤによって言(い)われた言葉(ことば)が、成就(じょうじゅ)したのである。すなわち、「彼(かれ)らは、値(ね)をつけられたもの、すなわち、イスラエルの子(こ)らが値(ね)をつけたものの代価(だいか)、銀貨(ぎんか)三十を取(と)って、 10主(しゅ)がお命(めい)じになったように、陶器(とうき)師(し)の畑(はたけ)の代価(だいか)として、その金(かね)を与(あた)えた」。

11さて、イエスは総督(そうとく)の前(まえ)に立(た)たれた。すると総督(そうとく)はイエスに尋(たず)ねて言(い)った、「あなたがユダヤ人(じん)の王(おう)であるか」。イエスは「そのとおりである」と言(い)われた。 12しかし、祭司長(さいしちょう)、長老(ちょうろう)たちが訴(うった)えている間(あいだ)、イエスはひと言(こと)もお答(こた)えにならなかった。 13するとピラトは言(い)った、「あんなにまで次々(つぎつぎ)に、あなたに不利(ふり)な証言(しょうげん)を立(た)てているのが、あなたには聞(きこ)えないのか」。 14しかし、総督(そうとく)が非常(ひじょう)に不思議(ふしぎ)に思(おも)ったほどに、イエスは何(なに)を言(い)われても、ひと言(こと)もお答(こた)えにならなかった。 15さて、祭(まつり)のたびごとに、総督(そうとく)は群衆(ぐんしゅう)が願(ねが)い出(で)る囚人(しゅうじん)ひとりを、ゆるしてやる慣例(かんれい)になっていた。 16ときに、バラバという評判(ひょうばん)の囚人(しゅうじん)がいた。 17それで、彼(かれ)らが集(あつ)まったとき、ピラトは言(い)った、「おまえたちは、だれをゆるしてほしいのか。バラバか、それとも、キリストといわれるイエスか」。 18彼(かれ)らがイエスを引(ひ)きわたしたのは、ねたみのためであることが、ピラトにはよくわかっていたからである。 19また、ピラトが裁判(さいばん)の席(せき)についていたとき、その妻(つま)が人(ひと)を彼(かれ)のもとにつかわして、「あの義人(ぎじん)には関係(かんけい)しないでください。わたしはきょう夢(ゆめ)で、あの人(ひと)のためにさんざん苦(くる)しみましたから」と言(い)わせた。 20しかし、祭司長(さいしちょう)、長老(ちょうろう)たちは、バラバをゆるして、イエスを殺(ころ)してもらうようにと、群衆(ぐんしゅう)を説(と)き伏(ふ)せた。 21総督(そうとく)は彼(かれ)らにむかって言(い)った、「ふたりのうち、どちらをゆるしてほしいのか」。彼(かれ)らは「バラバの方(ほう)を」と言(い)った。 22ピラトは言(い)った、「それではキリストといわれるイエスは、どうしたらよいか」。彼(かれ)らはいっせいに「十字架(じゅうじか)につけよ」と言(い)った。 23しかし、ピラトは言(い)った、「あの人(ひと)は、いったい、どんな悪事(あくじ)をしたのか」。すると彼(かれ)らはいっそう激(はげ)しく叫(さけ)んで、「十字架(じゅうじか)につけよ」と言(い)った。 24ピラトは手(て)のつけようがなく、かえって暴動(ぼうどう)になりそうなのを見(み)て、水(みず)を取(と)り、群衆(ぐんしゅう)の前(まえ)で手(て)を洗(あら)って言(い)った、「この人(ひと)の血(ち)について、わたしには責任(せきにん)がない。おまえたちが自分(じぶん)で始末(しまつ)をするがよい」。 25すると、民衆(みんしゅう)全体(ぜんたい)が答(こた)えて言(い)った、「その血(ち)の責任(せきにん)は、われわれとわれわれの子孫(しそん)の上(うえ)にかかってもよい」。 26そこで、ピラトはバラバをゆるしてやり、イエスをむち打(う)ったのち、十字架(じゅうじか)につけるために引(ひ)きわたした。

27それから総督(そうとく)の兵士(へいし)たちは、イエスを官邸(かんてい)に連(つ)れて行(い)って、全(ぜん)部隊(ぶたい)をイエスのまわりに集(あつ)めた。 28そしてその上着(うわぎ)をぬがせて、赤(あか)い外套(がいとう)を着(き)せ、 29また、いばらで冠(かんむり)を編(あ)んでその頭(あたま)にかぶらせ、右(みぎ)の手(て)には葦(あし)の棒(ぼう)を持(も)たせ、それからその前(まえ)にひざまずき、嘲弄(ちょうろう)して、「ユダヤ人(じん)の王(おう)、ばんざい」と言(い)った。 30また、イエスにつばきをかけ、葦(あし)の棒(ぼう)を取(と)りあげてその頭(あたま)をたたいた。 31こうしてイエスを嘲弄(ちょうろう)したあげく、外套(がいとう)をはぎ取(と)って元(もと)の上着(うわぎ)を着(き)せ、それから十字架(じゅうじか)につけるために引(ひ)き出(だ)した。

32彼(かれ)らが出(で)て行(い)くと、シモンという名(な)のクレネ人(びと)に出会(であ)ったので、イエスの十字架(じゅうじか)を無理(むり)に負(お)わせた。 33そして、ゴルゴタ、すなわち、されこうべの場(ば)、という所(ところ)にきたとき、 34彼(かれ)らはにがみをまぜたぶどう酒(しゅ)を飲(の)ませようとしたが、イエスはそれをなめただけで、飲(の)もうとされなかった。 35彼(かれ)らはイエスを十字架(じゅうじか)につけてから、くじを引(ひ)いて、その着物(きもの)を分(わ)け、 36そこにすわってイエスの番(ばん)をしていた。 37そしてその頭(あたま)の上(うえ)の方(ほう)に、「これはユダヤ人(じん)の王(おう)イエス」と書(か)いた罪状(ざいじょう)書(が)きをかかげた。 38同時(どうじ)に、ふたりの強盗(ごうとう)がイエスと一緒(いっしょ)に、ひとりは右(みぎ)に、ひとりは左(ひだり)に、十字架(じゅうじか)につけられた。 39そこを通(とお)りかかった者(もの)たちは、頭(あたま)を振(ふ)りながら、イエスをののしって 40言(い)った、「神殿(しんでん)を打(う)ちこわして三日(か)のうちに建(た)てる者(もの)よ。もし神(かみ)の子(こ)なら、自分(じぶん)を救(すく)え。そして十字架(じゅうじか)からおりてこい」。 41祭司長(さいしちょう)たちも同(おな)じように、律法(りっぽう)学者(がくしゃ)、長老(ちょうろう)たちと一緒(いっしょ)になって、嘲弄(ちょうろう)して言(い)った、 42「他人(たにん)を救(すく)ったが、自分(じぶん)自身(じしん)を救(すく)うことができない。あれがイスラエルの王(おう)なのだ。いま十字架(じゅうじか)からおりてみよ。そうしたら信(しん)じよう。 43彼(かれ)は神(かみ)にたよっているが、神(かみ)のおぼしめしがあれば、今(いま)、救(すく)ってもらうがよい。自分(じぶん)は神(かみ)の子(こ)だと言(い)っていたのだから」。 44一緒(いっしょ)に十字架(じゅうじか)につけられた強盗(ごうとう)どもまでも、同(おな)じようにイエスをののしった。

45さて、昼(ひる)の十二時(じ)から地上(ちじょう)の全面(ぜんめん)が暗(くら)くなって、三時(じ)に及(およ)んだ。 46そして三時(じ)ごろに、イエスは大声(おおごえ)で叫(さけ)んで、「エリ、エリ、レマ、サバクタニ」と言(い)われた。それは「わが神(かみ)、わが神(かみ)、どうしてわたしをお見捨(みす)てになったのですか」という意味(いみ)である。 47すると、そこに立(た)っていたある人々(ひとびと)が、これを聞(き)いて言(い)った、「あれはエリヤを呼(よ)んでいるのだ」。 48するとすぐ、彼(かれ)らのうちのひとりが走(はし)り寄(よ)って、海綿(かいめん)を取(と)り、それに酢(す)いぶどう酒(しゅ)を含(ふく)ませて葦(あし)の棒(ぼう)につけ、イエスに飲(の)ませようとした。 49ほかの人々(ひとびと)は言(い)った、「待(ま)て、エリヤが彼(かれ)を救(すく)いに来(く)るかどうか、見(み)ていよう」。 50イエスはもう一度(いちど)大声(おおごえ)で叫(さけ)んで、ついに息(いき)をひきとられた。 51すると見(み)よ、神殿(しんでん)の幕(まく)が上(うえ)から下(した)まで真二(まっぷた)つに裂(さ)けた。また地震(じしん)があり、岩(いわ)が裂(さ)け、 52また墓(はか)が開(あ)け、眠(ねむ)っている多(おお)くの聖徒(せいと)たちの死体(したい)が生(い)き返(かえ)った。 53そしてイエスの復活(ふっかつ)ののち、墓(はか)から出(で)てきて、聖(せい)なる都(みやこ)にはいり、多(おお)くの人(ひと)に現(あらわ)れた。 54百卒長(ひゃくそつちょう)、および彼(かれ)と一緒(いっしょ)にイエスの番(ばん)をしていた人々(ひとびと)は、地震(じしん)や、いろいろのできごとを見(み)て非常(ひじょう)に恐(おそ)れ、「まことに、この人(ひと)は神(かみ)の子(こ)であった」と言(い)った。 55また、そこには遠(とお)くの方(ほう)から見(み)ている女(おんな)たちも多(おお)くいた。彼(かれ)らはイエスに仕(つか)えて、ガリラヤから従(したが)ってきた人(ひと)たちであった。 56その中(なか)には、マグダラのマリヤ、ヤコブとヨセフとの母(はは)マリヤ、またゼベダイの子(こ)たちの母(はは)がいた。

57夕方(ゆうがた)になってから、アリマタヤの金持(かねもち)で、ヨセフという名(な)の人(ひと)がきた。彼(かれ)もまたイエスの弟子(でし)であった。 58この人(ひと)がピラトの所(ところ)へ行(い)って、イエスのからだの引取(ひきと)りかたを願(ねが)った。そこで、ピラトはそれを渡(わた)すように命(めい)じた。 59ヨセフは死体(したい)を受(う)け取(と)って、きれいな亜麻布(あまぬの)に包(つつ)み、 60岩(いわ)を掘(ほ)って造(つく)った彼(かれ)の新(あたら)しい墓(はか)に納(おさ)め、そして墓(はか)の入口(いりぐち)に大(おお)きい石(いし)をころがしておいて、帰(かえ)った。 61マグダラのマリヤとほかのマリヤとが、墓(はか)にむかってそこにすわっていた。

62あくる日(ひ)は準備(じゅんび)の日(ひ)の翌日(よくじつ)であったが、その日(ひ)に、祭司長(さいしちょう)、パリサイ人(びと)たちは、ピラトのもとに集(あつ)まって言(い)った、 63「長官(ちょうかん)、あの偽(いつわ)り者(もの)がまだ生(い)きていたとき、『三日(か)の後(のち)に自分(じぶん)はよみがえる』と言(い)ったのを、思(おも)い出(だ)しました。 64ですから、三日(か)目(め)まで墓(はか)の番(ばん)をするように、さしずをして下(くだ)さい。そうしないと、弟子(でし)たちがきて彼(かれ)を盗(ぬす)み出(だ)し、『イエスは死人(しにん)の中(なか)から、よみがえった』と、民衆(みんしゅう)に言(い)いふらすかも知(し)れません。そうなると、みんなが前(まえ)よりも、もっとひどくだまされることになりましょう」。 65ピラトは彼(かれ)らに言(い)った、「番人(ばんにん)がいるから、行(い)ってできる限(かぎ)り、番(ばん)をさせるがよい」。 66そこで、彼(かれ)らは行(い)って石(いし)に封印(ふういん)をし、番人(ばんにん)を置(お)いて墓(はか)の番(ばん)をさせた。

第二八章

1さて、安息日(あんそくにち)が終(おわ)って、週(しゅう)の初(はじ)めの日(ひ)の明(あ)け方(がた)に、マグダラのマリヤとほかのマリヤとが、墓(はか)を見(み)にきた。 2すると、大(おお)きな地震(じしん)が起(おこ)った。それは主(しゅ)の使(つかい)が天(てん)から下(くだ)って、そこにきて石(いし)をわきへころがし、その上(うえ)にすわったからである。 3その姿(すがた)はいなずまのように輝(かがや)き、その衣(ころも)は雪(ゆき)のように真白(まっしろ)であった。 4見張(みは)りをしていた人(ひと)たちは、恐(おそ)ろしさの余(あま)り震(ふる)えあがって、死人(しにん)のようになった。 5この御使(みつかい)は女(おんな)たちにむかって言(い)った、「恐(おそ)れることはない。あなたがたが十字架(じゅうじか)におかかりになったイエスを捜(さが)していることは、わたしにわかっているが、 6もうここにはおられない。かねて言(い)われたとおりに、よみがえられたのである。さあ、イエスが納(おさ)められていた場所(ばしょ)をごらんなさい。 7そして、急(いそ)いで行(い)って、弟子(でし)たちにこう伝(つた)えなさい、『イエスは死人(しにん)の中(なか)からよみがえられた。見(み)よ、あなたがたより先(さき)にガリラヤへ行(い)かれる。そこでお会(あ)いできるであろう』。あなたがたに、これだけ言(い)っておく」。 8そこで女(おんな)たちは恐(おそ)れながらも大(おお)喜(よろこ)びで、急(いそ)いで墓(はか)を立(た)ち去(さ)り、弟子(でし)たちに知(し)らせるために走(はし)って行(い)った。 9すると、イエスは彼(かれ)らに出会(であ)って、「平安(へいあん)あれ」と言(い)われたので、彼(かれ)らは近寄(ちかよ)りイエスのみ足(あし)をいだいて拝(はい)した。 10そのとき、イエスは彼(かれ)らに言(い)われた、「恐(おそ)れることはない。行(い)って兄弟(きょうだい)たちに、ガリラヤに行(い)け、そこでわたしに会(あ)えるであろう、と告(つ)げなさい」。

11女(おんな)たちが行(おこな)っている間(あいだ)に、番人(ばんにん)のうちのある人々(ひとびと)が都(みやこ)に帰(かえ)って、いっさいの出来事(できごと)を祭司長(さいしちょう)たちに話(はな)した。 12祭司長(さいしちょう)たちは長老(ちょうろう)たちと集(あつ)まって協議(きょうぎ)をこらし、兵卒(へいそつ)たちにたくさんの金(かね)を与(あた)えて言(い)った、 13「『弟子(でし)たちが夜中(よなか)にきて、われわれの寝(ね)ている間(あいだ)に彼(かれ)を盗(ぬす)んだ』と言(い)え。 14万一(まんいち)このことが総督(そうとく)の耳(みみ)にはいっても、われわれが総督(そうとく)に説(と)いて、あなたがたに迷惑(めいわく)が掛(か)からないようにしよう」。 15そこで、彼(かれ)らは金(かね)を受(う)け取(と)って、教(おし)えられたとおりにした。そしてこの話(はなし)は、今日(きょう)に至(いた)るまでユダヤ人(じん)の間(あいだ)にひろまっている。

16さて、十一人(にん)の弟子(でし)たちはガリラヤに行(い)って、イエスが彼(かれ)らに行(い)くように命(めい)じられた山(やま)に登(のぼ)った。 17そして、イエスに会(あ)って拝(はい)した。しかし、疑(うたが)う者(もの)もいた。 18イエスは彼(かれ)らに近(ちか)づいてきて言(い)われた、「わたしは、天(てん)においても地(ち)においても、いっさいの権威(けんい)を授(さづ)けられた。 19それゆえに、あなたがたは行(い)って、すべての国民(こくみん)を弟子(でし)として、父(ちち)と子(こ)と聖霊(せいれい)との名(な)によって、彼(かれ)らにバプテスマを施(ほどこ)し、 20あなたがたに命(めい)じておいたいっさいのことを守(まも)るように教(おし)えよ。見(み)よ、わたしは世(よ)の終(おわ)りまで、いつもあなたがたと共(とも)にいるのである」。